説明

データ通信システム、画像処理システム、及びデータ通信方法

【課題】システムに瞬間的に発生する過大なトラフィックを回避することができるデータ通信システム、及び画像処理システムを提供すること。
【解決手段】データ通信システムであって、ツリー構造の下位にあるデバイスである下位デバイスは、データ通信に先立って、データ通信が行なわれるノード間の通信経路に関する通信情報を、ツリー構造の最上位にあるデバイスである最上位デバイスに事前に通知する通知手段を備え、最上位デバイスは、複数の通信経路と、各ノード間の伝送路の許容帯域、及び、各ノード間において各通信経路で使用される帯域の総和である現状帯域とを保持する保持手段301と、前記通知手段により通知された通信情報と保持手段が保持する現状帯域とに基づいて、許容帯域を超えないように通信経路の帯域を制御する制御手段300とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ通信システム、画像処理システム、及びデータ通信方法に関し、さらに詳しく言えば、高速シリアルスイッチファブリックを介して複数のデバイスを接続したデータ通信システム、画像処理システム、及びデータ通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像データやその他のデータを扱う画像システム、例えばデジタル複写機、複合機(MFP)等の情報処理装置では、デバイス間のインタフェースにPCIバスが使用されている。しかし、パラレル方式のPCIバスでは、レーシングやスキューなどの問題があり、高速・高画質の画像形成装置に使用するには、転送レートが低い段階にきており、最近では、PCIバスのようなパラレル方式のインタフェースに代えて、IEEE1394やUSB等の高速シリアルインタフェースの使用が検討されている。例えば、特許文献1によれば、内部インタフェースとして、IEEE1394やUSB等の高速シリアルインタフェースを使用することが提案されている。
【0003】
また、他の高速シリアルインタフェースとして、PCIバス方式の後継規格に当るPCI Express(登録商標)なるインタフェースも提案され、実用化の段階にきている(例えば、非特許文献1参照)。このPCI Expressシステムは、概略的には、例えば非特許文献1中の図1等に示されるようなルートコンプレックス−スイッチ(任意階層)−デバイス等のツリー構造(木構造)によるデータ通信網として構成されている。
【0004】
さらに、近年においては、PCI Express アーキテクチャに基づく高速シリアルスイッチファブリックであるAdvanced Switching Interconnect規格も策定されている。このAdvanced Switching Interconnectは、PCI Expressの高速シリアル伝送の物理層とリンク層の技術をそのまま採用しつつ、より広範囲なアプリケーションに対応できるようにしたものであり、その接続対象はChip-to-Chip, Board-to-Boardを想定している。このAdvanced Switching Interconnectによれば、トラフィッククラスを仮想チャネルに対してマッピングすることにより、トラフィックの差別化(優先度をつける)を行うことができる。
【0005】
これらの技術をもとに、高速シリアルスイッチファブリックを用いると共に、様々な性質の異なるトラフィックを持つデバイスを高速シリアルスイッチファブリックに対して自由に拡張することができるスイッチで接続された画像システム、例えばプリンタやMFPも提案されている(特許文献2、3)。
【0006】
また、ツリー構造の上位から下位に至る経路を検出するための手段、当該経路における通信パラメータを検出するための手段を通信デバイスのハードウェア手段で実行出来るようにして、これらの検出処理を簡素化する方法が提案されている(特許文献4)。
【0007】
更に、PCI Expressアーキテクチャを構成し、シリアル通信を行うシステムにおいて、パケットデータを統計情報生成手段により通信状況をリアルタイムでモニタし、モニタした結果を重み情報更新手段にフィードバックすることで、シリアル通信路を実際に転送されたパケットデータのデータ転送量に応じた優先度付けを可能とする、つまり、リアルタイムで優先度を調停する方法が開示されている(特許文献5)。
【特許文献1】特開2001−016382号公報
【特許文献2】特開2007−065847号公報
【特許文献3】特開2005−354658号公報
【特許文献4】特開2006−211532号公報
【特許文献5】特開2007−249816号公報
【非特許文献1】"PCI Express 規格の概要"Interface誌、July'2003 里見尚志
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、複数のスイッチを経由してデバイスが接続されたプリンタやMFP内部において、あるスイッチの1つの出力ポートに瞬間的に過大なトラフィックが発生すると、異なる出力ポートのトラフィックの邪魔をして、最悪の場合別のスイッチのトラフィックに対してもデータ転送能力が低下するという事態に陥るため、異常画像が発生するという問題があった。また、従来技術のようにリアルタイムでデータ転送量を調整すると、データ通信開始時に、一時的に発生する過大なトラフィックを抑止することはできない。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、データ通信する通信経路を通信経路に含まれる各デバイスに事前に通知することにより、システムに瞬間的に発生する過大なトラフィックを回避することができるデータ通信システム、画像処理システム、データ通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面のデータ通信システムは、ポイントツーポイントで送受信される通信チャネルが確立される高速シリアルバスにより、スイッチ又はデバイスであるノードが接続されるツリー構造によるデータ通信網を用いてデータ通信を行なうデータ通信システムであって、前記ツリー構造の下位にあるデバイスである下位デバイスは、データ通信前に、データ通信が行なわれるエンドノード間の通信経路に関する通信情報を、前記ツリー構造の最上位にあるデバイスである最上位デバイスに通知する通知手段を備え、前記最上位デバイスは、複数の通信経路と、各ノード間の伝送路の許容帯域、及び、各ノード間において各通信経路で使用される帯域の総和である現状帯域とを保持する保持手段と、前記通知手段により通知された通信情報と前記保持手段が保持する現状帯域とに基づいて、前記許容帯域を超えないように前記通信経路の帯域を制御する制御手段と、を備える。
【0011】
また、本発明の他の局面のデータ通信システムは、ポイントツーポイントで送受信される通信チャネルが確立される高速シリアルバスにより、スイッチ又はデバイスであるノードが接続されるツリー構造によるデータ通信網を用いてデータ通信を行なうデータ通信システムであって、各ノードをデータ通信可能に接続する制御回線を備え、データ通信が行なわれる通信経路に含まれる前記デバイスは、該デバイスに接続され、前記通信経路に含まれる前記スイッチに対し、データ通信に関する通信情報を、前記制御回線を介して通知する通知手段と、各通信経路の帯域を制御する制御手段とを備え、前記スイッチは、該スイッチと接続されるノード間で通信される各通信経路の帯域に関する通信帯域情報を保持する帯域保持手段と、前記通知手段により通知された通信情報に基づいて更新された各通信経路における帯域の通信状態を示す通信状態情報を、前記制御回線を介して通知する状態通知手段と、を備え、前記制御手段は、前記状態通知手段により通知された通信状態情報に基づいて、各通信経路の帯域を制御する。
【0012】
また、本発明の他のデータ通信方法は、ポイントツーポイントで送受信される通信チャネルが確立される高速シリアルバスにより、スイッチ又はデバイスであるノードが接続されるツリー構造によるデータ通信網を用いてデータ通信を行なうデータ通信システムであって、前記ツリー構造の最上位にあるデバイスである最上位デバイスは、複数の通信経路と、各ノード間の伝送路の許容帯域、及び、各ノード間において各通信経路で使用される帯域の総和である現状帯域とを保持する保持手段を備えるデータ通信システムにおけるデータ通信方法であって、データ通信前に、データ通信が行なわれるノード間の通信経路に関する通信情報を、前記最上位デバイスに通知する通知ステップと、前記通知ステップにより通知された通信情報と前記保持手段が保持する現状帯域とに基づいて、前記許容帯域を超えないように前記通信経路の帯域を制御する制御ステップと、を有する。
【0013】
また、本発明の他のデータ通信方法は、ポイントツーポイントで送受信される通信チャネルが確立される高速シリアルバスにより、スイッチ又はデバイスであるノードが接続されるツリー構造によるデータ通信網を用いてデータ通信を行なうデータ通信システムであって、各ノードをデータ通信可能に接続する制御回線を備えるデータ通信システムにおけるデータ通信方法であって、データ通信が行なわれる通信経路に含まれる前記デバイスが、該デバイスに接続され、前記通信経路に含まれる前記スイッチに対し、データ通信に関する通信情報を、前記制御回線を介して通知する通知ステップと、前記スイッチが、前記通知ステップにより通知された通信情報に基づいて更新された各通信経路における帯域の通信状態を示す通信状態情報を、前記制御回線を介して通知する状態通知ステップと、前記デバイスが、前記状態通知ステップにより通知された通信状態情報に基づいて、各通信経路の帯域を制御する制御ステップとを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、データ通信する通信経路を通信経路に含まれる各デバイスに事前に通知することにより、システムに瞬間的に発生する過大なトラフィックを回避することができるデータ通信システム、画像形成装置、データ通信方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるデータ通信システムおよびデータ通信方法の最良な実施例を詳細に説明する。
【0017】
本発明を実施するための最良の実施例について図面を参照して説明する。以下では、PCI Expressの詳細について、[PCI Express規格の概要]〜[PCI Express のアーキテクチャの詳細]の欄で説明し、PCI Expressの技術を活用したAdvanced Switch Interconnectについて、[Advanced Switch Interconnectとは]〜[Advanced Switch Interconnect技術の特徴]の欄で説明し、本発明については、[データ通信システムの構成]〜[帯域制御の処理]の欄、及び各実施例の欄で説明する。
【0018】
[PCI Express規格の概要]
まず、本実施例は高速シリアルバスの一つであるPCI Express(登録商標)を利用するものであり、本実施例の前提として当該PCI Express規格の概要について、非特許文献1の一部抜粋により説明する。ここに、高速シリアルバスとは、1本の伝送路を用いてシリアル(直列)伝送により高速(100Mbps程度以上)にデータをやり取りすることができるインタフェースを意味する。
【0019】
PCI Expressは、PCIの後継規格としてコンピュータ全般に通用する標準拡張バスとして規格化されたバスであり、概略的には、低電圧差動信号伝送、ポイントツーポイントで送受信独立の通信チャネル、パケット化されたスプリットトランザクション、リンク構成の違いによる高いスケーラビリティなどの特徴を持つ。
【0020】
図1に既存のPCIシステム、図2にPCI Expressシステムの各々の構成例を示す。既存のPCIシステムにあっては、CPU100やAGPグラフィックス101やメモリ102が接続されたホストブリッジ103に対して、PCI-X(PCIの上位互換規格)デバイス104a,104bがPCI-Xブリッジ105aを介して接続されたり、PCIデバイス104c,104dが接続されたPCIブリッジ105bやPCIバススロット106が接続されたPCIブリッジ107がPCIブリッジ105cを介して接続されたりしたツリー構造(木構造)とされている。
【0021】
