説明

トイレットロール

【課題】トイレに流せるとともにトイレの洗浄が行える紙管を有するトイレットロールを提供する。
【解決手段】
帯状のトイレットペーパーを紙管に巻いたトイレットロールにおいて、前記紙管を水解性とするとともに、紙管に水溶性の洗浄剤を担持させることにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺のトイレットペーパーを紙管に巻取って成るトイレットロール関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットロールでは、トイレットペーパーについては使用後にトイレに流して処分するが、トイレットペーパーをすべて使用した後にペーパーホルダーに残る紙管については、別途に一般ゴミとして廃棄処分している。
【0003】
そして、この紙管の廃棄については、トイレ個室空間にあった紙管を他人と接触する別途の空間に持ち出すことに抵抗を感ずる、或いは紙管を別途の空間に持ち出して廃棄する手間自体が面倒である、との不満を抱える使用者も多い。
【0004】
このような不満を解決すべく、紙管をトイレに流れるようにすべく水解性を持たせた商品が存在するが、トイレに廃棄できるという以上のメリットがないのが現状である。
【0005】
紙管はトイレットペーパーを巻くため、及びトイレットロールをホルダーに取り付けるといった重要な役割を担うものであるが、使用者視点では、使用後においては廃棄物として残るだけの価値のないものとの認識もあり、紙管に有用な利用法を具備させることには意義がある。
【0006】
ここで、紙管にトイレに流せる以上の利点を持たせた技術として下記特許文献1に開示されるように、紙管をトイレに流せるようにするとともに、紙管中にバクテリアを担持させ、浄化槽の水質改善が行えるようにしたものがある。
【0007】
しかし、特許文献1のものは使用者が直接的に得られるメリットではないため、遡及力がなく普及するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2705759号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、使用後にトイレに流して処分でき、しかも付加価値のある紙管を有するトイレットロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明とその効果は次記のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
帯状のトイレットペーパーを紙管に巻いたトイレットロールであって、
前記紙管を、複数の水解性原紙を積層し水溶性接着剤により一体化した紙管原紙により形成して水解性とするとともに、その各層を構成する水解性原紙の何れかに水溶性の洗浄剤を担持させたことを特徴とするトイレットロール。
【0011】
〔請求項2記載の発明〕
紙管の外面に洗浄剤が担持されている請求項1記載のトイレットロール。
【0012】
〔請求項3記載の発明〕
前記紙管原紙が3層以上の水解性原紙が積層されたものであり、その内層を構成する水解性原紙に前記洗浄剤が担持されている請求項1又は2記載のトイレットロール。
【0013】
〔請求項4記載の発明〕
紙管のトイレットペーパーが巻き掛けられる外周面に洗浄剤が担持されている請求項2記載のトイレットロール。
【0014】
〔請求項5記載の発明〕
紙管原紙が、異なる洗浄剤が担持された水解性原紙を含む請求項1〜4の何れか1項に記載のトイレットロール。
【0015】
〔請求項6記載の発明〕
水解性原紙同士を積層一体化するための水溶性接着剤中に洗浄剤を含有させた請求項1〜4の何れか1項に記載のトイレットロール。
【0016】
〔請求項7記載の発明〕
水解性原紙に担持させた洗浄剤と水解性原紙同士を積層一体化するための水溶性接着剤中の洗浄剤とが異なるものである請求項6記載のトイレットロール。
【0017】
〔請求項8記載の発明〕
前記紙管が、複数枚の帯状の紙管原紙が幅方向に一部重ねられた状態で螺旋状に巻かれているとともに重ね合わせ部において糊により接着されて形成されたものであり、その重ね合わせ部に配された糊中に洗浄剤が含有されている請求項1〜7の何れか1項に記載のトイレットロール。
【0018】
〔請求項9記載の発明〕
前記洗浄剤における洗浄成分が界面活性剤である請求項1〜8の何れか1項に記載のトイレットロール。
【0019】
〔請求項10記載の発明〕
