説明

トイレシステムおよびその使用方法

【課題】 通常時のランニングコストを低く抑えることができ、かつ、災害時など上下水道が確保できない緊急時に、直ちに使用可能なトイレシステムを提供すること。
【解決手段】 便器1からの排水を浄水処理し、得られた処理水を洗浄水として便器1に再び送出して、便器1との間で処理水を循環させる循環浄水運転を実行可能に構成された自己処理型の汚水処理手段3を備えたトイレシステムにおいて、上水道9に接続され、汚水処理手段3の循環浄水運転の初期運転に必要な量の水を貯留できる容量を有し、かつ、便器1へ水を供給可能な水洗モード用流路を設け、便器1に下水道5を接続し、上水道9から導入された上水を、水洗モード用流路を経て便器1に流し下水道5へ排水する水洗モードと、便器1と汚水処理手段3とで処理水を循環させる自己処理循環モードとに、水流を切り換える水流モード切換手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上水道および下水道が使用不能の際でも使用できる水洗式のトイレシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排泄するごとに、上水道の水を使って便器を洗浄する水洗式のトイレが知られている。このような水洗式のトイレは、災害時など、上下水道が確保できなくなった場合には、使用不能となる。
【0003】
そこで、例えば、災害時のように上水道が長中期に亘り確保できない場合には、一般に、仮設のトイレを使用する。
【0004】
このような仮設トイレとして、従来から汲み取り式のトイレが知られているが、この汲み取り式のトイレには、臭いや衛生上の問題や、汚物が満杯になった場合、それを汲み取らないと使用できなくなるという問題があった。
【0005】
そこで、この汲み取り式トイレの臭いや衛生面の問題を解決するトイレとして、自己処理型と称される循環式の水洗トイレが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この従来技術は、便器からの排水に対し曝気などの浄水処理を段階的に行い、最終的に沈殿物と上澄水とに分離して、再使用可能な処理水を得ることができる汚水処理手段を有している。このように、汚水をトイレシステム内で浄水処理できることから、自己処理型と呼ばれている。
【0007】
さらに、上記従来技術にあっては、この汚水処理手段で得られた処理水を、ポンプで汲み上げて洗浄水として再び便器に送るというように、便器と汚水処理手段との間で、常時水を循環させるようにしている。
【特許文献1】特開平3−100241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1に記載の技術は、常時、水を循環でき、衛生的であり、また悪臭も防止できるという優れたものである。
【0009】
しかしながら、このような循環式トイレが必要な場合には、まず、その場所まで、この循環式トイレを輸送して設置し、その後、配線工事を行い、さらに、稼動に最低限必要な量の水を供給し、最後に試運転を行った後に、やっと、使用可能となる。
【0010】
このように、従来の仮設式のトイレシステムは、使用可能となるまでに、時間や工事や費用などが必要で、緊急時の対応性の改善が望まれる。
【0011】
そこで、上記のような自己処理型の循環式のトイレシステムを、あらかじめ設置し、緊急時以外も常に循環式トイレとして使用することもできる。
【0012】
しかしながら、このように常設した場合、汚水処理手段では、常に、浄水処理用の曝気を行うブロワや、汚水を汲み上げるポンプや、便器に送水するポンプなどを常時駆動させる必要があり、電力を消費するため、通常の水洗式トイレに比べ、ランニングコストが高くなるという問題がある。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、上下水道が確保された通常時は、ランニングコストを低く抑えることができ、かつ、災害時など上下水道が確保できない緊急時には、上下水道に接続しない状態で直ちに使用可能なトイレシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、便器からの排水を浄水処理し、得られた処理水を洗浄水として前記便器に再び送出して、前記便器との間で処理水を循環させる循環浄水運転を実行可能に構成された自己処理型の汚水処理手段を備えたトイレシステムにおいて、上水道に接続され、前記汚水処理手段の循環浄水運転の初期運転に必要な量の水を貯留できる容量を有し、かつ、前記便器へ水を供給可能な水洗モード用流路が設けられ、前記便器の排水を下水道に導く排水路が設けられ、前記上水道から導入された上水を、前記水洗モード用流路を経て前記便器に流し、前記排水路から下水道へ排水する水洗モードと、前記便器と汚水処理手段とで処理水を循環させる自己処理循環モードと、に水流を切り換える水流モード切換手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
なお、ここで、上水道とは、所定の地域に供給される水道のことを指しているもので、便器を洗浄するのに適した水を供給するものであれば、飲料水のみならず、工業用水なども含む。また、下水道とは、下水(便器排水)を流す排水路を指す。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のトイレシステムにおいて、前記水洗モード用流路は、貯留した水の水頭圧で前記便器へ水を供給可能に形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のトイレシステムにおいて、前記水洗モード用流路が、前記汚水処理手段を用いて形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のトイレシステムにおいて、前記汚水処理手段は、前記便器に向けて水頭圧により送水可能な高さに配置された1または複数の室を有した上部室と、前記便器からの排水を受ける高さに配置された1または複数の室を有した下部室と、を備え、前記上部室には、前記循環浄水運転時に、汚水の水から分離された沈殿物が送られる貯留室が含まれ、この貯留室を含む前記上部室を構成する室により、前記水洗モード用流路が形成され、前記貯留室と下部室との間には、前記貯留室に貯めた水を前記下部室に供給するドレン路、および、このドレン路を開閉するドレンバルブが設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のトイレシステムにおいて、前記水洗モード用流路に、便器の1回の洗浄に必要な量の水を貯留するとともに、貯留した水を前記便器に流す洗浄切換手段および水位の下降に応じ水を供給するバルブ手段を備えた水タンクが設けられ、前記水流モード切換手段は、前記上水道と前記上部室とを結ぶ上水供給路に設けられてこの上水供給路を連通する水洗モードと、前記上水供給路を遮断する自己処理循環モードと、に切り換える上水供給切換手段と、前記排水路に設けられ、前記便器からの排水を、前記下水道へ流す水洗モードと、前記下部室へ流す自己処理循環モードと、に切り換える排水切換手段と、前記上部室と便器とを結ぶ給水路の途中に設けられ、前記給水路を流れる水を、いったん前記水タンクへ迂回させて前記便器に送る水洗モードと、前記便器に直接導く自己処理循環モードと、に切り換える便器洗浄水切換手段と、を備えていることを特徴とする。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載のトイレシステムにおいて、前記汚水処理手段は、前記下部室として、前記便器から排水路を介して洗浄水が供給される流動攪拌室を備え、前記上部室として、前記貯留室に加え、前記流動攪拌室から返送ポンプにより汚水が供給され、曝気が成される流動接触室と、この流動接触室から越流された汚水が沈殿物と上澄水とに分離される分離室と、この分離室から上澄水が越流され、かつ前記給水路が接続された送水室と、を備え、前記分離室の沈殿物を前記貯留室に汲み上げる汲み上げ手段が設けられ、前記貯留室と流動接触室との間に、貯留室を越流した水を流動接触室に送るオーバフロー路が設けられ、前記上水供給路が、前記貯留室に接続され、前記上水供給路に、前記送水室の水位が所定高さよりも下がったときに開弁し、所定高さよりも上がったときに閉弁する上水フロートバルブが設けられていることを特徴とする。
