説明

データ通信システム

【目的】 複数のDTE及びDCEを使用しているデータ通信システムにおいて、回線使用者の負担を増すことなく、バッファフル時のデータ送受信の順序の制御をスムーズに行うことである。
【構成】 DCEが受信バッファフルになった時、その状態をDTEに通知し、そのDTEの番号を記憶する。DTEが複数の場合で、他のDTEから更に送信がある時には、そのDTE番号を時系列の番号と共に記憶する。更にバッファフル状態が解除された場合に記憶している番号のDTEに解除の通知をする。DTEが複数の場合は時系列番号の古い順に各DTEに解除の通知をする。解除の通知を受信したDTEはDCEに受信不可コマンドパケットが返送されてきた時のデータパケットを自動的に再送する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はデータ通信システムに係り、特にパケット通信システムのバッファフル時の制御方式の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】図5は送信装置(Tx)及び受信装置(Rx)共複数の場合のパケット通信システムを示し、DCE(送信側)はデータ回線終端装置、DTEはデータ端末装置で、図6は上記システムで使用されるパケットの構成の一例を示し、このパケットのヘッダ部には送り先等に関するデータが記憶されている。
【0003】上記パケット通信システムにおいては、受信側のメモリ容量が送信されるべきデータの容量に対して不足となり、データの送信ができない状態、所謂受信バッファフルになることがあり、かかる場合の従来技術におけるバッファ時制御の流れ図を図7に示す。同図において、N(S)とは送信側送信シーケンス番号であり、データパケット毎に1ずつ増やされる。またN(R)とは受信側受信シーケンス番号であり、次に受信が期待されるデータパケットのシーケンス番号である。更に、P/Fは1にセットされた場合、DCE又はDTEが夫々DTE又はDCEからの応答を求めるために使用するもの、即ち、データが送信可能であるか否かを示す一種のフラグ(1の時送信可能)である。
【0004】次にこの図7を用いて従来技術の制御の流れを説明する。まず、DTEからDCEに(1)のようなデータパケットが送られたとする。ここで、P/F=1であるから、DTEは次のパケットが相手から来るのを期待している。DCEはデータパケットを受け取った(2)が、その時点でバッファフル(3)となり、受信不可コマンド(4)をDTEに送信する。ここでN(R)=5なので、次に受信されるべき、パケットはシーケンスナンバー5のデータパケットとしているが、P/F=0なので、次のパケットは自分から送信する。即ち、受信側から受信可になった時にその旨送信側に送信し、それに引き継いでデータ受信を再開する、という意味を含んでいる。DCEはバッファフル状態が解除(6)になった場合、DTEに受信可コマンドを送信(7)する。ここで、P/F=1、即ち、データ送信可能であるので、DTEはDCEに次のパケットを送信してもよいことになる。従ってDTEは次にDCEに送信するデータパケットがあれば送信する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上がパケット通信システムにおける従来のバッファフル時の制御方式であるが、この基本的な方式の手順に従って複数のDTEとDCEとで構成された通信網においてデータの授受を行うと、複数のデータ受信側でバッファフルが発生している状態ではデータを送信する順序が把握できないという問題点がある。即ち、DTE側の問題点として複数のDCEがバッファフル状態となり、受信不可コマンドを送信してきている状態から、順次バッファフルが解除されても、どのような順序でDCEにデータを送信すべきかを把握することができない。
【0006】またDCE側の問題点としては、バッファフル時に複数のDTEから送信を受けた場合、バッファフル解除となっても、どの順序で夫々のDTEからデータを受信すべきかを把握することができないことである。特にデータの送信順序、或いは受信順序が重要なファクタになっているシステムにおいては、バッファフルが解除された順に任意にデータ送信を開始しても良いというものではなく、データ送受信時の順序を適確に回線使用者の負担を増すことなく行うことが求められている。
