トイレ装置
【課題】サニタリー用品などでも細かく粉砕できるようにする。
【解決手段】3つに分割されたうちの中間便器部100Bに粉砕手段70が固定される。粉砕ユニット60は互いに噛合する回転刃74,76からなる粉砕手段70を有する。その回転軸70a,70bは取り付け部材80に取り付けられる。取り付け部材は軸支手段90,92と、これを支持する部材(中間便器部)で構成される。排泄物やサニタリー用品などは回転刃によって切断・粉砕される。粉砕物は溜まり部底部に落下する。粉砕処理中あるいは粉砕処理後に、開口側から洗浄水を流し込むことで、粉砕されたサニタリー用品はこの洗浄水と共に排出口から下水管側に排出される。粉砕手段を保守・点検等のときには中間便器部全体を便器から取り外す。取り外したときは、中間便器部と同一形状の代替部材が上部便器部と底部便器部との間に装着固定された状態で使用される。
【解決手段】3つに分割されたうちの中間便器部100Bに粉砕手段70が固定される。粉砕ユニット60は互いに噛合する回転刃74,76からなる粉砕手段70を有する。その回転軸70a,70bは取り付け部材80に取り付けられる。取り付け部材は軸支手段90,92と、これを支持する部材(中間便器部)で構成される。排泄物やサニタリー用品などは回転刃によって切断・粉砕される。粉砕物は溜まり部底部に落下する。粉砕処理中あるいは粉砕処理後に、開口側から洗浄水を流し込むことで、粉砕されたサニタリー用品はこの洗浄水と共に排出口から下水管側に排出される。粉砕手段を保守・点検等のときには中間便器部全体を便器から取り外す。取り外したときは、中間便器部と同一形状の代替部材が上部便器部と底部便器部との間に装着固定された状態で使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はサニタリー用品をも粉砕処理できるようにした粉砕ユニットを備えたトイレ装置に関する。詳しくは、粉砕ユニットを構成する粉砕手段として回転刃を多数備えた回転刃部材を用い、これらを互いに噛合させながら駆動することで、サニタリー用品を効率よく粉砕できるようにすると共に、粉砕ユニットを便器から取り外してもトイレを使用できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
生理用品などで代表されるサニタリー用品は、使用後直接水洗トイレなどに投棄すると、排水管などが詰まったりするおそれがある。そのため、サニタリー用品などは使用後トイレに備え付けられた専用のゴミ箱に投棄するか、ポリ袋などに入れてゴミ回収日まで保管し、燃えるゴミとして廃棄処分されるのが普通である。
【0003】
しかし、日常使用している水洗トイレ(固定式トイレ装置)を用いてサニタリー用品も排出処理できれば非常に便利である。また、最近では、トイレ用のティッシュペーパーを始めとしてベビー用の紙おむつや、成人介護用の紙おむつなどが普及しているが、これらの紙おむつなどもサニタリー用品と同じように、同じ固定式のトイレ装置を用いて処理できれば非常に便利である。
【0004】
看護用や介護用として使用される可搬型の簡易トイレ装置にあっても、これが水洗式であるような場合には、固定式トイレ装置と同じくサニタリー用品などをも処理できれば好ましい。
【0005】
このうち可搬型の簡易トイレ装置にあっては、汚物を粉砕処理してから排出する技術が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−8442号公報
【特許文献2】特開2001−275885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1や特許文献2に開示された簡易トイレ装置では、何れも汚物などを処理する手段として攪拌手段が使用されている。便器の溜まり部内に設置された攪拌手段を駆動することで、汚物を粉砕してから排出するようにしているが、汚物はともかくとして、上述した紙おむつなどを含むサニタリー用品についてはこれを粉砕することが困難になる。溜まり部内を攪拌するだけでは十分ではないからである。したがって、この可搬型の簡易トイレ装置に採用されている技術をそのまま固定式のトイレ装置に転用することもできない。
【0008】
また、溜まり部内に設置される攪拌手段などは汚れ易いので、衛生上定期的に清掃することが好ましい。上述した簡易トイレ装置では、溜まり部自体が狭いので、清掃しずらい。固定式のトイレ装置に応用した場合でも、攪拌手段は便器に固定されているので、簡単には清掃できない。
【0009】
もちろん、攪拌手段が便器に据え付けられているので、攪拌手段が故障したようなときは、簡単には修理できず、修理中はトイレが使用できなくなってしまう。できれば、攪拌手段を取り外しても、普通通りトイレを使用できた方が好ましい。
【0010】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、特に2つの回転刃を互いに噛み合わせた構成の粉砕手段を用いることで、紙おむつなどを含めたサニタリー用品を確実に粉砕処理できるようにすると共に、粉砕手段を含めた粉砕ユニットを便器から取り外しても、普通通りのトイレ装置として使用できるようにしたトイレ装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載したこの発明に係るトイレ装置は、
底部が溜まり部となされた便器と、
上記溜まり部を横切るように取り付けられ、上記便器に対して着脱自在な粉砕ユニットとで構成され、
上記粉砕ユニットは、互いに噛合し合う少なくとも一対の回転刃部材で構成された粉砕手段と、その取り付け部材とを有し、
上記回転刃部材は、同軸上に所定の間隔を保持して設けられた複数の回転刃で構成される
ことを特徴とする。
【0012】
この発明では、便器の溜まり部を横切って塞ぐように粉砕ユニットが取り付けられる。粉砕ユニットは粉砕手段とその取り付け部材とで構成される。便器は、上部便器部と、底部便器部とその間に位置する中間便器部とで構成される。中間便器部は上部便器部と底部便器部とにビスなどの固定部材を使用して水密的に固定される。粉砕ユニットの取り付け部材として中間便器部が使用される。
【0013】
粉砕手段は、互いに噛合する少なくとも第1および第2の回転刃部材を有する。これらの回転刃部材は、同軸上に所定の間隔を保持して設けられた複数の回転刃で構成される。取り付け部材の外周面には、第1および第2の回転刃部材の駆動手段が配設される。粉砕ユニットに対しては代替部材を装着できるようになされる。したがって、中間便器部を上部便器部と底部便器部との間に取り付け固定することで、便器の溜まり部内に粉砕手段が回転駆動自在に備え付けられたことになる。
【0014】
上部便器部側から投下されたサニタリー用品は第1の回転刃部材と第2の回転刃部材との間に掻き込まれることで、サニタリー用品は複数の回転刃によって切断されながら粉砕される。回転刃としてクロスカット刃を使用する場合には、この回転刃によって細かく裁断された状態で粉砕される。
【0015】
粉砕されたサニタリー用品は回転刃部材の下側(溜まり部底部)に落下する。したがって粉砕処理中あるいは粉砕処理後に、上部便器部側から適量の洗浄水を流し込むことで、粉砕されたサニタリー用品はこの洗浄水と共に便器の排出口から排水管(下水管)側に排出される。
【0016】
粉砕手段を清掃したり、修理するときは、中間便器部全体を便器から取り外す。中間便器部を取り外した状態ではトイレが使用できなくなるので、中間便器部と同一形状となされた代替部材が上部便器部と底部便器部との間に装着固定される。こうすることで、通常の水洗トイレとして使用することができる。取り外された粉砕ユニットは、清掃するなり、修理してから、代替部材と交換される。代替部材には粉砕手段は装備されてはいない。
【0017】
便器をこのように3分割した構成としないでも、粉砕ユニットの取り外しは可能である。例えば、溜まり部の一方の側壁に粉砕ユニットを装着できる装着孔を設け、他方の側壁に粉砕ユニットを支持する支持部を設ける。装着孔側から粉砕ユニットを水密的に装着固定することで、粉砕手段を回転駆動自在に溜まり部内に設置することができる。
【0018】
粉砕ユニットを取り外すときは、装着孔を閉塞する代替部材(パッキン材)を用いる。この代替部材を利用することで、粉砕ユニットを取り外した状態でも通常のようにトイレを利用できる。
【0019】
トイレ装置は、通常の固定式となされたトイレ装置(水洗トイレ)や可搬型の簡易トイレ装置に適用できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明では、回転刃を互いに噛み合わせた粉砕手段を含む粉砕ユニットを便器に着脱自在に取り付けられるようにすると共に、粉砕ユニットを取り外した部分に代替部材を装着できるようにしたものである。
【0021】
これによれば、紙おむつなどを含めたサニタリー用品を確実に粉砕処理できるので、サニタリー用品処理装置などの特別な処理装置をなくすことができる。また、粉砕手段を含めた粉砕ユニットを便器から取り外せるので、粉砕手段の清掃や修理が容易になると共に、粉砕ユニットを取り外した状態でもトイレを使用することができるので、日常の生活上の不便を払拭できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
続いて、この発明に係るトイレ装置の好ましい実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
