説明

トナーバインダー組成物およびトナー組成物

【課題】 低温定着性と耐ホットオフセット性の両立(定着温度幅の広さ)に優れたトナーバインダーおよびトナーを提供すること。
【解決手段】 少なくともカルボン酸成分(x)とポリオール成分(y)を構成単位として有し、カルボン酸成分(x)が、芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体から選ばれる2種以上のジカルボン酸(x1)を合計で80モル%以上含有し、かつ、さらに少なくとも、3価以上のポリカルボン酸(x2)をも含有し、ポリオール成分(y)が、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(y1)を80モル%以上含有する、ポリエステル樹脂(A)、ならびに分子内に少なくとも2つの脂肪族または芳香族の環状構造を有し、飽和炭素原子の数が5〜50個である化合物(B)を含有するトナーバインダー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナーバインダー組成物およびトナー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等における画像の定着方式として一般的に採用されている熱定着方式用の電子写真用トナーバインダーは、高い定着温度でもトナーが熱ロールに融着せず(耐ホットオフセット性)、定着温度が低くてもトナーが定着できること(低温定着性)が要求されている。
低温定着性と耐ホットオフセット性のいずれにも極めて優れた、ポリエステル系トナーバインダーからなるトナー組成物が知られている(特許文献1参照)。しかし、近年、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立(定着温度幅の拡大)の要望がますます高まっており、更なる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2010/114020号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立(定着温度幅の広さ)に優れたトナーバインダーおよびトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、これらの課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、下記のとおりである。
(I) 少なくともカルボン酸成分(x)とポリオール成分(y)を構成単位として有し、カルボン酸成分(x)が、芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体から選ばれる2種以上のジカルボン酸(x1)を合計で80モル%以上含有し、かつ、さらに少なくとも、3価以上のポリカルボン酸(x2)をも含有し、ポリオール成分(y)が、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(y1)を80モル%以上含有する、ポリエステル樹脂(A)、ならびに分子内に少なくとも2つの脂肪族または芳香族の環状構造を有し、飽和炭素原子の数が5〜50個である化合物(B)を含有するトナーバインダー組成物。
(II) 上記のトナーバインダー組成物と着色剤、並びに必要により、離型剤、荷電制御剤、および流動化剤から選ばれる1種類以上の添加剤を含有するトナー組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立(定着温度幅の広さ)に優れたトナーバインダー、およびトナーを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳述する。
本発明のトナーバインダー組成物中に含有されるポリエステル樹脂(A)は、少なくともカルボン酸成分(x)とポリオール成分(y)を構成単位として有するポリエステル樹脂であって、低温定着性と耐ホットオフセット性を両立させる(定着温度幅の拡大)観点から、芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体から選ばれる2種以上のジカルボン酸(x1)を合計で80モル%以上含有し、かつ、さらに少なくとも、3価以上のポリカルボン酸(x2)をも含有するカルボン酸成分(x)と、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(y1)が80モル%以上含有されたポリオール成分(y)とを構成単位とする。
【0008】
芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体から選ばれる2種以上のジカルボン酸(x1)としては、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸等);およびこれらのエステル形成性誘導体;等から選ばれる2種以上が挙げられる。
上記エステル形成性誘導体としては、酸無水物、アルキル(炭素数1〜24:メチル、エチル、ブチル、ステアリル等、好ましくは炭素数1〜4)エステル、および部分アルキル(上記と同様)エステル等が挙げられる。以下のエステル形成性誘導体についても同様である。
なお、本発明においては、芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体から選ばれる2種以上のジカルボン酸(x1)において、芳香族ジカルボン酸とその同一ジカルボン酸のエステル形成性誘導体とは、1種として数える。
これら(x1)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から好ましくは、以下に挙げた(1)〜(3)から選ばれる2種以上である。
(1)テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体
(2)イソフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体
(3)フタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体
好ましい組合せとしては(1)と(2)、および(1)と(3)であり、さらに好ましくは、(1)と(2)の重量比が(1)/(2)=3/7〜7/3であり、(1)と(3)の重量比が(1)/(3)=3/7〜7/3である。
【0009】
ジカルボン酸(x1)以外のカルボン酸成分(x)としては、(x1)以外のジカルボン酸、3価以上のポリカルボン酸(x2)、および芳香族モノカルボン酸(x3)等が挙げられる。
カルボン酸成分(x)のうち、(x1)以外のジカルボン酸としては、炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸(例えばコハク、アジピン、およびセバシン酸);炭素数6〜40の脂環式ジカルボン酸〔例えばダイマー酸(2量化リノール酸)〕;炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸(例えば、ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン、フマル、シトラコン、およびメサコン酸)およびこれらのエステル形成性誘導体;等が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルカンジカルボン酸;炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体であり、さらに好ましくは、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、および/またはそれらのエステル形成性誘導体である。
