説明

データ変調装置、データ変調方法、プログラム、および記録媒体

【課題】データ再生時における再生特性をより安定させることができるようにする。
【解決手段】情報ビット挿入部11は、入力データ列に情報ビットを例えば一定の間隔で挿入する。情報ビットには、DSV制御に用いられるDSVビットと、復調時の信号処理の内容を指定する情報である特殊ビットが含まれる。データ変換部12は、情報ビットが挿入されたデータを、可変長変換規則を有する変調テーブルに従ってRLL符号に変換する。制御区間決定部15は、DSVビットの値を演算するためのDSV制御区間と、特殊ビットの値を決定するのに用いられる特殊演算区間を設定する。情報ビット決定部16は、DSV制御区間の符号に基づいてDSVビットの値を決定するとともに、特殊演算区間の符号に基づいて特殊ビットの値を決定する。本発明は、ブルーレイディスクレコーダに適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ変調装置、データ変調方法、プログラム、および記録媒体に関し、特に、データ再生時における再生特性をより安定させることができるようにしたデータ変調装置、データ変調方法、プログラム、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
データを所定の伝送路を介して伝送したり、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の記録媒体に記録したりする際、伝送路や記録媒体に応じてデータの変調が行われる。
【0003】
このような変調方法の1つとしてブロック符号が知られている。ブロック符号は、データ列をm×iビットからなる単位(以下、データ語という)にブロック化し、データ語を適当な符号則に従ってn×iビットからなる符号語に変換するものである。以下、符号語のビットをチャネルビットとも称する。
【0004】
符号は、i=1のときには固定長符号となり、また、iを複数個選べるとき、すなわち1乃至imax(最大のi)のうちの所定のiを選択したときには可変長符号になる。ブロック符号化された符号は可変長符号(d,k;m,n;r)と表される。
【0005】
iは拘束長と称され、imaxは、最大拘束長rとなる。また、dは、連続する”1”の間に入る”0”の最小連続個数、すなわち”0”の最小ランを示し、kは、連続する”1”の間に入る”0”の最大連続個数、すなわち”0”の最大ランを示している。
【0006】
このようにして得られる符号語をCDなどの光ディスクやMDなどの光磁気ディスクに記録する場合、可変長符号列の”1”を反転とし、”0”を無反転とするNRZI(NonReturn to Zero Inverted)変調が行われ、NRZI変調後の可変長符号が記録される。このような記録方式はマークエッジ記録とよばれる。以下、適宜、記録対象となる可変長符号を記録符号列という。
【0007】
これに対して、ISO規格の3.5inch・230MB容量の光磁気ディスク等では、変調された符号列が、NRZI変調されずにそのまま記録される。このような記録方式はマークポジション記録とよばれる。現在のように高記録密度化された記録メディアでは、マークエッジ記録が多く用いられている。
【0008】
記録符号列の最小反転間隔をTminとし、最大反転間隔をTmaxとするとき、線速方向に高密度記録を行うためには、最小反転間隔Tminは長い方が、すなわち最小ランdは大きい方が良い。また、クロックの再生の面からは、最大反転間隔Tmaxは短い方が、すなわち最大ランkは小さい方が望ましい。
【0009】
また、オーバーライト特性を考慮する場合にはTmax/Tminは小さい方が望ましい。さらに、JitterやS/Nの点から検出窓幅Tw=m/nが大きいことが重要になるなど、メディアの条件と照らし合わせながら種々の変調方法が提案され、実用化されている。
【0010】
ここで、光ディスク、磁気ディスク、または光磁気ディスク等において、提案、あるいは実際に使用されている変調方式をあげる。
【0011】
CDやMDで用いられるEFM符号((2,10;8,17;1)とも表記される)、DVDで用いられる8-16符号((2,10;1,2;1)とも表記される)、PD(120mm650MB容量)で用いられるRLL(2,7)((2,7;m,n;r)とも表記される)は、最小ランd=2のRLL符号である。
【0012】
また、MD−DATA2、あるいはISO規格の3.5inchMO(640MB容量)で用いられるRLL(1,7)((1,7;2,3;r)とも表記される)は、最小ランd=1のRLL符号である。
【0013】
この他、現在開発研究されている記録密度の高い光ディスクや光磁気ディスク等においては、最小マークの大きさや変換効率のバランスの取れた、最小ランd=1のRLL符号(Run Length Limited code)がよく用いられている。さらに、記録再生特性によりマーク間隔が広く取れる記録方式が望ましい場合においては、マークポジション記録が採用され、記録密度に応じて最小ランd=1、d=2、そしてd=4などのRLL符号が用いられている。
【0014】
図1は、可変長のRLL(1,7)符号の変調テーブルの例を示す図である。
【0015】
図1の変調テーブルにおいては、例えば、拘束長i=1である場合、”11”のデータパターンは”00x”の符号パターンに変調される。また、拘束長i=2である場合、”0011”のデータパターンは”000 00x”の符号パターンに変調される。
【0016】
図1の変調テーブルのxは、次に続くチャネルビットが”0”であるときに”1”とされ、次に続くチャネルビットが”1”であるときに”0”とされる。最大拘束長rは2である。
【0017】
可変長RLL(1,7)のパラメータは(1,7;2,3,2)であり、記録符号列のビット間隔をTとすると、(d+1)Tで表される最小反転間隔Tminは2(=1+1)Tとなる。データ列のビット間隔をTdataとすると、この(m/n)×2で表される最小反転間隔Tminは1.33(=(2/3)×2)Tdataとなる。
【0018】
また、(k+1)Tで表される最大反転間隔Tmaxは、Tmax = 8(=7+1)T(=(m/n)×8Tdata = (2/3)×8Tdata = 5.33Tdata) である。さらに、検出窓幅Twは、(m/n)×Tdataで表され、その値は、Tw = 0.67(=2/3)Tdata となる。
【0019】
ところで、図1の変調テーブルに従って変調を行って得られたチャネルビット列においては、発生頻度としてはTminである2Tが一番多く、以下、3T,4T,5T,6T,...の順に多い。そして、最小ラン(Tmin)である2Tが繰り返すこと、すなわちエッジ情報が早い周期で多く発生することは、クロック再生には有利となる場合が多い。
【0020】
ところが、例えば光ディスクの記録再生において、さらに記録線密度を高くしていった場合、最小ランの部分はエラーが発生しやすい部分となる。なぜなら、光ディスクの再生時において、最小ランの波形出力は他のランよりも小さく、デフォーカスやタンジェンシャル・チルト等による影響を受けやすいからである。
【0021】
また、高線密度における最小マークの連続した記録再生は、ノイズ等の外乱の影響も受けやすく、データ再生の誤りを起こしやすくなる。この時のデータ再生の誤りのパターンとしては、連続する最小マークの先頭のエッジから最後のエッジまでが一斉にシフトして誤るといったパターンがある。すなわち、ビットエラーが、最小ランの連続する区間の先頭から最後まで伝搬することになる。従って、エラー伝搬が長くなってしまうことになる。
【0022】
したがって、高線密度にデータを記録再生する場合の安定化のためには、最小ランの連続を制限することが効果的である。
【0023】
一方、記録媒体へのデータの記録または伝送路を介したデータの伝送の際には、上述したように記録媒体や伝送路に適した変調が行われるが、変調符号に低域成分が含まれていると、ディスク再生装置におけるサーボ制御時にトラッキングエラーなどの各種のエラー信号の変動が生じ易くなったり、あるいはジッターが発生し易くなったりする。従って、変調符号においては低域成分がなるべく抑制されている方が望ましい。
【0024】
低域成分を抑制する方法としてDSV(Digital Sum Value)制御がある。DSVは、チャネルビット列をNRZI化(レベル符号化)して記録符号列とし、記録符号列のビットの”1”を「+1」、”0”を「−1」として、各ビットの値を加算していったときの総和を意味する。DSVは記録符号列の低域成分の目安となる。DSVの正負のゆれの絶対値を小さくすること、すなわちDSV制御を行うことは、記録符号列の直流成分を除き、低域成分を抑制することになる。
【0025】
図1の変調テーブルを用いて得られる変調符号にはDSV制御が行われていない。このような場合のDSV制御は、変調後のチャネルビット列において所定の間隔でDSV計算を行い、DSVビットをチャネルビット列内に挿入することで実現される(例えば、特許文献1)。
【0026】
チャネルビット列内に挿入するDSVビットの数は最小ランdによって決まる。例えば、d=1である場合、最小ランの制限を守るようにチャネルビット列内に挿入する場合に必要になるDSVビットのビット数は2(=d+1)である。また、最大ランの制限を守るようにチャネルビット列内に挿入する場合に必要になるDSVビットのビット数は4(=2×(d+1))である。これらのビット数より少ない数のDSVビットでDSV制御を行うと、挟まれる前後のパターンによってはDSV制御を行うことができない場合が発生する。
【0027】
(d,k;m,n) = (1,7;2,3)であるRLL(1,7)符号において、DSVビットを、変換率に合わせてデータに換算すると、そのデータの数は次のようになる。
4チャネルビット×2/3 = 8/3 = 2.67データ相当(2.67 Tdata)
【0028】
ところで、DSVビットは、基本的には冗長ビットである。従って、符号変換の効率の観点からは、DSVビットはなるべく少ないほうが良い。