【0007】本発明の目的は、データ通信回線上に複数のDTE及び複数のDCEが接続されているようなデータ通信システムにおいて、回線使用者の負担を増すことなくバッファフル時のデータ送受信の順序の制御をスムーズに行うことができる方式を提案することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本願の第1の発明は、少なくとも1つずつの受信装置及び送信装置を有し、上記受信装置がデータ受信不可能である時には、前記送信装置に対してこのことを通知する通知手段を有するデータ通信システムにおいて、前記通知手段による通知動作の時系列に関するデータと共に送信されるべきデータを記憶する記憶手段と、前記受信装置のデータ受信不可能状態が解除されたことを検出する検出手段と、上記検出手段により上記解除が検出された時には、前記時系列に関するデータに従ってデータを伝送するように、前記送信装置を制御する送信制御手段と、を備えたことを特徴とする。また上記第1の発明の装置において、前記送信装置及び受信装置の少なくとも一方が複数設けてもよい。更に、前記第1の発明の装置において、前記送信装置により、前記受信装置に対して伝送されるデータが所定容量ごとのユニットに区分され、そのユニット単位で伝送されるようにしてもよい。次に、本願の第2の発明は、伝送されるべきデータを所定容量ごとのユニットに区分して、そのユニット単位でデータ伝送を行う、少なくとも一方が複数の受信装置及び送信装置を有し、上記受信装置がデータ受信不可能である時には前記送信装置に対して、このことを通知する通知手段を有するパケット通信システムにおいて、前記通知手段による通知動作の時系列に関するデータと共に送信されるべきデータを記憶する記憶手段と、前記受信装置のデータ受信不可能状態が解除されたことを検出する検出手段と、上記検出手段により上記解除が検出された時には、前記時系列に関するデータに従ってデータを伝送するように、前記送信装置を制御する送信制御手段と、を備えたことを特徴とする。また、上記第2の発明の装置において、前記送信装置及び受信装置が夫々複数設けてもよい。更に、前記第2の発明の装置において、前記時系列に関するデータが前記各受信装置の時系列番号となるようにしてもよい。
【0009】
【作用】本発明のデータ通信システムにおいて、受信装置がデータ受信不可能であると、このことが送信装置に通知され、この通知動作の時系列に関するデータと共に送信されるべきデータが記憶される。この受信装置のデータ受信不可能状態が解除されたことが検出されると、上記時系列に関するデータに従ってデータが伝送されるように前記送信装置が制御される。
【0010】
【実施例】以下図面を参照して本発明を説明する。図1は本発明に用いられる端末機器(DTE,DCE)の一構成例で、Aはマイクロコンピュータ、Bは送信時、受信不可能なDCENo.記憶メモリ、Cは受信時、受信不可能の情報を送信済みの相手側DTENo.を記憶するメモリ、DはI/O装置、Eは受信データ記憶バッファ、Fはアンテナ,同軸ケーブル等の通信媒体、Gは受信不可能状態の情報を受信した時用いられる順序用タイマである。
【0011】図1の端末機器は、例えば、図2のようなネットワークを構成するように接続され、前記DTE又はDCEとして動作する。
【0012】図3及び図4は上記DCE,DTEを用いたパケット通信システムにおける本発明によるバッファフル時の制御方式の一実施例を示す。説明の便宜上、図3R>3には複数のDTEが同一回線上に存在する場合、図4には複数のDCEが同一回線上に存在する場合、と分割したが、実際には図3と図4を複合した形、つまり同一回線上に複数のDTE及びDCEが存在すると考えられる。
【0013】図3及び図4において、P(S)とは送信パケットのシーケンス番号、P(R)とは着信パケットシーケンス番号である。また(13),(15)のACKとは、DCEが、DTEからデータパケットを受信したことを、DTEに知らせるための確認パケットであり、受信したデータパケットのシーケンス番号をACKのシーケンス番号としてDTEに通知することで、データパケットの伝送をDTEが確認できる。
【0014】まず、図3を参照してDTEが複数存在する場合のバッファフル時の制御方式を説明する。最初に、DTE1はP(S)=4のデータパケットをDCEに送信(11)する。即ち、一例としてデータパケットのシーケンス番号が4である場合を考える。DCEはデータパケットの受信(12)に対し、DTEにACKを返す(13)。この時点でDCEがバッファフル状態となったとする。
【0015】この時、DTE1が更にデータパケットをDCEに送信する(16)と、DCEはデータパケットの受信(17)に対して受信不可コマンドパケットをDTE1に送信(18)して、バッファフル状態を通知すると同時に、そのDTEのアドレスを受信不可コマンド送信済(20)として記憶し、同時に時系列番号をそのDTEアドレスの時系列番号として記憶する(21)。