この発明に係るトイレ装置は、家庭用、業務用を問わず、現在使用されている洋式で水栓式のトイレ装置(固定式トイレ装置)の全てにその代替物として、あるいは新規設置分として適用できる。固定式トイレ装置の他に、介護用あるいは看護用として利用できる可搬型の簡易トイレ装置であって、水洗式であれば該簡易トイレ装置にもこの発明を適用できる。
【実施例1】
【0024】
図1はこの発明に係るトイレ装置を固定式トイレ装置に適用した場合を示す。このトイレ装置は洋式の便器100を備える。便器100は、複数に分割され・組み立てられて使用される分割方式の便器であって、上部便器部100A、底部便器部100Cおよびこれらの間に位置する中間便器部100Bとで構成される。便器100はプラスチック材や陶器などで構成される。
【0025】
上部便器部100Aは開口部を有し、便座110が位置する。底部便器部100Cが便器に設けられる溜まり部のうち底部側を構成し、中間便器部100Bが溜まり部を構成する。
【0026】
上部便器部100Aは両端が開口され、漏斗状をなす筒体であり、中間便器部100Bは両端が開口された筒体であり、底部便器部100Cは有底筒状体で、排水管に接続されるトラップ用の排出口が設けられている。
【0027】
これら複数の便器部100A〜100Cはビスなどの固定手段によって水密的に取り付け固定される。そのため、上部便器部100Aの下端面には固定用のフランジ102が一体成形され、このフランジ102と対峙するように中間便器部100Bの上端面にもフランジ104が一体成形される。同じように、中間便器部100Bと底部便器部100Cとの間にもそれぞれ対応するフランジ106,108が設けられ、図1のように組み立てた状態で、ビスなどの固定手段およびパッキン材(図示はしない)によって相互が水密的に取り付け固定される。
【0028】
便器100は組み立てられた状態で使用されるため、図2に示すように便器100に供給する洗浄水用のタンク(水洗タンク)122と便器100とは非接触状態で据え付けられる。そのため取り付け台124を用いて水洗タンク122が固定される。
【0029】
この発明では、便器100内に粉砕ユニット60を備える。粉砕ユニット60は図3に示すように粉砕手段70とその取り付け部材80で構成される。粉砕手段70は、図4に示すように、互いに噛合し合う関係に配置された第1および第2の回転刃部材70A,70Bからなり、その両端が回転自在に取り付け部材80に固定される。取り付け部材80としてこの例では中間便器部100Bが使用される。したがって、第1および第2の回転刃部材70A,70Bはこの中間便器部100Bを横切るように配置される。
【0030】
図4に示すように、第1の回転刃部材70Aは、その回転軸70aに複数の回転刃74(74a、74b・・・)が所定の間隔を保持して配列される。第2の回転刃部材70Bも同様に構成され、その回転軸70bに同じ数か、1個多い回転刃76(76a,76b,・・・)が配列されて構成され、回転刃74と76とは互い違いとなるように配置される。回転刃74,76の大きさや設置すべき個数などは、粉砕ユニット60の収容スペースによって変わる。
【0031】
図4の図示状態において、その上端側が矩形状をなし、下端側がほぼ馬蹄形をなす中間便器部100Bを使用する場合には、3〜5枚の回転刃を使用してそれぞれの回転刃部材70A,70Bが構成される。図4では3枚の回転刃で構成した場合である。
【0032】
ここで、互いに隣り合う回転刃74と76とは完全に噛み合う状態では配置されていない。それは、粉砕物は汚物、トイレットペーパーの他に、場合によっては生理用品や、紙おむつなどのサニタリー用品などが考えられる。これらの粉砕対象物はある程度の厚みがあることから、サニタリー用品をも切断し易くするため、これらの厚みを考慮して図3および図4に示すように、隣り合う回転刃74と76との間隔や、回転軸70a,70bまでの対向距離が設定される。
【0033】
回転刃74,76としては、先端部が刃状となっている円盤状の回転刃や、その周面部に尖端を持った楕円状の回転刃(いわゆるクロスカット刃)などを使用することができる。前者の回転刃よりも後者の回転刃の方が、短冊状に細かく裁断できる。
【0034】
図6は後者の回転刃74の一例を示すもので、この例ではほぼ180°対向する位置に一対の尖端刃75aを有する。尖端刃75aは回転方向aに向かって尖端刃75aの端面が対峙するような刃形状をなす。他方の回転刃76においても同じ構造の尖端刃77aを有する(図3、図4参照)。
【0035】
図3および図4に示すように、複数の回転刃74を回転軸70aに取り付ける場合、尖端刃75aの取り付け位置は、順次所定角度(60°程度)だけ回転位相(取り付け角)がずれるように取り付け固定される。他方の回転刃76にあっても順次所定角度だけ回転位相がずれた状態で回転軸70bに取り付け固定される。したがって、尖端刃75a,77a同士が互いに対峙した状態で少許の間隙を保持しながら回転駆動される。実際には回転刃74と76とは噛み合った状態で駆動される訳ではないが、汚物やサニタリー用品などの粉砕対象物を介在させた状態では、回転刃74と76とが噛み合うことになるので、粉砕対象物を細かく裁断することができる。
【0036】
なお、図示はしないが、粉砕手段70の上方に粉砕対象物を粉砕手段70側に掻き込むための掻き込み手段を配置することもできる。掻き込み手段は、掻き込み刃を有する複数の回転体が配された、一対の掻き込み用回転部材で構成することができる。
【0037】
また、回転刃部材70A、70Bの下側に、回転刃74と回転刃74(回転刃76と76)との間に絡みついた粉砕物を掻き落とすための掻き落とし手段を設けることもできる。掻き落とし手段は、回転刃の間に入り込む櫛歯を有する板体などを利用できる。
【0038】
上述した粉砕手段70の取り付け部材80としては、この例では上述したように中間便器部100Bが使用される。中間便器部100Bは図3および図4に示すように、ほぼ馬蹄形をなす筒体であって、図4のように左側壁78aと右側壁78bとに差し亘って粉砕手段70を構成する回転軸70a、70bが取り付けられる。そのため、この例では左側壁78aの所定位置には回転軸取り付け用の凹部79aが穿設され、他方この凹部79aと対峙する右側壁78bには回転軸装着用の透孔(装着孔)79bが穿設される。
【0039】
凹部79aには回転軸70a、70bに対する軸支手段90が嵌着される。軸支手段90は図4に示すように、回転軸70a,70b用の軸受け部90a,90bと、その支持部材90cとで構成される。支持部材90cは軸受け部90a,90bを共通に支持する部材であって、左側壁78aに対して水密的に装着できるような材質が使用される。この例では比較的硬質のゴム材かプラスチック材で成形されており、この支持部材90cを取り付け用凹部79aに嵌め込むことで、回転軸70a,70bの左端部側が中間便器部100Bの左側壁78aに固定される。
【0040】
回転軸70a,70bの他端部側も軸支手段92によって軸支される。軸支手段92も回転軸70a,70b用の軸受け部92a,92bと、その支持部材92cとで構成される。支持部材92cは軸受け部92a,92bを共通に支持する部材であって、軸支手段90の場合と同じく右側壁78bの装着孔79bに対して水密的に装着できるような材質が使用される。この支持部材92cを取り付け用装着孔79bに嵌め込むことで、回転軸70a,70bの右端部側が中間便器部100Bの右側壁78bに固定される。この場合、念のため支持部材92cはネジなどの固定手段によって右側壁78bに固定されている。
【0041】
右側壁78bの外側には、図3、図4および図5にそれぞれ示すように、回転軸70a,70bを駆動するための駆動手段130が設けられる。そのため、それぞれの回転軸70a、70bには互いに噛合する歯車97a、97bが取り付けられると共に、この例では一方の回転軸70a側に取り付けられたプーリ132を介して駆動モータ138からの回転力が伝達される。そのため、駆動モータ138側のプーリ134と、回転軸70a側のプーリ132とがベルト136によって連結される。
【0042】
駆動手段130は、外部に露呈しないように矩形状をなすケース150によってカバーされている。駆動手段130をこのように中間便器部100Bの右側壁78bの外面側に集約することで、取り付け部材80を含めた粉砕手段70とその駆動手段130全体を中間便器部100Bと共に取り外すことができる。したがって中間便器部100Bを便器本体から取り外すことで、粉砕手段70の保守・点検、交換、修理を始めとして、その駆動手段130の保守・点検、交換や修理などを行うことができる。
【0043】
なお、このように中間便器部100Bを便器本体から取り外したときには、便器100を使用することができなくなってしまう。この不便さを解消するため、
図7に示すように、中間便器部100Bの代替部材として粉砕手段70や駆動手段130のない補助便器部140が代替部材として用意される。
【0044】
この補助便器部140はその外形および大きさは中間便器部100Bと全く同じであって、馬蹄形の筒体で構成されると共に、その上下に取り付け用のフランジ142,144を備える。したがって中間便器部100Bを取り外したときは、この中間便器部100Bの代わりに補助便器部140が代替品として据え付け固定される(図7参照)。こうすることで、粉砕対象物に対する粉砕機能はないが、通常の便器として使用できるので、日常生活上の不便さは解消される。この補助便器部140は、中間便器部100Bの取り外し時、修理メーカなどから提供されるものとすれば、ユーザ側で常備する必要はない。
