説明

データ記録方法

【課題】温度の変化にもかかわらず、データ記録の信頼性が低下させないことができ、磁気ヘッドの記録磁界は変化させず、かつ温度の変化にもかかわらず、データ記録の信頼性を維持することが可能なデータ記録方法を提供すること。
【解決手段】データ記録が可能な複数の記録地点を含むデータ記録媒体の保磁力分布を測定する保磁力分布測定ステップと、現在の周辺温度を測定する周辺温度測定ステップと、周辺温度が常温より高ければ、保磁力の強度が相対的に高い記録地点を優先的に選択してデータを記録し、周辺温度が常温より低ければ、保磁力の強度が相対的に低い記録地点を優先的に選択してデータを記録するデータ記録ステップとを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ記録方法に関し、ハードディスクドライブに適用して好適であり、特にデータ記録媒体の保磁力分布を利用してデータ記録媒体にデータを記録する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブは、コンピュータ、MP3プレーヤー、モバイルフォンなどに採用されるデータ記録装置である。通常的に、データは、ハードディスクドライブ内のデータ記録媒体であるディスクの表面に設けられた同心トラックに記録される。ディスクは、スピンドルモータに高速回転可能に装着され、データは、磁気ヘッドにより再生または記録される。
【0003】
ハードディスクドライブのデータ記録媒体であるディスクは、磁気異方性を有する特性を利用してデータが保存される磁性体層を備える。ディスクの保磁力、さらに具体的に、磁性体層の保磁力は、ディスクに記録されるデータの記録信頼性と密接な連関性を有する。保磁力は、磁化された磁性体に逆磁場をかけて、その磁性体の磁化を0にする磁場の強度を意味する。ディスクの保磁力の強度が高ければ、データの記録に強い記録磁界が要求されるが、記録されたデータの保存性は向上する。逆に、ディスクの保磁力の強度が低ければ、弱い記録磁界でデータを記録できるが、記録されたデータの保存性は低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、保磁力の強度は、温度によって変化する。温度が1℃下降するにつれて、ディスクの保磁力の強度Hcは15ないし16Oe上昇し、温度が上昇すれば、逆にディスクの保磁力の強度は低下する。したがって、常温でデータ記録に最適化された記録磁界を適用して常温より低い温度のディスクにデータを記録すれば、データが識別可能な強度でディスクに記録されない、いわゆるウィークライトが発生しうる。また、常温でデータ記録に最適化された記録磁界を適用して常温より高い温度のディスクにデータを記録すれば、データが記録されると指定された地点の周囲地域までデータが記録されて、既に記録されたデータを除去する、いわゆるATW(Adjacent Track Write)及びATE(Adjacent Track Erase)が発生しうる。かかるウィークライト及びATW(あるいは、ATE)は、BER(Bit Error Rate)及びCSM(Channel Statistic Measurement)特性を悪化させて、ハードディスクドライブのデータ処理性能を低下させるという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、温度の変化にもかかわらず、データ記録の信頼性が低下させないことができ、磁気ヘッドの記録磁界は変化させず、かつ温度の変化にもかかわらず、データ記録の信頼性を維持することが可能な、新規かつ改良されたデータ記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、データ記録が可能な複数の記録地点を含むデータ記録媒体の保磁力分布を測定する保磁力分布測定ステップと、現在の周辺温度を測定する周辺温度測定ステップと、前記周辺温度が常温より高ければ、保磁力の強度が相対的に高い記録地点を優先的に選択してデータを記録し、前記周辺温度が常温より低ければ、保磁力の強度が相対的に低い記録地点を優先的に選択してデータを記録するデータ記録ステップとを含むことを特徴とするデータ記録方法が提供される。
【0007】
上記データ記録ステップで、常温での記録信号パラメータの最適値に基づいた記録信号を利用して、前記選択された記録地点にデータを記録するものであってもよい。
【0008】