【0021】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のトイレシステムにおいて、前記貯留室には、越流水を前記下水道に流す第2オーバフロー路が設けられ、この第2オーバフロー路を連通および遮断する下水放流バルブが設けられていることを特徴とする。
【0022】
また、請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載のトイレシステムにおいて、前記上部室の各室を、前記流動攪拌室と結ぶ洗浄用ドレン路が設けられ、各洗浄用ドレン路を連通および遮断する洗浄用バルブが設けられ、 前記返送ポンプで汲み上げる返送管に、汲み上げた水を流動接触室へ送る自己処理循環モードと、汲み上げた水を下水へ送る洗浄モードと、に切り換える返送切換バルブが設けられていることを特徴とする。
【0023】
また、請求項9に記載の発明は、便器からの排水を浄水処理し、得られた処理水を洗浄水として前記便器に再び送出して、前記便器との間で処理水を循環させる循環浄水運転を実行可能に構成された自己処理型の汚水処理手段と、上水道に接続され、前記汚水処理手段の循環浄水運転の初期運転に必要な量の水を貯留できる容量を有し、かつ、前記便器へ水を供給可能な水洗モード用流路と、を備えたトイレシステムの使用方法であって、水洗モード使用時には、前記上水道と水洗モード用流路とを接続する一方で、前記便器を下水道に接続し、前記汚水処理手段の循環浄水運転の実行を停止させた状態で、前記上水道の上水を前記水洗モード用流路に導入し、かつ、この水洗モード用流路では、循環浄水運転の初期運転に必要な量の上水を常時貯留させながら便器に供給し、さらに、この便器からの排水を下水道へ流すというように、前記上水道から前記下水道へ至る一方通行の流れで使用し、自己処理循環モード使用時には、前記水洗モード使用時に水洗モード用流路内に貯留した上水を初期運転に使用して前記汚水処理手段を循環浄水運転させ、かつ、前記汚水処理手段で浄水処理された処理水を便器へ洗浄水として供給し、一方、便器を通過した水は、前記汚水処理手段へ戻して再び浄水処理する循環流で使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のトイレシステムでは、上水道および下水道が確保できる通常時には、水流モード切換手段を、水洗モードとして、通常の水洗トイレとして使用することができる。
【0025】
この水洗モードでは、汚水処理手段の循環浄水運転の実行を停止させておく。そして、上水道からの上水が、水洗モード用流路を経て、便器へ供給され、下水道へ排水される。なお、この水洗モード用流路では、汚水処理手段の初期運転に必要な量の水が貯留される。
【0026】
一方、災害時など、上水道と下水道との少なくも一方が確保されない緊急時には、水流モード切換手段を、自己処理循環モードとして、汚水処理手段を、循環浄水運転させる。
【0027】
この汚水処理手段を循環浄水運転させるにあたり、水洗モード用流路に貯留されている上水を初期運転に使用することができる。
【0028】
そして、この自己処理循環モードでは、便器からの排水が汚水処理手段で浄水処理され、その処理水が再び便器に送られる。
【0029】
以上のように、本発明では、上下水道が確保された通常時は、汚水処理手段の循環浄水運転を停止させて水洗モードとして使用するため、汚水処理手段における電力などの消費を抑えることでランニングコストを低く抑えることができる。
【0030】
また、水洗モードで使用する際に水洗モード用流路内に貯留した上水を、汚水処理手段の初期運転に使用できるため、上水道あるいは下水道が確保できない緊急時に、初期運転用の水を搬送することなく、即座に汚水処理手段を循環浄水運転させることができ、緊急対応性に優れる。
【0031】
加えて、このように水洗モード時に、水洗モード用流路に所定量の上水を貯留するが、この水洗モード用流路では、上水道から下水道へ向かう流れが存在するため、長期間水を貯留していても、水が腐って悪臭を発する不具合が生じない。
【0032】
請求項2に記載の発明にあっては、水洗モード時には、上水道から水洗モード用流路に供給された上水が、その水頭圧で便器に向けて送水される。
【0033】
したがって、水洗モード時には、ポンプなどを用いて水を汲み上げることを不要とすることができ、水洗モード時における電力消費を無くして、ランニングコストの低減をさらに確実に図ることができる。
【0034】
請求項3に記載の発明にあっては、水洗モード用流路を、既存の汚水処理手段を利用して形成しているため、汚水処理手段とは別個に水洗モード用流路を形成するのに比べ、構成部品点数を低減できるとともに、設置スペースの小型化を図ることができる。
【0035】
加えて、汚水処理手段の内部に初期運転用の水が貯留されているため、この汚水処理手段の初期運転時に、貯留した水を移動させる手間の削減を図ることができる。
【0036】
請求項4に記載の発明にあっては、自己処理循環モードで使用する際には、水洗モード時に貯留室に貯めた上水は、ドレンバルブを開いてドレン路から下部室へ供給する。この貯留室は、循環上水運転時には、汚水の沈殿物を貯める室であるから、初期運転時には、水が不要であるので、全量を下部室へ供給できる。
【0037】
このように、請求項4に記載の発明では、汚水処理手段において、循環浄水運転時に汚水の沈殿物を貯める貯留室を利用して、下部室の初期運転用の水を貯留するようにしているため、新規に下部室用の水を貯めるタンクを設定するのに比べて、トイレシステム全体のスペースを小さく抑えてコンパクトに構成することができる。なお、このように水洗モード時に、下部室に水を貯留しないのは、この下部室は、水頭圧で便器へ水を供給できないことから、水を長期に貯留した場合に水が腐敗するおそれがあるためである。
【0038】
請求項5に記載の発明にあっては、水洗モード時には、上水供給切換手段と、排水切換手段と、便器洗浄切換手段と、を水洗モードに切り換える。これにより、上水道と上部室の水洗モード用流路とが上水供給路で接続され、また、水洗モード用流路は、水タンクへ迂回して便器へ至る流路となり、便器は、排水路を介して下水道に接続される。
【0039】
この水洗モードでは、上水道から上水供給路を経て上部室に形成された水洗モード用流路に上水が導入され貯留される。また、この水洗モード用流路に貯留された上水は、水頭圧により水タンクへ送られる。そして、便器の使用後に、洗浄切換手段を操作すると、水タンクに貯められた便器の1回の洗浄に必要な量の水が便器に流され、便器を洗浄して下水道へ流れる。また、水タンクでは、水の使用で水位が下がると、バルブ手段が開いて水洗モード用流路を開いて水が供給され、所定の水位に上昇すると、バルブ手段が閉じて水の供給が停止される。以上の動作が、便器の使用の度に繰り返される。
【0040】
一方、自己処理循環モード時には、上水供給切換手段と、排水切換手段と、便器洗浄切換手段と、を自己処理循環モードに切り換える。これにより、上水供給路が上水供給切換手段により遮断され、汚水処理手段の上部室の水洗モード用流路は、水タンクへ迂回することなく給水路により便器と直接接続された流路となり、便器は、排水路を介して汚水処理手段の下部室に接続される。
【0041】
この自己処理循環モードでは、便器を洗浄した水は、汚水処理手段の下部室へ排水され、下部室から上部室へ汲み上げられ、かつ、その過程で浄水処理された後、再び、便器に送られて便器を洗浄する、という循環を常時行う。
