説明

トイレシステム

【課題】一方のトイレが使用中であるときは他方のトイレの排出を禁止する。
【解決手段】簡易トイレ装置と既設トイレ装置を使用してトイレシステムを構築する。それぞれのトイレ装置の使用状態を検知し、使用状態が検知されたときは、使用状態信号を相手側のトイレ装置に送信する。使用状態信号を簡易トイレ装置10が受信すると、汚物の排出機構(電磁弁)24と報知手段250が作動する。既設トイレ装置が使用されているときは、汚物排出機構の排出処理が禁止される。トイレ装置の使用が終了した旨の信号を受信すると、排出処理の禁止を解除し、待機中にあった排出処理が実行される。こうすることで、2つのトイレ装置のそれぞれが同時に排出処理するのを回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、簡易トイレ装置と既設トイレ装置とからなるトイレシステムに関する。詳しくは、簡易トイレ装置に排泄された汚物を、既設トイレ装置の便器内部に排出できるようなトイレシステムを構築する場合、それぞれのトイレ装置に汚物排出機構と、その排出制御を行う制御手段とを設けることで、相手方のトイレ装置の使用状態によっては自己の汚物排出機構を禁止して、双方の同時使用を回避できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
介護を必要とする老人や、身体が不自由で家屋内の既設トイレまで出向くことが困難な人のために、可搬型の簡易トイレが開発されている(例えば特許文献1)。
【0003】
この可搬型簡易トイレは、居室内に設置できるように椅子型に構成され、この椅子に座って用を足すことができる。可搬型簡易トイレには便器に洗浄水を流すための給水ホースと、汚物を排出する排出用の排出ホースが設けられ、そして汚物を圧送する手段が設けられている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−308404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この特許文献1に開示された簡易トイレ装置として水洗式のトイレ装置であるときには、その洗浄水の供給および排泄された汚物の処理が問題となる。この問題を解決する手段として既設のトイレ装置を利用することが考えられる。つまり、既設トイレ装置の洗浄水を簡易トイレ装置まで導くと共に、簡易トイレ装置の汚物を、使用した洗浄水とともに既設トイレ装置の便器に排出するようにトイレシステムを構築する。このように既設トイレ装置を利用できれば、簡易トイレ装置を使用するときの設備費を抑えることができるなどのメリットがある。
【0006】
しかし、既設トイレ装置は家族なども利用するものであるから、既設トイレ装置の使用中に、簡易トイレ装置が利用されることもあるし、簡易トイレ装置の使用中に、既設トイレ装置が利用されるケースもある。このような場合、例えば既設トイレ装置を使用している最中に、突然簡易トイレ装置側から汚物などが排出されたのでは、既設トイレ装置を利用する家族は驚きと共に戸惑いを隠せない。
【0007】
あるいは、簡易トイレ装置を使用している最中に、既設トイレ装置側で汚物を排出するための洗浄処理がなされるなどして、既設トイレ装置側のタンクなどに洗浄水が充分蓄えられていない状況では、汚物を完全に排出できなくなるおそれがある。このため、できれば、簡易トイレ装置と既設トイレ装置との同時使用を避けた方が好ましいが、同時使用であっても汚物の排出タイミングを異ならせれば、上述した問題は解決する。つまり、簡易トイレ装置と既設トイレ装置とで、ほぼ同時に汚物の排出が行われないようにすればよい。
【0008】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、特に簡易トイレ装置と既設トイレ装置とで構築されるトイレシステムにあって、これらトイレ装置の同時使用を回避できるように、相手方のトイレ装置の使用状態に応じて自己の汚物排出機構を制御できるようにしたトイレシステムを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載したこの発明に係るトイレシステムでは、簡易トイレ装置に排泄された汚物を既設トイレ装置の便器内に排出するようにしたトイレシステムにおいて、
上記簡易トイレ装置と既設トイレ装置とのそれぞれには、汚物排出機構を制御する制御部と、
上記簡易トイレ装置と既設トイレ装置との間での通信を行う通信手段とが設けられ、
上記制御部は、受信した相手方トイレ装置の使用状態に基づいて、自己の汚物排出機構を制御するようにしたことを特徴とする。
【0010】
この発明では、簡易トイレ装置と既設トイレ装置を使用してトイレシステムを構築する。それぞれのトイレ装置にはトイレ装置の使用状態を検知する検知手段が配されると共に、汚物の排出機構と、この排出機構を制御するため、通信機能および報知機能を備えた制御部が設けられる。
【0011】
それぞれのトイレ装置の使用状態を検知し、使用状態が検知されたときは、使用状態信号を相手側のトイレ装置に送信する。トイレ装置の使用状態を検知する検知手段としては、臭気センサ、重量センサ、人感センサ、便座の開閉検知センサなどが考えられる。
【0012】
一方のトイレ装置の使用状態信号を相手側である他方のトイレ装置が受信すると、汚物の排出機構と報知手段が作動する。相手側のトイレ装置が使用されているときは、汚物排出機構の排出処理が禁止される。相手側のトイレ装置の使用が終了した旨の信号を受信すると、排出処理の禁止を解除し、待機中にあった排出処理が実行される。こうすることで、2つのトイレ装置のそれぞれが同時に排出処理するのを回避できる。
【0013】
報知手段を作動させることで、その旨の情報がトイレ装置使用者に報知されることになるので、排出操作をしても排出処理が実行されない理由を即座に把握できる。これによってトイレ装置使用者の不安を払拭できる。
