説明

トナー粒子の製造方法

【課題】粗大粒子の生成しやすい系においても、高現像性・高転写性・低温定着性を満たすトナーを得やすい、シャープな粒度分布のトナー粒子を製造することが可能なトナー粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】難水溶性無機微粒子を含有する水系媒体(A)を調製する工程、重合性単量体及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を前記水系媒体(A)中に加え、前記重合性単量体組成物を造粒して前記重合性単量体組成物の粒子を形成する造粒工程、前記重合性単量体組成物の粒子に含まれる重合性単量体を重合してトナー粒子を生成する重合工程とを有するトナー粒子の製造方法であって、
前記水系媒体(A)は撹拌手段が設置された調製容器内で調製され、調製容器内容物容積と撹拌翼から単位時間に吐出される前記水系媒体(A)の吐出量、前記水系媒体(A)中の難水溶性無機微粒子濃度、造粒時温度における前記水系媒体(A)中の難水溶性無機微粒子のゼータ電位値の平均値と当該平均値に対する標準偏差、及び造粒工程における水系媒体のpHを規定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法の如き記録方法に用いられる重合法トナーに用いられるトナー粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トナーを用いた画像形成においては、従来と比較してより高精細・高解像度の画像形成が求められている。それに伴い、トナーにおいてはその小粒径化及び粒度分布の均一化が求められており、小粒径で粒度分布の均一なトナーを得やすい懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法などの重合法を用いたトナーが注目されている。
【0003】
また、近年では電子写真方式を用いたレーザープリンターや複写機においては急速に高速化が進んでおり、より高現像性・高転写性・低温定着性に優れたトナーが求められている。
【0004】
前記の目的を同時に達成するためにトナーに求められる条件は以下のようなものが挙げられる。即ち、前記目的を同時に達成するためにはトナーは真球状で表面組成が均一であることが求められ、また、トナー外層が耐熱性、耐久性を保つよう設計され、トナー内層が低温定着性を持つよう設計された、所謂コアシェル構造を持つトナーが好適に用いられる。それらの特性を満足するトナーを得やすいトナー粒子の製造方法として、重合法の中でも特に懸濁重合法を用いたトナー粒子の製造方法が注目されている。
【0005】
懸濁重合法は重合性単量体及び着色剤を含む重合性単量体組成物を水系媒体中で懸濁・造粒しその後重合することでトナー粒子を得る方法である。
【0006】
懸濁重合法は前記特性を満たしたトナーを得ることが可能な、優れたトナー粒子の製造方法であるが、製造条件や材料との組み合わせによっては、前記懸濁・造粒工程において粒度分布がブロードになったり、粗大粒子が生成したりするなどの課題があった。
【0007】
前記課題に対し、懸濁・造粒時に用いる難水溶性無機微粒子を改良すること及び懸濁・造粒時のpHを調整することにより、課題を解決しようという提案がなされている。
【0008】
特許文献1においては、難水溶性無機微粒子の調整工程において水系媒体を高速回転剪断撹拌することにより50,000sec-1乃至100,000sec-1の速度勾配を生じさせ、前記条件の高剪断下で難水溶性無機微粒子を調製し、前記難水溶性無機微粒子を含むpH6.5乃至12.0の水系媒体中で40,000sec-1乃至100,000sec-1の速度勾配による高剪断下で造粒工程を行うトナー粒子の製造方法が開示されている。
【0009】
特許文献2においては、分散媒調製工程において、リン酸イオン含有水溶液にカルシウムイオン含有水溶液を添加する速度が、該リン酸イオン含有水溶液中のリン酸イオンのモル数に対して、カルシウムイオンのモル数の比が0.005乃至0.5sec-1となる速度であることを特徴とするトナー粒子の製造方法が開示されている。
【0010】
特許文献3においては、リン酸塩水溶液とカルシウム塩水溶液とを混合して得られるリン酸カルシウム塩類を含有する水系媒体のpHを4.0乃至6.0に調整し、前記水系媒体中で造粒工程を行うトナー粒子の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−312086号公報
【特許文献2】特開平11−119465号公報
【特許文献3】特開2000−081727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
難水溶性無機微粒子の安定化効果は、難水溶性無機微粒子の粒径が微細であるほど好ましく、前記従来例により微細な粒径を有する難水溶性無機微粒子スラリーは得られるようになった。しかし、前記従来例においては難水溶性無機微粒子の組成や結晶構造までをも均一化することは困難であるという問題があった。そのため、正帯電性の小さい難水溶性無機微粒子が多く存在する場合には、難水溶性無機微粒子がトナー粒子表面に十分に付着することができず、トナー粒子の分散安定性が不十分となる場合があった。その結果、重合工程において液滴同士の合一が進行しやすく、トナー粒子の粗大化が起こるという問題があった。以上より、前記従来例によっては、特に液滴同士の合一が進行しやすく粗大粒子が生成しやすい系においては、高現像性・高転写性・低温定着性を満たすトナーを得やすい所望の粒度分布のトナー粒子を得ることは難しかった。
【0013】
本発明の目的は、粗大粒子の生成しやすい系においても高現像性・高転写性・低温定着性を満たすトナーを得やすい、粗大粒子が少なく、真球状でシャープな粒度分布のトナー粒子を製造するトナー粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは前記従来技術の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の構成により問題点を解決することができることを見出し、本発明に到達したものである。
【0015】
すなわち、本発明は、難水溶性無機微粒子を少なくとも含有する水系媒体(A)を調製する工程、重合性単量体及び着色剤を少なくとも含有する重合性単量体組成物を前記水系媒体(A)中に加え、前記水系媒体(A)中で前記重合性単量体組成物を造粒して前記重合性単量体組成物の粒子を形成する造粒工程、前記重合性単量体組成物の前記粒子に含まれる前記重合性単量体を重合してトナー粒子を生成する重合工程とを少なくとも有するトナー粒子の製造方法であって、
前記水系媒体(A)は撹拌手段が設置された調製容器内で調製され、
前記水系媒体(A)の調製工程における調製容器内容物容積をV(m3)、撹拌翼から単位時間に吐出される前記水系媒体(A)の吐出量をQ(m3/s)としたとき、
0.10sec-1≦Q/V≦2.00sec-1
であり、
前記水系媒体(A)中の難水溶性無機微粒子濃度をDwとしたとき、
0.50質量%≦Dw≦1.50質量%
であり、
造粒時温度における前記水系媒体(A)中の難水溶性無機微粒子のゼータ電位値の平均値をζt、造粒時温度におけるゼータ電位の平均値に対する標準偏差をσtとしたとき、
−5.0mV≦ζt≦20.0mV
5.0mV≦σt≦25.0mV
であり、
造粒工程における水系媒体のpHをpHwとしたとき、
4.5≦pHw≦6.5
であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、粗大粒子の生成しやすい系においても、高現像性・高転写性・低温定着性を満たすトナーを得やすい、粗大粒子が少なくシャープな粒度分布のトナー粒子を製造することが可能なトナー粒子の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るプロセスカートリッジの断面説明図である。
【図2】本発明の画像形成方法を実施する装置の一例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を示して、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明のトナー粒子の製造方法は、難水溶性無機微粒子を少なくとも含有する水系媒体(A)を調製する工程と、重合性単量体及び着色剤を少なくとも含有する重合性単量体組成物を前記水系媒体(A)中に加え、前記水系媒体(A)中で前記重合性単量体組成物を造粒して前記重合性単量体組成物の粒子を形成する造粒工程と、前記重合性単量体組成物の前記粒子に含まれる前記重合性単量体を重合してトナー粒子を生成する重合工程とを少なくとも有している。
【0020】
まず、上記本発明に用いられる難水溶性無機微粒子は、水系媒体中において正帯電性から負帯電性の領域にわたり帯電性の分布を有している。このうち、正帯電性を有する難水溶性無機微粒子は、水系媒体中で均一に分散した液滴として存在している重合性単量体組成物粒子の表面に静電的相互作用によって吸着し、液滴の合一を物理的・静電的に抑制しているものと考えられる。
【0021】
以上より、一般的には難水溶性無機微粒子濃度が高い場合には液滴の中心粒径は小粒径化し、難水溶性無機微粒子濃度が低い場合には液滴の中心粒径は大粒径化する。そのため、難水溶性無機微粒子濃度を制御することで液滴の中心粒径をコントロールすることが可能である。
【0022】
しかしながら、重合性単量体組成物粒子表面の負帯電性が小さい系においては、難水溶性無機微粒子が重合性単量体組成物粒子表面に十分な付着力を持って吸着することができない場合があった。その具体例としては、トナー粒子の製造時に極性樹脂を添加しない場合や、極性樹脂を添加してもその酸価が小さい場合、また帯電制御剤の添加量が少量である場合などである。そのような場合は、液滴の安定性が低下し、重合工程中に液滴同士の合一が進行しやすくなるため、粗大粒子や、真球状でない粒子の割合が多いトナー粒子が生成してしまうという課題があった。
【0023】
一般に、トナー粒子の真球性を評価する指標としては、平均円形度が有名である。しかし前記課題のように、重合工程中の液滴同士の合一による真球性の悪化度を評価する場合には、トナー粒子の「アスペクト比」の値がより好適に用いられる。アスペクト比は、粒子の針状度を評価する指標であり、重合工程中に合一粒子が増加し、針状粒子の割合が増加した場合には、アスペクト比の値が顕著に低下するという特徴を有する。アスペクト比の値は、例えばフロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)により測定することができる。フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の最大長Dmaxや最大長垂直長Dv-max等が計測される。粒子像の最大長Dmaxとは、粒子画像の輪郭上の二点における最大の長さとして計測される値であり、最大長垂直長Dv-maxとは、最大長Dmaxに平行な二本の直線で粒子像輪郭を挟んだ時、二直線間を垂直に結ぶ最短の長さとして計測される値である。
【0024】
次に、最大長Dmaxと最大長垂直長Dv-maxを用いてアスペクト比Rを求める。アスペクト比とは、最大長垂直長Dv-maxを最大長Dmaxで割った値として定義され、次式で算出される。
アスペクト比R=Dv-max/Dmax
【0025】
粒子同士の合一が少なく、粒子像がより円形の時にアスペクト比Rは1に近づき、粒子同士の合一が多く、粒子像の針状度が高くなればなるほどアスペクト比Rは小さい値になる。トナー粒子のアスペクト比Rが小さい場合、トナー粒子の真球性が低下するため、現像性や転写性に弊害を生じる場合がある。また、トナー粒子中の着色剤や帯電制御剤の分散性が悪化する場合があり、画像濃度が低下したり、摩擦帯電量が低下したりする場合がある。
