説明

トナー粒子を帯電させる方法

トナー粒子の帯電を助長するための帯電補助剤であって、誘電性キャリヤー液と、その液に溶解された有機アルミニウム塩とを含んで成り、前記有機アルミニウム塩が室温でキャリヤー液に可溶性である帯電補助剤を開示する。また、チャージディレクタを含む帯電補助剤溶液、帯電補助剤と液体トナーを利用してトナーを製造する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電印刷に用いられる液体トナーを生成する方法、特に、トナー中に含まれるトナー粒子を帯電させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な「静電」デジタルプリンタは、適切な基材上に画像を印刷するにあたり、先ず、慣例的に「潜像」と呼ばれる画像のコピーを円筒ローラの感光面(以後、「感光性イメージングプレート」(PIP)と称する)上に形成する。潜像の形成に関しては、帯電器が感光体表面上に実質的に均一な密度の電荷を堆積させる。次いで、帯電した感光体表面をレーザが走査してその領域の帯電状態を解くことによって、潜像を形成し且つ被印刷画像を複製する感光体表面上に、帯電したピクセル及び放電したピクセル、又は部分的に放電したピクセルから成るパターンが生成される。
【0003】
インク又はトナー(以後、総称してトナー)を感光面に適用して潜像を現像するために、現像電極が用いられる。トナーは、所望の色の帯電トナー粒子を含み、これらは、用いられる印刷過程の詳細に応じて、帯電したピクセル又は放電したピクセル、あるいは部分的に放電したピクセルに付着する。次いで任意に、PIP上のトナーは、PIPから、慣例的に「中間転写部材(ITM)」と呼ばれる別のローラの適切な転写面へと転写される。当該トナーは、基材がITMと印刷(impression)ローラ間のニップを通過する際に、ITM(又は、ITMが使用されていない場合はPIP)から基材へと転写され、それによって画像が印刷される。幾つかの場合においては、トナーはITMを用いた中間転写を経ずにPIPから基材へと直に転写される。
【0004】
多くの印刷プロセスにおいて、トナーは、比較的高い電気抵抗を有する無極性キャリヤー液に帯電トナー粒子を分散させて成る液体トナーである。一般に、トナー粒子はポリマーから構成され、任意に顔料がその中に分散されている。トナー粒子をPIP及び任意に、ITM又は基材へと適切に電気泳動的に転写し且つ付着させるためには、そのトナー粒子は、それらに適切な移動性をもたらす量の電荷を持つように帯電される。一般に、帯電は、粒子に少なくとも1つの帯電制御剤(「チャージディレクタ」(CD)とも呼ばれる)を付加することによって達成され、それは、有機塩又は両性イオン分子を通常含む。
【0005】
慣習的に帯電補助剤(CA)と呼ばれ、チャージディレクタによるトナー粒子の帯電を促進する帯電開始剤もまた、多くの場合、当該粒子に付加される。液体トナーには、アルミニウムアルコキシド、又は金属セッケン(例えば、ステアリン酸マグネシウム、トリステアリン酸アルミニウム又はオクチル酸アルミニウム)が、通常、帯電補助剤として使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステアリン酸アルミニウ又はステアリン酸マグネシウムのような、一般に用いられるCAの幾つかは、典型的に液体トナーに使用されるキャリヤー液に対し、室温では比較的不溶性である。これらのCAの有効活性に備えるために、それらは、一般に、製造中、トナー成分が一緒に粉砕されるときにその粉砕処理がCAをトナー成分と完全に混合でき且つ任意に、それらと反応できるようにトナーに付加される。しかしながら、これらのCAは、一般にトナー成分と共に粉砕されなければならないので、所望の基準電荷からのトナー粒子電荷の偏差を調整できるように又はそのトナーの保管寿命中に起こり得るトナー電荷の散逸を防止又は緩和できるように、製造後にそれらをトナーに付加することは通常できない。
【0007】
アルミニウムアルコキシド(金属と適切なアルコールとの反応生成物)のような幾つかのCAは、実際にはトナーのキャリヤー液に可溶性である。しかしながら、これらのCAは、トナー成分のみならず、液体トナーを典型的に劣化する不純物、特に水、と強く反応しやすい。それらは、トナー粒子上に電荷を生ずるだけでなく、トナー粒子と結合していないキャリヤー液中のチャージディレクタ及び分子と相互作用して帯電分子種を生成することによってキャリヤー液中に「寄生」電荷を付加する傾向がある。寄生電荷は、トナーを用いて印刷された画像の品質を低下させる傾向のある、トナーのバックグラウンド「寄生導電率」の一因となる。加えて、水に対するこれらのCAの特有の親和力によって、多くの場合、それらは加水分解し、それらが付加されるトナー分散物から沈殿することになる。結果として、これらのCAを用いてトナー粒子の帯電レベルを一定にし且つ制御することは困難である。
