説明

データ記録装置およびデータ記録方法

【課題】 従来のフライトレコーダなどの記録装置は、メモリに順番にデータを記録していたため、一定期間以上のデータを保存できなかった。
【解決手段】 メモリの記憶領域を複数のブロックに分割し、分割したブロックを1つのブロックから構成されるグループと複数のブロックから構成されるグループとから成る所定数のグループに別けた上で、メモリへのデータ書き込み時に特定グループを順次輪番に選択し、選択した特定グループに属する特定ブロックに入力データを書き込む際、複数のブロックを構成単位とするグループを特定のグループとして選択した場合には、選択されたグループに属する複数のブロック領域の中から、同グループが選択される毎に輪番で、データの書き込みを行うブロックを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星や航空機などの移動体に搭載され、移動体における異常発生時のデータを記録するためのデータ記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機や人工衛星などに搭載さるフライトレコーダやデータレコーダは、常時データを記録し、航空機や人工衛星において事故などの異常が発生した場合、記録されたデータを再生し、原因を解明するために使用される。
【0003】
しかし、衝撃や放射線に対する高い耐性が求められるため、使用される記録装置の容量は一般に使用されるものに比べ小さいことが多い。このため、記録できる時間に制約が生じていた。
【0004】
従来のフライトレコーダに代表されるデータ記録装置は、メモリの記憶領域におけるアドレスの先頭から順番に記録し、記録容量が上限に達すると再び先頭から記録を行う。このため、データの保存期間は、単純にメモリの記録容量と一度に保存可能なデータ量によって決まる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−137696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の記録装置は、入力データを入力された順番にリアルタイムで記録して行き、記録容量の上限に達するとデータの古い方から順番に上書きされて、古いデータから順番に消去される。このため、外部からの電源供給の停止や衝撃などのあらかじめ決められた記録停止条件が検出されて、データの記録を停止した場合は、異常が発生した時点の状況は保存されるが、最初の異常が発生した時点から時間が経過した後で異常を検知した場合や異常を検知できなかった場合には、古いデータが消去されて、最初に異常が発生した時点の情報が一切残らないという問題があった。
【0007】
このため、古いデータの一部の保存期間を長くし、異常発生時前後のデータが保存されるようにして、異常発生時の原因究明に役立つ可能性を高める方策が必要となる。この方策として、古いデータの一部を残しながら記録する方法が考えられているが、データが断片化しないように、データ管理を簡易に行う方法が必要とされていた。また、断片化を避けるために、大量のデータのコピーを行う方法もあるが、リアルタイムでデータコピーを高速に行うための高い演算処理能力が必要とされていた。
【0008】
本発明は、係る問題を解決するためになされたもので、記録装置に高い演算処理能力が無い場合であっても、データのコピーなどを行わず、簡単な方法で古いデータの一部を残しながら、最新のデータを記録することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるデータ記録装置は、記憶領域に連続的に入力データを書き込むメモリと、上記メモリの記憶領域を複数のブロック領域に分割し、分割したそれぞれのブロック領域を1つのブロック領域から構成されるグループと複数のブロック領域から構成されるグループとから成る所定数のグループに別けた上で、上記メモリへのデータ書き込み時に特定のグループを順次輪番に選択し、選択した特定のグループに属する特定のブロック領域に上記入力データを書き込むように書き込み制御を行うコントローラと、を備え、上記コントローラは、上記複数のブロック領域を構成単位とするグループを特定のグループとして選択した場合、選択されたグループに属する複数のブロック領域の中から、同グループが選択される毎に輪番で、上記入力データを書き込む特定のブロック領域を切り替えることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、入力データを順に記録する際に、データの一部をメモリにおける複数の記憶領域に周期的に保存しておくことで、データを順にメモリに記録した場合に比べて、より長期間所要データを保存できる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1によるデータレコーダを構成するデータ記録装置の構成を示す図である。図2は、本発明に係るメモリの記憶領域の構成例を示す図であり、メモリ2の記憶領域を所定数の小記憶領域で分割した例を示す。