【0029】
また、挿入されるDSVビットによって最小ランdと最大ランkが変化しないほうが良い。(d,k)が変化すると、記録再生特性に影響を及ぼしてしまうからである。
【0030】
実際のRLL符号においては、最小ランは記録再生特性への影響が大きいために必ず守られる必要があるが、最大ランについては必ずしも守られてはいない。場合によっては最大ランを破るパターンを同期信号のパターンに用いるフォーマットも存在する。例えば、DVDの8-16符号における最大ランは11Tだが、同期信号部分においては、最大ランを超える14Tを与えることによって同期信号の検出能力の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開平11−177431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
ところで、DSV制御を行うことがフォーマットにより規定されていたとしても、システムによってはDSV制御が不要な場合がある。
【0033】
システムとして予め決められたフォーマットに対し、直流成分の抑圧が必要なくなった場合は、所定間隔で挟まれたDSV制御のためのビットは冗長なビットとなる。
【0034】
また、直流成分の抑圧が必要な場合であっても、システムとして予め決められたフォーマットに対し、直流成分の抑圧が必要以上になされているときにも、所定間隔で挟まれたDSVビットは冗長なビットと考えることができる。
【0035】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、データ再生時における再生特性をより安定させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の一側面のデータ変調装置は、変調対象として入力されたデータ列に、対象とする区間内のデータを復調するときの信号処理の内容を表す値を有する特殊ビットを挿入する挿入手段と、前記特殊ビットが挿入された前記データ列を、可変長変換規則を有する変調テーブルに従ってRLL符号列に変換する変換手段と、前記RLL符号列に制御区間を設定する設定手段と、前記制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す値を前記特殊ビットの値として決定する制御手段とを備える。
【0037】
前記制御手段には、前記制御区間内の前記RLL符号に基づいて、前記制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す値を前記特殊ビットの値として決定させることができる。
【0038】
前記設定手段には、前記制御区間として第1の制御区間と第2の制御区間をそれぞれ前記RLL符号列に設定させ、前記制御手段には、前記第1の制御区間内の前記RLL符号に基づいて、前記第1の制御区間内の前記RLL符号のDSV制御に用いられるDSVビットの値を決定させ、前記第2の制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す前記特殊ビットの値を決定させ、前記挿入手段には、前記DSVビットの挿入位置として一定の間隔で前記データ列に設定される位置のうちの少なくとも一部の位置に前記特殊ビットを挿入させ、他の位置に前記DSVビットを挿入させることができる。
【0039】
前記制御手段には、前記第2の制御区間内の前記RLL符号に基づいて、前記第2の制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す前記特殊ビットの値を決定させることができる。
【0040】
前記RLL符号が記録媒体に記録される場合、前記制御手段には、前記第2の制御区間内の前記RLL符号の前記記録媒体における記録位置に応じて、前記特殊ビットの値を変えさせることができる。
【0041】
前記RLL符号が記録媒体に記録される場合、前記制御手段には、前記制御区間内の前記RLL符号の前記記録媒体における記録位置に応じて、前記特殊ビットの値を変えさせることができる。
【0042】
前記制御手段には、前記第2の制御区間の前記RLL符号の0の連続または1の連続を解析させ、最小ランの発生回数が閾値より多いか否かに応じて前記特殊ビットの値を変えさせることができる。
【0043】
前記制御手段には、前記制御区間の前記RLL符号の0の連続または1の連続を解析させ、最小ランの発生回数が閾値より多いか否かに応じて前記特殊ビットの値を変えさせることができる。
【0044】
前記データ列に前記特殊ビットが挿入されているか否かを表す識別情報を含む同期信号を生成する同期信号生成手段をさらに設けることができる。この場合、前記変換手段には、前記RLL符号列に前記同期信号を合成させることができる。
【0045】
本発明の一側面のデータ変調方法は、変調対象として入力されたデータ列に、対象とする区間内のデータを復調するときの信号処理の内容を表す値を有する特殊ビットを挿入し、前記特殊ビットが挿入された前記データ列を、可変長変換規則を有する変調テーブルに従ってRLL符号列に変換し、前記RLL符号列に制御区間を設定し、前記制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す値を前記特殊ビットの値として決定するステップを含む。
【0046】
本発明の一側面のプログラムは、変調対象として入力されたデータ列に、対象とする区間内のデータを復調するときの信号処理の内容を表す値を有する特殊ビットを挿入し、前記特殊ビットが挿入された前記データ列を、可変長変換規則を有する変調テーブルに従ってRLL符号列に変換し、前記RLL符号列に制御区間を設定し、前記制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す値を前記特殊ビットの値として決定するステップを含む処理をコンピュータに実行させる。
【0047】
本発明の一側面の記録媒体は、変調対象として入力されたデータ列に、対象とする区間内のデータを復調するときの信号処理の内容を表す値を有する特殊ビットを挿入し、前記特殊ビットが挿入された前記データ列を、可変長変換規則を有する変調テーブルに従ってRLL符号列に変換し、前記RLL符号列に制御区間を設定し、前記制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す値を前記特殊ビットの値として決定することによって生成された記録符号列が記録された記録媒体である。
【0048】
本発明の一側面においては、変調対象として入力されたデータ列に、対象とする区間内のデータを復調するときの信号処理の内容を表す値を有する特殊ビットが挿入され、前記特殊ビットが挿入された前記データ列が、可変長変換規則を有する変調テーブルに従ってRLL符号列に変換される。また、前記RLL符号列に制御区間が設定され、前記制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す値が前記特殊ビットの値として決定される。
【発明の効果】
【0049】
本発明の一側面によれば、データ再生時における再生特性をより安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】変調テーブルの例を示す図である。
【図2】変調テーブルの他の例を示す図である。
【図3】データ変調装置の基本的構成を示すブロック図である。
【図4】入力データ列の例を示す図である。
【図5】データ変調装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】データ変調装置の記録符号列生成処理について説明するフローチャートである。
【図7】図6のステップS5において行われる制御区間決定処理について説明するフローチャートである。
【図8】制御区間の例を示す図である。
【図9】DSV制御区間からなる制御区間の例を示す図である。
【図10】特殊演算区間からなる制御区間の例を示す図である。
【図11】特殊演算区間からなる制御区間の他の例を示す図である。
【図12】データ変調装置の他の構成例を示すブロック図である。
【図13】DSV制御区間と特殊演算区間からなる制御区間の例を示す図である。
【図14】DSV制御区間と特殊演算区間からなる制御区間の他の例を示す図である。
【図15】DSV制御区間と特殊演算区間からなる制御区間のさらに他の例を示す図である。
【図16】データ変調装置の他の構成例を示すブロック図である。
【図17】データ変調装置の他の構成例を示すブロック図である。
【図18】パーソナルコンピュータの一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
<第1の実施の形態>
[変調テーブル]
図2は、本発明の一実施形態に係るデータ変調装置において使用される変調テーブルの例を示す図である。
【0052】
図2の変調テーブルは、図1の変調テーブルを用いた変調方式に較べて、高記録密度に対応した最小ランd=1のRLL符号の変調テーブルである。図2の変調テーブルは、変換パターンとして、基礎パターン、置換パターン、終端パターンを有している。
【0053】
基礎パターンは、それがないと変換処理ができない変換パターンである。図2の(11)から(000000)までのデータパターンの変換パターンが基礎パターンである。
【0054】
置換パターンは、それがなくても変換処理は可能であるが、その変換パターンを用いた変換を行うことによって、より効果的な変換処理を行うことができる変換パターンである。(110111),(00001000),(00000000)のデータパターンの変換パターンが置換パターンである。
【0055】
終端パターンは、データ列を任意の位置で終端させるための変換パターンである。(00),(0000)のデータパターンの変換パターンが終端パターンである。
【0056】
