説明

データ選択回路およびデータ選択方法

【課題】複数の入力データの中から択一的に選択される各入力データの選択確率の均等化を図る。
【解決手段】データ選択回路1は比較回路2と調整回路3を有する。比較回路2は、複数の入力データD1,D2・・・の値を順次比較していき、複数の入力データD1,D2・・・の中から択一的に最大値を持つデータを選択する。ところで、比較回路2により選択された前記入力データ以外にも複数の入力データD1,D2・・・の中に同じ最大値を持つ別の入力データが存在する場合がある。調整回路3は、その場合に、前記複数の入力データD1,D2・・・の値の組み合わせが予め定めた組み合わせである場合には、前記比較回路により選択された入力データに代えて、前記最大値を持つ別の入力データを、最大値を持つデータとして出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の入力データの値を比較し当該比較結果に基づいて入力データを択一的に選択するデータ選択回路およびデータ選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、データ処理装置の一例を示すブロック構成図である(特許文献1参照)。このデータ処理装置60は、次に述べるようなプロセッサ611〜61nおよび比較選択部621〜62nを有している(但し、nは2以上の整数)。
【0003】
各プロセッサ611〜61nは、それぞれ、自データA1〜Anを保持している。また、プロセッサ611〜61nは、直列に接続している。さらに、各プロセッサ611〜61nは、それぞれ、一対一に対応する比較選択部621〜62nに接続している。各プロセッサ611〜61nは、それぞれ、データが加えられると、当該入力データと自データを、対応する比較選択部621〜62nに出力する機能を有している。また、各プロセッサ611〜61nは、それぞれ、対応する比較選択部621〜62nからデータを受け取ると、その受け取ったデータを出力する機能を有している。
【0004】
各比較選択部621〜62nは、それぞれ、プロセッサ611〜61nから受け取った2つのデータを比較し、それら2つのデータのうちの大きい方を、対応するプロセッサ611〜61nに出力する回路構成を有している。
【0005】
上記のような構成を有するデータ処理装置60は、次のような回路動作を行う。例えば、データA0がプロセッサ611に加えられると、プロセッサ611は、そのデータA0と、自データA1とを比較選択部621に出力する。比較選択部621は、それらデータA0,A1の値を比較し、値の大きい方のデータをプロセッサ611に出力する。プロセッサ611は、比較選択部621から受け取ったデータ(データA0,A1のうちの大きい方のデータ)を次のプロセッサ612に出力する。プロセッサ612は、プロセッサ611からデータを受け取ると、その受け取ったデータと、自データA2とを比較選択部622に出力する。比較選択部622は、それら受け取った2つのデータの値を比較し、値の大きい方のデータをプロセッサ612に出力する。そして、プロセッサ612は、比較選択部622から受け取ったデータを次のプロセッサ613に出力する。このようにプロセッサ611〜61nおよび比較選択部621〜62nが動作することによって、データ処理装置60は、各プロセッサ611〜61nが持つ自データA1〜Anの中の最大値のデータAmaxを出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−84966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のようなデータ処理装置60の回路に対して、各入力データが選択される選択確率(選択回数)がほぼ均等であることが望まれる場合がある。その場合とは、例えば、上記回路を調停回路として利用しようとする場合である。しかしながら、上記したようなデータ処理装置60の回路では、最初の入力データA0の選択確率が他よりも高くなる傾向にあり、各データの選択確率が均等でないという問題が生じる。
【0008】
本発明は上記課題を解決するために考えられた。すなわち、本発明の主な目的は、複数の入力データの中から択一的に選択される各入力データの選択確率(選択回数)の均等化を図ることができるデータ選択回路およびデータ選択方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のデータ選択回路は、
第1の入力データと第2の入力データとの値を比較し、この比較によって前記第1の入力データと前記第2の入力データとのうちの大きいと判断した方の前記入力データと、第3の入力データとの値を比較するというように、複数の入力データの値を順次比較していき、前記複数の入力データの中から択一的に最大値を持つデータを選択する比較回路と、
