説明

トナー

【課題】転写性向上の為に大粒径外添剤を添加しても外添剤脱離が発生し難いトナーを提供すること。また大粒径外添剤脱離による現像特性の変化や画像不良を抑制できるトナーを提供すること。
【解決手段】少なくとも結着樹脂と離型剤を含有するトナー粒子と、微粒子Aを含有するトナーであって、
該微粒子Aは、一次粒子の個数平均粒子径が80nm以上300nm以下、該微粒子Aのトナー粒子表面でのアスペクト比(長軸/短軸)が1.0以上1.3以下であり、
該微粒子Aは、少なくとも重量平均分子量300以上3000以下の炭化水素化合物が、該微粒子Aの原体100質量部に対して、0.1質量部以上30.0質量部以下の割合で、処理されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真法に使用されるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な電子写真法におけるトナーは、着色粒子表面を流動性向上剤(外添剤)で処理し、所望の流動性や帯電特性を制御している。この外添剤として、一般的に広く使用されているものは、無機物あるいは有機物から成る微粒子である。
【0003】
かかる外添剤としては、従来から金属酸化物や樹脂粒子及びこれらの表面処理物などが広く利用されてきた。
【0004】
その中で、スペーサー粒子としての機能を有し、主に転写性向上目的に添加される、一次粒子の個数平均粒子径が80nm以上300nm以下程度の大粒径外添剤がある。この外添剤は80nm未満の小粒径外添剤とは異なり、例えば、二成分現像剤のキャリアとのストレス、一成分現像でのトナー搬送部材や薄層化ブレードとのストレス等による、トナー表面への外添剤埋め込まれは発生し難い。
【0005】
しかしその反面、大粒径外添剤はトナーから離脱し易いため、現像剤に大粒径外添剤が蓄積して現像特性を変化させたり、大粒径外添剤が外部に飛散して帯電部材やクリーニング部材等を汚染し、画像不良を発生させたりといった弊害が懸念されている。
【0006】
このような弊害を抑制する為、例えば、トナー表面改質装置などの物理的な力によってトナー中に大粒径外添剤を打ち込み、固定化する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。この方法では大粒径外添剤の遊離は低減できるが、転写性向上効果も低減し、定着性が悪化するという二次的な弊害が発生した。
【0007】
一方で、外添剤表面にシラン化合物、シランカップリング剤、シリコーンオイルだけでなく、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、界面活性剤等を処理する方法も提案されている(例えば特許文献2、特許文献3)。これらの技術は、帯電付与や流動性向上だけでなく、現像スリーブや感光体、二成分系現像ではキャリア等の汚染を低減することを目的としている。さらには定着性改善の為、離型剤で処理した外添剤を使用する技術も提案されている(例えば特許文献4)。
【0008】
しかし、このような表面処理によって転写性向上と外添剤遊離の両方を改善させる方法については更なる検討を行う余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−246057号公報
【特許文献2】特開平09−114126号公報
【特許文献3】特開2009−003083号公報
【特許文献4】特開2000−284524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は上記問題点を解消したトナーを提供することにある。
【0011】
即ち本発明は、転写性向上の為に大粒径外添剤を添加しても外添剤脱離が発生し難いトナーを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は大粒径外添剤脱離による現像特性の変化や画像不良を抑制できるトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、以下により達成される。すなわち、
(1)少なくとも結着樹脂と離型剤を含有するトナー粒子と、微粒子Aを含有するトナーであって、
該微粒子Aは、一次粒子の個数平均粒子径が80nm以上300nm以下、
該微粒子Aのトナー粒子表面でのアスペクト比(長軸/短軸)が1.0以上1.3以下であり、
該微粒子Aは、少なくとも重量平均分子量300以上、3000以下の炭化水素化合物が、該微粒子Aの原体100質量部に対して、0.1質量部以上30.0質量部以下の割合で、処理されていることを特徴とするトナーに関する。
(2)該微粒子Aの30℃、80%RH環境に放置後の水分吸着量が、1.5質量%以上7.0質量%以下であることを特徴とするトナーに関する。
(3)該微粒子Aが、炭化水素化合物及びアルコキシシラン化合物で処理されていることを特徴とするトナーに関する。
(4)該該微粒子Aは、ゾルゲル法により得られる球状の疎水性シリカであることを特徴とするトナーに関する。
(5)該離型剤が、炭化水素系化合物であることを特徴とするトナーに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のトナーは、大粒径の外添剤においてもトナーから遊離し難いため、転写中抜け、転写飛び散り、転写ムラ、中間転写体の汚染を長期にわたり抑制できるトナーを提供できる。
【0015】
また本発明のトナーは、現像から定着に亘って帯電を安定に保つことができる為、耐久時の帯電低下によるカブリやガサツキ、定着時の静電的なオフセットも抑制するトナーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】転写中抜けの評価に用いた文字パターン(a)と中抜け状態(b)を示す図である。
【図2】飛び散り評価用画像の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に使用するトナーの特徴は、一次粒子の個数平均粒子径が80nm以上300nm以下、トナー粒子表面でのアスペクト比(長軸/短軸)が1.0以上1.3以下の微粒子Aに、重量平均分子量300以上3000以下の炭化水素化合物を処理することである。
【0018】
微粒子Aの如き形状の粒子は、トナーと感光体、あるいはトナーと中間転写体の接触面積を小さくするスペーサー粒子として働き、主に転写効率向上を目的として広く使用されている。しかしこのような粒子を外添剤として使用する場合、多くの課題が挙げられる。
【0019】
まず外添された粒子は、その形状ゆえに、トナーから非常に脱離しやすく、現像され難い為、二成分現像の場合は現像剤の中に蓄積し、トナーの帯電性が著しく変化して様々な画像弊害を引き起こす。また、現像された粒子が感光体や中間転写体に付着した場合にはクリーニングされ難く、ガサツキやカブリのような画像不良を発生させることがある。
【0020】
こういった課題を回避する為には、粒子のトナーからの脱離を抑制することが求められた。その対策手段の1つとして物理的な力によってトナー中に粒子を打ち込み、固定化する技術では、定着性が悪化するため、本発明者らは粒子の表面処理に着目した検討を行った。
【0021】