【0042】
以上のように、請求項5に記載の発明では、水洗モード用流路に水タンクを設け、水洗モードでは、この水タンクに貯めた便器の1回の洗浄に必要な量の水が流されるようにしたため、上水の使用を必要最小限に抑えることができる。
【0043】
一方、自己処理循環モードでは、汚水処理手段で処理された洗浄水が常時便器に循環され、排泄物が即座に排水され、衛生的であり、かつ、便器を流れる水音により排泄音の消音も成される。
【0044】
また、水流モード切換手段を構成する上水供給切換手段、排水切換手段、便器洗浄切換手段は、単に流路を切り換える弁で構成することができ、製造コストを低く抑えることができる。
【0045】
請求項6に記載の発明では、水洗モード時には、上水道の上水が、貯留室に供給され、この貯留室が満水になりオーバフロー路を通って流動接触室に越流され、この流動接触室が満水になり分離室に越流され、さらに、この分離室が満水になり送水室に越流される。
【0046】
そして、この送水室に貯留された上水が、便器に向けて供給される。また、この送水により送水室の水位が所定の高さに下がると、フロートバルブが開弁して貯留室に上水の供給が成される。この供給で、上記のように貯留室、流動接触室、分離室、送水室と順に越流し、送水室の水位が所定の高さに上がると、フロートバルブが閉弁して貯留室への上水の供給が停止される。
【0047】
このように、水洗モード時には、汚水処理手段の上部室にあっては、貯留室、流動接触室、分離室が全て満水に維持され、かつ、送水室も所定の水位に維持され、初期運転用の水を確実に貯留することができる。また、この水洗モード用流路を構成する貯留室、流動接触室、分離室、送水室において、常に、上水の流れが形成され、水が腐敗するのを確実に防止できる。
【0048】
一方、自己処理循環モードでは、便器からの排水が流動攪拌室に送られ、ここで攪拌されて汚物の粉砕および脱臭が成される。さらに、この流動攪拌室の汚水は、返送ポンプにより流動接触室に送られ、ここで曝気されて脱臭が成される。さらに、この流動接触室を越流して分離室へ送られた汚水は、上澄水と沈殿物とに分離され、上澄水が送水室に越流される。そして、送水室の上澄水、すなわち処理水が、洗浄水として便器へ送られる。なお、分離室の沈殿物は、汲み上げ手段により貯留室に適宜汲み上げられる。
【0049】
請求項7に記載の発明では、自己処理循環モード時に、下水道が確保されている場合には、第2オーバフロー路の下水放流バルブを開弁して、貯留室に貯めた汚水の沈殿物を、随時、下水に放流させることができる。
【0050】
したがって、請求項7に記載の発明では、トイレシステム内の沈殿物をトイレシステム外の下水へ排出できるため、トイレシステムが汚物で満杯になることが無く、長期に亘り、循環浄水運転を続けることができる。
【0051】
請求項8に記載の発明では、自己処理循環モードで使用した後に、上水道が復旧して水洗モードに戻す際には、以下のようにして、汚水処理手段に貯まった汚水などを全て下水道に流すことができる。
【0052】
すなわち、返送切換バルブを、洗浄モードとして、返送ポンプを汲み上げ駆動させると、この流動攪拌室に貯まっている汚水を下水道へ流すことができる。
【0053】
さらに、貯留室に接続されたドレン路のドレンバルブ、および、上部室としての流動接触室、分離室、送水室に接続された洗浄用ドレン路の洗浄用ドレンバルブを開くことで、各室に貯まっている汚水および処理水を流動攪拌室に移送できる。よって、これらの汚水および処理水も、返送ポンプにより流動攪拌室から全て下水道へ流すことができる。
【0054】
同様にして、各室を洗浄した後の水も、下水道に流すことができる。
【0055】
したがって、自己処理循環モードから水洗モードに戻す際に、汚水処理手段の各室を洗浄する際に、汚水をバキュームポンプで汲み上げる作業、ならびに、洗浄した後の水を汲み上げる作業が不要となって、作業性を向上させることができる。
【0056】
請求項9に記載の発明では、水洗モード使用時には、上水道から水洗モード用流路を経て下水道へ至る一方通行の流れで使用する。また、この際に、水洗モード用流路には、汚水処理手段において、初期運転に必要な量の上水を貯留しておく。
【0057】
自己処理循環モード使用時には、水洗モード用流路内に貯留した上水を初期運転に使用して汚水処理手段を循環浄水運転させ、かつ、汚水処理手段と便器とで、水を循環させる。
【0058】
以上のように、本発明では、上下水道が確保された通常時は、汚水処理手段の循環浄水運転を停止させて水洗モードとして使用するため、汚水処理手段における電力などの消費を抑えることでランニングコストを低く抑えることができる。
【0059】
また、水洗モードで使用する際に水洗モード用流路内に貯留した上水を、汚水処理手段の初期運転に使用できるため、上水道あるいは下水道が確保できない緊急時に、初期運転用の水を搬送することなく、即座に汚水処理手段を循環浄水運転させることができ、緊急対応性に優れる。
【0060】
加えて、このように水洗モード時に、水洗モード用流路に所定量の上水を貯留するが、この水洗モード用流路では、上水道から下水道へ向かう流れが存在するため、長期間水を貯留していても、水が腐って悪臭を発する不具合が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。
【0062】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1のトイレシステムを示す全体図である。
【0063】
この実施の形態1のトイレシステムは、便器1と、水タンク2と、汚水処理手段3と、を備えている。
【0064】
便器1は、洗浄用の水を供給する給水路31に接続され、かつ、洗浄水の排水を行う排水路6に接続されている。
【0065】
水タンク2は、便器1の1回分の洗浄水を貯留する。この水タンク2は、タンク給水管21およびタンク排水管22を介して給水路31に接続されている。さらに、その接続箇所には、水流モード切換手段を構成する便器洗浄水切換手段としての手動切換式の便器洗浄水切換バルブ7が設けられている。
【0066】
この便器洗浄水切換バルブ7は、第1バルブ71と第2バルブ72と第3バルブ73とを備えている。第1バルブ71は、給水路31の途中に設けられ、この給水路31の連通および遮断の切換を行う。第2バルブ72は、給水路31の第1バルブ71よりも上流と水タンク2とを結ぶタンク給水管21の連通および遮断の切換を行う。第3バルブ73は、給水路31の第1バルブ71よりも下流と水タンク2とを結ぶタンク排水管22の連通および遮断の切換を行う。なお、本実施の形態では、第1バルブ71と第2バルブ72とは一体の三方弁で構成され、第3バルブ73はボール弁で構成されている。
【0067】
そして、便器洗浄水切換バルブ7は、第1バルブ71を開弁し、第2バルブ72および第3バルブ73が閉弁した自己処理循環モードと、第1バルブ71を閉弁し、第2バルブ72および第3バルブ73を開弁した水洗モードと、に手動で切り換えられるよう構成されている。
【0068】
さらに、水タンク2には、バルブ手段としてのフロートバルブ23と、洗浄切換手段24と、が設けられている。
【0069】
フロートバルブ23は、フロート23aの浮き沈みにより作動し、水タンク2の水量が所定以下になると開弁してタンク給水管21から給水を行い、水タンク2の水位が所定以上になると閉弁してタンク給水管21からの給水を停止させるバルブである。
【0070】
洗浄切換手段24は、水タンク2におけるタンク排水管22の開口端部を閉じる洗浄バルブ24aと、この洗浄バルブ24aを開弁させる洗浄レバー24bと、を備えている。洗浄バルブ24aは、洗浄レバー24bを開操作したときのみ開弁される常閉のバルブであり、洗浄レバー24bを開操作した時には、水タンク2の水がタンク排水管22から便器1に流される。