【0026】
前記のように重合性単量体組成物粒子表面の負帯電性が小さい系においては、重合工程中に液敵同士の合一が進行し、アスペクト比の値が低下するという課題があった。その原因の一つとして、難水溶性無機微粒子のゼータ電位分布の平均値に対する標準偏差が比較的大きいことが挙げられる。
【0027】
ゼータ電位とは、溶液中の微小粒子の周囲に形成されるイオン固定層とイオン拡散層とよばれる電気二重層中の、液体流動が起こり始める「滑り面」の電位として定義される。微小粒子の表面特性により、このゼータ電位の絶対値は正(正帯電性)や負(負帯電性)の値を示す。また、この絶対値が大きいほど前記溶液中における微小粒子表面の電荷が大きいことを示す。
【0028】
水系媒体中において、難水溶性無機微粒子の表面は一般的に正帯電性を帯びているが、この正帯電性の大きさが、負帯電性を有する重合性単量体組成物表面への吸着力と相関のあることが知られている。よって、難水溶性無機微粒子のゼータ電位値やゼータ電位の平均値に対する標準偏差を規定することにより、重合性単量体組成物の造粒安定性を好適に制御することができる。
【0029】
また、粒度分布に影響を与える要因としては、さらに造粒工程における水系媒体のpHが挙げられる。特に負帯電性のトナーを製造する場合、造粒工程において液滴表面に負帯電性の極性物質が局在化し、さらにその周囲を正帯電性の難水溶性無機微粒子が覆うことによって液滴が安定化することが知られている。この時、水系媒体が塩基性であると難水溶性無機微粒子の正帯電性が低下してしまうため、液滴の安定性が損なわれる。そのため、生成するトナー粒子の粒度分布は悪化すると考えられる。
【0030】
本発明においては、難水溶性無機微粒子のゼータ電位値、及びゼータ電位の平均値に対する標準偏差を適正な範囲内に調整することで、難水溶性無機微粒子の正帯電性が高く保たれるため、少量の難水溶性無機微粒子でも液滴を安定化することが可能となる。また、造粒工程におけるpHを適正な範囲内に調整することで、重合性単量体組成物の液滴が水系媒体中で安定的に存在することが可能となる。前記より、粒径のみならず組成や結晶構造の均一化した難水溶性無機微粒子が液滴に好適に吸着することが可能となり、結果としてシャープな粒度分布のトナー粒子が得られるものである。
【0031】
本発明では、難水溶性無機微粒子を含有する水系媒体は撹拌手段が設置された調製容器内で調製される。本発明で用いられる撹拌翼または撹拌手段としては以下のものが挙げられる。パドル翼、傾斜パドル翼、三枚後退翼、プロペラ翼、ディスクタービン翼、ヘリカルリボン翼、アンカー翼のごとき一般的な撹拌翼、フルゾーン(神鋼パンテック社製)、ツインスター(神鋼パンテック社製)、マックスブレンド(住友重機社製)、スーパーミックス(佐竹化学機械工業社製)、Hi−Fミキサー(綜研化学社製)。また、高剪断力を有する攪拌機も好適に用いられる。高剪断力を有する攪拌機としてはウルトラタラックス(IKA社製)、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業社製)、T.K.フィルミックス(特殊機化工業社製)、クレアミックス(エム・テクニック社製)の如き市販のものを用いることができる。これらのうちクレアミックスのように、高速で回転するローターとそれを取り囲む複数のスリットを設けたスクリーンによって生じる剪断力によって分散を行うものである方が、より好適に用いることができる。
【0032】
本発明では、難水溶性無機微粒子を含有する水系媒体(A)の調製工程における調製容器内容物容積V(m3)、撹拌翼から単位時間に吐出される前記水系媒体(A)の吐出量Q(m3/s)との比Q/Vが0.10sec-1以上2.00sec-1以下である。より好ましくは0.30以上1.50以下である。
【0033】
前記Q/Vは、調製容器内容物が攪拌翼によって単位時間あたりに吐出される回数(循環回数)を表しており、通常はこの値が大きいほどより多くの剪断を受けていることを意味する。
【0034】
ここで、吐出量Q(m3/s)は以下の式によって求める。
Q=Nq×n×d3
Nq:吐出係数
n:攪拌翼の単位時間あたりの回転数(r/sec)
d:攪拌翼の羽根径(m)
【0035】
ここで、前記吐出係数Nqとは攪拌翼ごとに異なる固有の値であり、攪拌翼の形状やローター形状、スクリーン径などにより決定される値である。前記Q/VがVは0.10sec-1以上2.00sec-1以下の場合には、攪拌翼から吐出される難水溶性無機微粒子の吐出量と、攪拌翼による剪断力とのバランスが最適となり、難水溶性無機微粒子の組成や結晶構造が均一化する。さらに、難水溶性無機微粒子の粒径が重合性単量体組成物粒子の表面に付着するのに最適な大きさとなる。その結果、得られるトナー粒子の重量平均径(D4)及びトナー粒子の粒度分布の指標となる重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比D4/D1、トナー粒子のアスペクト比が最適な値となる。また、攪拌翼の回転によるキャビテーションの発生がないため、重合性単量体組成物粒子の造粒性に悪影響を与えず、着色剤の均一に分散されたトナー粒子が得られる。その結果、着色力の十分に高いトナーを得ることができる。
【0036】
前記Q/Vが0.10未満の場合、攪拌翼による単位時間あたりの吐出量が小さくなりすぎるため、組成や粒径の均一な難水溶性無機微粒子を生成することが困難となる。その結果、難水溶性無機微粒子の重合性単量体組成物粒子表面への付着状態が不十分となり、液滴の合一が進行しやすくなるため、得られるトナー粒子の重量平均粒径(D4)が大きくなりすぎる。そのため、カブリやトナー飛散の発生などの弊害を生じる、また、定着時により多くの熱量が必要となるため低温定着性に弊害を生じる。前記Q/Vが2.00を超える場合には、生成する難水溶性無機微粒子の粒径が小さくなりすぎるために、難水溶性無機微粒子による重合性単量体組成物粒子表面の遮蔽性が不十分となる。その結果、前記同様液滴の合一が進行しやすくなり、得られるトナー粒子の重量平均粒径(D4)が大きくなりすぎる。また、攪拌翼によるキャビテーションが発生する場合があり、造粒性が不安定化する。その結果、得られるトナー粒子の重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比D4/D1が大きい、ブロードな粒度分布となる。そのためトナーとしての収率が低下し、また、カブリや現像スジの発生などの弊害を生じる。また、重合性単量体組成物粒子中で着色剤などの材料の偏析が生じやすくなるため、トナー粒子の着色力が低下する。
【0037】
Q/Vを前記範囲に調節することは、水系媒体製造時の攪拌翼の種類、攪拌翼の回転速度、調整容器内容物容積を調節することで達成される。
【0038】
また、水系媒体の難水溶性無機微粒子濃度Dw(質量%)は0.50以上1.50以下である。より好ましくは0.50以上1.00以下である。
【0039】
前記Dwが0.50以上1.50以下である場合には、得られるトナー粒子の重量平均粒径(D4)が最適な範囲となることによりカブリ、トナー飛散や転写均一性の悪化などの発生が抑えられ、低温定着が可能な現像性、転写性及び定着性に優れたトナーが得られる。また、0.50以上1.00以下である場合には、前記効果はより向上する。
【0040】
前記Dwが0.50未満の場合には、得られるトナー粒子の重量平均粒径(D4)が大きくなりすぎるため、カブリやトナー飛散などの弊害を生じる。また、定着時により多くの熱量が必要となるため低温定着性に弊害を生じる。前記Dwが1.50を超える場合には得られるトナー粒子の重量平均粒径(D4)が小さくなりすぎるため、帯電性の制御が困難となり、転写均一性の悪化などの弊害を生じる。また、トナー粒子の4μm以下粒子率(個数%)が大きくなり、4μm以下粒子中に着色剤やワックス、帯電制御剤等の偏析が発生するため、低温定着性や保存安定性に弊害を生じる。
【0041】
Dwを前記範囲に調節することは、例えば難水溶性無機微粒子製造時の各原料の添加量を調節することで達成可能である。
【0042】
また、造粒時温度における難水溶性無機微粒子を含有する水系媒体のゼータ電位値の平均値ζtが−5.0mV以上20.0mV以下である。より好ましくは0.0mV以上18.0mV以下である。
【0043】
前記ζtが−5.0mV以上20.0mV以下である場合には、適度な正帯電性を有する難水溶性無機微粒子の割合が増加し、水系媒体中で均一に分散した液滴として存在している重合性単量体組成物粒子の表面に適度な付着力で吸着できると考えられる。その結果、液滴の安定性が向上し、得られるトナー粒子の重量平均粒径(D4)が最適な範囲となることによりカブリ、トナー飛散や転写均一性の悪化などの発生が抑えられ、低温定着が可能な現像性、転写性及び定着性に優れたトナーが得られる。また、0.0mV以上18.0mV以下である場合には前記効果はより向上する。
【0044】
前記ζtが−5.0mV未満の場合には、難水溶性無機微粒子と、重合性単量体組成物粒子の液滴表面との間に働く静電的相互作用が小さくなりすぎるため、難水溶性無機微粒子の付着性が不十分となり、トナー粒子の重量平均粒径(D4)が大きくなりすぎる。前記ζtが20.0mVを超える場合には、難水溶性無機微粒子と重合性単量体組成物粒子の液滴表面との付着力が大きくなりすぎるために、生成した微小粒径の液滴の安定性が高まる。その結果、トナー粒子の4μm以下粒子率(個数%)が大きく、微小粒子の多いブロードな粒度分布となる。また、4μm以下のトナー粒子中に着色剤やワックス、帯電制御剤等の偏析が発生するため、低温定着性や保存安定性に弊害を生じる。
【0045】
ζtを前記範囲に調節するためには、例えば難水溶性無機微粒子製造時の各原料の添加量や添加速度を調節することで達成可能である。
【0046】
また、造粒時温度における難水溶性無機微粒子を含有する水系媒体のゼータ電位の平均値に対する標準偏差σtが5.0mV以上25.0mV以下である。より好ましくは5.0mV以上20.0mV以下である。
【0047】
前記σtが5.0mV以上25.0mV以下である場合には、難水溶性無機微粒子の有する正帯電性のばらつきが適度な大きさとなり、難水溶性無機微粒子が均一な付着力で重合性単量体組成物粒子の表面に吸着できると考えられる。その結果、重合性単量体組成物粒子中の材料の偏析が抑制され、材料分散性の均一なトナー粒子が生成される。それにより、得られるトナー粒子の着色力が向上する。
【0048】
前記σtが5.0mV未満の場合には、難水溶性無機微粒子と重合性単量体組成物粒子の液滴表面との付着力が大きくなりすぎるために、生成した微小粒径の液滴の安定性が高まる。その結果、トナー粒子の4μm以下粒子率(個数%)が大きく、微小粒子の多いブロードな粒度分布となる。また、4μm以下のトナー粒子中に着色剤やワックス、帯電制御剤等の偏析が発生するため、低温定着性に弊害を生じる。前記σtが25.0mVを超える場合には、難水溶性無機微粒子の有する正帯電性のばらつきが大きくなりすぎるため、重合性単量体組成物粒子の表面への吸着力が低下する。その結果、液滴の安定性が低下し、得られるトナー粒子の重量平均粒径(D4)が大きくなる場合がある。また、トナー粒子のアスペクト比の値が低下し、カブリ、トナー飛散や転写均一性の悪化などの弊害を生じる。
【0049】
σtを前記範囲に調節するためには、例えば難水溶性無機微粒子製造時の各原料の添加量や、添加速度、難水溶性無機微粒子製造時の各原料添加時の組成比を調節することで達成可能である。また、難水溶性無機微粒子の生成反応を促進するためにイオン性物質を添加したり、難水溶性無機微粒子製造時の温度や製造時間を調節したりすることでも達成可能である。