粒子の表面処理剤としては、シラン化合物、シランカップリング剤、シリコーンオイル等のほかに、炭化水素化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、界面活性剤等が挙げられる。本発明者らはこれらを粒子に処理し、鋭意検討を行った。
【0022】
まず、シラン化合物、シランカップリング剤、シリコーンオイルを単独で使用しても、粒子の脱離抑制としての効果は得られなかった。次に脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、界面活性剤を検討した結果、トナーからの脱離は改善されたが、定着性が悪化する結果となった。定着性を悪化させること無く、脱離抑制に最も効果があったのは、炭化水素化合物であった。
【0023】
本発明に使用するトナーには、少なくとも重量平均分子量300以上3000以下、より好ましくは重量平均分子量350以上2000以下の炭化水素化合物を処理した微粒子Aが外添されている。重量平均分子量が300以上3000以下の炭化水素化合物とは、具体的にはトナー中の離型剤として使用している炭化水素ワックスの如きものである。
【0024】
炭化水素外の脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩等では、トナーからの脱離は抑制できたが、カブリやガサツキなどの帯電変化による画像不良は抑制できなかった。これはトナー中の離型剤よりも結着樹脂との親和性が良いため、トナー表面の離型剤以外の部分に微粒子Aが選択的に付着しているものと考える。つまりトナー表面の離型剤部分が外添された粒子によって覆われていない為、現像性を悪化させているものと考える。
【0025】
炭化水素化合物の重量平均分子量は、300未満では、微粒子Aがクリーニング部材をすり抜け易くなり、クリーニング性やキャリア汚染性や悪化する。3000よりも大きくなると、中間転写体への付着性が高くなり、転写中抜けが発生する。この原因は定かではないが、重量平均分子量が3000を超えると微粒子Aへの処理が難しくなり、処理が不均一になる。
【0026】
本発明に使用する微粒子Aは、トナー粒子表面でのアスペクト比(長軸/短軸)が1.0以上1.3以下であることが好ましい。アスペクト比が1.3を超えると転写効率が低下するだけでなく、炭化水素化合物処理にムラが生じる為、転写時飛び散り等も発生し易くなる。
【0027】
また該微粒子Aは、原体100質量部に対して、0.1質量部以上30.0質量部以下の割合で炭化水素化合物が処理されている。0.1質量部未満では、炭化水素化合物処理の効果が得られず、転写ムラが発生する。30.0質量部を超えるとトナー同士の離型性が増すことで帯電不良が起こり、カブリやガサツキ性が悪くなる。
【0028】
本発明のトナーで使用する微粒子Aは、炭化水素化合物のほかに、アルコキシシラン化合物を併用して表面処理することで、帯電安定性が増し、より優れた画像特性を発揮する。本発明ではアルコキシシラン化合物であれば特に限定は無い。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を使用することができる。
【0029】
本発明のトナーで使用する微粒子Aは、30℃、80%RH環境に調湿された状態での水分吸着量が、1.5質量%以上7.0質量%以下であることが好ましい。これは微粒子Aの基材にある程度の吸湿性があり、吸湿した基材の上から炭化水素化合物を処理することを意味している。このような微粒子Aを使用することで、耐静電オフセット性が非常に良くなることを本発明者らは発見した。
【0030】
この詳細は定かではないが、定着時に微粒子Aに処理されている炭化水素化合物が、熱で融解し、吸湿されていた水分も蒸気となって放出される。その時に帯電緩和が起こり、静電オフセットを防止しているものと本発明者らは考えている。
【0031】
水分吸着量が1.5質量%未満であると、帯電緩和性が小さくなる為か、耐静電オフセット性に影響し易くなる。水分吸着量が7.0質量%を超えると、帯電低下が発生し易くなり、カブリやガサツキ性に影響し易くなる。
【0032】
このような基材として特に好ましいのは、ゾルゲル法により得られる球状のシリカ微粒子である。ゾルゲル法とは、アルコキシシランを水が存在する有機溶媒中において、触媒により加水分解、縮合反応させて得られるシリカゾル懸濁液から、溶媒除去、乾燥して、粒子化する方法である。このゾルゲル法により得られたシリカ微粒子は、適度な粒径と粒度分布を有し、単分散かつ球形であるため、トナー粒子表面に均一に分散させやすく、また、安定したスペーサー効果によってトナーの物理的付着力を小さくできる。さらに本発明では、炭化水素化合物を均一に処理し易いため、微粒子Aの比抵抗を大きくしかも安定にすることができる。これは、強いストレスに対しても良好な帯電性と転写性をより長期にわたって維持することが可能となる。
【0033】
次に、トナーについて説明する。
【0034】
トナーは、重量平均粒径(D4)が4.0μm以上10.0μm以下であることが高画質及び耐久性を両立するために好ましい。重量平均粒径(D4)が上記の範囲内にある場合には、トナーの流動性が良好であり、十分な帯電量を得やすく、また、良好な解像度を得やすい。
【0035】
また、トナーは、結着樹脂と着色剤を含有するトナー粒子を有するものが用いられる。
【0036】
トナー粒子に含有される結着樹脂としては、例えば、以下のものが挙げられる。ポリエステル、ポリスチレン;ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン誘導体の重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体の如きスチレン共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂;脂肪族多価アルコール、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアルコール類及びジフェノール類から選択される単量体を構造単位として有するポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂。
【0037】
トナーは、粉砕法で製造されたものであっても、懸濁重合法や乳化凝集法といった水系媒質中でトナー粒子を製造する方法で得られたものであってもよい。
【0038】
平均円形度が高いトナーを得るためには、懸濁重合法や乳化凝集法といった水系媒質中でトナー粒子を製造する方法を用いることが好ましい。
【0039】
懸濁重合法を行う際に用いることのできる重合性単量体としては、例えば、以下のものが挙げられる。スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、エチレン不飽和モノオレフィレン類のモノマー、ビニルエステル類のモノマー、ビニルエーテル類のモノマー、ビニルケトン類のモノマー、N−ビニル化合物のモノマー、その他のビニルモノマー。
【0040】
スチレン系モノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン。
【0041】
アクリル系モノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類やアクリル酸及びアクリル酸アミド類。
【0042】
また、メタクリル系モノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル類やメタクリル酸及びメタクリル酸アミド類。
