説明

トップチェーンコンベヤ装置

【課題】コンベヤ上の搬送物に対しては、ドライに近い条件を保ちながら、トップチェーンの裏側とガイドレールとの摺接面やガイドレールとリンク本体の摺接面は、潤滑状態として、磨耗粉末の発生や異音の発生を抑制したトップチェーンコンベヤ装置を提供する。
【解決手段】トップチェーン1とトップチェーンを支持案内するガイドレール10とを有するトップチェーンコンベヤ装置であって、コンベヤ装置が、潤滑剤を供給する潤滑ノズル12を有しており、潤滑ノズルから供給する潤滑剤の量とタイミングを制御する制御装置を備えたことによって、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤチェーンのトッププレート上に物品を載置して搬送するトップチェーンコンベヤ装置に関し、特に、飲料工場等における塵埃を嫌うクリーン環境下での使用に適したトップチェーンコンベヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、瓶、缶、ペットボトル等の飲料を封入する容器そのものの製造ラインに使用されるトップチェーンコンベヤ装置では、衛生上等の問題から基本的に潤滑剤が使用できないため、ドライ条件でトップチェーンコンベヤ装置が運転されている。
【0003】
また、飲料工場等における瓶、缶、ペットボトル等の容器を搬送するトップチェーンコンベヤ装置は、自動制御により連続運転されており、容器の流れが停止してもトップチェーンのみが連続運転されることが多い。このような容器搬送においては、特に、容器とチェーンあるいは容器同士の間での摺動による容器の傷付き防止や、チェーンの磨耗抑制、容器とチェーンの磨耗係数低減(容器の転倒防止)のために、コンベヤチェーンの表面に界面活性剤や脂肪酸石鹸潤滑剤を水で100〜400倍程度に希釈して連続的に流している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−8083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のトップチェーンコンベヤ装置をドライ条件下で使用した場合には、摺動磨耗粉が発生しやすく、搬送中の製品に付着し製品不良を誘発したり、トップチェーンコンベヤ装置の随所に摺動磨耗粉が付着して装置の美観を損ねることが指摘されていた。また、トップチェーンコンベヤ装置の曲線部において、トップチェーンとガイドレールの摺動によって、耳障りな異音が発生することがある。さらに、トップチェーンが樹脂製チェーンの場合、摺動による静電気が発生しやすく、スパーク等の発生により火災に至ることが懸念されている。
【0005】
一方、従来のトップチェーンコンベヤ装置を石鹸水潤滑の条件下で使用した場合には、ウェットな条件のため、コンベヤ上で微生物が繁殖しやすく、それらが容器内に混入した場合、食中毒を発生する危険性がある。また、ウェットな環境でトップチェーンを使用するため、チェーンが腐食しやすい。さらに、トップチェーンコンベヤ装置の運転中に、泡が発生し、製品に付着した場合、製品の流れを検知する検知器による誤検知を誘発し、また、その泡が工場の床に付着した場合、床面が滑りやすくなり作業員が転倒するなど危険な環境になる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、前述したような従来技術の問題点を解決し、コンベヤ上の搬送物に対しては、ドライに近い条件を保ちながら、トップチェーンの裏側とガイドレールとの摺接面やガイドレールとリンク本体の摺接面は、潤滑状態として、磨耗粉末の発生抑制、異音の発生を抑制したトップチェーンコンベヤ装置を提供する。
【0007】
本発明の明細書において、「ドライ」とは、水が湿潤されていない状態のことをいい、固形あるいは液状の潤滑剤が存在する場合も含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、リンク本体上部にフラットなトッププレートを備えたチェーンリンクが、連結ピンで多数連結されてなるトッププレート付きコンベヤチェーンとトッププレート付きコンベヤチェーンの下面でチェーンを支持案内するガイドレールとを有するトップチェーンコンベヤ装置において、コンベヤ装置が、潤滑剤を供給する潤滑ノズルを有しており、潤滑ノズルから供給される潤滑剤の量とタイミングを制御する制御