【0071】
また、水タンク2の近傍には、手洗い器8が設けられている。この手洗い器8には、上水道9に繋がる上水供給路91に接続された蛇口81と、排水路6に接続された排水管82と、が設けられている。なお、この手洗い器8には、後述する自己処理循環モードで使用する際に、雨水などの上水以外の水を給水する手段を並設してもよい。
【0072】
汚水処理手段3は、下部室としての流動攪拌室32と、上部室としての流動接触室33、分離室34、送水室35および貯留室4と、を備えている。
【0073】
流動攪拌室32は、便器1から排水路6を介して洗浄水(汚水)が落下するよう便器1よりも下方位置に配置されている。この流動攪拌室32は、汚物や便紙をエアによって破砕および分解するもので、エアを吹き出す散気管32aが設けられている。この散気管32aは、エア供給管36aを介して第1エアブロワ36からエアが供給されるようになっており、また、エア供給管36aでは、手動式の散気バルブ36bによりエア供給量の調節が可能となっている。
【0074】
さらに、流動攪拌室32には、この流動攪拌室32内の水を返送管37cを介して流動接触室33に汲み上げる返送ポンプ37が設けられている。この返送ポンプ37は、後述する送水室上限フロートスイッチ37aおよび送水室下限フロートスイッチ37bにより、駆動と駆動停止とが切り換えられる。
【0075】
なお、排水路6は、下水道5に繋がる下水側排水路61と、流動攪拌室32に繋がる循環側排水路62とに分岐されている。また、この両排水路61,62の分岐部には、水流モード切換手段を構成する排水切換手段としての手動切換式の排水切換バルブ63が設けられている。この排水切換バルブ63は、便器1からの排水を、循環側排水路62のみに流す自己処理循環モードと、下水側排水路61のみに流す水洗モードと、に切換可能に構成されている。
【0076】
流動接触室33と分離室34と送水室35とは、それぞれ、一体の処理槽30内において隔壁30a,30bで区画されて並列に設置されている。また、隔壁30aには、流動接触室33の越流を分離室34に流すオーバフロー穴30cが設けられ、隔壁30bには、分離室34の越流を送水室35に流すオーバフロー穴30dが設けられている。
【0077】
流動接触室33は、汚水に空気を接触させ、消臭剤との効果で消臭処理を行う室で、エアを吹き出す散気管33aが設けられている。この散気管33aには、エア供給管39aを介して第2エアブロワ39からエアが供給されるようになっている。
【0078】
なお、エア供給管39aは、途中で、散気管33aに繋がる散気管部39bと、後述するエアリフト38に繋がるエアリフト部39cと、給水路31に繋がるフラッシング部39fと、に分岐されている。また、散気管部39bは手動式の散気バルブ39dによりエア供給量の調節が可能となっている。エアリフト部39cは、リフトバルブ39eにより電気的に開閉の切り換えが成される。フラッシング部39fは、手動式のフラッシングバルブ39gにより開閉されて、給水路31の流れが悪くなった場合に、エアにより給水路31をフラッシングする。
【0079】
分離室34は、流動接触室33で消臭された汚水を沈殿物(汚水)と上澄水とに分離する室である。さらに、分離室34には、その底部に貯まった沈殿物(汚水)を、貯留室4に汲み上げる汲み上げ手段としてのエアリフト38および汲み上げ管38aが設けられている。
【0080】
なお、このエアリフト38は、第2エアブロワ39から送られるエアにより駆動するもので、前述したリフトバルブ39eの開閉により駆動および駆動停止を切り換えられるようになっている。
【0081】
送水室35は、分離室34から越流された上澄水を一旦貯め、給水路31により便器1に向けて送水を行う室である。なお、送水室35および給水路31は、送水室35の水頭圧により便器1に向けて送水を行うことができるような高さに配置されている。
【0082】
さらに、処理槽30とは独立して貯留室4が設けられている。この貯留室4は、汚水処理手段3において循環浄水運転(汚水処理)を行った場合に、分離室34に沈殿した沈殿物(汚水)を、汲み上げて貯留するための室である。また、本実施の形態1では、この貯留室4を、後述する自己処理循環モード時の初期運転において流動攪拌室32に必要な容量の上水を貯めるのに利用する。
【0083】
この貯留室4への上水の供給は、上水道9に繋がる上水供給路91により行われる。この上水供給路91の途中には、水流モード切換手段の上水供給切換手段としての上水供給バルブ91aと、上水フロートバルブ91bとが設けられている。上水供給バルブ91aは、手動により開閉されるバルブであり、上水供給路91を上水供給状態(これを、以下、水洗モードと称する)と上水供給遮断状態(これを、以下、自己処理循環モードと称する)とに切り換える。上水フロートバルブ91bは、送水室35の上部に配置され、送水室35の水位が満水水位eよりも下がると開弁され、送水室35の水位が満水水位eに達すると閉弁する。
【0084】
また、貯留室4は、満水時に流動接触室33に越流させる第1オーバフロー路41と、満水よりも僅かに低い水位で排水路6に越流させる第2オーバフロー路42と、が設けられている。第1オーバフロー路41は、流動接触室33に常時連通されている。一方、第2オーバフロー路42は、途中に設けられた手動式の下水放流バルブ42aにより連通および遮断される。
【0085】
さらに、貯留室4には、流動攪拌室32に繋がるドレン路43が設けられ、このドレン路43は、手動式の貯留室ドレンバルブ43aにより開閉される。
【0086】
次に、図2ないし図4に基づいて、上述した実施の形態1のトイレシステムを有したトイレユニットTUについて説明する。
【0087】
このトイレユニットTUは、個室部100とメンテナンス室200と機械室300とを備えている。
【0088】
個室部100には、3つの便室101,102,103が壁104,104で区画され、各便室101,102,103には、便器1,1,1と、水タンク2,2,2と、図示を省略した手洗い器8と、が設置されている。
【0089】
メンテナンス室200には、機械室300に設けられた送水室35と、各便器1,1,1および水タンク2,2,2と、を結ぶ給水路31が配索され、かつ、この給水路31に設けられた便器洗浄水切換バルブ7が、切換操作に容易な高さに配置されている。さらに、このメンテナンス室200には、上水供給路91の連通および遮断を切り換える上水供給バルブ91aと、排水路6の切り換えを行う排水切換バルブ63と、ドレン路43の連通および遮断を切り換える貯留室ドレンバルブ43aと、が切換操作可能な位置に配置されている。
【0090】
一方、機械室300において、床105の上には、汚水処理手段3の上部室としての処理槽30および貯留室4が設けられている。また、下部室としての流動攪拌室32は、床105の下方に設けられている。
【0091】
流動接触室33、分離室34、送水室35を備えた処理槽30は、水頭圧により便器1および水タンク2に貯留している水を供給可能に、床105の上に配置されている。また、給水路31の配管距離を短くするため、送水室35がメンテナンス室200の中央部分に面して配置され、さらに、第1オーバフロー路41による越流距離を短くするために流動接触室33が貯留室4に隣り合って配置されている。
【0092】
次に、電力で駆動する構成について説明を加える。
【0093】
この実施の形態1のトイレシステムでは、図1に示すように、汚水処理手段3は、循環浄水運転に必要な電力で駆動する構成として、返送ポンプ37、第1エアブロワ36、第2エアブロワ39、リフトバルブ39e、満水表示ライト40を備えている。これらの構成は、メンテナンス室200に設けられたメインスイッチ201(図2参照、なお、このメインスイッチ201と各構成との接続は図示を省略する)を投入することで作動可能となり、これらのうち、第1・第2エアブロワ36,39は、常時駆動となる。