【0043】
エチレン不飽和モノオレフィレン類のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンが挙げられる。
【0044】
ビニルエステル類のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルが挙げられる。
【0045】
ビニルエーテル類のモノマーとしては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルが挙げられる。
【0046】
ビニルケトン類のモノマーとしては、例えば、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンが挙げられる。
【0047】
N−ビニル化合物のモノマーとしては、例えば、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンが挙げられる。
【0048】
その他のビニルモノマーとしては、例えば、ビニルナフタリン類、アクリロニトリル、メタクリロニトル、アクリルアミドの如きアクリル酸誘導体又はメタクリル酸誘導体が挙げられる。
【0049】
これらのビニル系モノマーは単独で又は2つ以上を用いることができる。
【0050】
ビニル系樹脂を製造する際に用いられる重合開始剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクシルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、2,2−ビス(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンの如き過酸化物系開始剤や過酸化物を側鎖に有する開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムの如き過硫酸塩、過酸化水素。
【0051】
また、ラジカル重合性の三官能以上の重合開始剤の例としては、例えば、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シラン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンの如きラジカル重合性多官能重合開始剤が挙げられる。
【0052】
本発明のトナーは、離型剤を含有しているが、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物、カルナバワックス、モンタン酸エステルワックス、ベヘン酸ベヘニルの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したものを使用することができる。
【0053】
しかし、中でも好適な離型剤としては、炭化水素系ワックスであり、低分子量ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等が挙げられる。このような離型剤を用いた場合には、微粒子Aに処理した炭化水素成分との親和性が良くなり、トナーからの脱離を抑えることができる。これは非常に耐久性の強いトナーを得ることができる。
【0054】
逆に、離型剤が添加されていない場合、微粒子Aの脱離が著しく悪化し、現像性に起因する画像不良が顕著に表れる。
【0055】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して2.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以上9.5質量部以下であることがより好ましい。離型剤の含有量が2.0質量部未満では定着性が悪化し易くなり、15.0質量部よりも多いとカブリ等の現像性が悪化し易くなる。
【0056】
また、トナーは荷電制御剤を含有していてもよい。荷電制御剤としては、例えば、有機金属錯体、金属塩、及びキレート化合物が挙げられる。有機金属錯体としては、例えば、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体が挙げられる。その他には、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、エステル類の如きカルボン酸誘導体や芳香族系化合物の縮合体も挙げられる。また、ビスフェノール類、カリックスアレーンの如きフェノール誘導体も荷電制御剤として用いることができる。トナーの帯電立ち上がりを良好にする点から、中でも芳香族カルボン酸の金属化合物が、トナーの帯電の立ち上がりが良好になるという点で好ましい。
【0057】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。荷電制御剤を上記の範囲内で用いた場合には、高温高湿から低温低湿までの環境において安定した摩擦帯電を行うことができる。
【0058】
二成分系現像剤におけるトナーの摩擦帯電量は、絶対値が25mC/kg以上65mC/kg以下であることが好ましい。ここで規定する摩擦帯電量は、トナー濃度が3質量%以上20質量%以下となるように調製した現像剤をポリ瓶に入れ、ターブラーミキサーや各種振とう機により、2分間混合した際の帯電量である。上記の範囲であれば、高画質な画像を得やすく、カブリのない画像を得られやすい。
【0059】
トナーに含有される着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0060】
黒色着色剤としては、カーボンブラック;磁性体;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。
【0061】
着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
【0062】
マゼンタトナー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207.209、238;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
【0063】
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1の如き油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28の如き塩基性染料。
【0064】
シアントナー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1乃至5個置換した銅フタロシアニン顔料。
【0065】
イエロー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
【0066】
イエロー用着色染料としては、C.I.ソルベントイエロー162が挙げられる。
【0067】
着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1乃至30質量部であり、より好ましくは0.5乃至20質量部であり、最も好ましくは3乃至15質量部である。
【0068】
