説明

トナー粒子の製造方法

【課題】懸濁重合法で得られるトナー粒子の製造方法において、得られるトナー品質が良好なトナー粒子製造方法を提供することである。
【解決手段】懸濁重合法で得られるトナー粒子の製造方法において、特定の金属化合物と着色剤を所定の工程で分散若しくは溶解し、重合性単量体組成物の粘度を一定の範囲内に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法の如き画像形成方法における静電荷潜像を顕像化するためのトナーに含有されるトナー粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真法は、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて紙の如き転写材にトナー画像を転写した後、加熱、圧力、加熱圧力或いは溶剤蒸気により定着し、トナー画像を得るものである。
【0003】
近年トナーは、粉砕トナーと湿式で造粒するトナーとに大別されている。粉砕トナーは熱可塑性樹脂中に着色剤を溶融混合し、均一に分散した後、溶融混練物を冷却固化させ、混練物を微粉砕装置により微粉砕し、微粉砕物を分級機により分級して所望の粒径のトナー粒子を得ることにより製造されている。
【0004】
一方、湿式で造粒されるトナーは、小粒径化や、粒度分布のシャープ化が可能であり、さらに離型剤を多量導入するのに有利なために注目されている。それは、電子写真が多くのユーザーから高精細、高画質の画像を求められており、トナーの小粒径化や粒度分布のシャープ化は、その有効な手段となり得るからである。
【0005】
湿式で造粒する具体的なトナー製造方法としては、懸濁重合法、乳化重合法、さらには別途重縮合したポリエステル等を用いる溶解懸濁法等、その他各種重合法トナーの製造方法が提案されている。
【0006】
例えば懸濁重合法では重合性単量体に着色剤や必要に応じてその他添加剤を分散して重合性単量体組成物を得、ついで液状分散媒体中で該重合性単量体組成物を所望の粒径に造粒、重合してトナー粒子分散液を得る。その後、濾過・洗浄・乾燥の工程を経て、また必要に応じて分級し、トナー粒子を得る。そして得られたトナー粒子に所定の添加剤を加えることによりトナーを製造している(特許文献1参照)。
【0007】
前記した分散には、着色剤物性、得られる重合性単量体組成物の物性を考慮して最適な分散装置を選択し、使用されている。この分散工程は、得られるトナー粒子内での着色剤や、その他添加剤の分散状態を大きく左右する工程であり、トナー品質を向上させるために重要な工程のひとつである。特許文献2では分散装置にメディア分散機を使用して分散前の初期粘度に対して分散後の粘度が10倍乃至1000倍の範囲に制御してトナー品質を良好に保つ事が記載されている。この方法は優れた方法であるが、重量性単量体混合物の粘度が比較的高い場合に限り、結果として分散後の重合性単量体組成物の粘度が高くなる可能性がある。重合性単量体組成物の粘度が高くなる場合、造粒時の懸濁に必要な攪拌力不足からトナー粒子の粒度分布がブロードになる等、トナー品質に影響を及ぼす懸念がある。
【0008】
この懸念点を考慮し、特許文献3では、メディア分散機の攪拌周速やメディア分散機の滞留時間を特定な条件にすることによってトナー品質を改善できると記載がある。しかしながらメディア分散機の運転条件だけで前記した重合性単量体組成物の粘度が急激に下がると言うことは技術的に考えにくく、メカニズムも明らかになっていない。よって前記懸念点を解消するまでには至っておらず、一層の技術深化が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭51−14895号公報
【特許文献2】特許第3010331号公報
【特許文献3】特許第4122690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の如き懸念点を解決したトナー粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
即ち本発明は、懸濁重合法で得られるトナー粒子の製造方法において、得られるトナー品質が良好なトナー粒子製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、鋭意検討の結果、少なくとも重合性単量体を含む分散媒体中に、中心金属が五配位構造をとっているフタロシアニン構造を有する金属化合物と、着色剤とを容器内で攪拌分散若しくは溶解させて重合性単量体混合物Aを得るプレ分散工程;
該容器内の重合性単量体混合物Aをメディア分散機に導入し、メディア分散機から排出された後、再度、容器内に戻し、その後、メディア分散機に再導入して繰り返し循環させて重合性単量体組成物Bを得る分散工程;
該重合性単量体組成物Bを水系媒体中に分散し懸濁粒子を得る造粒工程;
ついで得られた該懸濁粒子に含まれる該重合性単量体を重合してトナー粒子を得る重合工程;を有するトナー粒子の製造方法において、
該重合性単量体混合物Aの粘度Aと該重合性単量体組成物Bの粘度Bの関係が下式
1.5≦B/A≦10.0
15(mPa・s)≦B≦1000(mPa・s)
の関係を満たすまで、メディア分散機による分散が繰り返されることを特徴とするトナー粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、懸濁重合法で得られるトナー粒子の製造方法において特定の金属化合物と着色剤を所定の工程で分散若しくは溶解し、重合性単量体組成物の粘度を一定の範囲内に制御することにより、高品質なトナー粒子を製造する製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる分散工程の概略図である。
【図2】本発明にかかる懸濁重合トナー製造のフロー一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に用いることができるメディア分散機を組み込んだ分散システムの好適な例である。しかしながら、本発明はこれらに限定される訳ではない。
【0016】