図1において、データ記録装置1は、データを記録する記憶媒体であるメモリ2と、メモリ2への記録を制御するコントローラ3とを備えて構成される。メモリ2は、フラッシュメモリやHDDなどデータを記録できるものであり、媒体の種類は限定しない。コントローラ3は、CPU4と、RAM5と、ROM6を備えて構成される。図示しない入力装置から連続的に入力データが入力されると、入力データは単位データ毎に一旦RAM5に記憶される。その後、コントローラ3のROM6に格納されたデータ制御プログラムと外部から入力されるデータ制御情報に従い、CPU4の制御により、RAM5に一時格納された単位データがメモリ2における特定の記憶領域に転送される。
なお、コントローラ3は、本実施の形態によるデータ記録装置を実現できるものであるならば、別の構成であっても構わない。また、図示しない電源がコントローラ3やメモリ2に接続され、電源供給を行うことは謂うまでなく、その説明は省く。
【0012】
図2において、メモリ2の分割した小記憶領域をブロック領域(以下、ブロック)と称する。入力データは、ブロックの記憶領域サイズを単位として、メモリ2に格納される。図の例では、ブロック1からブロック8−2までの12個のブロックに分割されている。各ブロックは、8つのグループG1〜G8に分類別けされている。
例えば、グループG1はブロック1から構成される。グループG2はブロック2−1、2−2から構成される。グループG3はブロック3から構成される。グループG4はブロック4−1、4−2から構成される。グループG5はブロック5から構成される。グループG6はブロック6−1、6−2から構成される。グループG7はブロック7から構成される。グループG8はブロック8−1、8−2から構成される。このように、グループには2種類のグループがあり、グループG1、G3、G5、G7は各1つのブロックをグループの所属構成単位とする第1種グループであり、グループG2、G4、G6、G8はそれぞれ複数のブロックをグループの所属構成単位とする第2種グループである。図2の例では、第2種グループが各2つのブロックを所属構成単位としている。
【0013】
次に、実施の形態1による処理動作について説明する。
コントローラ3は、メモリ2のグループG1に属するブロック1から順に、データの記録を開始し、順次別のグループに切り替えてデータを記録するブロックを選択して行く。このとき、第1種グループG1、G3、G5、G7に属する各ブロックについては、各所属する一つのブロックにデータの記録を行う。また、複数のブロックから構成される第2種グループG2、G4、G6、G8に属するブロックについては、同一グループ内の一つのブロックを順次輪番に切り替え選択して、選択した特定のブロックに対してのみ、順次データの記録を行って行く。コントローラ3が記録対象とするブロックは、その選択すべきブロックを特定するための番号もしくは記録順序が、予めROMに格納されたプログラムや外部から入力されるデータ制御情報に基づいて決定される。
【0014】
例えば、最初の入力データをメモリ2のブロック1に記録した後、グループG2のブロックに対しては、そのうちの一つのブロック、例えば番号の小さい方のブロック2−1に2番目の記録を行う。このようにして、順番にグループを選択し、入力データがグループG8に属するブロック(例えばブロック8−1)まで記録された後、再び最初のグループG1に所属するブロック1に戻り、別のグループに対して順次データの記録を行う。また、再び複数のブロックから構成される第2種グループの所属ブロックに記録する場合、記録されていない内の1つのブロック(例えばブロック8−2)、もしくは、記録されているデータが古いほうのブロックに切り替えて、データを記録する。これを何度も輪番に繰り返し、連続的にデータ記録を行う。また、このデータ記録によって、周期的に一部の古いデータが残ったまま、新規データを記録することが可能となる。この際、グループの分類の仕方や、同一グループ内の所属ブロックの数や、分割するブロック数、ブロックにおけるデータ領域の大きさ、グループやブロックの周期的な選択順序などを適宜調整することで、単純なアルゴリズムで、効率的に古いデータを保存することができる。
【0015】
ここで、何も記録されていない状態から16ブロック分のデータを記録した場合の、各ブロックへのデータ格納例について説明する。
図3は、データ記録が行われる最初の8ブロックとして、ブロック1、ブロック2−1、ブロック3、ブロック4−1、ブロック5、ブロック6−1、ブロック7、ブロック8−1がデータ記録対象の特定ブロックとして順次選択され、データが記録された状態を示す図である。
次に、図4は、図3に引続いてデータ記録が行われる残りの8ブロックとして、1、2−2、3、4−2、5、6−2、7、8−2を、データ記録対象の特定ブロックとして順次切り替え選択され、データが記録された状態を示す図である。
この後、データ格納が行われる際は、再び図3に示すブロックの選択順序でブロックが選択され、順次データが記録されて行く。
【0016】
このように、連続して記録されているデータは、ブロック8−1、1、2−2、3、4−2、5、6−2、7、8−2の9ブロックであるが、この中で最も古いデータは、ブロック2−1に保存されたデータであり、このブロックには14ブロック前に入力された古いデータが記録されている。この場合、単純に12ブロックを使用して順次データ記録を行った場合に比べて、3ブロック分古いデータの一部を残したまま、新規入力データを保存することができる。