前記比較回路により選択された前記入力データ以外にも前記複数の入力データの中に前記最大値を持つ別の入力データが存在する場合に、前記複数の入力データの値の組み合わせが予め定めた組み合わせである場合には、前記比較回路により選択された入力データに代えて、前記最大値を持つ別の入力データを、最大値を持つデータとして出力する調整回路と、
を有する。
【0010】
本発明のデータ選択方法は、
第1の入力データと第2の入力データとの値を比較し、この比較によって前記第1の入力データと前記第2の入力データとのうちの大きいと判断した方の前記入力データと、第3の入力データとの値を比較するというように、複数の入力データの値を順次比較し、
この比較によって、前記複数の入力データの中から択一的に最大値を持つデータを選択し、
その選択された前記入力データ以外にも前記複数の入力データの中に前記最大値を持つ別の入力データが存在する場合に、前記複数の入力データの値の組み合わせが予め定めた組み合わせである場合には、前記比較回路により選択された入力データに代えて、前記最大値を持つ別の入力データを、最大値を持つデータとして出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の入力データの中から択一的に選択される各入力データの選択確率(選択回数)の均等化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る第1実施形態のデータ選択回路を簡略化して示すブロック構成図である。
【図2】本発明に係る第2実施形態のデータ選択回路を示す回路図である。
【図3】図2のデータ選択回路において、入力データD1,D2,D3の組み合わせと、出力データとの関係を表す表である。
【図4】第2実施形態のデータ選択回路と比較する比較例のデータ選択回路を示す回路図である。
【図5】図4のデータ選択回路において、入力データD1,D2,D3の組み合わせと、出力データとの関係を表す表である。
【図6】図2のデータ選択回路と、図4のデータ選択回路とのそれぞれにおける各入力データD1,D2,D3の選択回数および選択確率を示す表である。
【図7】本発明に係る第3実施形態のデータ選択回路を示す回路図である。
【図8】本発明に係るその他の実施形態のデータ選択回路を説明するブロック構成図である。
【図9】特許文献1に示されているデータ処理装置の回路の一つを示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、この発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る第1実施形態のデータ選択回路を簡略化して示すブロック構成図である。この第1実施形態のデータ選択回路1は、比較回路2と、調整回路3とを有している。すなわち、比較回路2は、第1の入力データD1と第2の入力データD2との値を比較する回路を有する。さらに、比較回路2は、その比較によって第1の入力データD1と第2の入力データD2とのうちの大きいと判断した方の入力データと、第3の入力データD3との値を比較する回路を有する。このように、比較回路2は、複数の入力データD1,D2・・・の値を順次比較していき、それら入力データD1,D2・・・の中から択一的に最大値を持つデータを選択する回路構成を有する。
【0015】
ところで、比較回路2により選択された入力データ以外にも前記複数の入力データの中に同じ最大値を持つ別の入力データが存在する場合がある。この第1実施形態のデータ選択回路1では、そのような場合を考慮した次のような構成を備えている。すなわち、第1実施形態のデータ選択回路1は、前記の如く、調整回路3を有している。この調整回路3は、上記のような場合に、前記複数の入力データD1,D2・・・の値の組み合わせが予め定めた組み合わせである場合には、比較回路2により選択された入力データに代えて、前記最大値を持つ別の入力データを、最大値を持つデータとして出力する。
【0016】
この第1実施形態のデータ選択回路1は、上記のような比較回路2および調整回路3を有することによって、複数の入力データの中から択一的に選択される各入力データの選択確率(選択回数)の均等化を図ることができる。つまり、比較回路2は、比較している二つの入力データの値が等しい場合であっても、何れか一方を大きい方として出力する。このことに起因して、比較回路2により選択される各入力データの選択確率が均等ではなくなる。この対策として、この第1実施形態のデータ選択回路1は、比較回路2に加えて、調整回路3を有している。この調整回路3により、次のように、各入力データの選択確率の均等化を図ることができる。
