説明

トマトの栽培方法

【課題】容易に茎を誘引することができる簡単かつ安価なトマト栽培誘引装置およびトマトの栽培方法を提供する。
【解決手段】トマトの茎Mの上方から垂れ下げて茎Mを沿わせて誘引する誘引紐10と、誘引紐10を斜めに巻きつけて支持する回転棒20と、回転棒20を茎Mの上方において回転可能に支持する支持部材30とを備えている。誘引紐10を巻き戻す方向に回転棒20を回転させることにより、茎Mの先端位置を斜め下方に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマトの栽培において茎を誘引するトマト栽培誘引装置およびトマトの茎を誘引して栽培する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トマト栽培において、5ヶ月から6ヶ月の長期間にわたり収穫を行う場合には、茎の長さが4mから5mにも達する。そこで、茎を上方から垂れ下げた誘引紐に沿わせて成長させると共に、誘引紐を上方において束ねておき、茎の成長に合わせて誘引紐を解くと共に、誘引紐の位置を横にずらして、茎の先端位置を斜め下方に移動させる栽培方法が広く行われている。しかし、この方法では、トマトの茎の1本1本について誘引紐を解いて横に移動させる作業を行わなければならず、栽培本数が増えるほどその作業にかかる手間が大きくなるという問題があった。また、手で誘引紐を解いて横に移動させる作業を行うと、作業の途中で茎が上下左右に必要以上に動いてしまい、トマトにストレスがかかり生育に悪影響を与えるという問題もあった。
【0003】
そこで、近年では、茎を沿わせた紐を機械的に操作し、茎の先端位置を斜め下方に移動させる方法が提案されている。例えば、特許文献1には、茎の上方に誘引紐を取り付けた固定桁を設けると共に、固定桁の長手方向に沿って移動可能に可動桁を設け、可動桁に取り付けたガイドローラーを経由して誘引紐を下方に垂れ下げる栽培装置が記載されている。この栽培装置によれば、最初に可動桁を誘引紐の取り付け位置とは反対の方向に移動させておき、茎の成長に応じて、可動桁を誘引紐の取り付け位置に向かって移動させることにより、茎の先端位置を容易に斜め下方に移動させることができる。
【特許文献1】特開2001−231373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された栽培装置では、茎ごとにガイドローラーを取り付けなければならないので、部品点数が多いという問題があった。また、トマトが成長してくると誘引紐にかかる重さが重くなるので、可動桁を滑らかに移動させるにはそれなりの機構が必要であるという問題があった。よって、より簡単でかつ安価な装置および方法の開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、容易に茎を誘引することができる簡単かつ安価なトマト栽培誘引装置およびトマトの栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトマト栽培誘引装置は、トマトの茎を上方から垂れ下げた個別に対応する誘引紐に沿わせて誘引するものであって、誘引紐を取り付け、間隔を開けて斜めに巻きつけて支持すると共に、誘引紐を巻き戻す方向に回転させることにより、茎の先端位置を斜め下方に移動させる回転棒と、この回転棒を茎の上方において回転可能に支持する支持部材とを備えたものである。
【0007】
本発明のトマトの栽培方法は、トマトの茎を上方から垂れ下げた個別に対応する誘引紐に沿わせて誘引する方法であって、茎の上方に、誘引紐を取り付けて間隔を開けて斜めに巻きつけた回転棒を配置し、回転棒から誘引紐を垂れ下げて茎を沿わせると共に、茎の成長に合わせて誘引紐を巻き戻す方向に回転棒を回転させ、茎の先端位置を斜め下方に移動させて茎を誘引するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のトマト栽培誘引装置によれば、回転棒に個別に対応する誘引紐を間隔を開けて斜めに巻きつけて支持するようにしたので、誘引紐を巻き戻す方向に回転棒を回転させることにより、容易に茎の先端位置を斜め下方に移動させることができる。よって、労力を削減できると共に、誘引紐を必要以上に動かさないので、トマトにかかるストレスが小さくなり、トマトを良好に栽培することができる。また、トマトが成長して誘引紐にかかる重さが重くなっても、誘引紐を巻き戻す方向に回転させるので、非常に小さな力で動かすことができる。更に、回転棒に誘引紐を斜めに巻きつけた簡単な構成なので、装置を簡素化することができると共に、費用も安価とすることができる。