前記洗浄剤中に、酸類及びアルカリ成分の少なくとも一方を含有する請求項1〜9の何れか1項に記載のトイレットロール。
【0020】
(作用効果)
本発明のトイレットロールでは、紙管を水解性とし、そこに水溶性の洗浄剤を担持させたので、トイレットペーパーを使用した後、紙管を水洗トイレに投入することによって洗浄剤が紙管より溶出し、トイレの便器、配管等の洗浄が図られる。
【0021】
よって、トイレットペーパー使用後に紙管をトイレ個室外に持ち出すことなく、トイレに流して簡単に処分できるとともに、トイレの清掃を行なうことができるため紙管が無駄なく利用できるようになる。
【0022】
また、特に本発明においては、紙管を、複数の水解性原紙を水溶性接着剤により積層して一体化した紙管原紙により形成して水解性とする。このようにすることで、紙管をトイレに投入した際に、紙管を構成する紙管原紙が各層の水解性原紙に迅速に分離し、トイレ内の水と接触してそこに担持された洗浄剤も迅速に溶出される。よって、良好な水解性と洗浄効果が発揮される。
【0023】
ここで、紙管との関係で洗浄剤を担持させる位置が紙管外面、すなわち紙管原紙の表面位置であると、トイレ内に紙管を投入した際に洗浄剤が瞬時に水と接触して溶解することとなり、トイレ配管のみならず、トイレの便器、特にその水溜部が形成されるトラップ部分の洗浄をも効果的に行えるようになる。かかる位置への洗浄剤の担持は、いうまでもなく紙管の外面位置になる水解性原紙の特に、当該外面となる面に洗浄剤を担持させることとすればよい。
【0024】
さらに、紙管原紙を3層以上の水解性原紙が積層されたものとして、その内層を構成する水解性原紙に洗浄剤を担持させることにより洗浄剤の溶出速度を調整することができる。すなわち、内層の水解性原紙に洗浄剤を担持させると外面に洗浄剤を担持させた場合と比較して、若干洗浄剤の溶出が遅れることになる。よって、内層の水解性原紙に洗浄剤を担持させると、トイレのトラップではなくトイレに繋がる配管において洗浄剤を溶出させることが可能となる。なお、この内層の水解性原紙への洗浄剤の担持と、上記外面における洗浄剤の担持と合わせれば、トラップと配管とを効果的に洗浄することが可能となる。また、その際に、それぞれの部位の洗浄に適した洗浄剤とすべく、外面に担持させる洗浄剤と内層を構成する水解性原紙に担持させる洗浄剤を事ならしめてもよい。
【0025】
また、トイレットロールでは、紙管内にペーパーホルダーの支持部を挿入した状態で、トイレットペーパーを引き出して使用するのが一般的であり、紙管内周面は上記支持部と摺れることになるため、紙管内周面に洗浄剤を担持させると摺れによって洗浄剤が剥離してしまうおそれがある。よって、本発明において、紙管外面に洗浄剤を担持させる場合には、好適には紙管外面のなかでも特に外周面には洗浄剤を担持させるのがよい。このように紙管外周面に洗浄剤を担持させれば、洗浄剤の剥離のおそれがなくなり、確実にトイレットペーパーを使い切った後に使用した時の紙管による洗浄効果が得られるようになる。もちろん、紙管原紙を構成する複数の水解性原紙のうち、紙管原紙の内層を構成する水解性原紙に洗浄剤を担持させた態様であっても、洗浄剤の剥離のおそれがなく、確実にトイレットペーパーを使い切った後に使用した時の紙管による洗浄効果が得られるようになる。
【0026】
また、外周面に洗浄剤を担持させる場合には、紙管内に2〜3本の指をかけて持って、紙管を湿らせることで洗浄剤を紙管外周面に溶出させて、便座や便器を清拭するといった清拭態様をも可能にする。
【0027】
ここで、水解性原紙に洗浄剤を担持させる方法としては、抄紙機等において、デンプン、CMC等の水溶性高分子とともに、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーターなどのコーターでの塗布することにより行なうことが可能である。また、抄紙機で作られた原紙に別途オフコーターで塗布してもよい。
【0028】
他方、本発明においては、各層を構成する水解性原紙に担持させる洗浄剤を相違させてもよい。配管、トラップに適した各種の洗浄剤を担持させたり、或いは溶液として混合することが困難な複数の洗浄剤を担持せしめることができるようになる。また、紙管をトイレに投入した際に、そのトラップに溜まる水に各洗浄剤を溶出させることで、各洗浄剤をトラップ内で混合させて洗浄効果を発揮させるようにすることも可能となる。
【0029】
