説明

データ消失復帰装置

【課題】消失したデータを修復することができる小規模な回路規模のデータ消失復帰装置を提供する。
【解決手段】消失検知回路部35から制御ロジック回路部31にエラー信号が入力されると制御ロジック回路部31はウェイクアップする。この後、制御ロジック回路部31は外部メモリ2に記憶されたメモリデータを読み出す。そして、制御ロジック回路部31は、読み出したメモリデータを用いて予め決められた演算式に従ってエラー検出用データを生成し、生成したエラー検出用データと外部メモリ2から読み出したメモリデータをデータ保持レジスタ34に記憶する。そして、メモリデータがデータ保持レジスタ34に記憶されたことにより、消失検知回路部35からエラー信号が入力されなくなると、制御ロジック回路部31はスリープ状態に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源の瞬間停止等により消失したデータを復帰させるデータ消失復帰装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、データの消失を検知して該データを修復する自動修復装置が、例えば特許文献1で提案されている。この自動修復装置では、バックアップ電池付き揮発性半導体メモリに書き込まれているバックアップデータが破損しているか否かが検査される。そして、バックアップデータの破損が発見されたときには、不揮発性記憶手段に書き込まれているバックアップデータが読み出されて、バックアップ電池付き揮発性半導体メモリに書き込まれる。これにより、バックアップデータが修復されるようになっている。
【特許文献1】特開2002−366450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の技術では、バックアップ電池をバックアップ電源として用いている。電池を使わずにコンデンサによるバックアップで十分な処理を行うためには大容量のコンデンサが必要となり、自動修復装置の回路規模が大きくなってしまうという問題がある。また、上記従来技術では検査に複数の手順を踏んでおり、同様のことを発振を止めた状態で行うことは難しく、発振によるノイズの影響を考慮しなくてはいけないシステムでは問題となる。
【0004】
本発明は、上記点に鑑み、小規模な回路規模により、消失したデータを短時間で検知、修復することができるデータ消失復帰装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、外部メモリ(2)に記憶されたメモリデータを読み出し、予め決められた演算式に従ってメモリデータからエラー検出用データを生成する制御手段(31)と、制御手段(31)によってメモリデータとエラー検出用データとが書き込まれるデータ保持手段(34)と、データ保持手段(34)に保持されたメモリデータとエラー検出用データとを読み出し、制御手段(31)にて用いられたものと同じ予め決められた演算式に従ってデータ保持手段(34)から読み出したメモリデータから検知用データを生成し、検知用データとデータ保持手段(34)から読み出したエラー検出用データとを比較して一致しなかったときには、データ保持手段(34)に記憶されたメモリデータが消失しているとしてエラー信号を出力する消失検知手段(35)とを備えたデータ消失復帰装置であって、制御手段(31)は、通常はスリープ状態になっており、消失検知手段(35)からエラー信号が入力されている間にスリープ状態を解除して強制的にウェイクアップし、外部メモリ(2)からメモリデータを読み出すと共に予め決められた演算式に従ってエラー検出用データを生成した後、メモリデータとエラー検出用データとをデータ保持手段(34)に書き込むことにより、データ保持手段(34)で消失したメモリデータをデータ保持手段(34)に復帰させることを特徴とする。
【0006】
このように、データ消失復帰装置の内部に外部メモリ(2)を備えずに、外部の外部メモリ(2)からメモリデータを読み出す構成とする。