【0009】
特に、誘引紐を回転棒の長手方向において取り付け位置をずらして複数取り付けるようにすれば、一度に複数の茎を誘引することができ、労力を大幅に削減することができる。
【0010】
また、回転棒の上方を押さえる上部押さえ部材を設けるようにすれば、回転棒を回転させる際に回転棒が下支え部材から外れてしまうことを防止することができる。
【0011】
更に、誘引紐を案内する案内部材と、この案内部材を回転棒の回転に応じて回転棒の長手方向に移動させ、回転棒に対して誘引紐を巻きつける移動部材とを備えるようにすれば、回転棒に誘引紐を簡単に巻きつけることができる。
【0012】
加えて、移動部材が、案内部材を移動可能に支持するガイド部材と、案内部材を引張って移動させる紐状の引張り部材と、回転棒に対して回転軸を同一として配設され、回転棒と連動して回転して引張り部材を巻き取る巻き取り部材とを備えるようにすれば、回転棒に誘引紐をより簡単に巻きつけることができる。
【0013】
更にまた、下支え部材の開放部側の端部を回転棒の長手方向に沿って山なり状とするようにすれば、または、下支え部材の少なくとも開放部側の端部をプラスチックにより構成するようにすれば、誘引紐の損傷や切断を防ぐことができる。
【0014】
加えてまた、複数の支柱と、この複数の支柱を回転棒と交わる方向において連結して固定する棒状の交差方向固定部材とを備え、下支え部材を交差方向固定部材または支柱に対して配設するようにすれば、安定して回転棒を支えることができる。特に、下支え部材を交差方向固定部材に配設するようにすれば、支柱との間の距離を自由に調節することができ、回転棒を容易に支柱から十分離れた位置に支持することができる。よって、茎を移動させる際に茎と支柱との接触を少なくすることができ、誘引作業における労力を軽減することができると共に、トマトにかかるストレスを小さくすることができる。
【0015】
更にまた、トマトの重さにより、誘引紐が巻き戻される方向に回転棒が自動的に回転することを防止する巻き戻し防止手段を備えるようにすれば、茎の先端位置を容易に調節することができる。
【0016】
加えてまた、回転棒を並列に複数配置し、複数の回転棒を同時に回転させる回転手段を備えるようにすれば、複数の回転棒を同時に操作することができ、労力をより軽減することができる。
【0017】
また、本発明のトマトの栽培方法によれば、茎の上方に、個別に対応する誘引紐を取り付けて間隔を開けて斜めに巻きつけた回転棒を配置し、回転棒から誘引紐を垂れ下げて茎を沿わせると共に、茎の成長に合わせて誘引紐を巻き戻す方向に回転棒を回転させるようにしたので、容易に茎の先端位置を斜め下方に移動させることができる。よって、労力を削減できると共に、誘引紐を必要以上に動かさないので、トマトにかかるストレスが小さくなり、トマトを良好に栽培することができる。また、トマトが成長して誘引紐にかかる重さが重くなっても、誘引紐を巻き戻す方向に回転させるので、非常に小さな力で簡単に動かすことができる。更に、装置も簡単で費用も安価とすることができる。
【0018】
特に、回転棒に長手方向において取り付け位置をずらして取り付けた複数の誘引紐を用い、各誘引紐に茎をそれぞれ沿わせるようにすれば、回転棒を回転させることにより複数の茎を同時に誘引することができ、労力を大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係るトマト栽培誘引装置の構成を表すものであり、図2は、図1に示したAから見たトマト栽培誘引装置の構成を表すものである。このトマト栽培誘引装置は、トマトを栽培する畝に沿って配設して用いるものであり、トマトの茎Mの上方から垂れ下げて茎Mを沿わせて誘引する誘引紐10と、誘引紐10を斜めに巻きつけて支持する回転棒20と、回転棒20を茎Mの上方において回転可能に支持する支持部材30とを備えている。誘引紐10は、例えば、畝に沿って植えられた複数のトマトの茎Mに個別に対応するように、畝に沿って配設された回転棒20の長手方向に対して、取り付け位置をずらして複数取り付けられる。
【0021】
図3は、図1に示した誘引紐10の1つを取り出して表すものである。誘引紐10の一端部11は、回転棒20に対して、例えば結びつけることにより、または、テープなどで貼り付けることにより固定される。誘引紐10の一端部11から他端部12に向かっては、回転棒20に沿って斜めに巻かれ、他端部12は下方に垂れ下げられて、例えばトマトの茎Mに結びつけることにより、または、クリップなどで留めることにより固定される。誘引紐10は、例えば、麻紐により構成されることが好ましい。回転棒20に取り付けて巻きつけた時に摩擦により滑りにくく、かつ、価格も安く入手しやすいからである。回転棒20から垂れ下げられた誘引紐10の長さは、例えば図4に示したように、誘引紐10を巻き戻す方向に回転棒20を回転させることにより長くなり、これにより、茎Mの成長に合わせて、茎Mの先端位置を斜め下方に移動させることができるようになっている。誘引紐10の長さは、トマトの茎Mを成長させるのに十分な長さに設定される。なお、回転棒20において各誘引紐10の斜めに巻かれている領域は、互いに重なり合ってもよい。