【0094】
一方、返送ポンプ37は、送水室35に設けられた送水室上限フロートスイッチ37aおよび送水室下限フロートスイッチ37bにより駆動・停止を切り換えられる。すなわち、送水室下限フロートスイッチ37bは、送水室35の水位が図1においてbで示す作動水位よりも下がると投入される常開のスイッチである。また、送水室上限フロートスイッチ37aは、送水室35の水位が図においてaで示す停止水位よりも上がると開かれる常閉のスイッチである。したがって、返送ポンプ37は、送水室35の水位が作動水位bよりも下がり送水室下限フロートスイッチ37bが投入されると駆動を開始し、送水室35の水位が停止水位aよりも上がり送水室上限フロートスイッチ37aが開かれると駆動が停止される。
【0095】
リフトバルブ39eは、エアリフト38を駆動させるバルブであって、流動攪拌室32に設けられたエアリフト作動フロートスイッチ32bにより開閉が切り換えられる。このエアリフト作動フロートスイッチ32bは、流動攪拌室32の水位が作動水位cを越えると投入される常開のスイッチで、このエアリフト作動フロートスイッチ32bの投入により、リフトバルブ39eが開弁されてエアリフト38が駆動する。
【0096】
満水表示ライト40は、流動攪拌室32に設けられた満水フロートスイッチ32cにより点灯・消灯が切り換えられる。この満水フロートスイッチ32cは、流動攪拌室32の水位があらかじめ設定された満水水位dまで上がると投入される常開のスイッチで、この満水フロートスイッチ32cの投入時に満水表示ライト40が点灯する。
【0097】
次に、実施の形態1のトイレシステムの使用方法について説明する。
【0098】
この実施の形態1のトイレシステムでは、水洗モードと自己処理循環モードとの2通りの使用が可能である。水洗モードは、上水道9および下水道5が確保された通常時の使用方法である。一方、自己処理循環モードは、災害時など少なくとも上水道9と下水道5の一方が確保できない緊急時の使用方法である。
【0099】
そこで、まず、水洗モードについて説明する。
【0100】
水洗モードで使用する場合、水流モード切換手段としての便器洗浄水切換バルブ7、排水切換バルブ63、上水供給バルブ91aを水洗モードとする。すなわち、便器洗浄水切換バルブ7にあっては、第1バルブ71を閉じ、第2バルブ72および第3バルブ73を開いた状態にする。一方、排水切換バルブ63にあっては、循環側排水路62を閉じて下水側排水路61を開いた状態とする。また、上水供給バルブ91aを開弁する。
【0101】
なお、貯留室4の貯留室ドレンバルブ43aおよび下水放流バルブ42aは、閉弁しておく。
【0102】
また、メインスイッチ201をOFFとして、電力駆動する返送ポンプ37、第1・第2エアブロワ36,39など、全て停止し、電力は全く消費しない状態にしておく。
【0103】
以上の状態で、実施の形態1のトイレシステムでは、図5に示す水洗モード用流路Aが形成される。すなわち、この水洗モード用流路Aは、上水道9から便器1へ上水を供給する流路であって、上水供給路91、貯留室4、第1オーバフロー路41、流動接触室33、オーバフロー穴30c、分離室34、オーバフロー穴30d、送水室35、給水路31、水タンク2を通る流路である。このとき、詳細は後述するが、貯留室4、流動接触室33、分離室34、送水室35には、あらかじめ上水道9から供給される上水で満水状態なっている。
【0104】
さらに、便器1は、排水路6の下水側排水路61を介して下水道5に接続された状態となる。
【0105】
この水洗モードでは、便器1にて排泄後、洗浄レバー24bを開操作すると、水タンク2に貯まった洗浄用水がタンク排水管22から便器1に流され、排泄物は、この洗浄用水と一緒に下水側排水路61から下水道5へ流される。
【0106】
また、水タンク2において洗浄用水が流されて水位が下がると、フロートバルブ23が開弁して、送水室35の水が、水頭圧に基づき給水路31を介して供給される。この供給は、水タンク2が満水になってフロートバルブ23が閉弁すると停止される。
【0107】
一方、この水の供給により送水室35の水位が満水水位eから下がると、上水フロートバルブ91bが開弁され、上水道9の上水が上水供給路91を介して貯留室4に供給される。この貯留室4は、あらかじめ満水状態となっているので、供給された水で第1オーバフロー路41により越流が生じ、流動接触室33に上水が供給される。
【0108】
この流動接触室33も、あらかじめ満水状態となっているから、供給された水でオーバフロー穴30cにより越流が生じ、分離室34に供給され、同様に、オーバフロー穴30dを介して分離室34から送水室35へ越流される。
【0109】
このような越流の繰り返しで送水室35の水位が満水水位eまで上がると、上水フロートバルブ91bが閉じて、貯留室4への上水の供給が停止される。
【0110】
このように、水タンク2の洗浄用水を使用して、送水室35の水位が満水水位eから下がるたびに、貯留室4に上水が供給されて、貯留室4、流動接触室33、分離室34と越流して、送水室35が満水水位eに復帰することを繰り返す。
【0111】
なお、本実施の形態1のトイレシステムの使用開始時には、上水供給バルブ91aを開弁して貯留室4へ上水の供給を開始すると、貯留室4、流動接触室33、分離室34の各室が順に満水になって越流し、最終的に送水室35が満水水位eになり上水フロートバルブ91bが閉弁した時点で上水の供給が停止されるもので、この時点で、各室4,33,34,35が満水となる。また、このとき下部室としての流動攪拌室32は、空の状態となっている。
【0112】
以上説明したように、水洗モードでは、電気を全く使用せずに、便器1の洗浄および水の供給が成され、ランニングコストが低い。
【0113】
また、貯留室4、流動接触室33、分離室34、送水室35は、常時、満水状態となっているが、この水は、水が供給されるたびに越流を繰り返すもので、このように水流が生じるために、腐ることが無い。
【0114】
次に、自己処理循環モードの作動を説明する。
【0115】
災害時など上水道9あるいは下水道5が確保できない緊急時には、自己処理循環モードに切り換えて使用する。
【0116】
この場合、トイレユニットTUのメンテナンス室200に入り、上水供給バルブ91a、排水切換バルブ63、便器洗浄水切換バルブ7を、自己処理循環モードに切り換える。すなわち、上水供給バルブ91aを閉弁して上水供給路91を遮断する。また、排水切換バルブ63にあっては、循環側排水路62を開いて下水側排水路61を閉じた状態とする。また、便器洗浄水切換バルブ7は、第1バルブ71を開き、第2バルブ72および第3バルブ73を閉じた状態とする。
【0117】
以上の状態で、実施の形態1のトイレシステムは、図6に示す自己処理循環モードの流路が形成されることになる。
【0118】
さらに、貯留室ドレンバルブ43aを開弁し、貯留室4に貯まっていた水の全量を流動攪拌室32に送った後、貯留室ドレンバルブ43aを閉弁する。なお、この貯留室4の満水時の水量は、本実施の形態1のトイレシステムを自己処理循環モードで運転する際に、流動攪拌室32において最低限必要な水量以上の量に設定されている。
【0119】
また、下水放流バルブ42aは、下水道5の状態に応じ、下水道5が確保されていれば開弁し、確保されていないか、あるいはその状態が確認されていない場合は閉弁しておく。
【0120】
その後、メインスイッチ201をONにする。これにより、第1・第2エアブロワ36,39が駆動を開始し、かつ、返送ポンプ37およびリフトバルブ39e(エアリフト38)は、駆動可能な状態となる。
【0121】
こうして、流動攪拌室32および流動接触室33において、曝気が開始されたら、両室32,33に消臭剤を投入する。
【0122】