これに対して、PCI Expressシステムにあっては、CPU110やメモリ111が接続されたルートコンプレックス112に対して、PCI Expressグラフィックス113がPCI Express114aにより接続され、また、エンドポイント115aやレガシーエンドポイント116aがPCI Express114bにより接続されたスイッチ117aがPCI Express114cにより接続され、さらには、エンドポイント115bやレガシーエンドポイント116bがPCI Express114dにより接続されたスイッチ117bやPCIバススロット118が接続されたPCIブリッジ119がPCI Express114eにより接続されたスイッチ117cがPCI Express114fにより接続されたツリー構造(木構造)とされている。
【0022】
図3は、実際に想定されるPCI Expressプラットホーム例を示すブロック図である。図3に示す例は、デスクトップ/モバイルへの適用例を示し、CPU121がCPUホストバス122により接続され、メモリ123が接続されたメモリハブ124(ルートコンプレックスに相当する)に対して、例えば、グラフィックス125がx16のPCI Express126aにより接続され、また、変換機能を有するI/Oハブ127がPCI Express126bにより接続されている。
【0023】
このI/Oハブ127には、例えば、Serial ATA128によりストレージ129が接続され、LPC130によりローカルI/O131が接続され、USB 2.0132やPCIバススロット133が接続されている。さらには、I/Oハブ127には、PCI Express126cによりスイッチ134が接続され、このスイッチ134には、各々、PCI Express126d,126e,126fによりモバイルドック135、ギガビットイーサネット136(イーサネットは登録商標)、アドインカード137が接続されている。
【0024】
即ち、PCI Expressシステムでは、従来のPCI,PCI-X,AGPといったバスがPCI Expressで置き換わり、既存のPCI/PCI-Xデバイスを接続するためにブリッジが使用される。チップセット間の接続もPCI Express接続となり、IEEE1394,Serial ATA,USB 2.0などの既存のバスはI/OハブによりPCI Expressに接続される。
【0025】
[PCI Expressの構成要素]
A.ポート(Port)/レーン(Lane)/リンク(Link)
図4は、x4の場合の物理層の構造例を示す図である。ポートは、物理的には同一半導体内にあり、リンクを形成するトランスミッタ/レシーバの集合で、論理的にはコンポーネント・リンク間を1対1で接続(ポイント・ツー・ポイント)するインタフェースを意味する。転送レートは、例えば片方向2.5Gbpsとされている。レーンは、例えば0.8Vの差動信号ペアのセットで、送信側の信号ペア(2本)、受信側の信号ペア(2本)からなる。リンクは、2つのポートとその間を結ぶレーンの集まりであり、コンポーネント間のデュアルシンプレックス通信バスである。「xNリンク」はN本のレーンから構成され、現在の規格では、N=1,2,4,8,16,32が定義されている。図示例は、x4リンク例である。
【0026】
図5は、デバイス間のレーン接続例を示す図である。例えば、図5に示すように、デバイスA,B間を結ぶこのレーン幅Nを可変することにより、スケーラブルなバンド幅を構成することが可能となる。
【0027】
B.ルートコンプレックス(Root Complex)
ルートコンプレックス112は、I/O構造の最上位に位置し、CPUやメモリサブシステムをI/Oに接続する。ブロック図などでは、図3に示すように、「メモリハブ」と記述されることが多い。ルートコンプレックス112(又は、124)は、1つ以上のPCI Expressポート(ルートポート)(図2中では、ルートコンプレックス112中の四角で示す)を持ち、各々のポートは独立したI/O階層ドメインを形成する。I/O階層ドメインは、単純なエンドポイントである場合(例えば、図2中のエンドポイント115a側の例)や、多数のスイッチやエンドポイントから形成される場合(例えば、図2中のエンドポイント115bやスイッチ117b,115c側の例)がある。
【0028】
C.エンドポイント(End Point)
エンドポイント115は、タイプ00hのコンフィグレーション空間ヘッダを持つデバイス(具体的には、ブリッジ以外のデバイス)で、レガシーエンドポイントとPCI Expressエンドポイントとに分けられる。両者の大きな違いは、PCI ExpressエンドポイントはBAR(ベースアドレスレジスタ)でI/Oリソースを要求せず、このためI/Oリクエストを要求しない。また、PCI Expressエンドポイントは、ロックリクエストもサポートしていない。
【0029】
D.スイッチ(Switch)
スイッチ117(又は、134)は、2つ以上のポートを結合し、ポート間でのパケットルーティングを行う。図6は、スイッチの論理的構造例を示すブロック図である。コンフィグレーションソフトウェアからは、当該スイッチは、図6に示すように、仮想PCI-PCIブリッジ141の集合体として認識される。図中、両矢印はPCI Expressリンク114(又は、126)を示し、142a〜142dはポートを示す。
【0030】
このうち、ポート142aはルートコンプレックスに近い方のアップストリームポートであり、ポート142b〜142dはルートコンプレックスから遠い方のダウンストリームポートである。
【0031】
E.PCI Express114e−PCIブリッジ119
PCI ExpressからPCI/PCI-Xへの接続を提供する。これにより、既存のPCI/PCI-XデバイスをPCI Expressシステム上で使用することができる。
【0032】
[階層アーキテクチャ]
図7−1は、既存のPCIのアーキテクチャを示すブロック図である。従来のPCIのアーキテクチャは、図7−1に示すように、プロトコルとシグナリングが密接に関連する構造であり階層という考え方はなかった。
【0033】
図7−2は、PCI Expressのアーキテクチャを示すブロック図である。PCI Expressでは、図7−2に示すように、一般的な通信プロトコルやInfiniBandのように、独立した階層構造とされ、各層に分けて仕様が定義されている。即ち、最上位のソフトウェア151、最下位の機構(メカニカル)部152間に、トランザクション層153、データリンク層154、物理層155を持つ構造とされている。
【0034】
これにより、各層のモジュール性が確保され、スケーラビリティを持たせることやモジュールの再利用が可能となる。例えば、新たな信号コーディング方式や伝送媒体を採用する場合、物理層を変更するだけでデータリンク層やトランザクション層は変更せずに対応できる。
【0035】
図8は、PCI Expressの階層構造を示すブロック図である。PCI Expressのアーキテクチャの中心となるのは、トランザクション層153、データリンク層154、物理層155であり、各々図8を参照して説明する以下のような役割を持つ。
【0036】
A.トランザクション層153
トランザクション層153は、最上位に位置し、トランザクションレイヤパケット(TLP)の組み立て、分解機能を持つ。トランザクションレイヤパケット(TLP)は、リード/ライト、各種イベントといったトランザクションの伝達に用いられる。また、トランザクション層153は、トランザクションレイヤパケット(TLP)のためのクレジットを用いたフロー制御を行う。各層153〜155におけるトランザクションレイヤパケット(TLP)の概要を図9に示す(詳細は、後述する)。
【0037】
B.データリンク層154
データリンク層154の主な役割は、エラー検出/訂正(再送)によりトランザクションレイヤパケット(TLP)のデータ完全性を保証することと、リンク管理である。データリンク層154間では、リンク管理やフロー制御のためのパケットのやり取りを行う。このパケットは、トランザクションレイヤパケット(TLP)と区別するために、データリンクレイヤパケット(DLLP)と呼ばれる。
【0038】
C.物理層155
物理層155は、ドライバ、入力バッファ、パラレル−シリアル/シリアル−パラレル変換器、PLL、インピーダンス整合回路といったインタフェース動作に必要な回路を含んでいる。また、論理的な機能としてインタフェースの初期化・保守の機能を持つ。物理層155は、データリンク層154/トランザクション層153を実際のリンクで使用される信号技術から独立させる役目も持っている。
【0039】
なお、PCI Expressのハードウェア構成上、エンベデッド・クロックという技術を採用しており、クロック信号はなく、クロックのタイミングはデータ信号中に埋め込まれており、受信側でデータ信号のクロス・ポイントを基にクロックを抽出する方式とされている。
【0040】
[コンフィグレーション空間]
図10は、PCI Expressのコンフィグレーション空間を示す説明図である。PCI Expressは、従来のPCIと同様にコンフィグレーション空間を持つが、その大きさは従来のPCIが256バイトであるのに対して、図10に示すように、4096バイトへと拡張されている。
【0041】
これにより、多数のデバイス固有レジスタセットを必要とするデバイス(ホストブリッジなど)に対しても、将来的に十分な空間が確保されている。PCI Expressでは、コンフィグレーション空間へのアクセスは、フラットなメモリ空間へのアクセス(コンフィグレーションリード/ライト)で行われ、バス/デバイス/機能/レジスタ番号はメモリアドレスにマップされている。当該空間の先頭256バイトは、PCIコンフィグレーション空間として、BIOSや従来のOSからI/Oポートを使用した方法でもアクセスできる。
【0042】
従来のアクセスをPCI Expressでのアクセスに変換する機能は、ホストブリッジ上に実装される。00hから3FhまではPCI2.3互換のコンフィグレーションヘッダとなっている。
【0043】
これにより、PCI Expressで拡張された機能以外であれば、従来のOSやソフトウェアをそのまま使用することができる。即ち、PCI Expressにおけるソフトウェア層は、既存のPCIと互換性を保ったロード・ストア・アーキテクチャ(プロセッサが直接I/Oレジスタをアクセスする方式)を継承している。しかし、PCI Expressで拡張された機能(例えば、同期転送やRAS(Reliability,Availability and Serviceability)などの機能)を使用するには、4KバイトのPCI Express拡張空間にアクセスできるようにする必要がある。
【0044】
なお、PCI Expressとしては様々なフォームファクタ(形状)が考えられるが、具体化している例としては、アドインカード、プラグインカード(Express Card)、Mini PCI Expressなどがある。
【0045】
[PCI Express のアーキテクチャの詳細]
PCI Express のアーキテクチャの中心となっているトランザクション層153、データリンク層154、物理層155について、各々詳細に説明する。
【0046】
A.トランザクション層153
トランザクション層153の主な役割は、前述したように、上位のソフトウェア層151と下位のデータリンク層154との間でトランザクションレイヤパケット(TLP)の組み立てと分解を行うことである。
【0047】
a.アドレス空間とトランザクションタイプ
PCI Expressでは、従来のPCIでサポートされていたメモリ空間(メモリ空間とのデータ転送用)、I/O空間(I/O空間とのデータ転送用)、コンフィグレーション空間(デバイスのコンフィグレーションとセットアップ用)に加えて、メッセージ空間(PCI Expressデバイス間のインバンドでのイベント通知や一般的なメッセージ送信(交換)用割り込み要求や確認は、メッセージを「仮想ワイヤ」として使用することにより伝達される)が追加され、4つのアドレス空間が定義されている。各々の空間に対してトランザクションタイプが定義されている(メモリ空間、I/O空間、コンフィグレーション空間は、リード/ライト、メッセージ空間は基本(ベンダ定義含む))。
【0048】
b.トランザクションレイヤパケット(TLP)
PCI Expressは、パケット単位で通信を行う。図9は、トランザクションレイヤパケットのフォーマット例を示す図である。図9に示したトランザクションレイヤパケット(TLP)のフォーマットにおいて、ヘッダのヘッダ長は3DW(DWはダブルワードの略;合計12バイト)又は4DW(16バイト)で、トランザクションレイヤパケット(TLP)のフォーマット(ヘッダ長とペイロードの有無)、トランザクションタイプ、トラフィッククラス(TC)、アトリビュートやペイロード長などの情報が含まれる。パケット内の最大ペイロード長は1024DW(4096バイト)である。
【0049】