【0045】
上部便器部100A内には、漏斗状をなし、その下側の開口端面がほぼ矩形状をなす投下制限筒152が設けられる。投下制限筒152の下側開口面を絞ることで、上部便器部100Aの開口から投下されたサニタリー用品などが粉砕手段70の中央部側に落下するようになり、サニタリー用品などを効率よく粉砕できるようになる。便器内で使用される洗浄水は、この上部便器部100A側から供給されるものであるから、投下制限筒152の内周面にサニタリー用品などが張り付いたとしても、洗浄水によって粉砕手段70側に流し込むことができる。
【0046】
図8はトイレ装置を駆動するための制御系160の一例を示す。この例ではCPUで構成された制御部161を有し、この制御部161にはトイレ装置に設けられた電源スイッチ162と粉砕スイッチ164の各制御信号が供給される。電源スイッチ162および粉砕スイッチ164は何れも温水シャワーを備えた水洗制御部の操作パネル(何れも図示せず)に装備することができる。この場合には電源スイッチ162は水洗制御部の電源スイッチが共用される。粉砕スイッチ164は駆動モータ138を駆動制御するためのスイッチである。
【0047】
制御部161からの制御信号に基づいて、この例では駆動モータ138と、洗浄水を供給するための給水用電磁弁166が所定のタイミングで制御される。
【0048】
図9にそのタイミングチャートの一例を示す。図9は電源スイッチ162を投入した後のタイミングチャートを示す。排便終了後や、サニタリー用品投入後に粉砕スイッチ164が操作される(図9A)。粉砕スイッチ164が投入されると駆動モータ138が駆動されるため、その回転力が図3などに示す伝達系を介して粉砕手段70に伝達されて、粉砕手段70が回転駆動される(図9B)。
【0049】
粉砕手段70は多数の回転刃によって構成されているので、汚物は回転刃74と76との間に食い込まれることで、噛合する回転刃74,76同士の作用で、短冊状に裁断される。同じく、投下されたサニタリー用品(上述したように紙おむつなどを含む)も、回転刃74と76との間に食い込まれることで、サニタリー用品は噛合する回転刃74,76同士の作用で、短冊状に裁断される。回転刃はクロスカット刃であるので、短冊状に裁断されたサニタリー用品はさらに細かく裁断されて粉砕される。
【0050】
粉砕処理時間T1が経過する前の所定時間、この例では粉砕処理が開始されてから所定時間ΔT1後に給水用の電磁弁166が作動する(図9C)。給水用電磁弁166の作動により投下制限筒152に案内された粉砕水は中間便器部100Bの中央部に集中するから、粉砕されたサニタリー用品は水分を含んだ状態で底部便器部100C側に落下する。粉砕された粉砕物は底部便器部100Cに設けられた溜まり部109内に滞留してから排出口109a側に排出される。この滞留によって粉砕されたサニタリー用品が多少軟化するから、粉砕されたサニタリー用品の排出がスムーズになる。
【0051】
汚物以外にベビー用品から成人用品までを考慮すると、サニタリー用品の大きさがまちまちであることから、粉砕処理時間T1や給水時間T2は比較的長目に選定される。この例では、所定時間T1,T2とも、10〜20秒位に設定されている。これらの時間T1,T2を外部から調整できるように構成することもできる。例えば、外部に設けた調整ボタンによって「短、中、長」のような3段階に切り替えられるようにすることも可能である。給水タイミングは、図9Dのように粉砕処理が終了した時点から開始することも可能である。
【0052】
便器100には通常所定の水量が洗浄水として貯留している。この洗浄水は通常底部便器部100C内を満たすように貯留され、汚物などを排水管側に排出し易くしているが、この例でも貯留するのが好ましい。この場合、汚物やサニタリー用品などを粉砕し易くするために、図3に示すように、粉砕手段70を満たすように洗浄水が貯留されていた方が好ましい。その場合、中間便器部100Bを取り外すときは、少なくとも中間便器部100B内に貯留されている洗浄水はポンプなどでくみ上げてから行うことは言うまでもない。
【実施例2】
【0053】
図10に実施例2を説明する。実施例1では、粉砕手段70の取り付け部材80として中間便器部100Bそのものを使用した場合を例示した。すなわち、この場合の取り付け部材80は中間便器部100Bを利用して、ここに粉砕手段70の軸支手段90,92を取り付けた場合である。そのため、便器100を3つに分割した。
【0054】
実施例2において使用される便器100は非分割型である。つまり、通常の便器が使用される。ただし、便器100の内部構成は若干異なる。便器100のうち溜まり部109に相当する部分に、粉砕ユニット60を付設する必要があるからである。
【0055】
粉砕ユニット60は、上述したように粉砕手段70とその取り付け部材80とで構成される。粉砕手段70は便器100に対して着脱自在に構成される。したがってこの例では、粉砕手段70の軸支手段90,92そのものが粉砕手段70に対する取り付け部材80として機能する。
【0056】
そのため、図10に示すように、一体成形された便器100のうち溜まり部109付近の側壁のうち、左側壁98aには粉砕手段70の回転軸70a、70bを支持するための支持部としての取り付け用凹部99aが穿設される。この取り付け用凹部99aと対峙する右側壁98bには一対の回転軸70a、70bを取り付けるための装着孔99bが穿設される。
【0057】
一対の回転軸70a,70bの左端側には軸支手段90が設けられ、この軸支手段90が取り付け用凹部99aに嵌着されることで、左側壁98aに取り付け固定される。同様に、一対の回転軸70a,70bの右端側にも軸支手段92が設けられ、この軸支手段92が装着孔99b内に水密的に装着固定される。これによって、粉砕手段70は左右側壁98a、98bに取り付け固定されたことになる。
【0058】
また、粉砕手段70そのものを便器100に対して着脱自在とするため、装着孔99bは、粉砕手段70の外形よりも一回り大きな透孔として形成される。これによって粉砕手段70自体を便器100に対して挿脱できるようになる。この例では、軸支手段90,92自体も粉砕手段70と一体的に挿脱される場合を示す。
【0059】
このように便器100の一方の側壁98bに装着孔99bを穿設し、対する他方の側壁98aに軸支手段90を固定する凹部99aを設けることで、粉砕手段70を便器100に対して着脱自在に取り付けることができる。粉砕ユニット60を取り外したときは、便器100を使用できるようにするため、装着孔99bを閉塞する代替部材(パッキン材)が装着固定される。
【0060】
粉砕ユニット60を取り外すことができるので、粉砕手段70の保守・点検や、交換を簡単に行うことができる。粉砕手段70は溜まり部109内に位置しているので、粉砕手段70を取り外すときは、貯留されている洗浄水を抜く作業が必要であることは言うまでもない。
【実施例3】
【0061】
上述した実施例1および実施例2は、何れもこの発明を固定式のトイレ装置に適用した。この発明はさらに可搬型の簡易トイレ装置にも適用できる。この種簡易トイレ装置にあっても、その内部に粉砕手段を設ける場合には、粉砕手段を取り外したりする必要があるからである。
【0062】
図11はこの発明を適用できる可搬型簡易トイレ装置10の一例を示す要部断面図である。この可搬型簡易トイレ装置10は便器本体20を有する。便器本体20は通常の水洗式トイレ(洋式トイレ)とほぼ同じ漏斗状の断面形状をなすが、その全体形状は箱型として構成される。
【0063】
便器本体20を軽量化するため、この例では便器本体20はプラスチックによる成型品であるが陶器等の他の素材を使用して成形してもよい。便器本体20の上部開口部側には便座21が位置すると共に、この便座21および上部開口部を閉塞するような便蓋23が設けられている。
【0064】
便器本体20の底部がトラップ水(溜まり水)や汚物の溜まり部18となる。この溜まり部18は上述した溜まり部109に相当する。溜まり部18に連通して断面が略「へ」の字状をなす排出部22が設けられ、排出口27に排出ホース14が連結される。排出口27は上述した排出口109aに相当する。便器本体20の背面部20bに連結部26が設けられると共に、便器本体20の内部であって、開閉弁として機能する電磁弁24が連結部26に近接して設けられている。
【0065】
電磁弁24は、溜まり部18内のトラップ水(汚物を含んだ水)を便器外に排出するときだけ開くように制御され、トイレを使用していないときは閉じられている。漏水を防止するためである。この電磁弁24は漏水防止の他に、圧送手段を構成するエアコンプレッサ(後述する)を使用して溜まり部18内を加圧するときの圧縮空気の漏止を防止する機能もある。
【0066】
便器本体20の上部近辺で、排出部側の壁面18aには洗浄水の給水口28が設けられている。本体背面部20bに設けられた連結部34とこの給水口28との間には連結管30が配される。連結管30は分岐管が使用され、給水口28に向かう連結管30に洗浄水を制御するための電磁弁32が取り付けられている。連結部34に連結される給水ホース12からの給水をこの電磁弁32によって制御できるようにするためである。
【0067】
分岐された連結管30にも電磁弁33を介して洗浄ホース(洗浄管)240が連結されている。洗浄ホース240の先端部は溜まり部18のトラップ水の水面よりも上側に突出するように設けられている。この洗浄ホース240による注水(実際には噴射)によって、後述するように溜まり部18内と開閉蓋212の裏面の洗浄が行われる。