【0010】
3価以上(好ましくは3〜6価)のポリカルボン酸(x2)としては、炭素数9〜20の芳香族カルボン酸(トリメリット酸、およびピロメリット酸等)、炭素数6〜36の脂肪族(脂環式を含む)カルボン酸(ヘキサントリカルボン酸、およびデカントリカルボン酸等)、およびこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、トリメリット酸、ピロメリット酸、およびこれらのエステル形成性誘導体である。
【0011】
芳香族モノカルボン酸(x3)としては、炭素数7〜14の安息香酸およびその誘導体(誘導体とは、安息香酸の芳香環の1個以上の水素が、炭素数1〜7の有機基に置換された構造を有するものを意味する。例えば、安息香酸、4−フェニル安息香酸、パラ−tert−ブチル安息香酸、トルイル酸、オルト−ベンゾイル安息香酸、およびナフトエ酸。)、並びに炭素数8〜14の芳香族置換基を有する酢酸の誘導体(誘導体とは、酢酸のカルボキシル基に含まれる水素以外の1個以上の水素が、炭素数6〜12の芳香族基に置換された構造を有するものを意味する。例えば、ジフェニル酢酸、フェノキシ酢酸、およびα−フェノキシプロピオン酸。)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。これらのうち好ましくは、炭素数7〜14の安息香酸およびその誘導体であり、さらに好ましくは安息香酸である。(x3)を用いると、トナーに用いた時の耐ブロッキング性がより良好となる。
【0012】
カルボン酸成分(x)中のジカルボン酸(x1)の量は、80モル%以上であり、好ましくは83〜98モル%、さらに好ましくは85〜95モル%である。
また、(x)中の3価以上のポリカルボン酸(x2)の量としては20モル%以下が好ましく、さらに好ましくは1〜15モル%、とくに好ましくは2〜12モル%である。
また、(x)中の芳香族モノカルボン酸(x3)の量としては10モル%以下が好ましく、さらに好ましくは0.1〜9.5モル%、とくに好ましくは0.5〜9モル%である。
【0013】
ポリオール成分(y)に用いられる炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(y1)としては、炭素数2〜10のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、および1,10−デカンジオール等);炭素数4〜10のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等);等が挙げられる。
これら(y1)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、分子末端に1級水酸基を有する、分岐のない脂肪族ジオール(エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、および1,10−デカンジオール等)が好ましい。なお、ポリエステル樹脂(A)のうち後述する線形ポリエステル樹脂(A1)の場合は、炭素数3〜6の分岐のある脂肪族ジオール(1,2−プロピレングリコール等)も好ましい。
保存安定性の観点から、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールがさらに好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。
【0014】
脂肪族ジオール(y1)以外のポリオール成分(y)としては、(y1)以外のジオール、および3価以上のポリオ−ルが挙げられる。
ポリオール成分(y)のうち、(y1)以外のジオールとしては、炭素数11〜36のアルキレングリコール(1,12−ドデカンジオール等);炭素数11〜36のアルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレンエーテルグリコール等);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、および水素添加ビスフェノールA等);上記脂環式ジオールの(ポリ)オキシアルキレン〔アルキレン基の炭素数2〜4(オキシエチレン、オキシプロピレン等)。以下のポリオキシアルキレン基も同じ〕エーテル〔オキシアルキレン単位(以下AO単位と略記)の数1〜30〕;および2価フェノール〔単環2価フェノール(例えばハイドロキノン)、およびビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールS等)〕のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30);等が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、ビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)である。
【0015】
3価以上(好ましくは3〜8価)のポリオールとしては、炭素数3〜36の3〜8価もしくはそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオールおよびその分子内もしくは分子間脱水物、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、およびジペンタエリスリトール;糖類およびその誘導体、例えばショ糖およびメチルグルコシド);上記脂肪族多価アルコールの(ポリ)オキシアルキレンエーテル(AO単位の数1〜30);トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラックおよびクレゾールノボラック等、平均重合度3〜60)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)等が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、3〜8価もしくはそれ以上の脂肪族多価アルコール、およびノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)であり、さらに好ましいものはノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)である。
【0016】
ポリオール成分(y)中の脂肪族ジオール(y1)の量〔重縮合反応中に系外に留去されるものは除く、以下同様。〕は、80モル%以上であり、好ましくは83モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上である。
【0017】
本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、通常のポリエステル製造法と同様にして製造することができる。例えば、カルボン酸成分(x)とポリオール成分(y)とを、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150〜280℃、さらに好ましくは170〜260℃、とくに好ましくは190〜240℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、とくに2〜40時間である。反応末期の反応速度を向上させるために減圧することも有効である。