また、図2の変調テーブルは、最小ランd=1、最大ランk=7の変調テーブルであり、基礎パターンの要素に不確定符号(*で表される符号)を含んでいる。不確定符号は、直前および直後の符号語列の如何によらず、最小ランdと最大ランkを守るように、”0”か”1”に決定される。
【0057】
すなわち、図2の変調テーブルにおいて、データパターンが(11)であったとき、その直前の符号語列(チャネルビット列)によって、"000"または"101"の符号パターンが選択され、そのいずれかに変換される。例えば、直前の符号語列の1チャネルビットが”1”である場合、最小ランdを守るように、データパターン(11)は符号パターン"000"に変換される。また、直前の符号語列の1チャネルビットが”0”である場合、最大ランkを守るように、データパターン(11)は符号パターン"101"に変換される。
【0058】
図2の変調テーブルの基礎パターンは可変長構造を有している。すなわち、拘束長i=1における基礎パターンは、必要数の4つ(2^m = 2^2 = 4)よりも少ない3つ(*0*,001,010)で構成されている。その結果、データ列を変換する際に、拘束長i=1だけでは変換できないデータ列が存在することになる。結局、図2の変調テーブルを用いて全てのデータ列を変換するには(変調テーブルとして成り立たせるためには)、拘束長i=3までの基礎パターンを参照する必要がある。
【0059】
図2の変調テーブルは最小ランdの連続を制限する置換パターンを有している。従って、データパターンが(110111)である場合、後ろに続く符号語列が参照され、それが"010"であるとき、(110111)のデータパターンは符号パターン"001 000 000"に置き換えられる。
【0060】
また、(110111)のデータパターンは、後ろに続く符号語列が"010"以外である場合、(11),(01),(11)の2データ単位で符号パターンに変換されるので、符号語"*0* 010 *0*"に変換される。これによって、符号語列は、最小ランの連続が制限されたものとなり、最大でも6回までの最小ランの繰り返しとなる。
【0061】
図2の変調テーブルの最大拘束長rは4である。拘束長i=4の変換パターンは、最大ランk=7を実現するための置換パターン(最大ラン保証パターン)で構成されている。すなわち、データパターン(00001000)が符号パターン"000 100 100 100"に変換され、データパターン(00000000)が符号パターン"010 100 100 100"に変換されるように構成されている。この場合においても、最小ランd=1は守られている。
【0062】
さらに、図2の変調テーブルにおいては、同期パターンを挟むために、データ列の任意の位置において終端させる場合、データ列が(00)または(0000)で終端位置となる際には終端パターンが用いられる。
【0063】
挿入される同期パターンは、先頭の1符号語が終端パターン使用識別ビットとなっており、終端パターンが用いられた時は、直後の同期パターン列の先頭符号語が”1”となる。また、終端パターンが用いられなかった時は、直後の同期パターン列の先頭符号語が”0”となる。
【0064】
なお、図2の変調テーブルにおける同期パターンは、終端パターン使用識別ビットと、同期パターン検出のために最大ランk=7を超えるk=8の符号パターンを2回繰り返したビットとの合計24符号語で構成してある。
【0065】
図2の変調テーブルは、データパターンの要素としての「1」の個数を2で割った時の余りと、変換される符号パターンの要素としての「1」の個数を2で割った時の余りが、どちらも1あるいは0で同一となるような変換規則を持っている。つまり、図2の変換パターンは、対応するいずれの要素も「1」の個数が奇数または偶数となるような変換規則を持っている。
【0066】
すなわち、図2の変調テーブルは、変換前のデータと変換後の符号との関係において、偶奇性保存パターンを有する。例えば、データパターン(000001)は"010 100 100"の符号パターンに対応するが、それぞれの要素としての「1」の個数は、データパターンでは1個、対応する符号パターンでは3個であり、どちらも2で割ったときの余りが1(奇数)で一致する。同様に、データパターン(000000)は、"010 100 000"の符号パターンに対応するが、それぞれの要素としての「1」の個数は、データパターンでは0個、対応する符号パターンでは2個であり、どちらも2で割ったときの余りが0(偶数)で一致する。
【0067】
次に、DSV制御について説明する。
【0068】
上述したように、図1の変調テーブルを用いて得られるRLL(1,7)符号においてはDSV制御が行われていない。このような場合の従来のDSV制御は、例えば、データ列を変調してチャネルビット列とした後、チャネルビット列にDSVビットを少なくとも(d+1)ビットだけ所定の間隔で付加することで行われている。
【0069】
図2の変調テーブルを用いて得られるチャネルビット列に対しても従来と同様にしてDSV制御を行うことができるが、図2の変調テーブルにおけるデータパターンと符号パターンの関係を生かして、さらに効率良くDSV制御を行うことが可能である。
【0070】
すなわち、図2の変調テーブルは、データパターンの要素としての「1」の個数と符号パターンの要素としての「1」の個数を2で割った時の余りが、どちらも1あるいは0で同一となるような変換規則を持っている。この時、チャネルビット列内に「反転」を表す”1”、あるいは「非反転」を表す”0”のDSVビットを挿入することは、データビット列内に、「反転」するならば”1”の、「非反転」ならば”0”のDSVビットを挿入することと等価となる。
【0071】
例えば、図2の変調テーブルにおいて、データ変換する3ビットが(001)と続いたときに、その後ろにDSVビットを挾むものとすると、データは(001x)(xは「0」又は「1」の1ビット)となる。
【0072】
ここで、xに「0」を与えた場合、図2の変調テーブルによれば、データパターン(0010)は符号パターン“010 000”に変換される。xに「1」を与えた場合、データパターン(0011)は符号パターン“010 100”に変換される。
【0073】
符号語列をNRZI化してレベル符号列を生成すると、これらは、
データパターン 符号パターン レベル符号列
0010 010 000 011111
0011 010 100 011000
となり、レベル符号列の最後の3ビットが相互に反転したものになる。このことは、DSVビットxとして”1”と”0”を選択することによって、データ列内においても、DSV制御を行うことができることを意味する。
【0074】
冗長度を考えると、データ列内の1ビットでDSV制御を行うことは、チャネルビット列で表現すれば、図2の変換率(m:n=2:3)より、1.5チャネルビットでDSV制御を行うことに相当する。
【0075】
一方、図1の変調テーブルにおいてDSV制御を行うためには、チャネルビット列においてDSV制御を行う必要がある。この時、最小ランを守るためには、少なくとも2チャネルビットが必要となり、図2の変調テーブルにおけるDSV制御と比較すると、冗長度がより大きくなってしまう。すなわち、変調テーブルが図2のような構造を持つ時は、データ列内でDSV制御を行うことによって、効率よくDSV制御を行うことができる。
【0076】
(d,k)=(1,7)の最小ランと最大ランを持った高記録密度に対応した、図2のような変調テーブルは、例えば高密度光ディスクのフォーマットであるBlu-ray Disc(登録商標) ReWritable ver1.0に採用されている。
【0077】
今後、高密度光ディスクに対するさらなる高記録密度に対応した規格のデータとチャネルビットの変調方式においても、さらに安定したシステムが要求されるものと考えられる。
【0078】
その際、既にシステムとして採用されている変調テーブルを用いた上で、さらに安定したシステムを実現すれば、従来の設計技術を流用することができるので、ハードウェア設計時の設計リスクを低減することができる。
【0079】
[データ変調装置の構成]
図3は、本発明の一実施形態に係るデータ変調装置の基本的構成を示すブロック図である。
【0080】
図3に示すように、データ変調装置1は、情報ビット挿入部11、データ変換部12、同期信号挿入部13、NRZI化部14、制御区間決定部15、情報ビット決定部16、および特殊情報処理制御部17から構成される。情報ビット決定部16は、特殊情報制御部21とDSV制御部22から構成される。情報ビット挿入部11と同期信号挿入部13に対しては、変調対象となるデータ列が入力される。
【0081】
情報ビット挿入部11は、特殊情報処理制御部17による制御に従って、入力データ列に所定の間隔で情報ビットを挿入する。情報ビット挿入部11により挿入される情報ビットは、特殊ビットまたはDSVビットである。
【0082】
DSVビットは、データ変調装置1により生成された記録符号列を復調する復調側の装置において、チャネルビット列のDSV制御を行うために用いられるビットである。
【0083】
特殊ビットは、データ変調装置1により生成された記録符号列を復調する復調側の装置において、チャネルビット列を対象とした処理の内容を切り替えるために用いられるビットである。復調側の装置においては、特殊ビットの値に応じて、たとえばチャネルビット列を対象として行われるイコライザ処理、PRML処理等の信号処理の内容が切り替えられる。
【0084】
例えば、データ変調装置1により生成された記録符号列がBlu-ray Disc(商標)などの光ディスクに記録される場合、記録位置が内周側の位置であるのか、外周側の位置であるのかによって、再生して得られるチャネルビットの特性が異なる場合がある。従って、再生して得られたチャネルビットの光ディスクにおける記録位置に応じた信号処理が復調側の装置において行われるように、信号処理の切り替えを制御する情報として特殊ビットが挿入される。
【0085】
情報ビット挿入部11は、情報ビットを挿入したデータ列をデータ変換部12に出力する。また、情報ビット挿入部11は、適宜、情報ビットの挿入位置を表す位置情報を出力する。情報ビット挿入部11から出力された位置情報は、必要に応じて後段の各部で使用される。