これにより、内部の外部メモリ(2)が必要なくなるため、データ消失復帰装置の回路規模を小さくすることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、外部メモリ(2)には、同じ内容を示す複数のメモリデータが異なる記憶領域にそれぞれ記憶されており、制御手段(31)は、消失検知手段(35)からエラー信号が入力されると制御手段(31)を強制的にウェイクアップするウェイクアップ手段(100)と、制御手段(31)のウェイクアップ後に、外部メモリ(2)において異なる記憶領域にそれぞれ記憶された同じ内容のメモリデータをそれぞれ読み出す読み出し手段(110〜130)と、外部メモリ(2)から読み出した複数個の同じ内容を示すメモリデータがそれぞれ一致しているか否かを判定する判定手段(140)と、複数個の同じ内容を示すメモリデータが一致していたときには、該一致したメモリデータを用いて予め決められた演算式に従ってエラー検出用データを生成し、生成したエラー検出用データと外部メモリ(2)から読み出したメモリデータとをデータ保持手段(34)に記憶する記憶手段(150)と、記憶手段(150)によってメモリデータがデータ保持手段(34)に記憶されたことにより、消失検知手段(35)からエラー信号が入力されなくなると、制御手段(31)をスリープ状態に戻すスリープ手段(160)とを備えていることを特徴とする。
【0008】
これにより、制御手段(31)がスリープ状態になっていたとしても、制御手段(31)をウェイクアップさせ、外部メモリ(2)からメモリデータを読み出してデータ保持手段(34)に記憶することができる。
【0009】
また、制御手段(31)自身がエラー信号を受けてデータ保持手段(34)のメモリデータを復帰させている。このため、制御手段(31)がデータ消失復帰装置の外部からの指令を受けてメモリデータの復帰を行う場合よりも復帰時間を短くすることができる。これにより、データ保持手段(34)のメモリデータが壊れた際に、短時間で修復しなくてはいけないような場合に素早く対応することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明のように、予め決められた演算式として、メモリデータからパリティを生成する方式を採用することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明のように、予め決められた演算式として、メモリデータからCRCを生成する方式を採用することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明のように、予め決められた演算式として、メモリデータからチェックサムを生成する方式を採用することもできる。
【0013】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態で示されるデータ消失復帰装置は、例えば、センサから信号を受け取り、該信号の信号処理を行って他の機器に出力するものとして用いられる。
【0016】
図1は、本実施形態に係るデータ消失復帰装置を含んだデータ消失復帰システムの全体図である。この図に示されるように、データ消失復帰システムは、センサ1と、外部メモリ2と、データ消失復帰装置3とを備えている。このシステムは、例えば1つのパッケージとして構成されている。
【0017】
センサ1は、所望の物理量を検出するものである。センサ1は、検出した物理量に応じた検出信号をデータ消失復帰装置3に入力する。センサ1としては、例えば圧力センサが採用される。
【0018】
外部メモリ2は、データを記憶保持しておくための不揮発性メモリである。外部メモリ2はデータ消失復帰装置3に接続されており、外部メモリ2に記憶されたデータがデータ消失復帰装置3に読み出されるようになっている。
【0019】
この外部メモリ2には、上記検出信号に対して信号処理を行うためのオフセット値や温度特性の補正値等の調整値を表すメモリデータが記憶されている。本実施形態では、メモリデータは例えば10bitのデータである。また、外部メモリ2には、ECU等の外部機器で用いられるその他のデータも記憶されている。
【0020】
この外部メモリ2には、同じ内容を示す複数のデータが異なる記憶領域にそれぞれ記憶されている。したがって、メモリデータについても同様に、同じ内容を示す複数のメモリデータが異なる記憶領域にそれぞれ記憶されている。本実施形態では、同じ内容を示す3つのメモリデータがそれぞれ異なる記憶領域に記憶されている。このような外部メモリ2の容量は、記憶される調整値の容量にもよるが、例えば2KBである。
【0021】
データ消失復帰装置3は、センサ1から検出信号を入力し、外部メモリ2からメモリデータを読み出して、該メモリデータに基づいて検出信号の信号処理を行うものである。また、データ消失復帰装置3は、外部メモリ2から読み出したメモリデータが、電源の瞬間停止等により消失したときに該メモリデータを自己修復する機能も有する。このようなデータ消失復帰装置3は、例えば5V電源およびGNDに接続されることで動作するようになっている。