【0014】
報知手段としては、使用状態を文字表示する表示部、ブザーなどの警報手段、報知用の表示灯の何れか1つまたは2つ以上の組み合わせで構成する。
【0015】
簡易トイレ装置と既設トイレ装置のそれぞれに排出機構の制御系やその報知系を備える他に、携帯端末装置を用意することも可能である。この携帯端末装置にもトイレ装置との間の通信を行える通信手段や報知手段などを備えることで、この携帯端末装置側でトイレ装置の使用状況を把握すると共に、その排出制御も可能になる。
【0016】
既設トイレ装置に連結される簡易トイレ装置は1台に限らない。簡易トイレ装置を数台使用することも可能である。この場合には、既設トイレ装置の制御系を親機として機能させ、複数の簡易トイレ装置に設置された制御系は子機として機能させると便利である。つまり、既設トイレ装置から全ての簡易トイレ装置の排出機能を制御する。そして、既設トイレ装置が使用中であるときは、簡易トイレ装置の全ての排出処理を禁止する。そして例えば、1台目の既設トイレ装置が使用中であるときは、2台目以降の既設トイレ装置における排出処理を禁止するように制御する。こうすることで、複数台の簡易トイレ装置と既設トイレ装置との同時使用を回避できる。
【0017】
簡易トイレ装置は種々の構成を採り得る。例えば簡易トイレ装置の便器本体に汚物の粉砕手段を設ける。粉砕した汚物は既設のトイレ装置に圧送する。効果的な圧送と、便器本体内を清潔に保つため、溜まり部の上部を閉塞する開閉蓋を設けるなどといった構成が考えられる。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るトイレシステムは、簡易トイレ装置と既設トイレ装置との双方の使用状態を検知する検知手段が配されると共に、汚物の排出機構と、この排出機構を制御するため、通信機能および報知機能を備えた制御部が設けられたものである。
【0019】
これによれば、一方のトイレ装置が使用状態にあるときは、他方のトイレ装置にその使用状態が通知されると共に、他方のトイレ装置の排出処理を禁止できるので、簡易トイレ装置と既設トイレ装置との同時使用を回避できる。そのため、トイレ使用者の不快感などを払拭できる実益を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
続いて、この発明に係るトイレシステムの好ましい実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
この発明に係るトイレシステムは、居室内で使用できるように工夫された可搬型の簡易トイレ装置と既設トイレ装置とによって構築される。図1はその一例を示す。簡易トイレ装置と既設トイレ装置との間はホース(洗浄水用のホースと排出用のホース)によって連結される。
【0022】
図1は家屋1の廊下2に面して既設トイレ装置3が設置された例である。既設トイレ装置3内には便器(便器本体)4と注水タンク5が設置されている。廊下2に沿ってこの例では居室兼寝室としての部屋6が位置し、部屋6内には例えばベッド7が置かれている。
【0023】
部屋6内で使用できる簡易トイレ装置10は、お尻洗浄機能の付いたいわゆる温水洗浄便座の設備が付いた簡易トイレ装置(洋式トイレタイプ)が好適であるが、以下の説明はこの温水洗浄便座の設備についての説明は省いてある。簡易トイレ装置10への洗浄水の供給は既設トイレ装置3側から行われ、簡易トイレ装置10の汚物などは既設トイレ装置3の便器4内に排出される。そのため、簡易トイレ装置10に連結された給水ホース12は、既設トイレ装置3の給水管(図示はしない)に連結される。同じように簡易トイレ装置10に接続された排出ホース14は便器4に設けられた連結部(後述する)に連結される。
【0024】
図2はこの発明に適用できる簡易トイレ装置10の一例を示す要部断面図である。この簡易トイレ装置10は便器本体20を有する。便器本体20は通常の水洗式トイレ(洋式トイレ)とほぼ同じ漏斗状の断面形状をなすが、その全体形状は箱型として構成される。近年はインテリア要素も望まれ、必ずしも箱形だけではなく、例えば肘掛けのある椅子型のものも利用できる。
【0025】
便器本体20を軽量化するため、この例では便器本体20はプラスチックによる成型品であるが、陶器等の他の素材を使用して成形してもよい。便器本体20の上部開口部側には便座21が位置すると共に、この便座21および上部開口部を閉塞するような便蓋23が設けられている。
【0026】
便器本体20の底部がトラップ水(溜まり水)や汚物の溜まり部18となる。
溜まり部18に連通して断面がほぼ「へ」の字状をなす排出部22が設けられ、排出口27に排出ホース14が連結される。そのため、この例では便器本体20の背面部20bに連結部26が設けられると共に、便器本体20の内部であって、開閉弁として機能する電磁弁24が連結部26に近接して設けられている。溜まり部18に連通する排出部22の形状は、図示の形状の他にP型、U型、椀型などが考えられる。これらの形状はいずれも同様な作用効果が得られる。なお、断面がほぼ「へ」の字状をなす排出部22は、一般にS字トラップと呼称されることが多い。
【0027】
電磁弁24は、給水用の電磁弁32と共に排出機構の一部として機能する。電磁弁24は、溜まり部18内のトラップ水(汚物を含んだ水)を便器外に排出するときだけ開くように制御され、トイレを使用していないときは閉じられている。排出の制御と漏水を防止するためである。また、同時にエアコンプレッサの圧力により効果的に汚物を排出するためである。
【0028】
便器本体20の上部近辺で、排出部側の壁面18aには洗浄水の給水口28が設けられている。本体背面部20bに設けられた連結部34とこの給水口28との間には連結管30が配されると共に、連結部34の近傍には電磁弁32が取り付けられている。連結部34に連結される給水ホース12からの給水(洗浄水)をこの電磁弁32によって制御できるようにするためである。給水口28と壁面18aとの間にはゴム状の漏水防止管29が介挿され、便器本体20の背面空間部20a側に漏水しないようにしている。