上記データ記録媒体の保磁力分布は、保磁力の強度によって複数のクラスに分類され、前記周辺温度も、周辺温度の高低によって前記保磁力分布クラスと対応する同数の周辺温度クラスに分類されて、前記データ記録ステップで、測定された周辺温度が属する周辺温度クラスに対応する保磁力分布クラスに属する記録地点に優先的にデータが記録されるものであってもよい。
【0009】
上記保磁力分布測定ステップは、常温での記録信号パラメータの最適値を探すステップと、前記最適パラメータ値より小さいリファレンスパラメータ値を設定するステップと、前記リファレンスパラメータ値に基づいた記録信号を利用して、データ記録媒体の各記録地点にテストデータを記録するステップと、前記各記録地点に記録されたテストデータを再生して、エラーがあれば、保磁力の強度が相対的に高い記録地点と判断し、エラーがなければ、保磁力の強度が相対的に低い記録地点と判断するステップとを含むものであってもよい。
【0010】
上記記録信号パラメータには、Wc(Write Current)、OSA(Overshoot Amplitude)及びOSD(Overshoot Duration)のうち少なくとも一つが含まれるものであってよい。
【0011】
上記記録信号パラメータの最適値は、BERまたはCSMが最小である時の記録信号パラメータの値であってもよい。
【0012】
上記リファレンスパラメータ値は、大きさの異なる複数個が設定され、前記データ記録媒体の保磁力分布は、前記リファレンスパラメータ値の個数より一つさらに多い数のクラスに分類されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度の変化にもかかわらず、データ記録の信頼性が低下させないことができ、磁気ヘッドの記録磁界は変化させず、かつ温度の変化にもかかわらず、データ記録の信頼性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
以下、本発明の望ましい実施形態によるデータ記録方法を説明するに先立って、ハードディスクドライブの構造を概略的に説明する。図1は、ハードディスクドライブの構造を示す平面図であり、図2は、データ記録媒体であるディスクを示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、ハードディスクドライブ100は、ベース部材101及びそれに結合されたカバー部材(図示せず。)からなるハウジング内にスピンドルモータ105、データ記録媒体であるディスク110及びアクチュエータ120を備える。
【0017】
スピンドルモータ105は、ディスク110を回転させるためのものであって、ベース部材101に固設される。ディスク110は、スピンドルモータ105に結合されて高速回転するものであって、ハードディスクドライブ100の作動停止時にHSA(Head Stack Assembly)121の先端部のヘッドスライダー128がパーキングされるパーキング領域111と、データが保存されるデータ領域112とを備える。
【0018】
図2に示すように、データ記録媒体であるディスク110は、ガラスまたはアルミニウム系の基板116、基板116上に順次に積層された磁性体層117、保護層118及び潤滑剤層119を備える。磁性体層117は、磁気異方性を有する特性を利用してデータが記録される層であり、保護層118は、磁性体層117を保護し、磁性体層117の酸化を防止する層であり、潤滑剤層119は、ヘッドスライダー128(図1参照)との接触によるディスク110及び磁気ヘッドの損傷を抑制する層である。
【0019】
再び図1に示すように、アクチュエータ120は、ヘッドスライダー128を先端部に搭載し、ベース部材101に回動可能に装着されたHSA121と、HSA121を回動させるための回動力を提供するボイスコイルモータ130とを備える。
【0020】
HSA121は、ピボット軸受122を介在し、ベース部材101に回動可能に装着されたスイングアーム124と、スイングアーム124の先端部に結合されたサスペンション126と、サスペンション126の先端部に搭載されたヘッドスライダー128とを備える。ヘッドスライダー128には、ディスク110にデータを記録し、ディスク110からデータを判読する磁気ヘッド(図示せず。)が形成されている。
【0021】
ディスク110が高速回転すれば、ヘッドスライダー128には揚力が作用する。揚力と、ヘッドスライダー128をディスク110に向かうように加圧するサスペンション126の弾性加圧力とが平衡をなす高さで、ヘッドスライダー128は浮上状態を維持する。かかる浮上状態で、磁気ヘッドは、ディスク110の特定のトラックにデータを記録し、特定のトラックからデータを判読する機能を行う。