【0008】
米国特許第4,794,651号及び第5,565,299号には、液体トナーを調製するための材料並びにプロセスが記載されている。米国特許第4,707,429号及び第5,225,306号には、トリステアリン酸アルミニウム帯電補助剤及びアルミニウムアルコキシド帯電開始剤(Isopar可溶性CA)を用いて液体トナーを調製するための材料並びにプロセスが記載されている。米国特許第5,573,882号では、帯電補助剤を用いて液体トナーを調製するための材料及びプロセスが記載されている。米国特許第5,393,635号には、電子写真液体トナー用の負のチャージディレクタが記載されており、そこでは、トナー粒子樹脂に共有結合している弱会合性の帯電官能基と、電荷分離を達成するために液相に分散している非常に強いキレート分子とによって、負電荷が発生している。参照することで、前述の米国特許の全ての開示内容を本書に取り入れることとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の幾つかの実施形態は、液体トナーに付加すると、トナー中のトナー粒子を帯電させるチャージディレクタの効率を改善する、帯電補助剤(CA)を提供することに関する。
【0010】
本発明の幾つかの実施形態は、トナー製造後にトナーに付加することによって、バッチ基準でバッチのトナー帯電レベルを調整し得るCAを提供することに関する。本発明の実施形態による帯電補助剤は、トナーの保管期間に散逸することのあるトナー粒子の電荷を増強させるのに用い得るものと思われる。
【0011】
本発明の幾つかの実施形態は、有機金属塩を含むチャージディレクタを液体トナーに供給することである。
【0012】
本発明の幾つかの実施形態は、室温でトナーのキャリヤー液に比較的高溶解性であり、且つキャリヤー液に可溶性である従来技術のCAに比べて、一定で且つ制御可能なトナー粒子の帯電レベルをもたらすCAを提供することに関する。
【0013】
本発明の実施形態によれば、帯電補助剤は、チャージディレクタ分子並びに典型的に液体トナーを汚染する不純物とは比較的低い反応性を示す。
【0014】
キャリヤー液中における補助剤の溶解性は、帯電補助剤分子とトナー粒子との間の増大された接触をもたらし、トナー粒子を修飾する補助剤分子の効力を高めるものと考えられ、それによってチャージディレクタはより容易にそれらを帯電させることができる。任意に、キャリヤー液中の補助剤の溶解度は、キャリヤー液の重量(w/w)を基準として2%より高い。任意に、溶解度は3% w/wより高い。任意に、溶解度は5%又は10% w/w以上である。
【0015】
本発明の実施形態では、当該溶解度は、トナー粒子の不在下、用いる帯電補助剤の全量が室温にてキャリヤー液に実質的に全て溶解し得るほど十分高い。ここで用いるとき、用語「高溶解度」とは、このレベル以上の溶解度を意味する。
【0016】
チャージディレクタ及び不純物分子との補助剤の比較的低い反応性は、トナー粒子の帯電と競合するプロセス、即ち、トナー粒子と補助剤の反応性を減じ且つトナーのバックグラウンド寄生導電率を増幅するプロセスにおいて、補助剤がチャージディレクタ及び/又は不純物と反応する傾向を軽減させる。低い反応性は、CDのIsopar溶液を、帯電性改善に用いられる範囲において可溶性補助剤と混合することによって測定し得る。導電率の増大がCD溶液における元の伝導率の25%より低ければ、その相互作用は「低い」と考えられる。この増大は、溶解した塩に起因する(小さい)増大、並びに補助剤との反応によって生ずるチャージディレクタの変化によって引き起こされる。通常、この反応は導電率を増大させるが、或るチャージディレクタに関しては、その反応が導電率低下の原因となり得る。いずれにせよ、いずれの動向でも25%より高い変化は望ましくない相互作用のレベルを表すことになろう。それより少ないのは、一般に、「実質上、非反応性である」と考えられる。
【0017】