図1に示す分散機1は、ケーシング2の内部に、メディア撹拌用の回転ロータ、メディア粒子、そしてメディア粒子と重合性単量体混合物を分離するためのセパレータを有する一般的なメディア分散機である。これは限定されるものではないが、好適な例としてダイヤモンドファインミル(三菱重工製)、ダイノーミル(シンマルエンタープライズ製)、アペックスミル(コトブキ技研製)、SCミル(三井鉱山製)、スターミル(アシザワファインテック製)、OBミル(ORIVER BATLLE製)、スーパミル(井上製作所社製)等を挙げることができる。
【0017】
上記した分散機1を含むシステムにおいて、重合性単量体に少なくとも中心金属が五配位構造をとっているフタロシアニン構造を有する金属化合物と、着色剤を容器(ホールデイングタンク)8内に投入する。その後、モーター13により駆動する攪拌機によって所定時間分散若しくは溶解させて重合性単量体混合物Aを得る(プレ分散工程)。この時、重合性単量体混合物を調温するため、ジャケット18に調温された調温水をジャケット入口16、ジャケット出口17を介して導入しても良い。
【0018】
得られた重合性単量体混合物Aは、循環ポンプ10を介して分散機1に再度供給され、回転ロータの遠心力によって運動するメディア粒子層を通過し確実に微分散される。その後、重合性単量体混合物は、セパレータでメディア粒子と分離されて分散機1から排出され、ホールデイングタンク8へ戻る。ホールデイングタンク8内へ戻った重合性単量体混合物は、このように分散機1とホールデイングタンク8との間で循環を繰り返しながら、均一にかつ効率よく着色剤の分散が行なわれる。そして所定時間の分散を終了することで、重合性単量体組成物Bを得る(分散工程)。
【0019】
一般に顔料を微分散しようとすると、微分散された顔料には同時に再凝集の力が働き、安定的に微分散状態を維持することは難しい。特に懸濁重合トナーの製造においては前記分散工程で着色剤、その他添加剤を一度微分散しても、その後工程、例えば造粒工程、反応工程で再凝集が起り、得られるトナーに想定した性能を発現させるのは難しい。この課題を解決するためには、一定の化学構造を持った顔料分散助剤が必要である。具体的な構造としては、顔料を分散させる重合性単量体への親和性を持ち、また微分散された顔料に強固に吸着し、かつ再凝集を防ぐための立体構造と成り得る化学構造を持ったものが好適である。このような顔料分散助剤を、プレ分散工程、分散工程で効果的に働かせることにより、その後工程で再凝集を防ぎ、得られるトナーに所望の性能を発現させる事ができる。
【0020】
本発明者らは鋭意検討の結果、まず、重合性単量体に少なくとも中心金属が五配位構造をとっているフタロシアニン構造を有する金属化合物と、着色剤を予めホールデイングタンク8内に投入しておき、該プレ分散工程と該分散工程内で該重合性単量体混合物Aの粘度Aと該重合性単量体組成物Bの粘度Bの関係が
1.5≦B/A≦10.0
であり、該粘度Bが15(mPa・s)≦B≦1000(mPa・s)であるように調整を行いながらプレ分散工程、分散工程を行うことで得られるトナー品質が良好な着色剤及びその他添加剤の分散が得られることを見出し本発明を完成させた。
【0021】
本発明のメカニズムはすなわち、該中心金属が五配位構造をとっているフタロシアニン構造を有する金属化合物が前記した分散助剤として効率良く働くには、該プレ分散工程と該分散工程内で該重合性単量体混合物Aの粘度Aと該重合性単量体組成物Bの粘度Bの関係が
1.5≦B/A≦10.0
であり、該粘度Bが15(mPa・s)≦B≦1000(mPa・s)であるように調整することが重要であることを見出し、本発明に至った。
【0022】
B/A<1.5やB<15であると、メディア粒子と該重合性単量体組成物の間に必要なせん断力が働かずトナー品質に必要な着色剤及びその他添加剤の分散が得られない。また、B/A>10.0やB>1000であると分散機1内での該メディア粒子の運動が妨げられて所定の顔料、その他添加剤の分散が得られない。
【0023】
前記金属化合物の中心金属としては、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ゲルマニウム、パラジウム、カドミウム、インジウム、すず、白金、鉛が挙げられる。この中で顔料との吸着面と配位結合が可能であることを考慮すると上記金属の中でも亜鉛が好適に用いられ、亜鉛フタロシアニンを分散助剤とすることが好ましい。
【0024】
また、得られた重合性単量体組成物Bの粘度Bが15(mPa・s)≦B≦1000(mPa・s)範囲の上限に近づくと該メディア粒子の運動が妨げられる傾向が強くなるため、所定の顔料、その他添加剤の分散力が弱まる怖れがある。その際には該重合性単量体組成物Bを得る際に離型剤を投入せず、別工程(溶解工程)で該重合性単量体組成物Bに離型剤を分散若しくは溶解させ該粘度Bを下げることが好ましい。離型剤を分散若しくは溶解させ得られた重合性単量体組成物Cは、後工程に移され水系分散媒体中に分散し懸濁粒子となる。
【0025】
また、前記した分散機1とホールデイングタンク8との間で循環を繰り返す際、該分散機1内の滞留時間が0.1min/回以上1.5min/回以下で分散工程を行うことが好ましい。
【0026】
0.1min/回未満で行うと分散機内のメディア粒子がセパレータ方向に押し付けられ充分な運動ができない。この結果本来の分散性能を発揮できなくなる。一方、滞留時間が1.5min/回よりも大きいとメディア粒子の運動による発熱が大きく、重合性単量体の熱重合を促進してしまい、得られるトナー品質に影響を与える。
【0027】
また、分散機1を含む分散循環ライン中で発生した発熱を除熱するため、冷却手段11を経由してホールデイングタンク8へ戻すことが好ましく、冷却手段11は非プレート型の熱交換器であることが好ましい。プレート型の熱交換器は熱交換部分の隙間が非常に狭く、重合性単量体混合物の分散が進み、増粘を始めると詰まりを起こし、本来の除熱効果が得られないため好ましくない。一方、非プレート型熱交換器は該隙間が広く、重合性単量体混合物の詰まりが起らず、好ましい。この冷却の際、温度計12で表示される温度を基準にして熱交換を行うことが好ましい。
【0028】
また、分散機1とホールデイングタンク8との間で循環を行う際、必要に応じて背圧弁19を使用して分散機1内の背圧を調整しても良い。
【0029】