また、本発明では、水解性原紙同士を積層一体化するための水溶性接着剤中に洗浄剤を含有させてもよい。紙管における洗浄剤含有量を多くすることができる。また、その場合に、水解性原紙に担持させた洗浄剤と水解性原紙同士を積層一体化するための水溶性接着剤中の洗浄剤とを異なるものとしてもよい。
【0030】
他方、本発明では、紙管が、複数枚の帯状の紙管原紙が幅方向に一部重ねられた状態で螺旋状に巻かれているとともに重ね合わせ部において糊により接着される形成を採り、その重ね合わせ部に配された糊中に洗浄剤が含有されているものとすることができる。
【0031】
このようにすれば、さらに多くの洗浄剤を紙管に担持させることが可能となる。また、糊中に洗浄剤を含有させたものとした場合にも、上記トイレットロール使用時におけるペーパーホルダー支持部との摺れによる洗浄剤の剥離が防止される。なお、このように接着剤中に洗浄剤を担持させることとしても、通常の紙管原紙からの紙管作成工程に変更を加えることなく製造でき、もって大幅な紙管原紙から紙管を作成する設備に大きな変更を加えることなく、洗浄剤の担持量を多くできる利点がある。
【0032】
他方、本発明において望ましい洗浄剤の成分は、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤が望ましい。便器、配管の洗浄に適しており、しかも安定的に紙管に担持させることが可能である。
【0033】
また、前記洗浄剤中に、酸類及びアルカリ成分の少なくとも一方を含有させると、トイレに付着した水垢、尿石の除去、付着防止作用が得られ、より付加価値の高い紙管となる。
【発明の効果】
【0034】
以上のとおり本発明によれば、使用後にトイレに流して処分でき、しかも付加価値のあるトイレットロール用の紙管を有するトイレットロールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るトイレットロールを説明するための図である。
【図2】本発明に係るトイレットペーパーの製造工程の説明図である。
【図3】本発明に係る紙管の製造方法を説明するための図である。
【図4】本発明に係る紙管原紙の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
「本発明に係るトイレットロールの製造例」
まず、本発明に係るトイレットロールの製造方法を図1及び図2を参照して説明する。
本発明に係るトイレットロール10の製造方法は、長尺の紙管11Lを製造する工程(A)と、ログ製造工程(B)と、裁断工程(C)を含む。
【0037】
長尺の紙管11Lを製造する工程(図1中(A))は、図2にも示すように、二枚の帯状の紙管原紙(板紙)12,12を原反ロール12A,12Aからそれぞれ繰り出しつつ、所定位置に糊付けロール13により糊30を付与し、当該糊付けされた部分を重ねつつコアワインダー14によりシャフト15に螺旋状に巻付けた後、シャフトを引き抜き、生産品種に合わせた規定長さにスリッター16にて切り揃えることで、円筒の長尺の紙管11Lを形成する。
【0038】
なお、各紙管原紙12,12は、各々違う原反を使用してもよく、例えば、一方に印刷を施したり、各々の米坪を変えたりしてもよい。本発明においても、必ずしも紙管原紙1,1は、同様のものである必要はない。
【0039】
次いで、この長尺紙管11Lの製造と平行して又はその後においては、ログ製造工程(図1中(B)にて、ログ10Rを製造する。なお、ログ10Rとは、業界においての一般用語であり、最終製品であるトイレットロール10の径と同径でありかつ幅が最終製品の複数個分ある中間製品である。
【0040】
このログ10Rの製造は、連続的に又は段階的に、長尺紙管11Lと実質的に同幅のトイレットペーパー原紙S1,S1を、ジャンボロールJR,JRから繰り出すとともに巻き付けてログ10Rを形成する。この巻き付けは、既知のワインダー装置X2が利用できる。なお、図示例は、二つのジャンボロールJR,JRからトイレットペーパー原紙S1,S1を繰り出して、重ね合わせ部51にて積層連続シートS2とした後、既知のコンタクトエンボス付与装置54及びミシン目線形成装置70にてコンタクトエンボスCEの付与とミシン目線(図示しない)の形成を行なった後、巻き取り装置75にて巻き取り2プライ構造となるようにしている。
【0041】
なお、図示の形態では、2つのジャンボロールから衛生薄葉紙を繰り出し、積層構造とした2プライ構造のトイレットペーパー原紙S2としているが、本発明においては、かかる2プライに限定されず、1プライ若しくは3プライ以上であってもよい。さらには、複数プライ構造とする場合には、各原紙の坪量や物性等は同じである必要はない。
