説明

データ移行支援システム及びデータ移行支援プログラム

【課題】移行元システムの各データ項目について関係者の意見調整を十分に行う機会を設定することで、移行元システムの各項目と移行先システムの各項目間の対応付けを正確に行えるようにする。
【解決手段】移行元システムの登録データに対し集計処理を実行する手段33と、集計結果の表示欄及びコメント入力欄を備えた画面40を生成し、移行先システム開発者の端末14、移行元システム開発者の端末18、ユーザの端末16に配信する手段35と、送信されたコメント情報をコメント情報記憶部37に格納する手段36と、各コメント情報を表示する画面40を各端末に送信する手段35と、移行元の各項目と移行先の各項目間の対応関係を定義する画面60を生成し端末14に送信する手段50と、端末14から送信された対応関係定義情報を変換定義記憶部52に格納する手段51と、移行元システムの各項目と移行先システムの各項目間の対応関係を記述した項目変換仕様書を生成し、項目変換仕様書記憶部54に格納する手段53を備えたデータ移行支援システム10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はデータ移行支援システム及びデータ移行支援プログラムに係り、特に、旧システム(移行元システム)において蓄積された各種データを新システム(移行先システム)のデータ仕様に適合するように変換するに際し、その作業効率の向上を実現する支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
システムの全面再構築時、例えば、ホストコンピュータによる集中処理型のシステムからクライアント−サーバ方式による分散処理型システムへの移行時、あるいは企業間の合併等に際しては、旧システムで蓄積された膨大なデータを新システムのデータ仕様に合わせて変換する必要性が生じる。
この場合、通常は移行先システムの開発者により、以下の手順でデータの変換作業が実行される(下記の非特許文献1参照)。
(1) 移行元システムのファイルレイアウト、項目説明書、検証用の業務帳票等を入手する。
(2) 項目説明書等に基づき旧→新システム間の項目変換仕様書を作成し、レビュー後にデータ変換システムを開発する。
(3) 移行元システムより実際のデータを受け入れ、テスト変換を実施する。
旧システム及び新システム間においては、データ項目の名称や順番の相違はもとより、データ長やデータ型の相違、対応項目の欠如、項目詳細のコード体系の相違等が当然に存在するため、(2) の項目変換仕様書において旧システムのデータ項目と新システムのデータ項目との対応関係や参照項目の指定が細かく記述される。
【非特許文献1】システム再構築の留意事項[平成17年3月8日検索] インターネットURL:http://www.diceview.co.jp/diary/daiary040726.html
【特許文献1】特開2001−236250
【特許文献2】特開2004−240524
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ユーザによって長年運用されてきた旧システムにおいては、システム開発者が想定していなかったようなデータ項目の利用がなされている場合が多く、項目説明書の分析を主とする上記の手法では登録データの意味を取り違えて新システムに移行させてしまう危険性があった。
もちろん、データ変換システムの開発と並行し、登録データの内容確認を行うことも行われるが、これまでは必要に応じて参照する程度であり、旧システム開発者、ユーザ及び新システム開発者の三者が旧システムの項目について体系的・網羅的に確認を行うような機会を持つことなく、変換システムの開発がスタートすることが多かった。特に、異なるSIベンダーが提供するシステムへの変更の場合には、旧システムの開発者と新システムの開発者とが敵対関係となるため、旧システム開発者から十分な情報や協力を得られない場合がある。
このため、変換システム開発後、あるいはデータ移行後に問題が発覚し、変換システムの修正やデータ変換のやり直しといった手戻りが発生し、データ移行スケジュールに悪影響を及ぼすことも多かった。
【0004】
なお、上記の特許文献1及び2においては、新旧システム間でのデータ変換を自動化する技術が開示されているが、これらは新旧のデータ項目間における対応付けが完了していることが前提であり、旧システムの開発者、ユーザ及び新システムの開発者との間で意見調整を行う機会を提供することに関しては全く触れられていない。
【0005】