【0029】
溜まり部18の底部には粉砕手段40が設けられる。粉砕手段40は溜まり部18内に溜まった汚物やトイレットペーパー(以下汚物と総称する)を砕くためのもので、粉砕した流状物をトラップ水と混合して排出するようにしている。
【0030】
粉砕手段40はモータ42と粉砕羽根44とで構成することができ、図2ではそのうち粉砕羽根44のみ溜まり部18内に臨むように取り付けられる。そのため、モータ42は溜まり部18の底部外壁19側に配置され、ボルトやナットによる支持具46によって便器本体20に取り付け固定される。モータ42の回転軸は溜まり部18の底部と水密的に結合されている。モータ42は溜まり部18の底部外壁側ではなく、便器本体20の底面板20cに固定するようにしてもよい。
【0031】
この底面板20cにはCPUなどで構成された制御部50が配される。上述した排出用電磁弁24、給水用電磁弁32、モータ42などの各駆動が、制御部50によって所定のタイミングで所定の時間だけ制御される。さらに、後述するようにこの制御部50では簡易トイレ装置10の使用状態を検知したときには、使用状態を示す信号を送信したり、既設トイレ装置3(後述する)からの状態信号を受信したときは、排出禁止処理などの対応する処理を行うような機能が付加されている。
【0032】
制御部50用の電源スイッチ52は本体背面部20bに設けられ、本体上面部であって、便蓋23の下面には便座21の開閉を検知する開閉スイッチ55(後述する)が設けられている。この開閉スイッチ55は既設トイレ装置3の使用状態を検知するセンサとしても機能する。
【0033】
便器本体20の上面であって、この例では便座21の後面側には制御部50によって制御される報知手段250が設置されている。この例では、文字表示部、ブザーおよび報知用の表示灯とで報知手段250が構成されている。その詳細は後述する。
【0034】
簡易トイレ装置10はさらに以下の構造を有する。図2に示すように、便器本体20における溜まり部18の背面上部であって、給水口28よりも下側の所定位置には、溜まり部18に所定の圧縮空気を送給するための粉砕物の圧送手段200と、溜まり部18を密閉する開閉蓋機構210が設けられる。
【0035】
圧送手段200はエアコンプレッサで構成することができ、このエアコンプレッサ200の送給管204が取り付け手段206を介して壁面18aより溜まり部18側に導出される。取り付け手段206は溜まり部18のトラップ水の水面より上部に設けられる。エアコンプレッサ200は便器本体20の背面空間部20a内に設けられた取り付け板202に固定される。また同様に、溜まり部18に所定の圧縮空気を給送するための圧送手段200と同機能を発揮させるために簡易トイレ装置本体の外部より圧縮空気を取り入れ、同様の作用を行わせることもできる。
【0036】
開閉蓋機構210はこの圧送手段200よりもさらに上部であるが、圧送手段200と少許の間隔を隔てて配置される。開閉蓋機構210は溜まり部18を密閉する蓋本体212と、この蓋本体212を進退させるなどして溜まり部18を開閉する開閉駆動部213とで構成される。
【0037】
蓋本体212の開閉方法としては、スライド式と90°以上上下に回転させる回転式とが考えられ、スライド式とするか、回転式とするかによって開閉駆動部213の構成が相違する。
【0038】
図2はスライド式に構成した場合である。この例では開閉駆動部213として電磁ソレノイド218を使用した場合で、電磁ソレノイド218内を進退するピストン216の先端部が連結部214に取り付けられる。連結部214は上述した蓋本体212の一部をなす。電磁ソレノイド218は本体背面側に突出した保持部220によって取り付け固定される。
【0039】
蓋本体212は図3にその一例を示すように、溜まり部18の内周形状に沿った平板状の形体であって、この例ではほぼ茄子状若しくは苺状のような形体となっている。この例では、抗菌剤がコーティングされたプラスチック成型品が使用されている。
【0040】
蓋本体212の一部が連結部214となるように、この例では両者が一体成形されている。連結部214は矩形状をなす。蓋本体212が進退する内面部には、漏水防部材230が介在されている。
【0041】
連結部214の反対側には上述したピストン216の先端部が圧入などによって嵌合固定される。ピストン216は電磁ソレノイド218に通電することによって電磁ソレノイド218内を進退する柱状をなす作動桿である。このほかに、エアシリンダーやギアの組み合わせ等々により同様な開閉進退動作をさせることができる。
【0042】
図2は開閉蓋としての蓋本体212を閉じた状態を示し、この蓋本体212によって溜まり部18の内部が密閉される。これに対して図4は蓋本体212を退かせて溜まり部18を開放した状態を示す。
【0043】
このような蓋本体212に対する進退動作は電磁ソレノイド218への通電およびその解除によって行い、図2のようにそのストロークは電磁ソレノイド218の蓋本体212側に設けられた第1のスイッチ222と、便器本体20の壁面18a側に設けられた第2のスイッチ224によって検出される。第1および第2のスイッチ222,224への連結部214の当接によって、蓋本体212のストローク終了が検出される。
【0044】
蓋本体212の溜まり部18上面への摺接によって、溜まり部18内が密閉状態となる。完全な密閉は必要ではない。この閉蓋状態でエアコンプレッサ200を作動させるとその圧縮空気が溜まり部18内に送給され、トラップ水に対して押圧力が作用する。この状態で電磁弁24を開くことにより、溜まり部18内の粉砕物が排出ホース14側に圧送される。ここに、粉砕物は、粉砕された汚物とトラップ水を混合した流状物を指す。
【0045】
