説明

トライボロジー装置を使用した食品の口当たり特性の評価方法

本発明は、新規トライボロジー装置を使用した、口当たりに関して食品を区別する方法、食品の口当たりを改善することができる組成を同定する方法、および食品の口当たり特性を予測する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規トライボロジー装置を使用した、口当たりに関して食品を区別する方法、食品の口当たりを改善することができる組成を同定する方法、および食品の口当たり特性を予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口当たりは、食料品の全体的なテクスチャーを表すために使用される口腔内の食料品の物理的および化学的な相互作用の1つである。消費者が受け入れるための重要な要因の1つであり、したがって食品産業にとって最も重要な要因の1つとなる。しかし口当たりの感覚は複雑であり、単純な物理現象によって説明することはできない。
【0003】
たとえば、「濃さ」は、バルクレオロジー技術(bulk rheological technique)を使用して、粘度によって(非特許文献1;非特許文献2)および剪断−応力によって(非特許文献3)、ある程度でのみ説明できる。このような知見は、食品と唾液との相互作用、および口蓋に向けての舌の圧搾したり圧縮したりする動きなどの食品の摂取中の人間の口当たりの知覚に寄与する複雑な過程のいくつかの側面は、レオロジー測定によって適切に評価されていないという事実に起因するのであろう。
【0004】
食料品の別の重要な口当たり特性は、感覚性知覚の「クリーミーな口当たり」または「クリーミーさ」(creaminess)であり、これは、滑らかさ、濃さ、および特定の風味などの複数の食品の性質に関連することが報告されている(非特許文献4;非特許文献2、上掲)。クリーミーさは、(i)中から高の粘度、(ii)非ニュートン流動、(iii)ある程度の脂肪の存在、および(iv)その他の要因などの数種類の要因の組み合わせに関係していると思われる(非特許文献5)。食料品のクリーミーさに影響を与えると考えられている他の要因としては、特に、唾液の存在、食品−粘膜界面における粘度、および脂肪滴の分布が上げられる(非特許文献6;非特許文献7)。
【0005】
最近になって、異なる機器技術を使用して測定される食料品の潤滑能力または「潤滑性」が、つるつる感(slipperiness)などの口当たり感覚に関連することが分かった(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献6、上掲)。食料品の潤滑挙動は、たとえば、トライボロジー技術によって測定することができ(非特許文献9、上掲)、それによって、2つの表面の間の流体の剪断によって生じる運動に対する摩擦抵抗などの相対運動における相互作用表面のパラメーターを求めることが可能となる。食品の潤滑挙動は、標準的なトライボロジー装置、たとえばピンオンディスク設定またはボールオンディスク設定を使用して一般に測定される(非特許文献9、上掲);非特許文献10)。
【0006】
トライボロジー測定は、舌と口蓋との間で起こる食品を摩擦し圧搾する動作を伴うという利点を有し、これらはレオロジーでは測定されない。これらの摩擦および圧搾の運動では摩擦力が発生し、食品−唾液混合物がその潤滑剤として機能する。口による摩擦は、Stribeck曲線、すなわち摺動速度の関数として測定される摩擦因子を使用して記述することができ、これによって、境界領域または混合領域で、少なくとも部分的に互いに接触する食品材料の摩擦が記述される(非特許文献10、上掲)。
【0007】
潤滑試験の非常に重要な要素の1つは、測定面の性質である。過去の研究では、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)およびジルコニア(非特許文献11)、あるいはケイ素ゴムに対して鋼(非特許文献9、上掲)が使用されてきた。しかし、これらの表面は非常に平滑であり、口の口腔組織の性質を厳密には模倣していなかった(非特許文献10、上掲)。したがって、他の研究では、食品の摩擦係数は、口蓋に相当する比較的硬質のボール(鋼またはPCTFE)と、舌を模倣している明確に画定された表面構造を有するシリコーン表面とを使用して求められた(非特許文献12)。
【0008】
食品の口当たり特性を評価するために広範な研究が行われたにもかかわらず、現在の機器測定方法では、食品系の口当たりの部分的な状況が得られるのみである。この理由のため、食料品の特性は、現在でも、専門家パネルによって特定の食品の画定された特性を採点することによって評価されている。しかし、これらの種類の官能調査は、非常に時間がかかり、広範囲のばらつきが生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0081038A1号明細書
【特許文献2】米国特許第6,571,610B1号明細書
【特許文献3】米国特許第6,499,336B1号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Cutler et al.,J.Texture Stud.14:377−395(1983)
【非特許文献2】de Wijk et al.,J.Food Qual.Pref.14:305−317(2003)
【非特許文献3】Terpstra et al.,J.Texture Stud.36:213−233(2005)
【非特許文献4】Kokini,J.,J.Food Eng.6:51−81(1987)
【非特許文献5】Food Texture and Viscosity,2nd ed.,AP,San Diego,p.317(2002)中のBourne,M.,Correlation between physical measurements and sensory assessments of texture and viscosity
【非特許文献6】Lucas et al.,J.Texture Stud.35:159−170(2004)
【非特許文献7】Richardson et al.,J.Sensory Stud.8:133−143(1993)
【非特許文献8】de Wijk et al.,Food Qual.Prefer.16:121−129(2005)
【非特許文献9】Malone et al.,Food Hydrocolloids 17:763−773(2003)
【非特許文献10】Dresselhuis et al.,Food Hydrocolloids 22:323−335(2008)
【非特許文献11】Lee et al.,Tribology Letters 16:239−249(2004)
【非特許文献12】Ranc et al.,Tribol.Internat.39:1518−1526(2006)
【非特許文献13】Lee et al.,J.M.Food Science 67:2712−2717(2002)
【非特許文献14】Lee et al.,Tribol.Lett.16:239−249(2004)
【非特許文献15】Luengo et al.(1997)
【非特許文献16】Kappes,S.M.et al.2006,Food Science,71(9):S597−S602
【非特許文献17】Akhtar et al.(2005)
【非特許文献18】Dickinson et al.(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的の1つは、単純で、費用対効果が高く、繰り返し可能で、再現性のある方法での食品の口当たり特性の物理的評価方法を提供することである。
【0012】
本発明によると、この目的は、新規トライボロジー装置を使用した本明細書で後述する方法によって達成される。このトライボロジー装置は、口当たりの官能特性と統計的に相関を取ることができる高感度な方法でトライポロジーデータを生成することができる。これによって、特定の口当たり特性を示す可能性を有する食料品のみが官能試験への合格が必要となるので、食料品の開発者は費用のかかる官能試験の量を大幅に減少させることができる。さらに、本発明の新規トライボロジー装置を使用した口当たり特性の機器による評価は、優れた反復性、高い再現性、および容易な操作性を示す。
【0013】
特に、新規トライボロジー装置を使用する本発明の方法によって、食料品の開発者が、新しく開発された食料品の高処理能力のスクリーニングを行い、食料品開発を大きく促進する可能性がもたらされる。具体的には、本発明の方法によって、食品処方者(food formulator)が組成、たとえば食品成分および食品成分系を同定することができ、それによって特定のおよび所望の口当たり感覚を有する食品を提供することが可能となる。このことは、特に、ダイエット飲料、ライト飲料、または低脂肪食品などのカロリー減少に関して成分を除去または変更するために十分な口当たり感覚が不足している食品の場合に特に適切となる。
【0014】
要約すると、本発明は、官能分析を補完し、所望の健康および栄養に関するプロファイルに関してだけでなく、所望の口当たりにも関して成分系を調節する製品開発者の能力を大幅に向上、促進、および加速する、新規トライボロジー装置を使用したトライボロジー測定による食品の口当たり特性を評価するための機器方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によると、口当たりに関して食品を区別する方法であって、(i)本発明のトライボロジー装置、またはそのようなトライボロジー装置を含む本発明のレオメーターを使用して、摺動速度の関数として第1の食品の摩擦因子を測定することによって、第1のトライボロジープロファイルを記録するステップと、(ii)本発明のトライボロジー装置、またはそのようなトライボロジー装置を含む本発明のレオメーターを使用して、摺動速度の関数として第2の食品の摩擦因子を測定することによって、第2のトライボロジープロファイルを記録するステップと、(iii)第1のトライボロジープロファイルを第2のトライボロジープロファイルと比較するステップとを含む方法が提供される。
【0016】
食品サンプルの口当たりに関連するトライボロジー特性を評価するために本発明において使用されるトライボロジー装置(以下では本発明のトライボロジー装置と呼ぶ場合もある)は、モーターと測定システムとを含む。測定システムは、少なくとも1つの第1の測定面を有する第1の測定要素と、第1の測定要素とは分離しており少なくとも1つの第2の測定面を有する少なくとも1つの第2の測定要素とを含み、測定要素の少なくとも1つがモーターに接続されている。少なくとも1つの第1の測定面と少なくとも1つの第2の測定面とによって、少なくとも1つの接触測定面が画定され、そこに食品サンプルが配置され、測定中に剪断される。前記少なくとも1つの接触測定面の幅は、第1の測定要素と少なくとも1つの第2の測定要素とを互いに対して移動させることによって調節可能であり、すなわち測定面間の接触は、少なくとも1つの第1の測定要素と少なくとも1つの下部測定要素とを互いに対して移動させることによって実現される。
【0017】
本発明のトライボロジー装置は、少なくとも1つの第2の測定面、少なくとも1つの第1の測定面、または少なくとも1つの第2の測定面と少なくとも1つの第1の測定面との両方が、本明細書において後に規定される特定の熱可塑性エラストマーで構成されることを特徴とし、予期せぬことにそれによって高感度の摩擦因子応答が得られることが分かった。結果として、本発明のトライボロジー装置は、バルクレオロジーによっては十分に区別されないサンプル間でさえも容易に区別することができる。言い換えると、予期せぬことに本発明のトライボロジー装置は、バルクレオロジー測定と比較すると、異なる食品サンプル間をはるかに首尾良く区別できることが分かった。後述するように、トライボロジー測定された食料品の摩擦および潤滑の性質を、食料品の官能特性と相関させることができる。したがって、本発明のトライボロジー装置を使用して記録されたトライボロジープロファイルによって、食料品を、それらの官能口当たり特性に関して区別することができる。
【0018】
本発明における使用に適したトライボロジー装置の好ましい一実施形態は、モーター駆動シャフトと測定システムとを含むトライボロジー装置である。測定システムは、モーター駆動シャフトに接続された上部測定要素と、上部測定要素の下に離れて配置された下部測定要素とからなり、下部測定要素は好ましくは固定される。上部測定要素は第1の測定面を有し、下部測定要素は少なくとも1つの第2の測定面を有し、第1および第2の測定面によって接触測定面が画定される。前記接触測定面の幅は、上部測定要素と下部測定要素とを互いに対して移動させることによって調節可能であり、すなわち測定面間の接触は、上部測定要素と下部測定要素とを互いに対して移動させることによって実現される。測定中、試験されるサンプルは、接触測定面内に配置され、第1および第2の測定面の間で剪断されることで、測定可能な摩擦力が発生する。