【0086】
データ変換部12は、情報ビット挿入部11から供給されたデータを、例えば図2の変調テーブルに従ってチャネルビット列に変換する。チャネルビット列は、例えば、連続した”1”の間に挟まれる”0”が、最小で1回であり、かつ最大で7回である。
【0087】
また、データ変換部12は、情報ビット挿入部11から供給されたチャネルビット列と、同期信号挿入部13から供給された同期信号パターンのチャネルビット列を合成し、NRZI化部14に出力する。
【0088】
同期信号挿入部13は、入力されたデータ列に同期して、図2の変調テーブルに従って同期信号を生成し、データ変換部12に出力する。同期信号挿入部13により生成される同期信号は、例えば、図2に示す“#01 001 000 000 001 000 000 001”の24チャネルビットを含む信号である。なお、同期信号はさらに、必要に応じて24チャネルビットよりも多いチャネルビット数とすることが出来る。たとえばシステムのために複数種類の同期信号を持つために用いたり、あるいは他の目的の識別のために用いることができる。
【0089】
NRZI化部14は、データ変換部12から供給されたチャネルビット列をNRZI化(レベル符号化)する。NRZI化は、上述したように、チャネルビットの”1”で0と1の反転を行い、チャネルビットの”0”では前のまま保持する変換である。NRZI化部14は、NRZI化したチャネルビット列を情報ビット決定部16に出力する。以下、適宜、NRZI化が行われた符号をレベル符号と呼ぶ。
【0090】
制御区間決定部15は、NRZI化部14から供給されたレベル符号に関する情報と、データ変換部12から供給された、データをチャネルビットに変換した時の可変長に関する情報に基づいて制御区間を設定する。制御区間決定部15は、チャネルビット列に設定したそれぞれの制御区間の位置や制御区間の種類などに関する情報を情報ビット決定部16に出力する。制御区間の種類には、特殊演算区間とDSV制御区間が含まれる。
【0091】
情報ビット決定部16の特殊情報制御部21は、制御区間決定部15により設定された特殊演算区間のチャネルビットに基づいて特殊ビットを決定し、決定した特殊ビットの情報を特殊情報処理制御部17に出力する。
【0092】
情報ビット決定部16のDSV制御部22は、制御区間決定部15により設定されたDSV制御区間のチャネルビットに基づいてDSV演算を行う。DSV制御部22は、NRZI化部14から入力されたチャネルビット列に対してDSVビットとして1を挿入したビット列と、0を挿入したビット列のうちのいずれかを選択し、記録符号列として出力する。DSV制御部22から出力された記録符号列は、所定の伝送路を介して他の装置に伝送され、またはBlu-ray Disc(商標)などの記録媒体2に記録される。
【0093】
特殊情報処理制御部17は、情報ビット決定部16の特殊情報制御部21により決定された特殊ビットの情報を情報ビット挿入部11に出力し、入力データ列に特殊ビットを挿入させる。なお、特殊情報処理制御部17は、適宜、情報ビット決定部16の特殊情報制御部21により決定された特殊ビットの情報を同期信号挿入部13に出力し、データ列中に特殊ビットが含まれているか否かを表す情報を同期信号に付加させることができる。
【0094】
さらに、特殊ビットの挿入について、情報ビット決定部16による決定に基づいて制御するのではなく、データ変調装置1のユーザによる操作に応じて入力された制御信号に基づいて制御するようにしてもよい。この場合、特殊情報処理制御部17は、外部から入力された制御信号に従って情報ビット挿入部11を制御し、入力データ列に特殊ビットを挿入させる。また、特殊情報処理制御部17は、外部から入力された制御信号に従って同期信号挿入部13を制御し、データ列中に特殊ビットが含まれているか否かを表す情報を同期信号に付加させる。
【0095】
なお、各部の動作のタイミングは、図示しないタイミング管理部から供給されるタイミング信号に同期して管理されている。
【0096】
図4は、入力データ列の例を示す図である。
【0097】
例えば、所定のデータ量のデータ(ユーザデータ)が複数まとめられることによってデータブロックが構成され、データブロックに対してECC(Error-Correcting Code)が付加される。
【0098】
図4の例においては、データ#1乃至#4が処理対象の順に並べられることによって、白抜き矢印A1の先に示すようにデータブロック#11が構成されている。また、水平方向の矢印A2、垂直方向の矢印A3に示すように、データブロック#11を構成するデータのうち、水平方向に並ぶデータと、垂直方向に並ぶデータのそれぞれに対してECCが付加される。
【0099】
データ変調装置1に対しては、データブロックとECCからなる図4の右側に示すようなブロック単位のデータが入力データ列として入力される。復調側の装置においては、ブロック単位のデータを変調して得られたチャネルビット列を復調することによって図4の右側に示すブロック単位のデータが取得されることになる。
【0100】
図5は、図3のデータ変調装置1をより具体化した構成例を示すブロック図である。
【0101】
図5のデータ変調装置1においては、特殊情報制御部21が、特殊演算部31と挿入制御部32により構成されている。また、DSV制御部22が、DSV演算部41と記録符号列決定部42により構成されている。
【0102】
特殊演算部31とDSV演算部41に対しては、NRZI化部14から出力されたレベル符号が供給されるとともに、制御区間決定部15から供給された制御区間に関する情報が供給される。NRZI化部14から出力されたレベル符号は、DSV制御部22の記録符号列決定部42にも供給される。
【0103】
特殊演算部31は、NRZI化部14から供給されたレベル符号のうち、制御区間決定部15により設定された特殊演算区間のレベル符号に基づいて特殊ビットに関する演算を行う。例えば、それぞれの特殊演算区間のレベル符号のラン情報の解析や、記録符号列の記録先となる光ディスクにおける記録位置を特定することが特殊演算部31により行われる。光ディスクにおける記録位置は、光ディスクの容量、記録符号列における、対象となる特殊演算区間の先頭からの位置、対象となる特殊演算区間のレベル符号の量などに基づいて特定される。特殊演算部31は、演算結果の情報を挿入制御部32に出力する。
【0104】
挿入制御部32は、それぞれの特殊演算区間が特殊処理を行うレベル符号の区間であるか、通常処理を行うレベル符号の区間であるかを、特殊演算部31から供給された情報に基づいて判定し、判定結果に応じた値を特殊ビットの値として決定する。
【0105】
例えば、特殊ビットの値が0であることは、その特殊ビットを求めるのに用いられたレベル符号の区間が、復調時に通常処理の対象になる区間であることを表す。一方、特殊ビットの値が1であることは、その特殊ビットを求めるのに用いられたレベル符号の区間が、復調時に特殊処理の対象になる区間であることを表す。
【0106】
特殊処理と通常処理とでは、異なった信号処理の内容とすることができるようにしてある。復調時の信号処理には、EQ(イコライザ)処理、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)処理、FIRフィルタを用いたフィルタリング処理が含まれる。
【0107】
例えば、通常処理は、所定のEQ処理とPRML処理(PR121)からなり、特殊処理は、通常処理と半位相ずれる所定のEQ処理とPRML処理(PR1221)からなる。
【0108】
また、通常処理は、所定の特性を有するFIRフィルタを用いたフィルタリング処理であり、特殊処理は、その所定の特性とは異なる、高域成分を強調する特性を有するFIRフィルタを用いたフィルタリング処理である。
【0109】
例えば、対象の特殊演算区間のレベル符号の記録位置が特定されている場合、挿入制御部32は、特殊ビットの値として、そのレベル符号の記録位置が光ディスクの内周側の位置であるときには1を、外周側の位置であるときには0を選択する。例えば、記録符号列の記録先となる光ディスクの半径の長さRが二等分され、(1/2)Rの円の内側の位置が内周側の位置、(1/2)Rの円の外側の位置が外周側の位置とされる。
【0110】
また、対象の特殊演算区間のレベル符号のラン情報の解析が行われている場合、挿入制御部32は、特殊ビットの値として、対象の特殊演算区間が、最小ランである2Tの発生が閾値の頻度より多い区間であるときには1を、閾値の頻度より少ない区間であるときには0を選択する。
【0111】
これにより、データ変調装置1により生成された記録符号列を再生する復調側の装置においては、記録媒体から読み出したチャネルビット列の記録位置や2Tの発生頻度に応じて信号処理の内容が切り替えられることになる。特殊ビットの値は、特殊演算区間毎、ある同期信号から次の同期信号までの区間であるFS(Frame Sync)区間毎、図4を参照して説明したブロック単位のデータ毎などの所定のタイミングで切り替えられる。
【0112】
挿入制御部32は、決定した特殊ビットの値の情報を特殊情報処理制御部17に出力する。
【0113】
DSV制御部22のDSV演算部41は、NRZI化部14からのレベル符号を用いてDSV演算を行う。DSV演算のための演算区間は制御区間決定部15により設定される。
【0114】
DSV演算においては、例えば、対象のDSV制御区間のレベル符号中の1の個数と0の個数がカウントされ、1と0の個数差と、これまでの累積DSVをあわせた情報が作成される。また、情報ビットとしてDSVビット”1”を与えた場合の累積DSVと、DSVビット”0”を与えた場合の累積DSVのうち、0に近い方のレベル符号が選択される。
【0115】
DSV演算部41は、DSVビットとして0と1をそれぞれ挿入するように情報ビット挿入部11を制御する。
【0116】