このように溜まり部18は蓋本体212によって密閉されているので、圧縮空気は溜まり部18側に効果的に作用する。粉砕された汚物は流状物となっているため、圧縮空気を溜まり部18に作用させれば、流状物を容易に洗浄水と共に排出ホースを通して排出できる。
【0046】
溜まり部18内を密閉した状態で流状物を圧送するものであるから、圧送手段200として使用されるエアコンプレッサとしては比較的小型のコンプレッサを使用できる。開閉蓋機構210を用いているため、汚物の粉砕時、汚物が便器本体20内に飛散するのを防止できるから、便器本体20が不衛生状態となることはない。
【0047】
図5は既設の既設トイレ装置3の説明である。簡易トイレ装置10への洗浄水の供給は便器本体108(4)に供給する洗浄水を分流させて使用する。簡易トイレ装置10からの汚物(屎尿等)は便器本体108内に直接排出できるように便器本体108を改良する。
【0048】
便器本体108には排出管110が連結され、その溜まり部109よりも上部側に排出導出口112が設けられる。排出導出口112には排出管113が連結され、排出管113は便器本体108の背面側に設けられた連結部114に連結される。この連結部114に排出ホース14の連結部62Bが連結される。排出導出口112を設けるのではなく、排出部110側に直接排出管113を連結するようにしてもよい。
【0049】
このように既設の便器本体108を改良する場合には、簡易トイレ装置10とこの便器本体108には高低差が生ずる。連結部114が簡易トイレ装置10の便器本体20よりも高い場所に位置するときには、排出ホース14内に汚物の流状物が滞留するおそれがある。しかし、このように高低差がある場合でも、上述したエアコンプレッサ200からの圧縮空気によって流状物を圧送すれば、流状物が排出ホース14内に残留することなく、確実に便器本体108側に排出できる。
【0050】
便器本体108の開口端部側には便蓋230の開閉状態を検知するための開閉検知スイッチ115が設けられる。この検知スイッチ115によって、既設トイレ装置3の使用状態が検知される。この例では便蓋230を開けたとき、使用状態(使用中)と判断し、便蓋230が閉じられたとき使用状態の終了(使用済み)と判断する。
【0051】
既設の既設トイレ装置3の壁260には温水洗浄のための操作部270が設けられている。この例では、この操作部270の近くにフック280が設けられており、ここに既設トイレ装置3用の制御部、この例では携帯型の制御装置290が装着される。制御装置290は簡易トイレ装置10との間の通信を行うための送受信機能と、簡易トイレ装置10の使用状態を報知するための報知機能を有する(詳細は後述する)。
【0052】
制御装置290の操作パネル側には電源スイッチ292の他に、報知手段310が配設される。この例では、ブザー293、文字表示部294および表示灯296で報知手段310が構成される。文字表示部294には使用状態信号を受信したメッセージが表示される。
【0053】
上述した簡易トイレ装置10と既設トイレ装置3との間に連結される給水ホース12の一例を図6に、排出ホース14の一例を図7に示す。図6に示すように、給水ホース12の一端部12aを上水道管側に接続される端部とし、他端部12bを簡易トイレ装置10に接続される端部としたとき、一端部12aおよび他端部12bに各々逆止弁付きの連結部60A,60Bが取り付けられている。
【0054】
図7に示す排出ホース14にも同様に一端部14aおよび他端部14bに逆止弁付きの連結部62A,62Bが設けられている。この場合の一端部14aは簡易トイレ装置10側に連結される端部であり、他端部14bは下水道管側などに接続される端部である。
【0055】
給水ホース12は便器本体20に供給される洗浄水用として使用されるものであるから、小径のビニルホースなどを使用することができる。これに対して、排出ホース14は、その管内を汚物などを粉砕した流状物(粒状物)が流れるものであるから、給水ホース12と同径か僅かに太い径のビニルホースなどを使用することができる。これは固まった汚物ではなく、洗浄水と混合した流状物を取り扱うためである。図7は、給水ホース12よりも大径の排出ホース14を使用した場合である。
【0056】
給水ホース12と排出ホース14の管径を、例えば上述したような管径に選定すると、元々太さが違うために、給水ホース12を排出ホースとして使用したり、排出ホース14を給水ホースと間違って連結したりする、初歩的な誤連結作業を確実に防止できる。もちろん、異なる管径のものを使用する場合に限らず、同じ管径のものを使用する場合でも、図6および図7に示すように、目印となる名称例えば「給水ホース」や「排出ホース」という名称をホースの表面に刻印することで、誤連結を確実に防止できる。また、連結部の接合金具形状を非共通化することで誤連結防止を行うこともできる。更に、給水ホースと排出ホースとの色を変え色別により誤連結を防止することもできる。
【0057】
逆止弁付きの連結部60(62)の一例を図8に示す。図8のように本体63の中空内部に断面矩形状の弁作動室64が設けられ、ここに弁作用をなす球体65とそれに対する押圧バネ66とが設けられ、水圧が矢印a方向に作用することで弁が開くようになっている。これにより簡易トイレ装置側と上下水道管側からの双方の逆流防止を行っている。
【0058】
一方、連結部60(62)のうちの他方の連結部60B(62B)にあっては、これを簡易トイレ装置側と例えば既設便器の下水道管側に連結したとき、逆止弁の球体65が押圧バネ66に抗して後退する凸部(図示せず)を、簡易トイレ装置側と下水道管側の夫々に設けることで、連結部60(62)を連結したときには内部の弁が開放されて連通状態となり、連結を外したときには内部の弁が閉じ、ホース内の液体が外部に漏れ出さないように構成されている。
【0059】