本発明で使用する微粒子Aのほかに、帯電性や転写性の向上を狙って、トナー粒子にその他の外添剤が添加されていてもよい。トナー粒子表面に外添される外添剤は、酸化チタン、酸化アルミナ、シリカの如き無機微粒子を含むことが好ましく、複数の種類を併用しても良い。
【0069】
該外添剤の総含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.3質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以上4.0質量部以下であることがより好ましい。
【0070】
また、外添剤として用いられる無機微粒子の表面は、疎水化処理をされていることが好ましい。疎水化処理は、各種チタンカップリング剤、シランカップリング剤の如きカップリング剤;シリコーンオイル;またはそれらの組合せによってなされることが好ましい。
【0071】
チタンカップリング剤としては、例えば以下のものが挙げられる。テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート。
【0072】
シランカップリング剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン。
【0073】
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0074】
疎水化処理は、被処理粒子に対して1質量%以上30質量%以下(より好ましくは3質量%以上7質量%以下)の疎水化処理剤を被処理粒子に添加して、被処理粒子を被覆することにより行われることが好ましい。
【0075】
疎水化処理された外添剤の疎水化の程度は特に限定されないが、例えば、処理後の疎水化度が40以上98以下であることが好ましい。疎水化度とは、試料のメタノールに対する濡れ性を示すものであり、疎水性の指標である。
【0076】
次に本発明のトナーを二成分系現像方法で使用される場合の補給用現像剤及び二成分現像剤に用いられるキャリアについて説明する。
【0077】
磁性キャリアとしては、例えば表面酸化又は未酸化の鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子及びフェライト等が使用できる。
【0078】
上記磁性キャリア粒子の表面を樹脂で被覆した被覆キャリアは、現像スリーブに交流バイアスを印加する現像法において特に好ましい。被覆方法としては、樹脂の如き被覆材を溶剤中に溶解又は懸濁させて調製した塗布液を磁性キャリアコア粒子表面に付着させる方法、磁性キャリアコア粒子と被覆材とを粉体で混合する方法等、従来公知の方法が適用できる。
【0079】
磁性キャリアコア粒子表面への被覆材料としては、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が挙げられる。これらは、単独或いは複数で用いる。上記被覆材料の処理量は、キャリアコア粒子に対し0.1乃至30質量%(好ましくは0.5乃至20質量%)が好ましい。これらキャリアの個数平均粒径は10乃至100μm、好ましくは20乃至70μmを有することが好ましい。
【0080】
本発明のトナーと磁性キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2乃至15質量%、好ましくは4乃至13質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低下しやすく、15質量%を超えるとカブリや機内飛散が発生しやすい。
【0081】
本発明のトナーの製造方法としては様々な方法が挙げられるが、例えば粉砕法により製造する場合には、トナー粒子を構成する少なくとも樹脂、着色剤などの材料(内添剤)を所定量秤量して配合し、混合する(これを「原料混合工程」という)。原料を混合する際に用いられる混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
【0082】
次に、上記混合されたトナー原料を溶融混練して樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させることにより、着色樹脂組成物を得る(これを「溶融混練工程」という)。この溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産できる等の優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっており、例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。
【0083】
更に、上記溶融混練工程よって得られた着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0084】
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルの如き粉砕機で粗粉砕した後、更に、例えば、川崎重工業社製のクリプトロンシステム、日清エンジニアリング社製のスーパーローター、ターボ工業製のターボ・ミル(RSSローター/SNNBライナー)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
【0085】
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)等の分級機等の篩分機を用いて分級し、重量平均粒子径が4乃至10μmのトナー粒子を得る。
【0086】
必要に応じて、表面改質工程で表面改質(即ち球形化処理)を行い、トナー粒子としてもよい。このような表面改質を行う装置としては、例えば奈良機械製作所製のハイブリタイゼーションシステム、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステム、日本ニューマチック社製のサーフュージングシステム等が挙げられる。さらに必要に応じて風力式篩のハイボルター(新東京機械社製)等の篩分機を用いても良い。
【0087】
また、重合性単量体組成物を水中に懸濁し、これを重合することにより直接トナー粒子を製造する方法、単量体には可溶で得られる重合体が不溶な水系有機溶剤を用い直接トナー粒子を製造する分散重合方法、乳化重合により製造したエマルションと着色剤等を凝集・会合させることによりトナー粒子を製造する方法等、従来公知の製造方法も採用可能である。
【0088】
更に、外添剤を外添処理する方法としては、分級されたトナーと公知の各種外添剤を所定量配合し、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合することによりトナーを得ることができる。
【0089】
<微粒子A及びその他の粒径及びアスペクト比の測定方法>
本発明における微粒子A及びその他無機微粒子の一次粒子の個数平均粒子径については、透過型電子顕微鏡にて、トナー粒子上の微粒子A及び無機微粒子の一次粒子の個数平均粒子径は走査電子顕微鏡でそれぞれ観察し、粒子の長軸と短軸の平均値を粒径とした。また粒子100個の粒径を測定してその平均値を一次粒子の個数平均粒子径、長軸と短軸の比(長軸径/短軸径)をアスペクト比とした。
【0090】
<トナーの最大吸熱ピークのピーク温度の測定>
ワックスおよびトナーの最大吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
【0091】