【0017】
例えば、比較回路2により選択される選択確率の高い入力データ(例えばD1とする)と、比較回路2により選択される選択確率の低い入力データ(例えばD3とする)とが同じ最大値を持つ場合に、比較回路2が、その選択確率の高い入力データD1を選択する場合がある。このような場合に、調整回路3は、例えば、その比較回路2により選択された入力データD1に代えて、前記選択確率の低い前記入力データD3を、最大値を持つデータとして出力する。このような調整回路3の回路動作により、各入力データの選択確率の均等化を図ることができる。
【0018】
(第2実施形態)
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。
【0019】
図2は、第2実施形態のデータ選択回路を示す回路図である。この第2実施形態のデータ選択回路5は、入力端IN1,IN2,IN3と、比較回路6と、調整回路7と、出力端OUTとを有している。入力端IN1,IN2,IN3は、それぞれ、デジタル信号であるデータ(入力データ)D1,D2,D3が入力する部分である。出力端OUTは、データDoutが出力する部分である。比較回路6は、大小判定回路10,11と、選択回路12とを有している。調整回路7は、判定回路13と、否定論理積演算回路(以下、NAND回路と記す)14と、論理積演算回路(AND回路と記す)15と、選択回路16とを有している。
【0020】
比較回路6の大小判定回路10は、2つの入力端と1つの出力端を有する。それら2つの入力端のうちの一方は、入力端IN1に接続し、他方は、入力端IN2に接続している。大小判定回路10は、入力端IN1を通って入力した入力データD1が、入力端IN2を通って入力した入力データD2以上の値である否かに応じた次のような信号S1を出力する回路構成を有する。つまり、大小判定回路10は、入力データD1が入力データD2以上の値である場合(D1≧D2)には、デジタル信号の「1」を示すハイレベル(H(High)レベル)の信号S1を出力する。また、大小判定回路10は、それ以外の場合(D1<D2)には、デジタル信号の「0」を示すローレベル(L(Low)レベル)の信号S1を出力する。なお、大小判定回路10は、回路部品であるコンパレータ(比較器)の態様をなしていてもよい。
【0021】
選択回路12は、2つの入力端と1つの制御端と1つの出力端を有する。その入力端の一つは、入力端IN1に接続し、別の入力端は、入力端IN2に接続し、制御端は、大小判定回路10の出力端に接続している。選択回路12は、大小判定回路10の出力信号S1に応じて次のようにデータD10を出力する回路構成を有する。つまり、選択回路12は、大小判定回路10の出力信号S1がHレベル(「1」)である場合には、入力データD1をデータD10として出力する。また、選択回路12は、大小判定回路10の出力信号S1がLレベル(「0」)である場合には、入力データD2をデータD10として出力する。
【0022】
大小判定回路11は、2つの入力端と1つの出力端を有する。それら2つの入力端のうちの一方は、選択回路12の出力端に接続し、他方は、入力端IN3に接続している。大小判定回路11は、選択回路12から出力した入力データD10が、入力端IN3を通って入力した入力データD3以上の値である否かに応じた次のような信号S2を出力する回路構成を有する。つまり、大小判定回路11は、入力データD10が入力データD3以上の値である場合(D10≧D3)には、デジタル信号の「1」を示すハイレベル(H(High)レベル)の信号S2を出力する。また、大小判定回路11は、それ以外の場合(D10<D3)には、デジタル信号の「0」を示すローレベル(L(Low)レベル)の信号S2を出力する。この第2実施形態では、その信号S2は、比較回路6によって入力データD1,D2,D3の中から択一的に選択されたデータを示す信号である。なお、大小判定回路11は、回路部品であるコンパレータ(比較器)の態様をなしていてもよい。
【0023】
調整回路7の判定回路13は、2つの入力端と1つの出力端を有する。それら2つの入力端のうちの一方は、入力端IN1に接続し、他方は、入力端IN3に接続している。判定回路13は、入力端IN1を通って入力した入力データD1と、入力端IN3を通って入力した入力データD3とが等しいか否かに応じた次のような信号S3を出力する回路構成を有する。つまり、判定回路13は、入力データD1と入力データD3が等しい場合(D1=D3)には、デジタル信号の「1」を示すハイレベル(H(High)レベル)の信号S3を出力する。また、大小判定回路10は、それ以外の場合(D1≠D3)には、デジタル信号の「0」を示すローレベル(L(Low)レベル)の信号S3を出力する。なお、判定回路13は、回路部品(素子)としての態様をなしていてもよい。