ECRCは、エンドツーエンドのデータ完全性を保証するためのもので、トランザクションレイヤパケット(TLP)部分の32ビットCRCである。これは、スイッチ内部などでトランザクションレイヤパケット(TLP)にエラーが発生した場合、LCRC(リンクCRC)ではエラーを検出できないためである(エラーとなったTLPでLCRCが再計算されるため)。リクエストは、完了パケットが不要なものと必要なものとがある。
【0050】
c.トラフィッククラス(TC)と仮想チャネル(VC)
上位のソフトウェアは、トラフィッククラス(TC)を使用することによりトラフィックの差別化(優先度をつける)を行うことができる。例えば、映像データをネットワークのデータよりも優先して転送する、といったことが可能となる。トラフィッククラス(TC)はTC0からTC7まで8つある。
【0051】
図11は、仮想チャネルの概念を説明するための模式図である。仮想チャネル(VC:Virtual Channel)は、各々独立した仮想通信バス(同一のリンクを共用する複数の独立したデータ・フロー・バッファを使用するメカニズム)で、各々がリソース(バッファやキュー)を持ち、図11に示すように、独立したフロー制御を行う。
【0052】
これにより、1つの仮想チャネルのバッファが満杯の状態(full)になっても、他の仮想チャネルの転送を行うことができる。つまり、物理的には1つのリンクを仮想的な複数のチャネルに分けることで、有効に使用することができる。例えば、図11中に示すように、スイッチを経由してルートのリンクが複数のデバイスに分かれる場合、各デバイスのトラフィックの優先度を制御することができる。VC0は必須で、コストパフォーマンスのトレードオフに応じてその他の仮想チャネル(VC1〜VC7)が実装される。図11中の実線矢印は、デフォルト仮想チャネル(VC0)を示し、破線矢印はその他の仮想チャネル(VC1〜VC7)を示している。
【0053】
トランザクション層内では、トラフィッククラス(TC)が仮想チャネル(VC)にマッピングされる。1つの仮想チャネル(VC)に対して1つ又は複数のトラフィッククラス(TC)をマッピングできる(仮想チャネル(VC)の数が少ない場合)。単純な例では、各トラフィッククラス(TC)から各仮想チャネル(VC)に1対1、全てのトラフィッククラス(TC)を仮想チャネルVC0にマッピングする、といったことが考えられる。TC0−VC0のマッピングは、必須/固定で、それ以外のマッピングは上位のソフトウェアから制御される。ソフトウェアはトラフィッククラス(TC)を利用することで、トランザクションの優先度を制御することが可能となる。
【0054】
d.フロー制御
受信バッファのオーバーフローを避け、伝送順序を確立するためにフロー制御(FC:Flow Control)が行われる。フロー制御は、リンク間のポイントツーポイントで行われ、エンドツーエンドではない。従って、フロー制御により最終的な相手(コンプリータ)にパケットが届いたことを確認することはできない。
【0055】
PCI Expressのフロー制御は、クレジット・ベースで行われる(データ転送を始める前に、受け取り側のバッファの空き状況を確認し、オーバーフロー、アンダフローが発生しないメカニズム)。即ち、受信側はリンク初期化時にバッファ容量(クレジット値)を送信側に通知し、送信側はクレジット値と送信するパケットの長さとを比較し、一定の残りがある場合のみパケットを送信する。このクレジットには6種類ある。
【0056】
フロー制御の情報交換はデータリンク層のデータリンクレイヤパケット(DLLP)を使用して行われる。フロー制御はトランザクションレイヤパケット(TLP)のみに適用され、データリンクレイヤパケット(DLLP)には適用されない(DLLPは常時送受信可能)。
【0057】
B.データリンク層154
データリンク層154の主な役割は、前述したように、リンク上の2つのコンポーネント間での信頼性の高いトランザクションレイヤパケット(TLP)交換機能を提供することである。
【0058】
a.トランザクションレイヤパケット(TLP)の扱い
トランザクション層153から受け取ったトランザクションレイヤパケット(TLP)に対しては、先頭に2バイトのシーケンス番号、末尾に4バイトのリンクCRC(LCRC)を付加して、物理層155に渡す(図9参照)。トランザクションレイヤパケット(TLP)は、リトライバッファに保管され、相手から受信確認(ACK)が届くまで再送される。トランザクションレイヤパケット(TLP)の送信に失敗が続いた場合は、リンク異常であると判断して物理層155に対してリンクの再トレーニングを要求する。リンクのトレーニングが失敗した場合、データリンク層154の状態はインアクティブに遷移する。
【0059】
物理層155から受け取ったトランザクションレイヤパケット(TLP)は、シーケンス番号とリンクCRC(LCRC)が検査され、正常であればトランザクション層153に渡され、エラーがあった場合は再送を要求する。
【0060】
b.データリンクレイヤパケット(DLLP)
図12は、データリンクレイヤパケットのフォーマット例を示す図である。トランザクションレイヤパケット(TLP)は、物理層から送信されるときに自動的に図12に示すようなデータリンクレイヤパケット(DLLP)に分割されて各レーンに送信される。データリンク層154が生成するパケットは、データリンクレイヤパケット(DLLP)と呼ばれ、データリンク層154間でやり取りされる。データリンクレイヤパケット(DLLP)には、
・Ack/Nak:TLPの受信確認、リトライ(再送)
・InitFC1/InitFC2/UpdateFC:フロー制御の初期化とアップデート
・電源管理のためのDLLP
なる種類がある。
【0061】
図12に示すように、データリンクレイヤパケット(DLLP)の長さは6バイトで、種類を示すDLLPタイプ(1バイト)、DLLPの種類で固有の情報(3バイト)、CRC(2バイト)から構成される。
【0062】
C.物理層−論理サブブロック156
図8中に示す物理層155の論理サブブロック156での主な役割は、データリンク層154から受け取ったパケットを電気サブブロック157で送信できる形式に変換することである。また、物理層155を制御/管理する機能も有する。
【0063】
a.データ符号化とパラレル−シリアル変換
PCI Expressは、連続した"0"や"1"が続かないように(長い期間、クロス・ポイントが存在しない状態が続かないようにするため)、データ符号化に8B/10B変換を用いる。図13は、x4リンクでのバイトストライピング例を示す図である。変換されたデータは、図13中に示すように、シリアル変換され、LSBからレーン上に送信される。ここに、レーンが複数ある場合は(図13はx4リンクの場合を例示している)、符号化の前にデータがバイト単位で各レーンに割り振られる。この場合、一見パラレル・バスのようにみえるが、レーン毎に独立した転送を行うので、パラレル・バスで問題となるスキューが大幅に緩和される。
【0064】
b.電源管理とリンクステート
図14は、リンクステートの定義を示す図である。リンクの消費電力を低く抑えるために、図14に示すように、L0/L0s/L1/L2というリンクステートが定義されている。L0が通常モードで、L0sからL2へと低消費電力となるが、L0への復帰にも時間がかかるようになる。
【0065】
図15は、アクティブステート電源管理の制御例を示すタイムチャートである。図15に示すように、ソフトウェアによる電源管理に加えて、アクティブステート電源管理を積極的に行うことにより、消費電力を極力小さくすることが可能となる。
【0066】
D.物理層−電気サブブロック157
物理層155の電気サブブロック157での主な役割は、論理サブブロック156でシリアル化されたデータをレーン上に送信することと、レーン上のデータを受信して論理サブブロック156に渡すことである。
【0067】
a.ACカップリング
リンクの送信側では、ACカップリング用のコンデンサが実装される。これにより、送信側と受信側のDCコモンモード電圧が同一である必要がなくなる。このため、送信側と受信側で異なる設計、半導体プロセス、電源電圧を使用することが可能となる。
【0068】
b.デエンファシス
PCI Expressでは、前述したように、8B/10Bエンコーディングによってできるだけ連続した"0"や"1"が続かないように処理されるが、連続した"0"や"1"が続くこともある(最大5回)。この場合、送信側はデエンファシス転送を行わなければならないことが規定されている。同一極性のビットが連続する場合は、2つ目のビットからは差動電圧レベル(振幅)を3.5±0.5dB落とすことで、受信側で受け取る信号のノイズ・マージンを稼ぐ必要がある。これを、デエンファシスという。伝送路の周波数依存性減衰のため、変化するビットの場合は高周波成分が多く、減衰により受信側の波形が小さくなるが、変化しないビットの場合は高周波成分が少なく、相対的に受信側の波形が大きくなる。このため、受信側での波形を一定とするためにデエンファシスを行う。
【0069】
[Advanced Switch Interconnectとは]
次に、本実施の形態は上述したPCI Expressの技術を活用したAdvanced Switch Interconnectを利用するものであり、本実施の形態の前提として当該Advanced Switch Interconnectの概要について説明する。
【0070】
近年においては、ブロードバンドと半導体技術の進歩を背景としたコンピューティングと通信の融合が急速に進み、新たなアプリケーションシステムに幅広く対応できる規格の出現が望まれるようになってきている。そこで登場してきたのがPCI Expressの技術を活用したASI(Advanced Switching Interconnect)規格であり、コンピューティングから通信まで幅広いアプリケーションに適用することを想定している。ASI仕様の策定と普及は非営利団体であるASI-SIG(Advanced Switching Interconnect Special Interest Groupe)によって運営されている。
【0071】
[Advanced Switch Interconnect技術の概要]
次に、Advanced Switch Interconnect技術の概要について説明する。まず、PCI ExpressとASI(Advanced Switching Interconnect)の関係について説明する。図16は、PCI ExpressとASI(Advanced Switching Interconnect)のプロトコルスタックの関係を示す図である。
【0072】
ASI(Advanced Switching Interconnect)はPCI Expressの高速シリアル伝送の物理層とリンク層の技術をそのまま採用しつつ、より広範囲なアプリケーションに対応できるようにしたものであり、その接続対象はChip-to-Chip, Board-to-Board を想定している。
【0073】
PCI Expressはコンピューティングで培われてきたPCIのトランザクションをそのまま継承しているが、ASI(Advanced Switching Interconnect)ではPCI Expressのトランザクション層を入れ替えて機能を拡張しており、より高度なデータフローとプロトコルに対応出来るようにしている。また、接続構造もPCI Expressのツリー構造から、より自由度の高いファブリック構造が出来るように拡張されており、マルチCPU環境にも対応している。ASI(Advanced Switching Interconnect)では、同様のファブリック構造が可能な他の規格(Ethernet(登録商標),InfiniBand等)よりもルーティング手法が格段に改善され、高速化が図られている。
【0074】
図16に示すファブリック管理機能(AS Fabric Mngmnt)は、ソフトウェアで構成されるASI(Advanced Switching Interconnect)プロトコルの一部であり、接続セットアップや取り外し、イベント管理、パフォーマンスおよび稼動状況のモニタ、リダンダント・ルート、パスの無効化、リソース割り振り、負荷の平準化のような種々のサービスをサポートする。図17は、ファブリック管理機能における初期化シーケンスを示す図である。
【0075】
図18は、ASIにおけるプロトコルのカプセル化を示す図である。ASI(Advanced Switching Interconnect)では、図18に示すように、各種プロトコルをカプセル化する手法を採用することで、より高度なプロトコル(TCP/IP,Fibre Channel等)サービスの高速化を実現しようとしている。
【0076】
