説明

トラックの荷役装置及びトラック

【課題】特別な操作をすることなくスライドフレームを出し入れできるトラックの荷役装置を提供する。
【解決手段】トラックの荷台13と荷物の載置場8との間で荷物を積込み及び積降ろしするトラックの荷役装置2である。
そして、このトラックの荷役装置2は、荷台の車両前端部又は車両後端部のいずれか一方に原動車31を有し他方に従動車32を有して無端部材33が掛け回された巻掛け伝導機構3と、無端部材33に取り付けられて原動車31の正逆回転により荷台13と荷物の載置場8の間を往復移動するスライドフレーム4と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックの荷役装置及びトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラックの荷台に荷物を積み降ろしするために、荷物の載置場を荷台と同じ高さに形成したうえで、パレット上に荷物を載置してパレットごと荷台に積み降ろしする技術が知られている。
【0003】
このような荷役方法として、例えば特許文献1には、スライドフレームの前端部に連結されたワイヤを可動滑車に掛け回し、荷台又はスライドフレームのいずれかに可動滑車を付け換えることで、スライドフレームを出し入れする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭59−48177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の移送方法は、スライドフレームを出し入れするために、レバー操作によって可動滑車を付け換える必要があり、付け換え操作が煩わしいという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、特別な操作をすることなくスライドフレームを出し入れできるトラックの荷役装置と、この荷役装置を備えるトラックと、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のトラックの荷役装置は、トラックの荷台と荷物の載置場との間で荷物を積込み及び積降ろしするトラックの荷役装置であって、荷台の車両前端側又は車両後端側のいずれか一方に原動車を有し他方に従動車を有して無端部材が掛け回された巻掛け伝導機構と、前記無端部材に取り付けられて前記原動車の正逆回転により前記荷台と前記載置場の間を往復移動するスライドフレームと、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明のトラックの荷役装置は、トラックの荷台と荷物の載置場との間で荷物を積込み及び積降ろしするトラックの荷役装置である。そして、このトラックの荷役装置は、原動車及び従動車を有して無端部材が掛け回された巻掛け伝導機構と、無端部材に取り付けられて原動車の正逆回転により荷台と載置場の間を往復移動するスライドフレームと、を備えている。
【0009】
この構成によれば、原動車の正逆回転によって無端部材を往復移動させることで、特別な操作をすることなく無端部材とともにスライドフレームを往復移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1のトラックの全体構成を説明する側面図である。
【図2】トラックの荷役装置の構成を拡大して説明する説明図である。(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【図3】連結ピンの構成を拡大して説明する断面図である。(a)は連結ピンを抜いた状態であり、(b)は連結ピンを挿した状態である。
【図4】トラックの荷役装置の作用を説明する説明図である。(a)は第1工程であり、(b)は第2工程であり、(c)は第3工程である。
【図5】トラックの荷役装置の作用を説明する説明図である。(a)は第4工程であり、(b)は第5工程であり、(c)は第6工程である。
【図6】トラックの荷役装置の作用を説明する説明図である。(a)は第7工程であり、(b)は第8工程であり、(c)は第9工程である。
【図7】トラックの荷役装置の作用を説明する説明図である。(a)は第10工程であり、(b)は作業完了状態である。
【図8】実施例2のトラックの荷役装置の構成をスライドフレームが露出された状態について説明する側面図である。
