説明

トラック・バス用空気入りラジアルタイヤ

【課題】金属線の折れによるタイヤの耐久性の低下を回避しつつ、軽量化を実現したトラック・バス用空気入りラジアルタイヤを提供する。
【解決手段】少なくとも3層のベルト層からなるベルトを備えたトラック・バス用空気入りラジアルタイヤである。最内層ベルト層の金属線が、ベルト幅方向に長い扁平形状を有する金属線が撚り合わされることなくベルト幅方向に間隔を空けて平行かつ平面的に配列されてなり、扁平形状の金属線の幅Wと厚みTとが次式、
2.0≦W/T≦6.0
幅方向曲げ剛性WSと厚み方向曲げ剛性TSとが次式
5.0≦WS/TS≦35.0
最内層ベルト層に対する前記扁平形状の金属線の打込み本数P(本/50mm)が次式、
−24.9×Ln(W/T)+53.7≦P≦−34.4×Ln(W/T)+83.3
で表される関係を満足することを特徴とするトラック・バス用空気入りラジアルタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック・バス用空気入りラジアルタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、金属線の折れによるタイヤの耐久性の低下を回避しつつ、軽量化を実現したトラック・バス用空気入りラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の典型的なトラック・バス用空気入りラジアルタイヤは、左右一対のビード部に設けられたビードコアと、クラウン部から両サイド部を経て両ビード部に延び、ビードコアに巻回されてビード部に係留されたラジアルカーカスと、このラジアルカーカスのクラウン部タイヤ半径方向外側に配置されたベルトとを備えている。このベルトは少なくとも3層のベルト層からなり、これらベルト層は平行に配列された金属コードがゴムに埋設されてなる。少なくとも3層のベルト層のうち、タイヤ半径方向内側から数えて第2層および第3層は、金属コード方向がタイヤの周方向に対して、およそ10〜30°程度の角度で、同一層内では互いに平行に配列され、層間ではタイヤ赤道線を挟み互いに逆方向になるように積層された、いわゆる交差ベルト層を形成している。
【0003】
ラジアルタイヤの骨格部は、基本的には、ラジアルカーカスと該ラジアルカーカスのクラウン部外側に配設されたベルトとで構成されていて、ラジアルカーカスのクラウン部におけるコード角度はタイヤ赤道線に対し90°または実質的に90°で、ベルト層のクラウン部におけるコード角度はタイヤ赤道線に対しおよそ10°〜30°であって、空気圧によって生じる周方向の張力をベルト層が負担し、径方向の張力をラジアルカーカスが負担している。一般に、ラジアルタイヤのベルトはテンションメンバーであって、ベルトが担う重要な機能の一つはタイヤに内圧を充填したときにその断面形状を所定の形状に保持すること、およびタイヤを長期間使用したときにタイヤの径成長を抑制することである。
【0004】
近年、省資源および省エネルギーの社会的要請から、トラック・バス用空気入りラジアルタイヤにも低燃費タイヤすなわち転がり抵抗の少ないタイヤの開発が求められ、トラック・バス用空気入りラジアルタイヤの軽量化が強く要求されている。ベルトの質量を下げることは、トラック・バス用空気入りラジアルタイヤの軽量化のための一つの有力な手段であり、ベルトの重量を下げるためには、ベルトを形成しているゴム被覆金属コード層の金属コードの打ち込み量を少なくすることが最も簡便な手段である。しかしながら、金属コードの打ち込み量を減らすと圧縮疲労によって金属コードを構成する金属線が折れやすくなり、タイヤの耐久性能が低下するという不具合が発生する。
【0005】
金属線の折れに起因するタイヤの耐久性能の低下を回避しつつ、軽量化を可能としたトラック・バス用空気入りラジアルタイヤとして、特許文献1に、次の(i)〜(iii)を満足するトラック・バス用空気入りラジアルタイヤが提案されている。(i)ベルトは、平行に配列された金属コードをゴムに埋設してなる、少なくとも3層のゴム被覆金属コード層で形成されている。(ii)ベルトの最内層の金属コードは、炭素含有量が0.6〜1.0質量%の高炭素鋼よりなる、直径が0.10〜0.40mmのフィラメントを撚り合わせた、単撚り構造または層撚り構造もしくは複撚り構造のスチールコードである。(iii)フィラメントは、抗張力が100〜230kg/mmで切断時全伸びが5%以上である。また、特許文献2〜5では、ベルトの補強材である金属線の折れを防止しつつ、タイヤを軽量化することを目的として、断面形状が扁平形状である金属線が提案されており、それらを用いたタイヤについて検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−59122号公報