メディア粒子としては、耐摩耗性に優れたビーズが用いられる。メデイア粒子の直径は、通常、0.3mm以上、好ましくは0.3乃至5mm、さらに好ましくは0.5乃至3mmである。ビーズの密度は、通常、3g/cm3以上、好ましくは4.5g/cm3以上である。ビーズの材質は、ジルコンやジルコニアなどの高硬度のセラミックス;スチールなどの高硬度金属が好適に用いられる。メディア粒子の充填量は、粉砕効率を左右する重要な条件の一つである。好適に用いられるのは通常、50乃至90容積%であり、好ましくは70乃至85容積%である。
【0030】
このようにして得られた重合性単量体組成物は、図2に示すように必要に応じて溶解工程を経て造粒工程、重合工程、後工程の後トナー粒子となる。そして得られたトナー粒子に所定の添加剤を加えることによりトナーを得ることができる。
【0031】
本発明で製造されるトナーに好適に用いることのできる着色剤として、カーボンブラック及び以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤が挙げられる。
【0032】
イエロー色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができ、具体的には、顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、17、23、62、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、109、110、111、117、120、127、128、129、137、138、139、147、151、154、155、167、168、173、174、176、180、181、183、191及びC.I.バットイエロー1、3、20等、染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、162等が挙げられ、これらのものが単独で或いは2以上併用して用いられる。
【0033】
マゼンタ色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができ、具体的には、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,48;2、48;3、48;4、49,50,51,52,53,54,55,57,57;1、58,60,63,64,68,81,81;1、83,87,88,89,90,112,114,122,123,144、146,150,163,166,169,177,184,185,202,206,207,209,220,221,238、254等、C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35等、マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,52,58,63,81,82,83,84,100,109,111,121,122等、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27等、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40等、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28等の塩基性染料等が挙げられ、これらのものが単独で或いは2以上併用して用いられる。
【0034】
シアン色に好適な着色剤としては、顔料或いは染料を用いることができ、具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66等、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45、染料としては、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93、95等が挙げられ、これらのものが単独で或いは2以上併用して用いられる。
【0035】
これらの着色剤は、単独で又は2種以上を混合し、また更には固溶体の状態で用いることができる。本発明の着色剤は、色相角、彩度、明度、耐侯性、OHP透明性及びトナー中への分散性の点から選択される。例えば懸濁重合法による湿式造粒法の場合、着色剤の添加量は、樹脂100質量部に対して1乃至20質量部が用いられる。
【0036】
本発明で製造されるトナー粒子は離型剤を含有していることが好ましい。本発明においてトナー粒子に使用可能な離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等天然ワックス及びその誘導体などで、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。更には、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、或いはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスなども使用できる。
【0037】
離型剤として使用できるワックスの具体的な例としては、ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業社);ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社);サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社);HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12、HNP−51(日本精鑞株式会社);ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社);木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)等が挙げられる。
【0038】
本発明に用いられるトナー粒子には、荷電制御剤を配合しても良い。荷電制御剤としては、公知のものが利用できる。更に、例えば懸濁重合法による湿式造粒法の場合、トナー粒子を製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料或いはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルフォン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が挙げられる。ポジ系荷電制御剤としては四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