記録符号列決定部42は、NRZI化部14から供給されたレベル符号のうち、DSVビットとして1を与えられたものと、0を与えられたもののいずれかを記録符号列として選択し、出力する。
【0117】
特殊情報処理制御部17は、挿入制御部32により決定された特殊ビットを情報ビット挿入部11に供給し、入力データ列の所定の位置に挿入させる。
【0118】
[データ変調装置の動作]
ここで、図6のフローチャートを参照して、図5のデータ変調装置1の記録符号列生成処理について説明する。
【0119】
ステップS1において、情報ビット挿入部11は、入力データ列に情報ビットを挿入する。例えば、入力データ列が45ビット単位で区分され、1つの区分の末端の直後に、1ビットの特殊ビットまたはDSVビットが挿入される。情報ビット挿入部11は、入力データ列のビット数をカウントすることで情報ビットの挿入位置を判断することができる。
【0120】
挿入する情報ビットが特殊ビットである場合、情報ビット挿入部11は、特殊情報処理制御部17による制御に従って特殊ビットをデータ列に挿入する。特殊ビットの挿入位置が特殊情報処理制御部17により指定されるようにしてもよい。
【0121】
挿入する情報ビットがDSVビットである場合、情報ビット挿入部11は、1の値のDSVビットと0の値のDSVビットの両方を挿入する。すなわち、DSVビットとして値1が挿入されたデータ列と、DSVビットとして値0が挿入されたデータ列の2つのデータ列が生成される。DSVビットの値と挿入位置がDSV演算部41により指定されるようにしてもよい。
【0122】
詳細は後述するが、DSVビットは、演算対象のDSV制御区間内に挿入される。これに対して、特殊ビットは、対象とする特殊演算区間より後の特殊演算区間内に挿入される。
【0123】
ステップS2において、データ変換部12は、情報ビットが挿入されたデータ列を図2の変調テーブルに従って変換する。これにより、データ列が、図2の変調テーブルにおけるデータパターンを単位として、対応する符号パターンからなるチャネルビット列に変換される。
【0124】
ステップS3において、同期信号挿入部13は同期信号を生成し、データ変換部12に出力する。データ変換部12においては、同期信号挿入部13から供給された同期信号とチャネルビット列が合成され、同期信号が挿入されたチャネルビット列がNRZI化部14に出力される。
【0125】
ステップS4において、NRZI化部14は、データ変換部12より供給されたチャネルビット列のNRZI化を行う。
【0126】
ステップS5において、制御区間決定部15は制御区間決定処理を実行する。制御区間決定処理により、チャネルビット列の所定の区間が制御区間として設定される。制御区間の長さは可変である。すなわち、一定のビット数を単位として制御区間が設定される訳ではない。制御区間決定処理の詳細については後述する。
【0127】
ステップS6において、制御区間決定部15は、制御区間決定処理によって設定した制御区間がDSV制御区間であるか否かを判定する。DSV制御区間と特殊演算区間のうちのいずれの区間であるのかは、システムまたはユーザの指定による。たとえばユーザによる指定がなければシステムの指定に基づいて判定が行われ、ユーザによる指定がある場合には、ユーザによる指定に基づいて判定が行われる。
【0128】
すなわち、ユーザは、厳密なDSV制御が必要ではないとき、システムではDSVビットを挿入する位置として指定されている位置の全部または一部に、DSVビットに代えて、特殊ビットを挿入するように指示することができる。なお、本発明はユーザによる指定が、システムの指定に対して優先させることが必ずしも必須というわけではない。
【0129】
制御区間がDSV制御区間であるとステップS6において判定された場合、ステップS7において、DSV演算部41は、DSV制御区間を対象としてDSV演算を行う。
【0130】
DSV演算部41には、DSVビットとして値0が挿入されたデータ列を変換したレベル符号列と、値1が挿入されたデータ列を変換したレベル符号列の2種類のレベル符号列が入力される。DSV演算部41は、一方のレベル符号列のDSV制御区間のDSVを累積DSVに加算した値と、他方のレベル符号列のDSV制御区間のDSVを累積DSVに加算した値とを演算し、演算結果の情報を記録符号列決定部42に出力する。
【0131】
ステップS8において、記録符号列決定部42は、DSVビットとして値0が挿入されたデータ列を変換したレベル符号列と、値1が挿入されたデータ列を変換したレベル符号列のうちのいずれかをDSV演算部41による演算結果に基づいて選択する。記録符号列決定部42は、選択したレベル符号列を記録符号列として出力する。
【0132】
一方、制御区間がDSV制御区間ではない、すなわち特殊演算区間であるとステップS6において判定された場合、ステップS9において、特殊演算部31はそれぞれの特殊演算区間のレベル符号のラン情報を解析する。
【0133】
ステップS10において、挿入制御部32は、特殊ビットの値を決定する。この例においては、特殊ビットの値がラン情報の解析結果に基づいて決定されるものとされている。特殊ビットの値の情報は特殊情報処理制御部17を経由して情報ビット挿入部11に供給される。
【0134】
ステップS10において特殊ビットが決定された後、ステップS8において、記録符号列決定部42により記録符号列が決定される。この場合、記録符号列決定部42は、NRZI化部14から供給された特殊演算区間のレベル符号をそのまま記録符号列として選択し、出力する。
【0135】
上述したように、図2の変調テーブルにおいては、変換前のデータと変換後の符号との関係において偶奇性が保存されている。従って、チャネルビットで演算された結果に基づいてデータ列に挿入する情報ビットの値(すなわち、1または0)を決定しても、DSV制御を行うことは可能である。
【0136】
次に、図7のフローチャートを参照して、図6のステップS5において行われる制御区間決定処理について説明する。
【0137】
ステップS31において、制御区間決定部15は情報ビットの挿入位置である位置Pを取得する。上述したように、この例においては45個のデータ毎に1個の情報ビットが挿入されるので、変換対象のデータのビット数をカウントすることで位置Pが取得される。
【0138】
ステップS32において、制御区間決定部15は、情報ビットの挿入位置Pの直前のデータパターンの最後のビットの位置Qを取得する。情報ビットの挿入位置Pの直前のデータパターンは、情報ビットを含まないデータパターンとされる。
【0139】
ステップS33において、制御区間決定部15は、データの制御区切りBを、ステップS32で決定した位置Qのビットと、位置Qのビットの次のビットの間に設定する。すなわち、データに挿入された情報ビットを基準として、情報ビットの直前のデータパターンの最後のビットとその次のビットの間に制御区切りBが設定される。
【0140】
ステップS34において、制御区間決定部15は、データの制御区切りBに対応するチャネルビットの制御区切りbを求める。
【0141】
ステップS35において、制御区間決定部15は、連続する任意の数の制御区切りbの間の区間を制御区間として設定する。
【0142】
図8は、制御区間の例を示す図である。
【0143】
45個のデータ毎に1個の情報ビットを挿入する動作が繰り返される。すなわち、データ列を45個のデータ(45ビット)を単位として区分し、45個のデータ(第1ビット乃至第45ビット)の直後に1個の情報ビットを挿入する処理が繰り返される。従って、情報ビット挿入後のデータは、図8に示すように、45個のデータの次の46個目のデータの位置である位置Pに情報ビットが挿入された、単位境界Tを区切りとする46ビット単位のデータ列となる。
【0144】
図2の変調テーブルに示されるように、データパターンのビット数は、2,4,6,8のいずれかである。図8Aの例の場合、第41ビット乃至第46ビットの6ビット(000011)が、データパターンを構成している。しかし、このパターンは、第46ビットの情報ビットを含んでいるので、挿入位置Pの直前のデータパターンから除外される。データパターン(000011)より前の第37ビット乃至第40ビットの4ビットのデータパターン(0001)が、挿入位置Pの直前のデータパターンとなる。従って、挿入位置Pの直前のデータパターンの最後のビットの位置Qは、第40ビットの位置となる。
【0145】
図8Aの例の場合、位置Qの第40ビットと次のビットである第41ビットの間に、データの制御区切りBが設定される。
【0146】
これに対して、図8Bに示す例の場合、第45ビットと第46ビットのデータ(00)は、次の単位の第1ビットと第2ビットのデータ(01)とともにデータパターン(0001)を構成する。従って、データパターン(0001)は位置Pの直前のデータパターンではない。それより前の第41ビット乃至第44ビットの4ビット(0011)が、挿入位置Pの直前のデータパターンである。従って、挿入位置Pの直前のデータパターンの最後のビットの位置Qは、データパターン(0011)の最後のビットである第44ビットの位置となる。
【0147】
図8Bの例の場合、位置Qの第44ビットと次のビットである第45ビットの間に、データの制御区切りBが設定される。
【0148】
なお、図8には、データの制御区切りBと他の制御区切りBの間の区間を制御区間として示しているが、実際には、データをチャネルビットに変換した後の、制御区切りbと他の制御区切りbの間の区間が制御区間として設定される。
【0149】
このようにして設定された制御区間が、特殊演算区間またはDSV制御区間とされる。それぞれの制御区間が特殊演算区間であるのかDSV制御区間であるのかは、制御区間決定部15に予め設定されている情報に基づいて、または、ユーザによる入力に基づいて決定される。
【0150】
[制御区間の例]
図9は、DSV制御区間からなる制御区間の例を示す図である。
【0151】
図9の例においては、制御区間の全てがDSV制御区間とされている。各制御区間に挿入される情報ビットのすべてがDSVビットになる。