【0068】
なお、給水口28と壁面18aとの間にはゴム状の漏水防止管29が介挿され、洗浄ホース240が貫通する溜まり部18にも漏水防止管242が介挿され、外部への漏水の防止を図っている。
【0069】
溜まり部18の底部には排泄物等の粉砕手段60が設けられる。粉砕手段60は上述したように粉砕手段70と、この粉砕手段70を便器20に取り付ける取り付け部材とで構成される。図11では、粉砕手段70を構成する回転刃74,76が図示されている。取り付け部材80は便器20の側壁に設けられるため、取り付け部材は図示されていないが、この場合の取り付け部材は実施例2と同じく粉砕手段70のみを取り付け、取り外しできるように構成されている。したがって、便器20の一方の側壁にのみ装着孔が穿設されている。溜まり部18内に落下した汚物(排泄物など)やトイレットペーパーなどが粉砕手段70によって細かく粉砕され、粉砕された流状物はトラップ水と混合して排出される。
【0070】
底面板20cの内側にはCPUなどで構成された制御部50(上述した制御部161に相当する)が配される。上述した排出用電磁弁24、給水用電磁弁32、33などが、制御部50によって所定のタイミングで所定の時間だけ制御される。制御部50用の電源スイッチ52は本体背面部20bに設けられ、本体上面部であって、便蓋23の下面には開閉スイッチ55(上述した粉砕スイッチに相当する)が設けられている。
【0071】
この簡易トイレ装置10はさらに以下の構造を有する。図11に示すように、便器本体20における溜まり部18の上部であって、給水口28よりも下側の所定位置には、溜まり部18に所定の圧縮空気を送給するための粉砕物用圧送手段200が設けられる。この溜まり部18の上部であって、圧送手段200の取り付け位置よりも若干上部側に縮径部230が設けられる。そしてこの縮径部230を閉塞し、溜まり部18を密閉できるように、縮径部230の下面には開閉蓋機構210が設けられる。
【0072】
圧送手段200はエアコンプレッサで構成することができ、このエアコンプレッサ200の送給管204が取り付け手段206を介して溜まり部18側に導出される。取り付け手段206は溜まり部18のトラップ水の水面より上部に設けられる。エアコンプレッサ200は便器本体20の背面空間部20a内に設けられた取り付け板202に固定される。
【0073】
縮径部230は環状フランジ部として構成され、溜まり部18の内面に向かうように所定長だけ突出している。上述した送給管204は溜まり部18のトラップ水と縮径部230との間に位置している。
【0074】
縮径部230は図11からも明らかなように、その全体が多少排出部22側に傾斜するように設けられている。縮径部230の下面側には、この縮径部230を閉塞できるように、この例では回動式の開閉蓋機構210が設けられている。
【0075】
開閉蓋機構210は蓋本体212を有し、この蓋本体212の一端、図の例では右端部が回動軸部214となされ、この回動軸部214が縮径部230の下面部232に位置するように、便器本体20に対して回動自在に軸支される。この軸支部は便器本体20に対して水密的に軸支されている。
【0076】
蓋本体212は、その周面が縮径部230の下面縁部234と当接した状態となるように付勢される。蓋本体212は下面縁部234に沿った形状をなすと共に、通常はこの下面縁部234に接触して溜まり部18内を密閉できるように、回動軸部214と下面部232の壁面との間には付勢用のバネ216が巻き付けられている。
【0077】
縮径部230は排出部22側に多少傾斜するように設けられているので、開閉蓋機構210を構成する蓋本体212自体も、排出部22側に傾いて取り付けられる。このように蓋本体212を傾けて取り付けるようにすれば、蓋本体212の上面に落下した排泄物を残らず、溜まり部18内に落とし込むことができる。
【0078】
上述した洗浄ホース240は、蓋本体212の裏面側と溜まり部18の周面の一部の双方に、洗浄水を噴射できるような角度をもってその先端部が溜まり部18内に取り付けられる。この例では蓋本体212の回動軸部214の近傍であって、その下部側に水密的に取り付け固定される。便器本体20には給水ホースと排出ホースとが連結されると共に、それらは固定式のトイレ装置(便器)内に導かれる。
【0079】
上述した開閉スイッチ55は便座21の上部を閉蓋するための便蓋23の開閉に関連してオンオフする。制御部50からの制御信号によって上述した排出用電磁弁24、給水用電磁弁32、洗浄用電磁弁33およびエアコンプレッサ200の各駆動状態が制御される。この例では、便蓋23の開閉に関連して粉砕処理がなされる。それ以外は上述したのと同様であるが、粉砕処理が終了してからエアコンプレッサ200が駆動されて、溜まり部18の内部に圧縮空気が送給されて加圧される。加圧処理時間は溜まり部18内の内圧が所定値(例えば2気圧)まで上昇する時間に設定される。内圧の所定値とは、排出ホースを介して固定式トイレ装置内に流状物を確実に圧送して排出できる程度の圧力を言う。
【0080】
加圧時間が経過すると、エアコンプレッサ200を駆動した状態で、つまり圧縮空気を溜まり部18の内部に送給した状態で、排出用電磁弁24が駆動される。排出用電磁弁24が駆動されて排出口27が開けられると、溜まり部18内のトラップ水(流状物)は、圧縮空気によって一気に圧送されて、排出ホース側へと排出される。圧送期間が経過すると、排出用電磁弁24への通電が解除されると共に、エアコンプレッサ200の駆動を停止する。これで、排出口27が閉じられる。その後、給水用電磁弁32が作動して溜まり部18内への給水が開始される。その給水時間は、溜まり部18内のトラップ水が所定量となる注水時間に設定される。給水用の電磁弁32の作動に同期して洗浄用の電磁弁33も作動させ、洗浄ホース240を介して溜まり部18内への注水、具体的には蓋本体212の裏面への噴射および溜まり部18の壁面への噴射が行われる。この洗浄水の噴射によって、蓋本体212の裏面および溜まり部18の壁面や粉砕手段70の洗浄が行われる。
【0081】
なお、上述した実施例2,3において矩形状をなすフレーム部材を追加し、このフレーム部材に取り付け部材80を含めた粉砕手段70を差し渡すように構成してもよい。この場合、粉砕手段70がフレーム部材によって支持されているので、粉砕手段70の取り付け状態(姿勢)が安定し、またフレーム部材ごと装着孔79a,79bから脱着することができ、脱着作業が容易に行える。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明は、家庭用のみならず、ホテル、各種病院、老人介護施設などに設置されているトイレ装置および家庭内や、上記各施設で使用される可搬型の簡易トイレ装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明を固定式のトイレ装置に適用したときの一例を示す構成図である。
【図2】その側面図である。
【図3】図1の縦断面図である。
【図4】図1の横断面図である。
【図5】図1の要部の側面図である。
【図6】この発明に適用できる粉砕手段を構成する回転刃の平面図である。
【図7】粉砕ユニットを取り外して代用の補助便器部を取り付けた状態を示す要部の縦断面図である。
【図8】この発明に係るトイレ装置の制御系を示す要部の構成図である
【図9】そのタイミングチャートの一例を示す図である。
【図10】この発明の他の実施例を示す図1と同様な断面図である。
【図11】この発明を可搬型の簡易トイレ装置に適用したときの一例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0084】
60・・・粉砕ユニット、70・・・粉砕手段、70A,70B・・・回転刃部材、74,76・・・回転刃、80・・・取り付け部材、90,92・・・軸支手段、100・・・便器、130・・・駆動手段
【技術分野】
【0001】
この発明はサニタリー用品をも粉砕処理できるようにした粉砕ユニットを備えたトイレ装置に関する。詳しくは、粉砕ユニットを構成する粉砕手段として回転刃を多数備えた回転刃部材を用い、これらを互いに噛合させながら駆動することで、サニタリー用品を効率よく粉砕できるようにすると共に、粉砕ユニットを便器から取り外してもトイレを使用できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
生理用品などで代表されるサニタリー用品は、使用後直接水洗トイレなどに投棄すると、排水管などが詰まったりするおそれがある。そのため、サニタリー用品などは使用後トイレに備え付けられた専用のゴミ箱に投棄するか、ポリ袋などに入れてゴミ回収日まで保管し、燃えるゴミとして廃棄処分されるのが普通である。
【0003】
しかし、日常使用している水洗トイレ(固定式トイレ装置)を用いてサニタリー用品も排出処理できれば非常に便利である。また、最近では、トイレ用のティッシュペーパーを始めとしてベビー用の紙おむつや、成人介護用の紙おむつなどが普及しているが、これらの紙おむつなどもサニタリー用品と同じように、同じ固定式のトイレ装置を用いて処理できれば非常に便利である。
【0004】
看護用や介護用として使用される可搬型の簡易トイレ装置にあっても、これが水洗式であるような場合には、固定式トイレ装置と同じくサニタリー用品などをも処理できれば好ましい。