【0022】
上記データ消失復帰装置3は、発振制御部10と、通信ドライバ20と、通信処理部30と、調整DAC回路部40と、センサ処理部50とを備えている。
【0023】
発振制御部10は、通信処理部30で利用されるクロックを生成するものである。このため、発振制御部10は発振素子としてのセラロック11を備えている。発振制御部10は、通信処理部30が稼動する際に通信処理部30からクロック生成の指令を受けたときセラロック11を発振させてクロックを生成する。
【0024】
通信処理部30がクロック生成の指令を出す場合は、通信処理部30が外部メモリ2からメモリデータを読み出すときや、外部機器がデータ消失復帰装置3を介して外部メモリ2のデータを読み出すときである。また、発振制御部10は、センサ処理部50で信号処理が行われている間はクロック生成を行っていない。これは、発振制御部10のクロック生成の動作がノイズとなってセンサ処理部50の信号処理に影響を与えるためである。
【0025】
通信ドライバ20は、データ消失復帰装置3がECU等の外部機器と通信するための通信手段である。通信ドライバ20は通信ラインを介して外部機器と接続されており、外部機器からの指令を通信処理部30に入力する。
【0026】
通信処理部30は、外部メモリ2に記憶された調整値を表すメモリデータをクロックに従って読み出して調整DAC回路部40に入力するものである。また、通信処理部30は、通信ドライバ20を介して外部機器から外部メモリ2に記憶されたデータの読み出しの指令を受けたとき、外部メモリ2からデータを読み出し、通信ドライバ20を介して読み出したデータを外部機器に出力する。この通信処理部30の構成については後で詳しく説明する。
【0027】
調整DAC回路部40は、通信処理部30から入力された調整値を表すメモリデータをデジタル信号からアナログ信号に変換し、センサ処理部50に入力するものである。
【0028】
センサ処理部50は、調整DAC回路部40から入力された調整値を表すアナログ信号としてのメモリデータに基づいて、センサ1から入力した検出信号の信号処理を行うものである。センサ処理部50は、信号処理した検出信号をセンサ出力として外部機器に出力する。
【0029】
以上が、データ消失復帰装置3の全体構成である。図1に示される構成では、データ消失復帰装置3が外部と通信を行っている間のみ、クロックが発振されて外部メモリ2へのアクセスが可能となり、センサ1の調整値が調整DAC回路部40に保持される。また、データ消失復帰装置3からセンサ出力が出力されている間はノイズ対策のために発振制御部10の発振が停止されて全てのロジックがスリープ状態になる。
【0030】
次に、上記データ消失復帰装置3のうち通信処理部30の構成について説明する。図2は、上記通信処理部30の構成を示したブロック図である。
【0031】
通信処理部30は、上述のように、外部メモリ2からメモリデータを読み出して調整DAC回路部40に入力する機能を有する。さらに、通信処理部30は、外部メモリ2から読み出したメモリデータが消失していないか常に判定し、消失している場合にはメモリデータを自己修復する機能を有している。
【0032】
このような通信処理部30は、制御ロジック回路部31と、記憶保持回路部32と、OR回路33とを備えている。記憶保持回路部32は、データ保持レジスタ34と消失検知回路部35とを備えている。
【0033】
制御ロジック回路部31は、外部メモリ2に記憶されたメモリデータを読み出し、記憶保持回路部32のデータ保持レジスタ34に記憶するものである。具体的には、制御ロジック回路部31は、予め決められた演算式に従ってメモリデータからエラー検出用データを生成し、外部メモリ2から読み出したメモリデータと生成したエラー検出用データとを記憶保持回路部32のデータ保持レジスタ34にそれぞれ記憶する。
【0034】
ここで、予め決められた演算式は、メモリデータからエラー検出用データとしてパリティを生成する演算式である。本実施形態では、1つのメモリデータが10bitであり、この10bitのメモリデータに対して2bitのパリティP0、P1が生成される。
【0035】
パリティP0は、P0=「0bit目の数値」^「2bit目の数値」^「4bit目の数値」^「6bit目の数値」^「8bit目の数値」により演算される。また、パリティP1は、P1=「1bit目の数値」^「3bit目の数値」^「5bit目の数値」^「7bit目の数値」^「9bit目の数値」により演算される。各式中の「^」の記号は排他的論理和を表し、0または1の各数値の排他的論理和を演算することを示している。