【0022】
回転棒20は、例えば、ステンレス製のパイプにより構成されている。また、回転棒20は、例えば図2に示したように、並列に形成された複数の畝に沿って並列に複数配設される。回転棒20の端部には、例えば、誘引紐10が巻き戻される方向に回転棒20が自動的に回転することを防止するための巻き戻し防止手段21が取付けられている。巻き戻し防止手段21としては、例えば、ウォーム歯車が好ましい。ウォーム歯車を用いれば、トマトが成長して重くなっても、トマトの重さにより誘引紐10が巻き戻されることを簡単に防止することができ、茎Mの先端位置を容易に調節することができるからである。ウォーム歯車には、例えば、回転棒20を回転させるためのハンドル22が配設されている。
【0023】
なお、巻き戻し防止手段21としては、図示しないが、例えば、回転棒12に固定紐の一端部を取り付け、誘引紐10が巻き戻される方向とは逆の方向に巻き付けて、固定紐の他端部を支持部材30などに固定するようにしてもよい。この場合、回転棒20を回転するためのハンドル22は回転棒20に対して直接配設される。
【0024】
また、図2では、各回転棒20を回転させるためのハンドル22を個別に配設する場合を示したが、複数の回転棒20について、それらを同時に回転させる回転手段を設けるようにしてもよい。図5にその一構成例を示す。この回転手段は、1つの回転棒20に回転軸を同一としてウォーム歯車23および第1の平歯車24を取り付け、第1の平歯車24に第2の平歯車25を噛み合わせて配設し、更に、第2の平歯車25と回転軸を同一として連動して回転するように第1のチェーン歯車26を配設し、第1のチェーン歯車26とチェーン27を介して連動して回転するように他の回転棒20に回転軸を同一として第2のチェーン歯車28を配設したものである。このように構成すれば、複数の回転棒20を同時に操作することができるので好ましい。また、ウォーム歯車23を用いれば、巻き戻し防止手段21としての機能も兼ね備えることができ、複数の回転棒20について巻き戻し防止手段21を共用することができるので好ましい。
【0025】
支持部材30は、例えば図1,2に示したように、回転棒20を茎Mの上方において支えるための複数の支柱31を有している。各支柱31は、回転棒20の長手後方に間隔を開けてほぼ垂直に立てられている。各支柱31には、例えば、回転棒20の長手後方において複数の支柱31を連結して互いに固定する棒状の長手後方固定部材32Aが取り付けられていることが好ましい。安定して回転棒20を支えることができるからである。また、各支柱31は、例えば、回転棒20と交わる方向においても、並列に形成された複数の畝に沿って、間隔を開けて対応するように立てられていることが好ましい。各支柱31の上方には、例えば、回転棒20と交わる方向において複数の支柱31を連結して互いに固定する棒状の交差方向固定部材32Bが取り付けられていることが好ましい。より安定して回転棒20を支えることができるからである。
【0026】
支持部材30は、また、例えば、回転棒20を載せる下支え部材33と、下支え部材33の上方に設けられ、下支え部材33との間に誘引紐10を通過させるための開放部34Aを有する上部押さえ部材34とを有していることが好ましい。
【0027】
図6は、図1に示した支持部材30の一部を拡大して表すものである。この下支え部材33は、例えば支柱31に対して配設される。下支え部材33の上部には、回転棒20を載せて支えるための凹部33Aが形成されている。下支え部材33の開放部側の端部33Bは、回転棒20の長手方向に沿って山なり状となっていることが好ましく、また、下支え部材33の少なくとも開放部側の端部33Bは、プラスチックにより構成されていることが好ましい。誘引紐10を巻き戻す際に、誘引紐10が損傷したり切断されることを防止することができるからである。
【0028】
下支え部材33の凹部33Aは支柱31から10cm以上離れた位置に設けられていることが好ましく、15cm以上、更には20cm以上離れた位置に設けるようにすればより好ましい。茎Mを移動させる際に、茎Mと支柱31との接触を少なくすることができ、誘引作業における労力を軽減することができると共に、トマトにかかるストレスを小さくすることができるからである。