【0050】
また、造粒工程における水系媒体のpHであるpHwは4.5以上6.5以下である。より好ましくは4.8以上5.5以下である。
【0051】
前記pHwが4.5以上6.5以下である場合には、難水溶性無機微粒子の正帯電性が良好となることにより、得られるトナー粒子の重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比D4/D1及びトナー粒子の4μm以下粒子率(個数%)が最適の値となる。その結果、小粒子や粗大粒子の少ない良好な粒度分布が得られるため、カブリや現像スジ、転写均一性の悪化などが抑制され、低温定着が可能な、現像性、転写性及び定着性に優れたトナーが得られる。また、4.8以上5.5以下である場合には前記効果はさらに向上する。
【0052】
前記pHwが4.5未満の場合、難水溶性無機微粒子が可溶化することにより、得られるトナー粒子の重量平均粒径(D4)が大きくなりすぎる。また、トナー粒子のアスペクト比の値が低下し、粗大粒子の多いブロードな粒度分布となる。そのため、カブリや現像スジ、トナー飛散の発生などの弊害を生じる、また、定着時により多くの熱量が必要となるため低温定着性に弊害を生じる。前記pHwが6.5を超える場合、難水溶性無機微粒子の正帯電性が低下することにより、トナー粒子の重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比D4/D1及びトナー粒子の4μm以下粒子率(個数%)が大きくなる。また、4μm以下のトナー粒子中に着色剤やワックス、帯電制御剤等の偏析が発生するため、低温定着性に弊害を生じる。そのためトナーとしての収率が低下し、また、カブリや現像スジの発生などの弊害を生じる。
【0053】
pHwを前記範囲に調節することは、例えば添加する酸及び塩基の量を調節することで達成可能である。
【0054】
本発明に用いられる難水溶性無機微粒子含有水系媒体の沈降半減期は200以上1400分以下であることが好ましい。より好ましくは400分以上1000分以下である。
【0055】
沈降半減期とは、調製した難水溶性無機微粒子をある濃度に調整し、均一に懸濁させた水系媒体を、100mlの沈降管に入れて25℃で静置した時、沈降物の体積が50mlに達するまでの時間である。つまり、沈降半減期は難水溶性無機微粒子の分散安定性を示す指標である。
【0056】
前記沈降半減期が200分以上1400分以下である場合、前記難水溶性無機微粒子が適度な粒径を維持しつつ、難水溶性無機微粒子同士の凝集も防ぐことができる。その結果、難水溶性無機微粒子が最適な分散安定性を有し、造粒工程において重合性単量体組成物粒子の液滴表面に瞬時に吸着することが可能となる。そのため、トナー粒子の重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比D4/D1がさらに向上するばかりでなく、トナー粒子中の各材料の分散性もより均一化することが可能となる。
【0057】
沈降半減期を前記範囲に調節することは、水系媒体製造時の攪拌速度を調整したり、水系媒体製造時の温度を調整したりするなどの方法で、難水溶性無機微粒子の一次粒径を調節することで可能である。
【0058】
本発明に用いられる難水溶性無機微粒子としては、リン酸カルシウム塩類、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、酸化ケイ素、酸化アルミニウムが挙げられる。それらの中でも特にリン酸カルシウム塩類を用いることが好ましい。リン酸カルシウム塩類の具体例としては、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損型アパタイト、炭酸アパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、二リン酸カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム及びそれら複数の混合物が好適に用いられる。また、これらのリン酸カルシウム塩類の正帯電性や酸への可溶度などを考慮すると、本発明に用いられるリン酸カルシウム塩類にはヒドロキシアパタイトを含有することがさらに好ましい。ヒドロキシアパタイトを含有することによって難水溶性無機微粒子の正帯電性がさらに良好となり、難水溶性無機微粒子と重合性単量体組成物との吸着性をより高めることが可能となる。そのため、液滴の合一をより抑制することが可能となる。よって、より一層粒度分布のシャープなトナー粒子を得ることが可能となり、現像性、定着性に優れたトナーが得られる。さらに、これらの難水溶性無機微粒子は市販のものをそのまま用いてもよいが、難水溶性無機微粒子の粒径制御を考慮すると分散媒中にて難水溶性無機微粒子を生成させることがよい。例えば、ヒドロキシアパタイトの場合、高撹拌下においてリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム溶液とを混合することにより得ることがよい。
【0059】
本発明のトナーは、コアシェル構造を形成する目的で、さらにシェルを形成する極性樹脂(シェルバインダー樹脂)を含有することが好ましい。このような設計とすることで、耐熱性が向上する。さらに、現像性、転写性及び定着性の向上を達成でき、従来のトナーよりも良好な特性を得ることが可能となる。
【0060】
本発明に用いられる極性樹脂としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如き含窒素単量体の重合体もしくは含窒素単量体とスチレン−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;アクリロニトリルの如きニトリル系単量体;塩化ビニルの如き含ハロゲン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸の如き不飽和カルボン酸;不飽和二塩基酸;不飽和二塩基酸無水物;ニトロ系単量体の重合体もしくはそれとスチレン系単量体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体といったスチレン系共重合体との共重合体;ポリエステル;エポキシ樹脂;が挙げられる。
【0061】
本発明に用いる前記極性樹脂の酸価(mgKOH/g)は5.0以上30.0以下であることが好ましい。前記極性樹脂の酸価が5.0以上30.0以下の場合、ゼータ電位の平均値に対する標準偏差が小さい正帯電性の高い難水溶性無機微粒子と組み合わせることにより前記造粒工程において各液滴間の極性樹脂含有量が均等化される。また、極性樹脂が液滴表面に偏在する。以上より、液滴がさらに安定化する。よって、得られるトナー粒子の重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比D4/D1及びトナー粒子の4μm以下粒子率(個数%)がより最適な値になり、小粒子や粗大粒子の少ない良好な粒度分布が得られる。そのため、カブリや現像スジの発生が抑制された、現像性にさらに優れたトナーが得られる。さらに、前記極性樹脂がトナー表面に偏在することにより、コアシェル構造が形成されるため、保存安定性に優れ、また帯電安定性、帯電の立ち上がり及び耐久性がよく、高温時耐巻きつき性がよい、耐熱性及び現像性、定着性に優れたトナーが得られる。
【0062】
極性樹脂の酸価を前記範囲内にすることは極性樹脂内の酸成分の量を調節することにより達成可能である。
【0063】
本発明に用いられる重合性単量体組成物は重合性単量体を含有する。本発明に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。前記ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することが出来る。
【0064】
単官能性重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン系重合性単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトン。
【0065】
多官能性重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル。
【0066】
本発明においては、前記した単官能性重合性単量体を単独で或いは2種以上組み合わせて、又は前記した単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組み合わせて使用する。
【0067】
多官能性重合性単量体は、架橋剤として作用することも可能である。架橋剤は、単官能性重合性単量体100質量部に対して0.001乃至15質量部の割合で用いることができる。多官能性重合性単量体としては、前記したものに加えて、ジビニルアニリン、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンの如きジビニル化合物や3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。
【0068】
本発明に用いられる黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い各色に調色されたものが利用される。特に染料やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。
【0069】
本発明に用いられるイエロー着色剤としては、モノアゾ化合物、ジスアゾ化合物、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。具体的には、以下の、C.I.Pigment Yellow 12、13、14、15、17、62、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、128、129、138、147、150、151、154、155、168、180、185、214、C.I.Solvent Yellow 93、162等が例示できる。
【0070】
本発明に用いられるマゼンタ着色剤としては、モノアゾ化合物、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レ−キ化合物、ナフト−ル化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、以下の、C.I.Pigment Red 2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.Pigment Violet 19等が例示できる。
【0071】
本発明に用いられるシアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レ−キ化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.Pigment Blue 1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が挙げられる。
【0072】
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択される。前記着色剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対し1乃至20質量部添加して用いられる。
【0073】