【図9】実施例2のトラックの荷役装置の構成をスライドフレームが収納された状態について説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
[全体構成]
まず、図1を用いて本発明のトラックの荷役装置2を備えるトラック1の全体構成を説明する。なお、以下の実施例では、トラックとして密閉構造の荷台を有する有蓋車について説明するが、荷台を有する貨物自動車であれば、あおりのみの無蓋車、幌付きのもの、などにも本発明を適用できる。
【0013】
本実施例のトラック1は、図1に示すように、キャビン11を有し走行機能(牽引機能)を有するキャリア12と、キャリア12の上に設置された荷台13と、を備えている。
【0014】
この荷台13は、荷物を収容する空間を有するように形成されるもので、アルミなどの軽量金属によって形成された箱状の蓋14によって全体が覆われている。
【0015】
また、図示しないが、荷台13の後端15近傍などの操作しやすい位置には、トラックの荷役装置2を操作する操作手段として、操作ボタン、操作レバー又は操作ボタンが設置されている。
【0016】
さらに、荷台の床には、車両前端側から車両後端側にかけて巻掛け伝導機構3が配置されており、スライドフレーム4とともにトラックの荷役装置2を形成している。
【0017】
なお、荷台13は、キャリア12と別体のトレーラとして形成され、キャリア12に牽引されるものであってもよい。
【0018】
そして、荷物を荷台13に積み込んだり降ろしたりする際には、トラック1の後端15を専用に設けた荷物の載置場8に接近させ、車両後方側から荷物を移送する。
【0019】
この荷物の載置場8は、荷物を貯蔵する倉庫などの施設の一角に設けられるもので、荷物を積み込みやすいように、コンクリートや鋼材などによってトラック1の荷台13と同一の高さに形成される。
【0020】
また、図示しないが、往復移動時の摩擦抵抗を減少させるために、荷台13及び荷物の載置場8の床面、又は、スライドフレーム4の下面にはローラが配置されることが好ましい。
【0021】
[トラックの荷役装置の構成]
次に、本実施例のトラックの荷役装置2の構成を説明する。本実施例のトラックの荷役装置2は、トラック1の荷台13と荷物の載置場8との間で荷物を積み込み及び積み降ろしするもので、図2に示すように、荷台13の床内に設置される巻掛け伝導機構3と、荷物を載置する平板上のスライドフレーム4と、巻掛け伝導機構3とスライドフレーム4との間に取り付けられるリンク部材5と、を備えている。
【0022】
この巻掛け伝導機構3は、荷台13の床において車両前端側に配置されるスプロケット31と、車両後端側に配置されるスプロケット32と、両方のスプロケット31,32に掛け回されるチェーン33と、を備えている。なお、スプロケット31,32はどちらか一方が原動車で他方が従動車であればよい。
【0023】
車両前端側に配置される原動車としてのスプロケット31は、減速機(不図示)を介してモータ(不図示)の動力を受けて正逆両方向に回転し、チェーン33を車両前後方向に移動させる。
【0024】
このように、車両前端側に原動車を配置すれば、積み込み時にチェーン33の上側が引張側となるため、スプロケット31からチェーン33に効率よく動力を伝達できる。
【0025】
他方、車両後端側に配置される従動車としてのスプロケット32は、動力源と接続されておらず、チェーン33によって原動車であるスプロケット31の動力を伝達されて正逆両方向に回転する。
【0026】
なお、これら一対のスプロケット31,32間の距離が長く、チェーン33にたるみが生じる場合には、両方のスプロケット31,32の中間に、たるみ防止用のスプロケットを配置することもできる。
【0027】
また、無端部材としてのチェーン33は、金属製チェーンであり、原動車としてのスプロケット31の正逆回転によって、車両前方向又は車両後方向に移動する。そして、チェーン33の上側部分にはリンク部材5を連結するためのアタッチメント34が取り付けられている。なお、無端部材としては、チェーン33の他に、ベルトやワイヤなどを用いることができる。無端部材としてベルトを用いた場合には原動車及び従動車としてプーリーを用い、ワイヤを用いた場合には滑車を用いる。
【0028】
さらに、本実施例のスライドフレーム4は、図2,3に示すように、荷物を載せる平板上の本体部41と、本体部41の中央下部に設けた嵌入溝42と、嵌入溝42内に突出する連結ピン45と、この連結ピン45が嵌合するピン孔43及びボス44と、連結ピン45を駆動する駆動シリンダ46と、を備えている。