【特許文献2】特開2009−41170号公報
【特許文献3】特開2009−249763号公報
【特許文献4】特開2010−47877号公報
【特許文献5】特開2011−25795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているトラック・バス用空気入りラジアルタイヤは、従来のトラック・バス用空気入りラジアルタイヤと比較して軽量化がなされているが、現在はさらにタイヤ軽量化の要請が強まり、特許文献1記載のタイヤでは必ずしも十分とは言えず、さらなる改良が求められている。また、特許文献2〜5では乗用車用タイヤについてしか検討されておらず、より使用条件が過酷なトラック・バス用タイヤについては検討されていない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、金属線の折れによるタイヤの耐久性の低下を回避しつつ、軽量化を実現したトラック・バス用空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解消するためにベルト構造について鋭意検討した結果、以下の知見を得た。すなわち、ベルトを形成している少なくとも3層のゴム被覆金属コード層のうち、ラジアル方向内側から数えて第2層および第3層のいわゆる交差ベルト層は、上記の断面形状の保持および径成長の抑制という重要な機能を担っているので、安易に金属コードの打ち込み量を減らすことはできない。そこで、ベルトの重量を下げるためには、ベルトの最内層、すなわち、ラジアル方向内側から数えて第1層のベルトの軽量化が必須である。かかる知見をもとに、さらに検討を加えた結果、第1ベルト層の補強材を金属線とし、この金属線の形状を適正化することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のトラック・バス用空気入りラジアルタイヤは、左右一対のビードコア間に跨ってトロイド状をなすラジアルカーカスのクラウン部のタイヤ半径方向外側に、少なくとも3層のベルト層からなるベルトを備えたトラック・バス用空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記ベルトの最内層ベルト層が、長手方向に直行する断面が扁平形状である金属線が撚り合わされることなく扁平形状の長径とベルト幅方向とが一致するようにベルト幅方向に平行かつ平面に間隔を空けてゴムに埋設されてなり、
前記扁平形状の金属線の幅W(mm)と厚みT(mm)とが下記式(1)、
2.0≦W/T≦6.0 (1)
で表される関係を満足し、
前記扁平形状の金属線の幅方向曲げ剛性WS(kgf・mm)と、厚み方向曲げ剛性TS(kgf・mm)とが下記式(2)、
5.0≦WS/TS≦35.0 (2)
で表される関係を満足し、かつ、
前記最内層ベルト層に対する前記扁平形状の金属線の打込み本数P(本/50mm)が下記式(3)、
−24.9×Ln(W/T)+53.7≦P≦−34.4×Ln(W/T)+83.3 (3)
(式中、前記と同じものであり、Lnは自然対数を示す)で表される関係を満足することを特徴とするものである。
【0011】
本発明においては、前記扁平形状の金属線の断面形状は、一対の平行な直線部と、その外側に凸となって対向する一対の円弧部と、を有するトラック形状であることが好ましい。また、本発明においては、前記扁平形状の金属線の断面形状は、一対の平行な直線部と、その外側に凸となって対向する一対の円弧部と、さらに該直線部から該円弧部に推移する部位にもう一対の円弧部と、を有するトラック形であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属線の折れによるタイヤの耐久性の低下を回避しつつ、軽量化を実現したトラック・バス用空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のトラック・バス用空気入りラジアルタイヤの一例を示す幅方向片側断面図である。
【図2】本発明に係る扁平形状金属線の例を示す幅方向断面図である。