ポリオール成分(y)とカルボン酸成分(x)との反応比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/2、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.3、とくに好ましくは1.3/1〜1/1.2である。
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、特開2006−243715号公報に記載の触媒〔チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、およびそれらの分子内重縮合物等〕、および特開2007−11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート、およびチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)、および酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。
【0018】
本発明のトナーバインダー組成物中に含有されるポリエステル樹脂(A)は2種以上を併用してもよく、低温定着性と耐ホットオフセット性および粉砕性の両立の点で、線形ポリエステル樹脂(A1)と架橋ポリエステル樹脂(A2)とを各々1種以上併用してもよい。(A)は、(A2)と必要により(A1)で構成されるのが好ましい。
線形ポリエステル樹脂(A1)は、通常、前記ジオール〔(y1)および必要により(y1)以外〕と、ジカルボン酸〔(x1)および必要により(x1)以外〕および必要により芳香族モノカルボン酸(x3)とを、重縮合させて得られる。また分子末端を前記ジカルボン酸もしくは3価以上のポリカルボン酸(x2)の無水物で変性したものであってもよい。
架橋ポリエステル樹脂(A2)は、通常前記のジカルボン酸〔(x1)および必要により(x1)以外〕およびジオール〔(y1)および必要により(y1)以外〕と共に、前記の3価以上のポリカルボン酸(x2)および/または3価以上のポリオールを反応させて得られる。
3価以上のポリカルボン酸(x2)および/または3価以上のポリオールとしては、ノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)、および炭素数9〜20の3価以上の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、およびピロメリット酸等)が好ましく、さらに好ましくは、3〜6価の芳香族ポリカルボン酸である。
(A2)を得る場合の3価以上のポリカルボン酸(x2)と3価以上のポリオールの比率は、これらのモル数の和が、全ポリオール成分(y)と全カルボン酸成分(x)のモル数の合計に対して、好ましくは0.1〜40モル%、さらに好ましくは1〜25モル%、とくに好ましくは3〜20モル%である。
【0019】
ポリエステル樹脂(A)のうち、線形ポリエステル樹脂(A1)中のTHF(テトラヒドロフラン)不溶解分は、トナー化時の低温定着性の点から、5重量%以下が好ましい。さらに好ましくは4重量%以下、とくに好ましくは3重量%以下である。(A1)のTHF不溶解分が少ない方が低温定着性向上の点で好ましい。
また、架橋ポリエステル樹脂(A2)のTHF不溶解分は、好ましくは1〜70重量%である。下限は、さらに好ましくは2重量%であり、上限は、さらに好ましくは60重量%、とくに好ましくは50重量%である。上記範囲のTHF不溶解分を含有させることは、耐ホットオフセット性が向上する点で好ましい。
【0020】
本発明におけるTHF不溶解分は、以下の方法で求めたものである。
試料0.5gに50mlのTHFを加え、3時間撹拌還流させる。冷却後、グラスフィルターにて不溶解分をろ別し、グラスフィルター上の樹脂分を80℃で3時間減圧乾燥する。グラスフィルター上の乾燥した樹脂分の重量と試料の重量比から、不溶解分を算出する。
【0021】
線形ポリエステル樹脂(A1)の酸価〔AV〕は、好ましくは2〜100(mgKOH/g、以下同じ)、さらに好ましくは5〜80、とくに好ましくは15〜60である。酸価が2以上であるとトナー化時の低温定着性が良好であり、100以下であるとトナー化時の帯電特性が低下しない。
架橋ポリエステル樹脂(A2)の酸価は、好ましくは0〜100である。酸価が100以下であるとトナー化時の帯電特性が低下しない。酸価は、帯電量の観点から、さらに好ましくは4〜80、とくに好ましくは10〜60である。
【0022】
また、(A1)の水酸基価〔OHV〕は、好ましくは10〜125(mgKOH/g、以下同じ)、さらに好ましくは20〜100である。水酸基価が125以下であるとトナー化時の耐ホットオフセット性がより良好となる。
(A2)の水酸基価は、好ましくは0〜100、さらに好ましくは0〜80、とくに好ましくは0〜50である。水酸基価が100以下であるとトナー化時の耐ホットオフセット性がより良好となる。
【0023】
本発明において、ポリエステル樹脂の酸価および水酸基価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定される。
なお、試料中に架橋にともなう溶剤不溶解分がある場合は、以下の方法で溶融混練後のものを試料として用いる。
混練装置 : 東洋精機(株)製ラボプラストミルMODEL4M150
混練条件 : 130℃、70rpmにて30分
【0024】
ポリエステル樹脂(A)のTHF可溶分のピークトップ分子量(以下Mpと記載)は1000〜20000が好ましい。
(A)のうち、線形ポリエステル樹脂(A1)のMpは、さらに好ましくは1000〜15000、とくに好ましくは1500〜12000である。Mpが1000以上であると定着に必要な樹脂強度が発現し、15000以下であるとトナー化時の低温定着性が良好である。
また、架橋ポリエステル樹脂(A2)のMpは、トナーの耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、2000〜20000がさらに好ましく、とくに好ましくは3000〜10500、とくに好ましくは4000〜9000である。
【0025】
本発明において、ポリエステル樹脂の分子量〔Mp、および数平均分子量(以下Mnと記載)〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定される。
装置(一例) : 東ソー(株)製 HLC−8120
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF(テトラヒドロフラン)溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
得られたクロマトグラム上で最大のピーク高さを示す分子量をピークトップ分子量(Mp)と称する。また、分子量の測定は、ポリエステル樹脂をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
【0026】
本発明に用いるポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度〔Tg〕は、定着性、保存性および耐久性等の観点から、30〜75℃が好ましく、さらに好ましくは40〜72℃、特に好ましくは50〜70℃である。
