説明

トランシーバ

【課題】スリープモードにあるノードの消費電力を増大させることなく、起動用信号を送受信できるようにする。
【解決手段】トランシーバを構成する符号化復号化部22において、送信側セレクタ28および受信側セレクタ30は、モード設定信号NSLPが示す動作モードが通常モードの時には、符号化された送信データ(符号化回路27の出力)および復号化された受信データ(復号化回路29の出力)をそれぞれ選択し、動作モードがスリープモードの時には、符号化されていない送信データ(送信データTXD)および復号化されていない受信データ(受信データRX)をそれぞれ選択する。これにより、通常モードでは、PWM符号に符号化されたデータTX,RXを用いてノード間の通信を行うことができ、スリープモードでは、符号化されていないデータTX,RXを用いてウェイクアップパルスを送受信することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリープ/ウェイクアップ機能を有したノードに適用されるトランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される通信システムとして、CAN(Controller Area Network )やLIN等、バス通信路を利用するものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
この種の通信システムにおいて効率の良い通信を行うには、バス通信路を介して信号を送受信するために各ノードに設けられるトランシーバの動作を、互いに同期させることが望ましい。
【0003】
この場合、いずれか一つのノードが、クロック成分を含む伝送路符号によって符号化された信号をバス通信路に送信し、他のノードは、バス通信路上の信号からクロック成分を抽出して、自トランシーバで発生させた自走クロックを加工(分周等)することによって、その抽出したクロック成分に同期したバスクロックを生成し、そのバスクロックに従ってトランシーバを動作させるものが考えられている。
【0004】
また、通信システムを構成する各ノードの消費電力を低減するために、予め設定されたスリープ条件が成立すると、ノードの持つ機能の一部を停止させる動作モードであるスリープモードに遷移し、スリープモードにあるノードは、自ノードでウェイクアップ条件が成立するか、或いは、通信路に所定の起動用信号が送出されたことを検出すると、ノードの持つ機能を全て動作させる動作モードであるウェイクアップモードに遷移する機能を持たせることも考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】佐藤道夫著「車載ネットワークシステム徹底解説」CQ出版株式会社、2005年12月1日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スリープモードにあるノードを、起動用信号を用いて起動する場合、起動用信号をいつでも受信できるように、動作モードに拘わらずトランシーバを常時動作させておく必要がある。
【0007】
しかし、トランシーバを動作させると、当該トランシーバの動作に必要なバスクロックやバスクロックに同期した各種タイミング信号が生成されるため、スリープモードであるにも拘わらず、無視できない電力が消費されてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するために、スリープモードにあるノードの消費電力を増大させることなく、起動用信号を送受信できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明のトランシーバは、NRZ符号で表された送信データを入力するための入力端子、NRZ符号で表された受信データを出力するための出力端子、通信路を介して伝送される通信データを入出力するための通信端子、NRZ符号から予め設定された伝送路符号への符号化および前記伝送路符号からNRZ符号への復号化を行う動作モードである通常モード、符号化および復号化する機能を停止させ低消費電力状態にする動作モードであるスリープモードのいずれかを指定するモード設定信号を入力するためのモード設定端子を備えている。
【0010】
そして、送信切替回路が、モード設定信号で示された動作モードが通常モードである場合には、入力端子から入力される送信データを符号化回路に供給することによって、符号化回路にてNRZ符号から伝送路符号に符号化された送信データを、通信データとして通信端子から出力させ、モード設定信号で示された動作モードがスリープモードである場合には、入力端子から入力される送信データをそのまま通信データとして通信端子から出力させる。
【0011】
これと共に、受信切替回路が、モード設定信号で示された動作モードが通常モードである場合には、通信端子から入力される通信データを復号化回路に供給することによって、復号化回路にて伝送路符号からNRZ符号に復号化された通信データを、受信データとして出力端子から出力させ、モード設定信号により示された動作モードがスリープモードである場合には、通信端子から入力される通信データをそのまま受信データとして通信端子から出力させる。