装置を備えたトップチェーンコンベヤ装置により、上記の問題点を解決するものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、潤滑剤を供給する潤滑ノズルが、その先端に多孔質部材を備えていることにより、上記の問題をさらに解決するものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明の構成に加えて、ガイドレールが、トッププレートを支持するトッププレート支持部とリンク本体収納部を有する断面略コ字形状であり、トッププレート支持部上に供給された潤滑剤をリンク本体収納部へ誘導する潤滑剤誘導溝を有していることにより、上記の問題を一層解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、リンク本体上部にフラットなトッププレートを備えたチェーンリンクが、連結ピンで多数連結されてなるトッププレート付きコンベヤチェーンとトッププレート付きコンベヤチェーンの下面でチェーンを支持案内するガイドレールとを有するトップチェーンコンベヤ装置において、コンベヤ装置が、潤滑剤を供給する潤滑ノズルを有しており、潤滑ノズルから供給される潤滑剤の量とタイミングを制御する制御装置を備えていることによって、チェーンの表面をドライな状態に保ちながら、摺動磨耗粉発生の抑制、摺動による異音の発生を抑制することができる。なお、以下の説明において、「トッププレート付きコンベヤチェーン」のことを単に「トップチェーン」と呼ぶ。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、潤滑剤を供給する潤滑ノズルが、その先端に多孔質部材を備えていることにより、潤滑剤の供給時に速度分布が整えられ、ビーム状に噴射されるのではなく、じわじわとにじみ出るように潤滑剤がガイドレール上に供給されるため、トップチェーンの搬送面にまで潤滑剤があふれ出ることが抑制される。これによってトップチェーンの搬送面と搬送物の間をドライな条件に保つことができ、搬送物に潤滑剤が付着し製品価値を損なうことが防止される。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、ガイドレールが、トッププレートを支持するトッププレート支持部とリンク本体収納部を有する断面略コ字形状であり、トッププレート支持部上に供給された潤滑剤をリンク本体収納部へ誘導する潤滑剤誘導溝を有していることにより、トップチェーンとガイドレールの隙間から潤滑剤が外部に流れ出ることが抑制されるとともに、この潤滑剤誘導溝からリンク本体への潤滑剤の供給も行われ、さらに、この潤滑剤誘導溝に潤滑剤が貯留されることによってトップチェーンとガイドレール間に潤滑剤を徐々に供給することができ、摺動部における磨耗粉の発生及び異音の発生が一層防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好ましい実施の形態について、図1乃至図5に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明によるトップチェーンコンベヤ装置の外観を示した斜視図である。図2は、図1のII−II線で切断した時の断面図を示している。図3は、本発明に使用されるガイドレールの1つの実施形態を示した上面図とその細部の拡大図である。図4は、本発明の制御系を示した図である。図5は、本発明によるトップチェーンコンベヤ装置に使用されるトップチェーンの一例を背後から見たときの外観を示した斜視図である。
【0016】
本発明のトップチェーンコンベヤ装置は、図1に示したように、リンク本体上部にフラットなトッププレートを備えたチェーンリンクが、連結ピンで多数連結されてなるトップチェーン1と前記トップチェーンの下面で前記チェーンを支持案内するガイドレール10とを有している。
【0017】