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0092】
具体的には、トナー約10mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30乃至200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、本発明のトナーのDSC測定における吸熱曲線の最大吸熱ピークとする。
【0093】
<重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
【0094】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0095】
尚、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行った。
【0096】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
【0097】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0098】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0099】
<水分吸着量の測定方法>
本発明における微粒子Aの吸着水分量は、吸着平衡測定装置(JTトーシ社製「EAM−02」)によって測定したものである。これは、対象とする気体(本発明の場合は水)のみが存在する条件下で固−気平衡に到達させ、この時の固体質量と蒸気圧を測定する装置である。
【0100】
実際の吸着・脱着等温線の測定は、以下に示す乾物質量の測定、水中の溶存空気の脱気から、吸着・脱着等温線の測定まで、全てコンピューターによって自動的に行われる。測定の概略は、JTトーシ株式会社発行の操作マニュアルに記載されており、以下の通りである。なお、本発明においては溶媒液として水を用いる。
【0101】
先ず、吸着管内の試料容器に無機微粉末を約5g充てん後、恒温槽温度、試料部温度を30℃に設定する。その後、空気弁V1(主バルブ)、V2(排気バルブ)を開き真空排気部を作動させ、真空容器内を0.01mmHg程度に真空引きすることにより、試料の乾燥を行う。試料の質量変化がなくなった時点の質量を「乾物質量」とする。
【0102】
溶媒液としての水中には空気が溶解しているため、脱気を行う必要がある。先ず、水を液だめに入れ、真空排気部を作動させ、空気弁V2、V3(液だめバルブ)を交互に開閉し、溶存している空気を除去する。上記操作を数回繰り返し、水中に気泡が見られなくなった時点で脱気終了とする。
【0103】
乾物質量の測定、水中の溶存空気の脱気に続いて、真空容器内を真空下に保持したまま空気弁V1、V2を閉じ、空気弁V3を開くことによって、液だめから水蒸気を導入し、空気弁を閉める。次いで、空気弁V1を開くことによって、溶媒蒸気を真空容器内に導入し、その圧力を圧力センサーにより測定する。真空容器内の圧力が設定圧力に達しない場合は、上記操作を繰り返すことにより真空容器内の圧力を設定圧力にする。平衡に達すると、真空容器内の圧力と質量が一定になるので、その時の圧力と温度、及び試料質量を平衡データとして測定する。
【0104】
以上のように操作して、水蒸気の圧力を変更することにより、吸着・脱着等温線を測定することができる。実際の測定においては、予め、吸着量を測定する相対蒸気圧を設定する。設定圧として、例えば、5%、10%、30%、50%、70%、80%、90%、95%とした場合、本発明における「吸着過程」とは、5%から順に水分吸着量を測定し等温線を測定していく過程であり、「脱離過程」とは、吸着過程に引き続き行う、吸着過程とは逆に95%から相対蒸気圧を下げていきながら水分吸着量を測定していく過程を示す。
【0105】
本装置では、圧力の設定は相対蒸気圧(%RH)で行い、吸着・脱着等温線は、吸着量(質量%)と相対蒸気圧(%RH)で表示される。吸着量と相対蒸気圧の計算式を以下に示す。
M={(Wk−Wc)/Wc}×100
Pk=(Q/Q0)×100
(ここで、Mは吸着量(質量%)、Pkは相対蒸気圧(%)、Wk(mg)は試料質量、Wc(mg)は試料の乾物質量、Q0(mmHg)は、吸・脱着平衡時の温度Tk(℃)からAntoineの式により求められる水の飽和蒸気圧、Q(mmHg)は平衡データとして測定した圧力、をそれぞれ示す。)
【実施例】
【0106】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0107】
〔処理微粒子A−1、A−4、A−6の製造例〕
撹拌機、滴下ロート、温度計をガラス製反応器にセットし、エタノールにアンモニア水を加え撹拌し、20℃に保った。つぎにこの溶液にテトラメトキシシランを60分間で滴下し反応させた。滴下終了後さらに20℃にて5時間撹拌を続けシリカゾル懸濁液を得た。つぎにこのシリカゾル懸濁液を加熱し、エタノールを除去した後トルエンを加え更に加熱し、水を除去した。次に懸濁液中のシリカ粒子に対して40%のヘキサメチルジシラザンと、パラフィンワックス1(Mw:500、融点66℃)を表1に示す添加量になるように調整して加えた後、120℃で2時間反応させシリカの疎水化処理を行った。その後、懸濁液を加熱し、トルエンを除去し、乾燥させたあと、目開き106μmの篩分網にて粗大粉を取り除き、表1に示す物性の微粒子A−1、A−4、A−6を得た。
【0108】
〔処理微粒子A−2、A−3、A−5の製造例〕
蒸留精製したメチルトリメトキシシランを加熱し、ここに窒素ガスをバブリングし、メチルトリメトキシシランを窒素ガスで気流伴流して酸水素火炎バーナーに導入し、この酸水素火炎中で燃焼分解させた。このときのメチルトリメトキシシラン添加量は1270g/hr、酸素ガス添加量は2.9Nm3/hr、水素ガス添加量は2.1Nm3/hr、窒素ガス添加量は0.58Nm3/hrであり、生成した球状シリカ微粉末はバグフィルターで捕集した。
【0109】
この球状シリカ微粉末をプラネタリミキサーに仕込み、純水を添加し、密閉後更に55℃で14時間撹拌した。次いで、表1に示す処理剤を添加して100℃に昇温し、窒素ガスを通気しながら乾燥、解砕させ、表1に示す物性の微粒子A−2、A−3、A−5を得た。
【0110】
〔処理微粒子A−7乃至A−17の製造例〕
メチルメタクリレート40質量部、スチレン45質量部、ジビニルベンゼン15質量部とを蒸留水100質量部に入れ、過硫酸カリウムとチオ硫酸ナトリウムとを5×10-3mol/L、硫酸銅を2.5×10-5mol/Lになる様に添加した。次いで、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.2質量部添加した後、窒素気流下で65℃で2時間反応させた。濾過、乾燥後、表1に示す処理剤と、イソプロパノールを加えて80℃に加熱し、撹拌、乾燥、粉砕して表1に示す物性の微粒子A−7乃至A−17を得た。
【0111】
〔処理微粒子A−18の製造例〕
四塩化ケイ素を高温で焼成後、気相中でヘキサメチルジシラザンで疎水化処理を行い、一次粒子の個数平均粒子径が87nmであるシリカ微粒子を得た。次に表1に示す処理剤を添加して100℃に昇温し、窒素ガスを通気しながら乾燥、解砕させ、表1に示す物性の微粒子A−18を得た。
【0112】
【表1】

【0113】
