説明

トナーの接着力測定装置及び測定方法

【課題】トナーと紙などの支持体、および定着ローラー用離型部材との剥離力(接着力)を正確に測定し評価することができる、トナーの接着力測定装置及び測定方法を提供する。
【解決手段】被測定物である電子写真用トナー(10)を支持体(1)に付着させ、加熱した受け板(5)に加圧体(3)を用いて所定圧力で一定時間密着させて支持体(1)にトナーを溶融定着させ、その後に受け板から支持体(1)を剥離し、剥離時の剥離力を計測する接着力装置(30A)において、加圧体(3)の加圧部材(3a)の加圧面表面にフッ素系樹脂層またはシリコーン系樹脂層(3b)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーの接着力(トナー離型性)、すなわち、トナーが定着部材から剥がれる時点の力を計測するための接着力測定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真において定着機構による定着過程は画像に関わる最後のプロセスであり、画像品質に大きく関わる個所である。しかしながら電子写真の定着機構、特に静電荷像現像用トナーに対する性能についての評価方法は適当なものがないのが現状で、トナーの定着における得性評価を正確にまた簡単に測定できる装置が望まれている。
【0003】
従前のこの種の定着ローラーとトナーの剥離強度を測定するための装置としては、本出願人により、加熱及び温度設定ができるサンプル支持台部と、このサンプル支持台部に対して垂直に上下移動して測定サンプルの一部を持ち上げ剥離し、その剥離強度をフォースゲージにより測定する剥離強度測定部と、を有する剥離強度測定装置が開示されている(特許文献1)。この装置は受け板とトナー面との剥離力を測定する装置で定着ローラの離型材料評価ツールの不備があり、同公報では定着ローラの開発の側面からの評価装置が提示されるが、当該装置は端から剥離していく装置であり、トナー自体の定着性の評価としては外因が入る可能性があり、測定値は必ずしも正確な値とは限らず、トナーの機能評価の側面からは不充分であり、更に有用な評価方法と装置が望まれる。
【0004】
上記特許文献1におけるトナーと定着ローラの剥離強度の測定では、主に剥離材料の評価を想定している。この公報では、トナーを支持体に定着させる機構については記載が無く、本発明の目的であるトナーの機能評価としては圧力、温度、時間等のパラメータが不充分である。また、支持体の端部を保持して引上げる方式のため、接着力が弱い場合には支持体のこしによって自己剥離してしまう場合があり、微弱な剥離力の測定にはやや難がある。
【0005】
また、粘着性を評価するタッキング試験機に関して、サンプル試料にプローブの先端を押しつけて試料を引き上げる時の応力から粘着性を測定するためのプローブの制御手段、応力検出センサ、データ処理手段、試料台と、温度制御手段からなる装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。但し、この装置は、トナー自体の粘着力を測定するだけであり、トナー別物質との剥離力は測定できない。
【0006】
また前記の特許文献2では、粘着性を評価するタッキング試験機に関するものであり、試料にプローブを押しつけて試料を引き上げる時の応力から粘着性を測定するものである。プローブの制御手段、応力検出センサ、データ処理手段、試料台と、温度制御手段からなる装置では、支持体を支持する機構が無く、支持体にトナーを定着させた時の剥離力を測るという目的には適用できない。
【0007】
さらに、粉体を直接試料台に乗せて試験すると、測定を開始するまでの熱履歴や、トナーの密度の違いによるばらつきなどにより、測定精度に問題がある。また、加熱のパラメータに対する機能が無く、支持体にトナーを定着させた時の剥離力を測るという目的には適用できない。
【0008】
接着状態から測定するため、定着のように極弱い接着力では90°、180°の剥離角度の場合、接着力が弱いために支持体のこしによって自己剥離してしまう場合があり、微弱な剥離力の測定には難がある。特に、ワックス入りのトナーのような場合、加熱時のワックスの動きが品質を左右する場合もあり、このようなワックスの動きの機能の評価には不向きである。
【0009】
この他、サンプルを紙やダンボール等を接着した場合の接着強度を測定する装置で、接着剤で二つのサンプルを加圧して接着後、横方向に引っ張りその強度を測定する装置が知られている(例えば特許文献3参照)。しかし、この既知装置は、加熱する機能が無く、トナー用途には不向きである。また剥離強度の測定が横方向なので熱をかけてトナーを定着させた場合でもトナー自体の剥離力以外の要因が入る。