【図3】本発明に係る扁平形状金属線の例を示す幅方向断面図である。
【図4】従来の断面円形の金属線を1+6構造に撚り合わせた例を示す幅方向断面図である。
【図5】各実施例および比較例における金属線の幅と厚みとの比W/Tと幅方向曲げ剛性と厚み方向曲げ剛性の比WS/TSとの関係を示すグラフである。
【図6】各実施例および比較例における金属線の幅と厚みとの比W/Tと打込み本数Pとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の一好適な実施の形態に係るトラック・バス用空気入りラジアルタイヤの幅方向片側断面図を示す。図示するように、本発明のトラック・バス用空気入りラジアルタイヤ10は、左右一対のビード部6に設けられたビードコア1と、クラウン部から両サイドウォール部5を経て両ビード部6に延び、ビードコア1に巻回されてビード部6に係留されたラジアルカーカス2と、ラジアルカーカス2のクラウン部タイヤ径方向外側に配置された、少なくとも3層(図示例では4層)のベルト層からなるベルト3と、で強化されたトレッド部4を備えている。本発明においては、最内層ベルト層は、長手方向に直行する断面が扁平形状である金属線が撚り合わされることなく、扁平形状の長径とベルト幅方向とが一致するようにベルト幅方向に平行かつ平面に間隔を空けてゴムに埋設されてなる。
【0015】
図2に、本発明に係る扁平形状の金属線20の一例の断面図を示す。従来、一般的に、最内層ベルトに使用されていた補強材は、図4にその一例を示すように、その長さ方向に直行する断面の形状が略円形の金属線40を撚り合わせた金属コードであった(図示例では1+6構造)。しかしながら、本発明においては、最内層ベルトに使用される金属線20は、図2に示すように、その断面が扁平形状である点に特徴を有する。最内層ベルトは、タイヤ赤道面に対しての傾斜角度、すなわち、カーカスコードとの成す角が比較的低角であるので、この最内層ベルトに用いられる金属線は、他のベルト層の金属線に比べ圧縮ひずみを受けやすい。そのため、耐折れ性が重要なのである。図2に示すような扁平形状の金属線は金属コードに比べて、繰り返し圧縮ひずみを受けたときの変形が小さいので折れが発生しにくく、耐久性のよいベルトとなる。また、断面が扁平形状の金属線は金属コードと比較して厚みが小さいため、ベルト層の厚みを薄くでき、タイヤの軽量化が図れる。
【0016】
また、本発明においては、扁平形状の金属線の幅W(mm)と厚みT(mm)とが下記式(1)
2.0≦W/T≦6.0 (1)
で表される関係を満足する必要がある。W/Tが2.0未満では、後述するWS/TSが低過ぎて耐折れ性が低下してしまう。一方、W/Tが6.0を越えると、金属線の製造が困難となる。
【0017】
さらに、本発明においては、扁平形状の金属線の幅方向曲げ剛性WS(kgf・mm)と厚み方向曲げ剛性TS(kgf・mm)とが下記式(2)、
5.0≦WS/TS≦35.0 (2)
で表される関係を満足する必要もある。WS/TSが5.0未満では、金属線に圧縮ひずみが加わったときに金属線の変形が大きくなり、耐折れ性が低下してしまう。一方、WS/TSが35.0を超えると、上記W/Tも必然的に大きくなり、金属線の製造が困難となる。
【0018】
さらにまた、最内層ベルトへの扁平形状の金属線の打込み本数P(本/50mm)が下記式(3)、
−24.9×Ln(W/T)+53.7≦P≦−34.4×Ln(W/T)+83.3 (3)
(式中、WおよびTは前記と同じものであり、Lnは自然対数を示す)で表される関係を満足する必要もある。打込み本数Pが−24.9×Ln(W/T)+53.7未満では、軽量化し過ぎるため耐折れ性が低下してしまう。一方、打込み本数Pが−34.4×Ln(W/T)+83.3超えると、軽量化に不利となる。
【0019】
扁平形状の金属線20の断面形状としては、具体的には例えば、図2に示すように、一対の平行な直線部11と、その外側に凸となって対向する一対の円弧部12と、を有するトラック形であることが好ましい。この場合の円弧部12の曲率半径R(mm)は、好適には、厚みT(mm)に対し、下記式(4)、
0.6354×T≦R≦0.77×T+0.019 (4)
で表される関係を満足するものとする。円弧部12の曲率半径Rが0.6354×T未満では、曲率半径が小さ過ぎるために金属線とゴムとの接着界面に発生する剪断応力が局所的に大きくなって、セパレーションが生じ易くなるおそれがある。一方、曲率半径Rが0.77×T+0.019を超えると、直線部11と円弧部12との境界領域において金属線とゴムとの接着界面に発生する剪断応力が局所的に大きくなって、セパレーションが生じ易くなるおそれがある。