したがって、上水道管に給水ホース12の連結部60Aを取り付け、便器本体20側に連結部60Bを取り付けた状態で、連結部60Aを取り外しても管内部の水は流れ出ず、他方の連結部60Bを外しても管内部の水が流れ出すことはない。同じように使用状態の排出ホース14を外しても、管内部の汚水が外部に流れ出るようなことはない。
【0060】
図9は簡易トイレ装置10に関する制御系の一例を示す。この制御部50は簡易トイレ装置10自体の制御と、簡易トイレ装置10の使用状態に関連した制御を行う。したがって、上述した電源スイッチ52の他に、開閉スイッチ55、第1および第2のスイッチ222,224が設けられ、それらのオンオフ信号が制御部50に供給される。第1および第2のスイッチ222,224は蓋本体212のストロークによってオンオフするスイッチである。電源スイッチ52は簡易トイレ装置10を使用するときの電源スイッチである。
【0061】
便器本体20に関連してトイレ装置の使用状態を検知する検知手段が設けられる。使用状態の検知は、トイレ使用前(トイレ使用のために接近)、使用中、使用後の何れのタイミングであってもよい。トイレ使用前を検知するには、トイレに接近している時間が計測される。単なる通過を排除するためである。
【0062】
以下の例は、トイレ使用中を検知する例であって、検知手段としては便蓋23に対する開閉スイッチ55が兼用される。開閉スイッチ55は便座21の上部を閉蓋するための便蓋23の開閉に関連してオンオフするスイッチであり、図2に示すようにこの例では便蓋23と対向するように便蓋23の下面に開閉スイッチ55が取り付けられる。なお、便蓋23はトイレが使用されていないときは閉蓋されているものとする。
【0063】
CPUで構成されたこの制御部50からの制御信号によって上述した排出用電磁弁24、給水用電磁弁32、粉砕用モータ42、エアコンプレッサ200および電磁ソレノイド218の各駆動状態が制御される。ここに、排出用の電磁弁24と給水用の電磁弁32とは、排出機構の一部として機能する。
【0064】
この制御部50は上述した簡易トイレ装置10自体の制御の他に、トイレ使用状態を検知したことに係わる制御が行われる。そのため、制御部50には通信手段として機能する送受信部264が設けられると共に、この送受信部264にはアンテナ266が接続される。また、使用状態信号を受信したときには制御部50からの制御信号によって報知手段250が作動する。報知手段250としてこの例では、ブザー252、LED等の報知用表示灯254およびLCDなどの文字表示部256で構成される。これらに加えて振動子などを追加して振動によって報知するようにしても差し支えない。
【0065】
洗浄信号および洗浄停止信号に応答して制御部50では、排出用の電磁弁24が制御される。開閉検知信号が得られると送受信部264から対応する状態信号がアンテナ266を介して送信される。便蓋23が開いたときは使用中を示す状態信号が生成されて出力され、便蓋23が閉じたときは、使用済みを示す状態信号が生成されて出力される。
【0066】
送受信部264が既設トイレ装置3より状態信号を受信すると、制御部50では、その状態信号の内容を判断して電磁弁24,32と報知手段250を適宜制御する。
【0067】
受信した状態信号が、既設トイレ装置3の使用中を示す信号であると判断したときは、排出機構としての電磁弁24と電磁弁32の双方が「閉状態」に制御されて排出処理(洗浄処理と排出処理の双方)が禁止される。同時に報知手段250にも対応する制御信号が供給されて、ブザー252が所定時間駆動される。同時に、表示灯254が点灯(または点滅)し、表示部256には例えば「使用中」なる文字が表示される。
【0068】
報知手段250を作動させることで、その旨の情報がトイレ装置使用者に報知されることになるので、排出操作をしても排出処理が実行されない理由を即座に把握できる。これによってトイレ装置使用者の不安を払拭できる。
【0069】
受信した状態信号が、既設トイレ装置3の使用終了を示す信号であると判断されたときは、電磁弁24、32の使用禁止が解除され、排出処理が待機中であったときは、所定時間をおいてから排出処理が実行される。そして報知手段250における表示灯254が消灯し、表示部256の文字も消える。
【0070】
図10は既設トイレ装置3側の制御装置290の概略の系統図を示す。この制御装置290にあっても、CPUで構成された制御部300を有し、便蓋230に対する開閉検知スイッチ115からの検知信号が供給される他、洗浄スイッチ272および洗浄停止スイッチ274からの各信号が供給される。
【0071】
洗浄信号および洗浄停止信号に応答して制御部300では、洗浄水用の制御弁(電磁弁)302が制御される。制御弁302は既設トイレ装置3の排出機構を構成する。開閉検知信号が得られると送受信部304から対応する状態信号がアンテナ306を介して送信される。便蓋230が開いたときは使用中を示す状態信号が生成されて出力され、便蓋230が閉じたときは、使用済みを示す状態信号が生成されて出力される。
【0072】
送受信部304が簡易トイレ装置10よりの状態信号を受信すると、制御部300では、その状態信号の内容を判断して制御弁302と報知手段310(図5参照)を適宜制御する。
【0073】
受信した状態信号が、簡易トイレ装置10の使用中を示す信号であると判断したときは、排出機構としての電磁弁302が「閉状態」に制御される。同時に報知手段310にも対応する制御信号が供給されて、ブザー293が所定時間駆動される。同時に、表示灯296が点灯(または点滅)し、表示部294には例えば「使用中」なる文字が表示される。
【0074】
受信した状態信号が、簡易トイレ装置10の使用終了を示す信号であると判断されたときは、電磁弁302の使用禁止が解除され、排出処理が待機中であったときは、所定時間をおいてから排出処理が実行される。そして報知手段310における表示灯296が消灯し、表示部294の文字も消える。
【0075】