また、キャリヤー液中における補助剤の溶解性並びにチャージディレクタとのその比較的低い反応性の結果、当該補助剤は、それがトナーにいつ付加されるかとは実質的に無関係に、トナー粒子の帯電性を改善するのに有効である。当該補助剤は、従来行われているようにトナーの粉砕時に付加し得るばかりでなく、トナー粒子の製造後に及び/又はトナーへのチャージディレクタの付加後に、トナー中のトナー粒子の帯電を促進するのに実質的に同じ有効性をもって付加することができる。任意に、帯電補助剤の少なくとも幾つかは、チャージディレクタと共にトナーに付加される。例えば、それらは、両方とも、一定量のキャリヤー液に溶解され、そしてその溶液がキャリヤー液中のトナー粒子分散物に付加される。
【0018】
その結果、製造後にCAの選択量をトナーの種々のバッチに付加することによって、所望の帯電レベルからの当該バッチのトナー粒子帯電レベルの偏差を緩和することができる。
【0019】
CAの選択量をトナーに付加することによって、トナーの保管時に起こるであろうトナー粒子の電荷散逸を緩和させることができる。発明者は、適切な量のCAを添加することによって、そうした電荷散逸を実質上完全に防止し得るものと考えている。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態においては、キャリヤー液は、EXXONで製造されたIsopar−L(イソパラフィン合成液)又は当分野で既知のIsoparとMarcol 82(EXXON)との混合物のようなイソパラフィンであり、塩はIsopar可溶性アルミニウム塩である。本発明者は、室温でIsoparに比較的高い溶解度を有し且つ液体トナーにおける帯電トナー粒子に典型的に使用されるチャージディレクタに対して比較的低い反応性を有する帯電補助剤として用い得る、スルホコハク酸アルミニウムの部類に属するアルミニウム塩を合成した。本発明の補助剤はまた、液体トナーを典型的に汚染する水のような不純物に対しては比較的低い反応性を有する。任意に、当該塩は、Al(OT)(トリビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸アルミニウム)、Al(TR)(トリ(ジ−トリデシルスルホコハク酸アルミニウム)、及びAl(DDBS)(トリドデシルベンゼンスルホン酸アルミニウム)から成る群から選択される塩を含む。上記物質のうち、Al(OT)が最も有効である。Al(OT)によって得られる帯電のレベルは、添加物としてAl(DDBS)を用いる際に得られる値の約2倍である。Al(TR)は、(Al(DDBS)より)約15%さらに効果がある。当該群における塩は、Isopar中で約5% w/wより高い溶解度を呈する。任意に、チャージディレクタは、塩基性バリウムペトロネート(BBP)、カルシウムペトロネート及び/又は、レシチンのような両性イオン物質のうち少なくとも1つを含む。補助剤は、トナー粒子のバルクを形成するポリマー上にあるチャージディレクタについてのレセプターに作用すると考えられ、帯電補助剤は、広範なチャージディレクタに対する補助剤として概して有効であると考えられる。
【0021】
このように、本発明の実施形態によれば、トナー粒子の帯電を促進するための帯電補助剤が提供され、それは、
誘電性のキャリヤー液、及び
その液に溶解された有機アルミニウム塩
を含んで成り、前記有機アルミニウム塩が室温でキャリヤー液に可溶性である。
【0022】
本発明の実施形態では、アルミニウム塩はスルホコハク酸アルミニウムを含む。任意に、当該塩は、Al(OT)(ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸アルミニウム)、Al(TR)(トリジ−トリデシルスルホコハク酸アルミニウム)、及びAl(DDBS)(ドデシルベンゼンスルホン酸アルミニウム)から成る塩の群から選択される少なくとも1つの塩を含む。
【0023】
本発明の実施形態では、誘電性キャリヤー液は、液体炭化水素、任意に、イソパラフィンである。
【0024】
本発明の種々の実施形態において、前記塩のキャリヤー液中における溶解度は、2%、3%又は5% w/w以上である。
【0025】
さらに、本発明の実施形態によれば、
本発明による帯電補助剤、
誘電性キャリヤー液に溶解されたチャージディレクタ
を含んで成る溶液が提供される。
【0026】
本発明の実施形態では、チャージディレクタは、塩基性バリウムペトロネート(BBP)、カルシウムペトロネート及び両性イオン物質から成る群の少なくとも1つを含む。任意に、前記両性イオン物質はレシチンを含む。
【0027】
さらに、本発明の実施形態によれば、キャリヤー液にトナー粒子を分散させて成る液体トナー中のトナー粒子を帯電させる方法が提供され、同方法は、
トナーにチャージディレクタを付加すること、及び
キャリヤー液に可溶性である有機アルミニウム塩を帯電補助剤としてトナーに付加すること
を包含する。
【0028】
