説明

トラック用アンダーラン・プロテクタ構造

【課題】 3分割構造のトラック用アンダーラン・プロテクタ(潜り込み防止装置)の改良に関する。
【解決手段】開断面で構成されるトラック用アンダーラン・プロテクタの本体部材を中央部材と、該中央部材と異なる厚みの左右一対の外側部材の3分割構造とし、前記中央部材の左右の両端部分に前記左右の外側部材の内端の一方端部分を嵌合すると共に、重複個所が補強部分となるように重ね合わせて固着し、固着された本体部分の板厚が、外側部材のみの板厚と、中央部材と外側部材の重複個所の板厚と、中央部材だけの板厚との3段階に設定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、3分割構造のトラック用アンダーラン・プロテクタ(潜り込み防止装置)の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば図8から図10で示すように、開断面で構成されるトラック用リア・アンダーラン・プロテクタは、本体部分50を最長2.3mの全長に設定し、該本体部分50の中途位置の左右両側に補強部材51、52を固着する構造が知られている。
この場合、本体部分50はアンダーラン・プロテクタと同じ全長となるため、その成型には大型のプレス機を必要とする。
また、アンダーラン・プロテクタの全長のバリエーションに対応するために、本体部分50は、図9に示すように、アンダーラン・プロテクタの長さに対応して、それぞれ長さの異なるものを用意する必要があった。
この場合、高さ方向の中央部断面板厚は、本体部分50の板厚をt1とし、補強部51、52の板厚をt2とすると、図10(b)に示すように、アンダーラン・プロテクタの板厚の変化は、t1の個所とt1+t2の個所の2段階のみとなる。
ところが、法規荷重中のP1荷重位置5(図4参照)は、アンダーラン・プロテクタの外端から約200mm内側となり、曲げモーメントを考慮すると外側は薄肉にしても規定荷重を満たすことができるが、アンダーラン・プロテクタの補強部51、52が重ならない中央部と外端部の板厚は前記の通りt1で同一となり、外側に無駄な板厚を持つことになる。
【0003】
また、フロント・アンダーラン・プロテクタとして、例えば、特開2004−243831では、アンダーラン・プロテクタを左側部と中央部と右側部との3分割し、中央部の板厚を薄肉にして、補強部材を介して左側部と右側部とに突合せ溶接する構造を用いている。
しかし、この場合、左側部と右側部とは共通化することができるが、中央部はアンダーラン・プロテクタの長さに合わせる必要があった。
また、上記3分割構造のフロント・アンダーラン・プロテクタ構造では、中空断面の重なり部分を補強形状としているが、中空であるため板厚の重なり部分の形状を適切に変化させられないという不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−243831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、アンダーラン・プロテクタに適切な板厚変化をさせると共に、構成部品を小型化、共通化することで、本体部分を種々バリエーションに対応させることができる、軽量で安価なアンダーラン・プロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
開断面で構成されるトラック用アンダーラン・プロテクタの本体部材を中央部材と、該中央部材と異なる厚みの左右一対の外側部材の3分割構造とし、
前記中央部材の左右の両端部分に前記左右の外側部材の内端の一方端部分を嵌合すると共に、重複個所が補強部分となるように重ね合わせて固着し、
固着された本体部分の板厚が、外側部材のみの板厚と、中央部材と外側部材の重複個所の板厚と、中央部材だけの板厚との3段階に設定されることを特徴とする。
また、請求項2の発明では、
前記左右一対の外側部材の形状を同一にして、左右を反転させることで左右の外側部材を共用しうることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、開断面からなる中央部材と左右の外側部材との3分割構造を用いながら、中央部材と外側部材の板厚を変えることで、強度が必要な重複部分の板厚を厚くし、強度を要しない外端部分の板厚を薄くすることで、ほぼ同じP1荷重解析値を実現しながら軽量化を図ることができる。
また、中央部材の左右端部側に左右の外側部材をそれぞれ必要個所だけ重複させればよいので、中央部材の短縮化が図れると共に、組立時における本体部材の長さ調整を行うこともできる。
更に、アンダーラン・プロテクタは開断面であるため、抜き型形状により、法規荷重に適応するための適切な断面変化を中央部材と外側部材の外周形状で形成し調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のアンダーラン・プロテクタの本体部材の組立状態を示す分解斜視図である。
【図2】中央部材と一方の外側部材との固着状態を示す部分斜視図である。