【0029】
この本体部41は、全体として荷台13の床と同形の板状に形成されるもので、所定の剛性を有する軽量材41bと、軽量材41bの下部に間隔をおいて設置されるスチールバンド41aと、を備えている。
【0030】
また、連結ピン45は、駆動シリンダ46によって、嵌入溝42内に嵌入したリンク部材5の前端孔51a,52a又は後端孔51b,52bの選択したいずれか一方に挿入される。なお、連結ピン45の抜き挿し操作は、ソレノイドによって行うこともできる。
【0031】
そして、スライドフレーム4は、リンク部材5を介してチェーン33に取り付けられているため、原動車としてのスプロケット31の正逆回転により荷台13と荷物の載置場8の間を前後に往復移動する。
【0032】
そして、本実施例のリンク部材5は、図2に示すように、一対の細長い鋼材51,52によって形成されるもので、前端部はチェーン33のアタッチメント34に固定ピン35によって取り付けられ、後端部はスライドフレーム4の嵌入溝42に進退自在に嵌入されている。
【0033】
また、鋼材51,52には、前端部に前端孔51a,52aが設けられ、後端部に後端孔51b,52bが設けられ、嵌入溝42の前端に配置された連結ピン45がいずれかの孔に挿入される。
【0034】
このように、スライドフレーム4の嵌入溝42及び連結ピン45と、リンク部材5の前端孔51a,52a及び後端孔51b,52bとによって、スライドフレーム4及びリンク部材5の合計の長さを伸縮させる伸縮機構6が形成されている。
【0035】
すなわち、伸縮機構6は、スライドフレーム4を荷台13から露出させる場合には伸ばした状態となり、スライドフレーム4を荷台13に収容する場合には縮めた状態となる。
【0036】
縮めた状態では、連結ピン45が前端孔51a,52aに挿入され、伸ばした状態では、連結ピン45が後端孔51b,52bに挿入されることとなる。なお、連結ピン45を孔位置で正確に作動させるために、リンク部材5側に被検出体を設置し、スライドフレーム4側に検出体を設置することが好ましい。
【0037】
[作用]
次に、本実施例のトラックの荷役装置2の作用について、図4〜7を用いて説明する。ここでは、荷物を積み込む場合について、全工程を第1工程〜第10工程に分けて説明する。なお、以下の説明において、前側とは車両前方側、後側とは車両後方側をいうものとする。
【0038】
(第1工程)
第1工程では、図4(a)に示すように、トラック1を後退させて、荷台13を荷物の載置場8に近づける。そして、荷台13の後端15のドアが開けられる。この際、連結ピン45は、前端孔51a,52aに挿入されている。
【0039】
そして、作業者が操作手段を操作して、押出作業を指示すると、スプロケット31が正方向(スライドフレーム4を押し出す方向)に回転して、スライドフレーム4及びこれに嵌入したリンク部材5を押し出す。
【0040】
(第2工程)
第2工程では、図4(b)に示すように、スライドフレーム4及びこれに嵌入したリンク部材5を特定の伸長時解除位置まで押し出すと、スプロケット31の正回転が一旦停止する。なお、この伸長時解除位置は、伸縮機構6を伸長させる際に連結ピン45を抜く位置であり、前端孔51aが最も前側となる位置を基準として、最低でも伸縮ストローク(前端孔51aから後端孔51bまでの距離)だけ後側の位置を設定する。
【0041】
(第3工程)
第3工程では、図4(c)に示すように、リンク部材5の前端孔51a,52aに挿入されていた連結ピン45を引き抜いて、スライドフレーム4とリンク部材5との連結を解除する。
【0042】
そして、スプロケット31が逆方向(リンク部材5を引き込む方向)に回転して、リンク部材5のみをスライドフレーム4から引き出して荷台13に引き込む。
【0043】
(第4工程)
第4工程では、図5(a)に示すように、リンク部材5を特定の伸長時連結位置まで引き込むと、スプロケット31の回転が一旦停止する。なお、この伸長時連結位置は、伸縮機構6を伸長させる際に連結ピン45を再び挿す位置であり、伸長時解除位置を基準として、伸縮ストロークだけ前側の位置となる。
【0044】
そして、引き抜かれていた連結ピン45を、リンク部材5の後端孔51b,52bに挿入して、リンク部材5を伸ばした状態で再びスライドフレーム4と連結する。その後、スプロケット31を正方向に回転させて、スライドフレーム4及びリンク部材5を荷台13からさらに押し出す。