【0029】
上部押さえ部材34は、回転棒20の上方を押さえるためのものであり、下支え部材33の上方において凹部33Aの少なくとも一部を覆うように配設されている。このように上部押さえ部材34を設けるようにすれば、回転棒20を回転させる際に回転棒20が下支え部材33から外れてしまうことを防止することができるので好ましい。上部押さえ部材34は、例えば、下支え部材33に対して配設され、ねじ34Bなどにより着脱可能とされていることが好ましい。回転棒20を容易に配設することができるからである。また、上部押さえ部材34は、例えば図6に示したように、回転棒20に沿って上方に突出した湾曲状とされていてもよいが、直線状であってもよい。
【0030】
図7は、下支え部材33および上部押さえ部材34の他の構成例を表すものである。この下支え部材33は、例えば、交差方向固定部材32Bに対して配設されるように構成されたことを除き、他は図6に示した下支え部材33と同様の構成を有している。このように構成すれば、下支え部材33と支柱31との間の距離を自由に調節することができ、回転棒20を容易に支柱31から十分に離れた位置に支持することができるので好ましい。また、上部押さえ部材34は、例えば、下支え部材33に対して配設され、配設位置を中心として回転移動可能とされたことを除き、他は図6に示した上部押さえ部材34と同様の構成を有している。このように構成すれば、回転棒20を容易かつ簡単に配設することができるので好ましい。
【0031】
このトマト栽培誘引装置は、また、回転棒20に誘引紐10を斜めに巻きつけるための巻き付け部材40を備えていることが好ましい。図8は、巻き付け部材40の構成を表すものである。巻き付け部材40は、例えば、回転棒20に取り付けた誘引紐10を案内する案内部材41と、案内部材41を回転棒20の回転に応じて回転棒20の長手方向に移動させ、回転棒20に対して誘引紐10を斜めに巻きつける移動部材42とを備えている。
【0032】
案内部材41は、例えば、回転棒20の下方に移動可能に配置され、更に、着脱可能とされていることが好ましい。回転棒20に誘引紐10を巻きつけた後は不要であり、取り外すことができれば、トマトの栽培管理時に誘引紐10が引っ掛るなどの支障が発生することを回避できると共に、複数の回転棒20に誘引紐10を巻きつける場合に、1つの案内部材41で対応することができるからである。案内部材41は、例えば、棒状部材41Aに、複数の誘引紐10を個別に案内する複数の個別案内部41Bが間隔を開けて設けられた構造を有している。個別案内部41Aは、例えば、誘引紐10を引っ掛けて案内するように構成され、L字状、U字状、V字状、あるいはリング状などどのような形状でもよい。各個別案内部41Bの間隔は、トマトの苗を植える間隔に対応して設定される。
【0033】
移動部材42は、案内部材41を移動可能に支持するガイド部材42Aと、案内部材41を引張って移動させる紐状の引張り部材42Bとを有している。ガイド部材42Aは、例えば、回転棒20の下方において回転棒20の長手方向に延長して設けられる。ガイド部材42Aは着脱可能とされることが好ましく、例えば、支持部材30に取り付け部材42Cを着脱可能に配設し、この取り付け部材42Cに対して着脱可能に取り付けるようにすることが好ましい。案内部材41と同様に、回転棒20に誘引紐10を巻きつけた後は不要であり、取り外すことができれば、トマトの栽培管理時に誘引紐10が引っ掛るなどの支障が発生することを回避できると共に、複数の回転棒20に誘引紐10を巻きつける場合に部品を共用することができるからである。
【0034】
引張り部材42Bは、一端部が案内部材41に取り付けられ、他端部は、回転棒20に配設された巻き取り部材42Dに取り付けられる。巻き取り部材42Dは、回転棒20と回転軸を同一とし、回転棒20と連動して回転するように設けられている。これにより、例えば図9に示したように、回転棒20を回転させると巻き取り部材42Dが回転して引張り部材42Bを巻き取り、案内部材41を移動させて、回転棒20に誘引紐10を簡単に巻きつけることができるようになっている。なお、巻き取り部材42Dの直径は、誘引紐10を巻きつける間隔を粗としたい場合には大きく、密にしたい場合には小さく設定される。引張り部材42Bおよび巻き取り部材42Dは、案内部材41、ガイド部材42Aおよび取り付け部材42Cと同様に、着脱可能とされていることが好ましい。
【0035】