【0039】
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法とトナー粒子に外部添加する方法とがある。これらの荷電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、内部添加する場合は、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1乃至10質量部、より好ましくは0.1乃至5質量部の範囲で用いられる。また、外部添加する場合、トナー粒子100質量部に対し好ましくは0.005乃至1.0質量部、より好ましくは0.01乃至0.3質量部である。
【0040】
本発明における懸濁重合法によるトナー粒子の製造方法では、トナーに含有される重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
【0041】
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。
【0042】
本発明のトナーの製造方法において、重合性単量体に樹脂を添加して重合しても良い。単量体では水溶性のため水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすため使用できないアミノ基、カルボン酸基、水酸基、スルフォン酸基、グリシジル基、ニトリル基等親水性官能基含有の単量体成分をトナー中に導入したいときには、これらとスチレン又はエチレン等のビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、或いはグラフト共重合体等の共重合体の形で、或いはポリエステル、ポリアミド等の重縮合体の形で、或いはポリエーテル、ポリイミン等の重付加重合体の形で使用が可能となる。
【0043】
また、上記以外の樹脂を単量体系中に添加しても良く、用いられる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが単独で又は混合して使用できる。
【0044】
これら樹脂の添加量としては、単量体100質量部に対し1乃至20質量部が好ましい。
【0045】
1質量部未満では添加効果が小さく、一方20質量部より多く添加すると重合トナーの種々の物性設計が難しくなるためである。
【0046】
更に、単量体を重合して得られるトナーの分子量範囲とは異なる分子量の重合体を単量体中に溶解して重合しても良い。
【0047】
本発明のトナーの製造方法において、重合性単量体の重合反応を開始させるために重合開始剤を使用する場合は、重合反応時に半減期0.5乃至30時間であるものを、重合性単量体100質量部に対し0.5乃至20質量部の添加量で重合反応を行うと、分子量1万乃至10万の間に極大を有する重合体を得ることができ、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることが出来る。重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0048】
本発明のトナーを製造する際は、架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量は重合性単量体100質量部に対して0.001乃至15質量部である。
【0049】
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0050】
本発明において懸濁重合法による具体的なトナー製造方法について説明する。
【0051】
まず、重合性単量体中に顔料、分散助剤、離型剤、可塑剤、荷電制御剤、架橋剤等トナーとして必要な成分及びその他の添加剤、例えば、高分子重合体等を適宜加えて、均一に溶解または分散させて本発明にかかる重合性単量体組成物を得る。この時、必要に応じて温調操作を行っても良い。その後この重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中で懸濁し造粒する。
【0052】
このとき着色剤含有重合性単量体組成物の造粒を行うと同時に、又は造粒を行った後、
重合開始剤を添加して上記組成物に含まれる該重合性単量体の重合を行う(重合工程)。重合開始剤添加の具体的な時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時と同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に添加混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前、重合反応中に追加の重合性単量体或いは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることも出来る。
【0053】
造粒後は、温調を行いながら通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。
【0054】
このトナー粒子を製造するための分散安定剤として公知の界面活性剤や有機・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難いため好ましい。こうした無機分散剤の例としては、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛等の燐酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物;シリカ、ベントナイト、アルミナ等の無機酸化物が挙げられる。
【0055】
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2乃至20質量部を単独で使用することが望ましいが、0.001乃至0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。
【0056】