【0022】
ボイスコイルモータ130は、ピボット軸受122を基準としてサスペンション126の逆方向に突出したオーバーモールド(図示せず。)に設けられたボイスコイル(図示せず。)と、ボイスコイルの上側及び下側に配置されるマグネット(図示せず。)と、マグネットを支持するヨーク(図示せず。)とを備える。HSA121は、ボイスコイルに入力される電流信号とマグネットにより形成された磁場との相互作用により、フレミングの左手法則による方向に回動する。
【0023】
スピンドルモータ105、ヘッドスライダー128に形成された磁気ヘッド、及びボイスコイルモータ130のボイスコイルは、印刷回路ボード140に搭載された電子回路145と連結される。電子回路145は、スピンドルモータ105、磁気ヘッド及びボイスコイルモータ130を制御するコントローラとして機能する。
【0024】
以下、本発明の望ましい実施形態によるデータ記録媒体の保磁力分布を利用したデータ記録方法を詳細に説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係るデータ記録媒体の保磁力分布を利用したデータ記録方法を説明する。図3は、本発明の第1実施形態によるデータ記録媒体の保磁力分布を利用したデータ記録方法を示すフローチャートであり、図4は、図3でデータ記録媒体の保磁力分布を測定する方法を詳細に示すフローチャートであり、図5は、データ記録媒体の保磁力分布を測定する方法を説明するためのグラフである。
【0026】
図3及び図4に示すように、本発明の第1実施形態によるデータ記録方法は、まず、データ記録媒体、すなわちディスク110(図1参照)の保磁力分布を測定する保磁力分布測定ステップS110を含む。ディスク110を製造するとき、磁性体層117(図2参照)、保護層118(図2参照)及び潤滑剤層119(図2参照)を積層する方法や前記各層の成分、厚さなどの微細な差により、ディスク110のデータ領域112内の各記録地点は、許容公差以内で保磁力の差が存在し、これにより、ディスク110に保磁力分布が形成される。かかるディスク110の保磁力分布をディスク110の製造ステップでデザインし難いため、製造されたディスク110に対して保磁力分布を測定する。
【0027】
ディスク110の保磁力分布測定(S110)のために、まず、RCO(Read Channel Optimization)実行を通じて常温で記録信号パラメータの最適値を探すステップS111が行われる。バーンインテストで行われるRCOは、ディスクにデータを記録する時に適用されるパラメータの最適値、またはディスクに記録されたデータを再生する時に適用されるパラメータの最適値を探す過程である。データの記録に適用される記録信号パラメータには、例えばWc、OSA、OSDなどが含まれる。
【0028】
図5に示したように、BERまたはCSMの結果グラフは、共通的に減少後に増加する趨勢を有する。したがって、常温条件で記録信号パラメータのスイーピングを通じてBERまたはCSMが最小となる記録信号パラメータの最適値P0を探すことができる(S111)。保磁力分布測定(S110)のために採用される記録信号パラメータには、Wc、OSA、OSDのうち少なくとも一つが含まれる。そして、BER結果グラフを利用して記録信号パラメータの最適値を探してもよく、CSM結果グラフを利用して記録信号パラメータの最適値を探してもよい。
【0029】
次いで、最適パラメータ値P0より小さいリファレンスパラメータ値R0を設定する(S112)。設定されたリファレンスパラメータ値R0の適正性如何は、結果により判断される。すなわち、一定なリファレンスパラメータ値R0を設定し、本発明によるデータ記録方法によってディスク110にデータを記録した後、BERまたはCSM特性が従来の場合より向上したとすれば、結果的に設定されたリファレンスパラメータ値R0は適正な値であったと判断される。
【0030】
次いで、リファレンスパラメータ値R0に基づいた記録信号を利用して、ディスク110の各記録地点にテストデータを記録する(S113)。これは、リファレンスパラメータ値R0を有する特定のパラメータ(例えば、Wc、OSA、OSDなど)成分を記録信号に含めて磁気ヘッドに入力することを意味する。記録地点は、ディスク110のデータ領域112に備えられたビットセルでありうる。
【0031】