〔キャリアの製造例〕
個数平均粒径0.30μmのマグネタイト粉と、個数平均粒径0.30μmのヘマタイト粉に対して、それぞれ4.0質量%のシラン系カップリング剤(3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)を加え、容器内にて100℃以上で高速混合撹拌し、それぞれの微粒子を処理した。
【0114】
・フェノール 10質量部
・ホルムアルデヒド溶液 6質量部
(ホルムアルデヒド40%、メタノール10%、水50%)
・処理したマグネタイト 80質量部
・処理したヘマタイト 4質量部
上記材料と、28%アンモニア水5質量部、水20質量部をフラスコに入れ、撹拌、混合しながら30分間で85℃まで昇温・保持し、3時間重合反応させて、生成するフェノール樹脂を硬化させた。その後、硬化したフェノール樹脂を30℃まで冷却し、さらに水を添加した後、上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5mmHg以下)、60℃の温度で乾燥して、磁性体が分散された状態の球状の磁性体含有樹脂キャリアコアを得た。
【0115】
コート材として、メチルメタクリレートとシクロヘキシルメタクリレートとの共重合体(共重合比(質量%比)3:7、重量平均分子量54,000)を用い、これがコート時に前記磁性体分散樹脂コア100質量部に対して1.0質量部となるように、メチルエチルケトン及びトルエンの混合溶媒を溶媒として10質量%の前記メチルメタクリレートとシクロヘキシルメタクリレートとの共重合体を含有するキャリアコート溶液を作製した。また、このキャリアコート溶液に、メラミン樹脂(個数平均粒径0.2μm)0.4質量部、カーボンブラック(個数平均粒径30nm、DBP吸油量50ml/100g)0.6質量部をホモジナイザーによりよく混合する。ついで、この混合溶液に前記磁性体分散樹脂コアを投入し、これに剪断応力を連続して加えながら溶媒を70℃で揮発させて、磁性体分散樹脂コア表面へ前記メチルメタクリレートとシクロヘキシルメタクリレートとの共重合体をコートした。
【0116】
前記メチルメタクリレートとシクロヘキシルメタクリレートとの共重合体でコートされた樹脂コート磁性体分散樹脂コアを100℃で2時間撹拌することによって熱処理後、冷却、解砕した。その後200メッシュの篩で分級して、個数平均粒子径36μm、真比重3.8g/cm3、磁化の強さ57.1Am2/kgの磁性キャリアを得た。
【0117】
〔トナーの製造例1乃至23〕
ビニル系共重合体ユニットを得るための材料として、スチレン10質量部、2−エチルヘキシルアクリレート4質量部、フマル酸2質量部、α−メチルスチレンの2量体5質量部、ジクミルパーオキサイド5質量部を滴下ロートに入れた。また、ポリエステル重合体ユニットを得るための材料として、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン25質量部、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン16質量部、テレフタル酸22質量部、無水トリメリット酸6質量部、フマル酸10質量部及び2−エチルヘキサン酸錫0.2質量部をガラス製4リットルの四つ口フラスコに入れた。この四つ口フラスコに温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけ、マントルヒーター内に設置した。次に四つ口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、温度130℃の温度で撹拌しつつ、先の滴下ロートより、ビニル系単量体及び重合開始剤を約4時間かけて滴下した。次いで、温度を200℃まで昇温し、4時間反応させ、重量平均分子量89,000、数平均分子量3500のハイブリッド樹脂を得た。
・上記ハイブリッド樹脂 100.0質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 1.0質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 4.0質量部
上記の材料と、表2に示す質量部数の離型剤をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合した後、得られた混合物を回転二軸押出機で溶融混練を行った。
【0118】
得られた混練物をスチール製ベルト式圧延機にて挟みながら通過させ、更に冷却ローラにて圧延冷却し、冷却コンベアにて常温まで冷却後、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。このとき冷却ローラ、冷却コンベアの速度や設定温度を変更することで混練物の冷却条件を変化させた。
【0119】
得られたトナー粗砕物を、高圧気体を用いた衝突式気流粉砕機を用いて微粉砕した。さらに、得られた微粉砕物を分級し、重量平均粒径(D4)6.0μmのシアントナー粒子を得た。
【0120】
同様にして、着色剤としてC.I.ピグメントブルー15:3の替わりにC.I.ピグメントイエロー74を7.0質量部、C.I.ピグメントレッド122を6.3質量部、カーボンブラックを5.0質量部使用して、それぞれイエロー、マゼンタ、及びブラックトナー粒子を調製した。
【0121】
得られた各トナー粒子100質量部に、表1、2に示す微粒子A−1乃至A−18を2.5質量部と、個数平均粒径20nmであり、ヘキサメチルジシラザンで処理されたシリカ粒子を1.0質量部を添加した。そして、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)で混合して、重量平均粒径6.0μmの各色トナー1乃至23を得た。
【0122】
なお、表2において、例えば「トナー1」はシアントナー1、イエロートナー1、マゼンタトナー1及びブラックトナー1、即ち前記の通り着色剤のみ異なる各色トナー1を意味している。
【0123】
【表2】

【0124】
<実施例1乃至3>
磁性キャリア92質量部に対し、表2に示す各色トナー1を8質量部加え、ターブラーミキサーにより2分間混合し、各色の二成分系現像剤を調製した。
【0125】
一方、磁性キャリア10質量部に対し、各色トナー1を90質量部加え、常温常湿23℃/50%RHの環境において、V型混合機により5分間混合し、各色補給剤を得た。
【0126】
同様に表2に示す各色トナー1、2、3を使用した各色の二成分系現像剤及び補給剤を使用し、実施例1、2、3の評価を行った。評価方法は以下に示し、結果を表3、4に示す。
【0127】
画像形成装置として、キヤノン製カラー複写機 imageRUNNER ADVANCE C7065を下記条件で出力できるように改造し、各色現像器にそれぞれ上記現像剤を入れ、下記条件で各種評価を行った。
耐久環境 N/N環境 温度23℃、湿度60RH%
N/L環境 温度23℃、湿度5RH%
耐久条件 画像面積比率2.5%で5万枚の通紙耐久
紙 普通紙 カラーレーザーコピアペーパー(81.4g/m2
光沢紙 NS−701(150g/m2
(いずれもキヤノンマーケティングジャパン株式会社)
現像条件 現像コントラストを自由に変更できるように改造した。
画像出力条件 定着装置通過前のトナー未定着画像を自由に出力できるように複写機を改造した。さらに定着性の悪いトナーを評価する場合には、定着装置にシリコーンオイル塗布機構を設けられるように改造した。