この自己処理循環モードでは、常時、便器1と汚水処理手段3との間で水が循環される。この循環経路について図6に基づいて順を追って説明する。
【0123】
まず、便器1では、送水室35の水(この水は、使用初期は上水、その後は処理水)が、水頭圧に基づき給水路31を介して、常時送られ、この便器1から循環側排水路62を通り流動攪拌室32へ落下する。
【0124】
また、便器1への送水で送水室35の水位が作動水位bまで下がると、送水室下限フロートスイッチ37bが投入され、返送ポンプ37が駆動し、流動攪拌室32内の汚水が流動接触室33へ汲み上げられる。
【0125】
この流動接触室33への汲み上げにより、水洗モード時と同様に、流動接触室33、分離室34、送水室35へと順に処理水が越流され、送水室35の水位が回復する。そして、送水室35の水位が停止水位aまで上昇すると、送水室上限フロートスイッチ37aが開かれ、返送ポンプ37の駆動が停止される。
【0126】
この自己処理循環モードでは、以上の循環サイクルが繰り返され、送水室35の水が、常時、水頭圧に基づいて便器1に流され、流動攪拌室32へと排水される。このため、排泄物が即座に流され、臭いが生じにくいとともに、衛生的である。また、排泄音を消すための、無駄な水の消費も生じない。
【0127】
なお、この自己処理循環モードにあっては、流動攪拌室32では、散気管32aによる曝気で、汚物および便紙の破砕および分解がなされるとともに、消臭剤による脱臭が行われる。
【0128】
さらに、流動接触室33にあっても、散気管33aによる曝気により汚水と空気とを接触させ、かつ、消臭剤の効果が加わり脱臭される。
【0129】
また、分離室34では、汚物が沈降し、上澄水が処理水として送水室35に越流される。したがって、便器1には、無臭の水が供給されることになる。
【0130】
次に、自己処理循環モードで使用を続けると、排泄物が追加されることで、本トイレシステムの循環サイクル内の水量が増加する。この場合、処理槽30における貯留量はほぼ一定であるので、流動攪拌室32の水位が増加する。そこで、この流動攪拌室32の水位が作動水位cまで上昇すると、エアリフト作動フロートスイッチ32bが投入される。これにより、リフトバルブ39eが開弁されて、エアリフト38が駆動し、分離室34の底部に沈降分離した沈殿物(汚水)が貯留室4へ送られる。このエアリフト38の作動は、流動攪拌室32の水位が作動水位cよりも下がりエアリフト作動フロートスイッチ32bが開かれるまで成される。
【0131】
ここで、下水道5が確保されている場合には、下水放流バルブ42aを開弁しておけば、貯留室4が満水になった時点で、貯留室4の汚水が第2オーバフロー路42を介して下水道5へ越流される。したがって、汚水処理手段3は、満水になることなく自己処理循環モードによる使用を続けることができる。
【0132】
一方、下水道5が確保されていない場合には、下水放流バルブ42aは閉じておく。この場合、トイレシステム全体が満水になり、流動攪拌室32の水位が満水水位dまで上昇すると、満水フロートスイッチ32cが投入され、満水表示ライト40が点灯する。このように満水になったら汲み取りを行う。
【0133】
なお、この汲み取りを行うにあたり、その時点で、運搬その他の手段で初期運転用の水を確保できるのなら、トイレシステム内の水を全量汲み取るのが望ましい。しかし、この時点でも、初期運転用の水が確保できない場合には、分離室34から貯留室4に汲み上げられた沈殿物(汚水)のみを汲み取り、システム全体の水量を減少させ、使用を続ける。なお、このように沈殿物(汚水)のみを取り除くことで、上澄水を含む水を取り除く場合に比べて、トイレシステム内の水の汚染度を低く抑えることができる。
【0134】
また、上水道9および下水道5が復旧した場合には、各室4,32,33,34,35を洗浄し、再び水洗モードで使用することができる。
【0135】
以上説明した実施の形態1のトイレシステムでは、上水道9および下水道5が確保された通常時は、水洗モードで使用でき、この場合には、電力を全く使用しないため、自己処理循環モードのみで運転するのと比較するとランニングコストを低く抑えることができ、経済性に優れる。
【0136】
さらに、この水洗モードでは、1回の使用で、水タンク2の容量分の水しか使用されず、通常の水洗トイレと同様で、水洗トイレと比較しても、経済的に劣ることはない。
【0137】
一方、災害時のように上水道9や下水道5が確保できない緊急時には、給水が不要な自己処理循環モードで使用できる。この自己処理循環モードでは、便器1に常に水が流れるため、通常の水洗トイレと同様に、臭いが無く衛生的な環境で、快適に使用することができる。
【0138】
さらに、水洗モードから自己処理循環モードに切り換える場合には、メンテナンス室200において、貯留室ドレンバルブ43aの開閉作業と、排水切換バルブ63の切換作業と、便器洗浄水切換バルブ7の切換作業と、上水供給バルブ91aの切換作業と、図示を省略したメインスイッチの投入作業を行うだけであるので操作が簡単である。
【0139】
しかも、水洗モードから自己処理循環モードに切り換える際には、水洗モードにおいてシステム内に貯留されている水を、初期運転用に使用するため、ポンプ車や水タンクを搬送して上水以外の手段により水を供給したりする必要が無い。
【0140】
したがって、従来のように、仮設トイレを搬送および設置したり、初期運転に必要な水を運搬したりする必要が無く、即座に汚水処理手段3による循環浄水運転を行うことができ、緊急時の対応性に優れる。
【0141】
さらに、本実施の形態1では、流動接触室33,分離室34,送水室35に貯留した水はそのままで、貯留室4に貯留した水のみを流動攪拌室32に落とすもので、この場合、ドレンバルブ43aを開閉するだけであり、ポンプなどを用いて汲み上げる必要もなく、作業性に優れる。
【0142】
また、水洗モードにおいて水洗モード用流路A内には、各室4,33,34,35において、常時満水として、越流により移動させるようにしているため、常に水流が生じ、長期間水洗モードで使用していても、水が腐って悪臭を放つ不具合が生じないとともに、水量が不足する不具合が生じない。ちなみに、自己処理循環モードで使用するための水を独立させて長期間放置しておく場合には、水が腐って悪臭を発したり、蒸発などで水位が下がって水量が不足したりする不具合が生じるおそれがあるが、本実施の形態1のトイレシステムでは、このような不具合が生じない。
【0143】
加えて、本実施の形態1では、貯留室4に、下水道5に繋がる第2オーバフロー路42を設け、下水道5が確保されている場合には、貯留室4内の汚水を下水道5に流し、継続して使用が可能となり、利便性に優れる。すなわち、通常の循環式トイレでは、システム内が満水になると、全水量をバキューム処理し、さらに初期運転に必要な新規の水を送水して貯める作業が必要になり、手間および工数がかかるとともに、その間、使用不要となるが、本実施の形態では、これらの不具合を回避できる。
【0144】
さらに、水洗モードと自己処理循環モードとの二通りの使用が可能なトイレシステムを構成するにあたり、本実施の形態1では、既存の循環式トイレシステム、すなわち、自己処理循環モードで使用するのに必要な貯留室4、流動接触室33、分離室34、送水室35を、便器1および水タンク2に水頭圧で送水可能な高さに配置し、排水切換バルブ63、便器洗浄水切換バルブ7、上水供給路91および上水供給バルブ91a、ドレン路43および貯留室ドレンバルブ43a、第2オーバフロー路42および下水放流バルブ42a、を追加するだけで、構成することができ、設置に必要なスペースをコンパクトにすることができ、かつ、製造コストを低く抑えることができ、しかも、汎用性に優れる。
【0145】
(実施の形態2)
次に、図7に示す実施の形態2のトイレシステムについて説明する。なお、図7にあっては、実施の形態1との相違点を示しており、他の構成については、全て実施の形態1と共通しているものとする。
【0146】