【0045】
(第5工程)
第5工程では、図5(b)に示すように、スライドフレーム4が積込み位置まで到達すると、スプロケット31の回転が停止する。なお、この積込み位置は、スライドフレーム4の押し出し量が適切な量となるように、調整することができる。この第5工程で押出作業が終了し、トラックの荷役装置2は、操作手段によって引込作業が指示されるまで稼動を休止する。
【0046】
(第6工程)
第6工程では、図5(c)に示すように、荷台13から全体が露出したスライドフレーム4上に、フォークリフトなどによって側方又は後方から荷物9が載置される。
【0047】
(第7工程)
第7工程では、図6(a)に示すように、荷物9の積込み作業が終了した後、操作手段によって引込作業が指示されると、スプロケット31を逆方向に回転して、スライドフレーム4及びリンク部材5を荷台13内に引き込む。
【0048】
(第8工程)
第8工程では、図6(b)に示すように、スライドフレーム4及びリンク部材5を特定の短縮時解除位置まで引き込むと、スプロケット31の逆回転が一旦停止する。なお、この短縮時解除位置は、伸縮機構6を短縮させる際に連結ピン45を抜く位置であり、後端孔51bがチェーン33上に位置する最も後側の位置を設定できる。
【0049】
そして、リンク部材5の後端孔51b,52bに挿入されていた連結ピン45を引き抜いて、スライドフレーム4とリンク部材5との連結を解除する。その後、スプロケット31を正方向に回転させて、リンク部材5をスライドフレーム4に嵌入させる。
【0050】
(第9工程)
第9工程では、図6(c)に示すように、リンク部材5を特定の短縮時連結位置まで押し出すと、スプロケット31の回転が一旦停止する。なお、この短縮時連結位置は、伸縮機構6を短縮させる際に連結ピン45を再び挿す位置であり、短縮時解除位置を基準として、伸縮ストロークだけ後側の位置となる。
【0051】
そして、引き抜かれていた連結ピン45を、リンク部材5の前端孔51a,52aに挿入して、リンク部材5を嵌入させた状態で再びスライドフレーム4と連結する。
【0052】
(第10工程)
第10工程では、図7(a)に示すように、スプロケット31を逆方向に回転させて、スライドフレーム4及びリンク部材5を荷台13内にさらに引き込む。
【0053】
そして、図7(b)に示すように、スライドフレーム4を荷台13内に完全に収納すると、スプロケット31の回転が停止する。
【0054】
この第10工程で引込作業が終了し、荷物9を積載した状態のトラック1は、目的地まで走行する。そして、積降ろしの際にも、積込みと同様の手順に従ってスライドフレーム4が荷台13から出し入れされる。
【0055】
[効果]
次に、本実施例のトラックの荷役装置2の効果を列挙して説明する。
【0056】
(1)本実施例のトラックの荷役装置2は、トラック1の荷台13と荷物の載置場8との間で荷物を積込み及び積降ろしするトラックの荷役装置2である。そして、このトラックの荷役装置2は、荷台13の車両前端側又は車両後端側のいずれか一方に原動車としてのスプロケット31を有し他方に従動車としてのスプロケット32を有して無端部材としてのチェーン33が掛け回された巻掛け伝導機構3と、チェーン33にリンク部材5を介して間接的に取り付けられてスプロケット31の正逆回転により荷台13と荷物の載置場8の間を往復移動するスライドフレーム4と、を備えている。
【0057】
このため、スプロケット31の正逆回転によってチェーン33を往復移動させることで、特別な操作をすることなくチェーン33とともにスライドフレーム4を往復移動させることができる。
【0058】
つまり、荷物の積込み及び積降ろしの際に、従来のように煩わしい可動滑車の付け替え作業を必要とせず、荷役作業しやすくなる。
【0059】
(2)また、トラックの荷役装置2は、チェーン33のアタッチメント34とスライドフレーム4との間に取り付けられ、スライドフレーム4を荷台13から完全に露出させるリンク部材5をさらに備えている。
【0060】
したがって、リンク部材5の長さ分だけ、スライドフレーム4を荷台13の外に押し出すことで、スライドフレーム4の全体が荷台13の外に露出するため作業しやすい。
【0061】
すなわち、リンク部材5がない場合には、スライドフレーム4の前端部分が荷台13内に残るため、フォークリフト等によって積込み及び積降ろし作業する際にスライドフレーム4の側方からの作業が困難となっていた。