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
【0057】
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中で前記無機分散剤粒子を生成させて用いることが出来る。例えば、燐酸カルシウムの場合、攪拌下に燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。
【0058】
この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。無機分散剤は、重合終了後に酸又はアルカリで溶解して、濾過、洗浄等の次工程によりほぼ完全に取り除くことが出来る。
【0059】
前記重合工程においては、重合温度は40℃以上、一般には50乃至90℃の温度に設定して重合を行う。この温度範囲で重合を行うと、内部に封じられるべき離型剤やワックスの類が、相分離により析出して内包化がより完全となる。また、残存する重合性単量体を消費するために、重合反応終期ならば、反応温度を90乃至150℃にまで上げることは可能である。重合反応の終了後、得られたトナー粒子分散液は、適当な固液分離装置、好ましは、ベルトフィルターにて濾過、洗浄した後、適当な乾燥装置によって乾燥する。
【0060】
一般的に得られたトナー粒子は分級工程において所望の粒径範囲外の粗粉や微粉が除去され、トナー粒子が得られる。なお、分級工程は従来トナーの製造に用いられる公知の方法により行うことができ、特に限定されない。分級工程を経て得られたトナー粒子に無機微粉体等の外添剤を混合して該トナー粒子表面に付着させることによって、トナーを得ることができる。
【0061】
本発明においては、製造工程から分級工程を省き直接トナーを得ることも、また更に高精度な分級工程を行って、精度良く粗粉や微粉をカットすることも、望ましい形態の一つである。
【0062】
本発明において、トナーには上記外添剤のうち流動化剤として個数平均一次粒子径が4乃至80nmの無機微粒子が添加されることも好ましい形態である。
【0063】
本発明で用いられる無機微粒子としては、シリカ,アルミナ,酸化チタンなどが使用できる。例えば、ケイ酸微粉体としてはケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3-等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム,塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらも包含する。
【0064】
平均一次粒径が4乃至80nmの無機微粒子の添加量は、トナー母粒子に対して0.1乃至3.0質量%であることが好ましい。添加量が0.1質量%未満ではその効果が十分ではなく、3.0質量%より多いと定着性が悪くなることがある。なお、無機微粉末の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
【0065】
無機微粒子は、疎水化処理されたものであることが高温高湿環境下での特性から好ましい。疎水化処理の処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物の如き処理剤を単独で或いは併用して用いても良い。
【0066】
無機微粒子の処理方法としては、例えば第一段反応としてシリル化反応を行ってシラノール基を化学結合により消失させた後、第二段反応としてシリコーンオイルにより表面に疎水性の薄膜を形成する方法が挙げられる。
【0067】
上記シリコーンオイルは、25℃における粘度が10乃至200,000mm2/sのものが、更には3,000乃至80,000mm2/sのものが好ましい。10mm2/s未満では、無機微粒子に安定性が無く、熱および機械的な応力により画質が劣化する傾向がある。200,000mm2/sを超える場合は、均一な処理が困難になる傾向がある。
【0068】
使用されるシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が特に好ましい。
【0069】
シリコーンオイルの処理の方法としては、例えばシラン化合物で処理された無機微粒子とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよいし、無機微粒子にシリコーンオイルを噴霧する方法を用いてもよい。或いは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解或いは分散させた後、無機微粒子を加えて混合し溶剤を除去する方法でもよい。無機微粒子の凝集体の生成が比較的少ない点で噴霧機を用いる方法がより好ましい。
【0070】
シリコーンオイルの処理量は無機微粒子100質量部に対し1乃至40質量部、好ましくは3乃至35質量部が良い。
【0071】
本発明で用いられるシリカは、トナーに良好な流動性を付与させる為に、窒素吸着によるBET法で測定した比表面積が20乃至350m2/gの範囲内のものが好ましく、25乃至300m2/gのものがより好ましい。
【0072】
比表面積はBET法に従って、比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出する。
【0073】
また、本発明のトナーは、クリーニング性向上等の目的で、更に一次粒径が30nmを超える、より好ましくは一次粒径が50nm以上の無機又は有機の球状に近い微粒子を、外添剤としてトナー粒子に添加して含有することも好ましい形態のひとつである。この無機又は有機の微粒子は比表面積が50m2/g未満(より好ましくは比表面積が30m2/g未満)のものを好ましく用いることができる。このような微粒子として、例えば球状シリカ粒子、球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状樹脂粒子等が好ましく用いられる。
【0074】