本発明の主要な構成要素であるトップチェーン1は、図5に示すように、リンク本体3の上部にトッププレート5を備えたチェーンリンク2を連結ピン7で多数連結して無端状に形成したものである。このチェーンリンク2は、合成樹脂材で一体成形されたプラスチック製のものである。リンク本体3の一方の端部には、ピン穴4aを有し二股に分かれたヒンジ部4、4が形成され、他方の端部には、ピン穴3aが穿設された板体部3bが形成されている。また、板体部3bを中央に挟むように、ピン穴6aを有する2つのヒンジ部6、6が形成されている。そして、チェーンリンク2のトッププレート5の一方の端部には、略円弧凹状の薄肉部5aが形成され、他方の端部には、略円弧凸状の薄肉部5bが形成され、隣接するチェーンリンク2どうしが、その薄肉部5a、5bで相互に重なるようにして、一方のチェーンリンク2に形成されたヒンジ部4、4と、もう一方のチェーンリンク2に形成された板体部3bと2つのヒンジ部6、6が指組状に係合し、各部材に穿設されたピン穴6a、ピン穴4a、ピン穴3aに連結ピン7が挿入され、各チェーンリンク2を連結することにより、トップチェーン1が形成されている。本実施例では、トップチェーン1を単品で使用しているが、多数本を並列に配置して幅広のコンベヤとしても構わない。
【0018】
チェーンリンク2を構成する合成樹脂材は、一般的にポリアセタール樹脂が好適に使用される。
【0019】
図2は、図1のII−II線で切断したときのガイドレール10の断面図を示している。この図から明らかなように、ガイドレール10は、トップチェーンのトッププレートを支持するトッププレート支持部10aとリンク本体を収納し案内するリンク本体収納部10bからなり、断面が、略コ字形状を有している。そして、このガイドレール10には、適当な間隔をあけて潤滑剤を供給する潤滑ノズル12が埋設されている。従来の潤滑ノズルでは、供給される潤滑剤の圧力により、走行中のトップチェーンのトッププレート上面に潤滑剤があふれ出ることがあった。一方、本願発明の潤滑ノズル12は、その先端に多孔質部材12aを有しており、じわじわと滲み出るように潤滑剤がガイドレール10上に供給されるため、トッププレート上面に潤滑剤が回り出ることを防止している。なお、ガイドレール10の材質としては、超高分子ポリエチレン、ポリアミド樹脂等の合成樹脂材が好適に使用される。
【0020】
ガイドレール10のトッププレート支持部10aには、図3に示したように潤滑剤誘導溝13を有している。この潤滑剤誘導溝13は、図3に併記した拡大図から明らかなようにガイドレール10のリンク本体収納部10b側には貫通しているが、反対側には、閉鎖されている。さらに、潤滑ノズル12を埋設した位置においても、リンク本体収納部10b側には貫通し、反対側には閉鎖された潤滑剤誘導溝13が設けられている。このような形状を有した潤滑剤誘導溝13により、潤滑剤が外部へ流出することを抑えて、効率よくリンク本体収納部10b側に誘導している。また、図1及び図3において、参照符号14を付した長穴は、ガイドレール10を所定の場所に固定するための取付孔である。
【0021】
なお、本発明で用いられる潤滑剤としては、特に限定されるわけではないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やシリコーン等の油性の低摩擦で摺動性に優れた固体潤滑剤や、シリコーンエマルジョン系、従来使用されてきた石鹸系のコンベヤ潤滑剤の原液を水希釈しないで使用することができる。
【0022】
次に本発明における潤滑ノズルから供給する潤滑剤の量とタイミングを制御する制御装置について図4を用いて説明する。
【0023】
リザーバ31に貯留された潤滑剤は、空圧駆動等によるピストンポンプや電動歯車ポンプ等のポンプ20で主管21を介しピストン式分配器22またはミキシングバルブ23へ間欠的に供給される。ポンプ20を駆動させる事で、主管21の圧力が上昇し、ピストン式分配器22及びミキシングバルブ23は潤滑剤を計量、吐出する。ピストン式分配器22から吐出された潤滑剤は、枝管24bを介し、ガイドレール10に埋設された潤滑ノズル12に供給される。ミキシングバルブ23内には計量した潤滑剤にエア配管25から供給された圧縮空気を混合し吐出する機能を有している。吐出された潤滑剤は、混合された圧縮空気の空気流により枝管24a内を流れ、潤滑ノズル15を介しチェーン表面へ塗布される。
【0024】
ピストン分配器22またはミキシングバルブ23は、主管21から供給される潤滑剤による圧力で作動し、枝管24a、24bへ計量した潤滑剤を吐出する。したがって、主管21の圧力をシステムの末端に設置した圧力スイッチ26で監視することで、潤滑ポイントへ潤滑剤が供給されているか否かを間接的に監視している。主管21の圧力が上昇しても、ピストン分配器22またはミキシングバルブ23自身のトラブルが発生した場合、圧力スイッチ26のみの監視では不十分となる。したがって、センサ27及びセンサ28を用い実際に潤滑剤が流れているか否かの監視を行うことでシステムの信頼性を向上させている。