【0020】
また、本発明においては、特には、図3に示すように、一対の平行な直線部21と、その外側に凸となって対向する一対の円弧部22と、さらに直線部21から円弧部22に推移する部位にもう一対の円弧部23と、を有するトラック形の断面形状を有する扁平形状金属線30を用いることが好ましい。断面形状をこのようにすることで、耐折れ性を効果的に改善することができる。この場合の円弧部22の曲率半径Ra(mm)は、好適には厚みT(mm)に対し、下記式(5)、
0.5×T≦Ra≦0.77×T+0.019 (5)
で表される関係式を満足するものとする。この曲率半径Raが0.5×T未満では、曲率半径が小さすぎるために金属線とゴムの接着界面に発生する剪断応力が局所的に大きくなって、セパレーションが生じ易くなる。一方、曲率半径Raが0.77×T+0.019を超えると、円弧部23との境界領域において金属線とゴムとの接着界面に発生する剪断応力が局所的に大きくなって、セパレーションが生じ易くなる。
【0021】
さらに、円弧部23の曲率半径Rbは、好適には厚みT(mm)に対し、下記式(6)、
T≦Rb≦2.5×T (6)
で表される関係式を満足するものとする。円弧の曲率半径RbがT未満では、曲率半径が小さすぎるために曲げ大変形時に円弧部23の局所歪が大きくなって、車両の急旋回時などの際にワイヤの折れが発生しやすくなってしまう。一方、曲率半径Rbが2.5×Tを超えると、ワイヤの円弧部22との境界領域において金属線とゴムとの接着界面に発生する剪断応力が局所的に大きくなって、セパレーションが生じ易くなる。また、直線部21との境界領域において曲げ大変形時に発生する歪が局所的に大きくなって、車両の急旋回時などの際に金属線の折れが発生しやすくなってしまう。
【0022】
本発明に係る扁平形状の金属線は、通常の円形断面の金属線を製造するための従来の設備および工程をそのまま利用して、その伸線加工の後半部においてローラ間で圧延するか、または、扁平穴のダイスを通す等により扁平化することで、経済的かつ簡便に製造することが可能である。
【0023】
本発明のトラック・バス用空気入りラジアルタイヤは、最内層ベルト層に用いる金属線について、上記条件を満足するものであればよく、それ以外のベルト層の構造については特に制限はなく、公知の構造を採用することができる。また、タイヤ構造の詳細や各部材の材質等についても特に制限されず、従来公知のもののうちから適宜選択して構成することができる。例えば、トレッド部4の表面には適宜トレッドパターンが形成され、ビードコア1のタイヤ半径方向外側にはビードフィラー(図示せず)が配置され、タイヤの最内層にはインナーライナーが配設される。さらにまた、本発明のタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常のあるいは酸素分圧を変えた空気、または窒素等の不活性ガスを用いることが可能である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
<実施例1〜4、比較例1〜4および従来例1,2>
図1に示す構造を有するトラック・バス用空気入りラジアルタイヤ(タイヤサイズ:11R22.5)に、タイヤ赤道面に対し右52°の角度で傾斜する最内層ベルトを適用して作製した。実施例1〜4および比較例1〜4のタイヤの最内層ベルトには、下記表1および2のコード仕様欄に示されたスペックに従う金属線をそれぞれ用いた。従来例1、2のタイヤは、図4に示すように、断面が円形である従来の金属線を1+6構造に撚り合せた金属コードである。なお、最内層ベルト層以外のベルト層は1+6構造の撚りコードを用いた。
【0025】
得られた各供試タイヤにつき、以下に従い各性能試験を実施した。その結果を、下記表1および2に併せて示す。また、各実施例および比較例における、金属線の幅と厚みとの比W/Tと幅方向曲げ剛性と厚み方向曲げ剛性の比WS/TSとの関係を示すグラフを図5に、金属線の幅と厚みとの比W/Tと打込み本数Pとの関係を示すグラフを図6に、それぞれ示す。なお、図5のグラフ中の2本の直線、および、図6のグラフ中の2本の曲線は、それぞれ、前記式(2),(3)の上限値および下限値に対応する。
【0026】
<内層ベルト質量>