【0036】
また、制御ロジック回路部31は、通常はスリープ状態になっており、記憶保持回路部32に記憶されたメモリデータが消失したことを示すエラー信号が入力されると、該エラー信号が入力されている間にスリープ状態を解除して強制的にウェイクアップする。そして、上記のように再び外部メモリ2からメモリデータを読み出してデータ保持レジスタ34に記憶する。これにより、データ保持レジスタ34で消失したメモリデータをデータ保持レジスタ34に復帰させる。
【0037】
記憶保持回路部32は、制御ロジック回路部31からメモリデータおよびエラー検出用データが書き込まれる記憶保持手段である。この記憶保持回路部32は、通信処理部30に複数備えられており、各記憶保持回路部32にそれぞれ異なる調整値が記憶されている。すなわち、記憶保持回路部32は、調整値ごとに設けられている。各記憶保持回路部32の構成は共通しており、図2では1つの記憶保持回路部32のみを示してある。
【0038】
記憶保持回路部32に備えられたデータ保持レジスタ34は、10bitのメモリデータと2bitのエラー検出用データ(パリティP0、P1)を記憶するレジストである。このデータ保持レジスタ34は、例えばフリップフロップにより構成されている。したがって、データ保持レジスタ34に電源が供給されている間はメモリデータを保持できるが、電源の供給が停止あるいは一定値以上電圧低下するとメモリデータを保持できずに消失する。なお、データ消失復帰装置3のリセット時(電源の供給停止からの復帰時はリセットと同じ)には、データ保持レジスタ34にはデフォルト値が入力される。
【0039】
消失検知回路部35は、データ保持レジスタ34に記憶されたメモリデータが、電源の瞬間的な停止等により消失していないかを検知するものである。このため、消失検知回路部35は、制御ロジック回路部31にて用いられたものと同じ予め決められた演算式に従ってデータ保持レジスタ34から読み出したメモリデータから検知用データを生成する。つまり、10bitのメモリデータのパリティP0’、P1’を上記と同様にそれぞれ演算する。
【0040】
具体的には、パリティP0’は、データ保持レジスタ34に記憶されたメモリデータの0bit目の数値、2bit目の数値、4bit目の数値、6bit目の数値、8bit目の数値を用いて排他的論理和が演算される。また、パリティP1’は、データ保持レジスタ34に記憶されたメモリデータの1bit目の数値、3bit目の数値、5bit目の数値、7bit目の数値、9bit目の数値を用いて排他的論理和が演算される。
【0041】
また、消失検知回路部35は、データ保持レジスタ34に記憶されたメモリデータと検知用データとを比較してその結果を出力するために、2つのコンパレータ36、37と、OR回路38とを備えている。
【0042】
コンパレータ36は、消失検知回路部35で取得されたパリティP0’とデータ保持レジスタ34に記憶された制御ロジック回路部31で取得されたパリティP0とを比較し、一致しなかったときにはエラーフラグを出力する。
【0043】
コンパレータ37は、消失検知回路部35で取得されたパリティP1’とデータ保持レジスタ34に記憶された制御ロジック回路部31で取得されたパリティP1とを比較し、一致しなかったときにはエラーフラグを出力する。
【0044】
OR回路38は、各コンパレータ36、37のうち少なくとも一方からエラーフラグを入力したときには、データ保持レジスタ34に記憶されたメモリデータが消失しているとしてエラーフラグを出力する。
【0045】
OR回路33は、各記憶保持回路部32の消失検知回路部35のOR回路38の出力をそれぞれ入力し、各消失検知回路部35のうち少なくとも1つからエラーフラグを入力したときには制御ロジック回路部31にエラー信号を入力するものである。
【0046】
以上が本実施形態に係るデータ消失復帰システムの全体構成である。
【0047】
次に、データ消失復帰装置3に供給されている電源が瞬間的に停止する等によりデータ保持レジスタ34に記憶されたメモリデータが消失した場合、制御ロジック回路部31がデータ保持レジスタ34に該メモリデータを復帰させる方法について説明する。
【0048】
図3は、通信処理部30の制御ロジック回路部31が、消失したデータ保持レジスタ34のメモリデータを復帰させる内容を示したフローチャートである。上述のように、制御ロジック回路部31は、通常スリープ状態になっている。このようなスリープ状態の制御ロジック回路部31にOR回路33からエラー信号が入力されると、図3に示されるフローがスタートする。