さらに本発明のトナーは、着色剤として磁性材料を含有させ磁性トナーとすることも可能である。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもできる。磁性材料としては、以下の、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルの如き金属或いはこれらの金属のアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムの如き金属の合金及びその混合物等が例示できる。
【0074】
前記磁性体は、表面改質された磁性体が好ましく、重合阻害のない物質である表面改質剤により、疎水化処理を施したものがさらに好ましい。このような表面改質剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤を挙げることができる。
【0075】
これらの磁性体は個数平均粒径が2μm以下、好ましくは0.1乃至0.5μmのものが好ましい。トナー粒子中に含有させる量としては重合性単量体100質量部に対し20乃至200質量部、特に好ましくは重合性単量体100質量部に対し40乃至150質量部が良い。
【0076】
重合開始剤としては、油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤が用いられる。好ましくは、重合反応時の反応温度における半減期が0.5乃至30時間のものである。また重合性単量体100質量部に対し0.5乃至20質量部の添加量で重合反応を行うと、通常、分子量1万乃至4万の間に極大を有する重合体が得られ、適当な強度と溶融特性を有するトナーを得ることができる。
【0077】
重合開始剤の例としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドの如き過酸化物系重合開始剤。特に好ましくは、重合反応中の分解時にエーテル化合物を生成するような重合開始剤である。
【0078】
本発明においては、重合性単量体の重合度を制御する為に、公知の連鎖移動剤、重合禁止剤を使用しても良い。
【0079】
本発明に用いられる重合性単量体組成物はさらにスルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体を含有することが好ましい。
【0080】
前記重合性単量体組成物がスルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体を含有する場合、ゼータ電位の平均値に対する標準偏差が小さく正帯電性の高い難水溶性無機微粒子と組み合わせることにより前記造粒工程において各液滴間のスルホン酸基等を有する重合体または共重合体の含有量が均等化される。また、前記スルホン酸基等を有する重合体または共重合体が重合性単量体組成物表面に偏在することにより、液滴がさらに安定化する。よって、得られるトナー粒子の重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比D4/D1及びトナー粒子の4μm以下粒子率(個数%)がより最適な値になり、小粒子や粗大粒子の少ない良好な粒度分布が得られる。そのため、カブリや現像スジの発生が抑制された、現像性にさらに優れたトナーが得られる。さらに前記スルホン酸基等を有する重合体または共重合体がトナー表面に偏在することにより帯電安定性及び帯電の立ち上がりに優れ、さらに現像性に優れたトナーが得られる。
【0081】
そして前記スルホン酸基等を有する重合体は、重合性単量体100質量部に対し0.01乃至5.0質量部を含有することが好ましい。より好ましくは、0.1乃至3.0質量部である。前記スルホン酸基等を有する重合体が0.01乃至5.00質量部の場合には、前記効果はより向上する。
【0082】
前記重合体を製造するためのスルホン酸基を有する単量体として、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸が例示できる。
【0083】
本発明に用いられるスルホン酸基等を含有する重合体は、前記単量体の単重合体であっても構わないが、前記単量体と他の単量体との共重合体であっても構わない。前記単量体と共重合体をなす単量体としては、ビニル系重合性単量体があり、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することが出来る。
【0084】
単官能性重合性単量体としては以下の、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン系重合性単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトン等が例示出来る。
【0085】
多官能性重合性単量体としては以下の、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が例示できる。
【0086】
本発明のトナーには、帯電特性を安定化するために前記スルホン酸基等を側鎖に持つ高分子の他に、更に他の帯電制御剤を配合しても良い。帯電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の摩擦帯電量を安定して維持できる帯電制御剤が好ましい。さらに、トナーを直接重合法にて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない帯電制御剤が特に好ましい。
【0087】
具体的な負帯電制御剤化合物としては、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、ホウ素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。
【0088】
これらの帯電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、内部添加する場合は、好ましくは結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して0.1乃至10質量部、より好ましくは0.1乃至5質量部の範囲で用いられる。また、外部添加する場合、トナー粒子100質量部に対し、好ましくは0.005乃至1.0質量部、より好ましくは0.01乃至0.3質量部である。
【0089】
本発明のトナーには、前記難水溶性無機微粒子の微細な分散のために、0.001乃至0.1質量部の界面活性剤を使用してもよい。これは前記難水溶性無機微粒子の所期の作用を促進するためのものであり、その具体例としては、以下のものが挙げられる。ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム。
【0090】
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤を少なくとも含有するトナー粒子に加え、無機微粉体を含有してもよく、無機微粉体は外添されていることが好ましい。
【0091】
無機微粉体の添加量は、トナー粒子100質量部に対し0.01乃至5.0質量部であることが好ましく、0.1乃至4.0質量部であることがより好ましい。添加量が前記の範囲内であれば、定着性の低下を抑制しつつ、十分な流動性の向上効果が得られる。前記無機微粉体は、個数平均一次粒径が4乃至80nmであることが好ましく、4乃至60nmであることがより好ましい。
【0092】
無機微粉体としては、酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末の如き金属酸化物;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如きシリカ微粉末が挙げられる。本発明では、先述のように、その中でも特に、酸化チタン微粉末を含有していることが好ましい。また、前記金属酸化物やシリカ微粉末をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルの如き処理剤により表面処理しても良い。更には、アルミドープシリカ、チタン酸ストロンチウム、ハイドロタルサイトが挙げられる。その他にも、外添剤として、フッ化ビニリデン微粉未、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛等の如き脂肪酸金属塩を添加することもできる。
【0093】
以下に本発明の物性値の測定方法について説明する。
【0094】
<難水溶性無機微粒子を含有する水系媒体のゼータ電位の測定>
本発明における難水溶性無機微粒子を含有する水系媒体のゼータ電位値(ζt)及びゼータ電位の平均値に対する標準偏差(σt)の測定は、Zetasizer Nano ZS(MALVERN社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「Dispersion Technology software 4.20」(MALVERN社製)を用いて算出した。具体的な測定方法は下記の通りである。
<1>難水溶性無機微粒子を含有する水系媒体の製造が完了した後、ただちに重合性単量体組成物の造粒を行う温度(通常は50℃乃至70℃)まで昇温した。その後、ただちに調製容器内から水系媒体を一部抜き取り、容積10mlのシリンジに移した。次に、シリンジ先端を、イオン交換水で2回とも洗いしたゼータ電位測定用キャピラリーセル(DTS1060−Clear disposable zeta cell)の片方のサンプルポートに挿入し、気泡が発生しないよう水系媒体をゆっくりと注いだ。液がキャピラリ部分に隙間なく注入されたことを確認した後、二つのサンプルポートに栓をした。
<2>セルを測定装置のセルホルダーに差し込み、検出部の蓋を閉じた。下記の測定条件で測定を行った。
F(ka)selection Model:Smoluchowski
Dispersant:Water
Temperature:造粒時温度(通常は50℃乃至70℃)
Result Calculation:General Purpose
<3>測定終了後、表示される測定結果のレポート画面において、「Zeta Potential」の値をゼータ電位の平均値とし、「Zeta Deviation」の値をゼータ電位の平均値に対する標準偏差とした。
【0095】
<水系媒体のpH>
難水溶性無機微粒子を含有する水系媒体のpHはJIS Z8802−1984の7で規定された測定方法により、以下のようにガラス電極によるpH計測定する。
まず、電極を洗浄したものをJIS Z8802−1984の7で規定された手法により、pH計の調整を行う。
【0096】
次に、難水溶性無機微粒子を含有する水系媒体を測定値が変化しない程度の液量10乃至25mLをとり、その水性懸濁液の液温が±0.1℃以上変化がないようにし、上述したJIS Z8802−1984の7で規定されたガラス電極を有するpH計により測定を行う。引き続いて測定される3回の結果が、用いるpH計の再現性に応じて、それぞれ±0.02、±0.05、又は±0.1以内の範囲で一致するまで行った値を平均し、水系媒体のpHとする。
【0097】
<難水溶性無機微粒子を含有する水系媒体の沈降半減期の測定>
難水溶性無機微粒子を含有する水系媒体の沈降半減期の測定は次のようにして行った。まず、難水溶性無機微粒子の水系媒体中濃度が0.5重量%となるように調整し、水系媒体を均一に懸濁させた。その後、100mlの沈降管に入れて25℃で静置した。沈降物の体積が50mlに達するまでの時間を測定し、この時間を沈降半減期とした。
【0098】
<難水溶性無機微粒子のX線回折パターン>
生成した難水溶性無機微粒子のX線回折パターンは試料水平型強力X線回折装置RINT TTRII(リガク社製)を使用し、以下の条件により測定した。
X線管球:Cu
管電圧:50KV
管電流:300mA
走査モード:連続 スキャン速度:4deg./min
サンプリング間隔:0.020deg.
スタート角度(2θ):3deg.
ストップ角度(2θ):60deg.