この発明は、新旧システム間のデータ移行に係る従来の上記問題を解決するために案出されたものであり、データ変換システムを構築する前段階として、移行元システムの各データ項目の意義や利用法等について関係者間の意見調整を十分に行う機会を設定することにより、移行元システムの各項目と移行先システムの各項目間の対応付けを正確に行うことを可能とする支援技術の実現を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載したデータ移行支援システムは、移行元システムにおける登録データを格納しておく移行元データ記憶手段と、上記登録データの項目仕様をデータ項目毎に定義しておく移行元項目定義記憶手段と、移行先システムにおける項目仕様をデータ項目毎に定義しておく移行先項目定義記憶手段と、移行元システムの登録データに対し、所定の集計処理を実行する集計処理手段と、その集計結果を反映させた画面を生成し、移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末に配信する手段と、上記移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末にコメント入力用画面を送信し、移行元システムのデータ項目に関するコメントの入力を促す手段と、上記移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末からコメント情報が送信された場合に、各コメント情報を入力者及び対象項目に関連付けてコメント情報記憶手段に格納する手段と、上記コメント情報記憶手段に格納された各コメント情報を、それぞれの入力者及び対象項目と関連付けた形で表示する画面を生成し、移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末に送信する手段と、移行元項目定義記憶手段及び移行先項目定義記憶手段を参照し、移行元データの各項目と移行先データの各項目間の対応関係を定義するための対応関係定義画面を生成し、移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末の少なくとも一つに送信する手段と、上記端末から項目間の対応関係を定義する情報が送信された場合に、当該対応関係定義情報を所定の記憶手段に格納する手段とを備えたことを特徴としている。
なお、各データ項目に登録コードが設定されている場合、上記の「データ項目」にはそのコード体系である「項目詳細」も含まれるものとする。
また、上記の各画面は、複数の表示欄を備えた一つの画面に集約させることもできる。例えば、集計結果画面に、コメント入力欄、コメント表示欄を設ける場合が該当する。
【0007】
また、請求項2に記載したデータ移行支援システムは、請求項1のシステムであって、さらに、上記記憶手段に格納された対応関係定義情報に基づき、移行元システムの各項目と移行先システムの各項目間の対応関係を記述した項目変換仕様書を生成する手段と、当該項目変換仕様書を所定の記憶手段に格納する手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項3に記載したデータ移行支援システムは、請求項1または2のシステムであって、さらに、上記対応関係定義画面に、少なくとも移行元システムのデータ項目を選択するフィールドと、当該フィールドに表示されたデータ項目と対応付けられるべき移行先システムのデータ項目を選択するフィールドと、対応付が完了した項目同士の対応関係を表示する対応関係表示フィールドとが設けられており、上記記憶手段に格納された対応関係定義情報を参照し、上記対応関係表示フィールドに表示すべきイメージを生成し、上記端末に送信する手段を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載したデータ移行支援プログラムは、コンピュータを、移行元システムにおける登録データを格納しておく移行元データ記憶手段、上記登録データの項目仕様をデータ項目毎に定義しておく移行元項目定義記憶手段、移行先システムにおける項目仕様をデータ項目毎に定義しておく移行先項目定義記憶手段、移行元システムの登録データに対し、所定の集計処理を実行する集計処理手段、その集計結果を反映させた画面を生成し、移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末に配信する手段、上記移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末にコメント入力用画面を送信し