【0049】
なお、図3のフローは、1つの記憶保持回路部32のデータ保持レジスタ34に対するメモリデータの修復について示されている。複数の記憶保持回路部32それぞれに対するメモリデータの修復は、以下のフローが並列に実行されることにより実現される。
【0050】
まず、ステップ100では、発振制御部10のセラロック11の発振が開始される。すなわち、制御ロジック回路部31が外部メモリ2からメモリデータを読み出すときにクロックを用いる。このため、消失検知回路部35から制御ロジック回路部31にエラー信号が入力されると、制御ロジック回路部31が強制的にウェイクアップされる。そして、制御ロジック回路部31から発振制御部10にセラロック11の発振を開始する指令が出される。これにより、発振制御部10から制御ロジック回路部31にクロックが入力される。以下、制御ロジック回路部31はクロックに従って信号の処理を行う。なお、本ステップを実行する手段は、本発明のウェイクアップ手段に相当する。
【0051】
ステップ110では、1回目のデータの読み出しが行われる。上述のように、外部メモリ2には同じ内容のメモリデータが異なる記憶領域に3つ記憶されている。本ステップでは、そのうちの1つが制御ロジック回路部31に読み出される。
【0052】
ステップ120では、2回目のデータの読み出しが行われる。すなわち、ステップ110で読み出されなかった他の記憶領域に記憶されているメモリデータが制御ロジック回路部31に読み出される。
【0053】
ステップ130では、3回目のデータの読み出しが行われる。本ステップでは、ステップ110、120で読み出されなかった残りの1つの記憶領域に記憶されているメモリデータが制御ロジック回路部31に読み出される。このようにして、同じ内容の3つのメモリデータが読み出される。なお、上記ステップ110〜130を実行する手段は、本発明の読み出し手段に相当する。
【0054】
続いて、ステップ140では、ステップ110〜130で読み出された各メモリデータが一致しているか否かが判定される。ここで、「一致しているか否か」の判定基準として多数決が採用される。すなわち、3つのメモリデータの多数決が取られ、2つ以上一致していれば一致していると判定される。もちろん、すべてのメモリデータが一致している場合も「2つ以上一致」に該当し、一致していると判定される。
【0055】
このように、外部メモリ2に同じ内容のメモリデータを3つ書き込んでおき、データ保持レジスタ34にメモリデータを書き込む際には多数決をすることで、メモリデータの信頼性を高めることができる。
【0056】
ステップ140にて一致していると判定された場合、ステップ150に進む。一方、2メモリデータが2つ以上一致しなかった場合にはステップ170に進む。なお、本ステップを実行する手段は、本発明の判定手段に相当する。
【0057】
ステップ150では、データ設定が行われる。このため、まず、外部メモリ2から制御ロジック回路部31に読み出され一致したと判定されたメモリデータからエラー検出用データが生成される。このエラー検出用データの生成は、予め決められた演算式に従って行われる。該予め決められた演算式は、上述のように、メモリデータからパリティP0、P1を生成する演算式である。
【0058】
そして、生成されたエラー検出用データと外部メモリ2から読み出したメモリデータとが制御ロジック回路部31から記憶保持回路部32のデータ保持レジスタ34に書き込まれ、記憶される。なお、本ステップを実行する手段は、本発明の記憶手段に相当する。
【0059】
ステップ160では、発振が停止される。すなわち、上記ステップ150によってデータ保持レジスタ34にメモリデータが記憶されたことにより、消失検知回路部35において制御ロジック回路部31で用いられた演算式と同じ演算式によって検知用データが生成される。つまり、データ保持レジスタ34に記憶されたメモリデータのパリティP0’、P1’が生成される。これにより、検知用データとエラー検出用データとが一致するため、各コンパレータ36、37やOR回路38からエラーフラグが出力されず、OR回路33からもエラー信号が出力されなくなる。したがって、消失検知回路部35から制御ロジック回路部31にエラー信号が入力されなくなる。
【0060】