なお、上記および以下において、Tgはセイコー電子工業(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
【0027】
ポリエステル樹脂(A)のうち、線形ポリエステル樹脂(A1)のフローテスターで測定した軟化点〔Tm〕は、70〜120℃が好ましく、さらに好ましくは75〜110℃、特に好ましくは80〜100℃である。この範囲では耐ホットオフセット性と低温定着性の両立が良好となる。
架橋ポリエステル樹脂(A2)のTmは、120〜170℃が好ましく、さらに好ましくは125〜160℃、とくに好ましくは130〜150℃である。
この範囲であると、耐ホットオフセット性と低温定着性の両立が良好となる。本発明において、Tmは以下の方法で測定される。
<軟化点〔Tm〕>
高化式フローテスター{たとえば、(株)島津製作所製、CFT−500D}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)をフロー軟化点〔Tm〕とする。
【0028】
本発明に用いるポリエステル樹脂(A)の比重は、好ましくは1.1以上1.3未満、さらに好ましくは1.15〜1.29である。上記範囲内であると、画像強度が良好である。
【0029】
本発明のトナーバインダー組成物中のポリエステル樹脂(A)における、架橋ポリエステル樹脂(A2)と線形ポリエステル樹脂(A1)とを併用する場合の重量比〔(A2)/(A1)〕は、トナー化時の耐ホットオフセット性と低温定着性のバランスの点から、好ましくは10/90〜100/0であり、さらに好ましくは15/85〜90/10、とくに好ましくは20/80〜85/15、最も好ましくは50/50〜80/20である。
【0030】
本発明のトナーバインダー組成物は、ポリエステル樹脂(A)以外に、その特性を損なわない範囲で、トナーバインダーとして、通常用いられる他の樹脂を含有してもよい。他の樹脂としては、例えば、Mnが1000〜100万の、(A)以外のポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂にビニル樹脂がグラフトした構造を有する樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂が挙げられる。他の樹脂は、(A)とブレンドしてもよいし、一部反応させてもよい。他の樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以下(ただし、他の樹脂がポリエステル樹脂の場合は80重量%以下)、さらに好ましくは5重量%以下である。他の樹脂として好ましいものは(A1)以外の線形ポリエステル樹脂であり、特にそれを(A2)と併用するのが好ましい。
【0031】
本発明において、ポリエステル樹脂(A1)と(A2)を併用する場合、あるいは(A)以外の他の樹脂を用いる場合の混合方法は特に限定されず、通常行われる公知の方法でよく、粉体混合、溶融混合のいずれでもよい。また、トナー化時に混合してもよい。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置、および連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続混合装置としては、エクストルーダー、コンティニアスニーダー、3本ロール等が挙げられる。
粉体混合する場合の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、およびバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
【0032】
本発明のトナーバインダー組成物は、化合物(B)を含有することにより、耐ホットオフセット性が向上する。化合物(B)は、その分子内に少なくとも2つの脂肪族または芳香族の環状構造を有する。環状構造の数が0ないし1つであると、化合物(B)がポリエステル樹脂(A)を軟化させてしまうため、耐ホットオフセット性向上は望めない。
【0033】
また、化合物(B)はその分子内に5〜50個の飽和炭素原子を有する。飽和炭素原子の数が4個以下であると、化合物(B)とポリエステル樹脂(A)の望ましい混合状態が得られず、耐ホットオフセット性向上の効果は得られない。また、飽和炭素原子の数を50個を越えて増加させても、ポリエステル樹脂(A)との混合状態はそれ以上改善されないばかりか、化合物(B)がポリエステル樹脂(A)を軟化させてしまうため、耐ホットオフセット性の向上は望めない。
【0034】
化合物(B)としては、下記(B1)〜(B3)から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが、トナーの耐ホットオフセット性の点から好ましい。
(B1)ロジン酸の金属塩
(B2)下記一般式(1)で表されるアミド化合物
X−Q−Z−Q−X (1)
[式中、Xはロジン酸の残基、Qは−CONH−または−NHCO−、Zはナフタレン、ベンズアニリド、およびジフェニルスルホンのいずれかに由来する2価の基。]
(B3)下記一般式(2)で表される環状リン酸エステルの金属塩
【0035】
【化1】

【0036】
[式中、R1およびR2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R3は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、M1はアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アルミニウム原子を表し、M1がアルカリ金属原子の場合pは1、qは0であり、M1がアルカリ土類金属原子の場合pは2、qは0であり、M1がアルミニウム原子の場合、pは1または2、qは3−pである。]
【0037】
本発明において、化合物(B1)のロジン酸の金属塩におけるロジン酸は、変性物および精製物を含む意味で用いており、その具体例としては、ピマル酸、サンダラコピマル酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、メチルデヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸などが挙げられる。これらのなかでも、トナーの耐ホットオフセット性が良好となることから、デヒドロアビエチン酸、メチルデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、およびジヒドロピマル酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、デヒドロアビエチン酸、およびメチルデヒドロアビエチン酸がさらに好ましい。
【0038】
なお、上記ロジン酸は、通常、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン中に混合物として存在する。したがって、ロジン酸として天然ロジン等の複数種のロジン酸からなるものを用いた場合には、ロジン酸の金属塩(B1)および後述するアミド化合物(B2)は、混合物として得られる。また、ロジン酸としては、不均化ロジン、水素化ロジン、脱水素化ロジンなどの各種変性ロジン;前記天然ロジンの精製物、変性ロジンの精製物などを使用することもできる。また、デヒドロアビエチン酸は、天然ロジンを不均化または脱水素化し、次いで精製することにより、メチルデヒドロアビエチン酸はアビエチン酸を酸触媒存在下、ホルムアルデヒドで処理することで得られる。
【0039】