【0017】
かくして、入力データを記録する際、古い過去のデータを別の記憶領域にコピーしておおくこと無く、入力された古いデータの一部を間引いて記憶保存しておくことができる。これにより、人工衛星のテレメトリや、航空管制のボイスレコーダなどをデータレコーダに記録する際、記憶容量の関係で全てのデータ保存ができない場合であっても、データレコーダに記録された最低限のデータを保存しておくことで、異常発生時の原因解明を行う際に、保存データを原因解明のための有効な記録データとして利用できる可能性を高めることができる。
【0018】
以上説明したとおり、この実施の形態によるデータ記録装置は、記憶領域に連続的に入力データを書き込むメモリと、上記メモリの記憶領域を複数のブロック領域に分割し、分割したそれぞれのブロック領域を1つのブロック領域から構成されるグループと複数のブロック領域から構成されるグループとから成る所定数のグループに別けた上で、上記メモリへのデータ書き込み時に特定のグループを順次輪番に選択し、選択した特定のグループに属する特定のブロック領域に上記入力データを書き込むように書き込み制御を行うコントローラとを備え、上記コントローラは、上記複数のブロック領域を構成単位とするグループを特定のグループとして選択した場合、選択されたグループに属する複数のブロック領域の中から、同グループが選択される毎に輪番で、上記入力データを書き込む特定のブロック領域を切り替えることを特徴とする。
【0019】
また、連続的に入力データを書き込むメモリの記憶領域を複数のブロック領域に分割し、分割したそれぞれのブロック領域を、1つのブロック領域から構成されるグループと複数のブロック領域から構成されるグループとから成る所定数のグループに別けた上で、上記メモリへのデータ書き込み時に特定のグループを順次輪番に選択する第1のステップ、上記第1のステップにて選択した特定のグループに属する特定のブロック領域に入力データを書き込む第2のステップ、から構成され、上記第2のステップは、上記第1のステップにて複数のブロック領域を構成単位とするグループが選択された場合、選択されたグループに属する複数のブロック領域の中から、同グループが選択される毎に輪番で、上記入力データを書き込む特定のブロック領域を切り替える処理を行う。
【0020】
これにより、入力データを順に記録する際に、データの一部をメモリにおける複数の記憶領域に周期的に保存しておくことで、データを順にメモリに記録した場合に比べて、より長期間所要データを保存できる効果が得られる。
【0021】
実施の形態2.
図5は、この発明に係る実施の形態2の構成を示す図である。実施の形態1から、複数のブロックを有するグループの数と、複数のグループにそれぞれ属するブロックの数を可変させたものである。その他の構成は、実施の形態1と同様の構成である。この実施の形態2のコントローラ3は、複数のブロックを構成単位とする第2種グループについて、それぞれのグループに属するブロックの数をグループ毎に可変とすることで、データの保存期間を変更することを特徴とする。
【0022】
次に、実施の形態2の処理動作について説明する。ここでは、実施の形態1と同様にして、何も記録されていない状態から32ブロック分のデータを記録した場合の、各ブロックへのデータ格納例について説明する。
【0023】
図6は、データ記録が行われる最初の8ブロックとして、ブロック1、2、3、4−1、5、6、7、8−1の順に、データ記録対象の特定ブロックが順次選択され、データが記録された状態を示す図である。
次に、図7は、図6に引続いてデータ記録が行われる残りの9ブロック目から16ブロック目として、ブロック1、2、3、4−2、5、6、7、8−2の順に、データ記録対象の特定ブロックが順次切り替え選択され、データが記録された状態を示す図である。
続いて、図8は、図7に引続いてデータ記録が行われる残りの17ブロック目から24ブロック目として、ブロック1、2、3、4−1、5、6、7、8−3の順に、データ記録対象の特定ブロックが順次切り替え選択され、データが記録された状態を示す図である。
最後に、図9は、図8に引続いてデータ記録が行われる残りの25ブロック目から32ブロック目として、ブロック1、2、3、4−2、5、6、7、8−4の順に、データ記録対象の特定ブロックが順次切り替え選択され、データが記録された状態を示す図である。
最新の連続するデータは、ブロック8−3、1、2、3、4−2、5、6、7、8−4となり9ブロックだが、もっとも古いデータとしては、8−1に記録された24ブロック分古いデータが記録される。
この後、データ格納が行われる際は、再び図6に示すブロックの選択順序でブロックが選択され、順次データが記録されて行く。
【0024】
このように、使用用途に応じてブロックの数や複数の領域をもつブロックの数を可変することで、保存できるデータの周期や期間を変えることができる。かくして、データのコピーを行うことなく、簡単なアルゴリズムで連続的にデータの記録を行っても、古いデータを選択的に残すことができる。