【0019】
この好ましい実施形態によるトライボロジー装置は、少なくとも1つの測定面が、本明細書において以下に規定される特定の熱可塑性エラストマーで構成されることも特徴とする。より具体的には、下部測定要素の少なくとも1つの第2の測定面、上部測定要素の第1の測定面、または下部測定要素の少なくとも1つの第2の測定面と上部測定要素の第1の測定面との両方が、本明細書において以下に規定する熱可塑性エラストマーで構成される。
【0020】
本発明によると、本発明における使用に適した熱可塑性エラストマーは、10%(w/w)ショ糖水溶液とヒマワリ油との間で0.2を超えるデルタ摩擦因子を有する熱可塑性エラストマーである。好ましくは、デルタ摩擦は0.4を超え、より好ましくは0.6を超える。このデルタ摩擦因子は、20mm/s未満、好ましくは0.4〜20mm/sの範囲内の任意の特定の摺動速度で生じる、10%(w/w)ショ糖溶液の摩擦因子と、ヒマワリ油の摩擦因子との間の最大差として定義される。これは、たとえば図4に示されており、ここでΔμは、10%(w/w)ショ糖溶液の摩擦因子からヒマワリ油の摩擦因子を減じたものとして定義され、Δμmaxは、摺動速度0.4および20mm/sの範囲内のあらゆる特定の摺動速度において発生するΔμの最大値として定義される。
【0021】
好ましくは、本発明のトライボロジー装置中に使用される熱可塑性エラストマーは、ショアA硬度が25〜75、好ましくは30〜65、より好ましくは35〜60となる。この熱可塑性ポリマーの引裂強度は、好ましくは2〜12N/mm、より好ましくは4〜12N/mm、さらにより好ましくは3〜10N/mm、最も好ましくは6〜10N/mmである。熱可塑性エラストマーの別の好ましい性質は、破断時伸びが500〜900%、好ましくは550〜850%およびより好ましくは575〜820%である。さらに、熱可塑性エラストマーは好ましくは破断時引裂伝播が2〜35N/mm、より好ましくは8〜35N/mm、さらにより好ましくは8〜30N/mm、最も好ましくは15〜30N/mmとなる。
【0022】
好ましい一実施形態においては、使用される熱可塑性エラストマーは以下の性質を示す:ショアAが50、引裂強度が7.7N/mm、破断時伸びが576%、破断時引裂伝播が24.8N/mm。別の好ましい一実施形態においては、熱可塑性エラストマーは以下の性質を示す:ショアAが59、引裂強度が10N/mm、破断時伸びが800%、破断時引裂伝播が16N/mm。
【0023】
さらに、本発明において使用される熱可塑性エラストマーは、最大250mm/sの摺動速度において測定要素に固定された状態で維持され、機械的に安定であるべきであり、すなわち測定要素の回転によって腐食や摩耗が生じるべきではない。好適には、化学的にも安定であり、すなわち試験されるサンプル、特に油および酸などの食品成分に対して不活性である。さらに、熱可塑性エラストマーの測定面は好ましくは平滑であるが、所望する場合または必要な場合には、粗面を有する熱可塑性エラストマーを使用することもでき、それによって摩擦信号が増加する。表面は、精密に制御された地形的特徴となるように設計することができる。たとえば、20〜250μm、好ましくは50〜100μmの高さを有する「柱」の複数の明確に画定された「丘」を示すことができる。さらに、本発明内での使用に適した熱可塑性エラストマーは、好ましくは滑りやねじれが生じず、この滑りやねじれは、トライボロジー試験中に信号の不連続性(すなわちStribeck曲線の急激な増加又は減少)が生じたり、クロスオーバー効果(すなわち高摺動速度においてヒマワリ油の場合の方が10%(w/w)ショ糖の場合よりも摩擦が大きい)が生じたりする原因となる。当業者であれば、前述の要因を考慮し添付の実施例を考慮した本発明における使用に適切な熱可塑性エラストマーを選択することができる。
【0024】
本発明における使用に特に好適な熱可塑性エラストマーは、水素化またはスチレンブロックコポリマー(HSBC)を主成分とし、特に、熱可塑性ポリスチレン末端ブロックと、たとえば、エチレン−ブチレンまたはエチレン−プロピレンの弾性中間ブロックとで構成される熱可塑性エラストマーである。このような水素化スチレンブロックコポリマーの具体例としては、水素化スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン/エチレン−ブチレン/スチレン(SEBS)、スチレン/エチレン/スチレンブロックコポリマー(SES)、スチレン/エチレン−プロピレン/スチレンブロックコポリマー(SEPS)、水素化スチレン/イソプレンブロック/スチレンブロックコポリマー(SIS)などが挙げられる。
【0025】
以下に、本発明において使用されるトライボロジー装置を、記載のトライボロジー装置の好ましい実施形態を参照しながらさらに説明する。しかし、その説明は、少なくとも1つの第1の測定面と少なくとも1つの第2の測定面とを有する記載のトライボロジー装置の実施形態にも適用される。特に、トライボロジー装置の好ましい実施形態の「上部測定要素」に対するあらゆる言及は、前述のトライボロジー装置の他の実施形態の「第1の測定要素」に対しても言及されるものと理解すべきであり、トライボロジー装置の好ましい実施形態の「下部測定要素」に対するあらゆる言及は、前述のトライボロジー装置の他の実施形態の「第2の測定要素」に対しても言及されると理解すべきである。
【0026】
接触測定面の幅を制御する垂直力を調節するために、上部測定要素または下部測定要素の少なくとも1つは、持ち上げ装置によってモーター駆動シャフトと同軸方向に移動する。好ましくは、前記持ち上げ装置によって上部測定要素を上昇および下降させることができる。サンプルを接触測定面内に配置した後、上部および下部測定要素を、1〜10N、好ましくは2〜4Nの垂直荷重となるように互いに対して移動させる。
【0027】
さらに、接触測定面の内側のサンプルの温度が均一であることが、摩擦係数などのトライボロジー特性の測定に重要となりうるので、本発明のトライボロジー装置は、好ましくは、第1または第2の測定面の少なくとも1つを加熱するための少なくとも1つの加熱要素を含む。好ましくは、加熱要素は、下部測定要素の下および/または上部に配置されたペルチェ素子である。さらに、加熱要素は、断熱の理由で、ペルチェフードなどのフードによって少なくとも部分的に取り囲むことができる。
【0028】
上部測定要素が接続されるシャフトは、モーターによって回転し、典型的には案内軸受内に取り付けられる。好ましくは本発明のトライボロジー装置は、回転数および/または位相位置を測定する要素を有し、これを供給パラメーター、特に電流消費とともに使用することで、摩擦力を計算することができる。測定値は、モーターの供給パラメーターを検知し、接触測定面の幅を設定し、好適な記録および表示機器を含む制御ユニットまたは評価ユニットにおいて評価することができる。
【0029】
本発明によると、試験されるサンプルは、それぞれ食品、食品サンプル、または食料品である。単独または他の名詞と組み合わせてのいずれかで本明細書において使用される用語「食品」は、動物または人間による摂取が意図された飲料などのあらゆる食料品を含んでいる。本発明と関連して特に適切である食品の例としては、チョコレート、特にライトチョコレート(light chocolate)、炭酸飲料およびコーラ飲料、低カロリー飲料、ライトビールなどのライトカロリー(light caloric)飲料、乳製飲料などの栄養飲料などの飲料、ドレッシング、ソース、スプレッド、冷菓ミックス、ベビーフードおよびスープおよびソースなどの濃厚製品、ならびに油、水溶性繊維、甘味料、タンパク質、ハイドロコロイドなどの食品処方用の成分が挙げられる。
【0030】
好ましい一実施形態においては、上部測定要素は、ボール型または半球体などの少なくとも部分的な球体であり、たとえば、取り付け手段によってモーター駆動シャフトに接続される。上部測定要素に適した材料の選択は、下部測定要素と同じ要因に依存し、すなわち化学的および物理的安定性、高い摩擦感度(すなわち前述の定義の最大摩擦因子差)、ならびに前述のような滑りとねじれまたはクロスオーバー効果とが存在しないことに依存する。平滑または粗い第1の測定面を有することもできる。
【0031】
好ましくは、上部測定要素はステンレス鋼でできている。しかし、ステンレス鋼を腐食する可能性のあるサンプルの場合、熱可塑性エラストマーなどの別の不活性材料でできていてよい。熱可塑性エラストマーが上部測定要素の材料として使用される場合、平滑または粗い測定面を有するものなど、本明細書で前述の規定の熱可塑性エラストマーを使用することができる。言い換えると、少なくとも1つの第2の測定面は、好ましくは本明細書において定義される熱可塑性エラストマーでできており、上部測定要素または第1の測定面のそれぞれが、好ましくはステンレス鋼(またはあらゆる他の適した材料)でできているか、またはその逆である。さらに、第1の測定面および少なくとも1つの第2の測定面の両方が本明細書で前述の規定の熱可塑性エラストマーでできている場合もある。
【0032】
別の好ましい一実施形態においては、下部測定要素は、支持部材と、その上に支持された、本明細書に記載の熱可塑性エラストマーで構成される1つ以上の支持体とを含む。1つ以上の支持体のそれぞれは、上部測定要素の第1の測定面に面する第2の測定面を有する。測定中、サンプルは、上部測定要素の第1の表面と、1つ以上の支持体のそれぞれの上に設けられる第2の測定面との間で剪断される。典型的には、1つ以上の支持体は、上部測定要素に向かう方向で支持部材から突出している。したがって、支持体の数に依存して、下部測定要素にはn個の点および/またはn個の領域の接触測定形状が設けられ、ここでnは支持体の数である。
【0033】
当業者に周知の手段によって、たとえば、上部測定要素に面する支持部材形成した溝の中に支持体を取り付けることによって、接着剤によって、または支持部材に支持体をコーティングすることによって、1つ以上の支持体が支持部材に永続的または取り外し可能に取り付けられる。好都合には、たとえば上部測定要素に面する支持部材の表面内に形成した溝の中に1つ以上の支持体を取り付けることによって、1つ以上の支持体が支持部材に取り外し可能に固定される。
【0034】
好ましくは、1つ以上の支持体は、板またはストリップの形態で存在し、その表面が、上部測定要素の第1の測定面とともに接触測定面を画定する。好ましくは、エラストマーのストリップが幅0.6mmおよび長さ1.6mmの形状に切断され、これらは約1.79mm〜2.11mmの厚さを有する。より好ましくは、少なくとも2つの板またはストリップが使用される。これらの板またはストリップは、モーター駆動シャフトに対して垂直な面内に配置することができる。より好ましくは、2つ以上の板またはストリップが、モーター駆動シャフトの突出部から延在し、モーター駆動シャフトの突出部に対して傾斜しており、モーター駆動シャフトの突出部に対してそれらのより遠位の端部は、上部測定要素の方向に向いており、板またはストリップとモーター駆動シャフトの同軸突出方向との間の角度は1〜80°の間、好ましくは10〜70°、より好ましくは30〜55°である。さらに、モーター駆動軸から下部測定要素に向かった方向に沿って見ると、少なくとも2つの板またはストリップが、好ましくは、モーター駆動シャフトの突出部の周囲に均等の間隔で配置される。本発明の特に好ましい一実施形態においては、3つの板またはストリップが、少なくとも2つの板またはストリップとして使用されて、下部測定要素の3点接触形状を形成する。
【0035】
トライボロジー装置の測定システムの特に好ましい設計の1つは、ボールオンスリープレート(ball−on−three plates)接触形状を有する。この特殊な形状において、上部測定要素はボール型であり、特にステンレス鋼でできたボールである。下部測定要素は、支持部材と、好ましくは上部測定要素に面する支持部材の表面内に形成された溝によって支持部材に取り付けられた前述の規定による熱可塑性エラストマー材料の3つの板とからなる。
【0036】
前述のボールオンスリープレート形状と類似しているが、2つまたは4つ以上の板を有し、それぞれが、上部ボール型測定要素の第1の表面と、下部測定要素の2つまたは4つ以上の板によって提供される第2の表面との間に配置されたサンプルと滑り接触する類似の構造を有する測定システムも本発明における使用に好適である。