【図3】(a)は本体部材の正面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図4】トラックにアンダーラン・プロテクタを取り付けた状態およびP1荷重位置を模式的に示す背面図である。
【図5】同一の中央部材と左右の外側部材を組み合わせた状態を模式的に示す正面図であって、(a)は本体部材の全長を長く調整した場合、(b)は短く調整した場合である。
【図6】(a)は従来構造でのP1荷重線図、(b)は本実施例でのP1荷重線図である。
【図7】中央部材の両端部分と左右の外側部材の一方端部分の端部形状の異なる実施例を模式的に示すもので、(a)は端部が楕円形状のもの、(b)は斜辺形状のもの、(c)は段差形状のもの、(d)は垂直線形状のものである。
【図8】従来のリア・アンダーラン・プロテクタの本体部分の組立状態を示す分解斜視図である。
【図9】(a)は従来構造の本体部分の長さが長い場合、(b)は長さが短い場合を模式的に示す正面図である。
【図10】(a)は従来構造の本体部材の正面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
アンダーラン・プロテクタにかかる荷重に対応して適切な板厚変化をさせるという目的を、開断面で板厚の異なる中央部材と左右の外側部材により実現した。
以下に、この発明をトラック用リア・アンダーラン・プロテクタに適用した場合の好適実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
[アンダーラン・プロテクタ]
アンダーラン・プロテクタ1は、前記図4に示すように、トラック2後方で車台フレーム3にステイ4を介して略水平に固定されており、P1荷重位置5を超えて外側に延びている。
このアンダーラン・プロテクタ1の主要部となる本体部材1Aは、図1から図3に示すように、開断面部材で構成されており、中央部材10と、左右一対の外側部材20、30との3分割構造からなっている。
【0011】
[中央部材]
本実施例の場合、中央部材10は板厚をT1としており(図3(b)参照)、断面略チャネル状の開断面で左右方向に略水平に延びており、中央部材10の左右の両端部分11、12において、その上下の壁面11a、11cおよび12a、12cが外方に向かいながら表壁面に近づくほど幅狭となって表壁面の縁部につながっており、表壁面11b、12bでは、上下の縁部から外方に向かいながら表壁面11bおよび12bの中央に近づくほど幅狭となるテーパ面からなっている(図1参照)。
【0012】
中央部材10の開断面は断面チャンネル状であってもよいが、本実施例では図3(c)に明瞭なように、断面チャンネル状のチャンネル部13の上下の両端縁部14、15を前記チャンネル部13とは逆向きに僅かに断面コ字状に折り返して強度を高めた図示例形状からなっている。
【0013】
[外側部材]
左右の外側部材20、30は、板厚をT2(T2<T1)とし(図3(b)参照)、断面略チャネル状の開断面で左右方向に延びており、外側部材20、30の内側となる右端または左端の一方端部分21、31が、前記中央部材10の両端部分11、12のいずれか一方と同じく、その上下の壁面21a、21cおよび31a、31cが外方に向かいながら表壁面に近づくほど幅狭となって表壁面の縁部につながっており、表壁面21bおよび31bでは、上下の縁部から外方に向かいながら表壁面21bおよび31bの中央に近づくほど幅狭となるテーパ面からなっている。
【0014】
左右の外側部材20、30の開断面は断面チャンネル状であってもよいが、本実施例では、中央部材10と同様に、断面チャンネル状のチャンネル部23、33の上下の両端縁部24、25、34、35を前記チャンネル部23、33とは逆向きに僅かに断面コ字状に折り返して強度を高めた図示例形状からなっている。
【0015】
そして、この開断面は、前記中央部材10に外側から左右の外側部材20、30を外嵌した際に、チャンネル部23、33が中央部材10のチャンネル部13に隙間無く外嵌し、上端縁部24、34が中央部材10の上端縁部14に、下端縁部25、35が中央部材10の下端縁部15にそれぞれ隙間無く嵌合するようになっている(図3(c)参照)。
そして、本実施例では左右の外側部材20、30は、ステイ4取付用のボルト孔6の配置以外の基本形状が同一形状からなっているので、一方を180°回転させることで共用することができる。
そして、全長の異なる仕様を、前記ボルト孔6の打ち分けのみで、中央部材10に対する外側部材20、30のボルト孔6の穿設位置を調整して本体部材1Aを所望の全長として組付けることができる。
【0016】
[組立構造]
上記構成からなっているので、中央部材10の左右の外端側にそれぞれ左右の外側部材20、30の内端側を嵌合して組み立てるが、その際に本体部材として補強が必要な範囲に重複部分が形成されるように重ね合わせる(図3(a)参照)。
そして、少なくとも中央部材10の端面17を一部CO2溶接し、重複部分をスポット溶接するなどの固定手段によって、中央部材10と左右の外側部材20、30とを重ね合わせた状態で一体に固着して本体部材1Aを形成する。