【0025】
なお、実施の形態1および2で例示したブロックの配置は概念的なものであり、物理的な配置はこれと異なっていても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態1によるデータ記録装置の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態1によるメモリの分割の一例を表す説明図である。
【図3】本発明の実施形態1によるデータ記録が行われる最初の8ブロックとして、ブロック1、ブロック2−1、ブロック3、ブロック4−1、ブロック5、ブロック6−1、ブロック7、ブロック8−1がデータ記録対象の特定ブロックとして順次選択され、データが記録された状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態1によるデータ記録が行われる図3に続く8ブロックとして、ブロック1、ブロック2−2、ブロック3、ブロック4−2、ブロック5、ブロック6−2、ブロック7、ブロック8−2がデータ記録対象の特定ブロックとして順次選択され、データが記録された状態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態2によるメモリの分割の一例を表す説明図である。
【図6】本発明の実施形態2によるデータ記録が行われる最初の8ブロックとして、ブロック1、2、3、4−1、5、6、7、8−1の順に、データ記録対象の特定ブロックが順次選択され、データが記録された状態を示す図である。
【図7】本発明の実施形態2による図6に続いてデータ記録が行われる、残りの9ブロック目から16ブロック目として、ブロック1、2、3、4−2、5、6、7、8−2の順に、データ記録対象の特定ブロックが順次切り替え選択され、データが記録された状態を示す図である。
【図8】本発明の実施形態2による図7に続いてデータ記録が行われる、残りの17ブロック目から24ブロック目として、ブロック1、2、3、4−1、5、6、7、8−3の順に、データ記録対象の特定ブロックが順次切り替え選択され、データが記録された状態を示す図である。
【図9】本発明の実施形態2による図8に続いてデータ記録が行われる、残りの25ブロック目から32ブロック目として、ブロック1、2、3、4−2、5、6、7、8−4の順に、データ記録対象の特定ブロックが順次切り替え選択され、データが記録された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 データ記録装置、2 メモリ、3 コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶領域に連続的に入力データを書き込むメモリと、
上記メモリの記憶領域を複数のブロック領域に分割し、分割したそれぞれのブロック領域を1つのブロック領域から構成されるグループと複数のブロック領域から構成されるグループとから成る所定数のグループに別けた上で、上記メモリへのデータ書き込み時に特定のグループを順次輪番に選択し、選択した特定のグループに属する特定のブロック領域に上記入力データを書き込むように書き込み制御を行うコントローラと、
を備え、
上記コントローラは、上記複数のブロック領域を構成単位とするグループを特定のグループとして選択した場合、選択されたグループに属する複数のブロック領域の中から、同グループが選択される毎に輪番で、上記入力データを書き込む特定のブロック領域を切り替えることを特徴としたデータ記録装置。
【請求項2】
コントローラは、複数のブロック領域を構成単位とするグループについて、それぞれのグループに属するブロック領域の数をグループ毎に可変することで、データの保存期間を変更することを特徴とした請求項1記載のデータ記録装置。
【請求項3】
連続的に入力データを書き込むメモリの記憶領域を複数のブロック領域に分割し、分割したそれぞれのブロック領域を、1つのブロック領域から構成されるグループと複数のブロック領域から構成されるグループとから成る所定数のグループに別けた上で、上記メモリへのデータ書き込み時に特定のグループを順次輪番に選択する第1のステップ、
上記第1のステップにて選択した特定のグループに属する特定のブロック領域に入力データを書き込む第2のステップ、から構成され、
上記第2のステップは、上記第1のステップにて複数のブロック領域を構成単位とするグループが選択された場合、選択されたグループに属する複数のブロック領域の中から、同グループが選択される毎に輪番で、上記入力データを書き込む特定のブロック領域を切り替える処理を行うことを特徴としたデータ記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−198443(P2009−198443A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43072(P2008−43072)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】