【0042】
次いで、このようにログ10Rを製造したならば、このログ10Rを既知のログアキュームレーターX3で複数本とストックしつつ後段のログカッター設備X4へと移動させる。そして、その後に図1中(C)に示すように、既知のログカッター76でログ10Rを製品幅に裁断し、個々のトイレットロール10とする。かくして、本発明にかかるトイレットロール10,10…が製造される。
【0043】
「第1の実施形態のトイレットロール」
次いで、本発明に係る第1の実施形態のトイレットロールについて説明する。
本発明に係るトイレットロールは、図3に示すとおり、紙管11にトイレットペーパーS3が巻かれたものである。その大きさ等は、限定はされないが、概ね、幅L1が100〜115mm、直径L2が100〜120mm、巻き長さ(トイレットペーパーの全長)が18〜70m、紙管径が35〜50mmである。
【0044】
また、本発明に係るトイレットペーパーS3は、既知のものが使用できるが、JIS P 4501で規定される、ほぐれやすさの試験方法における水解性の結果が100秒以下のものとする。通常は100秒を超えると、水解性が遅く、例えば水洗トイレ等に廃棄したときに排水管に詰まるおそれがある。本発明では、紙管の水洗トイレへの廃棄を可能にすることを課題の一つとすることから、トイレットペーパーS3も水洗トイレに流せるものとする。
【0045】
トイレットペーパーS3において上記水解性を達成するには、原料スラリーの叩解度の調整、湿潤紙力剤の不使用など既知の方法により達成することが可能である。
【0046】
他方、本発明においては、図4に示すように、特徴的に、前記紙管11を構成する紙管原紙12を、複数の水解性原紙22,22を積層し水溶性接着剤25により一体化したものとして、これにより、紙管原紙12、さらに紙管11自体を水解性のものとする。さらに、その紙管原紙12の各層を構成する水解性原紙22,22の何れかに水溶性の洗浄剤を担持させる。なお、図4中、(A)は2枚(2層)の水解性原紙22,22からなる紙管原紙12を例示し、(B)は、3枚(3層)の水解性原紙22,22,22からなる紙管原紙12を例示している。なお、水解性原紙22の積層数、洗浄剤50の担持位置は、図示例に限定されるわけではない。例えば、2枚積層の紙管原紙22の水溶性接着剤25に面する部位に洗浄剤50が担持されていてもよいし、各層を構成する水解性原紙22,22…のいずれかに1枚(1層)の水解性原紙22のみに洗浄剤50が担持されている態様であってもよい。
【0047】
ここで、紙管11全体としての水解性は、上記トイレットペーパーと同様にJIS P 4501で規定される、ほぐれやすさの試験方法における水解性の結果が100秒以下であるのが望ましい。100秒を超えると、トイレに流すのに適しないものとなる。
【0048】
ここで、紙管11自体の水解性を良好とすべく、紙管原紙12を構成する水解性原紙22の坪量を20〜50g/m2程度とし、積層数は2〜4層程度とするのが望ましい。このようにすると、紙管11をトイレに投入した際に各層に迅速に分離されるとともに洗浄剤50が溶出し、水解性と洗浄効果が良好なものとなる。なお、水解性原紙22の積層一体化については、所定数の水解性原紙22の表裏面の少なくとも一方面に水溶性接着剤25を、既知の各種塗工機、印刷機により塗布した後、それらを重ね合わせ適宜のニップロール等で加圧して製造するなどすればよい。また、水解性原紙22としては、既知の抄紙機により抄紙される板紙或いはクレープ紙等が使用できる。
【0049】
ここで、紙管11の水解性を良好にすべく、さらに(1)紙管原紙12を構成する水解性原紙22を抄造する際に、原料であるパルプスラリーの叩解度を低叩解度として繊維がほぐれやすいものとする、(2)紙管原紙12を構成する水解性原紙22及び水溶性接着剤25について撥水性を高めるサイズ剤や湿潤時の紙力を増加させる湿潤紙力剤を用いないか使用量を少量とする、(3)紙管原紙12全体としての坪量を100〜220g/m2程度とする、(4)水解性原紙22同士を積層一体化する水溶性接着剤25、及び紙管原紙同士を接着する糊30を澱粉糊、PVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性の高いものとする、のが望ましい。
【0050】