本発明の実施形態では、アルミニウム塩はスルホコハク酸アルミニウムを含む。任意に、当該塩は、Al(OT)(ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸アルミニウム)、Al(TR)(トリジ−トリデシルスルホコハク酸アルミニウム)、及びAl(DDBS)(ドデシルベンゼンスルホン酸アルミニウム)から成る塩の群から選択される少なくとも1つの塩を含む。
【0029】
本発明の実施形態では、誘電性キャリヤー液は、液体炭化水素、任意に、イソパラフィンである。
【0030】
本発明の実施形態では、当該塩はキャリヤー液中において高い溶解性を呈する。
【0031】
本発明の種々の実施形態において、当該塩は、キャリヤー液中で2%、3%又は5% w/w以上の溶解度を有する。
【0032】
本発明の実施形態では、当該チャージディレクタは、塩基性バリウムペトロネート(BBP)、カルシウムペトロネート及び両性イオン物質から成る群の少なくとも1つを含む。任意に、前記両性イオン物質はレシチンを含む。
【0033】
本発明の種々の実施形態では、帯電補助剤は、次の方法の1つ以上で、(1)チャージディレクタの後、(2)チャージディレクタの前及びチャージディレクタと共に、付加される。あるいはまた、当該補助剤は、トナー粒子上に生成された初期電荷が散逸し終わった後で付加される。
【0034】
さらに、本発明の実施形態によれば、液体トナーが提供され、それは、
誘電性キャリヤー液、
室温で前記キャリヤー液に可溶性であるところの有機アルミニウム塩と反応したトナー粒子、及び
チャージディレクタ
を含んで成り、
前記アルミニウム塩は、チャージディレクタによってトナー粒子の帯電性を高めるのに有効である。
【0035】
本発明の実施形態では、アルミニウム塩はスルホコハク酸アルミニウムを含む。任意に、当該塩は、Al(OT)(ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸アルミニウム) Al(TR)(トリジ−トリデシルスルホコハク酸アルミニウム)、及びAl(DDBS)(ドデシルベンゼンスルホン酸アルミニウム)から成る塩の群からの少なくとも1つの塩を含む。
【0036】
本発明の実施形態では、誘電性キャリヤー液は、液体炭化水素、任意に、イソパラフィンである。
【0037】
本発明の実施形態では、当該塩はキャリヤー液中において高い溶解性を呈する。
【0038】
本発明の種々の実施形態において、当該塩は、キャリヤー液中において2%、3%又は5% w/w以上の溶解度を有する。
【0039】
本発明の実施形態では、当該チャージディレクタは、塩基性バリウムペトロネート(BBP)、カルシウムペトロネート及び両性イオン物質から成る群の少なくとも1つを含む。任意に、前記両性イオン物質はレシチンを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の例示的な実施形態の効果を例示する実験結果を表すところの添付の図面を参照しつつ、本発明の例示的な実施形態を説明する。
【0041】
本発明の実施形態に従って帯電されることになるトナー粒子を内部に含有する液体トナーは、当分野で周知の種々の方法のいずれかを用いて調製することができる。典型的に、Du Pont製のNucrel 699樹脂、(エチレン−メタクリル酸のコポリマー)のような熱可塑性ポリマーを、キャリヤー液、例えば、EXXON製のIsopar−L(イソパラフィン合成液)と高温(例えば、120℃〜130℃)にて混合することによって、キャリヤー液及び該キャリヤー液で可塑化されたポリマートナー粒子から成るスラリーを形成する。該スラリーを混合しつつ冷まし、キャリヤー液を徐々に添加してスラリーを希釈し、例えば、10〜23wt%の固形物を含むようにする。冷ますと、それはペースト状にて沈殿する。所望の色のトナー粒子を生成するべく、任意に、顔料又は染料を付加し、そして当該混合物をボールミル中に充填して、トナー粒子が所望のサイズ分布となり且つ顔料が適切に浸透するまで、全体で約20時間かけて、約60℃の温度にて開始して室温まで下げながら粉砕する。
【0042】
本発明の幾つかの実施形態では、Isopar L中で比較的高い溶解度を有し且つトナー粒子を帯電させるのに使用されるチャージディレクタに対して比較的低い反応性を有する帯電補助剤を、粉砕時にトナーに付加する。本発明の幾つかの実施形態では、帯電補助剤は粉砕時に付加するのではなく、トナーの製造後であって既にチャージディレクタを含有させた後に付加する。本発明の幾つかの実施形態では、帯電補助剤は、スルホコハク酸アルミニウムの群に属するアルミニウム塩である。任意に、当該塩は、Al(OT)、Al(TR)及びAl(DDBS)から成る群から選択された少なくとも1つの塩を含む。当該群における塩は、Isopar−L中にて約5wt%より高い溶解度を示す。