、移行元システムのデータ項目に関するコメントの入力を促す手段、上記移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末からコメント情報が送信された場合に、各コメント情報を入力者及び対象項目に関連付けてコメント情報記憶手段に格納する手段、上記コメント情報記憶手段に格納された各コメント情報を、それぞれの入力者及び対象項目と関連付けた形で表示する画面を生成し、移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末に送信する手段、移行元項目定義記憶手段及び移行先項目定義記憶手段を参照し、移行元データの各項目と移行先データの各項目間の対応関係を定義するための画面を生成し、移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末の少なくとも一つに送信する手段、上記端末から項目間の対応関係を定義する情報が送信された場合に、当該対応関係定義情報を所定の記憶手段に格納する手段として機能させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1のデータ移行支援システム及び請求項4のデータ移行支援プログラムによれば、移行元システムの登録データに対してデータ項目毎に集計処理が実行され、その結果が移行先システム開発者、当該システムのユーザ、及び移行元システム開発者に配信されるため、移行元システムの利用実態についてデータ移行に係わる関係者が等しく認識することが可能となる。
また、上記の集計結果に対し、各人が各データ項目についてコメント情報を登録する機会と、登録されたコメント情報を相互に閲覧する機会が与えられるため、移行元システムのデータ項目に関する各人の認識を関係者間で共有することが可能となる。
また、上記のようにして移行元システムのデータ項目について関係者間で意見調整を行った上で新旧システムのデータ項目間で対応付が行われるため、誤解や思い込みに基づいて誤った対応付がなされる危険性が低減し、この関係定義情報に基づいて作成される項目変換仕様書も高い完成度と信頼性を具備することができる。
したがって、この項目変換仕様書に従ってコーディングされたデータ変換システムも高い完成度を備えることができ、データ移行作業の効率化を実現できる。
【0011】
請求項2のデータ移行支援システムによれば、上記の対応関係定義情報に基づいて項目変換仕様書が自動生成されるため、データ移行作業のさらなる効率化を実現できる。
【0012】
請求項3のデータ移行支援システムにあっては、対応関係定義画面上で移行元システムのデータ項目と移行先システムのデータ項目を選択するだけで両者間の対応関係が設定され、しかもその結果がイメージで確認できるため、新旧項目間における対応関係の設定が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、この発明に係るデータ移行支援システム10の全体構成を示す模式図であり、支援サーバ12と、移行先システムの開発者が操作する端末14と、システムのユーザが操作する端末16と、移行元システムの開発者が操作する端末18とを備えている。
支援サーバ12と移行先システム開発者の端末14との間は、LANによってネットワーク接続されている。
また、支援サーバ12、端末14、16、18間は、インターネット20を介して接続されている。
支援サーバ12は、アプリケーションサーバ機能、データベースサーバ機能、Webサーバ機能、メールサーバ機能等を兼ね備えている。あるいは、独立したアプリケーションサーバ、データベースサーバ、Webサーバ及びメールサーバをネットワーク接続することによって支援サーバ12を形成することもできる。
【0014】
図2は、このデータ移行支援システム10の移行元データ分析段階及びコメント登録段階における機能構成を示すブロック図であり、支援サーバ12は、項目情報配信部29と、移行元項目定義記憶部30と、移行先項目定義記憶部31と、移行元データ記憶部32と、移行元データ集計処理部33と、集計結果記憶部34と、集計結果配信部35と、コメント情報登録部36と、コメント情報記憶部37とを備えている。
上記の項目情報配信部29、移行元データ集計処理部33、集計結果配信部35及びコメント情報登録部36は、支援サーバ12のCPUが、OS及び専用のアプリケーションプログラムに従って必要な処理を実行することによって実現される。
また、上記の移行元項目定義記憶部30、移行先項目定義記憶部31、移行元データ記憶部32、集計結果記憶部34及びコメント情報記憶部37は、支援サーバ12のハードディスク内に設けられている。