【0005】
このうち可搬型の簡易トイレ装置にあっては、汚物を粉砕処理してから排出する技術が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−8442号公報
【特許文献2】特開2001−275885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1や特許文献2に開示された簡易トイレ装置では、何れも汚物などを処理する手段として攪拌手段が使用されている。便器の溜まり部内に設置された攪拌手段を駆動することで、汚物を粉砕してから排出するようにしているが、汚物はともかくとして、上述した紙おむつなどを含むサニタリー用品についてはこれを粉砕することが困難になる。溜まり部内を攪拌するだけでは十分ではないからである。したがって、この可搬型の簡易トイレ装置に採用されている技術をそのまま固定式のトイレ装置に転用することもできない。
【0008】
また、溜まり部内に設置される攪拌手段などは汚れ易いので、衛生上定期的に清掃することが好ましい。上述した簡易トイレ装置では、溜まり部自体が狭いので、清掃しずらい。固定式のトイレ装置に応用した場合でも、攪拌手段は便器に固定されているので、簡単には清掃できない。
【0009】
もちろん、攪拌手段が便器に据え付けられているので、攪拌手段が故障したようなときは、簡単には修理できず、修理中はトイレが使用できなくなってしまう。できれば、攪拌手段を取り外しても、普通通りトイレを使用できた方が好ましい。
【0010】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、特に2つの回転刃を互いに噛み合わせた構成の粉砕手段を用いることで、紙おむつなどを含めたサニタリー用品を確実に粉砕処理できるようにすると共に、粉砕手段を含めた粉砕ユニットを便器から取り外しても、普通通りのトイレ装置として使用できるようにしたトイレ装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載したこの発明に係るトイレ装置は、
底部が溜まり部となされた便器と、
上記溜まり部を横切るように取り付けられ、上記便器に対して着脱自在な粉砕ユニットとで構成され、
上記粉砕ユニットは、互いに噛合し合う少なくとも一対の回転刃部材で構成された粉砕手段と、その取り付け部材とを有し、
上記回転刃部材は、同軸上に所定の間隔を保持して設けられた複数の回転刃で構成される
ことを特徴とする。
【0012】
この発明では、便器の溜まり部を横切って塞ぐように粉砕ユニットが取り付けられる。粉砕ユニットは粉砕手段とその取り付け部材とで構成される。便器は、上部便器部と、底部便器部とその間に位置する中間便器部とで構成される。中間便器部は上部便器部と底部便器部とにビスなどの固定部材を使用して水密的に固定される。粉砕ユニットの取り付け部材として中間便器部が使用される。
【0013】
粉砕手段は、互いに噛合する少なくとも第1および第2の回転刃部材を有する。これらの回転刃部材は、同軸上に所定の間隔を保持して設けられた複数の回転刃で構成される。取り付け部材の外周面には、第1および第2の回転刃部材の駆動手段が配設される。粉砕ユニットに対しては代替部材を装着できるようになされる。したがって、中間便器部を上部便器部と底部便器部との間に取り付け固定することで、便器の溜まり部内に粉砕手段が回転駆動自在に備え付けられたことになる。
【0014】
上部便器部側から投下されたサニタリー用品は第1の回転刃部材と第2の回転刃部材との間に掻き込まれることで、サニタリー用品は複数の回転刃によって切断されながら粉砕される。回転刃としてクロスカット刃を使用する場合には、この回転刃によって細かく裁断された状態で粉砕される。
【0015】
粉砕されたサニタリー用品は回転刃部材の下側(溜まり部底部)に落下する。したがって粉砕処理中あるいは粉砕処理後に、上部便器部側から適量の洗浄水を流し込むことで、粉砕されたサニタリー用品はこの洗浄水と共に便器の排出口から排水管(下水管)側に排出される。
【0016】
粉砕手段を清掃したり、修理するときは、中間便器部全体を便器から取り外す。中間便器部を取り外した状態ではトイレが使用できなくなるので、中間便器部と同一形状となされた代替部材が上部便器部と底部便器部との間に装着固定される。こうすることで、通常の水洗トイレとして使用することができる。取り外された粉砕ユニットは、清掃するなり、修理してから、代替部材と交換される。代替部材には粉砕手段は装備されてはいない。
【0017】
便器をこのように3分割した構成としないでも、粉砕ユニットの取り外しは可能である。例えば、溜まり部の一方の側壁に粉砕ユニットを装着できる装着孔を設け、他方の側壁に粉砕ユニットを支持する支持部を設ける。装着孔側から粉砕ユニットを水密的に装着固定することで、粉砕手段を回転駆動自在に溜まり部内に設置することができる。
【0018】
粉砕ユニットを取り外すときは、装着孔を閉塞する代替部材(パッキン材)を用いる。この代替部材を利用することで、粉砕ユニットを取り外した状態でも通常のようにトイレを利用できる。
【0019】
トイレ装置は、通常の固定式となされたトイレ装置(水洗トイレ)や可搬型の簡易トイレ装置に適用できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明では、回転刃を互いに噛み合わせた粉砕手段を含む粉砕ユニットを便器に着脱自在に取り付けられるようにすると共に、粉砕ユニットを取り外した部分に代替部材を装着できるようにしたものである。
【0021】
これによれば、紙おむつなどを含めたサニタリー用品を確実に粉砕処理できるので、サニタリー用品処理装置などの特別な処理装置をなくすことができる。また、粉砕手段を含めた粉砕ユニットを便器から取り外せるので、粉砕手段の清掃や修理が容易になると共に、粉砕ユニットを取り外した状態でもトイレを使用することができるので、日常の生活上の不便を払拭できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
続いて、この発明に係るトイレ装置の好ましい実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
この発明に係るトイレ装置は、家庭用、業務用を問わず、現在使用されている洋式で水栓式のトイレ装置(固定式トイレ装置)の全てにその代替物として、あるいは新規設置分として適用できる。固定式トイレ装置の他に、介護用あるいは看護用として利用できる可搬型の簡易トイレ装置であって、水洗式であれば該簡易トイレ装置にもこの発明を適用できる。
【実施例1】
【0024】
図1はこの発明に係るトイレ装置を固定式トイレ装置に適用した場合を示す。このトイレ装置は洋式の便器100を備える。便器100は、複数に分割され・組み立てられて使用される分割方式の便器であって、上部便器部100A、底部便器部100Cおよびこれらの間に位置する中間便器部100Bとで構成される。便器100はプラスチック材や陶器などで構成される。
【0025】
上部便器部100Aは開口部を有し、便座110が位置する。底部便器部100Cが便器に設けられる溜まり部のうち底部側を構成し、中間便器部100Bが溜まり部を構成する。
【0026】
上部便器部100Aは両端が開口され、漏斗状をなす筒体であり、中間便器部100Bは両端が開口された筒体であり、底部便器部100Cは有底筒状体で、排水管に接続されるトラップ用の排出口が設けられている。
【0027】
これら複数の便器部100A〜100Cはビスなどの固定手段によって水密的に取り付け固定される。そのため、上部便器部100Aの下端面には固定用のフランジ102が一体成形され、このフランジ102と対峙するように中間便器部100Bの上端面にもフランジ104が一体成形される。同じように、中間便器部100Bと底部便器部100Cとの間にもそれぞれ対応するフランジ106,108が設けられ、図1のように組み立てた状態で、ビスなどの固定手段およびパッキン材(図示はしない)によって相互が水密的に取り付け固定される。
【0028】
便器100は組み立てられた状態で使用されるため、図2に示すように便器100に供給する洗浄水用のタンク(水洗タンク)122と便器100とは非接触状態で据え付けられる。そのため取り付け台124を用いて水洗タンク122が固定される。
【0029】
この発明では、便器100内に粉砕ユニット60を備える。粉砕ユニット60は図3に示すように粉砕手段70とその取り付け部材80で構成される。粉砕手段70は、図4に示すように、互いに噛合し合う関係に配置された第1および第2の回転刃部材70A,70Bからなり、その両端が回転自在に取り付け部材80に固定される。取り付け部材80としてこの例では中間便器部100Bが使用される。したがって、第1および第2の回転刃部材70A,70Bはこの中間便器部100Bを横切るように配置される。
【0030】
図4に示すように、第1の回転刃部材70Aは、その回転軸70aに複数の回転刃74(74a、74b・・・)が所定の間隔を保持して配列される。第2の回転刃部材70Bも同様に構成され、その回転軸70bに同じ数か、1個多い回転刃76(76a,76b,・・・)が配列されて構成され、回転刃74と76とは互い違いとなるように配置される。回転刃74,76の大きさや設置すべき個数などは、粉砕ユニット60の収容スペースによって変わる。
【0031】