【0128】
(1)カブリ
5万枚耐久後、A4全面ベタ白画像を普通紙で5枚出力した。カブリは白地部分の白色度を、グリーンフィルターを搭載したリフレクトメーター(東京電色(株)製の「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」)により測定し、その白色度と転写紙の白色度の差からカブリ濃度(%)を算出し、5枚の中で最もカブリ濃度の高いものを評価結果とした。評価基準は次の通りである。
A:非常に良好(0.5%未満)
B:良好 (0.5%以上1.0%未満)
C:やや良好 (1.0%以上1.5%未満)
D:普通 (1.5%以上2.0%未満)
E:やや悪い (2.0%以上2.5%未満)
F:悪い (2.5%以上3.0%未満)
G:非常に悪い(3.0%以上)
なお製品として問題ないレベルは、A乃至Dである。結果を表3、4に示す。
【0129】
(2)画像の耐ガサツキ性
5万枚耐久後、光沢紙を用いてブラック単独で連続5枚、細線画像(ライン数20本、ライン幅100μm、間隔300μm)を未定着画像で出力し、100℃のオーブンに3分間放置して定着させた。
【0130】
この画像のラインの解像度は、ルーペを用いて観察し、解像度が落ちた度合い、即ち判別可能なライン数について確認して評価した。この際判別可能なライン数は、縦方向のライン、横方向のラインそれぞれ10カ所の平均値とし、5枚のうち最も悪いものを評価結果とした。さらにこの評価はH/H環境の方が画像に影響が出やすいため、H/H環境のみの評価とした。
A:19本以上(非常に高精細な画像)
B:17本以上18本以下(高精細な画像)
C:15本以上16本以下(高画質として問題無いレベル)
D:13本以上14本以下(使用可能レベル)
E:10本以上12本以下(ガサツキ感がやや目立つ)
F:7本以上9本以下(ガサツキ感が目立ち、悪い)
G:6本以下(ガサツキ性が非常に悪い)
【0131】
なお製品として使用可能レベルはA乃至Dである。結果を表3、4に示す。
【0132】
(3)耐静電オフセット性
静電オフセットは、トナーの載った紙が定着器を通過する際、トナーが定着ローラ側に静電気的に付着することにより発生する現象である。従って、低湿環境の如き過剰帯電を促す環境下で、且つ連続通紙後のような定着ローラが帯電する状況下での評価が、静電オフセットに対して最も厳しいものとなる。
【0133】
N/L環境、画像面積比率3%で1000枚出力後、現像コントラストを調整し、A4の光沢紙に連続10枚の静電オフセット試験用チャート(画像の前半半分がトナーの載量を1.20mg/cm2の黒単色ベタ、後半半分が白地となる画像)を出力した。
【0134】
評価はカブリと同じグリーンフィルターを搭載したリフレクトメーターを用い、通紙前後(後半半分)の白色度の最悪値をそれぞれ測定し、これらの白色度の差を算出した。
耐静電オフセット性の評価基準は以下のように定めた。
A:非常に良好(0.5%未満)
B:良好(0.5%以上0.8%未満)
C:普通(0.8%以上1.2%未満)
D:使用可能(1.2%以上1.6%未満)
E:やや悪い(1.6%以上2.0%未満)
F:悪い(2.0%以上2.5%未満)
G:非常に悪い(2.5%以上)
【0135】
なお製品として使用可能レベルはA乃至Dである。結果を表3、4に示す。
【0136】
(4)転写ムラ
現像電圧を調整し、トナーの紙上への載量をそれぞれ0.5mg/cm2となるようにして、マゼンタ、シアンの順で画像面積100%のA4ベタ画像を出力した。
【0137】
転写ムラは、2色のうちのどちらか1色が転写抜けした場合、斑状の跡が見られる。その斑状の跡を目視で個数確認した。評価基準は次の通りである。
A:非常に良好(2個未満)
B:良好(2個以上4個未満)
C:普通(4個以上6個未満)
D:使用可能(6個以上10個未満)
E:やや悪い(10個以上15個未満)
F:悪い(15個以上20個未満)
G:非常に悪い(20個以上)
【0138】
なお製品として使用可能レベルはA乃至Dである。結果を表3、4に示す。
【0139】
(5)転写中抜け
転写中抜けは細線や文字の先端等で顕著に見られ、文字サイズが小さいほど発生し易い。
【0140】
5万枚耐久後、図1(a)に示した「驚」文字パターンを光沢紙にプリントした際の文字の中抜け(図1(b)の状態)を以下の基準に基づき、目視で評価した。
A:4ポイント文字で発生せず。
B:4ポイント文字で中抜けが3個未満見られる。
C:4ポイント文字で中抜けが3個以上見られる。
D:6ポイント文字で中抜けが3個未満見られる。
E:6ポイント文字で中抜けが3個以上見られる。
F:8ポイント文字で中抜けが3個未満見られる。
G:8ポイント文字で中抜けが3個以上見られる。
【0141】
なお製品として問題ないレベルは、A乃至Dである。結果を表3、4に示す。
【0142】
(6)飛び散りの評価
図2に示すような縞状の潜像画像を未定着で出力し、100℃のオーブンに3分間放置して定着させた。
【0143】
図2は、解像度600dpiにおける潜像部幅が4ドット(170μm)であり、非潜像部幅が10ドット(420μm)の潜像画像である。潜像部はイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色トナーを使用している。尚、評価紙は光沢紙を使用した。
【0144】
評価基準
A:良好な細線の定着状態を示す。
B:軽微な飛び散りが19本中、2本未満観察される。
C:軽微な飛び散りが19本中、2本以上10本未満観察される。
D:軽微な飛び散りが19本中、11本以上観察される。
あるいは細線の周囲のやや目立つ飛び散りが19本中、2本未満観察される。
E:細線の周囲のやや目立つ飛び散りが19本中、2本以上10本以下観察される。
F:細線の周囲のやや目立つ飛び散りが19本中、11本以上観察される。
G:著しい飛び散りで細線が確認できない線が存在する。
【0145】
なお製品として使用可能レベルは、A乃至Dである。結果を表3、4に示す。
【0146】
(7)中間転写体クリーニング性評価
5万枚耐久後の中間転写体に、透明なテープ(リンテック(株)社製 スーパーステック)を貼り、中間転写体に付着したサンプルを採取した。
【0147】
この転写残サンプルが付着した透明テープを普通紙に貼り付け、カブリと同じく、グリーンフィルターを搭載したリフレクトメーターによって測定し、クリーニング性の評価を行った。評価基準は次の通りである。
A:非常に良好(0.4%未満)
B:良好 (0.4%以上0.8%未満)
C:やや良好 (0.8%以上1.2%未満)
D:普通 (1.2%以上1.6%未満)
E:やや悪い (1.6%以上2.0%未満)
F:悪い (2.0%以上2.5%未満)
G:非常に悪い(2.5%以上)
【0148】
なお製品として問題ないレベルは、A乃至Dである。結果を表3、4に示す。
【0149】
(8)転写効率の測定
転写効率は、5万枚耐久後の画像を現像、転写し、感光体上の転写前のトナー量(単位面積あたり)を測定した。
【0150】
さらにもう1枚画像を現像、転写し、普通紙に転写されたトナー量(単位面積あたり)をそれぞれ測定し下式により求めた。
転写効率(%)={(普通紙上のトナー量)/(感光体上の転写前のトナー量)}×100
【0151】
評価方法は、以下の基準に基づき、耐久後の転写効率で判断した。