【0043】
粉砕の後、液体トナーを室温まで冷却し、そしてチャージディレクタを付加して混合し、チャージディレクタをトナー中に浸透させる。本発明の幾つかの実施形態では、当該チャージディレクタは、塩基性バリウムペトロネート、カルシウムペトロネート及びレシチンのような両性イオン物質のうちの少なくとも1つの分子を含む。次いで、当該トナーは、チャージディレクタがトナー粒子を帯電させるのに十分な時間にわたって放置される。
【0044】
得られたトナーは、一般に、比較的高い濃度の不揮発性固形物を含み、そして保管又は印刷に必要とされる追加量のIsoparで希釈される。保管に際して、当該トナーは、不揮発性固形物(NVS)に関して約20wt%まで希釈することができる。典型的に、使用直前に、その濃縮物を追加のキャリヤー液でNVSに関し約1wt%〜約2.5wt%の濃度まで希釈する。
【0045】
本発明者は、本発明の実施形態に従って例示的なイエロー及びシアンのトナーを製造しており、そこでは、チャージディレクタにBBPを用いてトナーを帯電させ、また、スルホコハク酸アルミニウム塩、Al(OT)、を帯電補助剤に用いた。例示的なトナーに要するAl(OT)は、市販のナトリウム塩NaOTを酸誘導体に変換し、その誘導体を対応するカリウム塩に変換することによって、以下に説明するものと同様のプロセスにおいて製造した。そのカリウム塩を硝酸アルミニウムと反応させてスルホコハク酸アルミニウムを生成した。
【0046】
例を示せば、一定量のAl(OT)は、先ず、5グラムのNaOT(0.011モル)をエタノール100mlに約20分間かけて溶解させ、そして生ずる溶液をろ過して微量のNaCOを除去することにより製造した。約0.55gの濃HSO(0.0055モル)をジエチルエーテル30mlに希釈し、そして室温で約10分間にわたってNaOT溶液に滴下した。次いで、その溶液をフリーザー内にて15時間保管し、その間にNaSOが溶液から沈殿した。沈殿物を濾過除去して得られた溶液を、溶液のpH変化に関しその溶液が酸性から塩基性に変化したこと並びに滴定が実質的に完了したことが示されるまで、メタノールに溶解させた1モルのKOHにて滴定した。K−OTを含む、結果として生ずる滴定物は、メタノールを蒸発させ且つ生ずる固形物をエーテルに溶解させることによって精製した。エーテルに不溶性の塩はろ過除去し、そして当該溶液を、それが過酸化物で汚染されたかどうかを決定するためにヨウ化カリウム紙で試験した。その後、エーテルを蒸発させてK−OTを残した。当該プロセスの収率は約95%であった。
【0047】
約0.538gのAl(NO・9HO(0.00143モル、K−OTの1/3当量)を無水エタノール30mlに溶解させた。オイルバスに約60℃の温度で保持さしたエタノール約50ml中に上述のように調製した約2gのK−OT(0.0043モル)を含んで成る溶液に、Al(NO溶液を徐々に付加した。60℃にて約2時間撹拌後、その溶液をさらに12時間撹拌し、その間に溶液を室温まで冷ました。次に、溶液中の反応物によって形成された不溶性の塩をろ過除去し、そしてエタノールを蒸発させた。得られた残留物にジエチルエーテルを付加し、そして硝酸カリウムを除去するべく溶液をろ過した。ジエチルエーテル液を、それが過酸化物で汚染されてないことを確認するためにKI紙を用いて試験し、そしてジエチルエーテルを蒸発させた。生じた残留物を50mlのヘキサンに溶解させ、そして冷蔵庫で約15時間放置した。冷却した溶液をろ過して、溶解しなかった残留硝酸カリウムを残さず除去し、そしてヘキサンを蒸発させて、Al(OT)残留物を残した。残留物をトルエンに溶解させ且つトルエンを蒸発させる処理を2回繰り返して、微量の水とアルコールをAl(OT)から除去した。生じたAl(OT)(約95%のプロセス収率で作られたもの)をIsopar−Lに溶解させて、Isopar中に約5% w/wのAl(OT)が含まれる、「帯電補助剤溶液」を形成した。ICP分析では、純度レベル>90%が示された。
【0048】
例示的なトナーの各々について、不揮発性固形物が約10wt%を占めるトナーの濃縮物は、上述のものと同様の適切な顔料及びトナー製造プロセスを用いて製造した。当該濃縮物は、まず、7.5kgのNucrel 699(du Pont)と、7.5kgのIsopar L(Exxon)を、Ross二重遊星ミキサ中で、速度2、温度約150℃にて、約1時間混合することによって調製された中性の「ベース」トナーから製造した。その後、約90℃に予備加熱した約15kgの量のIsoparを付加し、そして当該混合物をさらに1時間にわたって速度5にて混合した。生じた混合物を速度3にて混合を継続しつつ室温まで冷ました。