このような構成を有するトマト栽培誘引装置を用い、次のようにしてトマトを栽培する。このトマトの栽培方法では、まず、例えば図8に示したように、トマトを栽培する畝に沿って支持部材30および回転棒20を配設し、トマトの苗を植える間隔に対応して、回転棒20に長手方向において間隔を開けて複数の誘引紐10を取り付ける。次いで、支持部材30にガイド部材42Aおよび案内部材41を配設し、案内部材41の個別案内部41Bに誘引紐10を個別に引っ掛ける。続いて、例えば図9に示したように、回転棒20を回転させると共に、巻き取り部材42Dを連動して回転させ、引張り部材42Bを巻き取って、案内部材41をガイド部材42Aに沿って移動させる。これにより、回転棒20に対して誘引紐10が斜めに巻きつけられる。その際、誘引紐10の他端部は地面につかないように必要に応じて束ねておき、錘を付けることが好ましい。誘引紐10をより容易に巻きつけることができるからである。
【0036】
回転棒20に誘引紐10を巻きつけた後、例えば図3に示したように、回転棒20から誘引紐10の他端部を垂れ下げて、誘引紐10の他端部を回転棒20の下方に植えたトマトの茎Mに個別に取り付ける。次いで、トマトの茎Mを誘引紐10に巻きつけることにより、または、クリップなどで留めることにより沿わせる。なお、巻き付け部材40は、必要に応じて取り外してもよい。続いて、例えば図4に示したように、茎Mの成長に応じて、適宜、茎Mを誘引紐10に巻きつけることにより、または、クリップなどで留めることにより沿わせると共に、誘引紐10を巻き戻す方向に回転棒20を回転させ、茎Mの先端位置を斜め下方に移動させる。これにより、複数の茎Mが同時に横方向に誘引される。
【0037】
このように、本実施の形態によれば、回転棒20に誘引紐10を斜めに巻きつけて支持し、誘引紐10を巻き戻す方向に回転棒20を回転させるようにしたので、容易に茎Mの先端位置を斜め下方に移動させることができる。よって、労力を削減できると共に、誘引紐10を必要以上に動かさないので、トマトにかかるストレスが小さくなり、トマトを良好に栽培することができる。また、トマトが成長して誘引紐10にかかる重さが重くなっても、誘引紐10を巻き戻す方向に回転させるので、非常に小さな力で動かすことができる。更に、回転棒20に誘引紐10を斜めに巻きつけた簡単な構成なので、装置を簡素化することができると共に、費用も安価とすることができる。
【0038】
特に、複数のトマトの茎Mに対応するように、複数の誘引紐10を回転棒20の長手方向において取り付け位置をずらして取り付けるようにすれば、一度に複数の茎Mを誘引することができ、労力を大幅に削減することができる。
【0039】
また、下支え部材33の上方に、回転棒20の上方を押さえる上部押さえ部材34を設けるようにすれば、回転棒20を回転させる際に回転棒20が下支え部材33から外れてしまうことを防止することができる。
【0040】
更に、誘引紐10を案内する案内部材41と、この案内部材41を回転棒20の回転に応じて回転棒20の長手方向に移動させ、回転棒20に対して誘引紐10を巻きつける移動部材42とを備えるようにすれば、回転棒20に誘引紐10を簡単に巻きつけることができる。また、案内部材41または移動部材42を着脱可能とするようにすれば、回転棒20に誘引紐10を巻きつける時に取り付け、巻きつけた後は取り外すことができる。よって、トマトの栽培管理時に誘引紐10が引っ掛るなどの支障が発生することを回避できると共に、複数の回転棒20に誘引紐10を巻きつける場合に部品を共用することができる。
【0041】
加えて、移動部材42が、案内部材41を移動可能に支持するガイド部材42Aと、案内部材41を引張って移動させる紐状の引張り部材42Bと、回転棒20に対して回転軸を同一として配設され、回転棒20と連動して回転して引張り部材42Bを巻き取る巻き取り部材42Dとを備えるようにすれば、回転棒20に誘引紐10をより簡単に巻きつけることができる。
【0042】
更にまた、下支え部材33の開放部側の端部33Bを回転棒20の長手方向に向かって山なり状とするようにすれば、または、下支え部材33の少なくとも開放部側の端部33Bをプラスチックにより構成するようにすれば、誘引紐の損傷や切断を防ぐことができる。
【0043】
加えてまた、複数の支柱31と、この複数の支柱31を回転棒20と交わる方向において連結して固定する棒状の交差方向固定部材32Bとを備え、下支え部材33を交差方向固定部材32Bまたは支柱31に対して配設するようにすれば、安定して回転棒20を支えることができる。特に、下支え部材33を交差方向固定部材32Bに配設するようにすれば、支柱31との間の距離を自由に調節することができ、回転棒20を容易に支柱31から十分離れた位置に支持することができる。よって、茎Mを移動させる際に茎Mと支柱31との接触を少なくすることができ、誘引作業における労力を軽減することができると共に、トマトにかかるストレスを小さくすることができる。