図4の図示状態において、その上端側が矩形状をなし、下端側がほぼ馬蹄形をなす中間便器部100Bを使用する場合には、3〜5枚の回転刃を使用してそれぞれの回転刃部材70A,70Bが構成される。図4では3枚の回転刃で構成した場合である。
【0032】
ここで、互いに隣り合う回転刃74と76とは完全に噛み合う状態では配置されていない。それは、粉砕物は汚物、トイレットペーパーの他に、場合によっては生理用品や、紙おむつなどのサニタリー用品などが考えられる。これらの粉砕対象物はある程度の厚みがあることから、サニタリー用品をも切断し易くするため、これらの厚みを考慮して図3および図4に示すように、隣り合う回転刃74と76との間隔や、回転軸70a,70bまでの対向距離が設定される。
【0033】
回転刃74,76としては、先端部が刃状となっている円盤状の回転刃や、その周面部に尖端を持った楕円状の回転刃(いわゆるクロスカット刃)などを使用することができる。前者の回転刃よりも後者の回転刃の方が、短冊状に細かく裁断できる。
【0034】
図6は後者の回転刃74の一例を示すもので、この例ではほぼ180°対向する位置に一対の尖端刃75aを有する。尖端刃75aは回転方向aに向かって尖端刃75aの端面が対峙するような刃形状をなす。他方の回転刃76においても同じ構造の尖端刃77aを有する(図3、図4参照)。
【0035】
図3および図4に示すように、複数の回転刃74を回転軸70aに取り付ける場合、尖端刃75aの取り付け位置は、順次所定角度(60°程度)だけ回転位相(取り付け角)がずれるように取り付け固定される。他方の回転刃76にあっても順次所定角度だけ回転位相がずれた状態で回転軸70bに取り付け固定される。したがって、尖端刃75a,77a同士が互いに対峙した状態で少許の間隙を保持しながら回転駆動される。実際には回転刃74と76とは噛み合った状態で駆動される訳ではないが、汚物やサニタリー用品などの粉砕対象物を介在させた状態では、回転刃74と76とが噛み合うことになるので、粉砕対象物を細かく裁断することができる。
【0036】
なお、図示はしないが、粉砕手段70の上方に粉砕対象物を粉砕手段70側に掻き込むための掻き込み手段を配置することもできる。掻き込み手段は、掻き込み刃を有する複数の回転体が配された、一対の掻き込み用回転部材で構成することができる。
【0037】
また、回転刃部材70A、70Bの下側に、回転刃74と回転刃74(回転刃76と76)との間に絡みついた粉砕物を掻き落とすための掻き落とし手段を設けることもできる。掻き落とし手段は、回転刃の間に入り込む櫛歯を有する板体などを利用できる。
【0038】
上述した粉砕手段70の取り付け部材80としては、この例では上述したように中間便器部100Bが使用される。中間便器部100Bは図3および図4に示すように、ほぼ馬蹄形をなす筒体であって、図4のように左側壁78aと右側壁78bとに差し亘って粉砕手段70を構成する回転軸70a、70bが取り付けられる。そのため、この例では左側壁78aの所定位置には回転軸取り付け用の凹部79aが穿設され、他方この凹部79aと対峙する右側壁78bには回転軸装着用の透孔(装着孔)79bが穿設される。
【0039】
凹部79aには回転軸70a、70bに対する軸支手段90が嵌着される。軸支手段90は図4に示すように、回転軸70a,70b用の軸受け部90a,90bと、その支持部材90cとで構成される。支持部材90cは軸受け部90a,90bを共通に支持する部材であって、左側壁78aに対して水密的に装着できるような材質が使用される。この例では比較的硬質のゴム材かプラスチック材で成形されており、この支持部材90cを取り付け用凹部79aに嵌め込むことで、回転軸70a,70bの左端部側が中間便器部100Bの左側壁78aに固定される。
【0040】
回転軸70a,70bの他端部側も軸支手段92によって軸支される。軸支手段92も回転軸70a,70b用の軸受け部92a,92bと、その支持部材92cとで構成される。支持部材92cは軸受け部92a,92bを共通に支持する部材であって、軸支手段90の場合と同じく右側壁78bの装着孔79bに対して水密的に装着できるような材質が使用される。この支持部材92cを取り付け用装着孔79bに嵌め込むことで、回転軸70a,70bの右端部側が中間便器部100Bの右側壁78bに固定される。この場合、念のため支持部材92cはネジなどの固定手段によって右側壁78bに固定されている。
【0041】
右側壁78bの外側には、図3、図4および図5にそれぞれ示すように、回転軸70a,70bを駆動するための駆動手段130が設けられる。そのため、それぞれの回転軸70a、70bには互いに噛合する歯車97a、97bが取り付けられると共に、この例では一方の回転軸70a側に取り付けられたプーリ132を介して駆動モータ138からの回転力が伝達される。そのため、駆動モータ138側のプーリ134と、回転軸70a側のプーリ132とがベルト136によって連結される。
【0042】
駆動手段130は、外部に露呈しないように矩形状をなすケース150によってカバーされている。駆動手段130をこのように中間便器部100Bの右側壁78bの外面側に集約することで、取り付け部材80を含めた粉砕手段70とその駆動手段130全体を中間便器部100Bと共に取り外すことができる。したがって中間便器部100Bを便器本体から取り外すことで、粉砕手段70の保守・点検、交換、修理を始めとして、その駆動手段130の保守・点検、交換や修理などを行うことができる。
【0043】
なお、このように中間便器部100Bを便器本体から取り外したときには、便器100を使用することができなくなってしまう。この不便さを解消するため、
図7に示すように、中間便器部100Bの代替部材として粉砕手段70や駆動手段130のない補助便器部140が代替部材として用意される。
【0044】
この補助便器部140はその外形および大きさは中間便器部100Bと全く同じであって、馬蹄形の筒体で構成されると共に、その上下に取り付け用のフランジ142,144を備える。したがって中間便器部100Bを取り外したときは、この中間便器部100Bの代わりに補助便器部140が代替品として据え付け固定される(図7参照)。こうすることで、粉砕対象物に対する粉砕機能はないが、通常の便器として使用できるので、日常生活上の不便さは解消される。この補助便器部140は、中間便器部100Bの取り外し時、修理メーカなどから提供されるものとすれば、ユーザ側で常備する必要はない。
【0045】
上部便器部100A内には、漏斗状をなし、その下側の開口端面がほぼ矩形状をなす投下制限筒152が設けられる。投下制限筒152の下側開口面を絞ることで、上部便器部100Aの開口から投下されたサニタリー用品などが粉砕手段70の中央部側に落下するようになり、サニタリー用品などを効率よく粉砕できるようになる。便器内で使用される洗浄水は、この上部便器部100A側から供給されるものであるから、投下制限筒152の内周面にサニタリー用品などが張り付いたとしても、洗浄水によって粉砕手段70側に流し込むことができる。
【0046】
図8はトイレ装置を駆動するための制御系160の一例を示す。この例ではCPUで構成された制御部161を有し、この制御部161にはトイレ装置に設けられた電源スイッチ162と粉砕スイッチ164の各制御信号が供給される。電源スイッチ162および粉砕スイッチ164は何れも温水シャワーを備えた水洗制御部の操作パネル(何れも図示せず)に装備することができる。この場合には電源スイッチ162は水洗制御部の電源スイッチが共用される。粉砕スイッチ164は駆動モータ138を駆動制御するためのスイッチである。
【0047】
制御部161からの制御信号に基づいて、この例では駆動モータ138と、洗浄水を供給するための給水用電磁弁166が所定のタイミングで制御される。
【0048】
図9にそのタイミングチャートの一例を示す。図9は電源スイッチ162を投入した後のタイミングチャートを示す。排便終了後や、サニタリー用品投入後に粉砕スイッチ164が操作される(図9A)。粉砕スイッチ164が投入されると駆動モータ138が駆動されるため、その回転力が図3などに示す伝達系を介して粉砕手段70に伝達されて、粉砕手段70が回転駆動される(図9B)。
【0049】
粉砕手段70は多数の回転刃によって構成されているので、汚物は回転刃74と76との間に食い込まれることで、噛合する回転刃74,76同士の作用で、短冊状に裁断される。同じく、投下されたサニタリー用品(上述したように紙おむつなどを含む)も、回転刃74と76との間に食い込まれることで、サニタリー用品は噛合する回転刃74,76同士の作用で、短冊状に裁断される。回転刃はクロスカット刃であるので、短冊状に裁断されたサニタリー用品はさらに細かく裁断されて粉砕される。
【0050】
粉砕処理時間T1が経過する前の所定時間、この例では粉砕処理が開始されてから所定時間ΔT1後に給水用の電磁弁166が作動する(図9C)。給水用電磁弁166の作動により投下制限筒152に案内された粉砕水は中間便器部100Bの中央部に集中するから、粉砕されたサニタリー用品は水分を含んだ状態で底部便器部100C側に落下する。粉砕された粉砕物は底部便器部100Cに設けられた溜まり部109内に滞留してから排出口109a側に排出される。この滞留によって粉砕されたサニタリー用品が多少軟化するから、粉砕されたサニタリー用品の排出がスムーズになる。
【0051】