次いで、各記録地点に記録されたテストデータを再生し(S114)、各記録地点に対して再生エラーがあるか否かを判別する(S115)。リファレンスパラメータ値R0は、最適パラメータ値P0より小さい値であるので、テストデータ再生ステップS114で発見された再生エラーは、ATW(あるいは、ATE)によるというよりウィークライトによる可能性が高い。したがって、再生エラーが発見された記録地点は、保磁力の強度が相対的に高い記録地点と判断され(S116)、再生エラーが発見されない記録地点は、保磁力の強度が相対的に低い記録地点と判断される(S117)。ディスク110の各記録地点に対して保磁力強度によって分類した結果は、ハードディスクドライブ100(図1参照)の駆動に必要な重要情報が保存される場所であるメンテナンスシリンダー(図示せず。)に保存される(S118)。
【0032】
上記の方法で得られたディスク110の保磁力分布を利用してデータを記録するために、現在の周辺温度を測定する(S130)。次いで、測定された周辺温度が常温と同じであるか否かを判断する(S140)。ステップS111での常温とステップS140での常温は、同じ温度に設定されねばならず、通常的に、常温は30℃に設定される。
【0033】
測定された周辺温度が常温と同じであれば、ランダムにディスク110上の記録地点を選択してデータを記録する(S141)。測定された周辺温度が常温と同じでなければ、周辺温度が常温より高いか否かを判断する(S150)。もし、周辺温度が常温より高ければ、ディスク110の温度上昇により保磁力の強度が全体的に低下すると予想されるので、保磁力分布測定ステップS110を通じて保磁力の強度が相対的に高いと判断された記録地点を選択してデータを記録する(S151)。一方、周辺温度が常温より低ければ、ディスク110の温度下降により保磁力の強度が全体的に増大すると予想されるので、保磁力分布測定ステップS110を通じて保磁力の強度が相対的に低いと判断された記録地点を選択してデータを記録する(S152)。
【0034】
磁気ヘッドを選択された記録地点上に移動させ、磁気ヘッドに記録信号を入力して記録磁界を形成することによって、記録地点にデータが記録される。データの記録ステップS141、S151、S152では、常温での記録信号パラメータの最適値P0(図5参照)に基づいた記録信号を利用してデータを記録する。「記録信号パラメータの最適値P0に基づいた記録信号」とは、記録信号パラメータの最適値P0を有する特定のパラメータ(例えば、Wc、OSA、OSDなど)成分が記録信号に含まれていることを意味する。
【0035】
第1実施形態によるデータ記録方法において、ディスク110の保磁力分布は、保磁力の強度によって2つのクラスに分類され、周辺温度も、常温を基準として2つのクラスに分類された。しかし、ディスク110の保磁力分布は、3つ以上のクラスに分類され、周辺温度も、保磁力分布クラスと対応する同数の周辺温度クラスに分類される。後述する第2実施形態によるデータ記録方法は、保磁力分布及び周辺温度が3つのクラスに分類される場合を示す。
【0036】
(第2の実施形態)
まず、本発明の第2実施形態に係るデータ記録媒体の保磁力分布を利用したデータ記録方法を説明する。図6は、本発明の第2実施形態によるデータ記録媒体の保磁力分布を利用したデータ記録方法を示すフローチャートであり、図7は、図6でデータ記録媒体の保磁力分布を測定する方法を詳細に示すフローチャートである。
【0037】
図6及び図7に示すように、本発明の第2実施形態によるデータ記録方法でも、データ記録媒体、すなわちディスク110(図1参照)の保磁力分布を測定する保磁力分布測定ステップS210が要求される。ディスク110の保磁力分布測定(S210)のために、まず、RCO実行を通じて常温で記録信号パラメータの最適値を探すステップS211が行われる。
【0038】
第1実施形態で前述したように、データの記録に適用される記録信号パラメータには、例えばWc、OSA、OSDなどが含まれ、常温条件で記録信号パラメータのスイーピングを通じてBERまたはCSMが最小となる記録信号パラメータの最適値P0(図5参照)を探すことができる(S211)。
【0039】
次いで、最適パラメータ値P0より小さい第1リファレンスパラメータ値R1(図5参照)を設定し(S212)、第1リファレンスパラメータ値R1に基づいた記録信号を利用して、ディスク110の各記録地点に第1テストデータを記録する(S213)。次いで、各記録地点に記録された第1テストデータを再生し(S214)、各記録地点に対して再生エラーがあるか否かを判別する(S215)。再生エラーが発見された記録地点は、保磁力の強度が高い第1保磁力分布クラスに属する記録地点と判断される(S216)。