制御ロジック回路部31は、エラー信号が入力されている間に強制的にウェイクアップさせられているため、制御ロジック回路部31にエラー信号が入力されなくなったことにより、制御ロジック回路部31はスリープ状態に戻る。つまり、制御ロジック回路部31ではクロックを用いた処理が行われないので、制御ロジック回路部31から発振制御部10にセラロック11の発振を停止する指令が出される。これにより、発振制御部10のクロック生成が停止する。なお、本ステップを実行する手段は、本発明のスリープ手段に相当する。以上のようにして、データ保持レジスタ34のメモリデータの修復処理が完了する。
【0061】
また、ステップ140でデータが一致しないと判定された場合、ステップ170では、不一致回数が一定数以上か否かが判定される。これは、データ読みだしの際にデータ消失復帰装置3における電圧が安定していなかった可能性があり、メモリデータの読み出しに失敗した可能性があるためである。したがって、ステップ140でデータが一致しないと判定された不一致の回数が一定数以上でなければ、再度読み出しを行うべくステップ110に戻る。なお、本ステップにおける一定数とは、例えば2回である。
【0062】
一方、不一致回数が一定数以上の場合には、メモリデータの修復は不可能であるとしてステップ180に進む。
【0063】
ステップ180では、報知処理が行われる。つまり、データ保持レジスタ34に対するメモリデータの修復ができないため、センサ処理部50における検出信号の信号処理も正しく行われなくなる。このため、異常が外部に知られるように、データ保持レジスタ34に異常データが書き込まれる。これにより、センサ処理部50から明らかに異常値を示すセンサ出力が出力され、外部に出力される。このようにして、外部にエラーが明確に伝えられる。
【0064】
この場合、消失検知回路部35から制御ロジック回路部31には常にエラー信号が入力されるため、制御ロジック回路部31はウェイクアップし続ける。
【0065】
なお、その後の処置に関しては、データ消失復帰装置3からセンサ出力を受け取った外部機器により判定される。例えば、外部機器がデータ消失復帰装置3から受け取ったセンサ出力を用いないで処理を行うとか、データ消失復帰装置3を交換する等である。
【0066】
以上説明したように、本実施形態では、制御ロジック回路部31によって外部メモリ2からメモリデータを読み出し、データ保持レジスタ34に記憶することが特徴となっている。また、データ保持レジスタ34に記憶したメモリデータが電源の瞬間的な停止等により消失した場合には、制御ロジック回路部31により再び外部メモリ2から読み出したメモリデータをデータ保持レジスタ34に記憶することが特徴となっている。
【0067】
これにより、データ消失復帰装置3にメモリデータが記憶された外部メモリ2を備えない構成とすることができる。したがって、データ消失復帰装置3内部に不揮発性メモリを設ける必要がなくなる。このため、データ消失復帰装置3の回路規模を小さくすることができる。
【0068】
データ消失復帰装置3が故障した場合には、該データ消失復帰装置3のみを交換することが可能となり、センサ1および外部メモリ2については交換することなく使用し続けることができる。このように、データ消失復帰装置3の汎用性を高めることができる。
【0069】
また、制御ロジック回路部31は、外部機器の指令を受けてデータ保持レジスタ34のメモリデータを修復しているのではなく、制御ロジック回路部31自身がエラー信号を入力することによって該メモリデータを修復している。したがって、制御ロジック回路部31が外部機器から指令を受けてメモリデータを修復させる場合よりも修復時間を短くすることができる。これにより、メモリデータが壊れた際に短時間で修復しなくてはいけないような場合に素早く対応することができる。
【0070】
例えば、ECU等の外部機器から指示を受けてメモリデータの修復を行う場合はmsのオーダーでメモリデータの修復が行われるが、制御ロジック回路部31がメモリデータを自己修復する場合はμsのオーダーでメモリデータの修復を行うことができる。このように、制御ロジック回路部31自身がメモリデータの修復を行うことにより、短時間で修復が可能となる。
【0071】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、制御ロジック回路部31が特許請求の範囲の制御手段に対応し、データ保持レジスタ34が特許請求の範囲のデータ保持手段に対応する。また、消失検知回路部35が特許請求の範囲の消失検知手段に対応する。
【0072】
また、図3中に示したステップは、機能を実現するための手段に対応するものであり、上記図3に示したフローチャートの各ステップをハードウェアとして構成することもできる。