【0037】
前述のトライボロジー装置は、市販のレオメーター、特に小応力レオメーターとともに使用することができる。レオメーターの基本設計は、たとえば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に記載されている。
【0038】
本発明の第1の態様による方法は、互いに関連する複数の食料品の区別に特に有用である。言い換えると、本発明の第1の態様による方法の前述の第1および第2の食品は、好ましくは関連食料品である。本明細書において使用される場合、用語「関連食料品」は、それらの組成および官能特性に関して類似している同じ下位集団、部類、または種類の食料品を意味することを意図している。特に、用語「関連食料品」は、類似しているが感覚的に区別可能な特定の食品の種類、特に、様々な種類のマヨネーズ、ドレッシング、乳製品、たとえば様々なヨーグルト飲料、アイスクリーム、乳清飲料、ライト飲料、果汁、アイスクリーム、および様々な種類のチョコレートなどの前述の定義の食品を意味する。
【0039】
本発明の第2の態様によると、食品、食品成分、成分混合物、または成分系から選択される組成物であって、口当たり感覚を特定の食品を付与することができる、および/またはこれらの感覚がない特定の食品の口当たり感覚を改善することができる組成を同定する方法であって、(i)本発明のトライボロジー装置またはそのようなトライボロジー装置を含む本発明のレオメーターを使用して、摺動速度の関数として、望ましい口当たり感覚を有する第1の食品の摩擦因子を測定することによって、第1の標的トライボロジープロファイルを得るステップと、(ii)本発明のトライボロジー装置またはそのようなトライボロジー装置を含む本発明のレオメーターを使用して、第2の食品の摩擦因子を測定することによって、第2のトライボロジープロファイルを得るステップであって、第2の食品が、第1の食品および同定される組成物の1種類以上の望ましい口当たり感覚が存在しないおよび/または劣っている特定の食品の混合物であるステップと、(iii)第1の標的トライボロジープロファイルを第2のトライボロジープロファイルと比較するステップと、(iv)口当たり感覚を、これらの感覚が存在しない特定の食品に付与することができる組成物を同定するステップであって、その結果、第2のトライボロジープロファイルが、第1の標的トライボロジープロファイルと実質的に同等となるステップとを含む、方法が提供される。
【0040】
本発明によると、用語「成分系」としては、ライト飲料中のショ糖の代わりになる複数の成分の組み合わせ、特定の挙動に適合する複数のハイドロコロイド類の組み合わせ、または低カロリー製品中の複数の脂肪代替物の組み合わせを挙げることができる。「成分系」の別の例は、脂肪、油、親油性食品成分、またはいずれかの混合物;タンパク質、またはペクチンまたはキトサンなどの炭水化物などの1種類以上の乳化剤、界面安定剤(interfacial stabilizer)を含む系を有する乳化脂肪滴であってもよい。別の例は、炭水化物およびキサンタンなどのガム、ならびに唾液および口腔組織と効果的に相互作用して口腔面および潤滑特性を変化させるトレハロースなどの炭化水素を含む混合物である。別の例は、グリセリンおよびプロピレングリコールなどの食品可塑剤および溶媒の混合物である。さらに別の例は、糖タンパク質(カゼインマクロペプチド)、タンパク質(卵アルブミン)、ガム(カラギーナンガム、グアーガム、ローストビーンガム、ジェランガムなど)、繊維、デンプン(トウモロコシ、ジャガイモ、小麦)、およびそれらの加水分解物などの食品生体高分子の混合物である。
【0041】
本明細書において使用される場合、用語「実質的に同等の」トライボロジープロファイルは、別の食品の別のトライボロジープロファイルと同一または非常に類似しており、実質的に同等の官能プロファイルとなる、食品のトライボロジープロファイルを意味することを意図している。本発明によると、「実質的に同等の」官能プロファイルは、別の食品の別の官能プロファイルと同一または非常に類似している食品の官能プロファイルであり、ここで、特定の口当たり特性に関する標準的な官能評価方法を使用した標準消費者差試験(standard consumer difference test)において検出可能な差がない(50%未満のパーセント識別子)ことが試験される製品の潤滑に関連して確認される場合に、官能プロファイルが「非常に類似」している。
【0042】
本発明の第3の態様によると、食品の官能口当たり特性を予測する方法であって、(i)本発明によるトライボロジー装置またはそのようなトライボロジー装置を含む本発明のレオメーターを使用して、摺動速度の関数として、食品の摩擦因子を測定することによって、トライボロジーのデータセットを得るステップと、(ii)食品のトライボロジーデータおよび食品の官能データと相関する所定の相関モデルに基づいて、食品の1つ以上の官能口当たり特性を求めることで、1つ以上の官能口当たり特性を予測するステップとを含む方法が提供される。
【0043】
所定の相関モデルは:(iii)官能分析によって、基準食品の1つ以上の官能口当たり特性を画定するステップと、(iv)ステップ(iii)で画定された1つ以上の官能口当たり特性に関して、基準食品を官能採点することによって官能データセットを収集するステップと、(v)本発明のトライボロジー装置またはそのようなトライボロジー装置を含む本発明のレオメーターを使用して、摺動速度の関数として、基準食品の摩擦因子を測定することによって、トライボロジーデータセットを収集するステップと、(vi)ステップ(v)で得たトライボロジーデータセットと、ステップ(iv)で得た官能データセットとの間の相関モデルを構築して、1つ以上の官能口当たり特性を予測するステップとのサブステップ(iii)〜(vi)によって確立される。基準食品および官能口当たり特性の予測が行われる食品は、通常の関連食料品であり、用語「関連食料品」は本明細書で先に定義した意味を有する。
【0044】
本発明による摺動速度の関数としての摩擦因子の典型的な測定の1つにおいては、摩擦因子は、0.4および250mm/sの範囲内の摺動速度で記録される。1〜10N、好ましくは2〜4N、典型的には3Nの一定荷重が好ましくは使用される。測定温度は、検査される食品の性質に依存するが、通常は4℃〜50℃、好ましくは6℃〜45℃、より好ましくは15℃〜45℃、さらにより好ましくは15℃〜37℃の範囲内である。クリームおよびマヨネーズなどの一部の用途では、温度を12℃まで下げる必要がある。しかし、ほとんどの用途の場合、温度は典型的には20℃である。Stribeck曲線を記録する前に、食品サンプルの剪断履歴を調節するために、食品サンプルは好ましくは0.4mm/sで10分間予備剪断する。
【0045】
特許請求の範囲および図面中に開示される特徴などの本明細書に記載のあらゆる実施形態のあらゆる態様のあらゆる特徴を、このようなあらゆる特徴と組み合わせることによって、それ自体保護することが可能となりうる実施形態を得ることができる。
【0046】
これより、本発明を、以下の本発明のトライボロジー装置の好ましい一実施形態の詳細な説明、実施例、および添付の図面を参照することによってより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明によるトライボロジー装置の好ましい一実施形態の部分側断面図であり、測定システムのボールオンスリープレートの原理を概略的に示している。
【図2】ボールオンスリープレート測定形状の上の図1に示すトライボロジー装置の実施形態のモーター駆動シャフトに沿った概略上断面図である。
【図3】拡大した下部測定要素の概略図であり、図1および2に示すボールオンスリープレート測定システムのさらに別の態様を示している。
【図4】デルタ摩擦因子(Δμ)maxの決定を示すチャートである。
【図5】無脂肪脱脂乳(■)、2%低脂肪乳()、全乳(▲)、ハーフアンドハーフ(●)、およびヘビークリーム(+)の各特性の官能パネルの平均評点を示すチャートである。
【図6】種々の脂肪含有量を有する乳製品エマルジョン:無脂肪脱脂乳(■)、2%低脂肪乳()、全乳(▲)、ハーフアンドハーフ(●)、およびヘビークリーム(+)の流動曲線を示すグラフである。
【図7】無脂肪脱脂乳、2%低脂肪乳、全乳、ハーフアンドハーフおよびヘビークリームの摩擦因子対摺動速度のStribeck曲線を示すグラフである。
【図8】それぞれのばらつきが91%および6%であることを示す、最初の2つの主成分(PC1およびPC2)のPCAローディングプロットである。
【図9】無脂肪脱脂乳(■)、2%低脂肪乳()、全乳(▲)、ハーフアンドハーフ(●)、およびヘビークリーム(+)に関する、「クリーミー」(creamy)の官能パネル平均評点と、第1主成分の評点との間の相関を示すプロットである。
【図10】無脂肪脱脂乳(■)、2%低脂肪乳()、全乳(▲)、ハーフアンドハーフ(●)、およびヘビークリーム(+)に関する、「つるつる」(slippery)の官能パネル平均評点と、第1主成分の評点との間の相関を示すプロットである。
【図11】無脂肪脱脂乳(■)、2%低脂肪乳()、全乳(▲)、ハーフアンドハーフ(●)、およびヘビークリーム(+)に関する、「クリーミー」の官能パネル平均評点と、10〜100s−1の間の剪断速度での剪断応力曲線の傾きとの間の相関を示すプロットである。
【図12】チョコレートサンプルORG(■)、CPD()、CPW(▲)、およびDIP(●)の各特性の官能パネル平均評点を示すプロットである。
【図13】脂肪含有量、粒度分布、および融点プロファイルを有するチョコレートサンプルORG(■)、CPD()、CPW(▲)、およびDIP(●)の剪断速度の関数としての粘度を示すグラフである。
【図14】ORG、CPD、CPW、およびDIPの摩擦因子対摺動速度のStribeck曲線を示すグラフである。
【図15】それぞれのばらつきが71%および27%であることを示す、最初の2つの主成分PC1およびPC2のPCAローディングプロットである。
【図16】ORG(■)、CPD()、CPW(▲)、およびDIP(●)に関する、「硬さ」の官能パネル平均評点と、第1主成分からの評点との間の相関を示すプロットである。
【図17】ORG(■)、CPD()、CPW(▲)、およびDIP(●)に関する、「柔軟性」(pliability)の官能パネル平均評点と、第1主成分からの評点との間の相関を示すプロットである。
【図18】ORG(■)、CPD()、CPW(▲)、およびDIP(●)に関する、「つるつる/オイリー」の官能パネル平均評点と、第1主成分からの評点との間の相関を示すプロットである。
【図19】10%(w/w)ショ糖および可溶性食物繊維溶液のStribeck曲線の、0.06%(w/w)アスパルテーム溶液との比較を示すグラフである。
【図20】10%(w/w)ショ糖溶液のStribeck曲線の、0.06%(w/w)アスパルテーム溶液および同じ甘さ(iso−sweet)+等粘性(iso−viscous)の可溶性繊維溶液との比較を示すグラフである。
【図21】0%、25%、50%、75%、および100%全乳のStribeck曲線を示すグラフである。
【図22】種々のチョコレートサンプルのStribeck曲線を示すグラフである。
【図23】マルトデキストリンおよびキサンタンを含有する等粘性溶液のStribeck曲線を示すグラフである。
【図24】最初の2つの主成分PC1およびPC2のPCAローディングプロットである。
【図25】半脱脂乳および高脂肪乳のStribeck曲線を示すグラフである。
【図26】カラギーナンが補われた半脱脂乳および高脂肪乳のStribeck曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1および図2によると、本発明のトライボロジー装置の好ましい一実施形態は、ボールオンスリープレート測定形状を有し、熱可塑性エラストマー支持体の3つの板によって形成された3点接触領域の上でボールが回転する。より具体的には、トライボロジー装置は、モーター駆動シャフト10と測定システム12とを含む。測定システム12は、ステンレス鋼でできていることが好ましく、取付具15によってモーター駆動シャフト10に接続されているボール型上部測定要素14と、たとえばステンレス鋼でできている支持部材26、および前述の規定の熱可塑性材料の3つの板またはストリップ24を含む下部測定要素20とからなる。図3中に示されるように、板またはストリップ24は、上部測定要素14に面する支持部材26の表面内に形成された溝28の中に配置することができ、それによって板またはストリップ24は支持部材26に取り外し可能に固定される。