図11は簡易トイレ装置10側での制御タイミング例を示す。
簡易トイレ装置10が使用されていないときは開閉蓋である蓋本体212は閉じられた状態にあるものとする。簡易トイレ装置10は便蓋23を開けて使用する。便蓋23の開操作は開閉スイッチ55(開閉検知センサースイッチなど)によって検出される(図11A,B)。便蓋23が開けられると、電磁ソレノイド218への通電によって蓋本体212が開く(図11C)。蓋本体212のストロークTxは第1のスイッチ222によって検出され、第1のスイッチ222がオンすることで電磁ソレノイド218への通電解除となる(図11D)。
【0076】
蓋本体212が開けられることで、トイレが使用できるようになり、排便・排尿が済み、便蓋23を閉じると、開閉スイッチ55がこれを検知して蓋本体212を閉じる。または、手動スイッチによる電気的信号により排便・排尿の終了を制御部50に伝達することにより蓋本体212を閉じる。蓋本体212の閉じる方向のストロークTxは第2のスイッチ224によって検出される(図11E)。
【0077】
蓋本体212が閉じて溜まり部18内が密閉された状態になると、今度は粉砕用のモータ42が駆動されて、溜まり部18内での粉砕処理が開始される(図11F)。粉砕処理時間Taは、汚物やトイレットペーパーを充分粉砕できる時間に選定される。その時間としては例えば、20秒以下に選定される。
【0078】
所定時間Taだけ粉砕処理が行われると、次にはエアコンプレッサ200が通電されて圧縮空気が溜まり部18内に送給され、このエアコンプレッサ200の通電より少し遅れて(ΔTb)排出用の電磁弁24が開いて排出路が形成される(図11H,I)。このように電磁弁24の通電をエアコンプレッサ200の通電よりも若干遅らせることにより、溜まり部18内の圧力を高めることができる。溜まり部18内の圧力を高めた状態で電磁弁24を開ければ、この圧縮空気の送給と洗浄水の供給とによって溜まり部18内の流状物が排出ホース14側に圧送される。圧送処理は所定時間Tbに亘って行われる。
【0079】
この所定時間Tbとしては、排出ホース14の設置長によっても相違するが、排出ホース14内に流状物が残留しないようにするため、通常の場合には比較的長めの時間、例えば10〜30秒程度に設定することができる。
【0080】
所定時間Tbが経過すると、今度は蓋本体212の開動作に遷移する(図11C)。この開動作を行い、第1のスイッチ222によって蓋本体212の開位置が検知されると、溜まり部18の上部がオープンになる。溜まり部18の上部をオープンにした後で、今度は給水用の電磁弁32を作動させて溜まり部18への洗浄水の注水が所定時間Tcに亘って行われる(図11G)。所定時間Tcは溜まり部18内のトラップ水が所定量となる注水時間に設定される。ここに、所定量とはトラップ水の水面が排出部22の屈曲部を超えるまでの貯水量を言う。
【0081】
溜まり部18への注水が完了すると、蓋本体212が閉じて、初期状態に戻る(図11C,D)。以上のような各部の動作タイミングが複数のスイッチからのオンオフ信号と、制御部50の内部でソフト的に設定された時間とに基づいてコントロールされる。また、給水と排出を繰り返すことでよりきれいに洗浄することもできる。
【0082】
このような動作タイミングに設定することで、汚物の粉砕から排出処理およびトラップ水のトラップ処理までを実現できる。なお、簡易トイレ装置10を持ち運ぶときなどのために、図示はしないが排出スイッチを設け、これを手動操作することで電磁弁24を開けてトラップ水を排出することができる。上述した電磁弁などの開閉タイミングなどはあくまでも一例である。適宜変更することができる。
【0083】
図12は、簡易トイレ装置10側での排出処理例を示す。上述したように既設トイレ装置3側からの状態信号の内容が「使用中」を表す信号であるときは、「トイレ使用中」のような表示がなされる(図12A,B)。これと同時に排出禁止処理が行われる(図12C)。
【0084】
次のタイミングに受信した状態信号の内容が「使用済み(終了)」を表す信号であると判断されたときには、「使用済み」あるいは「トイレ終わりました」のような表示がなされる(図12A)。使用済みを示す状態信号を受信したタイミングtaから所定時間Tw経過後のタイミングtbに排出禁止処理が解除される(図12D)。したがって、排出処理が待機中であるときは所定時間Tw経過後に排出処理が自動的に行われる。このように所定時間Twだけ遅らせて排出処理を実行したのは、既設トイレ装置3を使用していた人が洗面所から立ち去らないうちに汚物が便器108(4)に流れ着くと、違和感を覚えるからである。
【0085】
排出処理が終了した段階で、簡易トイレ装置10側からは洗浄指示信号(図示はしない)が既設トイレ装置3側に送出される。既設トイレ装置3では洗浄指示信号を受信することで、排出処理(洗浄処理)が自動的に行われる。これによって便器本体108内に汚物が滞留するのを防止できる。
【実施例2】
【0086】
上述した実施例1では、トイレの使用状態検知手段として開閉スイッチ55を例示した。この使用状態検知手段としてはこの他に様々なスイッチを利用できる。簡易トイレ装置10を用いて説明すると、図13の例では開閉スイッチ55とは別に、検知センサとしての重量センサ56が便座21の開口上面部に取り付けられる。したがって重量センサ56は便座21と便器本体20との間に取り付けられたことになる。
【0087】
被介護者が便座21に座ることでその重量を、便座21を介して重量センサ56で検知する。数10kg以上の重量であるとき重量センサ56がオンするようにその検知閾値を設定しておけば、被介護者の座位を確実に誤動作なく検知できる。そしてこの検知センサ56がオンしたときの信号を制御部50に導くことで、トイレの使用状態を検知できる。その他の構成およびその動作は実施例1と同じであるので、その説明は割愛する。
【0088】