【0015】
図3は、移行元項目定義記憶部30の登録例を示すものであり、項目No、項目名、項目タイプ、項目詳細のデータ項目を備えている。
これらの中、「項目タイプ」は移行元データのデータ型及びデータ長を定義する項目であり、例えば、No.1の「口座番号」の場合、データ型がNUMBER(N)であり、データ長が7桁であることを示している。これに対し、No.2の「顧客名」の場合、データ型がCHARACTER(C)であり、データ長が20桁であることを示している。
また、「項目詳細」は、移行元データの登録コードの体系を定義する項目である。例えば、No.3の「顧客分類」の項目において「001」のコードが登録されていた場合、当該顧客が男であることを意味し、「220」が登録されていた場合、当該顧客が都市銀行であることを意味している。
図4は、移行元データ記憶部32の登録例を示すものであり、移行元システムの顧客DBに登録されているレコードのコピーが格納されている。
図5は、移行先項目定義記憶部31の登録例を示すものであり、上記の移行元項目定義記憶部30の場合と同様、項目No、項目名、項目タイプ、項目詳細のデータ項目を備えている。
【0016】
つぎに、図6のフローチャートに従い、移行元データ分析段階及びコメント登録段階における処理手順を説明する。
まず移行先システムの開発者は、端末14から支援サーバ12のWebサイトにアクセスし、項目情報の配信をリクエストする。
これを受信した項目情報配信部29は(S10)、移行元項目定義記憶部30及び移行先項目定義記憶部31から必要な情報を抽出し、端末14に項目情報確認画面を送信する(S11)。
この結果、端末14のWebブラウザ上に上記の画面が表示される(図示省略)。
また移行先システム開発者は、項目情報配信部29を介して、移行元データ記憶部32に格納された移行元システムの登録データを閲覧することもできる。
【0017】
つぎに移行先システムの開発者は、支援サーバ12に対し集計方法の定義をリクエストする。
これを受信した移行元データ集計処理部33は(S12)、端末14に集計方法の定義画面(フォーム)を送信する(S13)。
この結果、端末14のWebブラウザ上に集計方法定義用画面(図示省略)が表示される。
【0018】
移行先システムの開発者は、この集計方法定義用画面中において、移行元システムの項目毎に集計方法を定義していく。
例えば、口座番号の項目については、単純に登録データの件数を集計することを求める「単純集計」を指定する。
これに対し、顧客名の項目の場合にはデータの欠落も予想されるため、データ有りの件数と無しの件数をそれぞれ集計することを求める「データの有無別集計」を指定する。
また、顧客分類の項目のように、項目詳細として複数のコードが設定されている場合には、詳細レベルでの集計を求めるか(詳細レベル集計)、項目レベルでの集計にとどめるのか(項目レベル集計)を指定する。
また、特定の項目詳細間の合計値の算出を指定することもできる。
あるいは、登録データの最大値及び最小値を検出を求める「閾値検出」を指定することもできる。
【0019】
上記の集計方法定義用画面を通じ、移行先システムの開発者が移行元システムの各項目について集計方法を定義し、同フォーム中の「集計実行」ボタンをクリックすると、集計方法の定義情報が端末14から支援サーバ12に送信される。
これを受信した支援サーバ12の移行元データ集計処理部33は(S14)、移行元データ記憶部32内の登録データに対し、上記の定義に従った集計処理を実行し(S16)、集計結果記憶部34に集計結果を格納する。
つぎに、集計結果配信部35が上記の集計結果を取り出し、所定のテンプレートに充填することによって集計結果画面を生成し、移行先システム開発者の端末14に送信する(S18)。
【0020】
図7は、集計結果画面40の一例を示すものであり、移行元データの項目毎に定義に従った集計結果が表示されている。
この集計結果画面40を検討することにより、移行元データにおける各項目のユーザによる実際の利用状況や利用方法を把握することが可能となる。
例えば、「No.1 口座番号」と「No.2 顧客名」の集計値が2356で一致しているため、顧客名の項目にデータの欠落が存在しないことが確認できる。
これに対し、「3. 顧客分類」においてはデータの欠落が235も存在することが理解できる。また、移行元システムにおいては、個人の顧客(男+女)数が712であるのに対し、法人の顧客数が1409であることを確認できる。さらに、宗教法人の登録データが存在しないため、この項目詳細については後述の変換定義が不要であることを認識できる。