【0049】
食品サンプル30のトライボロジー特性を測定する場合、サンプル30を下部測定要素20の上に配置し、所望の幅の接触測定面18が設定されるまで、上部測定要素14および下部測定要素20を持ち上げ装置(図示せず)によって互いに対して垂直に移動させる。上部測定要素14をモーター(図示せず)によって回転させ、サンプル30をボール型上部測定システム20の第1の測定面16と板またはストリップ24上に設けられる第2の測定面22(3点接触領域)との間で剪断する。測定中、上部および下部測定要素14、20の少なくとも1つは、好ましくは、ペルチェ素子(図示せず)などの加熱要素によって温度制御される。
【0050】
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0051】
実施例1
熱可塑性エラストマーおよびコルク(上部測定要素)の選択
1.熱可塑性エラストマーの選択
1.1 化学的安定性の測定
本発明のトライボロジー装置の下部測定要素の第2の測定面を形成する熱可塑性エラストマーは、実験期間中に試験されるサンプルに対して不活性であるべきである。
【0052】
したがって、種々の材料のストリップをヒマワリ油中に6日間浸漬することによって、油中の熱可塑性エラストマーの化学的安定性を評価した。浸漬前および浸漬後(後者の場合、吸油性ティッシュペーパーで徹底的に拭き取った後で)、ストリップ重量の変化を化学天秤(Mettler Toledo AG 135、0.1mg)上で記録した。この安定性試験中に材料の重量が減少する場合、これは恐らく、熱可塑性エラストマーから油可溶性化合物(たとえば可塑化油および/または潤滑シリコーン)がヒマワリ油に拡散するためである。このような材料は長時間の曝露は推奨されないが、1回使用するだけのトライボロジー実験における使い捨て材料としての使用は排除されるものではない。
【0053】
さらに、種々の材料のストリップを0.1Mクエン酸/クエン酸Na緩衝液(pH3.0)中に14日間浸漬することによって、酸性水溶液中の熱可塑性エラストマーの化学的安定性を評価した。浸漬前および浸漬後(後者の場合、吸収性ティッシュペーパーで徹底的に拭き取った後で)、ストリップ重量の変化を化学天秤(Mettler Toledo AG 135、0.1mg)上で記録した。材料の重量が増加する場合、これは恐らく、広範囲の膨潤によるものである。この場合も、このような材料は長時間の曝露は推奨されないが、1回使用するだけの実験における使い捨て材料としての使用は排除されるものではない。
【0054】
1.2 摩擦因子の測定
最も特徴的で高感度のエラストマーの種類を同定するために、摩擦因子の測定を行った。すべてのトライボロジー測定は、MCR−301レオメーター(Anton Paar,Stuttgart,Germany)上で、ボールオンスリープレート形状の測定システムを有する本発明のトライボロジー装置(図1〜3)を使用して行い、ペルチェおよびフード温度制御システムによって温度制御した。このトライボロジー装置は、エラストマー支持体の交換可能な3つのストリップが配置される3つの溝を含む接触領域上で回転するステンレス鋼ボールを使用している。
【0055】
試験温度は20℃に設定し、最初に記録せずに0.4mm/sの予備剪断を10分間行い、続いて摺動速度(0.4〜250mm/s)の関数として3Nの一定荷重において摩擦係数を記録した。摩擦力Fは摺動速度の関数として測定される。摩擦因子または摩擦係数(μ)は、各種類のエラストマーについて摩擦力対垂直力の比F/Fとして計算した。
【0056】
摩擦因子(μ)は、ヒマワリ油および10%(w/w)ショ糖溶液に対して測定した。Δμは、10%(w/w)ショ糖溶液の摩擦因子からヒマワリ油の摩擦因子を減じたものとして定義される。Δμmaxは、摺動速度0.4および20mm/sの範囲内のあらゆる特定の摺動速度において発生するΔμの最大値として定義される。
【0057】
図4は、ヒマワリ油および10%(w/w)ショ糖溶液の場合の摩擦因子対摺動速度の代表的なStribeck曲線および最大摩擦因子差(Δμmax)を示している。
【0058】
1.3 機械的安定性の測定
1.3.1 高摩擦ストリップ面
特定のストリップと上部ボール型要素との組み合わせを使用して食品系を調査する場合、摩擦因子信号は、Stribeck曲線中に急激な不連続性、すなわち急激な増加または減少が存在すべきではない。理論によって束縛しようとするものではないが、これらの信号の不連続性は機器のノイズ(すなわち信号処理関連)によるものではなく、交換可能なストリップの1つの上で上部ボール型要素が滑ることによって、または交換可能なストリップの1つの局所的な変形(たとえばねじれ)によって生じると考えられる。この現象は、検査される食品系の潤滑特性が低いことと関連するストリップ表面の高摩擦の組み合わせによるものと思われる。しかし、潤滑性の低い食品系に適していない高摩擦因子表面を有するストリップが、潤滑性の良好な食品系のトライボロジープロファイルの評価には適している可能性があることは理解できよう。
【0059】
1.3.2 回転によって生じるストリップの腐食
いずれのトライボロジー実験の場合でも、ストリップには、使用後に腐食またはエンボスのあらゆる徴候が見られるべきではない。したがって、ストリップをそのまま目視で観察したり、または低倍率の拡大鏡で観察したりすべきである。
【0060】
1.4 熱可塑性エラストマー選択基準としての硬度(ショアA)および引張強度
Kraiburg TPE(TPE=熱可塑性エラストマー)(KRAIBURG TPE GmbH,Waldkraiburg,Germany)(厚さ2mm、平滑な表面)から作製した32個のエラストマーストリップのΔμmaxを求めた(表1参照)。
【0061】
Pearson相関係数およびその有意水準を、32個のTPEの集団全体について計算した。この集団では、エラストマー硬度の減少は、0.5%の有意水準でΔμmaxの増加と相関がある。1%の有意水準において、引張強度の減少は、Δμmaxの増加と相関がある。
【0062】
結論として、材料の硬度(ショアA)およびその引張強度の両方をストリップの選択に使用することができた。好ましくは、材料の硬度(ショアA)がストリップの選択のために使用される。
【0063】
【表1】

【0064】
1.5 クラスタリングによる好適な熱可塑性エラストマーの選択
Kraiburg TPEから作製した32個のエラストマーストリップを4つの種類にクラスタリングすると、それらの中でクラスター3および4は不適当となり:
クラスター1(32個中12個):Δμmaxが、最低摺動速度に位置するプラトー領域において生じることを特徴とする;
クラスター2(32個中3個):Δμmaxが、約10mm/sの中間摺動速度に位置する頂点として生じることを特徴とする;
クラスター3(32個中10個):ヒマワリ油の摩擦が10%(w/w)ショ糖溶液の摩擦よりも大きくなる高摺動速度における「クロスオーバー」を特徴とする;
クラスター4(32個中7個):(i)高摩擦表面(Δμmax範囲0.90〜1.49、平均1.23、n=5)で、10%(w/w)ショ糖溶液を使用して信号の不連続性が得られること、または(ii)非常に軟質のエラストマーであり所定位置に維持されないことを特徴とする。
【0065】
クラスター1および2の好適なエラストマーからの、高感度、すなわちΔμmaxが0.43〜0.68である熱可塑性エラストマーは、TF5EFDおよびTC3GPN(クラスター1より)、ならびにHTF 8654/94、TF6AAF、およびTF6ATL(クラスター2より)から選択されるショアAが30〜60の間の軟質エラストマーである。これら5種類の熱可塑性エラストマーは、特に水連続相を有する食品の場合に、本発明における使用に特に適している(TC3GPN、TF6AAF、およびTF6ATLは油連続相を有する食品にも適しており、一方HTF 8654/94およびTF5EFDは、ヒマワリ油中での前述の安定性において大きく重量が減少するためあまり適していない)(表1参照、これら5種類の熱可塑性エラストマーは太字で強調している)。
【0066】
トライボロジー実験後のエラストマーストリップの緩和時間を実験的に調べることが重要であることを指摘しておく。この情報を使用すれば、1日の作業中のストリップの使用頻度を概算することができる。このことは、エラストマーストリップの剪断履歴による摩擦因子の変化を回避するために重要である。さらに、必要であれば、粗面を有するストリップを使用することで摩擦信号を増加させることが可能である。
【0067】
2.コルク(上部測定要素)の選択
2.1 化学的安定性の測定
0.1Mクエン酸/クエン酸Na緩衝液(pH3.0、pH4.0、pH5.0、およびpH6.0)中および標準化された水道水(基準として)中に14日間浸漬することによって、鋼製ボールの化学的安定性を評価した。重量変化は記録されず、色の変化も観察されなかった。したがって、鋼製ボールは、酸性(pH3.0まで)中での繰り返しの使用に適している。
【0068】
さらに、炭酸清涼飲料(Gatorade(登録商標))中での鋼製ボールの安定性を調べた。鋼でできた上部ボール型要素は、無傷である一方の面(飲料と接触していない面)と飲料と直接接触し激しく腐食した他方の面(おそらくは、清涼飲料中のキレート化化合物によって鉄がエッチングされた)との2つの面に変化したことが分かった。したがって、ある種のトライボロジー試験では、不活性材料(たとえばプラスチック、熱可塑性エラストマーなど)から成形した上部ボール型要素を鋼製ボールの代わりに使用すべきである。
【0069】
2.2 ストリップ/コルクの組み合わせのスクリーニング
鋼製コルクは腐食の可能性があるという背景から(2.1項参照)、プラスチックまたは熱可塑性エラストマー材料でできた7つのコルクを押し出し、成形して、トライボメーター上で使用した。
【0070】
可能なストリップ/コルクの組み合わせは多数存在するので、摩擦因子差を、2つの摺動速度、1および10mm/sのそれぞれで2回ずつ測定した。56の組み合わせ(8種類の異なるストリップ×7種類の異なるコルク)を含む実験計画において、より大きな摩擦因子差は10mm/sにおいて観察された。このデータを使用して適切なストリップ/コルクの組み合わせを選択した。ストリップ/コルクの選択の最も適切な範囲は0.20<Δμ<0.90であり、すなわち(a)機械的不安定性(信号の不連続性)を回避するために大きすぎることがなく、(b)信号感度が不十分となるのを回避するために小さすぎることがない。
【0071】
コルクの場合、粗面を有するコルクを使用できることにも留意されたい。このような表面は、たとえばサンドブラストによって製造することができる。
【0072】
実施例2
流体乳製品において認識される口当たりと潤滑性との相関
この実施例の根底にある実験の目的は、乳製品エマルジョンの重要な口当たり感覚をより十分に理解し予測するために、トライボロジー測定、バルクレオロジー法、および人間の官能評価によって、典型的な乳製品の脂肪含有量の影響を評価することであった。
【0073】
この目的を達成するために、種々の量の脂肪を有する種々の流体乳製品について、動的剪断レオロジーおよびトライボロジーを使用して調べた。トライボロジー特性およびレオロジー特性を、「クリーミーさ」、「濃さ」、「つるつる感」、および「滑らかさ」などの乳製品サンプルの重要な特性の官能評価と比較した。
【0074】
種々の脂肪含有量を有する流体乳製品は、トライボロジー測定を使用して十分に区別することができたが、レオロジー測定ではできないことが分かった。トライボロジー測定が、重要な口当たり特性である「つるつる感」および「クリーミーさ」と十分に相関することが示された。したがって、流体乳製品エマルジョンに対する口当たり感覚の原因は、潤滑性に強く関連することが分かる。
【0075】
1.実験手順
1.1 材料
市販の乳製品を地元のスーパーマーケットで購入した。これらの流体乳製品は脂肪含有量が様々である(0〜12%の脂肪)。各乳製品エマルジョンの組成を表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
1.2 レオロジー測定
種々の脂肪含有量の流体乳製品エマルジョンの動的流動特性に対する組成の影響を、一定応力レオメーター(Anton Paar MCR−301,Stuttgart,Germany)を使用し、円筒形二重ギャップ構成(DG−26.7)を使用して測定した。乳製品サンプルを、レオメーターの測定セル中に入れ、20℃で10分間平衡化させた。測定器の剪断速度を0.5s−1から200s−1まで増加させ、粘度を剪断速度の関数としてプロットすることによって、流動曲線を作成した。