【0017】
これにより、本体部材1Aの板厚は、図3(b)に示すように、左右両端側が両端部分11、12の端部側のみで最も薄い板厚T2となり、その内側が両端部分11または12と中央部材10とが重複して最も厚い板厚T1+T2となり、中央が中央部材10のみのやや薄い板厚T1の3段階に変化させることができ、法規荷重中のP1荷重位置を最も厚い板厚にすることができ、該P1荷重位置の外側は曲げモーメントを考慮すると薄肉にしても規定荷重を満たすことができるので、外側に無駄な板厚を持つことが無くなる。
【0018】
この発明では、中央部材10に対して左右の両端部分11、12の一方端部分21、31の重複位置を長さ方向に任意に調整して固着することができるので、図5に示すように、トラックの車幅に応じてP1荷重位置が最も厚くなるように、中央部材10に対して左右の外側部材20、30を外側(図5(a)参照)または内側(図5(b)参照)にスライドさせ調整した位置で固定することで、トラックのP1荷重位置の違いに対応させることができる。
【0019】
[P1荷重線図]
このように構成された本実施例のアンダーラン・プロテクタ1と、図8以降に示した従来構造のリア・アンダーラン・プロテクタ50とを対比すると、従来構造では本体部材50の板厚を2.3mmとし、補強材52、52の板厚を2.3mmとし、総重量を約22kgとしたリア・アンダーラン・プロテクタのP1荷重解析値が53.3kNとなる(図6(a)の荷重線図参照)。
一方、本実施例では、同一素材の中央部材10の板厚を2.3mmとし、外側部材20、30の板厚を2.0mmとし、総重量を約20kgとしたアンダーラン・プロテクタのP1荷重解析値が52.0kNとなり(図6(b)の荷重線図参照)、ほぼ同様であった。
【0020】
また、従来構造のリア・アンダーラン・プロテクタ50では、本体部材50の長さを約2.3mとするのに対して、本実施例では中央部材10の長さを約1.8mと小型化することができる。
これらにより本実施例の方が従来構造に比べて、ほぼ同様のP1荷重解析値でありながら約10%程度の軽量化を図ることができた。
【0021】
本実施例では中央部材10の両端部分11、12と左右の外側部材20、30の一方端部分21、31とは、それぞれ略横倒梯形状の場合を例示したが、この発明では上記形状に限定されない。
例えば、図7(a)では、端部の表壁面の形状が半楕円形状からなっているが半円形状でもよい。
また、図7(b)では、端部の表壁面の形状が傾斜辺形状となっているが、本体部材と外側部材とで傾斜辺の傾斜方向が図示例のように同じであってもよいし、反対であってもよい。
【0022】
図7(c)では、端部の表壁面の形状が段差を有する凸形状となっている。
更に、図7(d)では、端部の表壁面にこのような幅狭部分を設けない形状を示す。
その他、重複部分が規定荷重を満たしうる形状であれば上記各実施例に限定されず、公知の形状に置き換えることができる。
また、上記実施例では、トラック用のリア・アンダーラン・プロテクタとして用いる場合を例示したが、フロント・アンダーラン・プロテクタとして用いるものであってもよい。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【符号の説明】
【0023】
1 アンダーラン・プロテクタ
1A 本体部材
2 トラック
3 車台フレーム
4 ステイ
5 P1荷重位置
10 中央部材
11、12 左右の両端部分
11a、12a 上壁面
11b、12b 表壁面
11c、12c 下壁面
13 チャンネル部
14、15 上下の両端縁部
17 CO2溶接個所の端面
20、30 外側部材
21、31 一方端部分
21a、31a 上壁面
21b、31b 表壁面
21c、31c 下壁面
23、33 チャンネル部
24、34 下方の端縁部
25、35 上方の端縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開断面で構成されるトラック用アンダーラン・プロテクタの本体部材を中央部材と、該中央部材と異なる厚みの左右一対の外側部材の3分割構造とし、
前記中央部材の左右の両端部分に前記左右の外側部材の内端の一方端部分を嵌合すると共に、重複個所が補強部分となるように重ね合わせて固着し、
固着された本体部分の板厚が、外側部材のみの板厚と、中央部材と外側部材の重複個所の板厚と、中央部材だけの板厚との3段階に設定されることを特徴とするトラック用アンダーラン・プロテクタ。
【請求項2】
左右一対の外側部材の形状を同一にして、左右を反転させることで左右の外側部材を共用しうることを特徴とする請求項1に記載のトラック用アンダーラン・プロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−241247(P2010−241247A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91582(P2009−91582)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)