ASI(Advanced Switching Interconnect)の上位層にはPEI(Protocol Encapsulation Interface)と呼ばれる部分があり、外部から到達した各種パケットにASIヘッダを付加し、ASIパケットに変換する機能をもっている。ASIファブリックを通過したパケットは受信側のPEIでASIヘッダがはずされ、元のパケットとして抽出される。上流のプロトコルインタフェースはPI(パイ)と呼ばれ、各種標準に対応できる他、AS Native,Vendor Specificプロトコルも実装できる仕組みを採用している。PCI ExpressとASI(Advanced Switching Interconnect)をブリッジで接続しPCI Expressプロトコルをカプセル化し転送するプロファイルは、PI-8として定義されている。
【0077】
[Advanced Switch Interconnect技術の特徴]
ASI(Advanced Switching Interconnect)はPCI Expressの特徴である、高速性、バンド幅のスケーラビリティ、階層構造による物理層の拡張性、データの信頼性等に加えて、以下に示すようなASI(Advanced Switching Interconnect)独自の特徴がある。
・動画等のunreliable(lossy)パケット伝送への対応
・マルチキャスト、ブロードキャストパケットへの対応
・カプセル化によるマルチプロトコル伝送
・高速な独自のパスルーティング方式の採用
・輻輳管理機能のサポート
・ ファブリック構造への対応
図19は、ASIによる複数デバイス間のストレージやIOリソースの共有を示す図である。前述した特徴により、図19に示すような複数デバイス間のストレージやIOリソースの共有が可能となる。また、これまでPCI,PCI-X,PCI Express,HyperTransport,RapidIO,StarFabricなどの規格は、同じロード/ストアプロトコルを使っていても物理層が異なるために複雑な接続手段が必要であった。
【0078】
図20は、ASIによる通信例を示す図である。ASI(Advanced Switching Interconnect)技術を利用することで図20に示すような相互通信もシンプルに実現できるようになり、デバイス間の通信速度が高速化される。また、各種上位プロトコルをトンネルさせることにより、TCP/IP等の通信を通常のEthernet(登録商標)の処理よりも高速に実現する局所システムを構築することも可能となる。更に、ファブリック構造への対応などでシステムに冗長性を持たせてロバスト性を向上させたり、動的なルーティングパスの切り替えができたりするようになる。
【0079】
加えて、Advanced Switching Interconnectは、PCI Expressの物理層およびデータリンク層を最適化されたトランザクション層と重ね合わせたもので、様々な機能を提供する。トランザクション層の特徴的な機能としては、マルチレベルのQoS(Quality of Service)がある。QoSは、20の仮想チャネル(VC:Virtual Channel)と8つのトラフィッククラス(TC)をサポートしている。
【0080】
ASI(Advanced Switching Interconnect)を制御する上位のソフトウェアであるファブリック管理機能(AS Fabric Mngmnt)は、トラフィッククラス(TC)を使用することによりトラフィックの差別化(優先度をつける)を行うことができる。例えば、映像データをネットワークのデータよりも優先して転送する、といったことが可能となる。トラフィッククラス(TC)はTC0からTC7まで8つある。
【0081】
仮想チャネル(VC:Virtual Channel)は、各々独立した仮想通信バス(同一のリンクを共用する複数の独立したデータ・フロー・バッファを使用するメカニズム)で、各々がリソース(バッファやキュー)を持ち、独立したフロー制御を行う。これにより、1つの仮想チャネルのバッファが満杯の状態(full)になっても、他の仮想チャネルの転送を行うことができる。つまり、物理的には1つのリンクを仮想的な複数のチャネルに分けることで、有効に使用することができる。
【0082】
トランザクション層内では、トラフィッククラス(TC)が仮想チャネル(VC)にマッピングされる。1つの仮想チャネル(VC)に対して1つ又は複数のトラフィッククラス(TC)をマッピングできる(仮想チャネル(VC)の数が少ない場合)。単純な例では、各トラフィッククラス(TC)から各仮想チャネル(VC)に1対1、全てのトラフィッククラス(TC)を仮想チャネルVC0にマッピングする、といったことが考えられる。
【0083】
TC0−VC0のマッピングは、必須/固定で、それ以外のマッピングは上位のソフトウェアから制御される。ソフトウェアはトラフィッククラス(TC)を利用することで、トランザクションの優先度を制御することが可能となる。また、ASIファブリック内では、過大なトラフィックが発生することによるCongestion状態が発生することがある。Congestion状態に陥ると、パケットの応答時間が長くなり、一定のサービスレベルが維持できなくなるという問題がある。そこで、ASI(Advanced Switching Interconnect)規格では、Congestion Management機能としてStatus-Based Flow Control(SBFC)を備えることにより、この問題の解決を図っている。
【0084】
ここで、Congestion Managementについて図21を用いて具体的に説明する。図21−1に示すように、3つのスイッチにトラフィック1〜3が存在している場合において、最初にトラフィック1とトラフィック2が、所望のデータ転送を行っていたとする。ここで、トラフィック3としてポートAの能力以上の過大なトラフィックが発生したとする。この影響は、同じ出力ポートAへのトラフィック2の減少となって現れる。また、トラフィック2のみならず、トラフィック2と同じリンクを経由するトラフィック1のトラフィックも減少してしまう。
【0085】
そこで、図21−2に示すように、SBFCを用いてポートAが混んでいる事を隣のスイッチに伝えることにより、トラフィック2の出力を抑えることができるようになるので、トラフィック1がトラフィック2の影響を受けなくなる。ところで、ASI(Advanced Switching Interconnect)の仮想チャネル(VC)には、下記に示すような3つのタイプがある。
BVC(Bypass Capable Unicast) : VC Ids 0−7
OVC(Ordered-Only Unicast) : VC Ids 8−15
MVC(Multicast) : VC Ids 16−19
図22は、BVCを説明するための模式図である。BVC(Bypass Capable Unicast)は、図22に示すように、先に入力されたQueueをバイパスさせ、後から入力されたQueueがアービタ(調停回路)から抜けていくことを許しているものである。
【0086】
図23は、OVCを説明するための模式図である。OVC(Ordered-Only Unicast)は、図23に示すように、先に入力されたQueueがそのまま出力されるものである。
【0087】
図24は、MVCを説明するための模式図である。MVC(Multicast)は、図24に示すように、入力されたQueueがマルチキャスト出力されるものである。以下、本発明におけるデータ通信システムの構成について説明する。
【0088】
[実施例1におけるデータ通信システムの構成]
図25−1は本発明の実施例1におけるデータ通信システムの構成例を示す図である。図25−1に示すように、データ通信システムは、CPU、メモリと接続されたPCI Expressのルートコンプレックス(最上位デバイス)200、スイッチ201〜203、デバイス204〜208を含んで、ルートコンプレックス200を最上位デバイスとしてツリー構造にデータ網が構築されている。
【0089】
ルートコンプレックス200は、ルートポート1、2を2つ有し、各々をルートとしたツリー構造は、ルートポート1サイド、ルートポート2サイドと呼ばれる。PCI Express規格では、これらルートポート1、2はアップストリームポートと呼ばれ、基本的にはデータ通信の上流側に位置する。
【0090】
スイッチ201〜203は、データ通信をポイントツーポイントで行うための接続切り替え機能を有する。
【0091】
図25−2は、ルートコンプレックス200の内部構成例を示す図である。図25−2に示すように、本発明では、帯域制御手段300、各ルートポートにおいて、ハードウェアによる下位のツリー構造に関する詳細な情報、即ち、ノード、通信ルート(通信経路)の構成、通信ルート毎の帯域の総和である現状帯域、及び、ノード間の伝送路の許容帯域を保持する保持手段301及び302を具備する。
【0092】
帯域制御手段300は、各保持手段が保持する許容帯域を超えないよう各通信ルートの帯域を制御する。なお、帯域制御手段300は、各ルートポートに備えられるように構成してもよい。
【0093】
図25−1に戻り、ルートポート1サイドに接続されているスイッチ201にはデータ通信通知手段11が具備され、ルートポート2サイドに接続されているスイッチ202には、同様に、データ通信通知手段21が具備されている。
【0094】
データ通信通知手段11を具備しているスイッチ201には、通信通知手段12を具備しているスイッチ203、及び、同様にデータ通信通知手段13を具備するデバイス204が接続されている。
【0095】
また、データ通信通知手段12を具備しているスイッチ203には、データ通信通知手段14を具備するデバイス203、及び、同様にデータ通信通知手段15を具備するデバイス208が接続されている。
【0096】
同様に、データ通信通知手段21を具備しているスイッチ202には、データ通信通知手段22を具備するデバイス205、及び、同様にデータ通信通知手段23を具備するデバイス206が接続されている。なお、各データ通信手段は、ハードウェアにより構成される。
【0097】
以上、本発明の構成には規則性があり、非常に実装し易い構成となっている。具体的には、ハードウェアによるデータ通信通知手段を、ルートコンプレックス200ではダウンストリームポートに、スイッチ及びデバイスではアップストリームポートに具備させれば良い。
【0098】
図26は、実施例1におけるルートポート1サイド及びルートポート2サイドの通信ルートの一例を示す図である。図27は、実施例1におけるルートポート2サイドの通信ルート及びスイッチ経由でのデバイス同士の通信ルートを示す図である。これら2つの図は、本来は1つの図で表してもよいが、見易くするため2つの図に分けている。さて、各々の通信ルートにはAから順に以下の通り割り当てるものとする。
[ルートポート1サイド]
A:ルートポート1―スイッチ201―スイッチ203―デバイス207
B:ルートポート1―スイッチ201―スイッチ203―デバイス208
C:ルートポート1―スイッチ201―デバイス204
D:デバイス207―スイッチ203―スイッチ201―デバイス204
E:デバイス208―スイッチ203―スイッチ201―デバイス204
[ルートポート2サイド]
F:ルートポート2―スイッチ202―デバイス205
G:ルートポート2―スイッチ202―デバイス206
H:デバイス205―スイッチ202―デバイス206
図28は、保持手段が保持するデータの一例を示した図である。図28に示すように、上記A〜Gの通信ルートが、ルートポート1サイド及びルートポート2サイドに設けたレジスタに設定されている。
【0099】
図28では、横軸の11から18、21から28はデータ通信通知手段に対応し、ルートポート1サイドでは11から15が使用され、ルートポート2サイドでは21から23が使用されていることを示す。割り当てが無い部分は将来拡張することができる。
【0100】
また、図28に示す例では、データ通信手段を用いて通信ルートを示したが、スイッチやデバイス201〜208を用いてもよい。なお、設定状態を「○」で示したが、これは定性的なものであり、フラグを立てたり、数字で表したりして設定されているか否かを識別してもよい。
【0101】
例えば、図28を参照すれば、図26、図27の通信ルートがレジスタにマッピングされていることが分かる。更に、データ通信通知手段は自分自身の帯域(許容帯域)を事前に把握しているので、その情報も併せてルートポート1サイドのデータ通信通知手段に通知され、通信ルートに含まれる伝送路の許容帯域が、ハードウェアによってレジスタに自動的に書き込まれる。
【0102】