【0010】
他に、これらに似た測定の方法が、非特許文献1に規格化されている。この規格において指定される方法は、インキのタック性を測定する方法で、並行して設置された二つの回転するローラー間にインキを入れ、片方を駆動させ、そのときもう片方のローラーの応力を測定することでインキのタック性を測定する。しかし、この装置では、電子写真用トナーでは測定できないのと、この装置ではトナーのせん断力の測定のみで他のたとえば紙や定着ローラーなどの低付着性部材との接着性を測定できない。
【0011】
従来のトナーの評価法として、先に挙げたものを含め、多くの場合、長期のランニング試験や、ユニットによる評価が行なわれているが、こうした試験は時間を要する事と、本来のトナーと離型部材との離型機能を評価する方法としては外因からの誤差が極めて大きく絶対的な評価としては問題があり的確な評価が出来ない。またこうした評価は汎用性に乏しく適用範囲が狭いことが問題となっていた。
【0012】
微弱な剥離力を精度良く測定するためには、トナーを付着させた支持体を試料として用いることが出来ること、温度、圧力、加圧の時間、剥離速度等のパラメータを設定できることが必要な機能である。
【0013】
上記問題点に対処すべく、既に、本出願人は、実際に使用する像形成支持部材、定着用加熱板、加圧体を使用して剥離力を計測する装置により、実施する像形成支持部材へのトナーの定着状態を考慮した測定を実現し、実機や実機ユニットを必要とせず、実機対応が取りやすい、トナー性能を評価するために不可欠な熱、圧、加圧時間、剥離速度などのパラメータをそれぞれ自由に組み合わせて設定することが可能であり、汎用性のある静電荷像現像用トナーの接着力装置及び測定方法を提案している(特許文献4)。
【0014】
この特許文献4に開示されている、静電荷像現像用トナーの接着力測定装置では、概略、トナーが定着される前記像形成支持部材に、静電荷像現像用トナー粉を載置付着し、該トナー粉側から加熱する定着用加熱ユニットと、該定着用加熱ユニットと前記像形成支持部材とを像形成支持部材側から加圧する加圧端子ユニットとにより、一定時間圧力をかけながらトナーを前記像形成支持部材上に加熱定着させ、該加熱定着後に前記定着用の加圧端子ユニットを加圧状態から離間方向に反転移動すると同時に、前記定着用の加圧端子ユニットに加圧された前記像形成支持部材を前記定着用加熱ユニットから剥離させ、剥離時の剥離力を計測するようにしている。
【0015】
【特許文献1】特開平10−332571号公報
【特許文献2】特許第3100231号公報
【特許文献3】特許第3126832号公報
【特許文献4】特開2005−3496号公報
【非特許文献1】JIS規格 JIS K 5701-1 平版インキ試験方法
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上述の特許文献4に開示されている如き、支持体に被測定物の電子写真用トナー粉を付着させ、加熱された受板と加圧体との間で一定時間圧力をかけながら加熱定着させ、加圧後に受板から剥離させ、その時の剥離力を計測する装置の更なる改良発明であり、支持体をより高精度で固定することができる装置、またこれによる測定方法を提供するものである。
【0017】
すなわち、本発明の目的は、オフセットなどと電子写真におけるトナー定着の問題を解決することを促進するために、トナーと紙などの支持体、および定着ローラー用離型部材との剥離力(接着力)を正確に測定し評価することができる、トナーの接着力測定装置及び測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
課題解決のため、請求項1の発明では、被測定物である電子写真用トナーを支持体に付着させ、加熱した受け板に加圧体を用いて所定圧力で一定時間密着させて前記支持体にトナーを溶融定着させ、その後に前記受け板から前記支持体を剥離し、剥離時の剥離力を計測する接着力測定装置において、前記加圧体の加圧面表面にフッ素系樹脂層またはシリコーン系樹脂層を設けるようにする。これにより電子写真におけるトナーの定着工程でのトナーの定着離型性を測定することができる。加圧体に支持体を装着するとき、接触部の摩擦が小さいと支持体の変形や、加圧体が弾性体の場合の変形がおきにくく、結果、精度の高い離型性の測定が可能となる。
【0019】
請求項2の発明では、前記加圧体の加圧面を静摩擦係数で0.01〜0.5の低摩擦係数とする。加圧体に支持体を装着するとき、接触部の摩擦を充分に小さくすることで、支持体の変形や、加圧体が弾性体の場合の変形がおきにくく、結果、精度の高い離型性の測定が可能となる。