発散スリット:開放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
湾曲モノクロメーター使用
【0099】
得られたX線回折ピークの帰属は、リガク社製解析ソフト「Jade6」を用いて行った。
【0100】
<トナー粒子の重量平均粒径の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出した。
【0101】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0102】
尚、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行った。
【0103】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0104】
具体的な測定法は以下の通りである。
<1>Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
<2>ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
<3>発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
<4>前記<2>のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
<5>前記<4>のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
<6>サンプルスタンド内に設置した前記<1>の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記<5>の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
<7>測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0105】
<トナー粒子のアスペクト比の測定方法>
トナー粒子のアスペクト比は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
【0106】
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
【0107】
測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定し、トナー粒子のアスペクト比を求める。
【0108】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0109】
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
【0110】
<極性樹脂の酸価>
極性樹脂の酸価は以下の方法により測定した。
【0111】
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。極性樹脂の酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した極性樹脂の試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、前記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
【0112】
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
【0113】
次に本発明のトナーを用いた画像形成方法の例について図1、図2を用いて説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0114】
<プロセスカートリッジ>
図1は、本発明の画像形成方法を適用した画像形成装置に好適に用いることのできる、プロセスカートリッジ7(以下、「カートリッジ」ともいう。)の断面模式図である。
【0115】
カートリッジ7は、感光体ドラム1と、帯電手段2及びクリーニング手段6を備えたクリーナーユニット50と、感光体ドラム1に形成された静電潜像を現像する現像手段4を有する現像ユニット4Aとを有する。クリーナーユニット50を構成するクリーニング枠体31には、感光体ドラム1が軸受部材(不図示)を介して回転自在に取り付けられている。
【0116】
感光体ドラム1には、感光体ドラム1の外周面に設けられた感光層を一様に帯電させるための帯電ローラー2、転写後に感光体ドラム1上に残った現像剤(残留トナー)を除去するためのクリーニングブレード60が接触している。クリーニングブレード60によって感光体ドラム1表面から除去されたトナー(除去トナー)は、クリーニング枠体31に設けられた除去トナー収納室35に納められる。
【0117】
現像ユニット4Aは、トナーを収容する現像枠体45(45a、45b、45e)を有しており、現像ローラー40(矢印Y方向に回転)が軸受部材を介して回転自在に現像枠体45に支持されている。また、現像ローラー40と接触してトナー供給ローラー43(矢印Z方向に回転)とトナー規制部材44がそれぞれ設けられている。さらに現像枠体45には収容されたトナーを撹拌するとともにトナー供給ローラー43に搬送するためのトナー搬送機構42が設けられている。
【0118】
そして、現像ユニット4Aがクリーナーユニット50に対して揺動自在に支持されている。すなわち、現像枠体45の両端に設けた結合穴47、48とクリーナーユニット50のクリーニング枠体31両端に設けた支持穴(不図示)を合わせ、クリーナーユニット50両端からピン(不図示)を差し込んでいる。
【0119】
また、支持穴を回転軸中心として現像ローラー40が感光体ドラム1に接触するように加圧バネ(不図示)によって現像ユニット4Aが常に付勢されている。
【0120】
現像時には、トナー容器41内に収納されたトナーがトナー撹拌機構42によってトナー供給ローラー43へ搬送される。トナー供給ローラー43が、現像ローラー40との摺擦によって現像ローラー40にトナーを供給し、現像ローラー40上にトナーを付着させる。現像ローラー40上に付着されたトナーは、現像ローラー40の回転にともなってトナー規制部材44のところに至る。そして、トナー規制部材44がトナーを規制して所定のトナー薄層を形成し、所望の帯電電荷量を付与する。現像ローラー40上で薄層化されたトナーは、現像ローラー40の回転につれて、感光体ドラム1と現像ローラー40とが接近した現像部に搬送される。そして、現像部において、電源(不図示)から現像ローラー40に印加した現像バイアスにより、感光体ドラム1の表面に形成されている静電潜像に付着して、潜像を現像化する。静電潜像の現像化に寄与せずに現像ローラー40の表面に残留したトナーは、現像ローラー40の回転にともなって現像枠体45内に戻される。そして、トナー供給ローラー43との摺擦部で現像ローラー40から剥離、回収される。回収されたトナーは、トナー撹拌機構42により残りのトナーと撹拌混合される。
【0121】
ここで現像ローラー40には弾性ローラーを用い、これを感光体ドラム1表面と接触させる方法を用いることができる。一般にトナー担持体と感光体が接触する現像方式においては、トナーの破損、変形が生じやすくなるが、本発明記載のトナーを用いた場合にはこうした変化を効果的に抑制することが出来るため、好ましい。
【0122】
<画像形成装置>
図2は、本発明の画像形成方法を適用した画像形成装置の一例を示す断面模式図である。画像形成装置100は4個の画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdを縦方向に並設している。そして、各画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdには、各々、装着手段(不図示)によってプロセスカートリッジ7(7a、7b、7c、7d)が着脱可能に装着される。なお、マゼンタ色、シアン色、イエロー色、ブラック色の各カートリッジ7a、7b、7c、7dは同一構成である。
【0123】
本模式図では、画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdは、縦方向に僅かに傾斜して並設されているが、傾斜することなく縦方向に整列して設けてもよい。また、プロセスカートリッジ7は、図1に例示したものと同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0124】
各カートリッジ7(7a、7b、7c、7d)は、感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)を備えている。感光体ドラム1は、駆動手段(不図示)によって、同図中、反時計回りに回転駆動される。感光体ドラム1の周囲には、その回転方向に従って順に以下の手段が設けられている。(A)感光体ドラム1表面を均一に帯電する帯電手段2(2a、2b、2c、2d)。(B)画像情報に基づいてレーザービームを照射し感光体ドラム1に静電潜像を形成するスキャナユニット3(3a、3b、3c、3d)。(C)静電潜像に現像剤(以下、「トナー」という。)を付着させてトナー像として現像する現像手段4(4a、4b、4c、4d)。(D)感光体ドラム1上のトナー像を記録媒体Sに転写させる転写装置5。(E)転写後の感光体ドラム1表面に残ったトナーを除去するクリーニング手段6(6a、6b、6c、6d)。
【0125】
ここで、感光体ドラム1と、プロセス手段である、帯電手段2、現像手段4、クリーニング手段6は、カートリッジ枠体により一体的に構成してカートリッジ化されカートリッジ7を構成している。
【0126】
感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)は、シリンダの外周面に感光層を設けて構成したものである。感光体ドラム1は、その両端部を支持部材によって回転自在に支持されている。そして、一方の端部に駆動モータ(不図示)からの駆動力が伝達されることにより、反時計周りに回転駆動される。
【0127】
前記感光体としては、a−Se、CdS、ZnO2、OPC、a−Siの様な光導電絶縁物質層を持つ感光体ドラムが好適に使用される。また、前記OPC感光体における有機系感光層の結着樹脂は、特に限定するものではない。中でもポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂が特に、転写性に優れ、感光体へのトナーの融着、外添剤のフィルミングが起こりにくいため好ましい。
【0128】
帯電手段2(2a、2b、2c、2d)としては、接触帯電方式のものを使用している。帯電手段2は、ローラー状に形成された導電性ローラーである。このローラーを感光体ドラム1表面に当接させるとともに、このローラーに帯電バイアス電圧を印加する。これにより、感光体ドラム1表面を一様に帯電させる。
【0129】
スキャナユニット3(3a、3b、3c、3d)は、レーザーダイオード(不図示)によって画像信号に対応する画像光が、高速回転されるポリゴンミラー(不図示)及び結像レンズ(不図示)を介して帯電済みの感光体ドラム1表面を画像情報に応じ露光する。これによって、感光体ドラムに静電潜像を形成する。
【0130】
現像手段4(4a、4b、4c、4d)は、マゼンタ色、シアン色、イエロー色、ブラック色の各色のトナーを夫々収納したトナー容器41から構成され、トナー容器41内のトナーを送り機構42によってトナー供給ローラー43へ送り込む。
【0131】
前記トナー供給ローラー43は、図示時計方向に回転し、トナー担持体としての現像ローラー40へのトナーの供給、及び、静電潜像の現像化に寄与せず現像ローラー40上に残留したトナーのはぎとりを行う。
【0132】
現像ローラー40へ供給されたトナーは、現像ローラー40外周に圧接されたトナー規制部材44によって現像ローラー40(時計回り方向に回転)の外周に塗布され、且つ電荷を付与される。そして、潜像が形成された感光体ドラム1と対向した現像ローラー40に現像バイアスを印加する。そして、潜像に応じて感光体ドラム1上にトナー現像を行う。
【0133】
転写装置5には、すべての感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)に対向し、接するように循環移動する静電転写ベルト11が設けられている。この転写ベルト11は、駆動ローラー13、従動ローラー14a、14b、テンションローラー15に張架されていて、図中左側の外周面に記録媒体Sを静電吸着する。そして、転写ベルト11は、感光体ドラム1に記録媒体Sを接触させるべく循環移動する。これにより、記録媒体Sは転写ベルト11により転写位置まで搬送され、感光体ドラム1上のトナー像を転写される。