なお、ハードウェアによって自動設定されたレジスタ値は、レジスタ値確定後、即ちコンフィギュレーション後、上位層(ドライバ及びアプリケーション)からも操作することができる。
【0103】
図28の例で言えば、例えばルート(伝送路)11の許容帯域は400であるがシステム全体のバランスを考えた場合、例えば消費電流の関係で最初は帯域を絞っておきたい場合等は、300に変更することも可能である。もちろん、ソフトウェアからの強制書き込みも可能であるが、レジスタのハードウエアリセットを掛けることで、極めて短時間に、例えば数システムクロック回数で初期値に戻すことも可能である。
【0104】
図29は、実施例1における、ある時刻での通信ルートの一例を示す図である。通信ルートDを通じてデバイス204とデバイス207が、通信ルートBを通じてルートコンプレックス200(ルートポート1サイド)とデバイス208が通信している。同時に、通信ルートGを通じてルートコンプレックス200(ルートポート2サイド)とデバイス206が通信し、通信ルートHを通してデバイス205とデバイス206が通信している。
【0105】
図30は、実施例1における、ある時刻での通信ルートの通信状況のレジスタ値の一例を示す図である。図30に示すように、通信状況がレジスタに格納されている。この時点では、図28と異なり、具体的な通信帯域が数値で書き込まれている。この図に示す通り、ルートポート1サイド、ルートポート2サイドの全ルートの現状帯域は許容帯域以下である。ここで、現状帯域とは、各ルート11、12、…毎の通信ルートA、B、…の総和のことである。
【0106】
図31は、新規通信ルートでデータ通信を開始しようとする状態を示す図である。図31に示すように、通信ルートC、通信ルートFで新規にデータ通信を開始しようとする。まず、新規にルートを使用しようとするデバイス(ツリー構造の下位に位置するデバイス)もしくはルートポートが、レジスタに書き込むためのパケットをルートポートに送信する。ルートポートはこれを解読し、解読した値をレジスタに書き込む。解読した値がレジスタに書き込まれた後の状態を図32に示す。
【0107】
図32は、新規ルートの要求帯域がレジスタに上書きされた一例を示す図である。図32に示すように、新規ルートCでは、使用する帯域(要求帯域)として200が要求されたため、まずは、対応レジスタに要求帯域200が上書きされる(通信ルートCの11、13参照)。また、新規通信ルートFでは、使用する帯域として100が要求されたため、まずは、対応レジスタに要求帯域100が上書きされる(通信ルートFの21、22参照)。
【0108】
ここで、図32に示すように、データ通信通知手段13に接続される伝送路の許容帯域200を現状帯域300が超えることになる。このとき、ルートコンプレックス200内部の帯域制御手段300は、新規通信ルートCに対して許容帯域を超えないように帯域を制御する。
【0109】
[実施例1における帯域制御の処理について]
図33は、実施例1における、通信状況を適切に制御するためのフローチャートである。ステップ101において、デバイス(ツリー構造の下位に位置するデバイス)は、データ通信要求がきたか否かを判定する。ステップ101の判定結果がNO(要求がきてない)であればステップ101に戻り同様の判定を行なう。
【0110】
ステップ101の判定結果がYES(要求がきた)であればステップ102に進み、デバイスのデータ通信通知手段は、通信ルート、要求帯域をパケットにしてルートコンプレックス(最上位デバイス)200に通知(送信)する。
【0111】
ステップ102に続いてステップ103に進み、ルートコンプレックス200のルートポートは、パケットを解読して、解読して得られた要求帯域を、同じく解読して得られた通信ルートの対応レジスタに書き込む。なお、レジスタは保持手段に相当する。
【0112】
ステップ103に続いてステップ104に進み、ルートコンプレックス200は、レジスタに要求帯域が書き込まれた後の現状帯域が許容帯域を超えているか否かを判定する。
【0113】
ステップ104の判定結果がYES(超えていると判定)であればステップ105に進み、要求帯域及び現状帯域に基づいて許容帯域を超えないよう各通信ルートの帯域が再計算される。次に、再計算された帯域は、レジスタに上書きされる。
【0114】
ステップ105に続いて、又はステップ104の判定結果がNO(超えていないと判定)であればステップ106に進み、ルートコンプレックスのルートポートは通信ルートの各デバイスに対して、レジスタに設定された帯域を通知する。
【0115】
ステップ106に続いてステップ107に進み、通信ルートに設定されているデバイスは、通知された帯域に従ってデータ通信を開始する。なお、既にデータ通信していたデバイスは、通信ルートの帯域が変更された場合、ルートポートから通知された帯域に従ってデータ通信を継続する。
【0116】
図33で示した処理について具体的に説明すると、ステップ103の処理が完了すると、図32に示す状態になる。このとき、ステップ104の処理により、ルートポート1サイドではデータ通信通知手段13に接続される伝送路(以下、ルート13という)の現状帯域が、ルートポート2サイドではデータ通信通知手段22に接続される伝送路(以下、ルート22という)の現状帯域が許容帯域を超えることが分かる。
【0117】
ここで、伝送路は許容帯域を超えるデータを流すことはできないので、各通信ルートは同じ伝送路内のデータ帯域を分け合う。例えばルート13では、200の要求帯域に対して100が許容される帯域となるので、100がレジスタに書き込まれる。この際、通信ルートCを通る他のルート(伝送路)のレジスタにも同じ値が書き込まれ、各ルート(伝送路)が許容帯域を超えていないかチェックされる。超えていれば同様の処理が再びなされる。ルート22では100の要求帯域に対して50が許容される帯域となるので、50がレジスタに書き込まれる。
【0118】
図34は、実施例1における、帯域制御後のレジスタ値の一例を示した図である。図34に示すように、通信ルートCの「11」、「13」のレジスタには「100」が書き込まれ、通信ルートFの「21」、「22」のレジスタには「50」が書き込まれる。
【0119】
これより、許容帯域を超えない帯域制御が可能となる。なお、前述した例では新規の通信ルートに対してのみ帯域を制御したが、既にデータ通信している通信ルートの帯域を制御するようにしてもよい。結果的に現状帯域が許容帯域を超えないようにすればよい。
【0120】
図33に示すステップ105の処理が完了すると、図34に示すレジスタ値が書き込まれた状態となる。次に、ステップ106の処理で図34に示した値が、関連する各ルートにパケットとして通知される。
【0121】
図35は、実施例1における、新規通信ルートでデータ通信が開始された状態を示す図である。図33のステップ106において通知された帯域に従って、新規通信ルートC、Fは、データ通信が開始される。また、既存の通信ルートB、D、G、Hもデータ通信が完了するまでは継続してデータ通信が行なわれる。このとき、既存の通信ルートに帯域変更が生じた場合は、変更された帯域に従ってデータ通信が継続される。
【0122】
以上、実施例1に係るデータ通信システムによれば、データ転送開始前に使用可能な帯域を予め設定した後、データ通信を開始しているので、データ転送開始時に発生する可能性がある一時的な過大トラフィックを回避することができる。
【0123】
また、データ転送が終了した後、時間的に余裕があり、緊急な帯域変更或いは帯域の開放が必要ない、或いは、要求されなければ、ホストがソフトウェア制御によりレジスタ値を書き換えるようにすれば良い。この方式では、書き換えるレジスタ数によって設定するのに要する時間が決まる。
【0124】
これに対し、時間的に余裕が無く、緊急な帯域変更或いは帯域の開放が必要とされる、或いは、要求される場合は、前述のようにレジスタのハードウエアリセットをかけることによって、初期値に戻すことが可能である。最も短いリセット時間は、データ転送終了を検出した時点で、ハードウェアが行うことで実施される。この方式では、数クロックという非常に短い時間で初期化が可能である。
【0125】
次に短いリセット時間は、ソフトウェア的にリセットをかける方式である。この方式では、数μsから数百μs程度でリセットを掛けることができる。なお、ここで述べているリセットは、レジスタ全てを対象とすることも、また、データ通信が終了したルートにのみ掛けることもできる。係る場合のハードウエアでの実装については特に難しい技術を用いる必要はない。
【0126】
ここで、実施例1において、新規にデータ通信を開始するため、前述した手順に基づいてルートポートに要求帯域を含むパケットを送信したとき、エラーが発生した場合について述べる。エラーが発生した場合は、ルートポートからエラーが発生した旨のエラーパケットが送信されるか、或いは、パケットがロストしてしまったなどの原因で、パケットが送信先に返って来ないことになる。
【0127】
エラーパケットを受け取った場合は、帯域要求のパケットを再送し、その後の正しい手順を踏むことができる。パケットが返って来なかった場合は、一定時間待った後再送処理を行えば、こちらもその後の正しい手順を踏むことができる。即ち、従来技術のようなリアルタイムで優先度を調停するような機構と異なり、実動作中にエラーが発生してしまった場合であっても、どこかのトラフィックにデータの損失が発生してしまうという問題を回避することができる。
【実施例2】
【0128】
実施例2に係るデータ通信システムについて説明する。実施例2では、各通信ルートA〜Hに、優先度を設けることに特長がある。
【0129】
実施例2に係るデータ通信システムの構成は実施例1と同様であるため省略し、保持手段が保持するデータの違いについて以下説明する。
【0130】
図36は、実施例2におけるルートポート1サイドのレジスタ値の一例を示す図である。図37は、実施例2におけるルートポート2サイドのレジスタ値の一例を示す図である。図36及び図37ともに、優先度の情報が新たに追加されている。
【0131】
図36及び図37に示す例では、優先度を設け、優先度毎にルートを事前に割り当てている。また、図36及び図37に示す例では、優先度100とは、ここに割り当てられた通信ルートが他のどの通信ルートよりも優先されること(使用率100%と読み替え可能)、即ち、可能ならば全帯域を使ってしまうことも可能であることを意味し、以下、優先度が80…20まで設定可能である。レジスタは、実施例1の場合と比べて優先度が付加されていることを除き同様である。また、優先度の値については、適宜設定変更可能とする。
【0132】
次に、図38は、実施例2における、ある時刻でのルートポート1サイドの通信状況のレジスタ値の一例を示す図である。図39は、ある時刻でのルートポート2サイドの通信状況のレジスタ値の一例を示す図である。この状況で、通信ルートC、通信ルートFで新規に通信を開始しようとする。まず、新規通信に含まれるデバイスもしくはルートポートが、レジスタに書き込むためのパケットをルートポートに送信する。ルートポートはこれを解読し、解読して得られた要求帯域をレジスタに書き込む。レジスタに書き込まれた後の状態を図40及び図41に示す。
【0133】
図40は、実施例2におけるルートポート1サイドの通信状況のレジスタ値が上書きされた状態を示す図である。図41は、実施例2におけるルートポート2サイドの通信状況のレジスタ値が上書きされた状態を示す図である。図40及び図41に示す例では、パケットを解読して得られた要求帯域をそのまま上書きした状態となっている。
【0134】
図42は、実施例2における通信状況を帯域に従って適切に処理するためのフローチャートである。図42に示す処理で図33と同様の処理を行うものは、図33と同じ符号を付しその説明を省略する。
【0135】
つまり、図42に示す処理で図33に示す処理と異なるところは、現状帯域の再計算処理に係るステップ201であるため、以下、ステップ201について説明する。なお、ステップ201の処理をする前までに図40及び図41に示したレジスタの状態になっている。
【0136】
ステップ201において、最上位デバイスの帯域制御手段300は、ルート13とルート22との帯域について許容帯域を超えないように制御する。なお、ステップ104の処理により、ルート13とルート22の帯域を制御する必要があることがわかっている。
【0137】
次に、ステップ201の具体的な処理について図40及び図41を用いて説明する。図40を参照すれば、ルート13において、通信ルートCが80の優先度で帯域200を要求しているが、通信ルートDが既に20の優先度で帯域100を使用している。
【0138】
ルート13を優先度に応じて効率良く使うために、
「通信ルートCのルート13での最大許容帯域」