また、ロジン酸の金属塩(B1)における金属としては、1族、2族、12族、13族(周期表)の金属が挙げられる。具体的には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、および亜鉛から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
金属塩とするためにロジン酸と反応させる金属化合物としては、硫酸塩、硝酸塩、珪酸塩、酢酸塩、リン酸塩、水酸化物、硫化物、酸化物などの有機および無機金属化合物が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、ハイドロカルマイト、珪酸カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、アルミニウムイソプロポキシド、および酢酸亜鉛等が挙げられる。
【0040】
また、ロジン酸の金属塩(B1)の製法は特に限定されず、各種公知の製造方法に従えばよい。例えば前記ロジン酸と前記金属化合物とを、溶媒の存在下または不存在下に直接反応させる方法(直接法)があげられる。ロジン酸と金属化合物との反応割合は、一義的には決定できないが、通常はロジン酸のカルボキシル基に対する金属導入量が5〜100当量%、好ましくは10〜100当量%とされる。反応が終了した後には、溶媒を留去し、さらに各種公知の精製操作を行ってもよい。金属導入量が約25当量%未満の場合、前記溶媒を使用することなく直接的に溶融状態で反応させうるため、経済的に有利である。また、当該ロジン酸の金属塩を製造する方法は、前記直接法の他に、前記ロジン酸の金属塩と前記金属化合物を水および/または有機溶剤の存在下に反応させて塩交換させる方法(複分解法)があげられる。複分解法を採用する場合も前記直接法と同様の操作を採用できる。
【0041】
なお、ロジン酸の金属塩(B1)は、溶媒を除去した後に微粒子化して使用することもできる。これらの方法は各種公知の手段に従えばよい。得られたロジン酸の金属塩の固形物を湿式または乾式にて粉砕処理する方法があげられる。
【0042】
化合物(B2)における前記一般式(1)で表されるアミド化合物中のXであるロジン酸の残基は、ロジン酸またはロジンアミンに由来するものである。なお、ロジンアミンは、ロジン酸のカルボキシル基をアミンに変換したものである。
【0043】
化合物(B2)に用いるロジン酸としては、化合物(B1)に用いるのと同じものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0044】
また、一般式(1)中のZは、ナフタレン、ベンズアニリド、およびジフェニルスルフォンのいずれかに由来する2価の官能基を示す。Zを構成する前駆化合物としては、ジアミノナフタレン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノジフェニルスルフォンなどのジアミン、ナフタレンジカルボン酸、ベンズアニリドジカルボン酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸などのジカルボン酸、ナフタレンジイソシアネートなどのジイソシアネートが例示出来る。なお、当該前駆化合物における2価の官能基の結合位置は特に制限されない。
【0045】
本発明における化合物(B2)は、上記前駆化合物の芳香族ジアミンと、上記ロジン酸またはその誘導体を反応させてアミド化する方法、上記前駆化合物の芳香族ジイソシアネートと、上記ロジン酸またはその誘導体を反応させてアミド化する方法、あるいは上記前駆化合物の芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と、前記ロジンアミンを反応させてアミド化する方法等により得られる。
【0046】
上記ロジン酸の誘導体、および上記芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、各種カルボン酸エステル、カルボン酸クロライド等があげられる。反応性がよいことからカルボン酸クロライドとして反応させるのが好ましい。なお、カルボン酸よりカルボン酸クロライドを合成する方法としてホスゲン法と塩化チオニル法がある。例えば、塩化チオニル法では、無水ベンゼン等の溶媒中で、カルボン酸と当量の塩化チオニルを添加して還流下で反応させ、冷却後、水層を分離し、洗浄することで酸クロライドを得る。
【0047】
アミド化反応の条件は一般的なアミド化反応の条件を採用できる。触媒としては、トリエチルアミン等のアミン触媒を使用するのが好ましい。なお、前記ロジン酸、芳香族ジカルボン酸を酸クロライドにして反応させる場合には、テトラヒドロフラン、トルエン等の溶媒を用いて室温で反応を行う。反応後、反応液を濃縮、洗浄して、一般式(1)で表されるアミド化合物(B2)が得られる。
【0048】
化合物(B3)における前記一般式(2)で表される環状リン酸エステルの金属塩において、R1、R2で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチルが挙げられ、R3で表される炭素数1〜4で表されるアルキル基としては、R2と同様の基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。なおR3としては水素原子であることが最も好ましい。
【0049】
また、M1で表されるアルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、アルカリ土類金属原子としては、例えば、ベリリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。
【0050】
化合物(B3)を合成する場合に用いる方法としては、例えば、該当する構造の環状リン酸と、金属水酸化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属アルコキシド化合物等の金属化合物とを、必要に応じて用いられる塩基性化合物等の反応剤を用いて反応させる方法、該当する構造の環状リン酸エステルのアルカリ金属塩と、金属水酸化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属アルコキシド化合物等の金属化合物とを、必要に応じて用いられる反応剤を用いて塩交換反応させる方法、環状オキシ塩化リンを出発物質に加水分解により環状リン酸を生成させて、金属化合物と反応させる方法が挙げられる。
【0051】
本発明のトナーバインダー組成物において、ポリエステル樹脂(A)100部に対する化合物(B)の含有量は、0.001〜30部が好ましい。含有量が0.001部以上では耐ホットオフセット性向上の効果が優れ、また30部以下であると耐ホットオフセット性が向上する上に、コスト面で有利である。上記および以下において、部は重量部を意味する。
【0052】
本発明のトナー組成物は、本発明のトナーバインダー組成物と、着色剤、および必要により、離型剤、荷電制御剤、流動化剤等から選ばれる1種以上の添加剤を含有する。
【0053】
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンBおよびオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー組成物100部に対して、好ましくは1〜40部、さらに好ましくは3〜10部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150部、さらに好ましくは40〜120部である。
【0054】