【0078】
1.3 トライボロジー測定
すべてのトライボロジー測定は、MCR−301レオメーター(Anton Paar,Stuttgart,Germany)上で、ボールオンスリープレート形状(図1〜3)の測定システムを有する本発明のトライボロジー装置を使用して行い、ペルチェおよびフード温度制御システムによって温度制御した。このトライボロジー装置では、3つの溝を含み、そこに互いに交換可能な支持体の3つのストリップが取り付けられる接触領域上で回転するステンレス鋼製ボールが使用される。これらの支持体は、試験される乳製品サンプル間を十分に区別できる性能を有する熱可塑性エラストマー(TF6AAF材料、KRAIBURG TPE GmbH,Waldkraiburg,Germanyより入手可能)でできている。
【0079】
試験温度は20℃に設定し、最初に記録せずに0.4mm/sの予備剪断を10分間行い、続いて摺動速度(0.4〜250mm/s)の関数として3Nの一定荷重において摩擦係数を記録した。摩擦力Fは摺動速度の関数として測定される。摩擦因子または摩擦係数μは、摩擦力対垂直力の比F/Fとして計算した。
【0080】
1.4 官能測定
記述的分析
Stone & Sidel(Stone & Sidel,Sensory Evaluation Practice,Academic Press:Orlando,FL,(1985))によって記載されるように定量的記述分析(QDA)の方針で訓練されたパネルを使用して、サンプルの官能特性を調べた。パネリストは、年齢18〜60歳の健康な候補者のグループから選択した。選定試験は、基本味の敏感さ、ならびに様々なテクスチャーのサンプルの組の脂っこさ、粗さ、および粒度を評価するパネリストの能力のスクリーニングを含んだ。すべての試験で平均評点を上回った12名のパネリストを、訓練のために選択した。試験は、Minnesota,USAのCargill Global Food Technology Centerの官能評価設備(sensory facilitate)中で行った。
【0081】
種々の市販の流体乳製品を使用して、口当たりおよび残効の記述子の組を作成するために、パネルは、2時間のセッション5回の間に訓練を行った。感知される時間順に、特性を評価用紙上に配列した(表3参照)。続けてフォーカスグループには、実際のサンプルを評価する前に、各特性の評価を議論させ、特性の意味をさらに明確にさせた。
【0082】
【表3】

【0083】
試食手順
パネリストは、適切な換気および照明を有する官能評価ブース(sensory booth)内に収容された。パネルは、1回のセッションで5つの乳製品サンプルの評価を3回繰り返した。各食品は口に入られ、感知した順で口当たり特性の評価付けが行われた。製品を飲み込むか吐き出すかして、食後感覚特性の評価付けを行った。各サンプル間で、パネリストには、少量の無塩クラッカーを摂取し、その後水で口をすすぐように依頼した。
【0084】
パネリストの回答を、電子化された評価用紙およびSIMS 2000 v6.0ソフトウェア(Sensory Computer Systems,Morristown,New Jersey,USA)を使用して収集した。特性は、パネリストの前に置かれたモニター上に示され、極値で固定された分類のない直線スケールとともに特性が列挙された。パネリストは、各特性を感知した強さの評点を示す直線上の位置をマウスでクリックした。
【0085】
1.5 データ分析
個別のパネリストから得たデータについて、各特性に対する、製品を再現可能な方法で区別できる能力をスクリーニングした。分散分析を使用して、サンプル間である程度の識別力が得られる特性を特定した。各パネリストの評点をパネル全体にわたって平均して、製品ごとの各特性の組み合わせに対して1つの値を求めた。
【0086】
レオロジー分析を、各サンプルで3回繰り返して行った。10s−1〜100s−1の間の剪断速度に関して、剪断速度に対する剪断応力の傾きとして平均剪断応力を計算した。10s−1〜100s−1の間の剪断速度に関して平均粘度を計算した(図6)。線形回帰(S−Plus 7.0 Insightful Corp,Seattle,WA)を使用して、これらの平均剪断応力および粘度値を平均官能値と関連づけた。
【0087】
前述の本発明のトライボロジー装置を使用して、各サンプルで4回測定することによってトライボロジー分析を行った。これら4つの曲線を平均して、各サンプルについて1つの曲線を得た。Matlab PLS Toolbox(Eigenvector Research Inc,Wenatchee,WA)を使用して、これらの平均データの主成分分析を行った。データのオートスケール処理を前処理ステップとして行った。線形回帰(S−Plus 7.0 Insightful Corp,Seattle,WA)を使用して、機器データの主成分評点と平均官能特性値とを関連づけた。
【0088】
2.結果
2.1 使用したトライボロジー装置の主要部分
ボールオンスリープレート測定形状を取り付けて使用したトライボロジー装置は、摩擦因子(μ)および流動様式を摺動速度の関数として正確に測定することができる。良好な潤滑剤、たとえば油では非常に小さい摩擦係数が得られるが、潤滑剤のない測定、たとえば乾燥/乾燥接触領域では、非常に大きい摩擦係数値が示される。トライボロジーは材料の摩擦を測定するので、粘度測定のみでは得ることができない別の物理的性質の測定を、すなわち剪断応力/剪断速度または振動パラメーター(「バルクレオロジー」)の測定によって行うことができる。
【0089】
2.2 官能結果
パネルが作成した口当たり記述子は、前出の表3にまとめている。図5は、各乳製品サンプルの各特性の評点を示している。ほとんどの特性は、製品の脂肪含有量に従った順序を示すことに留意されたい。これは、脂肪量が多いほど、ほとんどの製品の全体的な口当たりの強さが増加する傾向にあるという一般的な予想と一致した。全体的ANOVA(分散分析)では、「ざらざら感」および「ぴりぴり感」を除いたすべての特定についてサンプル間で有意な(p<0.01)差を示した。
【0090】
2.3 機器の結果
図6に示される流動曲線は、剪断速度の関数としての各乳製品サンプルの粘度を示している。低脂肪製品の無脂肪乳、2%低脂肪乳、および全乳は、この剪断速度においては粘度差が非常にわずかとなっている。ハーフアンドハーフおよびヘビークリームのみ、流動プロファイル全体で区別可能な異なる粘度を有することが分かる。流体乳製品エマルジョンは、ほぼニュートン粘性であるが、しかしポリソルベート80およびカラギーナンで安定化されたヘビーホイッピングクリームサンプルなどのようにハイドロコロイドで安定化させると、溶液は、低濃度のハイドロコロイドで比較的高粘度となって、非常に剪断減粘性となる。
【0091】
バルクレオロジーパラメーターのみを使用すると、本発明者らは、口当たりに関してサンプル間に大きな差が存在せず、特に非常に低い脂肪含有量を有するサンプルにそのことが言えることが明確に分かる。実際、本発明者らが、剪断速度50s−1における乳製品エマルジョンの見掛け粘度を使用する場合、本発明者らは、これらのサンプルの口当たりに差が存在しないと推測することができた。しかし官能パネルは、これらのサンプルから「クリーミーさ」および「濃さ」の感知において有意差を明確に引き出した(図5参照)。したがって、口当たりを評価する場合、レオロジーからは全体像の一部しか得られないと考えられる。口当たりをより十分に理解するためには、口当たりに関する成分選択の効果をより十分に理解するためには、補完的な方法、たとえばトライボロジーに注目する必要がある。
【0092】
試験した乳製品エマルジョンの摩擦および潤滑特性を評価する場合、本発明者らは、見かけのバルクレオロジー特性が同じであるサンプルでさえも、サンプル間を明確に区別することができる(図7参照)。無脂肪乳、2%乳、および全乳は、5mm/sを超える摺動速度において摩擦係数の減少を示している。これは、低摺動速度において、サンプルが使用されるトライボロジー装置のボールと3つの熱可塑性エラストマー板との間の接触測定面からはみ出して、潤滑剤としては機能しないことを示している。摺動速度が増加すると、サンプルが接触測定面内に吸着し、より効果的な潤滑剤となる。
【0093】
2.4 機器特性および官能特性の相関モデル
トライボロジーデータのPCA(主成分分析)から得られた図8に示されるローディングプロットは、第1の潜在的変数が、予想通りに、摺動速度にわたって実質的に平均となったことを示している。これは、エマルジョンの潤滑の混合形態への境界が、ある口当たり特性の知覚と関連することを示している。
【0094】
トライボロジーデータの第1主成分評点と、官能評点との間の相関は、「ひりひり感」および「ざらざら感」を除いたすべての特性で、統計的に有意(p<0.05)であった。図9および図10に示すプロットは、トライボロジー測定と、「クリーミー」の官能測定(R=90%;傾き=−0.7;切片=28.7)および「つるつる」の官能測定(R=96%;傾き=−0.6;切片=28.5)との間の関係の例である。
【0095】
対照的に、レオロジー測定と官能評点との間の関係は、「温度」および「ざらざら感」の特性の場合のみ統計的に有意(p<0.05)であった。図11に示すプロットは、レオロジー変数および官能変数「クリーミー」との間に関係がないことの典型例である(R=60%;傾き=430.5;切片=23.4)。
【0096】
これらのデータは、官能特性、特に「つるつる感」および「クリーミーさ」の感覚は、少なくとも部分的には、食品または飲料の潤滑性、ならびに本発明の新規トライボロジー装置を使用したトライボロジー測定によって主として関連づけ可能であったことを示している。
【0097】
2.5 結論
本発明の新規トライボロジー装置を使用して得た上記の結果は、流体乳製品エマルジョンの摩擦および潤滑特性が、「つるつる」および「クリーミーさ」の人間の官能知覚に関与することを示している。データから得られたモデルによって、これらの人間の官能特性の予測が可能であると思われる。したがって、トライボロジーは、食品系またはそれらの成分に関連する口当たり特性の評価における有益な手段になると思われる。この手段によって、食品開発者によって、より単純で費用対効果のより高い方法で流体食品および飲料の口当たりを最適化させるための有望な可能性が広げられる。
【0098】
実施例3
チョコレートの口当たり感覚と潤滑性との相関
この研究の目的は、新規トライボロジー機器、およびバルクレオロジー特性を使用して、種々のチョコレート製品の口当たり特性に対する、組成、ならびに融解転移および粒度分布などの物理的性質の影響とともに潤滑性の影響を評価することであった。
【0099】
官能パネルは、時間がかかり、広範囲のばらつきが生じやすいので、機器技術を使用して口当たり特性を評価できると、チョコレート産業にとって非常に有益となる。種々の粒度分布、組成、および融解プロファイルを有するチョコレートサンプルを、動的剪断レオロジー、トライボロジー、および示差走査熱量測定(DSC)によって調べた。トライボロジー特性およびレオロジー特性を、チョコレートの口当たり特性の定量的記述分析と比較した。融解プロファイルが大きくおよび平均粒度が大きいほど、摺動速度の関数としてのサンプルの摩擦係数が大きく減少した。各チョコレートサンプルの熱転移および粒度分布の影響は、試験されるサンプルの摩擦特性と直接相関した。機器データは、「滑らかさ」、「クリーミーさ」、「口へのまとわりつき」(mouth coating)、および「ざらつき感」(grittiness)などの官能特性と相関があった。全体的に、摩擦因子はこれらの官能特性と十分に相関があったので、製品開発者にとって、快楽嗜好の調査またはスクリーニングのためのさらなる手段となる。
【0100】
1.実験手順
1.1 材料
Fennema(Cargill Company,Deventer,The Netherlands)より:DIP(アイスディッピング用ダーク(ice dipping dark))、CPW(複合チョコレートコーティングホワイト(compound chocolate coating white))、CPD(複合チョコレートコーティングダーク(compound chocolate coating dark))、およびORG(オーガニックチョコレート)の、27μm〜40μmの範囲の種々の粒度分布および20℃〜44.4℃の範囲の種々の融点プロファイルを有する4つの市販のチョコレートサンプルを入手した(表4)。
【0101】