【0152】
図9の1段目のデータ列X1は、情報ビット挿入部11に入力されるデータ列である。データ列X1には、上述したようにユーザデータとECCが含まれる。情報ビット挿入部11は、45ビット間隔といったようにデータ列X1の所定間隔の位置にDSVビットDを挿入し、2段目に示すような情報ビット付きデータ列X2を生成する。
【0153】
データ列X1の先頭のSYNC区間は、同期信号(SYNC)を挿入することを前提として、他の区間より短い区間とされている。データ列X2中のDSV制御区間(DATA1,DATA2,DATA3)の長さをそれぞれa,b,bとする。変換率m:n = 2:3の変調テーブルによって得られる3段目のチャネルビット列X3の各DSV制御区間(DATA1,DATA2,DATA3)の長さCbitは、a×3/2 = 1.5a、あるいはb×3/2 = 1.5bとなる。
【0154】
データ変換部12は、同期信号挿入部13により生成された同期信号(SYNC)を合成することによって4段目に示すようなSYNC付きチャネルビット列X4を生成する。SYNC付きチャネルビット列X4の所定の位置(図9の例の場合、DATA1の前の先頭位置)には、同期信号がチャネルビット形式で挿入されている。同期信号のチャネルビット数をcとするとき、a,b,cの間には、次式(1)の関係が成り立つ。
1.5a + c = 1.5b (1)
これにより、同期信号を含んだフォーマットにおいても、等しい間隔でDSV制御が行われることとなる。
【0155】
1ビットのデータであるDSVビットは、チャネルビット内では、1.5チャネルビットに相当する。すなわち、データ列内に1ビット挿入されたDSVビットは、チャネルビットでは、以下のように変換率分だけ増加する。
1ビット × n/m = 1×3/2 = 1.5チャネルビット
【0156】
制御区切りBは、情報ビット(図9の場合、DSVビットD)が挿入される単位の境界である単位境界Tに近いが、それとは異なる位置とされている。
【0157】
図9の4段目に示すように、ある位置の制御区切りBと次の制御区切りBの間の区間がDSV制御区間Wとされる。図9の例の場合、制御区切りB0(図示せず)と次の制御区切りB1の間の区間がDSV制御区間W1とされ、制御区切りB1と次の制御区切りB2の間の区間がDSV制御区間W2とされている。また、制御区切りB2と次の制御区切りB3の間の区間がDSV制御区間W3とされている。このようにして設定されたDSV制御区間Wの情報が、制御区間決定部15からDSV演算部41に供給される。
【0158】
DSVビットは、演算対象のDSV制御区間内に配置されている。例えばDSV制御区間W2を対象としたDSV演算の結果として得られたDSVは、DSVビットD1として、DSV制御区間W2内に配置される。同様に、DSV制御区間W3を対象としたDSV演算の結果として得られたDSVは、DSVビットD2として、DSV制御区間W3内に配置される。
【0159】
1つのDSV制御区間には、DSVビットが1ビットだけが含まれる。これにより良好にDSV制御を行うことができる。
【0160】
なお、DSV制御区間を固定の値とすることもできる。この場合、例えば情報ビットの位置から10データだけ前の位置が、各区間の制御区切りBとして指定される。すなわち、データに挿入された情報ビットを基準として、情報ビットから一定のビット数だけ前のビットの直後に制御区切りBが設定される。可変長変換なので変換後のずれが発生するが、固定にした区切り以降のチャネルビットに基づく情報を、次の区間に含ませるようにしてDSV制御を行うことができる。
【0161】
図10は、特殊演算区間からなる制御区間の例を示す図である。
【0162】
図10の例においては、制御区間の全てが特殊演算区間とされている。各制御区間に挿入される情報ビットのすべてが特殊ビットになる。図9の説明と重複する説明については適宜省略する。
【0163】
図10の4段目に示すように、ある制御区切りBと次の制御区切りBの間の区間が特殊演算区間Wとされる。図10の例の場合、制御区切りB10(図示せず)と次の制御区切りB11の間の区間が特殊演算区間W11とされ、制御区切りB11と次の制御区切りB12の間の区間が特殊演算区間W12とされている。また、制御区切りB12と次の制御区切りB13の間の区間が特殊演算区間W13とされている。このようにして設定された特殊演算区間Wの情報が、制御区間決定部15から特殊演算部31に供給される。
【0164】
特殊ビットは、対象の特殊演算区間外に配置されている。例えば特殊演算区間W11を対象とする特殊ビットは、特殊ビットS11として、特殊演算区間W11の外側であって、それより後の特殊演算区間W12内に配置される。同様に、特殊演算区間W12を対象とする特殊ビットは、特殊ビットS12として、特殊演算区間W12の外側であって、それより後の特殊演算区間W13内に配置される。
【0165】
図11は、特殊演算区間からなる制御区間の他の例を示す図である。
【0166】
図11の例においては、制御区間の全てが特殊演算区間とされている。各制御区間に挿入される情報ビットのすべてが特殊ビットになる。図10の例においては特殊ビットが対象の特殊演算区間外に配置されているが、図11の例においては、特殊ビットが対象の特殊演算区間内に配置されている。図10の説明と重複する説明については適宜省略する。
【0167】
すなわち、図11の4段目に示すように、特殊演算区間W12を対象とする特殊ビットは、特殊ビットS11として特殊演算区間W12内に配置される。同様に、特殊演算区間W13を対象とする特殊ビットは、特殊ビットS12として特殊演算区間W13内に配置される。
【0168】
このように、特殊ビットの挿入位置は、対象とする特殊演算区間内の位置であってもよいし、区間外の位置であってもよい。
【0169】
図10または図11に示すように特殊ビットだけが挿入された記録符号列を生成するデータ変調装置1の構成は、図12に示すような構成にすることも可能である。図12に示すデータ変調装置1の構成は、図5のDSV制御部22を省略した構成になっている。NRZI化部14においてNRZI化されたチャネルビット列は、記録符号列としてそのまま外部に出力されるとともに特殊演算部31に供給され、特殊ビットの値を決定するのに用いられる。
【0170】
図13は、DSV制御区間と特殊演算区間からなる制御区間の例を示す図である。
【0171】
図13の例においては、情報ビットのうちの一部が特殊ビットに置き換えられ、残りがDSVビットのままとされている。
【0172】
例えば、連続する制御区切りBが1個置きに選択され、選択された制御区切りBの間の区間がDSV制御区間とされる。また、DSV制御区間の制御区切りBとして選択されたものとは異なる制御区切りBが1個置きに選択され、選択された制御区切りBの間の区間が特殊演算区間とされる。
【0173】
図13の例においては、制御区切りB21と、次の制御区切りB22を置いてさらに次の制御区切りB23との間の区間がDSV制御区間W22とされ、制御区切りB23と、次の制御区切りB24を置いてさらに次の制御区切りB25(図示せず)との間の区間が次のDSV制御区間W23とされている。
【0174】
また、制御区切りB20(図示せず)と、次の制御区切りB21を置いてさらに次の制御区切りB22との間の区間が特殊演算区間W31とされ、制御区切りB22と、次の制御区切りB23を置いてさらに次の制御区切りB24との間の区間が次の特殊演算区間W32とされている。
【0175】
このようにして設定されたDSV制御区間Wの情報が制御区間決定部15からDSV演算部41に供給され、特殊演算区間Wの情報が制御区間決定部15から特殊演算部31に供給される。
【0176】
DSVビットは、演算対象とされるDSV制御区間内に配置される。例えばDSV制御区間W22を対象としたDSV演算の結果として得られたDSVは、DSVビットD21としてDSV制御区間W22内に配置される。同様に、DSV制御区間W23を対象としたDSV演算の結果として得られたDSVは、DSVビットD22としてDSV制御区間W23内に配置される。
【0177】
これに対して、特殊ビットは、対象とする特殊演算区間外に配置される。例えば特殊演算区間W31を対象とする特殊ビットは、特殊ビットS21として、特殊演算区間W31の外側であって、それより後の特殊演算区間W32内に配置される。同様に、特殊演算区間W32を対象とする特殊ビットは、特殊ビットS22として、特殊演算区間W32の外側であって、それより後の特殊演算区間W33内に配置される。
【0178】
図13の例においては、DSV制御区間と特殊演算区間が重ならないように設定される。
【0179】
図14は、DSV制御区間と特殊演算区間からなる制御区間の他の例を示す図である。
【0180】
図14の例においても、図13と同様に、情報ビットのうちの一部が特殊ビットに置き換えられ、残りがDSVビットのままとされている。
【0181】
例えば、連続する制御区切りBが1個置きに選択され、選択された制御区切りBの間の区間がDSV制御区間とされるとともに、同じ区間が、特殊演算区間とされる。
【0182】
図14の例においては、制御区切りB41と、次の制御区切りB42を置いてさらに次の制御区切りB43との間の区間がDSV制御区間W42とされるとともに特殊演算区間W52とされる。同様に、制御区切りB43と、次の制御区切りB44を置いてさらに次の制御区切りB45(図示せず)との間の区間が次のDSV制御区間W43とされるとともに特殊演算区間W53とされる。
【0183】
このようにして設定されたDSV制御区間Wの情報が制御区間決定部15からDSV演算部41に供給され、特殊演算区間Wの情報が制御区間決定部15から特殊演算部31に供給される。
【0184】
DSVビットは、演算対象とされるDSV制御区間内に配置される。例えばDSV制御区間W42を対象としたDSV演算の結果として得られたDSVは、DSVビットD41として、DSV制御区間W42内に配置される。同様に、DSV制御区間W43を対象としたDSV演算の結果として得られたDSVは、DSVビットD42として、DSV制御区間W43内に配置される。