トイレの使用状態検知手段としては、このほかに様々な検知センサやそれに類似した手段を利用できる。その代表例を以下に示す。
(1)臭気センサ
臭気センサを便器本体20に取り付ける。取り付け場所は任意であるが、できるだけ臭気を感知し易い便器本体20の開口端部、例えば重量センサと同じ場所に取り付ける。こうすることで、汚物の臭気を感知できるから、これによってトイレの使用状態を検知できる。
(2)洗浄操作スイッチ
お尻を洗浄するために使用される洗浄操作スイッチ(図示はしないが、温水洗浄操作部に設けられている)を検知センサとして利用する。洗浄操作スイッチが操作されるとトイレ使用状態信号が送信される。なお、洗浄処理が終了した段階で、実際の粉砕および排出処理が行われる。
(3)開閉蓋の操作スイッチ
図2に示す開閉蓋212を操作するための操作スイッチを検知センサとして利用する。この操作スイッチを操作することで開閉蓋212が閉じ、汚物の粉砕処理と排出処理が開始される。そこで、この操作スイッチに関連させてトイレの使用状態を示す信号を送信するように制御部50を構成する。この場合には、汚物の排出処理は図11の場合と同じで差し支えない。
(4)人感センサ
人感センサを便器本体20に取り付けることで、簡易トイレ装置10の使用状態を検知する。簡易トイレ装置10付近を通過する場合には人感センサが人の接近を感知しないように工夫されている。
【0089】
これらの検知手段は、既設トイレ装置3におけるトイレ使用状態の検知手段としても流用できる。
(5)重量センサ
図1に示す溜まり部18を便器本体20の他の部位と別体で設け、この別体で設けた溜まり部18を支持する部材に溜まり部18の重量を測定可能な重量センサを配設し、溜まり部18の重量を測定することで汚物の有無を判定し、トイレの使用状態を検知するようにしてもよい。
【実施例3】
【0090】
図14は簡易トイレ装置の他の例を示す。図2に示した実施例は開閉蓋機構210がスライド式に構成されている。図14の例は回動式である。以下は、この回動式開閉蓋機構245についての説明を行い、図2と同様な構成部分についてはその説明を割愛する。
【0091】
図14に示すように、便器本体20における溜まり部18の上部であって、給水口28よりも下側の所定位置には、溜まり部18に所定の圧縮空気を送給するための粉砕物用圧送手段200が設けられる。この溜まり部18の上部であって、圧送手段200の取り付け位置よりも若干上部側に縮径部240が設けられる。そしてこの縮径部240を閉塞し、溜まり部18を密閉できるように、縮径部240の下面には開閉蓋機構245が設けられる。圧送手段200は上述した通りである。
【0092】
縮径部240は環状フランジ部として構成され、その全体は多少排出部22側に傾斜するように設けられている。縮径部240の下面側には、この縮径部240を閉塞できるような回動式の開閉蓋機構245が設けられる。
【0093】
この例では、開閉蓋機構245を構成する蓋本体246を有し、この蓋本体246の一端、図の例では右端部が回動軸部247となされ、この回動軸部247が縮径部240の下面部241に位置するように、便器本体20に対して回動自在に軸支される。この軸支部は便器本体20に対して水密的に軸支されている。
【0094】
蓋本体246は、その周面が縮径部240の下面縁部242と当接した状態となるように付勢される。蓋本体246は下面縁部242に沿った形状をなすと共に、通常はこの下面縁部242に接触して溜まり部18内を密閉できるように、回動軸部247と下面部241の壁面との間には付勢用のバネ248が巻き付けられている。
【0095】
簡易型トイレ装置10をこのように構成した場合、排泄物が蓋本体246に落下すると、その自重によって蓋本体246の先端部側が開くので(図15参照)、排泄物は溜まり部18内に落下する。また、排泄物が落下すると蓋本体246はバネ248の作用で原位置(図14参照)に自動復帰して溜まり部18の上部が閉塞される。
【0096】
なお、図15においては、蓋本体246が閉状態においてほぼ水平となるように設けた例を示しているが、上述したように縮径部240は排出部22側に多少傾斜するように設けられているので、開閉蓋機構245を構成する蓋本体246自体を、排出部22側に傾いて取り付けるようにすれば、蓋本体246の上面に落下した排泄物を残らず、溜まり部18内に落とし込むことができる。
【実施例4】
【0097】
上述した実施例は何れも、簡易トイレ装置10と既設トイレ装置3との間だけの通信によってそれぞれに設けられた排出機構を制御するようにした例である。
【0098】
図16に示す実施例は、このような制御形態に加えて携帯端末装置400を使用し、この携帯端末装置400でも簡易トイレ装置10や既設トイレ装置3の排出機構などを制御できるようにした例である。
【0099】
そのため、携帯端末装置400は図17に示すようにCPUで構成された制御部402を有し、これには送受信部404が関連され、アンテナ406で簡易トイレ装置10や既設トイレ装置3から発信される状態信号を受信できるようになされている。制御部402では受信した状態信号を解読し、その解読内容に応じた情報が報知手段410に送られる。
【0100】
なお、この場合には簡易トイレ装置10か既設トイレ装置3かの識別を行う必要があるので、状態信号にはヘッダが付加され、ここに付加された識別子によってどのトイレ装置からの状態信号であるかを識別できるようになっている。
【0101】
報知手段410としては、ブザー412、LEDなどの表示灯414およびLCDなどの文字表示部416で構成した場合を示す。文字表示部416には状態信号の発信元が表示される。制御部402にはさらに操作部(操作キー)420からの操作信号が供給される。この操作部420では簡易トイレ装置10か既設トイレ装置3の何れかを選択して排出処理の指示が行える。この時、携帯端末装置400からの指示が優先され、他方のトイレ装置には排出処理待機の指示が送られる。