【0021】
この集計結果画面40には移行先コメント欄が設けられており、各項目毎に編集入力ボタン41が表示されている。
これに対し移行先システムの開発者は、必要な項目の編集入力ボタン41をクリックし、コメント情報の入力を求める。
この結果、端末14のディスプレイに別ウィンドウ42が開き、当該項目に関するコメント情報の入力が可能となる。
【0022】
これに対し、移行先システムの開発者が当該項目に関する変換方針等をタイプ入力し、登録ボタン43をクリックすると、入力データが支援サーバ12に送信され、コメント情報登録部36を介してコメント情報記憶部37に格納される(S20)。
同時に、集計結果配信部35によって上記のコメント情報を反映させた集計結果画面40が生成され、端末14に送信される(S22)。
この結果、端末14のディスプレイに、コメント情報が記述された集計結果画面40が再表示される。
【0023】
上記の集計結果画面40は、ユーザ及び移行元システムの開発者も自由に閲覧することができる。
例えば、移行先システムの開発者から電子メールによって移行元システムのデータ集計及びコメント入力が完了した旨の通知を受けたユーザは、端末16から支援サーバ12のWebサイトにアクセスし、集計結果画面の表示をリクエストする。
これを受けた集計結果配信部35は(S24)、集計結果記憶部34及びコメント情報記憶部37から必要なデータを抽出し、所定のテンプレートに充填することによって集計結果画面を生成し、端末16に送信する(S26)。
【0024】
この結果、図8に示すように、ユーザの端末16のディスプレイに集計結果画面40が表示される。
この画面40中には、移行先システムの開発者によって入力されたコメント情報が項目毎に表示されている。また、既に移行元システムの開発者によってコメント情報が登録されている場合には、その内容も移行元コメント欄に表示される。
これに対しユーザが任意の項目の編集入力ボタン41をクリックすると、上記と同様の別ウィンドウ42が展開し、ユーザサイドのコメントを入力することが可能となる。
例えば、移行先システム開発者の方針に賛同する場合には「異議なし」等のフレーズを簡潔に入力する。また、移行先システム開発者のコメント内容に補足が必要な場合、あるいは当該項目を本来の目的以外に利用している場合には、その事情説明をタイプ入力する。
ユーザが必要な項目についてコメント情報を入力し、登録ボタン43をクリックすると、入力データが支援サーバ12に送信され、コメント情報登録部36を介してコメント情報記憶部37に格納される(S28)。
【0025】
上記と同様の手順に従い、移行元システムの開発者も、集計結果画面40の閲覧及びコメント情報の入力を行うことができる。
ユーザ及び移行元システムの開発者からコメント情報の登録が完了した旨の連絡を受けた移行先システムの開発者が、端末14から支援サーバ12アクセスして集計結果画面40を再表示させると、ユーザや移行元システムの開発者によって入力されたコメント情報が各自のコメント欄に反映されている。
これらのコメント情報をチェックし、全てのデータ項目について賛同が得られたと判断した場合、移行先システムの開発者は次の段階に移行する。
これに対し、各者間の調整が必要な項目については、電話や電子メール等を用いて意見の調整を行う。
【0026】
図9は、このデータ移行支援システム10の項目変換仕様書生成段階及びデータ変換段階における機能構成を示すブロック図であり、この場合支援サーバ12は、移行元項目定義記憶部30と、移行先項目定義記憶部31と、コメント情報記憶部37と、変換定義入力画面生成部50と、変換定義登録部51と、変換定義記憶部52と、項目変換仕様書生成部53と、項目変換仕様書記憶部54と、項目変換仕様書配信部55と、移行元データ記憶部32と、データ変換部58と、移行先データ記憶部59とを備えている。
上記の変換定義入力画面生成部50、変換定義登録部51、項目変換仕様書生成部53、項目変換仕様書配信部55及びデータ変換部58は、支援サーバ12のCPUが、OS及び専用のアプリケーションプログラムに従って必要な処理を実行することによって実現される。
また、上記の変換定義記憶部52、項目変換仕様書記憶部54及び移行先データ記憶部59は、支援サーバ12のハードディスク内に設けられている。
【0027】
つぎに、図10のフローチャートに従い、項目変換仕様書生成段階における処理手順を説明する。