脂肪含有量をSoxhlet法で測定した。水分は、方法IOCCC n°1:1952を使用して測定した。粘度および降伏値は、40℃においてHaake vT 550にスピンドルmv1を使用し、Casson法を使用することによって求めた。細かさ(fineness)は測微法によって求めた。融点はDSCによって測定した。
【0102】
【表4】

【0103】
1.2 レオロジー測定
Fennemaチョコレートサンプルの降伏点における融解プロファイルと粒度分布との間の関係、および流動特性を、レオメーター(Anton Paar MCR−301,Stuttgart,Germany)を使用して測定した。各チョコレートサンプルの小さな塊を、Schottホウケイ酸ガラス瓶(500ml)中で融解させ、50℃に設定した水浴中でコンディショニングし、40〜140分間維持して、チョコレートを完全に融解させた。
【0104】
次に、10gの融解したチョコレートを使い捨てアルミニウムパン中に移し、それをペルチェ温度ユニット上で40℃に予備加熱した。サンプルを10分間平衡化させ、平行板構成(PP25)をサンプル上に下げた後、降伏点および流動特性を求めた。機器の剪断速度を0.01から1000s−1まで増加させ、粘度を剪断速度の関数としてプロットすることを2回繰り返すことによって、流動曲線を作成した。
【0105】
1.3 トライボロジー測定
すべてのトライボロジー測定は、MCR−301レオメーター(Anton Paar Stuttgart,Germany)上で、ボールオンスリープレート形状の測定システムを有する本発明のトライボロジー装置(図1〜3)を使用して行い、ペルチェおよびフード温度制御システムによって温度制御した。熱可塑性エラストマー(TF6AAF材料、KRAIBURG TPE GmbH,Waldkraiburg,Germanyより入手可能)でできた3つのエラストマーストリップをトライボロジー装置の板上の溝の中に取り付けた。
【0106】
次に、チョコレートの塊をSchottホウケイ酸ガラスの500ml瓶の中に移し、50℃に設定した水浴中でコンディショニングした。融解したチョコレートを、50℃で40〜150分後にトライボロジーセルに移した(n=4回の繰り返しで測定)。エラストマーストリップは、40℃(ファン付きオーブン)で20分間コンディショニングした後に測定を行った。
【0107】
試験温度は40℃に設定し、最初に記録せずに0.4mm/sの予備剪断を10分間行い、続いて摺動速度(0.4〜250mm/s)の関数として3Nの一定荷重において摩擦係数を記録した。摩擦力Fは摺動速度の関数として測定される。摩擦因子μは、摩擦力対垂直力の比F/Fとして計算した。
【0108】
1.4 示差走査熱量測定(DSC)測定
チョコレートサンプルの融解挙動を、示差走査熱量測定を使用して監視した。約7〜10mgのチョコレートサンプルを使い捨てのアルミニウムパン中で秤量し、気密封止した。これらのパンをQ−1000 DSC(TA−Instruments,New Castle,DE)に移した。ロボットアームによって、チョコレートサンプルが入ったパンをDSC装置のサンプルセル中に置き、空のパンを参照セル中に置いた。次に、これらのセルの温度を、1分当たり5℃で5℃から80℃まで上昇させながら、2つのセルを熱的に釣り合わせるために必要な熱流を記録した。
【0109】
各チョコレートの融点は、吸熱ピークで最低となる温度として定義した。各チョコレートサンプルの固形脂肪含有量は、40℃において残存するパーセント固形脂肪に相当する40℃における融解ピーク下の部分面積を求め、吸熱ピークの全面積(再びベースラインに到達するまで)で割ることによって計算される。
【0110】
1.5 官能測定
訓練された定量的記述分析(QDA)パネルによって、サンプルの口当たり特性の評点を付けた(表5参照)。
【0111】
【表5】

【0112】
1.6 データ分析
線形回帰(S−Plus 7.0 Insightful Corp,Seattle,WA)を使用して、降伏応力および粘度値を平均官能値と相関させた。
【0113】
前述の本発明のトライボロジー装置を使用して各サンプルで4回測定することによって、トライボロジー分析を行った。これらの4つの曲線を平均して、各サンプルで1つの曲線を得た。Matlab PLS Toolbox(Eigenvector Research Inc,Wenatchee,WA)を使用して、これらの平均データの主成分分析を行った。これらのデータのオートスケール処理を前処理ステップとして行った。線形回帰(S−Plus 7.0 Insightful Corp,Seattle,WA)を使用して、機器データの主成分評点と平均官能特性値とを関連づけた。
【0114】
2.結果
2.1 官能結果
パネルが作成した記述子をそれらの定義とともに表4に示している。個別の記述子は、初期および中期から後期および残効までの摂食過程の異なる段階で分けた。初期特性は、主に、チョコレートの初期の感触、およびそれらが融解するときに生じる感覚に関連するものであった。摂食の中期段階に見られる特性は、おそらくは「よく混ざっている」などの流動および粘度に関連することができる特性と、「粉っぽい」および「つるつる/オイリー」などの潤滑性および摩擦に関連することができる特性とを合わせたものであると思われた。後期の分類の特性は、嚥下の準備など製品を口から除去すること、および残留物または口へのまとわりつきを感じ始めることに関連すると思われる。残効として感じられる特性は、残留物が残る感覚だけでなく、もはや口腔内に製品が残っていない状態での口腔面の変化にも関連する可能性を有した。
【0115】
10名のパネリストの評価付けを互いに平均した。図12は、すべての特性についての製品の平均を示している。全体ANOVA(分散分析)より、「一様な融解」を除いたすべての特性でサンプル間に有意な(p<0.05)差が示された。
【0116】
数種類の特性にわたって傾向が見られ、サンプルの組成および物理的性質と相関があると思われた。たとえば、細かさ(fineness)は、官能特性「硬さ」、「必要な操作」、「よく混ざっている」、および「溶解速度」と有意な(p<0.05)相関が見られた。「細かさ」および「硬さ」の間の有意な関係は(R=92%;傾き=3.2;切片=−84.9)は主としてDIPサンプルによって生じている。低降伏値、低粘度、低融点、あまり細かくなく、高脂肪含有量、および低糖分であるDIPは、口腔内の動きを伴う官能記述子、すなわち「柔軟性」、「つるつる/オイリー」、「よく混ざっている」、および「一様な融解」の官能記述子を除いたほとんどの官能記述子において低い値を示すと思われた。DIPは、他のサンプルと同じレベルの「収斂性」および「乾き」を有した。
【0117】
一般に、「硬さ」、「融解速度」、および「溶解速度」のすべては、粘度、降伏値、および細かさの増加とともに増加することが示された。「柔軟性」は、粘度;降伏値、細かさ、および全脂肪が増加すると大きく減少する逆の挙動を示した。より高い融点は、「必要な操作」および「蝋状」の特性の強度の増加と対応し、「つるつる/オイリー」特性の強度低下と対応した。固形脂肪含有量の増加は、「蝋状」の強度の低下と対応すると思われた。
【0118】
2.2 機器の結果
サンプルの典型的な流動曲線を図13に示す。
【0119】
典型的なStribeck曲線(摺動速度の関数としての摩擦因子)を図14に示しており、これよりサンプルが非常に異なるトライボロジー挙動を示したことが分かる。DIPサンプルは、ほとんどの摺動速度にわたって摩擦因子のわずかな減少を示した。高脂肪含有量のDIPは、複数の摺動速度にわたって低い摩擦因子値の結果となっている。
【0120】
CPDおよびCPWサンプルは、低い摺動速度において摩擦因子の初期増加が示され、その後、10mm/s〜100mm/sの中程度の摺動速度において摩擦因子が平坦となり、その後、摺動速度とともに摩擦因子が急速に増加した。
【0121】
ORGサンプルは、最も高い出発摩擦因子(約0.2)を示した。このサンプルの摩擦因子は約90mm/sの摺動速度までこのレベルを維持し、その後急速に増加した。
【0122】
摩擦力の速度依存性は、チョコレートの組成に依存することが知られている。従来の研究では、チョコレートのトライボロジー特性が粒度分布およびレシチン含有率と強い相関を示した(非特許文献13)。しかし乳脂肪/ココアバター比の変化が、トライボロジー特性に大きな影響を与えることが分かった。
【0123】
脂肪成分を、懸濁した固体粒子を有する系、たとえばチョコレートと比較する場合、連続脂肪相中に懸濁した粒子が存在することで、潤滑特性に2つの主要な変化が生じることが一般に知られている:(1)粘度の増加と、(2)トライボロジー装置の磨損である(非特許文献14)。たとえば、高い摺動速度における摩擦の急激な増加によって、形状の入口における蓄積、および接触領域内に供給される脂肪の不足など、可能性のある数種類の粒子挙動の形態が生じることができたと提案されている(非特許文献14、上掲)。
【0124】
摺動中に、強固に吸着した疎水性単層が常に存在することが示唆された。この単層によって接触角が決定され、そのため、タンパク質および水または脂質相が界面において優先的に蓄積されるので、チョコレート皮膜全体に見られる、界面で生じるあらゆる物理的性質に対して大きな影響が生じる(非特許文献15、上掲)。
【0125】
2.3 機器特性および官能特性の相関モデル
トライボロジーデータの最初の2つの主成分で、合計98.3%において71%および27.18%の分散が得られた。トライボロジーデータのPCA(主成分分析)で得たローディングプロット(図15)から、摺動速度が約10mm/sに到達した後では、第1の潜在的変数が実質的に平均摩擦因子となることが示された。第2主成分は、低摺動速度および高摺動速度において摩擦因子の対比となる。
【0126】
トライボロジーデータの第1主成分の評点と官能評点との間の関係は、特性「硬さ」(R=98%;傾き=1.4;切片=32.2)および「柔軟性」(R=99%;傾き=−1.4;切片=29.7)に関して統計的に有意(p<0.05)であった。図16および図17に示されるプロットは、トライボロジーデータと、「硬さ」および「柔軟性」の官能測定との間の関係の例である。
【0127】
「硬さ」は、トライボロジーデータの第1主成分の評点と正の相関がある。このことは、口腔内で最初に融解しはじめるとき、および融解中のチョコレートの塊の潤滑性が、これらの初期の口当たり感覚の重要な要因となることを示していると思われる。融解した塊の潤滑特性の大部分は摂食過程のはるかに後で感知されるか、残効として感知されるかであると考えられていたので、このことは予想外であった。
【0128】
図18のプロットは、トライボロジーデータと「つるつる/オイリー」との間の関係を示している(R=85%;傾き=−0.3;切片=34.5)。この関係はボーダーラインでのみ有意(p=0.08)であったが、トライボロジーが口腔内での潤滑の感覚に関連するという結論を支持するものである。
【0129】
意外なことに、降伏および粘度のレオロジー測定は、官能特性「乾き」とのみ有意な相関(p<0.05)があった。このことは、粘度測定単独では、チョコレートサンプルの口当たりを十分に特徴付けていないことを示している。
【0130】
2.4 結論
本発明の新規トライボロジー装置を使用して得られた上記結果は、チョコレートの摩擦および潤滑特性が、人間の官能知覚の「硬さ」および/または「柔軟性」および「つるつる/オイル」に関与していることを示している。これらのデータから得られるモデルによって、これらの人間の官能特性の予測が可能であると思われる。したがって、トライボロジー測定は、種々の食品および飲料の口当たり特性をより良く評価するための、レオロジーの補完的な機器方法となる。トライボロジーは、食品系またはそれらの成分に関連する口当たり特性の評価における有益な手段になると思われる。したがってこの手段によって、食品開発者は、より単純で、再現性のある、費用対効果のより高い方法で、複雑なレオロジー特性およびトライボロジー特性によって支配されるチョコレートなどの遷移性の半固体などの食品および飲料の口当たりを最適化することができる。
【0131】
実施例4
甘味料溶液中の「ボディ」の区別
この研究の目的は、本発明の新規トライボロジー装置を使用することによって、10%の糖、および強力な甘味料のアスパルテーム(10%ショ糖の甘さに等しくなる量で存在する)で甘くした甘味料溶液の口当たり感覚、特に「ボディ」特性における潤滑性の役割を評価することであった。
【0132】