本発明に用いられるトナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の外添剤をトナー粒子に添加して用いることができる。例えば、ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末などの滑剤粉末;酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤;酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末などの流動性付与剤;ケーキング防止剤などが挙げられる。また、逆極性の有機微粒子又は無機微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。これらの外添剤も表面を疎水化処理して用いることが可能である。
【0075】
本発明において製造し得るトナーは、一成分現像剤として使用できる。例えば、一成分系現像剤として、磁性体をトナー中に含有する重合トナーの場合には、現像スリーブ中に内蔵されたマグネットを利用し、重合トナーを搬送及び帯電する方法がある。しかし、必ずしも上記のような一成分現像剤に限られる必要はなく、二成分現像剤として用いても良い。
【0076】
二成分系現像剤として用いる場合には、上記トナーと共に磁性キャリアを用いる。磁性キャリアは、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムから選ばれる元素が単独で又は複合フェライト状態で用いられる。磁性キャリアの形状としては、球状、扁平又は不定形がある。更に磁性キャリア粒子表面状態の微細構造(例えば表面凹凸性)をもコントロールすることが好ましい。一般的には、上記無機酸化物を焼成、造粒することにより、予め磁性キャリアコア粒子を生成した後、このキャリアコア粒子を樹脂でコーティングする方法が用いられている。磁性キャリアのトナーへの負荷を軽減する目的から、無機酸化物と樹脂を混練後、粉砕、分級することにより低密度分散キャリアを得る方法や、無機酸化物とモノマーとの混練物を直接水系媒体中にて懸濁重合させて真球状の磁性キャリアを得る方法も利用することが可能である。
【0077】
これらのうち、上記キャリアコア粒子の表面を樹脂で被覆してなる被覆キャリアが特に好ましい。キャリアコア粒子の表面を樹脂で被覆する方法としては、樹脂を溶剤中に溶解又は懸濁して塗布することによりキャリアコアに付着させる方法、又は単に樹脂粉体とキャリアコア粒子とを混合して付着させる方法が適用できる。
【0078】
本発明で用いられるトナーと磁性キャリアとを混合して二成分現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度が2乃至15質量%、好ましくは4乃至13質量%であると通常良好な結果が得られる。
【0079】
本発明で用いるトナーの粒度分布の測定及び個数変動係数の算定について述べる。
トナーの粒度分布は種々の方法によって測定できるが、本発明においてはコールターカウンターを用いて行うことが好ましい。
【0080】
測定装置としてはコールターカウンターマルチサイザーIII型を用い、個数平均分布、重量平均分布を出力するインターフェイス(日科機製)及び一般的なパーソナルコンピューターを接続し、特級又は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を電解液として調製する。
【0081】
測定法としては前記電解水溶液130ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を1.5ml加え、さらに測定試料を10mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で2分間分散処理を行い、前記コールターカウンターマルチサイザーIII型により、アパチャーとして100μmアパチャーを用いて、個数を基準として2乃至40μmの粒子の粒度分布を測定して、トナー粒子の個数平均径(μm):D1、トナーの重量平均粒径(μm):D4等、各種値を求める。
【0082】
また上記個数分布における変動係数は下記式から算出される。
変動係数(%)=[S/D1]×100
[式中、Sはトナー粒子の個数分布における標準偏差を示す。]
【0083】
本発明における粘度測定について述べる。
【0084】
重合性単量体混合物Aの粘度Aと重合性単量体組成物Bの粘度Bの測定には、回転粘度計(商品名:ビスコテスターVT550、製造元:ハーケ)を用いて測定した。測定条件は以下の通りである。
測定時の液温 :30℃
測定に用いたロータ:MV−DINロータ
回転数 :60rpm
測定時間 :30秒
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。
【0086】
〔実施例1〕
イオン交換水700質量部に0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液450質量部を投入し、60℃に加温した後、クレアミックスCLM−0.8S(エム・テクニク社製)を用いて12000rpmにて攪拌した。これに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液68質量部を添加し、リン酸カルシウム塩を含む水系媒体を得た。
【0087】
一方、プレ分散工程にて
(モノマー) スチレン 170質量部
(着色剤) C.I.ピグメントブルー15:3 10質量部
(分散助剤) 亜鉛フタロシアニン 0.5質量部
(荷電制御剤)E−88(オリエント化学工業社製) 2質量部
からなる上記処方物を、図1に示す容器8内にて所定時間攪拌分散若しくは溶解させて重合性単量体混合物Aを得た。この時、重合性単量体混合物Aの一部をサンプリングして上記した方法にて粘度Aを測定した。
【0088】
次に循環ポンプ10、並びに分散機1を稼動させて、かつ三方弁20を循環方向にして、分散工程を開始し、その後90分間分散工程を行って重合性単量体組成物Bを得た。この分散工程ラインには図1に示す非プレート型熱交換器11を具備して行った。この時、重合性単量体組成物Bの一部をサンプリングして上記した方法にて粘度Bを測定した。この分散工程中のビーズミル平均滞留時間は0.5min/回であった。結果を表1にまとめる。
【0089】
次に3方弁20を次工程側に開き、得られた重合性単量体組成物Bを図2に示す溶解工程に送液した。そして、
(モノマー) n−ブチルアクリレート 30質量部
(極性レジン)飽和ポリエステル 15質量部
プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)