【0024】
NAND回路14は、2つの入力端と1つの出力端を有している。一方の入力端は、判定回路13の出力端に接続し、他方の入力端は、大小判定回路10の出力端に接続している。NAND回路14は、論理演算回路である。当該NAND回路14は、大小判定回路10からの出力信号S1と判定回路13からの出力信号S3との組み合わせに応じて次のように信号S4を出力する回路構成を有する。
【0025】
すなわち、NAND回路14は、大小判定回路10がHレベル(「1」)の信号S1を出力し、かつ、判定回路13がHレベル(「1」)の信号S3を出力した場合に、デジタル信号の「0」を示すローレベル(L(Low)レベル)の信号S4を出力する。つまり、NAND回路14は、入力データD1が入力データD2以上の値であり、かつ、入力データD1と入力データD3が等しい場合(D1≧D2、かつ、D1=D3)には、Lレベルの信号S4を出力する。
【0026】
また、NAND回路14は、上記以外の場合には、デジタル信号の「1」を示すハイレベル(H(High)レベル)の信号S4を出力する。つまり、NAND回路14は、入力データD1が入力データD2未満の値である場合と、入力データD1と入力データD3が等しくない場合との一方又は両方の場合(D1<D2、or、D1≠D3)には、Hレベルの信号S4を出力する。
【0027】
AND回路15は、2つの入力端と1つの出力端を有している。一方の入力端は、NAND回路14の出力端に接続し、他方の入力端は、大小判定回路11の出力端に接続している。AND回路15は、論理演算回路である。当該AND回路15は、NAND回路14からの出力信号S4と大小判定回路11からの出力信号S2との組み合わせに応じて次のように信号S5を出力する回路構成を有する。
【0028】
すなわち、AND回路15は、NAND回路14がHレベル(「1」)の信号S4を出力し、かつ、大小判定回路11がHレベル(「1」)の信号S2を出力した場合に、デジタル信号の「1」を示すハイレベル(H(High)レベル)の信号S5を出力する。つまり、AND回路15は、入力データD1が入力データD2未満であるか、あるいは、入力データD1と入力データD3が等しくない場合であって、かつ、入力データD10が入力データD3以上の値である場合((D1<D2、or、D1≠D3)かつ、D10≧D3)に、Hレベルの信号S5を出力する。
【0029】
また、AND回路15は、上記以外の場合には、デジタル信号の「0」を示すローレベル(L(Low)レベル)の信号S5を出力する。つまり、AND回路15は、入力データD1が入力データD2以上の値であり、かつ、入力データD1と入力データD3が等しい場合でるか、あるいは、入力データD10が入力データD3未満の値である場合((D1≧D2、かつ、D1=D3)、あるいは、D10<D3)には、Lレベルの信号S5を出力する。
【0030】
選択回路16は、2つの入力端と1つの制御端と1つの出力端を有する。その入力端の一つは選択回路12の出力端に接続し、別の入力端は入力端IN3に接続し、制御端はAND回路15の出力端に接続している。選択回路16の出力端は、データ選択回路5の出力端OUTに接続している。選択回路16は、AND回路15からの出力信号S5に応じて次のようにデータDoutを出力する回路構成を有する。つまり、選択回路16は、AND回路15の出力信号S5がHレベル(「1」)である場合には、データD10を出力データDoutとして出力する。また、選択回路16は、AND回路15の出力信号S5がLレベル(「0」)である場合には、入力データD3を出力データDoutとして出力する。
【0031】
この第2実施形態のデータ選択回路5は、上記のように構成されている。このデータ選択回路5では、各入力データD1,D2,D3がそれぞれ2ビットである場合(「00」、「01」、「10」、「11」の何れかである場合)には、入力データD1,D2,D3の組み合わせと、出力データDoutとは、図3の表に示される関係となる。なお、表3では、出力データDoutとして、入力データD1が出力される場合には「D1」と表し、入力データD2が出力される場合には「D2」と表し、入力データD3が出力される場合には「D3」と表している。また、表3は、入力データD1,D2,D3の組み合わせと、大小判定回路10,11と判定回路13からそれぞれ出力される各信号S1,S2,S3のレベル(「1」か「0」)との関係をも表している。
【0032】