離型剤としては、フローテスターで測定した軟化点〔Tm〕が50〜170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、天然ワックス、炭素数30〜50の脂肪族アルコール、炭素数30〜50の脂肪酸およびこれらの混合物等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセンおよびこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるものおよび熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素および/またはオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸およびその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸および無水マレイン酸等]および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステルおよびマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体、およびサゾールワックス等が挙げられる。
【0055】
天然ワックスとしては、例えばカルナウバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックスおよびライスワックスが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪族アルコールとしては、例えばトリアコンタノールが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪酸としては、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
【0056】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
【0057】
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末等が挙げられる。
【0058】
本発明のトナー組成物の組成比は、トナー重量に基づき(本項の%は重量%である。)、本発明のトナーバインダー組成物が、好ましくは30〜97%、さらに好ましくは40〜95%、とくに好ましくは45〜92%;着色剤が、好ましくは0.05〜60%、さらに好ましくは0.1〜55%、とくに好ましくは0.5〜50%;添加剤のうち、離型剤が、好ましくは0〜30%、さらに好ましくは0.5〜20%、とくに好ましくは1〜10%;荷電制御剤が、好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0.1〜10%、とくに好ましくは0.5〜7.5%;流動化剤が、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0〜5%、とくに好ましくは0.1〜4%である。また、添加剤の合計含有量は、好ましくは3〜70%、さらに好ましくは4〜58%、とくに好ましくは5〜50%である。トナーの組成比が上記の範囲であることで帯電性が良好なものを容易に得ることができる。
【0059】
本発明のトナー組成物は、混練粉砕法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒化して、さらに分級することにより、体積平均粒径(D50)が好ましくは5〜20μmの微粒とした後、流動化剤を混合して製造することができる。なお、粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定される。
また、乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解または分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
【0060】
本発明のトナー組成物は、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト、および樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリアー粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。トナーとキャリアー粒子との重量比は、通常1/99〜100/0である。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
【0061】
本発明のトナー組成物は、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法、フラッシュ定着方法等が適用できる
【実施例】
【0062】
以下実施例、比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、%は重量%を示す。
【0063】
製造例1
[線形ポリエステル樹脂(A1−1)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽(以下の製造例で用いる反応槽も同様)中に、テレフタル酸460部(2.8モル)、イソフタル酸307部(1.8モル)、1,2−プロピレングリコール695部(9.1モル)、および縮合触媒としてテトラブトキシチタネート3部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水と1,2−プロピレングリコールを留去しながら5時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下に1時間反応させた。次いで、無水トリメリット酸52部(0.27モル)を加え、180℃で1時間保持した後取出した。回収された1,2−プロピレングリコールは216部(2.8モル)であった。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを線形ポリエステル樹脂(A1−1)とする。
線形ポリエステル樹脂(A1−1)のTgは60℃、Tmは95℃、Mpは4500、AVは50、OHVは79、THF不溶解分は0%、比重は1.22であった。
【0064】
製造例2
[線形ポリエステル樹脂(A1−2)の合成]
反応槽中に、テレフタル酸460部(2.8モル)、イソフタル酸307部(1.8モル)、エチレングリコール573部(9.2モル)、および縮合触媒としてテトラブトキシチタネート3部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら5時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下に1時間反応させた。次いで、無水トリメリット酸52部(0.27モル)を加え、180℃で1時間保持した後取出した。回収されたエチレングリコールは200部(3.2モル)であった。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを線形ポリエステル樹脂(A1−2)とする。
線形ポリエステル樹脂(A1−2)のTgは59℃、Tmは92℃、Mpは4500、AVは49、OHVは77、THF不溶解分は0%、比重は1.21であった。
【0065】
製造例3
[線形ポリエステル樹脂(A1−3)の合成]