【0016】このように本実施例においては、バッファフルを検知した順序をDTEアドレスの時系列番号で把握するように構成しているが、本発明はこのような方法に限られるものではなく、単純にタイマを用いてバッファフルを検知した順序を記憶するようにしても良いことは勿論である。
【0017】DTE1は受信不可コマンドパケットを受信(19)すると、受信不可となったDCEのアドレスと、(16)のデータ及びP(S)の値を記憶する22。ここで別のDTE(DTE2)がバッファフル状態である同じDCEにデータパケットを送信(23)した場合、DCEはDTE1に対して行った処理と同様の処理(24)〜(27)を行い、DTE2もDTE1と同様の処理(28),(29)を行う。ここで、DCEの状態が変化し、バッファフル状態が解除(30)となったとする。
【0018】そうするとDCEは、受信不可コマンドパケットを送信した時に記憶した時系列番号により、受信不可コマンドパケットの送信順位を決定し(31)、初めに受信不可コマンドを送信したDTEのアドレスの古い順から、そのアドレスのDTEに受信不可コマンドパケットを送信する。ここでは初めに受信不可コマンドを送信したDTEはDTE1なので、DTE1に受信可コマンドパケットを送信する。
【0019】受信可コマンドを受信した(33)のDTE1は以前受信不可コマンドを受信した時に記憶していたデータの中から受信可コマンドを通信してきたDCEのアドレスに対応するデータを見つけて自動的にDCEへ再送(34)する。また、同時に、そのDCEのアドレス及び対応するP(S)データをDTE1の受信不可メモリより削除する(25)。DTE1から再送されたデータパケットを受信した(36)DCEは受信不可送信済メモリよりDTEアドレスを削除し(37)、次に受信不可を送信したDTEのアドレスを見つけ出し、受信可コマンドを送信する(38)。ここではDTE2である。そして以下の処理はDTE1の時と同様である(39)〜(43)。
【0020】次に図4を参照してDCEが複数存在する場合のバッファフル時の制御方式を説明する。まず、DTEがDCE1にデータパケットを送信(44)すると、DCE1はデータパケット受信(45)に対してACK(46)をDTEに送信する。この時点で、DCE1がバッファフル(47)になったとする。
【0021】この時、DTEが更にDCE1にデータパケットを送信(49)すると、DCE1はデータパケット受信(50)に対して受信不可コマンドをDTEに送信(51)する。同時に、DCE1はそのDTEのアドレスを記憶し(52)、同時に、その時系列番号をそのDTEアドレスの時系列番号として記憶する(53)。受信不可コマンドを受信した(54)DTEは受信不可受信済としてDCE1のアドレス、P(S)、データを記憶する(55)。
【0022】次にDTEが別のDCE(DCE2)にデータパケットを送信してそのデータパケットによりDCE2がバッファフルになった場合、DCE1の時と同様の処理を行う(56)〜(57)。
【0023】ここでDCE1のバッファフル状態が解除になったとすると(68)、DCE1は受信不可コマンドパケットを送信した時に記憶した時系列番号により受信可コマンドパケットの送信順位を決定し(69)、記憶している受信不可送信済DTEアドレスの古い順からそのDTEに送信可を送信(70)する。受信可コマンドを受信したDTEは(71)、以前受信不可コマンドを受信した時に記憶していたデータの中から受信可コマンドを送信してきたDCE1のアドレスに対応するデータを見つけて自動的にDCE1へ再送する(72)。また同時に、そのDCEのアドレス及び対応するP(S)、データをDTEの受信不可受信済メモリより削除する(73)。DTEから再送されたデータパケットを受信した(74)DCE1は、受信不可送信済メモリよりDTEアドレスを削除する(75)。また、ここで更にDCE2のバッファフル状態が解除(76)となったとすると、DCE2はDCE1の場合と同様の処理を行い、またDTEについても同様である(77)〜(83)。
【0024】以上本発明の実施例を2通りに分けて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、DTEからDCEへのデータパケットの送信に対して、DCEからACKを返しているが、これは本発明にとって必須のものではない。また図3,図4では、DTE又はDCEが2台の場合について説明したが、これらの台数が限定されないこと勿論であり、また、DTEとDCEの存在比も1:N、N:1、N:Nなどとして特に限定するものではない。