【0040】
一方、ステップS215を通じて再生エラーが発見されない記録地点に対しては、第1リファレンスパラメータ値R1より小さい第2リファレンスパラメータ値R2(図5参照)を設定し(S217)、第2リファレンスパラメータ値R2に基づいた記録信号を利用して第2テストデータを記録する(S218)。次いで、第2テストデータを再生して(S219)、再生エラーがあるか否かを判別する(S220)。ステップS220で再生エラーが発見された記録地点は、第1保磁力分布クラスよりは保磁力の強度が低い第2保磁力分布クラスに属する記録地点と判断される(S221)。ステップS220で再生エラーが発見されない記録地点は、第2保磁力分布クラスよりも保磁力の強度が低い第3保磁力分布クラスに属する記録地点と判断される(S222)。設定された第1及び第2リファレンスパラメータ値R1,R2の適正性如何も、第1実施形態のリファレンスパラメータR0と同様に結果により判断される。
【0041】
ディスク110の各記録地点に対して第1、第2及び第3保磁力分布クラスに分類した結果は、メンテナンスシリンダー(図示せず。)に保存される(S224)。一方、本発明の第2実施形態と異なり、サイズの異なる3つ以上のリファレンスパラメータが設定されることもある。これにより、ディスクの保磁力分布は、リファレンスパラメータの個数より1つさらに多い数のクラスに分類される。
【0042】
上記した方法で得られたディスク110の保磁力分布を利用してデータを記録するために、現在の周辺温度を測定する(S230)。次いで、測定された周辺温度が常温と同じであるか否かを判断する(S240)。ステップS211での常温とステップS240での常温は、同じ温度に設定されねばならず、通常的に、常温は30℃に設定される。
【0043】
測定された周辺温度が常温と同じであれば、ランダムにディスク110上の記録地点を選択してデータを記録する(S241)。測定された周辺温度が常温と同じでなければ、周辺温度が常温より高いか否かを判断する(S250)。周辺温度が常温より高ければ、周辺温度が常温より高い温度に設定されたリファレンス温度より高いか否かを判断する(S260)。
【0044】
もし、周辺温度がリファレンス温度より高ければ、ディスク110の温度上昇幅が比較的大きくて保磁力の強度が大幅低下すると予想されるので、3つの保磁力分布クラスのうち、保磁力の強度が最も高い第1保磁力分布クラスに属する記録地点を選択してデータを記録する(S261)。もし、周辺温度がリファレンス温度より高くなければ、ディスク110の温度上昇幅が比較的小さくて保磁力の強度が小幅低下すると予想されるので、第1保磁力分布クラスより保磁力の強度が低い第2保磁力分布クラスに属する記録地点を選択してデータを記録する(S262)。一方、ステップS250を通じて周辺温度が常温より低いと判断されれば、ディスク110の温度下降により保磁力の強度が増大すると予想されるので、3つの保磁力分布クラスのうち、保磁力の強度が最も低い第3保磁力分布クラスに属する記録地点を選択してデータを記録する(S251)。
【0045】
データの記録ステップS241,S251,S261,S262では、常温での記録信号パラメータの最適値P0(図5参照)に基づいた記録信号を利用してデータを記録する。「記録信号パラメータの最適値P0に基づいた記録信号」とは、記録信号パラメータの最適値P0を有する特定のパラメータ(例えば、Wc、OSA、OSDなど)成分が記録信号に含まれていることを意味する。
【0046】
本発明の実施形態によれば、温度の変化にもかかわらず、データ記録の信頼性が低下しない。また、磁気ヘッドの記録磁界は変化させず、かつ温度の変化にもかかわらず、データ記録の信頼性を維持できる。
【0047】
すなわち、本発明の実施形態によれば、周辺温度の変化によって最適の記録地点にデータが記録されるので、データ記録の信頼性が向上する。また、常温で最適化された記録信号を利用してデータ記録媒体にデータを記録するにもかかわらず、データ記録の信頼性が低下しない。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0049】
例えば、複数枚のディスクを備えたハードディスクドライブについても本発明のデータ記録方法が適用されうる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ハードディスクドライブ関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ハードディスクドライブの構造を示す平面図である。