【0044】
更にまた、トマトの重さにより、誘引紐10が巻き戻される方向に回転棒20が自動的に回転することを防止する巻き戻し防止手段を備えるようにすれば、茎Mの先端位置を容易に調節することができる。
【0045】
加えてまた、回転棒20を並列に複数配置し、複数の回転棒20を同時に回転させる回転手段を備えるようにすれば、複数の回転棒20を同時に操作することができ、労力をより軽減することができる。
【0046】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、下支え部材33に上部押さえ部材34を設けるようにしたが、上部押さえ部材34は設けられていなくてもよい。また、上記実施の形態では、上部押さえ部材34を着脱可能とする場合について説明したが、着脱可能とされていなくてもよい。例えば、上部押さえ部材34を左右または上方に動かすことにより位置を移動させることができるようにしてもよい。また、上部押さえ部材34を固定し、下支え部材33と上部押さえ部材34との間に横から回転棒20を挿入するようにしてもよい。
【0047】
更に、上記実施の形態では、上部押さえ部材34を下支え部材33に対して配設する場合について説明したが、下支え部材33との間に誘引紐10を通過させるための開放部34Aを有し、下支え部材33の上方において凹部33Aの少なくとも一部を覆うように配設されていれば、下支え部材33に対して配設されていなくてもよい。例えば、支柱31または交差方向固定部材32Bに配設するようにしてもよく、また、交差方向固定部材32Bを直接上部押さえ部材34として利用してもよい。
【0048】
更にまた、上記実施の形態では、回転棒20に誘引紐10を斜めに巻きつけるための巻き付け部材40を備える場合について説明したが、巻き付け部材を用いることなく、手で巻きつけるようにしてもよい。また、巻き付け部材40は他の構成を有するようにしてもよい。例えば、引張り部材42Bを巻き取り部材42Dで巻き取るのではなく、手で引張るようにしてもよく、また、回転棒20と連動させることなく、他の部材により巻き取るようにしてもよい。更に、巻き付け部材40を着脱可能としたが、着脱可能とされていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
トマトの栽培において用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態に係るトマト栽培誘引装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示したAから見たトマト栽培誘引装置の構成を表す図である。
【図3】図1に示したトマト栽培誘引装置のうち誘引紐の1つを取り出して表す図である。
【図4】図1に示したトマト栽培誘引装置のうち誘引紐の1つを取り出して表す他の図である。
【図5】図1に示したトマト栽培誘引装置の回転手段を表す構成図である。
【図6】図1に示したトマト栽培誘引装置のうち支持部材の一部を拡大して表す斜視図である。
【図7】他の支持部材の一部を拡大して表す斜視図である。
【図8】図1に示したトマト栽培誘引装置の巻き付け部材を表す正面図である。
【図9】図1に示したトマト栽培誘引装置の巻き付け部材を表す他の正面図である。
【符号の説明】
【0051】
10…誘引紐、20…回転棒、21…巻き戻し防止手段、22…ハンドル、23…ウォーム歯車、24…第1の平歯車、25…第2の平歯車、26…第1のチェーン歯車、27…チェーン、28…第2のチェーン歯車、30…支持部材、31…支柱、32A…長手後方固定部材、32B…交差方向固定部材、33…下支え部材、33A…凹部、34…上部押さえ部材、34A…開放部、40…巻き付け部材、41…案内部材、41A…棒状部材、41B…個別案内部、42…移動部材、42A…ガイド部材、42B…引張り部材、42C…取り付け部材、42D…巻き取り部材、M…茎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマトの茎を上方から垂れ下げた個別に対応する誘引紐に沿わせて誘引するトマト栽培誘引装置であって、
前記誘引紐を取り付け、間隔を開けて斜めに巻きつけて支持すると共に、前記誘引紐を巻き戻す方向に回転させることにより、前記茎の先端位置を斜め下方に移動させる回転棒と、
この回転棒を前記茎の上方において回転可能に支持する支持部材と
を備えたことを特徴とするトマト栽培誘引装置。