【0185】
これに対して、特殊ビットは、対象とする特殊演算区間外に配置される。例えば特殊演算区間W51を対象とする特殊ビットは、特殊ビットS41として、特殊演算区間W51の外側であって、それより後の特殊演算区間W52内に配置される。同様に、特殊演算区間W52を対象とする特殊ビットは、特殊ビットS42として、特殊演算区間W52の外側であって、それより後の特殊演算区間W53内に配置される。
【0186】
図14の例においては、DSV制御区間と特殊演算区間が重なるように設定される。また、図14の例においては、対象とする特殊演算区間に対して、特殊ビットの挿入位置が、図13の場合と比較してより後方に配置される。
【0187】
図14の方式によれば、DSV制御区間Wと特殊演算区間Wが同じ制御区切りBを基準として設定されるため、ハードウェア構成の簡易化を図ることができる。
【0188】
なお、図14の例ではDSVビットDの近傍の制御区切りBを制御区間の区切りとしたが、特殊ビットSの近傍の制御区切りBを区切りとして制御区間を設定することもできる。
【0189】
以上の構成によって、図2の変調テーブルを用いて記録符号列を生成することができる。また、DSVビットを所定間隔で配置することがシステムのフォーマットとして予め決められている場合においても、直流成分の抑圧が必要なくなったときは、DSVビットの挿入位置にDSVビットに代えて特殊ビットを埋め込んで記録を行うができる。
【0190】
さらに、直流成分の抑圧が必要である場合であっても、システムのフォーマットとして予め決められている程度にまで直流成分の抑圧が必要なくなったときは、所定間隔で配置されるDSVビットの一部を特殊ビットに置き換えることができる。
【0191】
これにより、特殊ビットの値に応じた信号処理を復調側の装置において行わせることができ、特殊ビットを用いて適切な処理を指定しておくことによって、復調側の装置における再生特性をより安定させることが可能になる。
【0192】
さらに、DSVビットの全部または一部を特殊ビットに置き換えるだけなので、本実施の形態によって記録された記録媒体を再生する復調側の装置が、例えば特殊ビットを埋め込んだフォーマットに対応していない場合でもエラーが発生することがない。すなわち、互換性を有する再生処理を行うことができる。
【0193】
図15は、DSV制御区間と特殊演算区間からなる制御区間のさらに他の例を示す図である。
【0194】
図15の例においても、図14の場合と同様に、ある制御区切りBと次の制御区切りBの間の区間がDSV制御区間とされるとともに、同じ区間が特殊演算区間とされる。
【0195】
図15の例においては、制御区切りB61と次の制御区切りB62の間の区間がDSV制御区間W62とされるとともに特殊演算区間W72とされる。同様に、制御区切りB62と次の制御区切りB63の間の区間が次のDSV制御区間W63とされるとともに特殊演算区間W73とされる。このようにして設定されたDSV制御区間Wの情報が制御区間決定部15からDSV演算部41に供給され、特殊演算区間Wの情報が制御区間決定部15から特殊演算部31に供給される。
【0196】
DSVビットは、演算対象とされるDSV制御区間内に配置される。例えばDSV制御区間W62を対象としたDSV演算の結果として得られたDSVは、DSVビットD61としてDSV制御区間W62内に配置され、同様に、DSV制御区間W63を対象としたDSV演算の結果として得られたDSVは、DSVビットD62としてDSV制御区間W63内に配置される。
【0197】
これに対して、特殊ビットは、対象とする特殊演算区間外にまとめて配置される。例えば特殊演算区間W71,W72,W73をそれぞれ対象とする特殊ビットS61,S62,S63等は、データ列の最後にまとめて配置されている。このように、複数の特殊ビットをまとめて配置することも可能である。
【0198】
<第2の実施の形態>
[データ変調装置の構成]
図16は、データ変調装置の他の構成例を示すブロック図である。
【0199】
図16のデータ変調装置1においては、特殊情報処理制御部17から同期信号挿入部13に対して、特殊ビットの挿入を行っているか否かを表す情報が供給されるようになされている点で、図5のデータ変調装置1と異なる。
【0200】
図16の同期信号挿入部13は、特殊情報処理制御部17から供給された情報に基づいて付加情報を含む同期信号を生成し、データ変換部12に出力する。
【0201】
同期信号挿入部13により生成される同期信号は、たとえば30チャネルビットを与えてある。30チャネルビットのうちの24チャネルビットのパターンは、次のように、図5の同期信号挿入部13が生成する24チャネルビットのパターンと同じものである。
----
#01 001 000 000 001 000 000 001 (24 channel bits)
# = 0 not terminate case
# = 1 terminate case
----
【0202】
図16の同期信号挿入部13が生成する30チャネルビットの同期信号には、上のパターンを有する24チャネルビット以外に、6チャネルビットが付加情報として含まれる。この付加情報はたとえば、システムのために複数種類の同期信号を持つために用いたり、あるいは他の目的の識別のために用いることができる。この付加された6チャネルビットを用いて、DSVビットの全部または一部が特殊ビットに置き換えられているか否か、すなわち、データ列中に特殊ビットが含まれているか否かが記述される。
【0203】
また、適宜、6チャネルビットを用いて特殊ビット自体が記述される。このように、特殊ビットを同期信号中に配置することも可能である。同期信号中に特殊ビットが挿入されることにより、復調側の装置においては、同期信号に続くチャネルビットの処理を、同期信号に含まれる特殊ビットの値に応じて切り替えることが可能になる。
【0204】
このような6チャネルビットの付加情報によって、例えば次のような、より複雑な順序としたDSVビットと特殊ビットの構成が実現できる。
DSVビット−特殊ビット−特殊ビット−DSVビット−特殊ビット−特殊ビット−DSVビット・・・
この場合、DSVビットと特殊ビットの並びについて、エンコーダ(データ変調装置)側とデコーダ(データ復調装置)側とでルールが予め決められる。
【0205】
さらに、付加情報として、制御区切りの手法について特定のパターンを記述することができる。例えば、上述したように、データに挿入された情報ビットの位置を基準として、情報ビットから一定のビット数だけ前のビットの直後の位置に制御区切りBを設定するような記述を含めることができる。この場合、固定にした区切り以降のチャネルビットに基づく情報を付加情報とすることができる。これにより、より確実に記録再生処理が行うことができる。
【0206】
このようにして、図2の変調テーブルの規則を守ったまま、通常と異なる情報を付加することができる。
【0207】
図16のその他の構成と動作は、対応する図5の構成と同様である。重複する説明については省略する。
【0208】
<第3の実施の形態>
[データ変調装置の構成]
図17は、本発明の一実施形態に係るデータ変調装置のさらに他の構成例を示すブロック図である。
【0209】
図17の例においては、情報ビットの挿入位置を指示する制御情報が特殊情報処理制御部17に対して外部から入力される。制御情報は例えばユーザによる操作に応じて入力される。また、図17の例においては、情報ビット決定部16はDSV制御部22のみから構成される。他の構成は、図3を参照して説明した構成と同じ構成である。
【0210】
情報ビット挿入部11は、特殊情報処理制御部17による制御に従って、入力データ列に所定の間隔で情報ビットを挿入する。情報ビット挿入部11により挿入される情報ビットは、特殊ビットまたはDSVビットである。
【0211】
例えば、情報ビット挿入部11は、FS区間毎に、先頭の制御区間を1番目の制御区間として、奇数番目の制御区間にDSVビットを挿入し、偶数番目の制御区間に特殊ビットを挿入する。どの制御区間にDSVビットを挿入し、特殊ビットを挿入するのかが、制御情報により指定される。
【0212】
情報ビット挿入部11は、情報ビットを挿入したデータ列をデータ変換部12に出力する。
【0213】
データ変換部12は、情報ビット挿入部11から供給されたデータをチャネルビット列に変換する。また、データ変換部12は、情報ビット挿入部11から供給されたチャネルビット列と同期信号挿入部13から供給された同期信号を合成し、NRZI化部14に出力する。
【0214】
同期信号挿入部13は、入力データ列に同期して同期信号を生成し、データ変換部12に出力する。特殊ビットが挿入されているか否かを表す付加情報が同期信号に含まれるようにしてもよい。
【0215】
NRZI化部14は、データ変換部12から供給されたチャネルビット列をNRZI化し、NRZI化することによって得られたレベル符号を、制御区間決定部15と、情報ビット決定部16のDSV制御部22に出力する。
【0216】
制御区間決定部15は、NRZI化部14から供給されたレベル符号に関する情報と、データ変換部12から供給された、データをチャネルビットに変換した時の可変長に関する情報に基づいてDSV制御区間を設定する。制御区間決定部15は、設定したDSV制御区間の情報を情報ビット決定部16に出力する。
【0217】
DSV制御部22は、制御区間決定部15により設定されたDSV制御区間のチャネルビットに基づいてDSV演算を行う。DSV制御部22は、NRZI化部14から入力されたレベル符号に基づいて、DSVビットとして0の値を含むレベル符号と1の値を含むレベル符号を生成し、一方を選択して記録符号列として出力する。
【0218】
[変形例]
以上においては、EQ処理、PRML処理、フィルタリング処理の内容が特殊ビットの値により指定されるものとしたが、他の処理の内容が特殊ビットにより指定されるようにしても良い。