【0025】
タイマーまたはカウンター式コントローラー等の時限装置29は、主管21に潤滑剤を送給する空圧駆動等によるピストンポンプや電動歯車ポンプ等のポンプ20の作動インターバル(例えば、数時間に1回作動)の設定等の基本制御の他、リザーバ31内のフロートスイッチ30を使用した潤滑剤液面管理、圧力スイッチ26、センサ27またはオイルエアセンサ28を使用した潤滑管理の機能を有している。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上記実施例においては、トップチェーンコンベヤ装置の搬送用チェーンとして合成樹脂材から成形されたトップチェーンを用いているが、スチールチェーンを用いた場合であっても、上記実施例と同様の磨耗粉抑制効果や異音抑制効果が期待でき、その産業上の利用可能性は、きわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例の外観を示す斜視図。
【図2】図1のII−II線で切断したときの断面図。
【図3】本発明に使用されるガイドレールの一実施形態を示した上面図。
【図4】本発明の制御系の一実施形態を示した概略図。
【図5】本発明に使用されるトップチェーンの一実施形態を背後から見たときの斜視図。
【符号の説明】
【0028】
1 ・・・ トッププレート付きコンベヤチェーン(トップチェーン)
2 ・・・ チェーンリンク
3 ・・・ リンク本体
3a ・・・ ピン穴
3b ・・・ 板体部
4 ・・・ ヒンジ部
4a ・・・ ピン穴
5 ・・・ トッププレート
5a、5b ・・・ 薄肉部
6 ・・・ ヒンジ部
6a ・・・ ピン穴
7 ・・・ 連結ピン
10 ・・・ ガイドレール
10a ・・・(ガイドレールの)トッププレート支持部
10b ・・・(ガイドレールの)リンク本体収納部
12 ・・・ 潤滑ノズル
12a ・・・(潤滑ノズルの)多孔質部材
13 ・・・ 潤滑剤誘導溝
14 ・・・ 取付孔
15 ・・・ 潤滑ノズル
20 ・・・ ポンプ
21 ・・・ 主管
22 ・・・ ピストン式分配器
23 ・・・ ミキシングバルブ
24a、24b ・・・ 枝管
25 ・・・ エア配管
26 ・・・ 圧力スイッチ
27、28 ・・・ センサ
29 ・・・ 時限装置
30 ・・・ フロートスイッチ
31 ・・・ リザーバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンク本体上部にフラットなトッププレートを備えたチェーンリンクが、連結ピンで多数連結されてなるトッププレート付きコンベヤチェーンと前記トッププレート付きコンベヤチェーンの下面で前記チェーンを支持案内するガイドレールとを有するトップチェーンコンベヤ装置において、
前記コンベヤ装置が、潤滑剤を供給する潤滑ノズルを有しており、前記潤滑ノズルから供給される潤滑剤の量とタイミングを制御する制御装置を備えたトップチェーンコンベヤ装置。
【請求項2】
前記潤滑剤を供給する潤滑ノズルが、その先端に多孔質部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載のトップチェーンコンベヤ装置。
【請求項3】
前記ガイドレールが、前記トッププレートを支持するトッププレート支持部とリンク本体収納部を有する断面略コ字形状であり、前記トッププレート支持部上に供給された前記潤滑剤を前記リンク本体収納部へ誘導する潤滑剤誘導溝を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトップチェーンコンベヤ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−68940(P2008−68940A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246626(P2006−246626)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【出願人】(592133243)フォーゲルジャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】