A:非常に良好(94%以上)
B:良好(92%以上94%未満)
C:普通(90%以上92%未満)
D:使用可能(88%以上90%未満)
E:やや悪い(86%以上88%未満)
F:悪い(84%以上86%未満)
G:非常に悪い(84%未満)
【0152】
なお製品として使用可能レベルは、A乃至Dである。結果を表3、4に示す。
【0153】
実施例1乃至3では、全ての評価において非常に優れた画像特性を示した。結果を表3、4に示す。
【0154】
<実施例4>
表2に示す各色トナー4を使用した以外は実施例1と同様に実施例4の評価を行った。実施例4では、トナー中の離型剤との親和性が若干低下したため、微粒子Aの脱離の影響か、転写飛び散り性が低下したが問題なく優れた画像特性を示した。結果を表3、4に示す。
【0155】
<実施例5、6、8>
表2に示す各色トナー5、6、8を使用した以外は実施例1と同様に実施例5、6、8の評価を行った。実施例5、6、8では、微粒子Aの水分吸着量が若干低くなる影響か、耐静電オフセットや耐転写飛び散り性が低下した。また処理剤2であるアルコキシシラン無いと、帯電性にムラが発生するためか、カブリや耐ガサツキ性にも若干影響がでた。しかしいずれも大きな問題のない画像特性を示した。結果を表3、4に示す。
【0156】
<実施例7>
表2に示す各色トナー7を使用した以外は実施例1と同様に実施例7の評価を行った。実施例7では、微粒子Aの水分吸着量が若干高い影響か、カブリや転写中抜けが低下したしかし問題ない画像特性を示した。結果を表3、4に示す。
【0157】
<実施例9>
表2に示す各色トナー9を使用した以外は実施例1と同様に実施例9の評価を行った。実施例9では、微粒子Aの処理に使用する炭化水素化合物の処理量が少ない影響か、帯電不安定による転写ムラや転写中抜けがかなり低下したが使用可能の画像特性を示した。結果を表3、4に示す。
【0158】
<実施例10>
表2に示す各色トナー10を使用した以外は実施例1と同様に実施例10の評価を行った。実施例10では、微粒子Aの処理に使用する炭化水素化合物の処理量が多い影響か、静電オフセットや転写飛び散り性がかなり低下したが使用可能の画像特性を示した。結果を表3、4に示す。
【0159】
<実施例11、13>
表2に示す各色トナー11、13を使用した以外は実施例1と同様に実施例11、13の評価を行った。実施例11、13では、微粒子Aの処理に使用する炭化水素成分の重量平均分子量が小さくなるにつれて、カブリやガサツキ、転写効率等が低下した。中間転写体や各種部材との付着性が向上することによる影響と考えられるが、使用可能の画像特性を示した。結果を表3、4に示す。
【0160】
<実施例12、14>
表2に示す各色トナー12、14を使用した以外は実施例1と同様に実施例12、14の評価を行った。実施例12、14では、微粒子Aの処理に使用する炭化水素成分の重量平均分子量が大きくなるにつれて、転写中抜けや飛び散り性、中間転写体の汚染性が低下した。炭化水素成分の重量平均分子量が大きくなると微粒子Aへの処理が難しくなり、処理にムラができたためと考えられるが、使用可能の画像特性を示した。結果を表3、4に示す。
【0161】
<比較例1>
表2に示す各色トナー15を使用した以外は実施例1と同様に比較例1の評価を行った。比較例1では、微粒子Aの処理に使用する炭化水素成分の添加量が少なすぎるため、微粒子Aが脱離し易くなり、転写ムラや飛び散りに悪影響が出た。結果を表3、4に示す。
【0162】
<比較例2>
表2に示す各色トナー16を使用した以外は実施例1と同様に比較例2の評価を行った。比較例2では、微粒子Aの処理に使用する炭化水素成分の添加量が多すぎるため、トナー粒子間の滑り性が増すことによる帯電不良の影響か、カブリやガサツキに悪影響が出た。結果を表3、4に示す。
【0163】
<比較例3>
表2に示す各色トナー17を使用した以外は実施例1と同様に比較例3の評価を行った。比較例3では、微粒子Aの処理に使用する炭化水素成分の重量平均分子量が大きすぎるため、転写中抜けや飛び散り性に特に大きな悪影響が出た。結果を表3、4に示す。
【0164】
<比較例4>
表2に示す各色トナー18を使用した以外は実施例1と同様に比較例4の評価を行った。比較例4では、微粒子Aの処理に使用する炭化水素成分の重量平均分子量が小さすぎるため、カブリやガサツキ、転写中抜けに特に大きな悪影響が出た。結果を表3、4に示す。
【0165】
<比較例5、6>
表2に示す各色トナー19、20を使用した以外は実施例1と同様に比較例5、6の評価を行った。比較例5、6では、微粒子Aの処理剤を炭化水素化合物以外に変更しているが、微粒子Aが脱離は大きくは改善されておらず、画像特性全般に影響が出た。結果を表3、4に示す。また、比較例5、6では定着性が悪化し、光沢や質感のない荒れた画像が出力された。
【0166】
<比較例7>
表2に示す各色トナー21を使用した以外は実施例1と同様に比較例7の評価を行った。比較例7では、微粒子Aのアスペクト比が大きくなることで、微粒子Aへの処理ムラによる帯電不良が起こり、画像特性全般に影響が出たが、特に静電オフセットや転写効率が悪化した。結果を表3、4に示す。
【0167】
<比較例8、9>
表2に示す各色トナー22、23を使用した以外は実施例1と同様に比較例8、9の評価を行った。比較例8、9では、トナーに離型剤が添加されていないため、微粒子Aの脱離を抑えることはできず、カブリや飛び散り、中抜け等、画像特性全般に悪影響があった。結果を表3、4に示す。なお、比較例8、9では定着不良が発生してで画像の評価が困難であったため、シリコーンオイル塗布機構を装備して評価を行った。
【0168】
【表3】

【0169】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂と離型剤を含有するトナー粒子と、微粒子Aを含有するトナーであって、
該微粒子Aは、一次粒子の個数平均粒子径が80nm以上300nm以下、
該微粒子Aのトナー粒子表面でのアスペクト比(長軸/短軸)が1.0以上1.3以下であり、
該微粒子Aは、少なくとも重量平均分子量300以上3000以下の炭化水素化合物が、該微粒子Aの原体100質量部に対して、0.1質量部以上30.0質量部以下の割合で、処理されていることを特徴とするトナー。
【請求項2】
該微粒子Aの30℃、80%RH環境に放置後の水分吸着量が、1.5質量%以上7.0質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
該微粒子Aが、炭化水素化合物及びアルコキシシラン化合物で処理されていることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
該微粒子Aは、ゾルゲル法により得られる球状の疎水性シリカであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
該離型剤が、炭化水素系ワックスであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー。

【図1】
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【図2】
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