【請求項2】
前記回転棒には、前記誘引紐が長手方向において取り付け位置をずらして複数取り付けられる
ことを特徴とする請求項1記載のトマト栽培誘引装置。
【請求項3】
前記支持部材は、
前記回転棒を載せる凹部を有する下支え部材と、
この下支え部材の上方において前記凹部の少なくとも一部を覆い、かつ、前記下支え部材との間に前記誘引紐を通過させるための開放部を有するように設けられ、前記回転棒の上方を押さえる上部押さえ部材と
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のトマト栽培誘引装置。
【請求項4】
更に、
前記回転棒の下方に移動可能に配置され、前記回転棒に取り付けられた前記誘引紐を案内する案内部材と、
この案内部材を前記回転棒の回転に応じて前記回転棒の長手方向に移動させ、前記回転棒に対して前記誘引紐を斜めに巻きつける移動部材と
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載のトマト栽培誘引装置。
【請求項5】
前記移動部材は、
前記回転棒の下方において前記回転棒の長手方向に延長して配置され、前記案内部材を移動可能に支持するガイド部材と、
前記案内部材に一端部が取り付けられ、前記案内部材を引張って移動させる紐状の引張り部材と、
前記回転棒に対して回転軸を同一として配設され、前記引張り部材の他端部が取り付けられると共に、前記回転棒と連動して回転して前記引張り部材を巻き取る巻き取り部材と
を備えたことを特徴とする請求項4記載のトマト栽培誘引装置。
【請求項6】
前記下支え部材は、前記開放部側の端部が、前記回転棒の長手方向に沿って山なり状となっている
ことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1に記載のトマト栽培誘引装置。
【請求項7】
前記下支え部材は、少なくとも前記開放部側の端部がプラスチックにより構成された
ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1に記載のトマト栽培誘引装置。
【請求項8】
前記支持部材は、
前記回転棒の長手方向において間隔を開け、かつ、前記回転棒と交わる方向において間隔を開けて対応して設けられる複数の支柱と、
この複数の支柱を回転棒と交わる方向において連結して固定する棒状の交差方向固定部材とを備え、
前記下支え部材は、前記交差方向固定部材または前記支柱に対して配設される
ことを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか1に記載のトマト栽培誘引装置。
【請求項9】
前記回転棒には、トマトの重さにより、前記誘引紐が巻き戻される方向に前記回転棒が自動的に回転することを防止する巻き戻し防止手段が取り付けられた
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1に記載のトマト栽培誘引装置。
【請求項10】
前記回転棒が並列に複数配置され、
前記複数の回転棒を同時に回転させる回転手段を備えた
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1に記載のトマト栽培誘引装置。
【請求項11】
トマトの茎を上方から垂れ下げた個別に対応する誘引紐に沿わせて誘引するトマトの栽培方法であって、
茎の上方に、誘引紐を取り付けて間隔を開けて斜めに巻きつけた回転棒を配置し、回転棒から誘引紐を垂れ下げて茎を沿わせると共に、茎の成長に合わせて誘引紐を巻き戻す方向に回転棒を回転させ、茎の先端位置を斜め下方に移動させて茎を誘引する
ことを特徴とするトマトの栽培方法。
【請求項12】
回転棒に長手方向において取り付け位置をずらして取り付けた複数の誘引紐を用い、各誘引紐に茎を個別にそれぞれ沿わせて、回転棒を回転させることにより複数の茎を同時に誘引する
ことを特徴とする請求項11記載のトマトの栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−55923(P2009−55923A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287107(P2008−287107)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【分割の表示】特願2008−204748(P2008−204748)の分割
【原出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(507265948)
【Fターム(参考)】