まず移行先システムの開発者は、端末14から支援サーバ12にアクセスし、新旧システム間におけるデータ項目の対応関係定義の登録をリクエストする。
これを受けた支援サーバ12の変換定義入力画面生成部50は(S30)、所定のテンプレートに移行元項目定義記憶部30及び移行先項目定義記憶部31の登録データを充填することによって対応関係定義画面を生成し、端末14に送信する(S32)。
この結果、図11に示すように、端末14のWebブラウザ上に対応関係定義画面60が表示される。
【0028】
図示の通り、この画面60においては移行元システムの項目名選択欄61及び項目詳細選択欄62と、移行先システムの項目名選択欄63及び項目詳細選択欄64が設けられており、各欄の▼ボタンをクリックすると、移行元項目定義記憶部30や移行先項目定義記憶部31に格納された項目情報がプルダウン表示される(対応の項目詳細が存在する場合のみ、項目詳細選択欄62,64に項目詳細情報が表示される)。
また、対応関係定義画面60には対応関係のイメージ表示欄66が設けられており、既に対応付が完了した新旧項目間の対応関係が図示されている。
これを眺めることにより、例えば移行元システムの「3.顧客分類」における「001:男」という項目詳細が、移行先システムの「9:法人区分」における「1:個人」に対応付けられていることを確認できる。
また、同じ移行元システムの「3.顧客分類」に属する「200:日本銀行」が、移行先システムでは「10:職業業種区分」における「10:日本銀行」に対応付けられていることが理解できる。
【0029】
これに対し移行先システムの開発者は、各選択欄に必要な項目や項目詳細を表示させた後、対応付ボタン65をクリックすることにより、新旧システムの項目同士を項目名レベルまたは項目詳細レベルで対応付けていく。
例えば、移行元システムの項目名選択欄61に「4.発送方法」を、また項目詳細選択欄62に「C:遠隔地速達」を表示させると共に、移行先システムの項目名選択欄63に「12.郵送指定区分」を、また項目詳細選択欄64に「5:速達」を表示させた状態で対応付ボタン65をクリックすると、「C:遠隔地速達」と「5:速達」を対応付ける定義情報が、端末14から支援サーバ12に送信される。
この対応関係定義情報を受けた支援サーバ12の変換定義登録部51は(S34)、変換定義記憶部52にこれを格納する(S36)。
【0030】
ここで移行先システムの開発者が表示更新ボタン67をクリックし、画面表示の更新をリクエストすると、これを受けた変換定義入力画面生成部50は(S38)、上記対応関係定義情報を反映させた最新の対応関係定義画面60を生成し、端末14に送信する(S40)。
この結果、端末14のディスプレイには、イメージ表示欄66に「C:遠隔地速達→5:速達」が追記された対応関係定義画面60が表示される。
【0031】
移行先システムの開発者は、画面60上の移行先コメントボタン68、ユーザコメントボタン69、または移行元コメントボタン70をクリックし、コメント情報の表示をリクエストすることもできる。
これを受けた変換定義入力画面生成部50は(S42)、対応のコメント情報(項目名選択欄61に表示された移行元システムの項目に係るコメント情報)をコメント情報記憶部37から抽出して表示画面を生成し、端末14に送信する(S44)。
この結果、端末14のディスプレイに別ウィンドウが開き、目的のコメント情報が表示される(図示省略)。
このコメント情報を参照することにより、移行先システムの開発者は的確に新旧システムの項目同士を対応付けることが可能となる。
【0032】
以上のようにして、新旧データ項目間の対応関係定義が完了すると、移行先システムの開発者は支援サーバ12に対して項目変換仕様書の作成をリクエストする。
これを受けた項目変換仕様書生成部53は(S46)、変換定義記憶部52から新旧データ項目間の対応関係定義情報を取り出し、これらを所定のテンプレートに充填することによって項目変換仕様書を所定のファイル形式(pdf、xls、html等)で生成し、項目変換仕様書記憶部54に格納する(S48)。
図示は省略したが、この項目変換仕様書54には、移行元システムの各項目(項目詳細)と移行先システムの各項目(項目詳細)との対応関係を示すリストが記述されている。
【0033】
つぎに項目変換仕様書配信部55が起動し、移行先システム開発者、ユーザ及び移行元システム開発者の電子メールアドレスに宛てて項目変換仕様書配信用の電子メールを送信する(S50)。
この電子メールには、上記の項目変換仕様書ファイルが添付されている。