【0049】
イエロートナー濃縮物は、52.9gのPaliotol yellow D1155(BASF)と、13.3gのPlliotol D 1819(BASF)、及び661gのIsopar Lを、1573gのベーストナーに付加し、そしてその混合物をS1攪拌機(Union Process Akron、オハイオ州)中で250rpmにて20時間粉砕することによって製造した。シアントナー濃縮物は、Permanent carmine PBB02(Clariant)と、11.8gのQuindo magenta(Bayer)、及び753gのIsopar Lを、1594gのベーストナーに付加して、そしてその混合物をS1攪拌機中で250rpmにて20時間粉砕することによって製造した。
【0050】
例示的なイエロー及びシアンの各々について、チャージディレクタ BBP及びAl(OT)溶液をトナー濃縮物に付加し、そして振とう機で混合した。次いで、トナーを、48時間の帯電期間、即ち「TC」の間放置し、その間に電荷がトナー中のトナー粒子上に蓄積され且つ安定化された。当該トナーを、後段で、約2% w/wのNVS濃度までIsopar Lで希釈した。その後、チャージディレクタと帯電補助剤の作用によってトナー粒子上に蓄積した電荷に起因する希釈トナーの粒子導電率(PC)を測定した。
【0051】
図1は、50mg/gのNVS濃度及び0〜約40mg/gの範囲のAl(OT)濃度において、BBPによって帯電されたイエロー及びシアントナーについて測定された粒子導電率(PC)のグラフである。グラフにおいてAl(OT)濃度は横座標で与え、そして対応するPCは縦座標pS/cmで与える。四角の識別記号はシアントナーで得られたPCの測定値を表している。記号は破線で結んでいる。ダイヤモンドの識別記号はイエロートナーで得られたPCの測定値を表している。ダイヤモンドの識別記号は実線で結んでいる。
【0052】
グラフから、両方のトナーについて、Al(OT)を付加することによってPCが著しく改善されることがわかる。イエロートナーについては、PCは、グラフに示したAl(OT)の濃度範囲にわたって(約50に等しいPCから約510に等しいPCまで)約10の係数で改善される。シアントナーについては、PCは、Al(OT)の濃度範囲にわたって(約70に等しいPCから約536に等しいPCまで)約7.6に等しい係数で改善する。両方のトナーについて、PCは、示したAl(OT)の濃度範囲にわたって、Al(OT)濃度が10mg/g増加する毎に、約40pS/cmの平均ペースで増大する。
【0053】
図2は、約10mg/gのAl(OT)の固定濃度に対するBBPの濃度変化の関数としてのイエロー及びシアントナーにおけるPCの変化を示したグラフである。図2のグラフでは、図1におけるように、四角の識別記号と破線はシアントナーを指し、そしてダイヤモンドの識別記号と破線はシアントナーを指す。シアントナーに関して、PC測定値は、20mg/g及び40mg/gに等しいBBPの濃度に対して得られ、そしてイエロートナーに関しては、PC測定値は、20mg/g及び50mg/gのBBPの濃度に対して得た。図2から容易に立証されることは、グラフに示したBBPの濃度範囲に関して、BBPの濃度変化は、PCにおける変化をもたらすことにおいては実質上それ程効果がないということである。
【0054】
本願の詳細な説明及び特許請求の範囲においては、動詞「から成る」、「を含む」及び「を有する」、及びそれらに類似する語の各々は、その動詞の目的語又は目的語群が、必ずしも、その動詞の主語又は主語群の単位、成分、要素又は部分が完全な列挙ではないことを表示するのに用いられる。
【0055】
本発明の実施形態に関する詳細な説明を用いて本発明を説明してきたが、それは例示目的で提示されるものであり、本発明の範囲を限定する意はない。記載した実施形態は種々の特徴を包含しているが、その全てが本発明の実施形態全てに必ずしも必要とされるわけではない。本発明の幾つかの実施形態は、その特徴の幾つか又はその特徴の可能な組み合わせのみを利用するに過ぎない。当業者であれば、記載した本発明の実施形態の変更形態並びに記載した実施形態において言及した諸特徴の様々な組み合わせをはじめとする本発明の諸々の実施形態を想到し得るであろう。例えば、上述の実施形態は、全ての又はほとんど全ての液体トナーに現在使用されている炭化水素液を利用している。しかしながら、本発明の帯電補助剤はトナー粒子に作用するため、本発明は、キャリヤー液としてシリコーン油のような種々の誘電性液体を利用する液体トナーに適用できると思われる。本発明の範囲は前出の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】一定濃度のチャージディレクタに関して、粒子の導電率に及ぼすAl(OT)濃度変化の効果