なお、上記水解性原紙22の原料の叩解度については、概ね500〜600程度のCSF(カナディアンフリーネス)とするのが望ましい。CSFが、600を超えると、紙管11が強度不足となるおそれがあり、500未満だと水解性が悪化する。紙管11全体としての坪量が100g/m2未満であると製造の際、トイレットペーパーの巻き取り時の強度が十分に確保できないおそれがあり、220g/m2を超えると水解性が極めて悪化する。サイズ剤、湿潤紙力剤の使用量については、上記CSF及び坪量との関係で適宜定めることができる。
【0051】
また、水溶性接着剤25については、水解性を確保すべく、0.1g/m2〜5.0g/m2程度の付与量とするのが望ましい。この範囲であると水溶性接着剤自体の水溶性が十分に発揮されるとともに、紙管11をトイレに投入した際に、紙管11を構成する紙管原紙12に迅速に分解され紙管11の水解性が良好なものとなる。
【0052】
また、紙管原紙12同士を接着する糊30についても、水解性を良好にすべく、0.1g/m2〜5.0g/m2程度の付与量とするのが望ましい。
【0053】
ここで、紙管11の水解性を良好にすべく、紙管原紙12を多数の孔を有するものとする、ミシン目線を付与して使用者がトイレットペーパーS3の使用後に紙管11を細かく裁断してトイレに流せる態様としてもよい。
【0054】
他方、本発明において、水解性原紙22に洗浄剤50を担持させるには、抄紙機における乾紙形成後の工程において当該乾紙に対して、或いは抄紙機で製造した原紙に対して、洗浄剤溶液或いは洗浄剤スラリーを付与手段によって付与すればよい。付与手段は、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、カーテンコーター等の各種塗工機、フレキソ印刷機、グラビア印刷機、インクジェット印刷機等の印刷機、スプレー塗布装置が例示できる。
【0055】
他方、本発明においては水解性原紙22同士を接着する接着剤25中に洗浄剤50を含有させてもよい。この場合、水解性原紙22に水溶性接着剤25を塗布等した後、その水溶性接着剤25上に接着力が過度に低下しない程度に粉末状の洗浄剤50を散布させて固着させるようにしようにしてもよい。このようにすれば比較的多量の洗浄剤50を紙管11に担持させることができ、もって、紙管11をトイレに投入した際の洗浄剤の溶出速度を速められるとともに、洗浄効果も高いものとなる。
【0056】
ここで、洗浄剤50は、既知の便器、便座等の清掃用途、清拭用途に用いられる既知の水溶性の洗浄剤が利用できる。好ましくは、安定性、安全性の高く、また洗浄効果が高い、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤の界面活性剤である。
【0057】
なお、紙管原紙12を構成する複数の水解性原紙22に洗浄剤50を担持させる場合には、各水解性原紙22に担持させる洗浄剤50の種類は同一である必要はない。適宜、複数種の洗浄剤を用いることができる。また、水解性原紙同士を接着する水溶性接着剤中にも洗浄剤を含有させる場合、かかる水溶性接着剤中に含有させる洗浄剤と、水解性原紙に担持させる接着剤の種類を異ならしめてもよい。なお、紙管を形成すべく紙管原紙同士を接着する糊に洗浄剤を含有させる場合においても同様である。
【0058】
また、洗浄剤中には、クエン酸などの植物酸、重曹等のアルカリ剤を含有させることができる。クエン酸や重曹を含有させることで便器等に付着した水垢、尿石の除去性を高めることができる。また、これら酸、アルカリ剤のみを洗浄剤50としてもよい。
【0059】
さらに、洗浄剤中には多量の水との反応によって発泡する発泡成分を含有させてもよい。発泡効果による洗浄性の向上と紙管11の分解性が高まる。
【0060】
他方、本発明における水解性原紙に対する洗浄剤の担持量は、特に限定はされないが、紙管全体として0.05g以上の担持量となるようにするのがよい。0.05g未満であると洗浄効果が得られないおそれがある。好適には、0.5〜5.0gである。
【0061】
以上の本形態のトイレットロール10では、トイレットペーパーS3をすべて使いきった後に残る紙管11をトイレに投入することで、トイレの洗浄が行えるものとなる。
【0062】
「第2の実施形態のトイレットロール」
次いで、本発明に係る第2の実施形態のトイレットロールについて説明する。
本形態は、第1の実施形態のトイレットロールにおいて、特に、紙管外面(外周面及び内周面)に洗浄剤を担持させたものである。
【0063】
本形態では、紙管原紙12を製造する際に、その表層を構成する水解性原紙22の一方面、或いは両面に洗浄剤を塗布し、その塗布面が紙管原紙12の表面となるようにして積層一体化するようにすればよい。また、紙管原紙形成後に表裏面に洗浄剤50を塗布してもよい。