=「通信ルートCの優先度」/(「通信ルートCの優先度」+「通信ルートDの優先度」)
×「ルート13の許容帯域」 ・・・式(1)
=160
「通信ルートDのルート13での最大許容帯域」
=「通信ルートDの優先度」/(「通信ルートCの優先度」+「通信ルートDの優先度」)
×「ルート13の許容帯域」 ・・・式(2)
=40
となる。各通信ルートの優先度を用いて求めた重みに基づいて計算された値が、各通信ルートに割当てられる帯域となる。但し、上記で計算された値が、各々の要求帯域を上回った場合は、要求帯域を上限とする。また、上記で計算された値は、同じ通信ルートにおける他の伝送路での帯域にも反映される。
【0139】
図43は、実施例2における現状帯域が優先度に基づいて計算されたときのルートポート1サイドのレジスト値の一例を示す図である。また、上記の計算をルートポート2サイドにも適用したものを図44に示す。
【0140】
図44は、実施例2における現状帯域が優先度に基づいて計算されたときのルートポート2サイドのレジスト値の一例を示す図である。図43及び図44に示すように、優先度に基づいて計算された帯域の総和である現状帯域は、許容帯域を超えないことがわかる。
【0141】
図45は、通信ルートC及び通信ルートFでは新規に、通信ルートD及び通信ルートHでは通信帯域が再設定され、通信している状態を示す図である。図42のステップ107の処理が終了すると図45に示す状態になる。
【0142】
以上、実施例2におけるデータ通信システムは、データ通信開始前に許容帯域を超えることが分かった場合、各通信ルートに与えられている優先度を用いて求めた重みに基づいて、各通信ルートの帯域を計算することで、通信ルートの重要度に応じて帯域を制御することができる。
【実施例3】
【0143】
実施例3における画像処理システムについて説明する。実施例3における画像処理システムでは、上記実施例で説明したデータ通信システムを画像形成装置のデータ通信システムに適用する。まずは画像形成装置のハードウェア構成について説明する。
【0144】
[画像形成装置のハードウェア構成]
実施例3における画像形成装置のハードウェア構成について説明する。図46は、実施例3における画像形成装置の概略ハードウェア構成を示す図である。
【0145】
図46に示すように、画像形成装置400は、制御部401、主記憶部402、補助記憶部403、ネットワークI/F404、文書保管部405、入力部406、表示部407、プロッタ部408、スキャナ部409を含む。
【0146】
制御部401は、コンピュータの中で、各装置の制御やデータの演算、加工を行うCPUである。制御部401は、主記憶部402に記憶されたプログラムを実行する演算装置で、入力装置や記憶装置からデータを受け取り、演算、加工した上で、出力装置や記憶装置に出力する。
【0147】
主記憶部402は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Randam Access Memory)などであり、制御部401が実行する基本ソフトウェアであるOSやアプリケーションソフトウェアなどのプログラムやデータを記憶又は一時保存する記憶装置である。
【0148】
補助記憶部403は、HD(Hard Disk)などであり、アプリケーションソフトウェアなどに関連するデータを記憶する記憶装置である。また、補助記憶部403には、画像形成装置が管理する各種情報(例えば、ユーザ情報など)が格納され、データベース(DB:DataBase)、ファイルシステム(FS:File System)などの機能により管理される。
【0149】
ネットワークI/F404は、有線及び/又は無線回線などのデータ伝送路により構築されたLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などのネットワークを介して接続された通信機能を有する周辺機器と当該画像形成装置などのインタフェースである。文書保管部405は、文書等の保管機能を有するドキュメントボックス等である。
【0150】
入力部406や表示部407は、キースイッチ(ハードキー)とタッチパネル機能(GUIのソフトウェアキーを含む:Graphical User Interface)を備えたLCD(Liquid Crystal Display)とから構成され、画像形成装置が有する機能を利用する際のUI(User Interface)として機能する表示及び/又は入力装置である。
【0151】
プロッタ部408は、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)、K(ブラック)からなる画像データを受け取ると、インクジェット方式を用いて、受け取った画像データを記録媒体(印刷用紙)に出力(印刷)するプロッタ装置である。
【0152】
スキャナ部409は、CCD(Charge Coupled Devices)光電変換素子からなるラインセンサとA/Dコンバータとこれらを駆動する駆動回路を備え、原稿読み取り面(コンタクトガラス上)にセットされた原稿をスキャンすることでRGB各8ビットのデジタル画像データを生成(原稿から情報を読み取り電子化)する読取装置である。
【0153】
このように、画像形成装置は、主記憶部402や補助記憶部403などの記憶装置に格納されたプログラムを制御部401で実行し、制御信号(制御命令)を各装置へ送出すること(各装置を制御すること)で、画像形成装置が有するコピー、ファックス、スキャナ、プリンタなどのアプリケーションを実現し、画像形成装置で管理する情報、又は画像形成装置が接続されたシステム内で管理する情報を処理することができる。
【0154】
また、印刷に関する上位概念として、プリンタ及びコピアがある。プリンタはスキャナを用いず、ネットワーク等から取得したデータに対してプロッタを用いて出力する機能を指す。一方、コピアはスキャナからのデータに対してプロッタを用いて出力する機能を指す。これら個別の機能は、組み合わせによっては同時に動作させることができる。例えば、下記2つの動作はこれらの全機能が同時に動作している場合に相当する。
(動作1) プリンタ + スキャナ + ファクシミリ + 文書保管
(動作2) コピア(フ゜ロッタ&スキャナ) + ファクシミリ + 文書保管
これら2つの動作について考えると、破綻無く実行させるには、相応の工夫が必要となる。以下、図36、図37等のレジスタにおける優先度、許容帯域を、MFPに適用する場合について述べる。まず、各処理に重要度を付ける。重要度順に各処理を並べると、
(動作1) プリンタ > スキャナ > ファクシミリ > 文書保管
(動作2) コピア(フ゜ロッタ&スキャナ) > ファクシミリ > 文書保管
となる。
【0155】
動作1の場合はプリンタ、動作2の場合はコピアについても重要度が高くなる。動作2の場合は更に、プロッタがスキャナより重要度が高いとする。即ち、「プロッタ」機能が最重要となる。何故ならば、プロッタのためのデータ通信が滞れば、それは即、印刷失敗につながるからである。
【0156】
なお、ファクシミリについてはプロッタ、スキャナとは排他で使用することになり、データは画像形成装置内部の記憶部に蓄積可能であるので、各処理の重要度は上記の通りとする。ここで述べた重要度は、本発明の優先度及び許容帯域に対応させることが出来る。
【0157】
即ち、プロッタとの通信ルートは最も重要度が高いので、予め大きな許容帯域を割り当て、逆に文書保管には小さな許容帯域を割り当てておく。更に、レジスタにおける優先度も、基本的に重要度に対応付けることができる。また、状況に応じて、許容帯域を大きくし、優先度を低くする設定にすることも可能である。
【0158】
さて、高速な画像形成装置においては、特にプロッタは機器の要であり、最も高速にデータ通信させる必要のある機器である。場合によっては、他の機能のためのデータ通信をほぼ完全に止めてでも優先させることがある。そこで、実施例3における画像処理システムは、これを実施するために最適なシステムを提供する。
【0159】
また、開始順に対応した各機能の制御も大事となる。例えば、動作1において、重要度の低い順で各機能が実行されていったと仮定すると、先ず文書保管機能の動作が開始され、次にファクシミリの動作が開始される。もし画像形成装置内部でのデータ通信で調停が必要であれば、ファクシミリ動作が優先されるようにデータ通信が行われる。
【0160】
次に、スキャナ動作が開始されれば、スキャナ動作が優先されるように、データ通信が行われる。同様に、プロッタの動作が開始されれば、プロッタが最重要の重要度で動作するようにデータ通信が行われる。このように、実施例2の通信ルートの優先度を実施例3の各処理の重要度に対応付けて構成することが可能となる。
【0161】
また、これらの重要度の設定変更のための時間はできる限り短い方が良い。そこで、実施例3では、ソフトウェアでの設定変更よりも時間がかからないハードウエアでの設定変更が実現可能なため、ハードウェアでの設定変更を採用する。また、場合によっては、ソフトウエアでの設定変更も可能なため、ソフトウェアでの設定変更も実装しておくことにより、データ通信のための設定変更に対して最適で柔軟なシステムを提供することができる。
【0162】
以上、実施例3における画像処理システムでは、本発明におけるデータ通信システムを画像形成装置内部のデータ通信システムに適用することで、画像処理に係るデータ通信処理で瞬間的に過大なトラフィックが発生しても、これを回避することができる。つまり、本発明に係るデータ通信システムを画像形成装置内部のデータ通信システムに適用した場合、非常に有用であることがわかる。
【実施例4】
【0163】
実施例4におけるデータ通信システムについて説明する。実施例4では、各ノード間に制御回線を新規に設けて、この制御回線を通じてデータ通信に関する情報をやりとりすることで、瞬間的に発生する過大なトラフィックを回避することができる。
【0164】
図47は、実施例4におけるデータ通信システムの構成を示す図である。図47に示すように、データ通信システムは、ルートコンプレックス500、スイッチ501〜503、デバイス504〜508、高速シリアルバス31〜35、41〜43、制御回線511〜515、521〜523を含んで構成される。
【0165】
実施例4におけるデータ通信システムでは、各ノード間を高速シリアルバスで接続する以外にも、制御回線で各ノード間を接続している。
【0166】
図47に示すように、データ通信システムは、CPU、メモリに接続されたPCI Expressのルートコンプレックス(最上位デバイス)500がある。ルートコンプレックス500にはルートポートが2つあり、各々ルートポート1サイド、ルートポート2サイドと呼ばれる。また、ルートコンプレックス500を最上位デバイスとしてツリー構造にデータ網が構築されている。
【0167】
ルートコンプレックス500は、ルートポート1、2を2つ有し、各々ルートポート1サイド、ルートポート2サイドと呼ばれる。PCI Express規格では、これらはアップストリームポートと呼ばれ、基本的には、データ通信の上流側に位置する。
【0168】
スイッチ501〜503は、データ通信をポイントツーポイントで行うための接続切り替え機能を有する。
【0169】
図48は、スイッチ及びデバイスの内部構成を示す図である。図48に示すように、実施例4におけるデータ通信システムでは、各スイッチにおいて、各ノードでの通信帯域に関する通信帯域情報を保持する帯域保持手段601、通信帯域を演算する演算手段602、帯域を更新する更新手段603、その時の通信帯域の通信状態を通知する状態通知手段604を有する。
【0170】
また、図48に示すように、各ルートポート及び、もしくはデバイスにおいて、データ通信に関する情報を通知する通知手段605と通信帯域を制御する帯域制御手段606とを有している。
【0171】
図48(a)は、スイッチの内部構成を示す図である。帯域保持手段601は、スイッチに接続される伝送路(高速シリアルバス)の帯域を保持する。例えば、伝送路毎に、通信ルートAには帯域「100」、その他の通信ルートは帯域「0」という情報を保持する。
【0172】
演算手段602は、デバイスから通信情報を、制御回線を介して取得した場合、伝送路の帯域を各通信ルートにどのように設定するか演算を行う。例えば、伝送路31には、通信ルートAのみが使用されていたため100%の帯域を設定していたが、取得した通信情報により、この伝送路に通信ルートBも使用されることがわかると、通信ルートAに50%の帯域、通信ルートBに50%の帯域を設定するよう帯域の演算を行う。
【0173】
なお、演算手段602は、各通信ルートに優先度が設定されている場合、例えば、通信ルートAはその他の通信ルートよりも2倍の帯域を与えるなどが設定されている場合、その優先度情報に基づいて設定する帯域を演算する。