この実施の形態2のトイレシステムでは、流動接触室33、分離室34、送水室35に、各室33,34,35に貯まった汚水などを流動攪拌室32に流すことができる洗浄用ドレン路233,234,235が設けられている。
【0147】
また、各洗浄用ドレン路233,234,235を連通および遮断する洗浄用ドレンバルブ233a,234a,235aが設けられている。
【0148】
さらに、前記返送ポンプ37で汲み上げる返送管37cに、排水路6に分岐接続された下水側分岐路37dが設けられ、かつ、返送ポンプ37から汲み上げた水を流動接触室33へ送る自己処理循環モードと、汲み上げた水を下水道5へ送る洗浄モードと、に手動で切り換える返送切換バルブ37eが設けられている。
【0149】
以上のように構成された実施の形態2のトイレシステムにあっては、自己処理循環モードにて運転した後に、上水道9および下水道5が復旧して、水洗モードに戻す場合に、トイレシステム内に貯まった汚水などは、以下に述べる手順で下水道5へ流すことができる。
【0150】
すなわち、返送切換バルブ37eを、洗浄モードとして、下水側分岐路37dを下水道5と連通させ、返送ポンプ37を汲み上げ駆動させると、この流動攪拌室32に貯まっている汚水などが下水道5へ送出される。
【0151】
また、この流動攪拌室32内の汚水などが下水道5へ送出されたら、実施の形態1で示した貯留室ドレンバルブ43aを開いて、貯留室4に貯まった汚水を流動攪拌室32へ導いて、返送ポンプ37により下水道5へ送出することができる。
【0152】
さらに、順次、洗浄用ドレンバルブ233a,234a,235aを開いて、流動接触室33、分離室34、送水室35に貯まっている汚水なども流動攪拌室32へ導いて、返送ポンプ37により下水道5へ送出できる。
【0153】
このようにして、トイレシステム内の各室4,32,33,34,35に貯まっている汚水などを全て下水道5へ流し、各室4,32,33,34,35を空にすることができる。
【0154】
さらに、この状態で各室4,32,33,34,35を洗浄する。この場合も、洗浄した水は、流動攪拌室32へ落とすことができ、洗浄した水をバキュームカーなどで汲み上げる必要が無く、洗浄作業性に優れる。
【0155】
最後に、流動攪拌室32を洗浄したら、各バルブ43a,233a,234a,235aを閉じ、返送切換バルブ37eを、自己処理循環モードに戻し、洗浄を終える。
【0156】
以上のように、実施の形態2では、貯留室4、流動接触室33、分離室34、送水室35にドレン路43および洗浄用ドレン路233,234,235を設け、各室4,33,34,35に貯まった汚水などを流動攪拌室32に流し落とすことができるようにしたため、各室4,32,33,34,35に貯まった汚水などを下水道5へ送出でき、バキュームカーなどで汲み上げる必要が無く、作業性に優れる。
【0157】
加えて、洗浄時においても、洗浄水を随時下水道5へ送出させることができ、洗浄作業性に優れる。
【0158】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0159】
すなわち、実施の形態では、汚水処理手段として、流動攪拌槽、流動接触室、分離室、送水室を備えた手段を示したが、排泄物および便紙を含む汚水から、浄化水を取り出すことができる手段であって、初期運転に水が必要な構成であれば、実施の形態で示した手段に限定されない。例えば、浄化水を得る過程で、微生物・バイオ菌・酵素・接触剤・ICリアクター(高速メタン発酵処理)・担体流動床・電気分解による活性化などを利用して有機分解する過程や、カキ殻・活性炭・多孔質セラミック・土壌・その他フィルタなどを通して浄化水を得る過程や、オゾン処理による脱色過程や、薬品添加による消臭・浄化処理過程を有した手段などを用いることができる。
【0160】
また、実施の形態では、水洗モード用流路Aを形成するにあたり、汚水処理手段3を構成する各室4,33,34,35で形成した例を示した。このように形成することで設置スペースや部品点数を少なくすることができるが、実施の形態で示した配置に限定されるものではない。例えば、実施の形態において上部室として示した流動接触室33などを下部室として床105の下に設けることもあり得る。特に、上記のように、浄化処理を行う手段として本実施の形態とは異なる手段を用いた場合、下部室の割合を増やすこともできる。また、このように下部室の容量が大きくなった場合、下部室も水洗モード用流路として用い、この下部室から便器あるいは水タンクへ、電力や人力で駆動するポンプで汲み上げるようにしてもよい。この場合でも、常時、浄水処理を行うのに比べるとランニングコストを低く抑えることができる。
【0161】
さらに、実施の形態では、水洗モード用流路を、汚水処理手段で構成した例を示したが、図8に概略を示すように、水洗モード用流路Bを、汚水処理手段Cとは別個のタンクなどで構成してもよい。 このような構成でも、請求項1に記載の発明の効果である水洗モード時のランニングコストを低く抑える効果、水洗モード時に貯留した水で汚水処理手段Cの初期運転を行うことで、緊急対応性に優れる効果、長期間水を貯留していても、水が腐って悪臭を発する不具合が生じない効果、を得ることができる。なお、図8においてDは、水洗モード用流路Bから汚水処理手段Cへ貯留水を落下させるドレン路である。
【0162】
また、上記のように水洗モード用流路Bを、汚水処理手段Cとは別個に形成した場合において、図8に示した例とは異なり、少なくとも一部において水洗モード用流路Bと汚水処理手段Cとで、上下関係が逆になっている場合には、自己処理循環モードの初期運転用の水として汚水処理手段Cへ移動させる際には、図8に示したように、重力で移動させる他、ポンプなどで揚水するようにしてもよい。
【0163】
また、実施の形態では、循環式の汚水処理手段として、常時水を循環させるものを示したが、請求項1ないし3に記載の発明では、このような常時循環のものに限られない。すなわち、循環時であっても水タンクを使用し、処理水を水タンクに一旦貯めて使用するようにしてもよい。
【0164】
また、実施の形態では、水洗モードで水タンクを使用するものを示したが、請求項1ないし請求項4に記載の発明では、水タンクを有しない構成としてもよい。このような水タンクを用いない構成では、水洗モードでは、水頭圧で水を供給する請求項2ないし4に記載の発明では、水洗モード用流路から、例えば、手動や電動のバルブを開いて、1回の洗浄に必要な量の水を、直接便器に流すことができる。水頭圧で水を供給することに限られない請求項1に記載の発明では、電動や人力で駆動するポンプを用いて1回の洗浄に必要な量の水を供給するようにしてもよい。
【0165】
また、トイレユニットTUにおいて、設置する便器1の数は、実施の形態で示した数に限られるものではなく、1でも、3以外の複数でもよい。
【0166】
また、便器1は、水洗式のものであれば、男子用の小便器など実施の形態で示した以外のものも用いることができる。同様に、水タンク2も実施の形態で示したものに限らず、例えば、手洗いを有したタイプや、洗浄切換手段として洗浄レバー24bとは異なる、足踏み式などの他の操作手段を有したものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明の実施の形態1のトイレシステムを示す全体図である。
【図2】本発明の実施の形態1のトイレシステムを有したトイレユニットを上方から見た概略図である。
【図3】本発明の実施の形態1のトイレシステムを有したトイレユニットを示す概略図であり、図2のS3−S3線の位置で切った状態を示す。
【図4】本発明の実施の形態1のトイレシステムを有したトイレユニットを示す概略図であり、図2のS4−S4線の位置で切った状態を示す。