反応槽中に、テレフタル酸407部、イソフタル酸407部、エチレングリコール570部、無水トリメリット酸26部、重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、20〜40mmHgの減圧下で反応させ所定の粘度で取り出した。回収されたエチレングリコールおよび結合水は411部であった。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを線形ポリエステル樹脂(A1−3)とする。
線形ポリエステル樹脂(A1−3)のTgは60℃、Tmは99℃、Mpは8000、AVは2、OHVは40、THF不溶解分は0%、比重は1.22であった。
【0066】
製造例4
[架橋ポリエステル樹脂(A2−1)の合成]
反応槽中に、テレフタル酸460部(2.8モル)、イソフタル酸307部(1.8モル)、エチレングリコール573部(9.2モル)、重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら5時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下に1時間反応させた。次いで、無水トリメリット酸88部(0.46モル)を加え、常圧下で1時間反応させた後、20〜40mmHgの減圧下で反応させ所定の軟化点で取り出した。回収されたエチレングリコールは245部(4.0モル)であった。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを架橋ポリエステル樹脂(A2−1)とする。
架橋ポリエステル樹脂(A2−1)のTgは60℃、Tmは140℃、Mpは6000、AVは27、OHVは1、THF不溶解分は3%、比重は1.25であった。
【0067】
製造例5
[架橋ポリエステル樹脂(A2−2)の合成]
反応槽中に、テレフタル酸463部(2.8モル)、フタル酸308部(1.9モル)、エチレングリコール576部(9.3モル)、重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら5時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下に1時間反応させた。次いで、無水トリメリット酸88部(0.46モル)を加え、常圧下で1時間反応させた後、20〜40mmHgの減圧下で反応させ所定の軟化点で取り出した。回収されたエチレングリコールは227部(3.7モル)であった。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを架橋ポリエステル樹脂(A2−2)とする。
架橋ポリエステル樹脂(A2−2)のTgは58℃、Tmは142℃、Mpは7000、AVは26、OHVは0.1、THF不溶解分は2%、比重は1.26であった。
【0068】
製造例6
[架橋ポリエステル樹脂(A2−3)の合成]
反応槽中に、イソフタル酸461部(2.8モル)、フタル酸308部(1.9モル)、エチレングリコール575部(9.3モル)、重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら5時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下に1時間反応させた。次いで、無水トリメリット酸88部(0.46モル)を加え、常圧下で1時間反応させた後、20〜40mmHgの減圧下で反応させ所定の軟化点で取り出した。回収されたエチレングリコールは224部(3.6モル)であった。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを架橋ポリエステル樹脂(A2−3)とする。
架橋ポリエステル樹脂(A2−3)のTgは57℃、Tmは138℃、Mpは6700、AVは28、OHVは1、THF不溶解分は1%、比重は1.25であった。
【0069】
製造例7
[架橋ポリエステル樹脂(A2−4)の合成]
反応槽中に、テレフタル酸310部(1.9モル)、イソフタル酸465部(2.8モル)、アジピン酸36部(0.25モル)、エチレングリコール610部(9.8モル)、重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら5時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下に1時間反応させた。次いで、無水トリメリット酸52部(0.27モル)を加え、常圧下で1時間反応させた後、20〜40mmHgの減圧下で反応させ所定の軟化点で取り出した。回収されたエチレングリコールは262部(4.2モル)であった。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを架橋ポリエステル樹脂(A2−4)とする。
架橋ポリエステル樹脂(A2−4)のTgは60℃、Tmは150℃、Mpは10500、AVは10、OHVは0、THF不溶解分は1%、比重は1.25であった。
【0070】
製造例8
[架橋ポリエステル樹脂(A2−5)の合成]
反応槽中に、テレフタル酸440部(2.7モル)、イソフタル酸235部(1.4モル)、アジピン酸7部(0.05モル)、エチレングリコール554部(8.9モル)、重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら5時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下に1時間反応させた。次いで、無水トリメリット酸103部(0.54モル)を加え、常圧下で1時間反応させた後、20〜40mmHgの減圧下で反応させ所定の軟化点で取り出した。回収されたエチレングリコールは219部(3.5モル)であった。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを架橋ポリエステル樹脂(A2−5)とする。
架橋ポリエステル樹脂(A2−5)のTgは56℃、Tmは135℃、Mpは4800、AVは37、OHVは50、THF不溶解分は5%、比重は1.24であった。
【0071】
製造例9
[化合物(B−1)の製造]
攪拌機、冷却器付水抜管、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応装置中にデヒドロアビエチン酸100部を仕込み、窒素気流下、200℃で攪拌しながら48%水酸化カリウム溶液10.3部を滴下した後、250℃に昇温し、同温度で1時間保温した。その後、減圧度6.7kPaで減圧し、固体状のデヒドロアビエチン酸カリウムである化合物(B−1)101部を得た。
【0072】
製造例10
[化合物(B−2)の製造]
製造例9と同様の手段を用い、48%水酸化カリウム水溶液を48%水酸化ナトリウム水溶液とすることで、固体状のデヒドロアビエチン酸ナトリウムである化合物(B−2)101部を得た。
【0073】
製造例11
[化合物(B−3)の製造]
セパラブルフラスコに、1,5−ジアミノナフタレン9.18部(0.058モル部)を含有するテトラヒドロフラン溶液189.19部とトリエチルアミン12.91部(0.128モル部)を仕込み、室温で攪拌しながら、デヒドロアビエチン酸クロライド37.86部(0.116モル部)を含有するテトラヒドロフラン溶液150部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、攪拌しながら1晩放置した後、トリエチルアミン塩酸塩を濾別除去した。反応液を濃縮して、粗結晶42部を得た後、これにメチルエチルケトン1138.8部を加えて溶解し、次いで全量が390部になるまで該溶液を濃縮して再結晶させた。得られた粗結晶23.5部をさらにメチルエチルケトン895.6部に溶解し、全量が334.3部になるまで該溶液を濃縮して再結晶させた。減圧下120℃にて乾燥し、ナフタレンとデヒドロアビエチン酸のアミドの結晶である化合物(B−3)13.2部を得た。