各供試タイヤに用いた最内層ベルトの単位面積あたりの質量を測定し、従来例1を100として指数表示した。この数値が小さいほど最内層ベルトの質量が小さく、軽量であるが、社会的要請に応えるには75以下が必要となる。
【0027】
<耐折れ性試験>
各供試タイヤを正規リムに装着し充填内圧1気圧のもとで室内ドラム試験機上で1000kgの荷重を負荷して5000km走行後、タイヤを解剖して最内層ベルトのコードを50本採取し、金属線の折れ本数を測定した。耐折れ性は、採取本数に対する折れ発生本数を%で表示したもので、数字が大きいほど耐折れ性が劣っていることを示す。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
上記表1および2に示すとおり、本発明の条件を満足する実施例1〜4のタイヤにおいては、金属線の折れがなく、かつ、従来例1対比で25%以上の軽量化が達成されている。これに対し、従来例2のタイヤは、従来例1のタイヤのコード打込み本数を減らしたため、折れが発生した。また、比較例1のタイヤは、金属線の幅と厚みの比W/Tが小さく、幅方向曲げ剛性と厚み方向曲げ剛性の比WS/TSが小さ過ぎて、折れが発生した。比較例2のタイヤは、内層ベルトを軽量化し過ぎたため、折れが発生した。比較例3のタイヤは、金属線の幅と厚みの比が大きいため、金属線の製造が困難で、金属線加工段階で金属線断面内に亀裂が生じており、このため折れが発生した。さらに、比較例4のタイヤは、従来例1対比での25%以上の軽量化が達成されていない結果となっている。
【符号の説明】
【0031】
1 ビードコア
2 ラジアルカーカス
3 ベルト
4 トレッド部
5 サイドウォール部
6 ビード部
10 トラック・バス用空気入りラジアルタイヤ
11,21 直線部
12,22,23 円弧部
20,30,40 金属線
W 金属線の幅
T 金属線の厚み
R 金属線の円弧部12の曲率半径
Ra 金属線の円弧部22の曲率半径
Rb 金属線の円弧部23の曲率半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のビードコア間に跨ってトロイド状をなすラジアルカーカスのクラウン部のタイヤ半径方向外側に、少なくとも3層のベルト層からなるベルトを備えたトラック・バス用空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記ベルトの最内層ベルト層が、長手方向に直行する断面が扁平形状である金属線が撚り合わされることなく扁平形状の長径とベルト幅方向とが一致するようにベルト幅方向に平行かつ平面に間隔を空けてゴムに埋設されてなり、
前記扁平形状の金属線の幅W(mm)と厚みT(mm)とが下記式(1)、
2.0≦W/T≦6.0 (1)
で表される関係を満足し、
前記扁平形状の金属線の幅方向曲げ剛性WS(kgf・mm)と、厚み方向曲げ剛性TS(kgf・mm)とが下記式(2)、
5.0≦WS/TS≦35.0 (2)
で表される関係を満足し、かつ、
前記最内層ベルト層に対する前記扁平形状の金属線の打込み本数P(本/50mm)が下記式(3)、
−24.9×Ln(W/T)+53.7≦P≦−34.4×Ln(W/T)+83.3 (3)
(式中、前記と同じものであり、Lnは自然対数を示す)で表される関係を満足することを特徴とするトラック・バス用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
前記扁平形状の金属線の断面形状が、一対の平行な直線部と、その外側に凸となって対向する一対の円弧部と、を有するトラック形状である請求項1記載のトラック・バス用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
前記扁平形状の金属線の断面形状が、一対の平行な直線部と、その外側に凸となって対向する一対の円弧部と、さらに該直線部から該円弧部に推移する部位にもう一対の円弧部と、を有するトラック形である請求項2記載のトラック・バス用空気入りラジアルタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103591(P2013−103591A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248231(P2011−248231)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)