あるいは、項目変換仕様書が記載されたWebページのURLや、項目変換仕様書ファイルをダウンロードするためのURLが、この電子メールに記述されている。
【0034】
この項目変換仕様書を閲覧したユーザまたは移行元システムの開発者は、移行先システムの開発者に対し、電話や電子メール等を通じて意見を述べることができる。
これに対し移行先システムの開発者は、上記の対応関係定義画面60を通じて変換定義情報の登録をやり直し、項目変換仕様書を何度も作り直すことができる。
そして、項目変換仕様書の内容について移行先システムの開発者、ユーザ及び移行元システムの開発者間で最終的な合意が成立した時点で、項目仕様書の完成バージョンが項目変換仕様書生成部53によって生成され、項目変換仕様書記憶部54に格納される。
【0035】
上記のように、最終的な項目変換仕様書が生成されるまでには、移行先システム開発者、移行元システム開発者及びユーザ間において、移行元システムのデータ項目に関するコメント情報を通じての意見交換の機会が設定され、また項目変換仕様書案を題材とした意見交換の機会も確保されるため、移行元システムのデータ項目に関する相互の誤解や思い込みが十分に解消され、新旧項目間において正確な対応付が実現されている。
したがって、この項目変換仕様書に記述された定義に基づいてデータ変換プログラムのコーディングを行えば、データ変換処理後に不具合が発生する危険性を低減することができる。
【0036】
このようなデータ変換プログラムによって実現されたデータ変換部58は、移行元データ記憶部32の登録データに対し、新旧項目間の対応関係定義に従った変換処理を施すことにより、移行先システムに適合したデータを生成し、移行先データ記憶部59に格納する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明に係るデータ移行支援システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】このデータ移行支援システムの移行元データ分析段階及びコメント登録段階における機能構成を示すブロック図である。
【図3】移行元項目定義記憶部の登録例を示す説明図である。
【図4】移行元データ記憶部の登録例を示す説明図である。
【図5】移行先項目定義記憶部の登録例を示す説明図である。
【図6】移行元データ分析段階及びコメント登録段階における処理手順を示すフローチャートである。
【図7】集計結果画面の表示例を示すレイアウト図である。
【図8】集計結果画面の他の表示例を示すレイアウト図である。
【図9】このデータ移行支援システムの項目変換仕様書生成段階及びデータ変換段階における機能構成を示すブロック図である。
【図10】項目変換仕様書生成段階における処理手順を示すフローチャートである。
【図11】対応関係定義画面の表示例を示すレイアウト図である。
【符号の説明】
【0038】
10 データ移行支援システム
12 支援サーバ
14 移行先システム開発者の端末
16 ユーザの端末
18 移行元システム開発者の端末
20 インターネット
30 移行元項目定義記憶部
31 移行先項目定義記憶部
32 移行元データ記憶部
33 移行元データ集計処理部
34 集計結果記憶部
35 集計結果配信部
36 コメント情報登録部
37 コメント情報記憶部
40 集計結果画面
41 編集入力ボタン
42 別ウィンドウ
43 登録ボタン
50 変換定義入力画面生成部
51 変換定義登録部
52 変換定義記憶部
53 項目変換仕様書生成部
54 項目変換仕様書記憶部
55 項目変換仕様書配信部
58 データ変換部
59 移行先データ記憶部
60 対応関係定義画面
61 項目名選択欄
62 項目詳細選択欄
63 項目名選択欄
64 項目詳細選択欄
65 対応付ボタン
66 イメージ表示欄
67 表示更新ボタン
68 移行先コメントボタン
69 ユーザコメントボタン
70 移行元コメントボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移行元システムにおける登録データを格納しておく移行元データ記憶手段と、
上記登録データの項目仕様をデータ項目毎に定義しておく移行元項目定義記憶手段と、
移行先システムにおける項目仕様をデータ項目毎に定義しておく移行先項目定義記憶手段と、
移行元システムの登録データに対し、所定の集計処理を実行する集計処理手段と、
その集計結果を反映させた画面を生成し、移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末に配信する手段と、