【0073】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。図4は、本実施形態に係るデータ消失復帰装置3を含んだデータ消失復帰システムの全体図である。この図に示されるように、データ消失復帰装置3はクロックを生成するものとしてCR発振部60を備えている。
【0074】
このCR発振部60は、セラロック11を用いた発振制御部10よりも起動が速く、高速起動が可能である。したがって、第1実施形態よりもより速くメモリデータの修復を行うことができる。
【0075】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、複数のセンサ1から検出信号をそれぞれ入力し、信号処理を行ってセンサ出力することが特徴となっている。
【0076】
図5は、本実施形態に係るデータ消失復帰装置を含んだデータ消失復帰システムの全体図である。この図に示されるように、データ消失復帰装置3は、複数のセンサ1に対応したセンサ処理部50および調整DAC回路部40を備えている。通信ドライバ20および通信処理部30は各センサ処理部50および各調整DAC回路部40に対して共通になっている。
【0077】
複数のセンサ1は、異なる物理量をそれぞれ検出するものでも良いし、同じ物理量をそれぞれ検出するものでも良い。
【0078】
通信処理部30には、調整値の数に応じて記憶保持回路部32が設けられている。したがって、センサ1の数が増えたとしても、各センサ1に対応した調整値が外部メモリ2から読み出されて各データ保持レジスタ34にそれぞれ記憶される。
【0079】
外部メモリ2には、各センサ1に対する調整値のメモリデータが記憶されており、通信処理部30によって読み出されると共に、調整値に対応したセンサ1に係る調整DAC回路部40を介してセンサ処理部50に入力されて利用される。そして、各センサ処理部50からセンサ出力1〜3がそれぞれ出力されることとなる。
【0080】
このように、複数のセンサ1を使用する構成でさらに複数の調整値がある場合には、通信処理部30が共通になっている。このため、通信処理部30において各データ保持レジスタ34のメモリデータのいずれかが消失した場合、制御ロジック回路部31にエラー信号が入力されるため、各センサ1に対応したすべての調整値を再設定することとなる。あるいは、データ量が多い場合等は各センサ1に対応した調整値毎にグループにしてデータの消失を検知、再設定することも可能である。
【0081】
以上のように、複数のセンサ1に対するセンサ処理部50および調整DAC回路部40を1つのデータ消失復帰装置3にまとめることも可能である。
【0082】
(他の実施形態)
第1実施形態では、通信処理部30には複数の記憶保持回路部32が備えられていたが、1つでも構わない。この場合、記憶保持回路部32から出力されるエラーフラグがエラー信号として制御ロジック回路部31に入力されることとなる。
【0083】
第1、第2実施形態では、センサ1として圧力センサを例に説明したが、これは一例を示したものであり、圧力とは異なる物理量を検出する他のセンサを用いても良い。
【0084】
第3実施形態示されたデータ消失復帰装置3において、第2実施形態で示されたCR発振部60を採用しても良い。
【0085】
上記各実施形態では、エラー検出用データを生成する際にメモリデータのパリティP0、P1を生成する手法が採用されているが、エラー検出用データの生成方法は他の方法であっても良い。例えば、チェックサムやCRC等の方式を採用することもできる。CRC方式では、例えば複数の16bitのデータから1つの16bitのCRCを持たせることができる。
【0086】
上記各実施形態では、電源が瞬間的に停止し場合について説明した。しかし、電源遮断が続く場合、パワーオンリセットによってデータ保持レジスタ34の値をデフォルト値にして影響を最小限に抑えると共に、フリップフロップのリセット値がエラーになるようにすることですぐにデフォルト値からの修正が行われるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1実施形態に係るデータ消失復帰装置を含んだデータ消失復帰システムの全体図である。
【図2】図1に示される通信処理部のブロック図である。
【図3】消失したデータ保持レジスタのメモリデータを復帰させる内容を示したフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係るデータ消失復帰装置を含んだデータ消失復帰システムの全体図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るデータ消失復帰装置を含んだデータ消失復帰システムの全体図である。