【図2】一定濃度のAl(OT)に関して、粒子の導電率に及ぼすチャージディレクタ濃度変化の効果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子の帯電を助長するための帯電補助剤であって、
誘電性のキャリヤー液、及び
前記液中に溶解している有機アルミニウム塩
を含み、前記有機アルミニウム塩が、室温で前記キャリヤー液に可溶性である、帯電補助剤。
【請求項2】
前記アルミニウム塩が、スルホコハク酸アルミニウムを含む、請求項1に記載の帯電補助剤。
【請求項3】
前記塩が、Al(OT)(ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸アルミニウム)、Al(TR)(トリジトリデシルスルホコハク酸アルミニウム)及びAl(DDBS)(ドデシルベンゼンスルホン酸アルミニウム)から成る塩の群からの少なくとも1つの塩を含む、請求項2に記載の帯電補助剤。
【請求項4】
前記塩が、Al(OT)を含む、請求項3に記載の帯電補助剤。
【請求項5】
前記誘電性キャリヤー液が、液体炭化水素である、前出の請求項の何れかに記載の帯電補助剤。
【請求項6】
前記液体炭化水素が、イソパラフィンである、請求項5に記載の帯電補助剤。
【請求項7】
前記塩が、前記キャリヤー液中において2重量%以上の溶解度を有する、前出の請求項の何れかに記載の帯電補助剤。
【請求項8】
前記塩が、前記キャリヤー液中において3重量%以上の溶解度を有する、前出の請求項の何れかに記載の帯電補助剤。
【請求項9】
前記塩が、前記キャリヤー液中において5重量%以上の溶解度を有する、前出の請求項の何れかに記載の帯電補助剤。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の帯電補助剤、及び
前記誘電性キャリヤー液に溶解しているチャージディレクタ、
を含む、溶液。
【請求項11】
前記チャージディレクタが、塩基性バリウムペトロネート(BBP)、カルシウムペトロネート及び両性イオン物質から成る群の少なくとも1つを含む、請求項10に記載の溶液。
【請求項12】
前記両性イオン物質が、レシチンを含む、請求項11に記載の溶液。
【請求項13】
キャリヤー液にトナー粒子を分散させて成る液体トナー中のトナー粒子を帯電させる方法であって、
前記トナーにチャージディレクタを付加すること、及び
前記キャリヤー液に可溶性である有機アルミニウム塩を帯電補助剤として前記トナーに付加すること
を包含する、方法。
【請求項14】
前記アルミニウム塩が、スルホコハク酸アルミニウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記塩が、Al(AOT)(ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸アルミニウム)、Al(ATR)(トリジトリデシルスルホコハク酸アルミニウム)及びAl(DDBS)(ドデシルベンゼンスルホン酸アルミニウム)から成る塩の群からの少なくとも1つの塩を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記塩が、Al(OT)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記キャリヤー液が、液体炭化水素である、請求項13〜16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記キャリヤー液が、イソパラフィンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記塩が、前記キャリヤー液中において高溶解性である、請求項13〜18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記塩が、前記キャリヤー液中において約2重量%以上の溶解度を有する、請求項13〜18の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記塩が、前記キャリヤー液中において約3重量%以上の溶解度を有する、請求項13