表3に示されるように、第2実施形態のデータ選択回路5では、各入力データD1,D2,D3がそれぞれ2ビットである場合には、入力データD1が出力データDoutとして出力する回数(選択回数)は、20回である。また、入力データD2の選択回数は、入力データD1と同じ20回である。さらに、入力データD3の選択回数は、24回である。これら選択回数に基づいて、各入力データD1,D2,D3の選択確率(入力データD1,D2,D3の組み合わせ総数に対する選択回数の比率)を計算すると、入力データD1の選択確率は、31.25%である。また、入力データD2の選択確率は、31.25%である。さらに、入力データD3の選択確率は、37.50%である。
【0033】
ここで、この第2実施形態のデータ選択回路5と、図4に示すデータ選択回路20とを対比する。なお、図4では、データ選択回路5を構成する回路構成部分と同様な回路構成部分には同一符号を付している。
【0034】
図4に示すデータ選択回路20は、データ選択回路5における調整回路7が設けられておらず、大小判定回路10,11と、選択回路12と、選択回路16’とを有している。大小判定回路10,11および選択回路12は、データ選択回路5における大小判定回路10,11および選択回路12と同様な回路構成であるので、ここでは、前記の如く同一符号を付し、その重複説明は省略する。
【0035】
選択回路16’は、次に述べる相違点を除いてデータ選択回路5における選択回路16と同様な構成を備えている。つまり、データ選択回路5の選択回路16は、AND回路15の出力端に接続しているのに対し、データ選択回路20の選択回路16’は、大小判定回路11の出力端に接続している。これにより、選択回路16’は、大小判定回路11から出力される信号S2に応じて次のように出力データDoutを出力する回路構成を有している。すなわち、選択回路16’は、大小判定回路11の出力信号S2がHレベル(「1」)である場合には、データD10を出力データDoutとして出力する。また、選択回路16’は、大小判定回路11の出力信号S2がLレベル(「0」)である場合には、入力データD3を出力データDoutとして出力する。
【0036】
図4のデータ選択回路20は、上記のように構成されている。このデータ選択回路20では、各入力データD1,D2,D3がそれぞれ2ビットである場合には、入力データD1,D2,D3の組み合わせと、選択回路16’から出力される出力データDoutとの関係は、図5の表に示される関係となる。なお、表5においても、表3と同様に、出力データDoutとして、入力データD1が出力される場合には「D1」と表し、入力データD2が出力される場合には「D2」と表し、入力データD3が出力される場合には「D3」と表している。また、表5は、入力データD1,D2,D3の組み合わせと、大小判定回路10,11からそれぞれ出力される各信号S1,S2のレベル(「1」か「0」)との関係をも表している。
【0037】
表5に基づくと、データ選択回路20では、各入力データD1,D2,D3がそれぞれ2ビットである場合には、入力データD1が出力データDoutとして出力する回数(選択回数)は、30回である。また、入力データD2の選択回数は、入力データD1と同じ20回である。さらに、入力データD3の選択回数は、14回である。さらにまた、入力データD1の選択確率は、46.87%であり、入力データD2の選択確率は、31.25%であり、入力データD3の選択確率は、21.88%である。
【0038】
図6は、各入力データD1,D2,D3の選択回数および選択確率を、データ選択回路5(調整回路7が有る場合)とデータ選択回路20(調整回路7が無い場合)とを対比して表した表である。この図6の表にも示されるように、第2実施形態のデータ選択回路5は、調整回路7を設けることによって、調整回路7が無い場合に比べて、各入力データD1,D2,D3の選択確率(選択回数)が均等化されている。この選択確率の均等化の効果は、各入力データD1,D2,D3のビット数が大きくなるにつれて、より発揮される。例えば、各入力データD1,D2,D3が4ビットの場合には、各入力データD1,D2,D3の選択回数は、それぞれ、1360回、1360回、1376回であり、入力データD1,D2,D3の選択確率は、それぞれ、33.2%、33.2%、33.6%である。このように、各入力データD1,D2,D3のビット数が大きくなると、この第2実施形態のデータ選択回路5における選択確率の均等化の効果は、より大きくなる。
【0039】