【0174】
更新手段603は、演算手段602により演算され設定された帯域を帯域保持手段601に書き込む(更新する)。これより、伝送路の最新の通信状態が帯域保持手段601に保持されることになる。
【0175】
状態通知手段604は、デバイスから制御回線を介して通信情報を取得した場合、このデバイスに対して、更新手段603により更新された伝送路の通信状態情報を通知する。伝送路の通信状態情報とは、通信ルート毎にどれだけの帯域が設定されているかを示す情報である。通信状態情報は、帯域保持手段601に保持される情報から得ることができる。
【0176】
図48(b)は、デバイスの内部構成を示す図である。通知手段605は、これからデータ通信が行なわれる通信ルートに含まれるスイッチに対して、通信が行なわれることを示す通信情報を、制御回線を介して通知する。
【0177】
帯域制御手段606は、スイッチから通信状態情報を取得すると、通信状態情報が示す帯域に従って、各通信ルートの帯域を制御する。
【0178】
ここで、演算手段602について、PCI Express規格においては、ポイントツーポイントでの帯域は一意に決まっているため、特定の伝送路に2経路以上からのデータが送受信された場合、合計の帯域が一定となるということを意味する。
【0179】
一方、実施例4におけるデータ通信システムでは、複数のデータ通信ルートが存在する場合、各々の帯域を個別に制御することができることを念頭に置いている。例えば、或る伝送路にAとB2本の通信ルートが存在し、通信ルートAには通信ルートBの2倍の帯域が割り当てられるものとする。通信ルートAからのデータのみが送受信されている場合は、通信ルートBは未使用となるため、伝送路の全帯域が通信ルートAに割り当てられる。通信ルートBからのデータも送受信され始めたとすると、通信ルートAには全帯域のおおよそ3分の2が、通信ルートBにはおおよそ3分の1の帯域が割り当てられることになる。
【0180】
更に、実施例4では、PCI Express規格における伝送路31〜35、41〜43とは別に、各伝送路に1対1に対応させた制御回線511〜515、及び、521〜523を有する。
【0181】
次に、実施例4における制御回線のビット割り当てについて説明する。制御回線511は、スイッチ501から先の下流側に伝送路32及び33の2本を有しているので、各々に1ビットずつ、合計2ビット割り当てられる。制御回線512については、上流側に伝送路31が1本、同レベルに伝送路33が1本、下流側に伝送路34、35の2本の伝送路があるので合計4ビット割り当てられる。
【0182】
制御回線513は、上流側に伝送路31が1本、同レベルに伝送路32が1本あるので、合計2ビット割り当てられる。制御回線514は、上流側に伝送路32が1本、同レベルに伝送路35が1本あるので、合計2ビット割り当てられる。制御回線515は制御回線514と同様であるので、2ビット割り当てられる。
【0183】
制御回線521は、スイッチ502から先の下流側に伝送路42及び43の2本を有しているので、各々に1ビットずつ、合計2ビット割り当てられる。制御回線522は上流側に伝送路41が1本、同レベルに伝送路43が1本あるので、合計2ビット割り当てられる。制御回線523は制御回線522と同様であるので、2ビット割り当てられる。
【0184】
図49は、実施例4におけるルートポート1サイドの通信ルートを示す図である。図50は、実施例4におけるルートポート2サイドの通信ルート及びスイッチ経由でのデバイス同士の通信ルートを示す図である。図49及び図50の図は、本来は1つの図で表してもよいが見易くするため2つの図に分けている。さて、各々の通信ルートにはAから順に以下の通り割り当てる。
[ルートポート1サイド]
A:ルートポート1―スイッチ501―スイッチ503―デバイス507
B:ルートポート1―スイッチ501―スイッチ503―デバイス508
C:ルートポート1―スイッチ501―デバイス504
D:デバイス507―スイッチ503―スイッチ501―デバイス504
E:デバイス508―スイッチ503―スイッチ501―デバイス504
[ルートポート2サイド]
F:ルートポート2―スイッチ502―デバイス505
G:ルートポート2―スイッチ502―デバイス506
H:デバイス505―スイッチ502―デバイス506
以上のように、通信ルートによっては、かなり複雑にデータが送受信されることが分かる。
【0185】
図51は、実施例4における、ある時刻での通信状況の一例を示す図である。通信ルートDを通じてデバイス503とデバイス504が通信し、通信ルートBを通じてルートポート1サイドとデバイス505が通信している。
【0186】
同時に、通信ルートGを通じてルートポート2サイドとデバイス506が通信し、通信ルートHを通してデバイス505とデバイス506が通信している。このときの各制御回線の状態は以下の通りである。
511:32=オン/33=オフ
512:31=オン/33=オン/34=オン/35=オン
513:31=オフ/32=オン
514:32=オン/35=オフ
515:32=オン/34=オフ
521:42=オフ/43=オン
522:41=オフ/43=オン
523:41=オン/42=オン
「オン」はデータ通信が行なわれている状態を表し、「オフ」はデータ通信が行なわれていない状態を表す。上記表記を分かりやすくするため、「オン」を「○」、「オフ」を「×」として上記を書き直すと、下記の通りとなる。
511:32=○/33=×
512:31=○/33=○/34=○/35=○
513:31=×/32=○
514:32=○/35=×
515:32=○/34=×
521:42=×/43=○
522:41=×/43=○
523:41=○/42=○
上記から明白なように、制御回線512では全通信ルートが使用されているので、31、33、34及び35各々の通信ルートに帯域を予め割り付けておけば、システムに瞬間的に過大なトラフィックが発生する可能性があっても、予め決められた帯域に従ってデータ通信を行なうので、データ送受信に破綻をきたさない通信システムを得ることができる。
【0187】
つまり、これから新規にデータ通信が行なわれる場合、新規通信ルート上にあるルートポート又はデバイスが図48に示す通知手段603を用いてスイッチに通信情報を通知することで、新規通信ルートを含めた通信ルートに対して、データ送受信に破綻をきたさないような帯域を事前に設定することができる。
【0188】
また、新規通信ルートを用いてデータ通信を開始する場合について説明する。図52は、実施例4における、新規ルートを用いてデータ通信を開始するときの状態を示す図である。
【0189】
まず、新規通信ルートCでデータ通信しようとするデバイスもしくはルートポートが、制御回線511の伝送路33及び制御回線513の伝送路31をアサートする。また、新規通信ルートFでデータ通信しようとするデバイスもしくはルートポートが、制御回線521の伝送路42及び制御回線522の伝送路41をアサートする。
【0190】
前述した通り、今まで1本の通信ルートしか無かったものが2本以上になった場合、予め割り当ててあった帯域に従ってデータ送受信が行われるので、システムに瞬間的に過大なトラフィックが発生する可能性があっても、これを回避できる構成にしているので、データ送受信に破綻をきたさない通信システムを得ることができる。
【0191】
以上、実施例4に係るデータ通信システムによれば、各スイッチが、各通信ルートにおける通信状態を把握することにより、データ通信前に各通信ルートが使用可能な帯域を予め設定するため、データ転送開始時に発生する可能性のある一時的な過大トラフィックを回避することができる。
【0192】
なお、スイッチ同士を接続する伝送路の帯域制御については、どちらか一方が帯域を演算、設定して、他方が設定された帯域に従って帯域制御することを予め決めておけばよい。例えば、2つのスイッチが上流、下流の関係にある場合は上流のスイッチが帯域を演算、設定し、下流のスイッチが帯域制御を行うようにし、2つのスイッチが同レベルにある場合は、データの発呼側のスイッチが帯域を演算、設定し、着呼側のスイッチが帯域制御を行うようにすればよい。
【実施例5】
【0193】
実施例5に係るデータ通信システムについて説明する。実施例5では、通知手段605は、制御回線を介して、使用する帯域を数値で指定することができる。
【0194】
実施例1では、通知手段605は、通信情報としてどの通信ルートが使用されるか否かの情報を通知するだけであったが、実施例5では、通知手段605は、通信情報に使用する帯域の数値を含めて通知できるようにする。そのため、制御回線に、例えば通信ルート毎に各8ビットの制御信号線を割り当て、帯域を数値で指定できるようにする。
【0195】
演算手段603は、取得した帯域の数値に基づいて新規通信ルートの帯域を設定する。取得した帯域の数値をそのまま用いると許容帯域を超えてしまう場合、新規通信ルートの帯域を優先し、現在使用されている他の通信ルートの帯域を減らすことで、許容帯域を超えないようにしてもよい。
【0196】
以上、実施例5に係るデータ通信システムによれば、これから使用する通信ルートの帯域を数値で指定することにより、新規通信ルートが所望する帯域でデータ通信を行なうことができる。この際、新規通信ルートの帯域を、現在使用されている通信ルートよりも優先的に設定するよう帯域を制御するようにすればよい。
【実施例6】
【0197】
実施例6に係るデータ通信システムについて説明する。実施例6では、伝送路における帯域が一度設定された後でも、所定の条件を満たすとき、帯域を変更することができる。
【0198】
実施例6では、演算手段602により演算された帯域に基づいて各通信ルートの帯域が更新された場合、次に通知手段605から通信情報が通知される前に、帯域を変更できるようになる。
【0199】
例えば、もともと通信ルートA、B、Dが使用している伝送路があるとする。各通信ルートはそれぞれ、30%、30%、40%の帯域を用いて通信を行なっている。このとき、ルートDのデータ通信が終了したとする。演算手段602は、通信ルートDのデータ通信が終了したことを検知もしくは、他のデバイスから通知されると、通信ルートA、Bにそれぞれ50%ずつの帯域を演算して設定する。また、通信ルートに優先度が設定されている場合は、優先度に基づいて帯域を演算するようにしてもよい。
【0200】
以上、実施例6に係るデータ通信システムによれば、一度設定(制御)した帯域であっても、その後状況が変化もしくは所定の条件を満たしたときに、再度、帯域を変更することで、帯域を効率よく使用してデータ通信を行うことができる。
【実施例7】
【0201】
実施例7に係るデータ通信システムについて説明する。実施例7では、データ通信と並行して各通信ルートの帯域を制御する。
【0202】
実施例7における通知手段605は、データ通信を開始すると同時又は開始後に、制御回線を介して、通信情報をスイッチに通知する。スイッチは、通信情報を取得すると、データ通信と並行して、演算手段602により各通信ルートの帯域の演算を行う。
【0203】
演算手段602により演算、設定された帯域は、更新手段603により帯域保持手段601に上書きされる(更新される)。次に、状態通知手段604により、更新された各通信ルートの帯域を通信状態情報としてデバイスに通知する。通信状態情報を通知されたデバイスは、帯域制御手段606により、通信状態情報が示す帯域に制御して、各通信ルートのデータ通信を継続する。
【0204】
以上、実施例7に係るデータ通信システムによれば、データ通信と並行して各通信ルートの帯域を制御することで、データ通信タイミングを遅らせることなく、かつ、データ通信能力の低下を防止することができる。
【実施例8】
【0205】
実施例8に係る画像処理システムについて説明する。実施例8では、実施例4乃至7で説明した各データ通信システムを、実施例3で説明した画像形成装置のデータ通信システムに適用する。
【0206】
実施例3で説明した通り、画像処理システムにおいては、圧縮・伸長・回転等の画像処理のように、それほどリアルタイム性が必要とされない処理や、プロットアウト処理のように、リアルタイム性が極めて重要となる処理など、プライオリティの異なる各種処理が混在している。よって、この画像処理システムに上記実施例4乃至7で説明した各データ通信システムを適用すれば、異常画像が発生しない画像システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】既存PCIシステムの構成例を示すブロック図。
【図2】PCI Expressシステムの構成例を示すブロック図。