〜18の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記塩が、前記キャリヤー液中において約5重量%以上の溶解度を有する、請求項13〜18の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記チャージディレクタが、塩基性バリウムペトロネート(BBP)、カルシウムペトロネート及び両性イオン物質から成る群の少なくとも1つを含む、請求項13〜22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記両性イオン物質が、レシチンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
帯電補助剤が、前記チャージディレクタの後に付加される、請求項13〜24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
帯電補助剤が、前記チャージディレクタの前に付加される、請求項13〜25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
帯電補助剤が、前記チャージディレクタと一緒に付加される、請求項13〜26の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記補助剤が、トナー粒子上に生成した初期電荷が散逸し終わった後に付加される、請求項13〜27の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
液体トナーであって、
誘電性キャリヤー液、
室温で前記キャリヤー液に可溶性であるところの有機アルミニウム塩と反応させたトナー粒子、及び
チャージディレクタ
を含み、
前記アルミニウム塩が、前記チャージディレクタによる前記トナー粒子の帯電性を高めるのに有効である、液体トナー。
【請求項30】
前記アルミニウム塩が、スルホコハク酸アルミニウムを含む、請求項29に記載の液体トナー。
【請求項31】
前記塩が、Al(AOT)(ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸アルミニウム)、Al(ATR)(トリジトリデシルスルホコハク酸アルミニウム)及びAl(DDBS)(ドデシルベンゼンスルホン酸アルミニウム)から成る塩の群からの少なくとも1つの塩を含む、請求項29又は30に記載の液体トナー。
【請求項32】
前記塩が、Al(OT)を含む、請求項3に記載の液体トナー。
【請求項33】
前記キャリヤー液が、液体炭化水素である、請求項29〜32の何れか1項に記載の液体トナー。
【請求項34】
前記キャリヤー液が、イソパラフィンである、請求項33に記載の液体トナー。
【請求項35】
前記塩が、前記キャリヤー液中において高溶解性である、請求項29〜34の何れか1項に記載の液体トナー。
【請求項36】
前記塩が、前記キャリヤー液中において約2重量%以上の溶解度を有する、請求項29〜35の何れか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記塩が、前記キャリヤー液中において約3重量%以上の溶解度を有する、請求項29〜35の何れか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記塩が、前記キャリヤー液中において約5重量%以上の溶解度を有する、請求項29〜35の何れか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記チャージディレクタが、塩基性バリウムペトロネート(BBP)、カルシウムペトロネート及び両性イオン物質から成る群の少なくとも1つを含む、請求項29〜38の何れか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記両性イオン物質が、レシチンを含む、請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−542848(P2008−542848A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515371(P2008−515371)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000594
【国際公開番号】WO2006/131905
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】