【0134】
この転写ベルト11の内側に当接し、4個の感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)に対向した位置に転写ローラー12(12a、12b、12c、12d)が並設される。これら転写ローラー12には、転写時にバイアスが印加されて、電荷が静電転写ベルト11を介して記録媒体Sに印加される。このとき生じた電界により、感光体ドラム1に接触中の記録媒体Sに、感光体ドラム1上のトナー像が転写される。
【0135】
給送部16は、画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdに記録媒体Sを給送搬送するものである。給送部16には、複数枚の記録媒体Sがカセット17に収納されている。画像形成時には給送ローラー18(半月ローラー)、レジストローラー19が画像形成動作に応じて駆動回転する。給送ローラー18は、カセット17内の記録媒体Sを1枚毎に分離給送した後、レジストローラー19に記録媒体S先端を突き当てて一旦停止させる。その後レジストローラー19は、転写ベルト11の回転と画像書出し位置の同期をとって、記録媒体Sを静電転写ベルト11へと給送する。
【0136】
定着部20は、記録媒体Sに転写された複数色のトナー画像を定着させるものである。そして、定着部20は、加熱ローラー21aと、これに圧接して記録媒体Sに熱及び圧力を与える加圧ローラー21bとを有する。即ち、感光体ドラム1に形成されたトナー像を転写された記録媒体Sは定着部20を通過する際に、加圧ローラー21bで搬送されるとともに、加熱ローラー21aによって熱及び圧力を与えられる。これによって複数色のトナー像が記録媒体S表面に定着される。
【0137】
画像形成の動作としては、カートリッジ7(7a、7b、7c、7d)が、画像形成タイミングに合わせて順次駆動される。そして、その駆動に応じて感光体ドラム1a、1b、1c、1dが、反時計回り方向に回転駆動される。そして、各々のカートリッジ7に対応するスキャナユニット3が順次駆動される。この駆動により、帯電ローラー2は感光体ドラム1の周面に一様な電荷を付与する。そして、スキャナユニット3は、その感光体ドラム1周面に画像信号に応じて露光を行って感光体ドラム1周面に静電潜像を形成する。現像手段4内の現像ローラー40は、静電潜像の低電位部にトナーを転移させて感光体ドラム1周面上にトナー像を形成(現像)する。
【0138】
最上流の感光体ドラム1の周面上に形成されたトナー像の先端が、転写ベルト11との対向点に回転搬送されてくるタイミングで、その対向点に記録媒体Sの印字開始位置が一致するようにレジストローラー19が回転し記録媒体Sを転写ベルト11へ給送する。
【0139】
記録媒体Sは吸着ローラー22と転写ベルト11とによって挟み込むようにして転写ベルト11の外周に圧接される。そして、転写ベルト11と吸着ローラー22との間に電圧を印加する。そして、誘電体である記録媒体Sと転写ベルト11の誘電体層に電荷を誘起して、記録媒体Sを転写ベルト11の外周に静電吸着させている。これにより、記録媒体Sは静電転写ベルト11に安定して吸着され、最下流の転写部まで搬送される。
【0140】
このように搬送されながら記録媒体Sは、各感光体ドラム1と転写ローラー12との間に形成される電界によって、各感光体ドラム1のトナー像を順次転写される。
【0141】
4色のトナー像を転写された記録媒体Sは、ベルト駆動ローラー13の曲率により静電転写ベルト11から曲率分離され、定着部20に搬入される。記録媒体Sは、定着部20で前記トナー像を熱定着された後、排紙ローラー23によって、排紙部24から画像面を下にした状態で本体外に排出される。
【0142】
図2においては、定着部20に加熱ローラーを用いる方法を例示したが、本発明の画像形成方法には他の定着方法も好適に用いることができる。その一例としては、発熱体を用いて耐熱性高分子フィルムを加熱し、トナー像の定着を行う装置が挙げられる。
【実施例】
【0143】
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これは本発明をなんら限定するものではない。以下にトナー粒子の製造方法について記載する。実施例中及び比較例中の部及び%は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0144】
(水系媒体1の製造)
リン酸ナトリウム5.0部を水に添加して、25.0%のリン酸ナトリウム水溶液10,000gを調製した。一方、塩化カルシウム3.2部を水に添加して、16.1重量%の塩化カルシウム水溶液10,000gを調製した。
【0145】
次に、内容積200リットルの調製容器中に、水200部を添加し、60℃に加温した後、高速回転剪断撹拌機クレアミックスCLM−30S(エム・テクニック(株)製、〔使用ローターの最長径120mm、クリアランス0.5mm〕)を用いて回転数3,000r/minで撹拌した。前記調製容器中の内容物容積V(m3)と、前記撹拌機の攪拌翼から単位時間に吐出される水系媒体の吐出量Q(m3/s)との比Q/Vを算出したところ、0.86(回/sec)であった。
【0146】
次に、高速攪拌を継続した状態で、容器内を窒素置換すると共に、これに前記リン酸ナトリウム水溶液と前記塩化カルシウム水溶液を、それぞれ160ml/分の滴下速度で同時に滴下した。この間、Ca/Pモル比はほぼ1.67に維持されていた。
【0147】
60分後、滴下を終了し、その後撹拌を継続しながら10%塩酸2.0部を加え、水系媒体のpHを5.0に調整した。その後さらに同条件にて30分間撹拌を継続し、水系媒体1を得た。
【0148】
得られた水系媒体1の沈降半減期は、416分であった。また、60℃における水系媒体1のゼータ電位を測定したところ、ζt=8.1mV、σt=12.0mVであった。また、同様の条件にて調製した水系媒体10.0部をメンブレンフィルター(C080A047A 孔径0.8μm アドバンテック社製)を用いてろ過し、さらにろ物を100.0部のイオン交換水で洗浄し、白色の固体を得た。得られた固体を真空乾燥機を用いて40℃で24時間乾燥した。乾燥後の固体のX線回折測定を行ったところ、得られたXRDパターンのピーク位置及び強度から、生成した固体はヒドロキシアパタイトを含むリン酸カルシウム塩類であることが確認された。また、固体の乾燥後の質量から水系媒体1中のリン酸カルシウム塩類濃度を求めたところ、濃度は1.09%であった。
【0149】
(水系媒体2の製造)
水系媒体1の製造例において、高速回転剪断撹拌機クレアミックスCLM−30S(エム・テクニック(株)製、〔使用ローターの最長径120mm、クリアランス0.5mm〕)の回転数を500r/minに変更した以外は同様の方法により水系媒体2を作製した。調製容器内容物容積V(m3)と、前記撹拌翼から単位時間に吐出される前記水系媒体(A)の吐出量Q(m3/s)との比Q/Vを算出したところ0.14(回/sec)であった。
【0150】
(水系媒体3の製造)
水系媒体1の製造例において、高速回転剪断撹拌機クレアミックスCLM−30S(エム・テクニック(株)製、〔使用ローターの最長径120mm、クリアランス0.5mm〕)の回転数を6,700r/minに変更した以外は同様の方法により水系媒体3を作製した。調製容器内容物容積V(m3)と、前記撹拌翼から単位時間に吐出される前記水系媒体(A)の吐出量Q(m3/s)との比Q/Vを算出したところ1.91(回/sec)であった。
【0151】
(水系媒体4の製造)
水系媒体1の製造例において、リン酸ナトリウムの添加量を2.7部に変更し、塩化カルシウムの添加量を1.8部に変更した以外は同様の方法により水系媒体4を作製した。水系媒体4中のリン酸カルシウム塩類濃度を求めたところ、濃度は0.61質量%であった。
【0152】
(水系媒体5の製造)
水系媒体1の製造例において、リン酸ナトリウムの添加量を6.4部に変更し、塩化カルシウムの添加量を4.1部に変更した以外は同様の方法により水系媒体5を作製した。水系媒体5中のリン酸カルシウム塩類濃度を求めたところ、濃度は1.40質量%であった。
【0153】
(水系媒体6の製造)
水系媒体1の製造例において、リン酸ナトリウムの添加量を6.0部に変更した以外は同様の方法により水系媒体6を作製した。60℃における水系媒体6のゼータ電位を測定したところ、ζt=−3.2mV、σt=12.8mVであった。
【0154】
(水系媒体7の製造)
水系媒体1の製造例において、塩化カルシウムの添加量を3.8部に変更した以外は同様の方法により水系媒体7を作製した。60℃における水系媒体7のゼータ電位を測定したところ、ζt=18.4mV、σt=13.6mVであった。
【0155】
(水系媒体8の製造)
水系媒体1の製造例において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液の滴下速度を、それぞれ50ml/分に変更し、滴下時間を200分に変更した以外は同様の方法により水系媒体8を作製した。60℃における水系媒体8のゼータ電位を測定したところ、ζt=10.3mV、σt=5.8mVであった。
【0156】
(水系媒体9の製造)
水系媒体1の製造例において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液の滴下速度を、それぞれ830ml/分に変更し、滴下時間を12分に変更した以外は同様の方法により水系媒体9を作製した。60℃における水系媒体9のゼータ電位を測定したところ、ζt=6.2mV、σt=23.7mVであった。
【0157】
(水系媒体10の製造)
水系媒体1の製造例において、10%塩酸の添加量を2.6部に変更した以外は同様の方法により水系媒体10を作製した。水系媒体10のpHは4.5であった。
【0158】
(水系媒体11の製造)
水系媒体1の製造例において、10%塩酸の添加量を1.5部に変更した以外は同様の方法により水系媒体11を作製した。水系媒体11のpHは6.4であった。
【0159】
(水系媒体12の製造)
水系媒体1の製造例において、リン酸ナトリウム水溶液及び塩化カルシウム水溶液を滴下する前の容器中水温を67℃に変更した以外は同様の方法により水系媒体12を作製した。得られた水系媒体12の沈降半減期は、151分であった。また、60℃における水系媒体12のゼータ電位を測定したところ、ζt=9.2mV、σt=8.2mVであった。
【0160】
(水系媒体13の製造)
水系媒体1の製造例において、リン酸ナトリウム水溶液及び塩化カルシウム水溶液を滴下する前の容器中水温を51℃に変更した以外は同様の方法により水系媒体13を作製した。得られた水系媒体13の沈降半減期は、1484分であった。また、60℃における水系媒体13のゼータ電位を測定したところ、ζt=6.7mV、σt=15.1mVであった。
【0161】
(水系媒体14の製造)
水系媒体1の製造例において、塩化カルシウムに代えて塩化マグネシウム4.4部を使用する以外は同様の方法により水系媒体14を作製した。得られた水系媒体14の沈降半減期は、343分であった。また、60℃における水系媒体14のゼータ電位を測定したところ、ζt=3.9mV、σt=21.0mVであった。また、同様の条件にて調製した水系媒体10.0部をメンブレンフィルター(C080A047A 孔径0.8μm アドバンテック社製)を用いてろ過し、さらにろ物を100.0部のイオン交換水で洗浄し、白色の固体を得た。得られた固体を真空乾燥機を用いて40℃で24時間乾燥した。乾燥後の固体のX線回折測定を行ったところ、得られたXRDパターンのピーク位置及び強度から、生成した固体の主成分はリン酸マグネシウムであることが確認された。また、固体の乾燥後の質量から水系媒体14中のリン酸マグネシウム塩類濃度を求めたところ、濃度は1.01質量%であった。
【0162】
(水系媒体15の製造)
内容積200リットルの容器中に、水200部を添加し、60℃に加温した後、高速回転剪断撹拌機クレアミックスCLM−30S(エム・テクニック(株)製、〔使用ローターの最長径120mm、クリアランス0.5mm〕)を用いて回転数3,000r/minで撹拌した。これに塩化ナトリウム0.1部とリン酸ナトリウム5.0部とを添加し、30分間攪拌を続けた。その後、塩化カルシウム3.2部を投入し、さらに30分間撹拌を継続した。その後、10%塩酸2.0部を加え、水系媒体のpHを5.2に調整した。その後さらに同条件にて30分間撹拌を継続し、水系媒体15を得た。60℃における水系媒体15のゼータ電位を測定したところ、ζt=9.2mV、σt=14.2mVであった。