とテレフタル酸との重縮合物(重合モル比10:12)、
Tg=68℃、Mw=10000、Mw/Mn=5.12)
(離型剤) ポリエチレンワックス 6質量部
(Mn=850、融点:107℃、25℃における針入度:1)
からなる追加の処方物を溶解工程にて追加後、60℃に加温して均一に溶解若しくは分散した。これに、重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8質量部を溶解し、重合性単量体組成物Cを調製した。
【0090】
この得られた重合性単量体組成物Cを前記した水系媒体中にクレアミックスCLM−0.8S(エム・テクニク社製)を12000rpmで攪拌させながら投入した。投入後水系媒体の温度を60℃に調温しながら攪拌を15分間続け、重合性単量体組成物Cを造粒した(図2中の造粒工程)。
【0091】
その後、図2に示す反応工程に工程を移しフルゾーン撹拌翼(神鋼パンテック社製)で撹拌しつつ、70℃に昇温し、重合性単量体組成物C中の単量体を10時間重合反応させた。重合反応終了後、蒸留を行い、所定量の留分を得ることで残存モノマーを留去し、冷却してトナー粒子分散液を得た。
【0092】
このトナー粒子分散液に塩酸を加えてトナー粒子表面のリン酸カルシウム塩を溶解した後、洗浄、脱水、乾燥を行い得られた該着色粒子100質量部に対して、BET法による比表面積が200m2/gである疎水性シリカを1.0質量部添加し、混合機にて混合しトナーを得た。本実施例において得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)は6.2μm、変動係数が23%であった。結果を表1にまとめる。
【0093】
<トナー品質の評価>
トナー品質の評価は得られたトナーを温度30℃、湿度80%の環境下で連続3000枚の耐久テストを行い、カブリを測定して評価した。耐久テストはキヤノン社製LBP−2360を用いて行った。
【0094】
紙上のカブリについては、反射式濃度計(TOKYODENSHOKUCO.,LTD社製REFLECTOMETER ODEL TC−6DS)を用いて測定した。即ち、
反射濃度計で測定したプリント後の白地部の反射濃度最悪値をDsとし、プリント前の用紙について反射濃度計で測定した反射濃度平均値をDrとした時に、これらの値の差(Ds−Dr)を求め、これを紙上カブリとした。この紙上カブリ量が1.5%以下の場合は、実質的に紙上カブリのない良好な画像(評価A)。1.5%より大きく2%以下のものはカブリはあるものの製品には問題ないレベル(評価B)。2%を超えると紙上カブリが目立つ不鮮明な画像である(評価C)。
【0095】
本実施例では、3000枚耐久後の画像について評価したが、耐久中、問題のない良好なレベル(評価A)であった。結果を表1にまとめる。
【0096】
〔実施例2〕
実施例1において分散工程中のビーズミル平均滞留時間を1.4min/回になるように循環ポンプ10の吐出量を下げて90分間分散工程を行った以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)は6.3μm、変動係数が26%であった。結果を表1にまとめる。
【0097】
〔実施例3〕
実施例1において分散工程中のビーズミル平均滞留時間を0.2min/回になるように循環ポンプ10の吐出量を上げて90分間分散工程を行った以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)は6.3μm、変動係数が27%であった。結果を表1にまとめる。
【0098】
〔実施例4〕
イオン交換水700質量部に0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液450質量部を投入し、60℃に加温した後、クレアミックスCLM−0.8S(エム・テクニク社製)を用いて12000rpmにて攪拌した。これに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液68質量部を添加し、リン酸カルシウム塩を含む水系媒体を得た。
【0099】
一方、プレ分散工程にて
(モノマー) スチレン 170質量部
n−ブチルアクリレート 30質量部
(着色剤) C.I.ピグメントブルー15:3 10質量部
(分散助剤) 亜鉛フタロシアニン 0.5質量部
(荷電制御剤)E−88(オリエント化学工業社製) 2質量部
(極性レジン)飽和ポリエステル 15質量部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)
とテレフタル酸との重縮合物(重合モル比10:12)、
Tg=68℃、Mw=10000、Mw/Mn=5.12)
(離型剤) ポリエチレンワックス 6質量部
(Mn=850、融点:107℃、25℃における針入度:1)
からなる上記処方物を、図1に示す容器8内にて所定時間攪拌分散若しくは溶解させて重合性単量体混合物Aを得た。この時、重合性単量体混合物Aの一部をサンプリングして上記した方法にて粘度Aを測定した。
【0100】
次に循環ポンプ10、並びに分散機1を稼動させて、かつ、三方弁20を循環方向にして分散工程を開始し、その後90分間分散工程を行って重合性単量体組成物Bを得た。この分散工程ラインには図1に示す非プレート型熱交換器11を具備して行った。この時、重合性単量体組成物Bの一部をサンプリングして上記した方法にて粘度Bを測定した。この分散工程中のビーズミル平均滞留時間は0.5min/回であった。結果を表1にまとめる。
【0101】
次に3方弁20を次工程側に開き、得られた重合性単量体組成物Bを図2に示す造粒工程に送液すると同時に重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8質量部を溶解した。
【0102】
造粒工程では該重合開始剤と重合性単量体組成物Bを水系媒体中でクレアミックスCLM−0.8S(エム・テクニク社製)を12000rpmで攪拌させながら投入した。投入後水系媒体の温度を60℃に調温しながら攪拌を15分間続け、重合性単量体組成物Bを造粒した(図2中の造粒工程)。
【0103】