【0074】
製造例12
[化合物(B−4)の製造]
キシレン48部およびイソプロピルアルコール36部からなる混合溶媒に、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸49.2mmolを加え、さらに水酸化リチウム1水和物70.9mmolを水24部に溶解させた溶液を15分間で滴下した。1時間攪拌後、分散液から82℃で溶媒を留去して得られた系を25℃まで冷却して、固相を濾取した。固相を水で洗浄後乾燥し、下記化学式で表されるリン酸エステルリチウム塩である化合物(B−4)を得た。
【0075】
【化2】

【0076】
<実施例1〜12>、<比較例1>
上記製造例で得られた線形ポリエステル樹脂(A1−1)〜(A1−3)、架橋ポリエステル樹脂(A2−1)〜(A2−5)、および化合物(B−1)〜(B−4)を表1の配合比(部)に従い配合し、ポリエステル樹脂(A)と化合物(B)からなる本発明のトナーバインダー組成物、および比較のトナーバインダーを得て、下記の方法でトナー化した。(カーボンブラックMA−100[三菱化学(株)製]、カルナバワックス、荷電制御剤T−77[保土谷化学(製)])
まず、ヘンシェルミキサー[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で140℃で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS−I]で分級し、粒径D50が8μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部にコロイダルシリカ(アエロジルR972:日本アエロジル製)0.5部をサンプルミルにて混合して、本発明のトナー組成物(T−1)〜(T−12)、および比較用のトナー組成物(RT−1)を得た。
下記評価方法で評価した評価結果を表2に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
[評価方法]
〔1〕最低定着温度(MFT)
市販複写機(AR5030;シャープ製)を用いて現像した未定着画像を、市販複写機(AR5030;シャープ製)の定着機を用いて評価した。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる下限温度を最低定着温度とした。
〔2〕ホットオフセット発生温度(HOT)
上記MFTと同様に定着評価し、定着画像へのホットオフセットの有無を目視評価した。定着ロール通過後ホットオフセットが発生しない上限温度をホットオフセット発生温度とした。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のトナー組成物およびトナーバインダー組成物は、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立(定着温度幅の広さ)に優れる、電子写真、静電記録、静電印刷等に用いる静電荷像現像用トナーおよびトナーバインダーとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともカルボン酸成分(x)とポリオール成分(y)を構成単位として有し、カルボン酸成分(x)が、芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体から選ばれる2種以上のジカルボン酸(x1)を合計で80モル%以上含有し、かつ、さらに少なくとも、3価以上のポリカルボン酸(x2)をも含有し、ポリオール成分(y)が、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(y1)を80モル%以上含有する、ポリエステル樹脂(A)、ならびに分子内に少なくとも2つの脂肪族または芳香族の環状構造を有し、飽和炭素原子の数が5〜50個である化合物(B)を含有するトナーバインダー組成物。
【請求項2】
(B)が下記(B1)〜(B3)から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1記載のトナーバインダー組成物。
(B1)ロジン酸の金属塩
(B2)下記一般式(1)で表されるアミド化合物
X−Q−Z−Q−X (1)
[式中、Xはロジン酸の残基、Qは−CONH−または−NHCO−、Zはナフタレン、ベンズアニリド、およびジフェニルスルホンのいずれかに由来する2価の基。]
(B3)下記一般式(2)で表される環状リン酸エステルの金属塩
【化1】

[式中、R1およびR2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R3は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、M1はアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アルミニウム原子を表し、M1がアルカリ金属原子の場合pは1、qは0であり、M1がアルカリ土類金属原子の場合pは2、qは0であり、M1がアルミニウム原子の場合、pは1または2、qは3−pである。]
【請求項3】
(A)100重量部に対する(B)の含有量が0.001〜30重量部である請求項1または2記載のトナーバインダー組成物。
【請求項4】
ポリエステル樹脂(A)を構成するジカルボン酸(x1)が、下記(1)〜(3)から選ばれる2種以上である請求項1〜3のいずれか記載のトナーバインダー組成物。
(1)テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体
(2)イソフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体
(3)フタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体
【請求項5】
ポリエステル樹脂(A)のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーのピークトップ分子量が1000〜20000である請求項1〜4のいずれか記載のトナーバインダー組成物。
【請求項6】
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が30〜75℃である請求項1〜5のいずれか記載のトナーバインダー組成物。
【請求項7】
ポリエステル樹脂(A)が、架橋ポリエステル樹脂(A2)、および必要により線形ポリエステル樹脂(A1)で構成される請求項1〜6のいずれか記載のトナーバインダー組成物。
【請求項8】
線形ポリエステル樹脂(A1)のフローテスターによる軟化点が70〜120℃であり、架橋ポリエステル樹脂(A2)のフローテスターによる軟化点が120〜170℃である請求項7記載のトナーバインダー組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか記載のトナーバインダー組成物と着色剤、並びに必要により、離型剤、荷電制御剤、および流動化剤から選ばれる1種類以上の添加剤を含有するトナー組成物。