【図3】デスクトップ/モバイルでのPCI Expressプラットホームの構成例を示すブロック図。
【図4】x4の場合の物理層の構造例を示す模式図。
【図5】デバイス間のレーン接続例を示す模式図。
【図6】スイッチの論理的構造例を示すブロック図。
【図7−1】既存のPCIのアーキテクチャを示すブロック図。
【図7−2】PCI Expressのアーキテクチャを示すブロック図。
【図8】PCI Expressの階層構造を示すブロック図。
【図9】トランザクションレイヤパケットのフォーマット例を示す説明図。
【図10】PCI Expressのコンフィグレーション空間を示す説明図。
【図11】仮想チャネルの概念を説明するための模式図。
【図12】データリンクレイヤパケットのフォーマット例を示す説明図。
【図13】x4リンクでのバイトストライピング例を示す模式図。
【図14】L0/L0s/L1/L2というリンクステートの定義について説明する説明図。
【図15】アクティブステート電源管理の制御例を示すタイムチャート。
【図16】PCI ExpressアーキテクチャとAdvanced Switching Interconnectの関係を示す説明図。
【図17】ファブリック管理機能における初期化シーケンスを示す説明図。
【図18】Advanced Switching Interconnectにおけるプロトコルのカプセル化を示す説明図。
【図19】Advanced Switching Interconnectによる複数デバイス間のストレージやIOリソースの共有を示す説明図。
【図20】Advanced Switching Interconnectによる通信例を示す説明図。
【図21−1】Congestion Managementについて示す説明図。
【図21−2】Congestion Managementについて示す説明図。
【図22】BVC(Bypass Capable Unicast)を説明するための模式図。
【図23】OVC(Ordered-Only Unicast)を説明するための模式図。
【図24】MVC(Multicast)を説明するための模式図。
【図25−1】実施例1におけるシステム構成を示す図。
【図25−2】実施例1におけるRoot Complexの内部構成例を示す図。
【図26】実施例1における、Root Complexポート1サイドのルートを示す図。
【図27】実施例1における、Root Complexポート2サイドのルート及びスイッチ経由でのデバイス同士の通信ルートを示す図。
【図28】実施例1における、保持手段が保持するデータの一例を示す図。
【図29】実施例1における、ある時刻での通信ルートの一例を示す図。
【図30】実施例1における、ある時刻での通信ルートの通信状況のレジスタ値の一例を示す図。
【図31】実施例1における、新規通信ルートで通信を開始しようとする状態を示す図。
【図32】実施例1における、ルートポート1及びルートポート2サイドの通信状況のレジスタ値が上書きされた状態を示す図。
【図33】実施例1における、通信状況を帯域に従って適切に処理するためのフローチャート。
【図34】実施例1における、図33のフローチャートに従って計算された値がルートポート1サイド及びルートポート2サイドのレジスタに設定された状態の図。
【図35】実施例1における、新規通信ルートで通信が開始された状態を示す図。
【図36】実施例2における、ルートポート1サイドでの各ルート番号と各々の優先度、許容帯域及び現状帯域を保持するレジスタと、レジスタへの初期設定値の一例を示す図。
【図37】実施例2における、ルートポート2サイドでの各ルート番号と各々の優先度、許容帯域及び現状帯域を保持するレジスタと、レジスタへの初期設定値の一例を示す図。
【図38】実施例2における、ある時刻でのルートポート1サイドの通信状況のレジスタ値の一例を示す図。
【図39】実施例2における、ある時刻でのルートポート2サイドの通信状況のレジスタ値の一例を示す図。
【図40】実施例2における、ルートポート1サイドの通信状況のレジスタ値が上書きされた状態を示す図。
【図41】実施例2における、ルートポート2サイドの通信状況のレジスタ値が上書きされた状態を示す図。
【図42】実施例2における、通信状況を帯域に従って適切に処理するためのフローチャート。
【図43】実施例2における、現状帯域が優先度に基づいて計算されたときのルートポート1サイドのレジスタ値の一例を示す図。
【図44】実施例2における、現状帯域が優先度に基づいて計算されたときのルートポート2サイドのレジスタ値の一例を示す図。
【図45】実施例2における、ルートC及びルートFでは新規に、ルートD及びルートHでは通信帯域が再設定され、通信している状態を示す図。
【図46】実施例3における画像形成装置のハードウェア構成を示す図。
【図47】実施例4におけるシステム構成例を示す図。
【図48】スイッチ及びデバイスの内部構成例を示す図。
【図49】実施例4におけるルートポート1サイドの通信ルートを示す図。
【図50】実施例4におけるルートポート2サイドの通信ルート及びスイッチ経由でのデバイス同士の通信ルートを示す図。
【図51】実施例4における、ある時刻での通信ルートの一例を示す図。
【図52】実施例4における、新規通信ルートでデータ通信を開始しようとする状態を示す図。
【符号の説明】
【0208】
1、2 ルートポート
11、12、13、14、15 データ通信通知手段
21、22、23 データ通信通知手段
200、500 ルートコンプレックス
201、202、203 スイッチ
204、205、206、207、208 デバイス
300 帯域制御手段
301、302 保持手段
400 画像形成装置
501、502、503 スイッチ
504、505、506、507、508 デバイス
511、512、513、514、515、521、522、523 制御回路
601 帯域保持手段
602 演算手段
603 更新手段
604 状態通知手段
605 通知手段
606 帯域制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポイントツーポイントで送受信される通信チャネルが確立される高速シリアルバスにより、スイッチ又はデバイスであるノードが接続されるツリー構造によるデータ通信網を用いてデータ通信を行なうデータ通信システムであって、
前記ツリー構造の下位にあるデバイスである下位デバイスは、
データ通信前に、データ通信が行なわれるノード間の通信経路に関する通信情報を、前記ツリー構造の最上位にあるデバイスである最上位デバイスに通知する通知手段を備え、
前記最上位デバイスは、
複数の通信経路と、各ノード間の伝送路の許容帯域、及び、各ノード間において各通信経路で使用される帯域の総和である現状帯域とを保持する保持手段と、
前記通知手段により通知された通信情報と前記保持手段が保持する現状帯域とに基づいて、前記許容帯域を超えないように前記通信経路の帯域を制御する制御手段と、を備えるデータ通信システム。
【請求項2】
前記通信情報は、データ通信が行なわれる通信経路において要求された帯域を示す要求帯域を含み、
前記制御手段は、
前記要求帯域を前記現状帯域に加算した帯域が前記許容帯域を超えるか否かを判定し、前記許容帯域を超える場合、前記通信経路の帯域の制御を行う請求項1記載のデータ通信システム。
【請求項3】
前記保持手段は、
各通信経路に設定された優先度をさらに保持し、
前記制御手段は、
前記判定の結果が前記許容帯域を超える場合、前記優先度及び前記許容帯域に基づいて、各通信経路の帯域を制御する請求項2記載のデータ通信システム。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記許容帯域に対して、各通信経路の前記優先度により求められた重みに基づいて各通信経路における最大限使用可能な帯域を算出し、算出した帯域に基づいて各通信経路の帯域を制御する請求項3記載のデータ通信システム。
【請求項5】
ポイントツーポイントで送受信される通信チャネルが確立される高速シリアルバスにより、スイッチ又はデバイスであるノードが接続されるツリー構造によるデータ通信網を用いてデータ通信を行なうデータ通信システムであって、
各ノードをデータ通信可能に接続する制御回線を備え、
データ通信が行なわれる通信経路に含まれる前記デバイスは、
該デバイスに接続され、前記通信経路に含まれる前記スイッチに対し、データ通信に関する通信情報を、前記制御回線を介して通知する通知手段と、
各通信経路の帯域を制御する制御手段とを備え、
前記スイッチは、
該スイッチと接続されるノード間で通信される各通信経路の帯域に関する通信帯域情報を保持する帯域保持手段と、
前記通知手段により通知された通信情報に基づいて更新された各通信経路における帯域の通信状態を示す通信状態情報を、前記制御回線を介して通知する状態通知手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記状態通知手段により通知された通信状態情報に基づいて、各通信経路の帯域を制御するデータ通信システム。
【請求項6】
前記通信情報は、前記通信経路でデータ通信するときの帯域を示す数値情報を含み、
前記スイッチが前記数値情報を取得した場合、
前記帯域保持手段は、
前記数値情報に基づいて更新された通信帯域情報を保持する請求項5記載のデータ通信システム。
【請求項7】
前記スイッチは、
前記通信情報を取得した場合、取得した前記通信情報に基づいて各通信経路の帯域を演算する演算手段と、
前記演算手段により演算された帯域に基づいて前記帯域の通信状態を更新する更新手段とを備える請求項5又は6記載のデータ通信システム。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか一項に記載のデータ通信システムを、画像形成装置内部のデータ通信システムに適用する画像処理システム。
【請求項9】
ポイントツーポイントで送受信される通信チャネルが確立される高速シリアルバスにより、スイッチ又はデバイスであるノードが接続されるツリー構造によるデータ通信網を用いてデータ通信を行なうデータ通信システムであって、前記ツリー構造の最上位にあるデバイスである最上位デバイスは、複数の通信経路と、各ノード間の伝送路の許容帯域、及び、各ノード間において各通信経路で使用される帯域の総和である現状帯域とを保持する保持手段を備えるデータ通信システムにおけるデータ通信方法であって、
データ通信前に、データ通信が行なわれるノード間の通信経路に関する通信情報を、前記最上位デバイスに通知する通知ステップと、
前記通知ステップにより通知された通信情報と前記保持手段が保持する現状帯域とに基づいて、前記許容帯域を超えないように前記通信経路の帯域を制御する制御ステップと、
を有するデータ通信方法。
【請求項10】
ポイントツーポイントで送受信される通信チャネルが確立される高速シリアルバスにより、スイッチ又はデバイスであるノードが接続されるツリー構造によるデータ通信網を用いてデータ通信を行なうデータ通信システムであって、各ノードをデータ通信可能に接続する制御回線を備えるデータ通信システムにおけるデータ通信方法であって、
データ通信が行なわれる通信経路に含まれる前記デバイスが、該デバイスに接続され、前記通信経路に含まれる前記スイッチに対し、データ通信に関する通信情報を、前記制御回線を介して通知する通知ステップと、
前記スイッチが、前記通知ステップにより通知された通信情報に基づいて更新された各通信経路における帯域の通信状態を示す通信状態情報を、前記制御回線を介して通知する状態通知ステップと、
前記デバイスが、前記状態通知ステップにより通知された通信状態情報に基づいて、各通信経路の帯域を制御する制御ステップと
を有するデータ通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21−1】
image rotate

【図21−2】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25−1】
image rotate

【図25−2】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate

【図49】
image rotate

【図50】
image rotate

【図51】
image rotate

【図52】
image rotate


【公開番号】特開2010−41335(P2010−41335A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201195(P2008−201195)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】