汚物以外にベビー用品から成人用品までを考慮すると、サニタリー用品の大きさがまちまちであることから、粉砕処理時間T1や給水時間T2は比較的長目に選定される。この例では、所定時間T1,T2とも、10〜20秒位に設定されている。これらの時間T1,T2を外部から調整できるように構成することもできる。例えば、外部に設けた調整ボタンによって「短、中、長」のような3段階に切り替えられるようにすることも可能である。給水タイミングは、図9Dのように粉砕処理が終了した時点から開始することも可能である。
【0052】
便器100には通常所定の水量が洗浄水として貯留している。この洗浄水は通常底部便器部100C内を満たすように貯留され、汚物などを排水管側に排出し易くしているが、この例でも貯留するのが好ましい。この場合、汚物やサニタリー用品などを粉砕し易くするために、図3に示すように、粉砕手段70を満たすように洗浄水が貯留されていた方が好ましい。その場合、中間便器部100Bを取り外すときは、少なくとも中間便器部100B内に貯留されている洗浄水はポンプなどでくみ上げてから行うことは言うまでもない。
【実施例2】
【0053】
図10に実施例2を説明する。実施例1では、粉砕手段70の取り付け部材80として中間便器部100Bそのものを使用した場合を例示した。すなわち、この場合の取り付け部材80は中間便器部100Bを利用して、ここに粉砕手段70の軸支手段90,92を取り付けた場合である。そのため、便器100を3つに分割した。
【0054】
実施例2において使用される便器100は非分割型である。つまり、通常の便器が使用される。ただし、便器100の内部構成は若干異なる。便器100のうち溜まり部109に相当する部分に、粉砕ユニット60を付設する必要があるからである。
【0055】
粉砕ユニット60は、上述したように粉砕手段70とその取り付け部材80とで構成される。粉砕手段70は便器100に対して着脱自在に構成される。したがってこの例では、粉砕手段70の軸支手段90,92そのものが粉砕手段70に対する取り付け部材80として機能する。
【0056】
そのため、図10に示すように、一体成形された便器100のうち溜まり部109付近の側壁のうち、左側壁98aには粉砕手段70の回転軸70a、70bを支持するための支持部としての取り付け用凹部99aが穿設される。この取り付け用凹部99aと対峙する右側壁98bには一対の回転軸70a、70bを取り付けるための装着孔99bが穿設される。
【0057】
一対の回転軸70a,70bの左端側には軸支手段90が設けられ、この軸支手段90が取り付け用凹部99aに嵌着されることで、左側壁98aに取り付け固定される。同様に、一対の回転軸70a,70bの右端側にも軸支手段92が設けられ、この軸支手段92が装着孔99b内に水密的に装着固定される。これによって、粉砕手段70は左右側壁98a、98bに取り付け固定されたことになる。
【0058】
また、粉砕手段70そのものを便器100に対して着脱自在とするため、装着孔99bは、粉砕手段70の外形よりも一回り大きな透孔として形成される。これによって粉砕手段70自体を便器100に対して挿脱できるようになる。この例では、軸支手段90,92自体も粉砕手段70と一体的に挿脱される場合を示す。
【0059】
このように便器100の一方の側壁98bに装着孔99bを穿設し、対する他方の側壁98aに軸支手段90を固定する凹部99aを設けることで、粉砕手段70を便器100に対して着脱自在に取り付けることができる。粉砕ユニット60を取り外したときは、便器100を使用できるようにするため、装着孔99bを閉塞する代替部材(パッキン材)が装着固定される。
【0060】
粉砕ユニット60を取り外すことができるので、粉砕手段70の保守・点検や、交換を簡単に行うことができる。粉砕手段70は溜まり部109内に位置しているので、粉砕手段70を取り外すときは、貯留されている洗浄水を抜く作業が必要であることは言うまでもない。
【実施例3】
【0061】
上述した実施例1および実施例2は、何れもこの発明を固定式のトイレ装置に適用した。この発明はさらに可搬型の簡易トイレ装置にも適用できる。この種簡易トイレ装置にあっても、その内部に粉砕手段を設ける場合には、粉砕手段を取り外したりする必要があるからである。
【0062】
図11はこの発明を適用できる可搬型簡易トイレ装置10の一例を示す要部断面図である。この可搬型簡易トイレ装置10は便器本体20を有する。便器本体20は通常の水洗式トイレ(洋式トイレ)とほぼ同じ漏斗状の断面形状をなすが、その全体形状は箱型として構成される。
【0063】
便器本体20を軽量化するため、この例では便器本体20はプラスチックによる成型品であるが陶器等の他の素材を使用して成形してもよい。便器本体20の上部開口部側には便座21が位置すると共に、この便座21および上部開口部を閉塞するような便蓋23が設けられている。
【0064】
便器本体20の底部がトラップ水(溜まり水)や汚物の溜まり部18となる。この溜まり部18は上述した溜まり部109に相当する。溜まり部18に連通して断面が略「へ」の字状をなす排出部22が設けられ、排出口27に排出ホース14が連結される。排出口27は上述した排出口109aに相当する。便器本体20の背面部20bに連結部26が設けられると共に、便器本体20の内部であって、開閉弁として機能する電磁弁24が連結部26に近接して設けられている。
【0065】
電磁弁24は、溜まり部18内のトラップ水(汚物を含んだ水)を便器外に排出するときだけ開くように制御され、トイレを使用していないときは閉じられている。漏水を防止するためである。この電磁弁24は漏水防止の他に、圧送手段を構成するエアコンプレッサ(後述する)を使用して溜まり部18内を加圧するときの圧縮空気の漏止を防止する機能もある。
【0066】
便器本体20の上部近辺で、排出部側の壁面18aには洗浄水の給水口28が設けられている。本体背面部20bに設けられた連結部34とこの給水口28との間には連結管30が配される。連結管30は分岐管が使用され、給水口28に向かう連結管30に洗浄水を制御するための電磁弁32が取り付けられている。連結部34に連結される給水ホース12からの給水をこの電磁弁32によって制御できるようにするためである。
【0067】
分岐された連結管30にも電磁弁33を介して洗浄ホース(洗浄管)240が連結されている。洗浄ホース240の先端部は溜まり部18のトラップ水の水面よりも上側に突出するように設けられている。この洗浄ホース240による注水(実際には噴射)によって、後述するように溜まり部18内と開閉蓋212の裏面の洗浄が行われる。
【0068】
なお、給水口28と壁面18aとの間にはゴム状の漏水防止管29が介挿され、洗浄ホース240が貫通する溜まり部18にも漏水防止管242が介挿され、外部への漏水の防止を図っている。
【0069】
溜まり部18の底部には排泄物等の粉砕手段60が設けられる。粉砕手段60は上述したように粉砕手段70と、この粉砕手段70を便器20に取り付ける取り付け部材とで構成される。図11では、粉砕手段70を構成する回転刃74,76が図示されている。取り付け部材80は便器20の側壁に設けられるため、取り付け部材は図示されていないが、この場合の取り付け部材は実施例2と同じく粉砕手段70のみを取り付け、取り外しできるように構成されている。したがって、便器20の一方の側壁にのみ装着孔が穿設されている。溜まり部18内に落下した汚物(排泄物など)やトイレットペーパーなどが粉砕手段70によって細かく粉砕され、粉砕された流状物はトラップ水と混合して排出される。
【0070】
底面板20cの内側にはCPUなどで構成された制御部50(上述した制御部161に相当する)が配される。上述した排出用電磁弁24、給水用電磁弁32、33などが、制御部50によって所定のタイミングで所定の時間だけ制御される。制御部50用の電源スイッチ52は本体背面部20bに設けられ、本体上面部であって、便蓋23の下面には開閉スイッチ55(上述した粉砕スイッチに相当する)が設けられている。
【0071】
この簡易トイレ装置10はさらに以下の構造を有する。図11に示すように、便器本体20における溜まり部18の上部であって、給水口28よりも下側の所定位置には、溜まり部18に所定の圧縮空気を送給するための粉砕物用圧送手段200が設けられる。この溜まり部18の上部であって、圧送手段200の取り付け位置よりも若干上部側に縮径部230が設けられる。そしてこの縮径部230を閉塞し、溜まり部18を密閉できるように、縮径部230の下面には開閉蓋機構210が設けられる。
【0072】
圧送手段200はエアコンプレッサで構成することができ、このエアコンプレッサ200の送給管204が取り付け手段206を介して溜まり部18側に導出される。取り付け手段206は溜まり部18のトラップ水の水面より上部に設けられる。エアコンプレッサ200は便器本体20の背面空間部20a内に設けられた取り付け板202に固定される。
【0073】
縮径部230は環状フランジ部として構成され、溜まり部18の内面に向かうように所定長だけ突出している。上述した送給管204は溜まり部18のトラップ水と縮径部230との間に位置している。
【0074】
縮径部230は図11からも明らかなように、その全体が多少排出部22側に傾斜するように設けられている。縮径部230の下面側には、この縮径部230を閉塞できるように、この例では回動式の開閉蓋機構210が設けられている。
【0075】
開閉蓋機構210は蓋本体212を有し、この蓋本体212の一端、図の例では右端部が回動軸部214となされ、この回動軸部214が縮径部230の下面部232に位置するように、便器本体20に対して回動自在に軸支される。この軸支部は便器本体20に対して水密的に軸支されている。