【0064】
本形態では、紙管外面に洗浄剤が担持されているので、トイレに投入した際に瞬時に洗浄剤が溶出し、トイレ配管のみならず水溜まり部であるトラップ部分の洗浄も効果的に行なうことができる。
【0065】
なお、本形態では、特に、紙管11のトイレットペーパーS3が巻き掛けられる外周面のみに水溶性の洗浄剤が担持させてもよい。この場合、作用効果の欄でも述べたとおり、紙管内周面に担持させた際におけるペーパーホルダーの支持部との摺れによる洗浄剤の離脱のおそれがなくなる。
【0066】
「第3の実施形態のトイレットロール」
次いで、本発明に係る第3の実施形態のトイレットロールについて説明する。
本第3の実施形態は、上記のトイレットロールの製造方法例で示した、糊30に洗浄剤を含有させた形態である。すなわち、紙管11を複数枚の帯状の紙管原紙が幅方向に一部重ねられた状態で螺旋状に巻き、その重ね合わせ部において糊により接着したものとして、その重ね合わせ部に配された糊中に洗浄剤を含有した形態である。
【0067】
本形態では、既存設備で簡易に洗浄剤担持量を増加させることができる利点がある。
【0068】
以上、本発明に係るトイレットロール10の第1から第3の形態を説明したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。また、第1の実施形態〜第3の実施形態を重畳的に採用することができる。
【符号の説明】
【0069】
X2…ワインダー装置、X3…ログアキュームレーター、X4…ログカッター設備、10…トイレットロール、10R…ログ、11L…長尺紙管、11…紙管、12…紙管原紙、12A…紙管用原紙原反、13…糊付けロール、14…コアワインダー、15…シャフト、16…スリッター、S1,S2…トイレットペーパー原紙、S3…トイレットペーパー、51…重ね合わせ部、54…コンタクトエンボス付与装置、70…ミシン目線形成装置、75…巻き取り装置、76…ログカッター、(A)…紙管製造工程、(B)…ログ製造工程、(C)…裁断工程、30…糊、22…水解性原紙、25…水溶性接着剤、50…洗浄剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のトイレットペーパーを紙管に巻いたトイレットロールであって、
前記紙管を、複数の水解性原紙を積層し水溶性接着剤により一体化した紙管原紙により形成して水解性とするとともに、その各層を構成する水解性原紙の何れかに水溶性の洗浄剤を担持させたことを特徴とするトイレットロール。
【請求項2】
紙管の外面に洗浄剤が担持されている請求項1記載のトイレットロール。
【請求項3】
前記紙管原紙が3層以上の水解性原紙が積層されたものであり、その内層を構成する水解性原紙に前記洗浄剤が担持されている請求項1又は2記載のトイレットロール。
【請求項4】
紙管のトイレットペーパーが巻き掛けられる外周面に洗浄剤が担持されている請求項2記載のトイレットロール。
【請求項5】
紙管原紙が、異なる洗浄剤が担持された水解性原紙を含む請求項1〜4の何れか1項に記載のトイレットロール。
【請求項6】
水解性原紙同士を積層一体化するための水溶性接着剤中に洗浄剤を含有させた請求項1〜4の何れか1項に記載のトイレットロール。
【請求項7】
水解性原紙に担持させた洗浄剤と水解性原紙同士を積層一体化するための水溶性接着剤中の洗浄剤とが異なるものである請求項6記載のトイレットロール。
【請求項8】
前記紙管が、複数枚の帯状の紙管原紙が幅方向に一部重ねられた状態で螺旋状に巻かれているとともに重ね合わせ部において糊により接着されて形成されたものであり、その重ね合わせ部に配された糊中に洗浄剤が含有されている請求項1〜7の何れか1項に記載のトイレットロール。
【請求項9】
前記洗浄剤における洗浄成分が界面活性剤である請求項1〜8の何れか1項に記載のトイレットロール。
【請求項10】
前記洗浄剤中に、酸類及びアルカリ成分の少なくとも一方を含有する請求項1〜9の何れか1項に記載のトイレットロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−22306(P2013−22306A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160980(P2011−160980)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】