その後、図2に示す反応工程に工程を移しフルゾーン撹拌翼(神鋼パンテック社製)で撹拌しつつ、70℃に昇温し、重合性単量体組成物B中の単量体を10時間重合反応させた。重合反応終了後、蒸留を行い、所定量の留分を得ることで残存モノマーを留去し、冷却してトナー粒子分散液を得た。
【0104】
このトナー粒子分散液に塩酸を加えてトナー粒子表面のリン酸カルシウム塩を溶解した後、洗浄、脱水、乾燥を行い得られた該着色粒子100質量部に対して、BET法による比表面積が200m2/gである疎水性シリカを1.0質量部添加し、混合機にて混合しトナーを得た。本実施例において得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)は6.9μm、変動係数が31%であった。結果を表1にまとめる。
【0105】
〔実施例5〕
実施例4において分散工程中のビーズミル平均滞留時間を1.4min/回になるように循環ポンプ10の吐出量を下げて90分間分散工程を行った以外は実施例4と同様にしてトナーを得た。得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)は7.0μm、変動係数が33%であった。結果を表1にまとめる。
【0106】
〔実施例6〕
実施例1において分散工程中のビーズミル平均滞留時間を2.0min/回になるように循環ポンプ10の吐出量を下げて90分間分散工程を行った以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)は6.3μm、変動係数が27%であった。結果を表1にまとめる。
【0107】
〔実施例7〕
実施例1において図1に示す熱交換器11をプレート型熱交換器に変更して分散工程を行った以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。分散工程中の循環ポンプ10の挙動は安定した運転が行えず、90分間の分散工程中5回ポンプモーター過負荷で停止した(停止後、ポンプの再起動により分散工程は継続可能であった。)。プレート型熱交換器内で閉塞が起きてモーター過負荷が発生したものと考えられる。
【0108】
得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)は6.4μm、変動係数が27%であった。結果を表1にまとめる。
【0109】
〔比較例1〕
実施例1においてプレ分散工程内に分散助剤である亜鉛フタロシアニンを投入しなかった以外は実施例1と同様にしてトナーを得た。得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)は7.4μm、変動係数が37%であった。結果を表1にまとめる。
【0110】
〔比較例2〕
実施例4においてプレ分散工程内に分散助剤である亜鉛フタロシアニンを投入しなかった以外は実施例4と同様にしてトナーを得た。得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)は7.6μm、変動係数が40%であった。結果を表1にまとめる。
【0111】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、懸濁重合法で得られるトナー粒子の製造方法において特定の金属化合物と着色剤を所定の工程で分散若しくは溶解し、重合性単量体組成物の粘度を一定の範囲内に制御することにより、高品質なトナー粒子を製造する製造方法を提供することができることから電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法の如き画像形成方法に好適に使用される。
【符号の説明】
【0113】
1:分散機、:2:ケーシング、8:ホールディングタンク、10:循環ポンプ、11:冷却手段、12:温度計、13:モーター、14:冷却水入口、15:冷却水出口、16:ジャケット入口、17:ジャケット出口、18:ジャケット、19:背圧弁、20:三方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも重合性単量体を含む分散媒体中に、中心金属が五配位構造をとっているフタロシアニン構造を有する金属化合物と、着色剤とを容器内で攪拌分散若しくは溶解させて重合性単量体混合物Aを得るプレ分散工程;
該容器内の重合性単量体混合物Aをメディア分散機に導入し、メディア分散機から排出された後、再度、容器内に戻し、その後、メディア分散機に再導入して繰り返し循環させて重合性単量体組成物Bを得る分散工程;
該重合性単量体組成物Bを水系媒体中に分散し懸濁粒子を得る造粒工程;
ついで得られた該懸濁粒子に含まれる該重合性単量体を重合してトナー粒子を得る重合工程;を有するトナー粒子の製造方法において、
該重合性単量体混合物Aの粘度Aと該重合性単量体組成物Bの粘度Bの関係が下式
1.5≦B/A≦10.0
15(mPa・s)≦B≦1000(mPa・s)
の関係を満たすまで、メディア分散機による分散が繰り返されることを特徴とするトナー粒子の製造方法。
【請求項2】
前記金属化合物が、中心金属が亜鉛である亜鉛フタロシアニンであることを特徴とする請求項1に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項3】
前記重合性単量体組成物Bを得る分散工程に次いで、該重合性単量体組成物Bに少なくとも離型剤を分散若しくは溶解させ、重合性単量体組成物Cを得る溶解工程を有し、前記造粒工程が、該重合性単量体組成物Cを水系分散媒体中に分散し懸濁粒子を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項4】
前記メディア分散機内の平均滞留時間が0.1min/回以上1.5min/回以下で分散工程を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項5】
前記分散工程の該循環ライン中に非プレート型熱交換器を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−107227(P2011−107227A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259492(P2009−259492)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】