【0163】
(水系媒体16の製造)
水系媒体1の製造例において、高速回転剪断撹拌機クレアミックスCLM−30S(エム・テクニック(株)製、〔使用ローターの最長径120mm、クリアランス0.5mm〕)の回転数を300r/minに変更した以外は同様の方法により水系媒体16を作製した。調製容器内容物容積V(m3)と、前記撹拌翼から単位時間に吐出される前記水系媒体(A)の吐出量Q(m3/s)との比Q/Vを算出したところ0.09(回/sec)であった。
【0164】
(水系媒体17の製造)
水系媒体1の製造例において、高速回転剪断撹拌機クレアミックスCLM−30S(エム・テクニック(株)製、〔使用ローターの最長径120mm、クリアランス0.5mm〕)の回転数を7,500r/minに変更した以外は同様の方法により水系媒体17を作製した。調製容器内容物容積V(m3)と、前記撹拌翼から単位時間に吐出される前記水系媒体(A)の吐出量Q(m3/s)との比Q/Vを算出したところ2.14(回/sec)であった。
【0165】
(水系媒体18の製造)
水系媒体1の製造例において、リン酸ナトリウムの添加量を1.8部に変更し、塩化カルシウムの添加量を1.1部に変更した以外は同様の方法により水系媒体18を作製した。水系媒体18中のリン酸カルシウム塩類濃度を求めたところ、濃度は0.41質量%であった。
【0166】
(水系媒体19の製造)
水系媒体1の製造例において、リン酸ナトリウムの添加量を7.3部に変更し、塩化カルシウムの添加量を4.7部に変更した以外は同様の方法により水系媒体19を作製した。水系媒体19中のリン酸カルシウム塩類濃度を求めたところ、濃度は1.58質量%であった。
【0167】
(水系媒体20の製造)
水系媒体1の製造例において、リン酸ナトリウムの添加量を7.0部に変更した以外は同様の方法により水系媒体20を作製した。60℃における水系媒体20のゼータ電位を測定したところ、ζt=−8.2mV、σt=13.4mVであった。
【0168】
(水系媒体21の製造)
水系媒体1の製造例において、塩化カルシウムの添加量を4.5部に変更した以外は同様の方法により水系媒体21を作製した。60℃における水系媒体21のゼータ電位を測定したところ、ζt=24.2mV、σt=10.9mVであった。
【0169】
(水系媒体22の製造)
水系媒体1の製造例において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液の滴下速度を、それぞれ25ml/分に変更し、滴下時間を400分に変更した以外は同様の方法により水系媒体22を作製した。60℃における水系媒体22のゼータ電位を測定したところ、ζt=13.1mV、σt=4.0mVであった。
【0170】
(水系媒体23の製造)
水系媒体1の製造例において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液の滴下速度を、それぞれ1,250ml/分に変更し、滴下時間を8分に変更した以外は同様の方法により水系媒体23を作製した。60℃における水系媒体23のゼータ電位を測定したところ、ζt=4.8mV、σt=27.7mVであった。
【0171】
(水系媒体24の製造)
水系媒体1の製造例において、10%塩酸の添加量を3.5部に変更した以外は同様の方法により水系媒体24を作製した。水系媒体24のpHは4.1であった。
【0172】
(水系媒体25の製造)
水系媒体1の製造例において、10%塩酸の添加量を1.0部に変更した以外は同様の方法により水系媒体25を作製した。水系媒体25のpHは6.8であった。
【0173】
〔トナー製造例1〕
内容積200リットルの容器中に、水系媒体1を200部添加し、60℃に加温した後、高速回転剪断撹拌機クレアミックスCLM−30S(エム・テクニック(株)製、〔使用ローターの最長径150mm、クリアランス0.5mm〕)を用いて回転数3,000回転/分で撹拌した。
【0174】
また、下記の材料をプロペラ式攪拌装置にて100r/minで均一に溶解混合して樹脂含有単量体を調製した。
スチレン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45部
n−ブチルアクリレート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25部
極性樹脂1:スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体(共重合比=95.5:2.0:2.5、Mw=12000、Tg=89℃、酸価=12.0mgKOH/g、Mw/Mn=2.1)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15.0部
【0175】
また、下記処方をアトライターで分散し、微粒状着色剤含有単量体を得た。
・スチレン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30部
・C.I.ピグメントブルー15:3・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6.0部
・帯電制御剤ボントロンE−88(オリエント化学社製)・・・・・・・・・・0.3部
【0176】
次に、前記微粒状着色剤含有単量体と前記樹脂含有単量体を混合して調整液を得た後、該調整液を60℃に加温し、そこにワックス(フィッシャートロプシュワックス:融点78.0℃)を10部添加した。
【0177】
その後、重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8.0部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。前記水系媒体中に前記重合性単量体組成物を投入し、回転数3,000r/minで30分間攪拌し、造粒した。
【0178】
その後、プロペラ式攪拌装置に移して100r/minで攪拌しつつ、70℃で5時間反応させた後、80℃まで昇温し、更に5時間反応を行い、トナー粒子を製造した。重合反応終了後、加熱減圧下で残存モノマーを除去し、次いで、冷却後に希塩酸を添加して難水溶性無機微粒子を溶解させた。さらに水洗浄を数回繰り返した後、乾燥機を用いて40℃にて72時間乾燥し、トナー粒子1を得た。
【0179】
得られたトナー粒子1を分級し、分級後のトナー粒子100部に対して、外添剤として平均一次粒径が40nmのシリカ微粒子1.5部を添加し、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))を用いて混合してトナー1を得た。
【0180】
トナーの物性を表1に示す。
【0181】
〔トナー製造例2〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体2に変更した以外は同様の方法によりトナー2を得た。トナーの物性を表1に示す。
【0182】
〔トナー製造例3〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体3に変更した以外は同様の方法によりトナー3を得た。トナーの物性を表1に示す。
【0183】
〔トナー製造例4〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体4に変更した以外は同様の方法によりトナー4を得た。トナーの物性を表1に示す。
【0184】
〔トナー製造例5〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体5に変更した以外は同様の方法で比較トナー5を得た。トナー物性を表1に示す。
【0185】
〔トナー製造例6〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体6に変更した以外は同様の方法でトナー6を得た。トナー物性を表1に示す。
【0186】
〔トナー製造例7〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体7に変更した以外は同様の方法でトナー7を得た。トナー物性を表1に示す。
【0187】
〔トナー製造例8〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体8に変更した以外は同様の方法でトナー8を得た。トナー物性を表1に示す。
【0188】
〔トナー製造例9〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体9に変更した以外は同様の方法でトナー9を得た。トナー物性を表1に示す。
【0189】
〔トナー製造例10〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体10に変更した以外は同様の方法でトナー10を得た。トナー物性を表1に示す。
【0190】
〔トナー製造例11〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体11に変更した以外は同様の方法でトナー11を得た。トナー物性を表1に示す。
【0191】
〔トナー製造例12〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体12に変更した以外は同様の方法でトナー12を得た。トナー物性を表1に示す。
【0192】
〔トナー製造例13〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体13に変更した以外は同様の方法でトナー13を得た。トナー物性を表1に示す。
【0193】
〔トナー製造例14〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体14に変更した以外は同様の方法でトナー14を得た。トナー物性を表1に示す。
【0194】
〔トナー製造例15〕
トナー製造例1において、極性樹脂1を極性樹脂2(スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体(共重合比=95.0:4.2:0.8、Mw=12000、TgB=91.5℃、酸価=4.3mgKOH/g、Mw/Mn=2.1))に変更した以外は同様の方法でトナー15を得た。トナー物性を表1に示す。
【0195】
〔トナー製造例16〕
トナー製造例1において、極性樹脂1を極性樹脂3(スチレン−メタクリル酸共重合体(共重合比=95.0:5.0、Mw=12000、TgB=92.3℃、酸価=32.1mgKOH/g、Mw/Mn=2.4))に変更した以外は同様の方法でトナー16を得た。トナー物性を表1に示す。
【0196】
〔トナー製造例17〕
トナー粒子1の製造例において、スチレンの添加部数を50.0部に、n−ブチルアクリレートの添加部数を20.0部にそれぞれ変更し、極性樹脂1を使用しない以外は同様の方法でトナー17を得た。トナー物性を表1に示す。
【0197】
〔トナー製造例18〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体15に変更した以外は同様の方法でトナー18を得た。トナー物性を表1に示す。
【0198】
〔トナーの比較製造例1〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体16に変更した以外は同様の方法で比較トナー1を得た。トナー物性を表1に示す。
【0199】
〔トナーの比較製造例2〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体17に変更した以外は同様の方法で比較トナー2を得た。トナー物性を表1に示す。
【0200】
〔トナーの比較製造例3〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体18に変更した以外は同様の方法で比較トナー3を得た。トナー物性を表1に示す。
【0201】
〔トナーの比較製造例4〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体19に変更した以外は同様の方法で比較トナー4を得た。トナー物性を表1に示す。
【0202】
〔トナーの比較製造例5〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体20に変更した以外は同様の方法で比較トナー5を得た。トナー物性を表1に示す。
【0203】
〔トナーの比較製造例6〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体21に変更した以外は同様の方法で比較トナー6を得た。トナー物性を表1に示す。