【0062】
そこで、リンク部材5を介在させれば、リンク部材5の前端部分は荷台13内に残るものの、スライドフレーム4は前端部分を含む全体が荷台13の外に露出するため、側方からの作業がしやすくなる。
【0063】
(3)さらに、トラックの荷役装置2は、リンク部材5がスライドフレーム4に進退自在に嵌入する伸縮機構6を備えることで、スライドフレーム4を荷台13内に収納した状態で荷台13内の空間を有効利用できる。
【0064】
つまり、伸縮機構6がなければ、リンク部材5及びスライドフレーム4を荷台13内に収納すると、リンク部材5の長さ分だけ荷台13内の空間を利用できなくなる。
【0065】
そこで、伸縮機構6によって、リンク部材5をスライドフレーム4内に嵌入させることで、リンク部材5及びスライドフレーム4の全体の長さを伸縮させて荷台13内の空間を有効に利用している。
【0066】
(4)そして、この伸縮機構6は、リンク部材5の前端部とチェーン33のアタッチメント34とを連結する固定ピン35と、リンク部材5の前端部又は後端部のいずれか選択した一方とスライドフレーム4の前端部とを連結する連結ピン45と、を有している。
【0067】
このため、チェーン33の往復移動、及び、これと連動して連結ピン45を自動的に抜き挿し操作することによって、簡単かつ確実にリンク部材5及びスライドフレーム4の合計の長さを伸縮することができる。
【0068】
すなわち、積込み及び積降ろしの開始前には、スライドフレーム4及びこれに嵌入したリンク部材5を伸長位置まで押し出して一旦停止し、両者の連結を解除してリンク部材5のみを引き込んだ後に連結位置で再び連結して、伸長状態のスライドフレーム4及びリンク部材5を押し出す。
【0069】
一方、積込み及び積降ろしの終了後には、スライドフレーム4及びリンク部材5を短縮位置まで引き込んで一旦停止し、両者の連結を解除してリンク部材5のみを押し出した後に連結位置で再び連結して、スライドフレーム4及びこれに嵌入したリンク部材5を引き込む。
【0070】
さらに、連結ピン45を抜き挿しすることで、リンク部材5とスライドフレーム4とは脱着自在となる。そうすると、空の状態のスライドフレーム4のみを荷物の載置場8に残置し、あらかじめ荷物9を載置しておけば、積込みの時間を省略できる。同様に、荷物9を積載した状態のスライドフレーム4のみを荷物の載置場8に残置すれば、積降ろしの時間を省略できる。
【0071】
(5)また、本実施例のトラック1は、上記したトラックの荷役装置2を備えることで、荷役作業がしやすいトラック1となる。
【0072】
さらに、トラックの荷役装置2を備えるトラック1は、荷役作業に要する時間を短縮することができるため、運送の効率を大幅に向上させることができるようになる。
【実施例2】
【0073】
以下、図8,9を用いて、前記実施例とは別のトラックの荷役装置2Aについて説明する。なお、前記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0074】
[構成]
まず、構成について説明すると、本実施例のトラック1Aは、キャリア12と、荷台13と、を備えている。
【0075】
そして、本実施例のトラックの荷役装置2Aは、荷台13の床内に設置される巻掛け伝導機構3と、荷物を載置する平板上のスライドフレーム4と、を備える一方で、巻掛け伝導機構3とスライドフレーム4との間に取り付けられるリンク部材5を備えていない。
【0076】
この巻掛け伝導機構3は、実施例1と同様に、スプロケット31と、スプロケット32と、チェーン33と、を備えている。
【0077】
また、スライドフレーム4は、実施例1と同様に本体部41(不図示)を備える一方で、嵌入溝、連結ピン、ピン孔、ボス、及び、駆動シリンダなどの伸縮機構6に関する部品を備えていない。
【0078】
[作用・効果]
次に、作用・効果について説明する。
【0079】
(1)本実施例のトラックの荷役装置2Aは、トラック1の荷台13と荷物の載置場8との間で荷物を積込み及び積降ろしするトラックの荷役装置2Aである。そして、このトラックの荷役装置2Aは、荷台13の車両前端側又は車両後端側のいずれか一方に原動車としてのスプロケット31を有し他方に従動車としてのスプロケット32を有して無端部材としてのチェーン33が掛け回された巻掛け伝導機構3と、チェーン33に直接的に取り付けられてスプロケット31の正逆回転により荷台13と荷物の載置場8の間を往復移動するスライドフレーム4と、を備えている。