【0012】
このように構成された本発明のトランシーバでは、通常モードの場合、伝送路符号に符号化された通信データを、通信路を介して送受信することができ、スリープモードの場合、NRZ符号で表されたデータを、通信路を介して送受信することができる。
【0013】
つまり、本発明のトランシーバによれば、スリープモードの時には、符号化回路や復号化回路を動作させることなくNRZ符号で表された起動用信号の送受信が可能なため、スリープモードでの消費電力を削減することができる。
【0014】
ところで、本発明のトランシーバは、クロック信号を発生させるクロック発生部を有し、該クロック発生部が発生させたクロック信号に基づき、符号化回路および復号化回路の動作を制御するための各種タイミング信号を生成するタイミング生成回路を備えていてもよい。
【0015】
この場合、タイミング生成回路は、モード設定信号で示された動作モードがスリープモードである場合、クロック発生部の動作を停止することによって、符号化回路および復号化回路の動作を停止させてもよい。
【0016】
これにより、スリープモードでは、クロック信号や各種タイミング信号の生成も停止されることになるため、消費電力を更に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車載通信システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】(a)はバス通信路で使用する伝送路符号の構成、(b)はバス通信路を介して送受信されるフレームの構成、(c)はUARTが送受信するブロックデータの構成を示す説明図。
【図3】マスタノード、スレーブノードの構成を示すブロック図。
【図4】タイミング生成部が生成する各種タイミング信号を示す説明図。
【図5】符号化復号化部の構成を示すブロック図。
【図6】各動作モードでの動作を示すタイミング図。
【図7】信号処理部が実行するウェイクアップ処理の内容を示すフローチャート。
【図8】信号処理部が実行するスリープ処理の内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<全体構成>
図1は、車両に搭載され、ボデー系のアプリケーションを実現する電子制御装置(ボデー系ECU)や、車両の状態を検出したり車両の状態を制御したりするために設けられた関連機器(ライト,センサ等)からなるノード3を、バス状の通信路(以下「バス通信路」という)5を介して相互に接続した通信システム1の概略構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、通信システム1を構成するノード3のうち、ボデー系ECUとしては、ボデー・ワイパECU,シートECU,スライドドアECU,ミラーECU,バックドアECU,ライトECU,チルテレ(電動ステアリング位置調整装置)ECU等があり、一方、関連機器としては、ライトSW,ワイパSW,ライトセンサ,レインセンサ等がある。
【0020】
<バス通信路>
バス通信路5は、異なるノード3からハイレベルの信号とロウレベルの信号とが同時に出力されると、バス通信路5上の信号レベルがロウレベルとなるように構成されており、この機能を利用してバス調停を実現する。
【0021】
ここで図2(a)は、バス通信路5で使用する伝送路符号を示す説明図である。
図2(a)に示すように、バス通信路5では、伝送路符号として、ビットの途中で信号レベルがロウレベルからハイレベルに変化するPWM符号が用いられ、レセッシブ(本実施形態では1に対応)およびドミナント(本実施形態では0に対応)からなる二値の信号を2種類のデューティ比で表現する。
【0022】
具体的には、ドミナントの方がレセッシブよりロウレベルの比率が長くなるよう(本実施形態では、レセッシブが1ビットの1/3の期間、ドミナントが1ビットの2/3の期間)に設定され、バス通信路5上でレセッシブとドミナントとが衝突すると、ドミナントが調停勝ちするようにされている。
【0023】
そして、通信システム1では、調停負けしたノード3は送信を直ちに停止し、調停勝ちしたノード3のみが送信を継続する、いわゆるCSMA/CA方式のアクセス制御方式が用いられている。
【0024】
また、図2(b)は、ノード3間の通信に使用するフレームの構成を示す説明図である。
図2(b)に示すように、フレームは、送信を許可するデータを指定するためのヘッダと、ヘッダによって指定されたデータを送信するための可変長のレスポンスからなる。
【0025】
このうち、ヘッダは、送信を許可するデータの識別子(ID)からなり、IDの値が小さいほど、バス調停で勝ち残るように設定されている。一方、レスポンスは、データ以外に、データ(レスポンス)のサイズを示すサイズ情報、エラーの有無をチェックするためのCRC符号が少なくとも含まれている。
【0026】
<ノード共通>
各ノード3は、予め割り当てられた全ての機能を実行可能な動作モードであるウェイクアップモード、一部の機能(ここでは符号化,復号化)を停止して低消費電力状態を実現する動作モードであるスリープモードで動作する。