【0020】
前記加圧面の角を面取りされた形状とすると好適で、支持体を加圧面に密着させる時、支持体が加圧体の角に引っかかることなくスムーズに密着できる。あるいは、前記加圧面の両脇にコロが設けるようにするのも好適で、支持体を加圧面に密着させる時、支持体が弾性体などの摩擦の大きいものであっても、引っかかることなくスムーズに密着できる。コロを加圧面より上に設置すると好ましい。コロが加圧面と同じ面にあると加圧時にコロが受け板にあたり,正確な圧力を支持体上のトナーに与えることができない虞があるがこれを回避できる。
【0021】
加圧体の加圧部を金属からなるようにしても良く、加圧面の平滑性を高く出来るので加圧時に圧力が均等にかかるようになり、離型性の測定精度が高まる。あるいは加圧体の加圧部が弾性体からなるようにしても良く、電子写真の定着に用いられるローラは弾性体であり、電子写真装置でも、定着ローラは一般に弾性体で構成されており、電子写真トナーの評価に適当である。また弾性体にすることで加圧体と支持体が密着しやすくなるので測定精度が向上する利点もある。
さらには、受け板は水平方向に設置され、加圧と剥離方向が前記受け板の面に対して垂直方向にしても良く、水平方向に引っ張り、剥離した場合、摩擦等の離型性以外の要因による影響が計測結果に現れてしまうのを防げる。
【0022】
支持体はフィルム状のものが良く、フィルムであると、トナーを付着させやすい。また加圧体に設置しやすい。この支持体は加圧体に固定されるようにしても良く、固定することで加圧方向と剥離方向が一致し正確な離型性(剥離力)を測定することができる。
【0023】
また、支持体の支持体端を引張ることで加圧体の加圧面に密着固定される構成も好ましい。接着などにより固定するのは扱いにくく、また完全に固定するまでに時間が要する。それに対し、支持体の端を引張ることで固定する方法は、固定するのが容易であるとともに、支持体を加圧面に密着させることが出来る。
【0024】
支持体は紙であっても良い。電子写真の画像支持体は主に紙であるから、トナーの離形性を測る場合、使用実態に即した評価ができて適当である。また、支持体は樹脂とするのも好ましい。支持体を樹脂にすることにより紙の伸びや強度による影響や、平滑度の高いフィルムを用いることが出来、そのため精度の良い測定ができる。
【0025】
また、受け板は必要に応じて種類を交換できるようにしておくと好適である。受け板にはさまざまのものを用いることができるが、表面をフッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂を用いた場合、電子写真の定着部材に相当し、実態に即したトナーの電子写真での定着性を測定することができる。
【0026】
請求項15に係る本発明はトナー離型性の評価方法であり、請求項1〜14のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの接着力測定装置を使用することを特徴とする。このようにして、製造したトナーの定着離型性を本発明の装置で測定管理することにより好適なトナーの接着力測定が行われ、定着性および画像品質の高い電子写真用トナーを提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、被測定物である電子写真用トナーを支持体に付着させ、加熱した受け板に加圧体を用いて一定の圧力で一定時間密着させ、支持体にトナーを溶融定着させる。その後受け板から支持体を剥離する。その剥離時の力を計測する装置が有効で、支持体は加圧体に固定され、加圧定着後受け板から支持体を剥離するとき、加圧体を垂直方向に動かす。この場合、剥離は受け板とトナー面との間で起こり、剥離力の測定が正確になるが、さらに、加圧体の支持体と接触する面を低摩擦係数にしているので、支持体装着時に支持体へかかる力が小さくなり、精度良く装着することが出来、その結果測定精度が更に向上する。また加圧体の両脇にコロを設けることで支持体を精度よく装着することができ、測定の精度も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の実施の形態について、図面に従って詳細に説明する。図1は本発明に係る測定装置の第1の実施形態を示す全体構成図である。この測定装置は、離型部材からなる受け板5を有し任意の温度に加熱、保温、温度計測ができる受板部(ヒータ内蔵受け板部)4と、試料である支持体(像形成支持部材)1を保持し受板部4との接触位置に加圧端子部30Aと、該加圧端子部30Aを下降上昇させる機構とを有している。上下駆動用モータ(ステッピングモータ)8で錘6、加圧体3が受板部4に対して下降、上昇する。加圧端子部30Aは錘6の重量で設定される圧力で受板部4に加圧され、設定した温度に熱せられる。