【図5】本発明の実施の形態1のトイレシステムにおいて水洗モードで使用する場合を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1のトイレシステムにおいて自己処理循環モードで使用する場合を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態2のトイレシステム要部を示す概略図である。
【図8】本発明の実施の形態の他例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0168】
1 便器
2 水タンク
3 汚水処理手段
4 貯留室(上部室)
5 下水道
6 排水路
7 便器洗浄水切換バルブ(便器洗浄水切換手段:水流モード切換手段)
9 上水道
23 フロートバルブ(バルブ手段)
24 洗浄切換手段
30 処理槽
31 給水路
32 流動攪拌室(下部室)
33 流動接触室(上部室)
34 分離室(上部室)
35 送水室(上部室)
37 返送ポンプ
37c 返送管
37e 返送切換バルブ
38 エアリフト(汲み上げ手段)
38a 汲み上げ管(汲み上げ手段)
41 第1オーバフロー路
42 第2オーバフロー路
42a 下水放流バルブ
43 ドレン路
43a 貯留室ドレンバルブ
63 排水切換バルブ(排水切換手段:水流モード切換手段)
91 上水供給路
91a 上水供給バルブ(上水供給切換手段:水流モード切換手段)
91b 上水フロートバルブ
233,234,235 洗浄用ドレン路
233a,234a,235a洗浄用ドレンバルブ
A 水洗モード用流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器からの排水を浄水処理し、得られた処理水を洗浄水として前記便器に再び送出して、前記便器との間で処理水を循環させる循環浄水運転を実行可能に構成された自己処理型の汚水処理手段を備えたトイレシステムにおいて、
上水道に接続され、前記汚水処理手段の循環浄水運転の初期運転に必要な量の水を貯留できる容量を有し、かつ、前記便器へ水を供給可能な水洗モード用流路が設けられ、
前記便器の排水を下水道に導く排水路が設けられ、
前記上水道から導入された上水を、前記水洗モード用流路を経て前記便器に流し、前記排水路から下水道へ排水する水洗モードと、前記便器と汚水処理手段とで処理水を循環させる自己処理循環モードと、に水流を切り換える水流モード切換手段が設けられていることを特徴とするトイレシステム。
【請求項2】
前記水洗モード用流路は、貯留した水の水頭圧で前記便器へ水を供給可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のトイレシステム。
【請求項3】
前記水洗モード用流路が、前記汚水処理手段を用いて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトイレシステム。
【請求項4】
前記汚水処理手段は、前記便器に向けて水頭圧により送水可能な高さに配置された1または複数の室を有した上部室と、前記便器からの排水を受ける高さに配置された1または複数の室を有した下部室と、を備え、
前記上部室には、前記循環浄水運転時に、汚水の水から分離された沈殿物が送られる貯留室が含まれ、
この貯留室を含む前記上部室を構成する室により、前記水洗モード用流路が形成され、
前記貯留室と下部室との間には、前記貯留室に貯めた水を前記下部室に供給するドレン路、および、このドレン路を開閉するドレンバルブが設けられていることを特徴とする請求項3に記載のトイレシステム。
【請求項5】
前記水洗モード用流路に、便器の1回の洗浄に必要な量の水を貯留するとともに、貯留した水を前記便器に流す洗浄切換手段および水位の下降に応じ水を供給するバルブ手段を備えた水タンクが設けられ、
前記水流モード切換手段は、
前記上水道と前記上部室とを結ぶ上水供給路に設けられてこの上水供給路を連通する水洗モードと、前記上水供給路を遮断する自己処理循環モードと、に切り換える上水供給切換手段と、
前記排水路に設けられ、前記便器からの排水を、前記下水道へ流す水洗モードと、前記下部室へ流す自己処理循環モードと、に切り換える排水切換手段と、
前記上部室と便器とを結ぶ給水路の途中に設けられ、前記給水路を流れる水を、いったん前記水タンクへ迂回させて前記便器に送る水洗モードと、前記便器に直接導く自己処理循環モードと、に切り換える便器洗浄水切換手段と、
を備えていることを特徴とする請求項4に記載のトイレシステム。
【請求項6】
前記汚水処理手段は、
前記下部室として、前記便器から排水路を介して洗浄水が供給される流動攪拌室を備え、
前記上部室として、前記貯留室に加え、前記流動攪拌室から返送ポンプにより汚水が供給され、曝気が成される流動接触室と、この流動接触室から越流された汚水が沈殿物と上澄水とに分離される分離室と、この分離室から上澄水が越流され、かつ前記給水路が接続された送水室と、を備え、
前記分離室の沈殿物を前記貯留室に汲み上げる汲み上げ手段が設けられ、
前記貯留室と流動接触室との間に、貯留室を越流した水を流動接触室に送るオーバフロー路が設けられ、
前記上水供給路が、前記貯留室に接続され、
前記上水供給路に、前記送水室の水位が所定高さよりも下がったときに開弁し、所定高さよりも上がったときに閉弁する上水フロートバルブが設けられていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のトイレシステム。
【請求項7】
前記貯留室には、越流水を前記下水道に流す第2オーバフロー路が設けられ、
この第2オーバフロー路を連通および遮断する下水放流バルブが設けられていることを特徴とする請求項6に記載のトイレシステム。
【請求項8】
前記上部室の各室を、前記流動攪拌室と結ぶ洗浄用ドレン路が設けられ、
各洗浄用ドレン路を連通および遮断する洗浄用バルブが設けられ、
前記返送ポンプで汲み上げる返送管に、汲み上げた水を流動接触室へ送る自己処理循環モードと、汲み上げた水を下水へ送る洗浄モードと、に切り換える返送切換バルブが設けられていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のトイレシステム。
【請求項9】
便器からの排水を浄水処理し、得られた処理水を洗浄水として前記便器に再び送出して、前記便器との間で処理水を循環させる循環浄水運転を実行可能に構成された自己処理型の汚水処理手段と、
上水道に接続され、前記汚水処理手段の循環浄水運転の初期運転に必要な量の水を貯留できる容量を有し、かつ、前記便器へ水を供給可能な水洗モード用流路と、
を備えたトイレシステムの使用方法であって、
水洗モード使用時には、前記上水道と水洗モード用流路とを接続する一方で、前記便器を下水道に接続し、前記汚水処理手段の循環浄水運転の実行を停止させた状態で、前記上水道の上水を前記水洗モード用流路に導入し、かつ、この水洗モード用流路では、循環浄水運転の初期運転に必要な量の上水を常時貯留させながら便器に供給し、さらに、この便器からの排水を下水道へ流すというように、前記上水道から前記下水道へ至る一方通行の流れで使用し、
自己処理循環モード使用時には、前記水洗モード使用時に水洗モード用流路内に貯留した上水を初期運転に使用して前記汚水処理手段を循環浄水運転させ、かつ、前記汚水処理手段で浄水処理された処理水を便器へ洗浄水として供給し、一方、便器を通過した水は、前記汚水処理手段へ戻して再び浄水処理する循環流で使用することを特徴とするトイレシステムの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−2490(P2007−2490A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182826(P2005−182826)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000151885)株式会社東洋製作所 (6)
【Fターム(参考)】