【0025】更にバッファフル状態が解除になった場合、受信可コマンドパケットを送信する順序を判別する方法として前記実施例では時系列番号を付加して記憶するようにしているが、時系列番号のカウンタも特に限定するものではなく、前述のようにタイマ等を用いてもよい。また本発明の方式は、パケットによりデータを伝送するシステム全てに同等に適用可能なものであり、データ伝送の媒体としても有線、無線の何れでもよい。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、データ通信回線上に複数のDTE及び複数のDCEが接続されていても、回線使用者の負担を増すことがなく、バッファフル時の制御をスムーズに行うことができる。特に、データの送信順序や受信順序が重要なファクタとなっているパケット通信システム等においては、本発明を適用することによりバッファフル時においてもデータ送受の順番管理を間違いなく行うことができる。またDCEのバッファフル状態をDTEが自分自身で確認できるため、バッファフル状態のDCEにデータパケットを送信してしまうという間違いがなくなり、更にDCEの受信不可コマンドに対応してあるデータを即時に自動再送できるので、バッファフルによるデータ通信の効率の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられるデータ端末機器の構成例を示すブロック図である。
【図2】上記端末機器をDTE、DCEとして用いた場合の接続関係を示す図である。
【図3】本発明によるバッファフル時の制御方式の一実施例を示す流れ図である。
【図4】本発明によるバッファフル時の制御方式の他の実施例を示す流れ図である。
【図5】送信装置Tx及び受信装置Rx共複数であるパケット通信システムを示す説明図である。
【図6】パケットの一例を示す説明図である。
【図7】従来のパケット通信システムにおけるバッファフル時の制御方式を示す流れ図である。
【符号の説明】
DCE データ回線終端装置
DTE データ端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1つずつの受信装置及び送信装置を有し、上記受信装置がデータ受信不可能である時には、前記送信装置に対してこのことを通知する通知手段を有するデータ通信システムにおいて、前記通知手段による通知動作の時系列に関するデータと共に送信されるべきデータを記憶する記憶手段と、前記受信装置のデータ受信不可能状態が解除されたことを検出する検出手段と、上記検出手段により上記解除が検出された時には、前記時系列に関するデータに従ってデータを伝送するように、前記送信装置を制御する送信制御手段と、を備えたことを特徴とするデータ通信システム。
【請求項2】 前記送信装置及び受信装置の少なくとも一方が複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のデータ通信システム。
【請求項3】 前記送信装置により、前記受信装置に対して伝送されるデータが所定容量ごとのユニットに区分され、そのユニット単位で伝送されることを特徴とする請求項1に記載のデータ通信システム。
【請求項4】 伝送されるべきデータを所定容量ごとのユニットに区分して、そのユニット単位でデータ伝送を行う、少なくとも一方が複数の受信装置及び送信装置を有し、上記受信装置がデータ受信不可能である時には前記送信装置に対して、このことを通知する通知手段を有するパケット通信システムにおいて、前記通知手段による通知動作の時系列に関するデータと共に送信されるべきデータを記憶する記憶手段と、前記受信装置のデータ受信不可能状態が解除されたことを検出する検出手段と、上記検出手段により上記解除が検出された時には、前記時系列に関するデータに従ってデータを伝送するように、前記送信装置を制御する送信制御手段と、を備えたことを特徴とするパケット通信システム。
【請求項5】前記送信装置及び受信装置が夫々複数設けられていることを特徴とする請求項4に記載のパケット通信システム。
【請求項6】前記時系列に関するデータが前記各受信装置の時系列番号であることを特徴とする請求項4に記載のパケット通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−227212
【公開日】平成5年(1993)9月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−59337
【出願日】平成4年(1992)2月12日
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)