【0076】
蓋本体212は、その周面が縮径部230の下面縁部234と当接した状態となるように付勢される。蓋本体212は下面縁部234に沿った形状をなすと共に、通常はこの下面縁部234に接触して溜まり部18内を密閉できるように、回動軸部214と下面部232の壁面との間には付勢用のバネ216が巻き付けられている。
【0077】
縮径部230は排出部22側に多少傾斜するように設けられているので、開閉蓋機構210を構成する蓋本体212自体も、排出部22側に傾いて取り付けられる。このように蓋本体212を傾けて取り付けるようにすれば、蓋本体212の上面に落下した排泄物を残らず、溜まり部18内に落とし込むことができる。
【0078】
上述した洗浄ホース240は、蓋本体212の裏面側と溜まり部18の周面の一部の双方に、洗浄水を噴射できるような角度をもってその先端部が溜まり部18内に取り付けられる。この例では蓋本体212の回動軸部214の近傍であって、その下部側に水密的に取り付け固定される。便器本体20には給水ホースと排出ホースとが連結されると共に、それらは固定式のトイレ装置(便器)内に導かれる。
【0079】
上述した開閉スイッチ55は便座21の上部を閉蓋するための便蓋23の開閉に関連してオンオフする。制御部50からの制御信号によって上述した排出用電磁弁24、給水用電磁弁32、洗浄用電磁弁33およびエアコンプレッサ200の各駆動状態が制御される。この例では、便蓋23の開閉に関連して粉砕処理がなされる。それ以外は上述したのと同様であるが、粉砕処理が終了してからエアコンプレッサ200が駆動されて、溜まり部18の内部に圧縮空気が送給されて加圧される。加圧処理時間は溜まり部18内の内圧が所定値(例えば2気圧)まで上昇する時間に設定される。内圧の所定値とは、排出ホースを介して固定式トイレ装置内に流状物を確実に圧送して排出できる程度の圧力を言う。
【0080】
加圧時間が経過すると、エアコンプレッサ200を駆動した状態で、つまり圧縮空気を溜まり部18の内部に送給した状態で、排出用電磁弁24が駆動される。排出用電磁弁24が駆動されて排出口27が開けられると、溜まり部18内のトラップ水(流状物)は、圧縮空気によって一気に圧送されて、排出ホース側へと排出される。圧送期間が経過すると、排出用電磁弁24への通電が解除されると共に、エアコンプレッサ200の駆動を停止する。これで、排出口27が閉じられる。その後、給水用電磁弁32が作動して溜まり部18内への給水が開始される。その給水時間は、溜まり部18内のトラップ水が所定量となる注水時間に設定される。給水用の電磁弁32の作動に同期して洗浄用の電磁弁33も作動させ、洗浄ホース240を介して溜まり部18内への注水、具体的には蓋本体212の裏面への噴射および溜まり部18の壁面への噴射が行われる。この洗浄水の噴射によって、蓋本体212の裏面および溜まり部18の壁面や粉砕手段70の洗浄が行われる。
【0081】
なお、上述した実施例2,3において矩形状をなすフレーム部材を追加し、このフレーム部材に取り付け部材80を含めた粉砕手段70を差し渡すように構成してもよい。この場合、粉砕手段70がフレーム部材によって支持されているので、粉砕手段70の取り付け状態(姿勢)が安定し、またフレーム部材ごと装着孔79a,79bから脱着することができ、脱着作業が容易に行える。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明は、家庭用のみならず、ホテル、各種病院、老人介護施設などに設置されているトイレ装置および家庭内や、上記各施設で使用される可搬型の簡易トイレ装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明を固定式のトイレ装置に適用したときの一例を示す構成図である。
【図2】その側面図である。
【図3】図1の縦断面図である。
【図4】図1の横断面図である。
【図5】図1の要部の側面図である。
【図6】この発明に適用できる粉砕手段を構成する回転刃の平面図である。
【図7】粉砕ユニットを取り外して代用の補助便器部を取り付けた状態を示す要部の縦断面図である。
【図8】この発明に係るトイレ装置の制御系を示す要部の構成図である
【図9】そのタイミングチャートの一例を示す図である。
【図10】この発明の他の実施例を示す図1と同様な断面図である。
【図11】この発明を可搬型の簡易トイレ装置に適用したときの一例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0084】
60・・・粉砕ユニット、70・・・粉砕手段、70A,70B・・・回転刃部材、74,76・・・回転刃、80・・・取り付け部材、90,92・・・軸支手段、100・・・便器、130・・・駆動手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が溜まり部となされた便器と、
上記溜まり部を横切るように取り付けられ、上記便器に対して着脱自在な粉砕ユニットとで構成され、
上記粉砕ユニットは、互いに噛合し合う少なくとも一対の回転刃部材で構成された粉砕手段と、その取り付け部材とを有し、
上記回転刃部材は、同軸上に所定の間隔を保持して設けられた複数の回転刃で構成される
ことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
上記便器が、上部便器部、底部便器部およびその中間便器部で構成され、
上記中間便器部は、上記上部便器部および底部便器部に対して取り外しができるように構成されると共に、この中間便器部が上記粉砕ユニットを構成する上記取り付け部材として使用される
ことを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
上記回転刃部材に対する駆動手段が上記中間取り付け部材の外周面に配設された
ことを特徴とする請求項1,2記載のトイレ装置。
【請求項4】
上記粉砕ユニットに対しては,代替部材を装着できるようになされた
ことを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項5】
上記便器のうち、上記溜まり部に対応した一方の側壁に、上記粉砕ユニットに対する装着孔が設けられると共に、
他方の側壁には上記粉砕ユニットを支持する支持部が設けられ、
上記装着孔を介して上記粉砕ユニットが上記便器の溜まり部に取り付け固定される
ことを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項6】
上記装着孔は、代替部材で閉塞できるようになされた
ことを特徴とする請求項5記載のトイレ装置。
【請求項7】
上記便器内であって、上記溜まり部の上方には、上記回転刃部材を一部閉塞するように、便器内部に突出した庇部が設けられた
ことを特徴する請求項1記載のトイレ装置。
【請求項1】
底部が溜まり部となされた便器と、
上記溜まり部を横切るように取り付けられ、上記便器に対して着脱自在な粉砕ユニットとで構成され、
上記粉砕ユニットは、互いに噛合し合う少なくとも一対の回転刃部材で構成された粉砕手段と、その取り付け部材とを有し、
上記回転刃部材は、同軸上に所定の間隔を保持して設けられた複数の回転刃で構成される
ことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
上記便器が、上部便器部、底部便器部およびその中間便器部で構成され、
上記中間便器部は、上記上部便器部および底部便器部に対して取り外しができるように構成されると共に、この中間便器部が上記粉砕ユニットを構成する上記取り付け部材として使用される
ことを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
上記回転刃部材に対する駆動手段が上記中間取り付け部材の外周面に配設された
ことを特徴とする請求項1,2記載のトイレ装置。
【請求項4】
上記粉砕ユニットに対しては,代替部材を装着できるようになされた
ことを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項5】
上記便器のうち、上記溜まり部に対応した一方の側壁に、上記粉砕ユニットに対する装着孔が設けられると共に、
他方の側壁には上記粉砕ユニットを支持する支持部が設けられ、
上記装着孔を介して上記粉砕ユニットが上記便器の溜まり部に取り付け固定される
ことを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項6】
上記装着孔は、代替部材で閉塞できるようになされた
ことを特徴とする請求項5記載のトイレ装置。
【請求項7】
上記便器内であって、上記溜まり部の上方には、上記回転刃部材を一部閉塞するように、便器内部に突出した庇部が設けられた
ことを特徴する請求項1記載のトイレ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−239264(P2007−239264A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61212(P2006−61212)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】
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