【0027】
また、ノード3の一つ(ここではボデー・ワイパECU)をマスタ3a、他のノードをスレーブ3bとして、マスタ3aがヘッダを送信することによって、送信を許可するデータ(ひいてはデータの送信元となるスレーブ3b)を順次指定し、ヘッダによって指定されたデータの送信元となるスレーブ3bがレスポンス(データ)を送信するポーリングと、マスタ3aからの指示によらずスレーブ3bが自律的に通信を制御するイベント通信とを実行する。
【0028】
以下、マスタ3aおよびスレーブ3bの構成を、図3に示すブロック図を参照して説明する。
<マスタ>
マスタ3aは、バス通信路5を介した他ノード3との通信によって得られた情報等に基づき、自ノード3に割り当てられた各種処理を実行する信号処理部10と、信号処理部10から供給されるNRZ符号の送信データTXDを、入力端子PIを介して取り込み、取り込んだ送信データTXDをPWM符号に符号化したもの、或いは符号化していないそのままのものを送信データTXとして通信端子PTを介してバス通信路5に出力すると共に、バス通信路5から通信端子PTを介して取り込んだ受信データRXをPWM符号からNRZ符号に復号化したもの、或いは復号化していないそのままのものを受信データRXDとして出力端子POを介して信号処理部10に供給するトランシーバ20とを備えている。
【0029】
また、トランシーバ20は、入力端子PI,出力端子PO,通信端子PTの他に、信号処理部10から供給される内部クロックCKを取り込むためのクロック端子PC、同じく信号処理部10から供給されるモード設定信号NSLPを取り込むためのモード設定端子PMを備えている。
【0030】
<<信号処理部>>
信号処理部10は、CPU,ROM,RAM,IOポート等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、更に、調歩同期(非同期)方式のシリアル通信を実現するUART(汎用非同期受信・送信機:Universal Asynchronous Receiver Transmitter )、11、当該信号処理部10を動作させるための動作クロックや、UART11の通信速度と同じ速度(本実施形態では20Kbps)に設定されトランシーバ20に供給する内部クロックCKを発生させる発振回路12を備えている。
【0031】
但し、発振回路12は、水晶発振子を用いて構成され、安定した周波数で発振する高精度のものが用いられている。また、信号処理部10は、自ノードの動作モードがウェイクアップモードの時には非アクティブレベルとなり、動作モードがスリープモードの時にはアクティブレベルとなるモード設定信号NSLPをトランシーバ20に供給するように構成されている。
【0032】
ここで図2(c)は、UART11が送受信するデータTXD,RXDの構成を示す説明図である。図示されているように、UART11は、データの開始を示す1ビット長のスタートビット(ロウレベル)と、データの終了を示すストップビット(ハイレベル)と、これらスタートビット,ストップビットに挟まれた8ビットのデータとで構成された合計10ビットのブロックデータを単位として送受信する。但し、主要部となる8ビットのデータは、LSB(最下位ビット)が先頭、MSB(最上位ビット)が末尾となるように設定されている。
【0033】
なお、前述のフレーム(図2(b)参照)を構成するヘッダは、単一のブロックデータで構成され、スタートビット,ストップビットを除く8ビットのデータのうち、7ビットはIDとして用いられ、1ビットはパリティビットとして用いられる。また、レスポンスは、1ないし複数個のブロックデータで構成され、最初のブロックに、サイズ情報が設定される。
【0034】
<<トランシーバ>>
図3に戻り、トランシーバ20は、信号処理部10からクロック端子PCを介して供給される内部クロックCKに同期した各種タイミング信号を生成するタイミング生成部21と、タイミング生成部21にて生成されたタイミング信号に従って、送信データTXDの符号化、受信データRXの復号化を行う符号化復号化部22と、符号化復号化部22にて符号化された送信データTXを通信端子PTから出力する送信バッファ23と、通信端子PTを介して取り込んだ信号を2値化し受信データRXとして符号化復号化部22に供給する受信バッファ24とを備えている。
【0035】
なお、送信バッファ23は、上述したバス通信路5上でのバス調停が可能となるように、例えば、周知のオープンコレクタ回路を用いて構成されている。また、受信バッファ24は、バス通信路5の信号レベルが、予め設定された閾値より大きければハイレベル、閾値より低ければロウレベルを出力する周知のコンパレータによって構成されている。
【0036】
タイミング生成部21は、複数のインバータをリング状に接続することで構成されたリングオシレータ等からなる簡易な発振回路を備え、この発振回路が発生させたカウント用クロックCCKを分周することによって、各種タイミング信号を生成する。
【0037】
<<タイミング生成部>>