【0029】
加圧端子部30Aの下降時は、ステッピングモータ8で錘6が下降し同時に加圧体3が定着用受板部4の受け板5上に下降する。上昇時にはステッピングモータ8で錘6と加圧端子部30Aが上昇し、同時に支持体1と定着用受板部4の受け板5との間の剥離の負荷がロードセル9により計測される。この時のデータはPC(電算機)20に送られ演算処理される。制御解析用PC20は装置のパラメータを設定し測定動作を指示する機能と、データ転送、データ処理・解析の機能を持つ。
【0030】
図1の定着用加熱板ユニットAは、内部に加熱手段を有する受板部4と、その上に保持される定着用受板部Aの受け板5で構成される。定着用加熱の受け板5は図示されていないストッパーなどで上下左右にズレが生じないように固定される。受板部は必要に応じて加圧力を測定できるロードセル等も設置する。
【0031】
図1の加圧端子部(加圧端子ユニット)30Aは、加圧体3と加圧体3の保持部、支持体1を保持するための試料クランパ2で構成され、支持体1を試料クランパ2で保持することができる。加圧端子部30Aは保持部に前後左右のアソビを持たせる形で取りつけられており、下降・加圧時に受け板5と片寄り無く密着するようになっている。
【0032】
本発明の加圧端子部30Aでは、加圧体3の加圧面表面に薄いフッ素系樹脂層3aを設けてある。フッ素系樹脂層3aは、例えば、フッ素系樹脂をコーティングすることで加圧面表面に形成される。こうして、加圧面が、静摩擦係数で0.01〜0.5となる低摩擦係数となるようにしてある。このように、支持体接触面にフッ素樹脂コート(薄膜層)を設けて支持体を装着するときの摩擦を減らすことで、加圧端子が弾性体時のときの変形、支持体自体の変形を防止し、支持体を加圧面に密着することを容易としている。
【0033】
支持体1は粉体トナー10を付着させた試料で、粉体トナー付着面を下向きにして、加圧端子部30Aが下降した時に受板部4に設置された受け板(離型部材)5に接触し、設定した圧力と温度で定着されるような位置にセットし、試料クランパ2で固定される。
【0034】
図1の電算機(制御、解析用PC)20は、装置のパラメータ制御、指示、データ転送、データ処理、データ解析などのプログラムと機能を持つパーソナルコンピュータ(PC)で、自動測定、手動測定それぞれに対応できるプログラムとなっている。
【0035】
図1の、上下駆動用モータ8を含み構成された剥離駆動部は、90°の剥離時の測定に使用するユニットであり、90°剥離時には加圧端子部30Aを上下方向に駆動する機能となっており、剥離時には引張の負荷をロードセル7にて計測する。
【0036】
図2において、支持体1は粉体トナーを付着させた試料で、加圧端子部30Aが下降して、定着用受板部4に設置された受け板5に接触し、設定した圧力と温度で定着されるように、加圧端子部30Aの加圧面部分にトナー付着面が下向きになるように位置決めし、試料クランパ2でたるみ無くセットされる。測定を開始すると図2(a)のように加圧端子部30Aが下降して設定された温度と加圧力で定着され、設定された時間保持した後、図2(b)に示すように、設定された速度で上昇し、ロードセル7にて負荷が計測される。
【0037】
測定時の温度コントロールはPID制御などでヒータ温度が制御され、設定温度±2℃以内が望ましく、±1℃以内が更に望ましい。また、加熱を停止して温度下降の勾配を持たせた試験もできる。温度検知は接触、非接触の温度計測手段のいずれかで検知されるが精度の面からは接触型が好ましい。また、測定に使用されるフォースゲージは汎用のものが使用可能であるが、精度の面からロードセルを用いることが望ましい。データは演算されて、最大値、最小値、平均値、データ数のほか、全データからの各種解析データが計算されてアウトプットされる。例えば、図3に示すごときデータが得られる。
【0038】
〔測定実施例〕この方法で、図2に示した加圧端子部を用いて図1の機構を有する静電荷像現像用トナーの接着力測定装置による測定の一例を示す。加圧部材3aはシリコーン系樹脂のものを用い、接触面にはテフロン(登録商標)テープを貼付してフッ素系樹脂層を設けた。表面の静摩擦係数は0.2であった。離型部材はPFAで表面がコートされたアルミ板を用いた。支持体である電子写真用複写紙(リコー社製、タイプ6200紙)上にWAXを含有した電子写真用トナーを15×15mmの面積で1.0mg/cmの付着量で付着させ、図に示すようにトナー面を下向きにして加圧端子部30Aと定着用受板部Aの受け板5の接触部分にトナー面が合うように位置決めして試料クランパ2で保持させ加圧端子部に固定した。定着用受板部5にフッ素系樹脂であるPFAコート層を持つ離型部材のテストピースをセットした。