【0204】
〔トナーの比較製造例7〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体22に変更した以外は同様の方法で比較トナー7を得た。トナー物性を表1に示す。
【0205】
〔トナーの比較製造例8〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体23に変更した以外は同様の方法で比較トナー8を得た。トナー物性を表1に示す。
【0206】
〔トナーの比較製造例9〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体24に変更した以外は同様の方法で比較トナー9を得た。トナー物性を表1に示す。
【0207】
〔トナーの比較製造例10〕
トナー製造例1において、水系媒体1を水系媒体25に変更した以外は同様の方法で比較トナー10を得た。トナー物性を表1に示す。
【0208】
〔実施例1〕
トナー1を非磁性一成分系現像剤とし、画像形成装置としては市販のレーザープリンターであるLBP−5400(キヤノン製)の改造機を用い、温度23℃、相対湿度50%環境下でA4のカラーレーザーコピア用紙(キヤノン製、80g/m2)を用いて画像評価を行った。評価機の改造点は以下のとおりである。
【0209】
評価機本体のギア及びソフトウエアを変更することにより、プロセススピードが190mm/secとなるようにした。
【0210】
評価に用いるカートリッジはシアンカートリッジを用いた。すなわち、市販のシアンカートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、本発明によるトナーを150g充填して評価を行った。なお、マゼンタ、イエロー、ブラックの各ステーションにはそれぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたマゼンタ、イエロー、及びブラックカートリッジを挿入して評価を行った。
【0211】
以上の条件で、高温高湿(30℃,80%RH)環境下において、0.5%の印字比率の画像を10,000枚まで間歇モード(すなわち、1枚プリントアウトする毎に10秒間現像器を休止させ、再起動時の現像装置の予備動作でトナーの劣化を促進させるモード)でプリントアウトした。その際、初期と10,000枚耐久後に後述の項目について画像評価を行った。
【0212】
(1)低温定着性
トナーの載り量を0.60mg/cm2としたベタ画像を作像し、120℃から5℃おきに定着温度を変調して定着を行い、得られた定着画像をシンボル紙で、5往復、約100g荷重で察し、画像のはがれを反射濃度の低下率(%)で相加平均して10%以下となった温度を定着開始温度とした。
A:140℃未満(良好)
B:140℃以上145℃未満(実用上問題なし)
C:145℃以上150℃未満(実用限度)
D:150℃以上(実用上問題あり)
【0213】
(2)耐高温オフセット性
記録材先端中央部にトナーを載り量0.60mg/cm2で、5cm×5cm面積のベタ画像を作像し、定着器通過時の記録材の通紙方向後端部に、ホットオフセット現象(定着画像の一部が定着器の部材表面に付着し、更に、次周回で記録材上に定着する現象)が生じた時点の定着加熱部表面の温度を測定し、ホットオフセット現象発生温度とし、以下の評価基準に基づいて評価した。
A:190℃以上(良好)
B:185℃以上190℃未満(実用上問題なし)
C:180℃以上185℃未満(実用限度)
D:180℃未満(実用上問題あり)
【0214】
(3)画像濃度
A4のキヤノンカラーレーザーコピア用紙(81.4g/m2)を用いて、画出し試験において、10,000枚印字後にベタ画像を出力し、その濃度を測定することにより評価した。尚、画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて付属の取扱説明書に沿って、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
A:1.40以上(良好)
B:1.35以上1.40未満(実用上問題なし)
C:1.00以上1.35未満(実用限度)
D:1.00未満(実用上問題あり)
【0215】
(4)帯電均一性
初期と10,000枚後のCRG内トナーの粒度分布測定を前述の重量平均粒径(D4)の測定方法に則って行い、得られた各々の重量平均粒径(D4)から下記式を基にその粒度変化率を算出して下記基準に基づいて評価を行った。各トナーの帯電分布が均一であるほど、耐久により各粒径のトナーが一様に消費されていくため、重量平均粒径(D4)の変化率は小さくなる。
【0216】
初期の重量平均粒径(D4)/10,000枚後の重量平均粒径(D4)×100
=粒度変化率(%)
A:95≦粒度変化率(%)≦100(良好)
B:85≦粒度変化率(%)<95(実用上問題なし)
C:75≦粒度変化率(%)<85(実用限度)
D:粒度変化率(%)<75(実用上問題あり)
【0217】
(5)カブリ
カブリの測定については、東京電色社製の反射濃度計、REFLECTMETER MODEL TC−6DSを使用して、標準紙及びプリントアウト画像の非画像部の反射率を測定した。測定で用いられるフィルターには、グリーンフィルターを用いた。測定結果から下記の式よりカブリを算出し、以下の基準で評価した。
カブリ(反射率:%)=標準紙上の反射率(%)−サンプル非画像部の反射率(%)
A:カブリ(反射率)が0.5%未満(良好)
B:カブリ(反射率)が0.5%以上1.0%未満(実用上問題なし)
C:カブリ(反射率)が1.0%以上2.0%未満(実用限度)
D:カブリ(反射率)が2.0以上(実用上問題あり)
【0218】
(6)周方向のスジ
10,000枚の印字後、現像容器を分解しトナー担持体の表面及び端部を目視して行った。以下に判定基準を示す。
A:トナー担持体の表面や端部にはトナー破壊や融着によるトナー規制部材とトナー担持
体間への異物挟み込みによる周方向のスジが全く無い(良好)
B:トナー担持体とトナー端部シール間への異物挟み込みが若干見受けられる(実用上問
題なし)
C:周方向のスジが端部で1乃至4本見受けられる(実用限度)
D:周方向のスジが全域で5本以上見受けられる(実用上問題あり)
【0219】
(7)転写均一性
100枚及び10,000枚印字後のハーフトーン画像を、キヤノンカラーレーザーコピア用紙(81.4g/m2)及びFox River Bond(90g/m2)に転写して評価した。以下に判定基準を示す。
A:10,000枚時であっても、キヤノンカラーレーザーコピア用紙及びFox
River Bondともに良好な転写均一性を示す(良好)
B:10,000枚サンプル時に、Fox River Bondにて転写均一性の若干
劣るものが認められる(実用上問題なし)
C:100枚、10,000枚サンプル時に、Fox River Bondにて転写均
一性の若干劣るものが認められる(実用限度)
D:100枚、10,000枚サンプル時に、Fox River Bondにて転写均
一性の劣るものが認められる(実用上問題あり)
【0220】
(8)トナー飛散による本体・カートリッジ内の汚染
トナーの帯電性・流動性のバランスを評価するために10,000枚印字後のカートリッジ、本体内カートリッジ周辺のトナーによる汚れ具合を観察した。
A:カートリッジ、本体内カートリッジ周辺のトナーによる汚れが全く観察されない
(良好)
B:カートリッジに微量のトナーによる汚れが観察される(実用上問題なし)
C:カートリッジ、本体内カートリッジ周辺のトナーによる汚れが観察されるが、画像・
カートリッジの着脱には影響しない(実用限度)
D:カートリッジ、本体内カートリッジ周辺がトナーによって著しく汚れ、画像・カート
リッジの着脱にも悪影響が見られる(実用上問題あり)
【0221】
(9)トナー劣化
トナー劣化の評価は初期と10,000枚後のベタ画像濃度の変化率を算出することで行った。即ち、得られた各々の濃度から下記式を基にその濃度変化率を算出して下記基準に基づいて評価を行った。
10,000枚後のベタ画像濃度/初期のベタ画像濃度×100=濃度変化率(%)
A:95≦濃度変化率(%)≦100(良好)
B:85≦濃度変化率(%)<95(実用上問題なし)
C:75≦濃度変化率(%)<85(実用限度)
D:濃度変化率(%)<75(実用上問題あり)
【0222】
前記条件でトナー1を評価したところ、トナー1は、低温定着性や耐高温オフセット性が良好であった。また十分な画像濃度を示し、帯電均一性が良好であり、また、周方向スジやカブリレベルも良好であった。また、転写性レベルも良好であった。詳細な結果を表2に示す。
【0223】
〔実施例2乃至18〕
実施例1と同条件で、トナー2乃至トナー18を評価した。詳細の結果を表2に示す。
【0224】
〔比較例1乃至10〕
実施例1と同条件で、比較トナー1乃至10を評価した。詳細の結果を表2に示す。
【0225】
【表1】

【0226】
【表2】

【符号の説明】
【0227】
Pa、Pb、Pc、Pd 画像形成ステーション、1(1a乃至1d) 感光体ドラム(像担持体)、2(2a乃至2d) 帯電手段、3(3a乃至3d) スキャナユニット、4(4a乃至4d) 現像手段、4A 現像ユニット、5 静電転写装置、6(6a乃至6d) クリーニング手段、7(7a乃至7d) プロセスカートリッジ、11 静電転写ベルト、12(12a乃至12d) 転写ローラー、13 ベルト駆動ローラー、14a、14b 従動ローラー、15 テンションローラー、16 給送部、17 カセット、18 給送ローラー、19 レジストローラー、20 定着部、21a 加熱ローラー、21b 加圧ローラー、22 吸着ローラー、23 排紙ローラー、24 排紙部、31 クリーニング枠体(カートリッジ枠体)、35 除去トナー収納室、40 現像ローラー(トナー担持体)、41 トナー容器(現像剤収納部)、42 トナー搬送機構、43 トナー供給ローラー、44 トナー規制部材(ブレード)、45(45a、45b、45e) 現像枠体(カートリッジ枠体)、47、48 結合穴、50 クリーナーユニット、60 クリーニングブレード、100 画像形成装置本体、S 記録媒体(記録材シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難水溶性無機微粒子を少なくとも含有する水系媒体(A)を調製する工程、重合性単量体及び着色剤を少なくとも含有する重合性単量体組成物を前記水系媒体(A)中に加え、前記水系媒体(A)中で前記重合性単量体組成物を造粒して前記重合性単量体組成物の粒子を形成する造粒工程、前記重合性単量体組成物の前記粒子に含まれる前記重合性単量体を重合してトナー粒子を生成する重合工程とを少なくとも有するトナー粒子の製造方法であって、
前記水系媒体(A)は撹拌手段が設置された調製容器内で調製され、
前記水系媒体(A)の調製工程における調製容器内容物容積をV(m3)、撹拌翼から単位時間に吐出される前記水系媒体(A)の吐出量をQ(m3/s)としたとき、
0.10sec-1≦Q/V≦2.00sec-1
であり、
前記水系媒体(A)中の難水溶性無機微粒子濃度をDwとしたとき、
0.50質量%≦Dw≦1.50質量%
であり、
造粒時温度における前記水系媒体(A)中の難水溶性無機微粒子のゼータ電位値の平均値をζt、造粒時温度におけるゼータ電位の平均値に対する標準偏差をσtとしたとき、
−5.0mV≦ζt≦20.0mV
5.0mV≦σt≦25.0mV
であり、
造粒工程における水系媒体のpHをpHwとしたとき、
4.5≦pHw≦6.5
であることを特徴とするトナー粒子の製造方法。
【請求項2】
前記水系媒体(A)中の難水溶性無機微粒子の沈降半減期が200分以上1400分以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項3】
前記難水溶性無機微粒子がヒドロキシアパタイトを含有することを特徴とする請求項1または2に記載のトナー粒子の製造方法。
【請求項4】
前記重合性単量体組成物がさらに極性樹脂を含有し、前記極性樹脂の酸価が5.0(mgKOH/g)以上30.0(mgKOH/g)以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のトナー粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−78371(P2012−78371A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220362(P2010−220362)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】