甘味料は、口当たりまたはボディを飲料に付与することが知られている食品成分のグループの1つである。アスパルテーム、ならびにアセスルファムK、サッカリン、シクラメート、およびスクラロースなどの他の強力な甘味料は、「0」カロリーおよびライト飲料中に広く使用されている。しかし、このような強力な甘味料を含むダイエット飲料は、完全カロリー飲料とはボディおよび口当たり特性に関して異なるものであると消費者に区別されていることが知られており、このことは飲料産業において周知である。ショ糖および高フルクトースコーンシロップ(HFCS)で甘味が付けられた飲料の口当たりおよびボディ特性の官能閾値は発見されているが、これらが、試験される飲料中のこれらの甘味料によって生じる粘度と強く関係することを研究者らは示せていなかった(非特許文献16)。
【0133】
大部分の飲料および流体食料品は非常に低粘度であり、測定可能な降伏応力を有さないため、本発明者らは、これらの口当たりおよびボディ特性が、潤滑などの口腔内の他の影響力と関連しており、それによってこれらの製品中に口当たりおよびボディの感覚が生じるのに違いないと提案した。本発明のトライボロジー装置の区別性能をさらに説明するため、ポリデキストロースの10%(w/w)溶液およびFibersol 2の10%(w/w)溶液を含めた。どちらの可溶性食物繊維も、飲料中の強力な甘味料とともにショ糖の代用品として使用されている。
【0134】
1.実験手順
1.1 材料
Fibersol 2(Matsutani,Clinton,Iowa,USA)およびポリデキストロース(Danisco,New Century,USA)のそれぞれの10%(w/w)溶液を、Evianの水+0.06%(w/w)アスパルテームを使用して新しく調製して、10%SEVを得た。アスパルテーム0.06%(w/w)溶液および10%(w/w)ショ糖溶液を、10%SEV基準溶液とした。
【0135】
1.2 レオロジー測定
一定応力レオメーター(Anton Paar MCR−300,Stuttgart,Germany)を使用し、円筒形構成(CC24)を使用して、溶液の見掛け粘度を測定した。サンプルを恒温室中20℃で1時間平衡化させた。2分間の予備剪断ステップ(1〜10s−1)後、サンプルを20℃の測定セル中に入れ、剪断速度を10s−1から100s−1まで増加させて流動曲線を作成した。
【0136】
1.3 トライボロジー測定
すべてのトライボロジー測定は、MCR−301レオメーター(Anton Paar,Stuttgart,DE)上で、ボールオンスリープレート形状(図1〜3)の測定システムを有する本発明のトライボロジー装置を使用して行い、ペルチェおよびフード温度制御システムによって温度制御した。熱可塑性エラストマー(TF6AAF材料、KRAIBURG TPE GmbH,Waldkraiburg,Germanyより入手可能)から作製した3つのエラストマーストリップを、トライボロジー装置の板上のスロット中に入れた。
【0137】
試験温度は20℃に設定し、最初に記録せずに0.4mm/sの予備剪断を10分間行い、続いて摺動速度(0.4〜250mm/s)の関数として3Nの一定荷重において摩擦係数を記録した。摩擦力Fは摺動速度の関数として測定される。摩擦因子または摩擦係数μは、各種類のエラストマーについて摩擦力対垂直力の比F/Fとして計算した。
【0138】
2.結果
2.1 機器の結果
典型的なStribeck曲線(摺動速度の関数としての摩擦因子)を図19に示している。アスパルテーム溶液がショ糖溶液よりもはるかに大きい摩擦因子を示すという点で、サンプルは非常に異なるトライボロジー挙動を示した。可溶性食物繊維、特にFibersol 2は、ショ糖溶液よりも顕著な潤滑効果を示した。
【0139】
対照的に、サンプル溶液の平均粘度値(0.06%(w/w)アスパルテーム:1.11mPa・s;10%(w/w)ショ糖:1.48mPa・s;10%(w/w)ポリデキストロース+0.06%(w/w)アスパルテーム:1.61mPa・s;10%(w/w)Fibersol2+0.06%(w/w)アスパルテーム:1.70mPa・s)は水(20℃において1.003mP・s)に非常に近く、見掛け粘度のバルクレオロジー測定は、個別の甘味料の種類(または可溶性繊維の種類)の口当たりに対する影響を区別するには明らかに不十分であることが分かる。
【0140】
2.2 結論
上記結果は、トライボロジーが、甘味溶液または甘味が付けられた飲料の口当たりの差に関して区別するための有益な手段になることを示している。この手段によって、食品開発者が単純で費用対効果の高い方法で流体食品および飲料の口当たりを最適化させるための有望な可能性が広げられる。
【0141】
実施例5
飲料中の高カロリー甘味料の代わりとなるのに好適な組成の特定
この研究の目的は、飲料中のショ糖の好適な低または「0」カロリー代用品などとなる同じ甘さで等粘性の成分系混合物を、本発明のトライボロジー装置の使用によるトライボロジーで特定することであった。
【0142】
1.実験手順
1.1 材料
飲料中のショ糖の好適な代用品となる革新的な組み合わせを見出すために、本発明によるトライボロジー装置を使用して、種々の可溶性繊維混合物を試験した。この特定の例では、2つの可溶性繊維:Benefiber(Novartis,Basel,Switzerland)およびSunfiber R(三重県四日市市の太陽化学株式会社(Tayo,Yokkaishi Mie,Japan))を選択した。
【0143】
1.2 レオロジー測定およびトライボロジー測定
レオロジー手順およびトライボロジー手順は、トライボロジー測定に別のエラストマー支持体を使用した(TF5EFD材料、KRAIBURG TPE GmbH,Waldkraiburg,Germanyより入手可能)ことを除けば、実施例4の手順と同じである。
【0144】
2.結果
2.1 機器の結果
アスパルテーム0.06%(w/w)および10%(w/w)ショ糖の溶液を10%SEV基準溶液とした。n=6の繰り返しの実験での20℃における平均粘度は、それぞれ1.11±0.10mPa・sおよび1.48±0.08mPa・sであった。
【0145】
10%(w/w)ショ糖溶液と比較して等粘性で同じ甘さ溶液が得られる濃度で両方の種類の可溶性繊維を使用して、図20に示す典型的なStribeck曲線を得た。
【0146】
0.06%(w/w)アスパルテームと0.74%(w/w)Benefiberとの混合物(粘度:1.44mPa・s)、または0.06%(w/w)アスパルテームと0.84%(w/w)Sunfiber Rとの混合物(粘度:1.43mPa・s)は、ショ糖のプロファイルと類似していたが、10%(w/w)ショ糖溶液(粘度:1.48mPa・s)と比較してさらに良好な潤滑を示し、0.06%(w/w)アスパルテーム溶液(粘度:1.11mPa・s)よりもはるかに良好な潤滑を示した。
【0147】
このことも、粘度測定単独では、甘味料溶液および飲料の口当たりを特徴付けるには不十分であることを裏付けている。
【0148】
2.2 結論
トライボロジーによって、食品開発者が、単純で費用対効果の高い方法で、標準的な高カロリーのショ糖溶液と類似した口当たりを得るための低カロリーまたは「0」カロリー成分系の同定および処方するための有望な可能性が広げられる。
【0149】
実施例6
乳製飲料の区別
この実施例では、トライボロジーによる乳製飲料の区別を示す。
【0150】
1.実験手順
1.1 材料
脱脂乳および全乳のサンプルを地元のスーパーマーケットで購入した。0、25、50、75、および100%の全乳からなる希釈系列を作製した。
【0151】
1.2 トライボロジー測定
すべてのトライボロジー測定は、MCR−301レオメーター(Anton Paar USA,Ashland,VA,USA)上で、新しく開発されたトライボロジーセル(Anton Paar Germany GmbH,Ostfildern,Germany)を使用して行った。試験温度は20℃に設定し、最初に記録せずに0.4mm/sの予備剪断を5分間行い、続いてTF5 EFD(KRAIBURG TPE GmbH,Waldkraiburg,Germany)ストリップ上のTF5 EFDコルクを使用して、摺動速度(0.4〜250mm/s)の関数として3Nの一定荷重において摩擦係数を記録した。摩擦力Fは摺動速度の関数として測定される。ソフトウェアは、摩擦力対垂直力の比F/Fを計算し、これは摩擦因子または摩擦係数μと呼ばれる。
【0152】
トライボロジー装置を使用して、各乳製品サンプルの分析を3回繰り返して行った。3回の測定を平均し、摺動速度の関数としての平均摩擦因子を記録した。
【0153】
2.結果
結果を図21に示す。各摺動速度における平均摩擦因子のプロットは、乳製品サンプル間で区別されることを示している。
【0154】
実施例7
チョコレートの区別
この実施例は、トライボロジーによるチョコレートの区別を示す。
【0155】
1.実験手順
チョコレートの塊を、Schottホウケイ酸ガラスの500ml瓶の中に移した。Schottホウケイ酸ガラスを、50℃に設定した水浴中でコンディショニングした。融解したチョコレートを、50℃で40〜150分後にトライボロジーセルに移した(n=4回の繰り返しで測定)。エラストマーストリップ(HTF8654/94から作製、KRAIBURG TPE GmbH,Germanyより入手可能)は、40℃(ファン付きオーブン)で20分間コンディショニングした後に測定を行った。
【0156】
試験温度は40℃に設定し、最初に記録せずに0.4mm/sの予備剪断を10分間行い、続いて摺動速度(0.4〜250mm/s)の関数として3Nの一定荷重において摩擦係数を記録した。摩擦力Fは摺動速度の関数として測定される。摩擦因子μは、摩擦力対垂直力の比F/Fとして計算した。
【0157】
トライボメーターを使用してチョコレートサンプルを測定した。Cacao Donkerサンプルは3回測定し、他のすべてのサンプルは4回測定した。
【0158】
2.結果
摺動速度の関数としての測定した平均摩擦因子を図22に示す。図22に見られるように、異なるチョコレートサンプルが良く区別されている。
【0159】
実施例8
エマルジョンの区別、および摩擦因子とクリーミーさとの相関
この実施例では、本発明の方法の一実施形態を示す。
【0160】
1.実験手順
1.1 材料
出発物質
噴霧乾燥させたカゼインNaは、Rovita(FN5S)製のものであった。無水乳脂肪(融点30℃〜32℃)は、Campina Milk Fat Products N.V.製のものであった。噴霧乾燥させたマルトデキストリン(1DE)、キサンタンガム、およびグアーガムは、Cargill製のものであった。
【0161】
エマルジョンの調製および滴径測定
カゼインNaを室温の脱塩水中に溶解させた。この水相(4重量%タンパク質、pH6.8)と脂肪とをUltra−Turrax(速度1〜2で5分間)で混合し、50℃の水浴中で40分間加熱した。
【0162】
Rannieホモジナイザーを350barで作動させて50℃において水中脂肪エマルジョン(30体積%、2.8重量%カゼインNa)を調製した。ハイドロコロイド(マルトデキストリンまたはキサンタン)を室温の脱塩水中に溶解させ、既知濃度の溶液を得た。脂肪含有量(20体積%および5体積%)および粘度を調整するために、水中脂肪エマルジョン(30体積%)およびハイドロコロイド溶液を穏やかに撹拌することによって混合した。
【0163】
エマルジョンの滴径分布を、Sympatecレーザー光散乱分析装置(Quixel湿式分散システムを使用)で評価した。30体積%エマルジョンの平均滴径は0.86μmであり、20体積%および5体積%の水中脂肪エマルジョンを得るために希釈する場合にこの平均滴径は変化しなかった。
【0164】
1.2 レオロジー測定
定常粘度対剪断速度(1〜100s−1の対数的増加)を、Haake Rheostress 1同心円筒Z41形状を使用して測定した(20℃、温度平衡化時間=5分)。20℃においてMCR300 Anton Paarレオメーターに円筒形状CC24を使用しても、類似の結果が得られた。
【0165】
1.3 トライボロジー測定
熱可塑性エラストマーTF6 AAF(Kraiburg PTE,Germany)を1.8×0.6×0.2cmのストリップに切断した。試験の前後に、ストリップを希釈したセッケンで洗浄し、水道水で十分にすすぎ、ティッシュペーパーで吸い取ることで乾燥させた。上部ボール型要素は鋼製であった。
【0166】
試験は、温度20℃および垂直力3Nにおいて不規則に2回または3回繰り返して行い、以下の条件を使用した:
(i)記録せずに予備剪断(速度1min−1または摺動速度0.47mm/s)を5分間;
(ii)剪断(速度1〜560min−1または摺動速度0.47〜250mm/s)(300測定点、587秒間)を記録。
【0167】
1.4 官能測定