【0039】
次に電算機10(以下PCとも略記する)のプログラムでロードセルの風袋除去を行ない、測定パラメータとして温度を120°、加圧体3の下降スピードを3mm/sec、加圧時間を2sec、上昇スピード(剥離速度)を5mm/secに設定した。また、加圧力は錘により0.2MPaとなるようにした。ヒータはPID制御により±2℃以内で制御される。
【0040】
これらの条件で定着、剥離を行った。ヒータが安定状態となった時点でプログラムの測定ボタンを押下する。加圧体3の降下が始まる。ステッピングモータ8により錘6が降下し、加圧体3が定着用受板部A上まで降下する。加圧状態に入り、10sec後、ステッピングモータ8により錘6が上昇、ステッピングモータ8により加圧体3が設定された10mm/secのスピードで上昇する。同時にロードセル7により荷重の測定が開始され、5msecの間隔でデータがPC20へ転送される。錘6はホーム位置に戻り、加圧体3は設定した距離25mmを移動した時点で停止する。測定終了した試料は試料クランパ2から取り外す。PC20上では転送されたデータが演算され、最大値、最小値、平均値、データ数のほか、全データからの各種解析データが計算されてアウトプットされる。
【0041】
上記測定条件で定着、剥離を行ったところ、剥離強度は0.90〜0.94Nの範囲で計測された。従来装置にて同一条件で測定し得られたデータと比較したところ、各5回の試験でのサンプルの剥離強度のピーク値の差が従来装置の場合よりも少ない計測結果が得られることが判った。
【0042】
〔第2実施形態〕
次に、第2の実施の形態を説明する。この実施の形態は、前実施形態とは、加圧端子部の構成のみが異なっている。すなわち、図4に示すように、第2実施形態における加圧端子部30Bでは、加圧部材3aの角が丸く面取りされていて加圧面のフッ素樹脂コート層3bも接触面周部が曲面になっている。その他の部分の構成は、前実施形態と全く同じであり、説明を省略する。
【0043】
支持体接触面にはフッ素樹脂コート層を設けて支持体を装着するときの摩擦を減らすことで、加圧端子が弾性体時のときの変形、支持体自体の変形を防止し、支持体を加圧面に密着させて装着することができる。また、支持体接触面にはフッ素樹脂コートを設けて支持体を装着するときの摩擦を減らすことで、加圧端子が弾性体時のときの変形、支持体自体の変形を防止し、支持体を加圧面に密着することを容易としている。
【0044】
〔第3実施形態〕
次に、第3の実施の形態を説明する。この実施の形態は、これまでの実施形態とは、加圧端子部の構成のみが異なっている。すなわち、図5に示すように、第3実施形態における加圧端子部30Cでは、加圧部材3aの両側端部にコロ3c、3cが設けてある。また、加圧面の中央部分はフッ素樹脂コート層3bが設けられている。コロ3cの機能により、支持体1を加圧端子部30Cに装着する時に角などで引っかかることなく加圧面に密着させて装着することができる。その他の部分の構成は、これまでの実施形態と全く同じであり、説明を省略する。
【0045】
図5のコロ付加圧端子部30Cを用いて前述したと同じ測定条件で測定したところ、剥離強度は、0.92〜0.948Nの範囲で計測された。
【0046】
以上説明した各実施形態から判るように、本発明が前提とする、(特許文献4の評価装置同等の)被測定物である電子写真用トナーを支持体に付着させ、加熱した受け板に加圧体を用いて一定の圧力で一定時間密着させ、支持体にトナーを溶融定着させ、支持体が加圧体に固定され、加圧定着後受け板から支持体を剥離するとき、加圧体を垂直方向に動かしこの時の剥離力を計測するようにした装置・方法では、既に知られているように、任意の離型部材(受板、定着ローラ等に相当)、トナーの試験を様々なパラメータで容易に行なえ、汎用性があり、短時間で、また実機評価で問題とされる外因の誤差が少なく固定的な従来の方法よりも優れた評価が行なえるようになる(特許文献4にても見られる既知効果)。
【0047】