【0219】
また、以上においては、1ビットの特殊ビットによって、対象の特殊演算区間の信号処理の内容が指定されるものとしたが、複数ビットの特殊ビットによって、対象の特殊演算区間の信号処理の内容が指定されるようにしてもよい。例えば、2ビットの特殊ビットを用いて信号処理の内容を指定する場合、2ビットの特殊ビットの組み合わせによって4種類の処理を指定することが可能になる。このとき2ビットの位置は、あらかじめ定めた所定位置とし、例えばSYNCから最初の特殊ビットと、その次に現れる特殊ビットを合わせて2ビットとすることができる。
【0220】
さらに、以上においては、それぞれに特殊演算区間に対して1ビットの特殊ビットが挿入されるものとしたが、FS区間全体を対象とする特殊ビットが挿入されるようにしてもよい。また、図4を参照して説明したブロック単位のデータ全体を対象とする特殊ビットが挿入されるようにしてもよい。
【0221】
本発明は、ブルーレイディスクレコーダ、その他、記録媒体にデータを記録する装置に適用することができる。
【0222】
[コンピュータの構成例]
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
【0223】
図18は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0224】
CPU(Central Processing Unit)201,ROM(Read Only Memory)202,RAM(Random Access Memory)203は、バス204により相互に接続されている。
【0225】
バス204には、さらに、入出力インタフェース205が接続されている。入出力インタフェース205には、入力部206、出力部207、記憶部208、通信部209、及びドライブ210が接続されている。
【0226】
入力部206は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部207は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部208は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部209は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ210は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア211を駆動する。
【0227】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU201が、例えば、記憶部208に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース205及びバス204を介して、RAM203にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0228】
コンピュータ(CPU201)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア211に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0229】
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア211をドライブ210に装着することにより、入出力インタフェース205を介して、記憶部208にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部209で受信し、記憶部208にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM202や記憶部208に、予めインストールしておくことができる。
【0230】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0231】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0232】
1 データ変調装置, 11 情報ビット挿入部, 12 データ変換部, 13 同期信号挿入部, 14 NRZI化部, 15 制御区間決定部, 16 情報ビット決定部, 21 特殊情報制御部, 22 DSV制御部, 31 特殊演算部, 32 挿入制御部, 41 DSV演算部, 42 記録符号列決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調対象として入力されたデータ列に、対象とする区間内のデータを復調するときの信号処理の内容を表す値を有する特殊ビットを挿入する挿入手段と、
前記特殊ビットが挿入された前記データ列を、可変長変換規則を有する変調テーブルに従ってRLL符号列に変換する変換手段と、
前記RLL符号列に制御区間を設定する設定手段と、
前記制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す値を前記特殊ビットの値として決定する制御手段と
を備えるデータ変調装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記制御区間内の前記RLL符号に基づいて、前記制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す値を前記特殊ビットの値として決定する
請求項1に記載のデータ変調装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記制御区間として第1の制御区間と第2の制御区間をそれぞれ前記RLL符号列に設定し、
前記制御手段は、前記第1の制御区間内の前記RLL符号に基づいて、前記第1の制御区間内の前記RLL符号のDSV制御に用いられるDSVビットの値を決定し、
前記第2の制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す前記特殊ビットの値を決定し、
前記挿入手段は、前記DSVビットの挿入位置として一定の間隔で前記データ列に設定される位置のうちの少なくとも一部の位置に前記特殊ビットを挿入し、他の位置に前記DSVビットを挿入する
請求項1に記載のデータ変調装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第2の制御区間内の前記RLL符号に基づいて、前記第2の制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す前記特殊ビットの値を決定する
請求項3に記載のデータ変調装置。
【請求項5】
前記RLL符号が記録媒体に記録される場合、
前記制御手段は、前記第2の制御区間内の前記RLL符号の前記記録媒体における記録位置に応じて、前記特殊ビットの値を変える
請求項3に記載のデータ変調装置。
【請求項6】
前記RLL符号が記録媒体に記録される場合、
前記制御手段は、前記制御区間内の前記RLL符号の前記記録媒体における記録位置に応じて、前記特殊ビットの値を変える
請求項1に記載のデータ変調装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第2の制御区間の前記RLL符号の0の連続または1の連続を解析し、最小ランの発生回数が閾値より多いか否かに応じて前記特殊ビットの値を変える
請求項3に記載のデータ変調装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記制御区間の前記RLL符号の0の連続または1の連続を解析し、最小ランの発生回数が閾値より多いか否かに応じて前記特殊ビットの値を変える
請求項1に記載のデータ変調装置。
【請求項9】
前記データ列に前記特殊ビットが挿入されているか否かを表す識別情報を含む同期信号
を生成する同期信号生成手段をさらに備え、
前記変換手段は、前記RLL符号列に前記同期信号を合成する
請求項1に記載のデータ変調装置。
【請求項10】
変調対象として入力されたデータ列に、対象とする区間内のデータを復調するときの信号処理の内容を表す値を有する特殊ビットを挿入し、
前記特殊ビットが挿入された前記データ列を、可変長変換規則を有する変調テーブルに従ってRLL符号列に変換し、
前記RLL符号列に制御区間を設定し、
前記制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す値を前記特殊ビットの値として決定する
ステップを含むデータ変調方法。
【請求項11】
変調対象として入力されたデータ列に、対象とする区間内のデータを復調するときの信号処理の内容を表す値を有する特殊ビットを挿入し、
前記特殊ビットが挿入された前記データ列を、可変長変換規則を有する変調テーブルに従ってRLL符号列に変換し、
前記RLL符号列に制御区間を設定し、
前記制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す値を前記特殊ビットの値として決定する
ステップを含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項12】
変調対象として入力されたデータ列に、対象とする区間内のデータを復調するときの信号処理の内容を表す値を有する特殊ビットを挿入し、
前記特殊ビットが挿入された前記データ列を、可変長変換規則を有する変調テーブルに従ってRLL符号列に変換し、
前記RLL符号列に制御区間を設定し、
前記制御区間内の前記RLL符号をデータに復調するときの信号処理の内容を表す値を前記特殊ビットの値として決定する
ことによって生成された記録符号列が記録された記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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