【符号の説明】
【0088】
1 センサ
2 外部メモリ
3 データ消失復帰装置
30 通信処理部
31 制御ロジック回路部
34 データ保持レジスタ
35 消失検知回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部メモリ(2)に記憶されたメモリデータを読み出し、予め決められた演算式に従って前記メモリデータからエラー検出用データを生成する制御手段(31)と、
前記制御手段(31)によって前記メモリデータと前記エラー検出用データとが書き込まれるデータ保持手段(34)と、
前記データ保持手段(34)に保持された前記メモリデータと前記エラー検出用データとを読み出し、前記制御手段(31)にて用いられたものと同じ前記予め決められた演算式に従って前記データ保持手段(34)から読み出した前記メモリデータから検知用データを生成し、前記検知用データと前記データ保持手段(34)から読み出した前記エラー検出用データとを比較して一致しなかったときには、前記データ保持手段(34)に記憶された前記メモリデータが消失しているとしてエラー信号を出力する消失検知手段(35)とを備えたデータ消失復帰装置であって、
前記制御手段(31)は、通常はスリープ状態になっており、前記消失検知手段(35)から前記エラー信号が入力されている間に前記スリープ状態を解除して強制的にウェイクアップし、前記外部メモリ(2)から前記メモリデータを読み出すと共に前記予め決められた演算式に従って前記エラー検出用データを生成した後、前記メモリデータと前記エラー検出用データとを前記データ保持手段(34)に書き込むことにより、前記データ保持手段(34)で消失した前記メモリデータを前記データ保持手段(34)に復帰させることを特徴とするデータ消失復帰装置。
【請求項2】
前記外部メモリ(2)には、同じ内容を示す複数の前記メモリデータが異なる記憶領域にそれぞれ記憶されており、
前記制御手段(31)は、
前記消失検知手段(35)から前記エラー信号が入力されると前記制御手段(31)を強制的にウェイクアップするウェイクアップ手段(100)と、
前記制御手段(31)のウェイクアップ後に、前記外部メモリ(2)において前記異なる記憶領域にそれぞれ記憶された前記同じ内容のメモリデータをそれぞれ読み出す読み出し手段(110〜130)と、
前記外部メモリ(2)から読み出した複数個の同じ内容を示す前記メモリデータがそれぞれ一致しているか否かを判定する判定手段(140)と、
複数個の同じ内容を示す前記メモリデータが一致していたときには、該一致した前記メモリデータを用いて前記予め決められた演算式に従って前記エラー検出用データを生成し、生成した前記エラー検出用データと前記外部メモリ(2)から読み出した前記メモリデータとを前記データ保持手段(34)に記憶する記憶手段(150)と、
前記記憶手段(150)によって前記メモリデータが前記データ保持手段(34)に記憶されたことにより、前記消失検知手段(35)から前記エラー信号が入力されなくなると、前記制御手段(31)を前記スリープ状態に戻すスリープ手段(160)とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のデータ消失復帰装置。
【請求項3】
前記予め決められた演算式は、前記メモリデータからパリティを生成するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のデータ消失復帰装置。
【請求項4】
前記予め決められた演算式は、前記メモリデータからCRCを生成するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のデータ消失復帰装置。
【請求項5】
前記予め決められた演算式は、前記メモリデータからチェックサムを生成するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のデータ消失復帰装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−102434(P2010−102434A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271951(P2008−271951)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】