そして、特に、本発明では、詳述したような支持体接触面にはフッ素樹脂コートを設けた本発明特有の加圧端子部を用いるようにしているので、これにより、特許文献4で使用されているごとき加圧端子部を具備した装置の場合に比べて一段とばらつきが少なく精度が高い評価が行えるようになる。なお、フッ素系樹脂に替えて、シリコーン系樹脂から選ばれた材料からなる被覆部(コート)を支持体接触面に設けても良く、略同等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の静電荷像現像用トナーの接着力測定装置の構成全体を示す断面図である。
【図2】(a)は本発明の装置に係る加圧端子部を下降しトナー定着した時の断面図、(b)は加圧端子部を上昇させ垂直剥離計測する場合の説明断面図である。
【図3】本発明の各種解析データのアウトプットされた例を示す説明図である。
【図4】本発明に係る第2実施形態の加圧端子部の断面図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態の加圧端子部の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…支持体
2…試料クランパ
3…加圧体
3a…加圧部材
3b…フッ素樹脂(コート)層
3c…コロ
4…(定着用)受板部〔ヒータ内蔵受け板部、加熱ユニット〕
5…受け板(離型部材)プレート
6…錘
7…ロードセル
8…ステッピングモータ(上下駆動用モータ)
10…粉黛トナー
20…制御・解析用PC(電算機)
30A,30B,30C…加圧端子部(加圧端子ユニット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物である電子写真用トナーを支持体に付着させ、加熱した受け板に加圧体を用いて所定圧力で一定時間密着させて前記支持体に前記トナーを溶融定着させ、
その後に前記受け板から前記支持体を剥離し、剥離時の剥離力を計測する接着力測定装置において、
前記加圧体の加圧面表面にフッ素系樹脂層またはシリコーン系樹脂層を設けてあることを特徴とする接着力測定装置。
【請求項2】
前記加圧体の加圧面を静摩擦係数で0.01〜0.5の低摩擦係数としたことを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記加圧面の角が面取りされていることを特徴とする請求項1または2記載の測定装置。
【請求項4】
前記加圧面の両脇にコロが設けてあることを特徴とする請求項1または2記載の測定装置。
【請求項5】
前記コロが前記加圧面より上に設置されていることを特徴とする請求項4記載の測定装置。
【請求項6】
前記加圧体の加圧部が金属からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の測定装置。
【請求項7】
前記加圧体の加圧部が弾性体からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の測定装置。
【請求項8】
前記受け板は水平方向に設置され、加圧と剥離方向が前記受け板の面に対して垂直方向であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の測定装置。
【請求項9】
前記支持体はフィルム状であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の測定装置。
【請求項10】
前記支持体は前記加圧体に固定されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の測定装置。
【請求項11】
前記支持体は支持体端を引張ることで前記加圧体の前記加圧面に密着固定されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の測定装置。
【請求項12】
前記支持体は紙であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の測定装置。
【請求項13】
前記支持体は樹脂であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の測定装置。
【請求項14】
前記受け板は必要に応じて種類を交換できることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の測定装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の電子写真用トナーの接着力測定装置を使用することを特徴とする電子写真用トナーの接着力測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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