脂肪含有量および粘度が既知の水中脂肪エマルジョンを、非特許文献17に記載されるように、2回繰り返して評価した。パネルメンバーには、1〜10のスケールでクリーミーさの評価付けを依頼し、10は最高強度の評価に相当する。
【0168】
1.5 データ分析
PCAは、CAMO Unscramblerソフトウェアを使用して行った。
【0169】
2.結果
滴径分布が同じであるという背景をふまえて、約70mPa・sおよび約20mPa・sの見掛け粘度(52s−1において)20体積%および5体積%の水中脂肪エマルジョンは、トライボロジー(図23)および官能分析によって特徴付けた。結果を表6に示す。
【0170】
【表6】

【0171】
エマルジョンの見掛け粘度が約20から約70mPa・sに増加する場合に、官能評点は増加する。これは非特許文献17の結果と一致している。しかし、上記表にまとめたデータのPCA(図24)からは、感知されるクリーミーさは、見掛け粘度よりも摩擦因子に対して敏感であることが示されている。特に、滴径分布、脂肪含有量および見掛け粘度(52s−1における)が同じであるという背景をふまえると、1DEマルトデキストリンは、摩擦因子の減少においてキサンタンよりもはるかに有効である。
【0172】
非特許文献18は、等粘性エマルジョン(脂肪含有量および滴径分布が同じ)では、マルトデキストリンはキサンタンよりもよい評点が得られることを発見している。この研究者らは、非レオロジー要因がクリーミーさの感知を向上させうると示唆している。特に、パネリストに粘性(または口のまとわりつき)の評価を依頼した場合、マルトデキストリンはキサンタンよりもはるかに良い評点が得られる。この研究は、レオロジー以上に、摩擦因子によってクリーミーさの感知の差が明確に説明されることを示している。
【0173】
実施例9
ミルクの口当たりの改善
この実施例では、口当たり感覚を、これらの感覚が不足している特定の食品に付与および/または改善することができる、食品、食品成分、成分混合物、または成分系から選択される組成を特定するための本発明の方法の一実施形態を示す:
a)所望の口当たりを有する高脂肪乳(100ml当たり3.5gの脂肪)のトライボロジープロファイルを得る;
b)高脂肪乳よりも口当たりが劣る半脱脂乳(100ml当たり1.5gの脂肪)のトライボロジープロファイルを得る;
c)高脂肪乳および半脱脂乳のトライボロジープロファイルを比較する(図25参照);
d)半脱脂乳に加えた場合に、より良い口当たり(官能分析による評価;表7参照)およびより良いトライボロジープロファイル(図26参照)が付与される成分(すなわちカラギーナン)を特定する。
【0174】
【表7】

【0175】
実施例10
炭酸清涼飲料の口当たりの改善
この実施例では、口当たり感覚を、これらの感覚が不足している特定の食品に付与および/または改善することができる、食品、食品成分、成分混合物、または成分系から選択される組成を特定するための本発明の方法の一実施形態を示す:
a)所望の口当たりを有するショ糖(10重量%ショ糖)で甘味付けしたフルボディの炭酸清涼飲料のトライボロジープロファイルを得る;
b)フルボディの清涼飲料よりも口当たりが劣るダイエット炭酸清涼飲料(HISで甘味付けした)のトライボロジープロファイルを得る;
c)フルボディの清涼飲料およびダイエット清涼飲料のトライボロジープロファイルを比較する;
d)HISで甘味付けした炭酸清涼飲料に加えた場合に、より良い口当たり(官能分析によって評価)およびより良いトライボロジープロファイル(図示せず)が付与される成分(すなわち0.037重量%Sunfiberおよび8重量%トレハロース)を特定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口当たりに関して食品を区別する方法であって:
a)トライボロジー装置を使用して、摺動速度の関数として第1の食品の摩擦因子を測定することによって、第1のトライボロジープロファイルを記録するステップと;
b)前記トライボロジー装置を使用して、摺動速度の関数として第2の食品の摩擦因子を測定することによって、第2のトライボロジープロファイルを記録するステップと;
c)前記第1のトライボロジープロファイルを前記第2のトライボロジープロファイルと比較するステップとを含み、
前記トライボロジー装置が、食品サンプル(30)の口当たりに関連する性質を評価するためのトライボロジー装置であって、モーターと、少なくとも1つの第1の測定面(16)を有する第1の測定要素(14)、および前記第1の測定要素(14)とは分離しており少なくとも1つの第2の測定面(22)を有する少なくとも1つの第2の測定要素(20)とを含む測定システム(12)とを含み、前記測定要素(14、20)の少なくとも1つは前記モーターに接続されており、前記少なくとも1つの第1の測定面(16)および前記少なくとも1つの第2の測定面(22)によって、少なくとも1つの接触測定面(18)が画定され、そこに食品サンプル(30)が、測定中に配置されて剪断され、前記少なくとも1つの接触測定面(18)の幅は、前記第1の測定要素(14)と前記少なくとも1つの第2の測定要素(20)とを互いに対して移動させることによって調節可能である方法において、
少なくとも1つの第2の測定面(22)および/または少なくとも1つの第1の測定面(16)が、10%(w/w)ショ糖水溶液とヒマワリ油との間で0.2を超えるデルタ摩擦因子を有する熱可塑性エラストマーで構成されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記トライボロジー装置が、モーター駆動シャフト(10)と、前記モーター駆動シャフト(10)に接続され第1の測定面(16)を有する上部測定要素(14)、および前記上部測定要素(14)の下に離れて配置され少なくとも1つの第2の測定面(22)を有する下部測定要素(20)からなる測定システム(12)とを含み、前記第1の測定面(16)と前記少なくとも1つの第2の測定面(22)のそれぞれとが接触測定面(18)を画定し、そこに食品サンプル(30)が、測定中に配置されて剪断され、前記接触測定面(18)の幅は、前記上部測定要素(14)と前記下部測定要素(20)とを互いに対して移動させることによって調節可能である方法において、
前記少なくとも1つの第2の測定面(22)および/または前記第1の測定面(16)が、10%(w/w)ショ糖水溶液とヒマワリ油との間で0.2を超えるデルタ摩擦因子を有する熱可塑性エラストマーで構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トライボロジー装置の前記熱可塑性エラストマーが、10%(w/w)ショ糖水溶液とヒマワリ油との間で0.4を超えるデルタ摩擦因子を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記トライボロジー装置の前記熱可塑性エラストマーが、25〜75のショアA硬度および/または2〜12N/mmの引裂強度、および/または500〜900%の破断時伸び、および/または2〜35N/mmの破断時引裂伝播を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記トライボロジー装置の前記熱可塑性エラストマーが、水素化スチレンブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記トライボロジー装置の前記第1または上部測定要素(14)が、ボール型または少なくとも部分的に球体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記トライボロジー装置の前記第2または下部測定要素(20)が支持部材(26)と、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマーで構成される1つ以上の支持体とを含み、前記1つ以上の支持体が前記支持部材(26)によって支持され、各支持体によって第2の測定面(22)が提供される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記トライボロジー装置の前記1つ以上の支持体が板またはストリップ(24)の形態で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記トライボロジー装置の前記板またはストリップ(24)が、前記第1または上部測定要素(14)に面する前記支持部材(26)の表面内に形成された溝(28)を介して前記支持部材(26)に取り外し可能に固定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記トライボロジー装置の前記第2または下部測定要素(20)に3つの板またはストリップ(24)が見られる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記トライボロジー装置が、請求項1〜10のいずれか一項に記載のトライボロジー装置を含むレオメーターである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
口当たり感覚を特定の食品に付与する、および/またはこれらの感覚が不足している特定の食品の口当たり感覚を改善することができる、食品、食品成分、成分混合物、または成分系から選択される組成を特定する方法であって:
a)請求項1〜10のいずれか一項に記載のトライボロジー装置を使用して、摺動速度の関数として、望ましい口当たり感覚を有する第1の食品の摩擦因子を測定することによって、第1の標的トライボロジープロファイルを求めるステップと;
b)請求項1〜10のいずれか一項に記載のトライボロジー装置を使用して、第2の食品の摩擦因子を測定することによって、第2のトライボロジープロファイルを求めるステップであって、前記第2の食品が、前記第1の食品の前記望ましい口当たり感覚の1つ以上が不足しているおよび/または劣っている前記特定の食品の混合物であり、その組成が特定されるステップと;
c)前記第1の標的トライボロジープロファイルを前記第2のトライボロジープロファイルと比較するステップと;
d)これらの感覚が不足している前記特定の食品に口当たり感覚を付与することができ、その結果、前記第1の標的トライボロジープロファイルと実質的に同等である第2のトライボロジープロファイルが得られる前記組成を特定するステップとを含む、上記方法。
【請求項13】
食品の官能口当たり特性を予測する方法であって:
a)請求項1〜10のいずれか一項に記載のトライボロジー装置を使用して、摺動速度の関数として、食品の摩擦因子を測定することによってトライボロジーデータセットを得るステップと;
b)所定の相関モデルに基づいて前記食品の1つ以上の官能口当たり特性を求めるステップとを含み、前記相関モデルが、
b1)官能分析によって基準食品の1つ以上の官能口当たり特性を画定するステップと;
b2)ステップb1)で画定された前記1つ以上の官能口当たり特性に関する、前記基準食品の官能採点を行うことによって、官能データセットを収集するステップと;
b3)請求項1〜10のいずれか一項に記載のトライボロジー装置を使用して、摺動速度の関数として、前記基準食品の摩擦因子を測定することによって、トライボロジーデータセットを収集するステップと;
b4)前記1つ以上の官能口当たり特性を予測するために、ステップb3)で得た前記トライボロジーのデータセットとステップb2)で得た前記官能データセットとの間の相関モデルを構築するステップとによって確立される、上記方法。
【請求項14】
摩擦因子の測定が、1〜10Nの一定荷重、および/または15℃〜45℃の温度、および/または0.4〜250mm/sの範囲内の摺動速度において行われる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記食品が、飲料、チョコレート、ライトチョコレート、乳製飲料、低カロリー飲料、炭酸飲料、コーラ飲料、またはライトビールである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2010−529438(P2010−529438A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510687(P2010−510687)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004446
【国際公開番号】WO2008/148538
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(397058666)カーギル インコーポレイテッド (60)