【図2】データ記録媒体であるディスクを示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるデータ記録媒体の保磁力分布を利用したデータ記録方法を示すフローチャートである。
【図4】図3でデータ記録媒体の保磁力分布を測定する方法を詳細に示すフローチャートである。
【図5】データ記録媒体の保磁力分布を測定する方法を説明するためのグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態によるデータ記録媒体の保磁力分布を利用したデータ記録方法を示すフローチャートである。
【図7】図6でデータ記録媒体の保磁力分布を測定する方法を詳細に示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
100 ハードディスクドライブ
101 ベース部材
105 スピンドルモータ
110 ディスク
111 パーキング領域
112 データ領域
116 基板
117 磁性体層
118 保護層
119 潤滑剤層
120 アクチュエータ
121 HSA
122 ピボット軸受
124 スイングアーム
126 サスペンション
128 ヘッドスライダー
130 ボイスコイルモータ
140 印刷回路ボード
145 電子回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ記録が可能な複数の記録地点を含むデータ記録媒体の保磁力分布を測定する保磁力分布測定ステップと、
現在の周辺温度を測定する周辺温度測定ステップと、
前記周辺温度が常温より高ければ、保磁力の強度が相対的に高い記録地点を優先的に選択してデータを記録し、前記周辺温度が常温より低ければ、保磁力の強度が相対的に低い記録地点を優先的に選択してデータを記録するデータ記録ステップと、
を含むことを特徴とする、データ記録方法。
【請求項2】
前記データ記録ステップで、常温での記録信号パラメータの最適値に基づいた記録信号を利用して、前記選択された記録地点にデータを記録することを特徴とする、請求項1に記載のデータ記録方法。
【請求項3】
前記データ記録媒体の保磁力分布は、保磁力の強度によって複数のクラスに分類され、前記周辺温度も、前記周辺温度の高低によって前記保磁力分布クラスと対応する同数の周辺温度クラスに分類されて、前記データ記録ステップで、測定された周辺温度が属する周辺温度クラスに対応する保磁力分布クラスに属する記録地点に優先的にデータが記録されることを特徴とする、請求項1に記載のデータ記録方法。
【請求項4】
前記保磁力分布測定ステップは、
常温での記録信号パラメータの最適値を探すステップと、
前記最適パラメータ値より小さいリファレンスパラメータ値を設定するステップと、
前記リファレンスパラメータ値に基づいた記録信号を利用して、データ記録媒体の各記録地点にテストデータを記録するステップと、
前記各記録地点に記録されたテストデータを再生して、エラーがあれば、保磁力の強度が相対的に高い記録地点と判断し、エラーがなければ、保磁力の強度が相対的に低い記録地点と判断するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のデータ記録方法。
【請求項5】
前記記録信号パラメータには、Wc(Write Current)、OSA(Overshoot Amplitude)及びOSD(Overshoot Duration)のうち少なくとも1つが含まれることを特徴とする、請求項4に記載のデータ記録方法。
【請求項6】
前記記録信号パラメータの最適値は、BERまたはCSMが最小である時の記録信号パラメータの値であることを特徴とする、請求項4に記載のデータ記録方法。
【請求項7】
前記リファレンスパラメータ値は、大きさの異なる複数個が設定され、前記データ記録媒体の保磁力分布は、前記リファレンスパラメータ値の個数より1つさらに多い数のクラスに分類されることを特徴とする、請求項4に記載のデータ記録方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−47277(P2008−47277A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206708(P2007−206708)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】