この第2実施形態のデータ選択回路5が、上記のように選択確率の均等化の効果を得ることができる理由は次の通りである。すなわち、比較回路6の大小判定回路10,11は、対比している2つの入力データの値が等しくとも、何れか一方が他方よりも大きい値を持つデータであるとして出力する。このため、調整回路7が設けられていない図4のデータ選択回路20は、次に示す3つのパターンの何れにおいても、入力データD1を出力データDoutとして出力(選択)する。その3つのパターンの一つは、入力データD1,D2,D3の値が全て等しい場合(D1=D2=D3)である。前記3つのパターンの別の一つは、入力データD1,D2が等しく、かつ、それら入力データD1,D2が入力データD3よりも大きい場合(D1=D2>D3)である。前記3つのパターンのさらに別の一つは、入力データD1,D3が等しく、かつ、それら入力データD1,D3が入力データD2よりも大きい場合(D1=D3>D2)である。
【0040】
このように、データ選択回路20は、入力データD1が、入力データD2,D3のうちの少なくとも一方と同じ最大値を持つ場合には、入力データD1を出力データDoutとして出力(選択)する。換言すれば、入力データD2,D3が最大値を持っていても、入力データD1もその最大値を同様に持っている場合には、入力データD2,D3は出力データDoutとして出力されない。このため、前記の如く入力データD1の選択確率は、46.87%であるというように、他の入力データD2,D3の選択確率(31.25%、21.88%)に比べて、高くなる。
【0041】
これに対して、この第2実施形態のデータ選択回路5は、調整回路7を有している。この調整回路7は、前記3つのパターンのうちの次に述べる2つのパターンにおいては、入力データD1に代えて、入力データD3が出力データDoutとなるように、出力データDoutを調整している。前記2つのパターンの一つは、入力データD1,D2,D3の値が全て等しい場合(D1=D2=D3)である。前記2つのパターンの別の一つは、入力データD1,D3が等しく、かつ、それら入力データD1,D3が入力データD2よりも大きい場合(D1=D3>D2)である(図3と図5の各表における項番1,18,22,35,39,43,52,56,60,64を参照)。
【0042】
上記調整回路7の出力データDoutの調整によって、第2実施形態のデータ選択回路5は、前述したように、各入力データD1,D2,D3の選択確率の均等化を図ることができるという効果を得ることができる。
【0043】
(第3実施形態)
以下に、本発明に係る第3実施形態を説明する。
【0044】
図7は、第3実施形態のデータ選択回路を示す回路図である。この第3実施形態のデータ選択回路22は、第2実施形態のデータ選択回路5を4つ有している。なお、この第3実施形態の説明において、第2実施形態のデータ選択回路5を構成する回路構成部分と同様な回路構成部分には同一符号を付し、その同一符号を付した部分の重複説明は省略する。
【0045】
図7に示されるように、この第3実施形態では、3つのデータ選択回路5(5A,5B,5C)は電気的に並列に配置されて前段の回路群23を構成する。データ選択回路5(5D)は、後段の回路24を構成する。このデータ選択回路5(5D)の3つの入力端は、それぞれ、各データ選択回路5(5A,5B,5C)の出力端に接続している。データ選択回路5(5D)の出力端は、第3実施形態のデータ選択回路22の出力端OUTとして機能する。
【0046】
この第3実施形態のデータ選択回路22は、9つの入力データD1〜D9の中から択一的に最大値を持つ入力データを出力データDoutとして出力端OUTから出力する回路である。すなわち、当該データ選択回路22は、第2実施形態で述べたデータ選択回路5を複数組み合わせることにより、より多くの入力データに対応可能となっている。
【0047】
この第3実施形態のデータ選定回路22は、第2実施形態のデータ選択回路5を複数組み合わせて構成されているので、第2実施形態と同様に、各入力データD1〜D9の選択確率の均等化を図ることができるという効果を得ることができる。
【0048】
(その他の実施形態)
なお、この発明は第1〜第3の各実施形態に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第3実施形態の構成をさらに応用して、図8に示されるようなデータ選択回路26をも構成することができる。なお、図8において、第2や第3の各実施形態のデータ選択回路5,20を構成する回路構成部分と同様な回路構成部分には同一符号を付している。ここでは、その同一符号を付した回路構成部分の重複説明は省略する。
【0049】