【0102】
このように携帯端末装置400を使用すると、遠隔からでもトイレ装置の使用状況を把握できるので、介護者などが利用する場合には誰がトイレ装置を使用しているかを把握できるため非常に便利である。
【実施例5】
【0103】
図1の例は、簡易トイレ装置10と既設トイレ装置3との関係が、(1対1)の関係にある。既設トイレ装置3には場合によっては複数の簡易トイレ装置10を連結して使用することが考えられる。
【0104】
その場合には図18に示すように、1台の既設トイレ装置3に対して複数台、例えば3台の簡易トイレ装置10(10A〜10C)が連結される。既設トイレ装置3から洗浄水が給水ホース12によってそれぞれの簡易トイレ装置10A〜10Cに供給される。そして、各簡易トイレ装置10A〜10Cの排出ホース14が連結された上で既設トイレ装置3の排出口114(図5参照)に連結されて使用される。
【0105】
このような、(多数対1)の構成のときは、例えば既設トイレ装置3に設けられた制御部300を親機(マスタ)として使用し、簡易トイレ装置10A〜10Cに設けられた制御部50A〜50Cをそれぞれ子機(スレーブ)として使用すればよい。排出機構に対する排出禁止処理や、その解除処理を全て制御部300側で管理することになる。
【0106】
例えば制御部50Aより状態信号が送出されたときは、制御部300から制御部50B、50Cへ使用状態信号を送信して、制御部50B、50Cが排出禁止処理を行うことで、トイレ装置の同時使用が回避される。また、既設トイレ装置3が使用されているときは、全ての制御部50A〜50Cに対して排出禁止処理を行うことで、使用中の既設トイレ装置3への汚物の排出が禁止される。したがって、トイレシステム全体の管理が容易になる。もちろん、最初に状態信号を発信したトイレ装置がマスタとなって、他のトイレ装置を管理し、制御することは可能である。この場合にはこの状態信号は他のトイレ装置に対する排出禁止指示信号となる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
この発明は、介護施設や在宅介護などの介護補助システムなどとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】簡易トイレ装置と既設のトイレ装置とを連結したこの発明に係るトイレシステムの一例を示す概念図である。
【図2】この発明に係る一方のトイレ装置である簡易トイレ装置の一例を示す要部の断面図である。
【図3】開閉蓋を構成する蓋本体の一例を示す平面図である。
【図4】蓋本体が開いた状態を示す断面図である。
【図5】この発明に係る他方のトイレ装置である既設トイレ装置の構成例を示す要部の断面図である。
【図6】給水ホースの構成例を示す図である。
【図7】排出ホースの構成例を示す図である。
【図8】逆止弁の一例を示す要部断面図である。
【図9】簡易トイレ装置に装備された制御部の一例を示す要部の系統図である。
【図10】既設トイレ装置に装備された制御部の一例を示す要部の系統図である。
【図11】図9の制御例を示すタイミングチャートである。
【図12】図10の制御例を示すタイミングチャートである。
【図13】簡易トイレ装置の他の例を示す図2と同様な断面図である。
【図14】簡易トイレ装置の更に他の例を示す図2と同様な要部の断面図である(その1)。
【図15】簡易トイレ装置の更に他の例を示す図2と同様な要部の断面図である(その2)。
【図16】この発明に係るトイレシステムの他の例を示す要部の系統図である。
【図17】携帯端末装置の一例を示す概略系統図である。
【図18】この発明に係るトイレシステムのさらに他の例を示す要部の系統図である。
【符号の説明】
【0109】
3・・・既設トイレ装置
10(10A〜10C)・・・簡易トイレ装置
18・・・溜まり部
20・・・便器本体
24,32・・・電磁弁
40・・・粉砕手段
210・・・開閉蓋機構
212・・・蓋本体
218・・・電磁ソレノイド
250,310,410・・・報知手段
290・・・制御装置
50(50A〜50C、50X)・・・制御部
264,304,404・・・送受信部
24,302・・・排出機構用電磁弁
400・・・携帯端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
簡易トイレ装置に排泄された汚物を既設トイレ装置の便器内に排出するようにしたトイレシステムにおいて、
上記簡易トイレ装置と既設トイレ装置とのそれぞれには、汚物排出機構を制御する制御部と、
上記簡易トイレ装置と既設トイレ装置との間での通信を行う通信手段とが設けられ、
上記制御部は、受信した相手方トイレ装置の使用状態に基づいて、自己の汚物排出機構を制御する
ことを特徴とするトイレシステム。
【請求項2】
上記制御部は、上記汚物排出機構の排出処理を禁止する制御処理を行う
ことを特徴とする請求項1記載のトイレシステム。
【請求項3】
上記制御部に関連して報知手段が設けられ、
この報知手段で、受信した相手方トイレ装置の使用状態が報知される
ことを特徴とする請求項1、2記載のトイレシステム。
【請求項4】
携帯端末装置が設けられ、
この携帯端末装置には、この携帯端末装置と上記簡易トイレ装置との間および上記携帯端末装置と上記既設トイレ装置との間での通信を行う送受信可能な通信手段と、
上記各トイレ装置の使用状態を表示する報知手段とが備えられた
ことを特徴とする請求項1、2、3記載のトイレシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−348535(P2006−348535A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174285(P2005−174285)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】