【0080】
このため、スプロケット31の正逆回転によってチェーン33を往復移動させることで、特別な操作をすることなくチェーン33とともにスライドフレーム4を往復移動させることができる。
【0081】
つまり、図8に示すように、スプロケット31の正回転制御のみでスライドフレーム4を押し出し、図9に示すように、スプロケット31の逆回転制御のみでスライドフレーム4を引き込むことができる。
【0082】
加えて、本実施例では、前記実施例と異なり、リンク部材5を有しない簡潔な構成を採用しているため、実施例1のように巻掛け伝導機構と連動した連結ピンの駆動制御は必要ない。
【0083】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施例と略同様であるため説明を省略する。
【0084】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0085】
例えば、前記実施例では、巻掛け伝導機構3及びリンク部材5を車幅方向の中央に1つだけ設置する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、巻掛け伝導機構3及びリンク部材5は車幅方向の左右に1つずつ設置してもよい。
【0086】
また、前記実施例では、特に説明しなかったが、スライドフレーム4の直進性を担保するために、リンク部材5及びスライドフレーム4にはガイド機構を設置してもよい。
【0087】
さらに、前記実施例では、嵌入溝42及び連結ピン45と、前端孔51a,52a及び後端孔51b,52bと、によって伸縮機構6を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、スライドフレーム4とリンク部材5の全長を伸縮させることのできる構成であればどのような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1,1A トラック
13 荷台
2,2A トラックの荷役装置
3 巻掛け伝導機構
31 スプロケット(原動機)
32 スプロケット(従動機)
33 チェーン(無端部材)
35 固定ピン
4 スライドフレーム
42 嵌入溝
43 ピン孔
44 ボス
45 連結ピン
46 駆動シリンダ
5 リンク部材
51,52 鋼材
51a,52a 前端孔
51b,52b 後端孔
6 伸縮機構
8 荷物の載置場
9 荷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックの荷台と荷物の載置場との間で荷物を積込み及び積降ろしするトラックの荷役装置であって、
荷台の車両前端側又は車両後端側のいずれか一方に原動車を有し他方に従動車を有して無端部材が掛け回された巻掛け伝導機構と、
前記無端部材に取り付けられて前記原動車の正逆回転により前記荷台と前記載置場の間を往復移動するスライドフレームと、を備えることを特徴とするトラックの荷役装置。
【請求項2】
前記無端部材と前記スライドフレームとの間に取り付けられ、前記スライドフレームを前記荷台から完全に露出させるリンク部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のトラックの荷役装置。
【請求項3】
前記リンク部材が前記スライドフレームに進退自在に嵌入する伸縮機構をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のトラックの荷役装置。
【請求項4】
前記伸縮機構は、前記リンク部材の前端部と前記無端部材とを連結する固定ピンと、前記リンク部材の前端部又は後端部のいずれか選択した一方と前記スライドフレームの前端部とを連結する連結ピンと、を有することを特徴とする請求項3に記載のトラックの荷役装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のトラックの荷役装置を備えることを特徴とするトラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−16985(P2012−16985A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154553(P2010−154553)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)