図8のデータ選択回路26は、データ選択回路51〜513を有している。これらデータ選択回路51〜513を組み合わせることによって、データ選択回路26は、より多くの入力データD1〜D27に対応可能な回路となっている。つまり、このデータ選択回路26では、データ選択回路51〜59が電気的に並列に配置されて前段の回路群を構成している。各データ選択回路51〜59の各入力端が、データ選択回路26の入力端となっている。データ選択回路510〜512は、中段の回路群を構成している。データ選択回路510の3つの入力端は、それぞれ、対応するデータ選択回路51〜53の出力端に接続している。データ選択回路511の3つの入力端は、それぞれ、対応するデータ選択回路54〜56の出力端に接続している。データ選択回路512の3つの入力端は、それぞれ、対応するデータ選択回路57〜59の出力端に接続している。データ選択回路513は、後段の回路を構成している。このデータ選択回路513の3つの入力端は、それぞれ、対応するデータ選択回路510〜512の出力端に接続している。データ選択回路513の出力端は、データ選択回路26の出力端OUTとして機能する。
【0050】
このように、データ選択回路26は、複数のデータ選択回路5が3段以上に多段配置された構成を有し、より多くの入力データに対応可能となる。このデータ選択回路26も、前記各実施形態と同様に、各入力データの選択確率の均等化を図ることができるという効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1,5,22 データ選択回路
2,6 比較回路
3,7 調整回路
14 NAND回路
15 AND回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力データと第2の入力データとの値を比較し、この比較によって前記第1の入力データと前記第2の入力データとのうちの大きいと判断した方の前記入力データと、第3の入力データとの値を比較するというように、複数の入力データの値を順次比較していき、前記複数の入力データの中から択一的に最大値を持つデータを選択する比較回路と、
前記比較回路により選択された前記入力データ以外にも前記複数の入力データの中に前記最大値を持つ別の入力データが存在する場合に、前記複数の入力データの値の組み合わせが予め定めた組み合わせである場合には、前記比較回路により選択された入力データに代えて、前記最大値を持つ別の入力データを、最大値を持つデータとして出力する調整回路と、
を有するデータ選択回路。
【請求項2】
前記比較回路が比較する前記入力データは、第1と第2と第3の3つの入力データであり、
前記調整回路は、前記比較回路により前記第1の入力データが最大値を持つデータとして選択され、かつ、前記第3の入力データも前記第1の入力データと同じ最大値を持つ場合に、前記第1の入力データに代えて、前記第3の入力データを、最大値を持つデータとして出力する回路構成を有している請求項1記載のデータ選択回路。
【請求項3】
前記調整回路は、前記第1の入力データと、前記第3の入力データとが等しいか否かを判断する回路を有する請求項2記載のデータ選択回路。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載のデータ選択回路を複数有する前段の回路群と、
請求項2又は請求項3記載のデータ選択回路と同じ回路構成を持ち、前記前段の回路群の前記各データ選択回路がそれぞれ出力した前記各データを比較し、当該データの中から択一的に最大値を持つ前記データを出力する後段の回路と、
を有するデータ選択回路。
【請求項5】
前記入力データは、デジタル信号であり、
前記調整回路は、論理演算回路を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載のデータ選択回路。
【請求項6】
第1の入力データと第2の入力データとの値を比較し、この比較によって前記第1の入力データと前記第2の入力データとのうちの大きいと判断した方の前記入力データと、第3の入力データとの値を比較するというように、複数の入力データの値を順次比較し、
この比較によって、前記複数の入力データの中から択一的に最大値を持つデータを選択し、
その選択された前記入力データ以外にも前記複数の入力データの中に前記最大値を持つ別の入力データが存在する場合に、前記複数の入力データの値の組み合わせが予め定めた組み合わせである場合には、前記比較回路により選択された入力データに代えて、前記最大値を持つ別の入力データを、最大値を持つデータとして出力するデータ選択方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−48337(P2012−48337A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187887(P2010−187887)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)