上記移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末にコメント入力用画面を送信し、移行元システムのデータ項目に関するコメントの入力を促す手段と、
上記移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末からコメント情報が送信された場合に、各コメント情報を入力者及び対象項目に関連付けてコメント情報記憶手段に格納する手段と、
上記コメント情報記憶手段に格納された各コメント情報を、それぞれの入力者及び対象項目と関連付けた形で表示する画面を生成し、移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末に送信する手段と、
移行元項目定義記憶手段及び移行先項目定義記憶手段を参照し、移行元データの各項目と移行先データの各項目間の対応関係を定義するための対応関係定義画面を生成し、移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末の少なくとも一つに送信する手段と、
上記端末から項目間の対応関係を定義する情報が送信された場合に、当該対応関係定義情報を所定の記憶手段に格納する手段と、
を備えたことを特徴とするデータ移行支援システム。
【請求項2】
上記記憶手段に格納された対応関係定義情報に基づき、移行元システムの各項目と移行先システムの各項目間の対応関係を記述した項目変換仕様書を生成する手段と、
当該項目変換仕様書を所定の記憶手段に格納する手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のデータ移行支援システム。
【請求項3】
上記対応関係定義画面には、少なくとも移行元システムのデータ項目を選択するフィールドと、当該フィールドに表示されたデータ項目と対応付けられるべき移行先システムのデータ項目を選択するフィールドと、対応付が完了した項目同士の対応関係を表示する対応関係表示フィールドとが設けられており、
上記記憶手段に格納された対応関係定義情報を参照し、上記対応関係表示フィールドに表示すべきイメージを生成し、上記端末に送信する手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のデータ移行支援システム。
【請求項4】
コンピュータを、
移行元システムにおける登録データを格納しておく移行元データ記憶手段、
上記登録データの項目仕様をデータ項目毎に定義しておく移行元項目定義記憶手段、
移行先システムにおける項目仕様をデータ項目毎に定義しておく移行先項目定義記憶手段、
移行元システムの登録データに対し、所定の集計処理を実行する集計処理手段、
その集計結果を反映させた画面を生成し、移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末に配信する手段、
上記移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末にコメント入力用画面を送信し、移行元システムのデータ項目に関するコメントの入力を促す手段、
上記移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末からコメント情報が送信された場合に、各コメント情報を入力者及び対象項目に関連付けてコメント情報記憶手段に格納する手段、
上記コメント情報記憶手段に格納された各コメント情報を、それぞれの入力者及び対象項目と関連付けた形で表示する画面を生成し、移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末に送信する手段、
移行元項目定義記憶手段及び移行先項目定義記憶手段を参照し、移行元データの各項目と移行先データの各項目間の対応関係を定義するための画面を生成し、移行先システム開発者の端末、移行元システム開発者の端末及びユーザの端末の少なくとも一つに送信する手段、
上記端末から項目間の対応関係を定義する情報が送信された場合に、当該対応関係定義情報を所定の記憶手段に格納する手段、
として機能させることを特徴とするデータ移行支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−277644(P2006−277644A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99734(P2005−99734)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】