ここで図4は、タイミング生成部21が生成する各種タイミング信号を示す説明図である。なお、発振回路が発生させるカウント用クロックCCKは、内部クロックCKに対して十分に高い周波数(数十〜数百倍程度)を有するように設定されている。
【0038】
タイミング生成部21は、内部クロックCKの立ち下がりエッジの間隔、即ち1周期の長さを、カウント用クロックCCKによってカウントするカウンタや、カウンタによって得られた周期カウント値Ci(i=1,2,…)に基づいて、カウント用クロックCCKを分周することによって内部クロックCKに同期した各種タイミング信号を発生させる分周回路等によって構成されている。
【0039】
そして、具体的には、各種タイミング信号として、以下に示すクロックを生成する。
図4に示すように、タイミング生成部21は、周期カウント値Ciに相当する周期を有し、立ち下がりエッジから立ち上がりエッジまでの間隔が周期カウント値Ciの1/2に相当する長さに設定されたデューティ50%のバスクロックBCKと、バスクロックBCKの立ち下がりエッジで立ち下がり、その立ち下がりエッジから周期カウント値の1/3に相当する期間だけ経過したタイミングが立ち上がりエッジとなるレセッシブ生成用クロックRCKと、バスクロックBCKの立ち下がりエッジで立ち下がり、その立ち下がりエッジから周期カウント値の2/3に相当する期間だけ経過したタイミングが立ち上がりエッジとなるドミナント生成用クロックDCKとを生成する。
【0040】
なお、タイミング生成部21では、モード設定信号NSLPが示す動作モードに従い、動作モードがウェイクアップモード(NSLP=1:非アクティブレベル)の時には、発振回路を動作させることによってタイミング信号の生成を行い、動作モードがスリープモード(NSLP=0:アクティブレベル)の時には、発振回路を停止することによってタイミング信号の生成を停止するように構成されている。
【0041】
<<符号化復号化部>>
次に、図5は、符号化復号化部22の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、符号化復号化部22は、入力端子を介して入力された送信データTXD(NRZ符号)を伝送路符号(PWM符号)に符号化する符号化回路27と、モード設定信号NSLPが示す動作モードに従い、符号化回路27の出力(符号化された送信データTXD)または符号化回路27をバイパスした符号化されていない送信データTXDのいずれかを、送信データTXとして送信バッファ23に供給する送信側セレクタ28とを備えている。
【0042】
また、符号化復号化部22は、受信バッファ24が取り込んだ受信データRXをNRZ符号に復号化する復号化回路29と、モード設定信号NSLPが示す動作モードに従い、復号化回路29の出力(復号化された受信データRX)または復号化回路29をバイパスした復号化されていない受信データRXのいずれかを、受信データRXDとして信号処理部10に供給する受信側セレクタ30と、送信データTXと受信データRXをビット単位(符号単位)で比較し、信号レベル(レセッシブ/ドミナント)が不一致である場合にアクティブレベルとなる衝突検出信号CDを符号化回路27に出力するビット調停回路31とを備えている。
【0043】
このうち、符号化回路27は、送信データTXDがロウレベル(0)の時に、ドミナント生成用クロックDCKを用いて、1ビット中の前2/3期間がロウレベル、後1/3期間がハイレベルとなるPWM符号(ドミナント)を生成し、送信データTXDがハイレベル(1)の時に、レセッシブ生成用クロックRCKを用いて、1ビット中の前1/3期間がロウレベル、後2/3期間がハイレベルとなるPWM符号(レセッシブ)を生成する。
【0044】
但し、信号処理部10から送信データTXDの供給がない場合(図示せず)、符号化回路27の入力はハイレベルとなり、バス通信路5上には、レセッシブが出力され続けるように構成されている。以下では、バス通信路5において、レセッシブが予め設定された許容ビット(本実施形態では11ビット)以上継続している期間をIFS(Inter Frame Space )と呼び、IFSが検出されている状態をアイドル状態という。
【0045】
また、符号化回路27は、衝突検出信号CDがアクティブになると(即ち、自ノード3が調停負けすると)、処理中の送信データTXDが属するブロックデータについての処理が終了するまでの間(即ち、スタートビットの立ち下がりエッジが検出されてからストップビットとなる10ビット目の末尾のタイミングまでの間)、送信データTXDの信号レベルに拘わらず強制的にレセッシブを出力するように構成されている。
【0046】
一方、復号化回路29は、バスクロックBCKの立ち上がりエッジで受信データRXをサンプリングし、そのサンプリングした結果を、復号化した受信データRXDとして出力するように構成されている。
【0047】
次に、送信側セレクタ28および受信側セレクタ30は、モード設定信号NSLPが示す動作モードが通常モードの時には、符号化された送信データ(符号化回路27の出力)および復号化された受信データ(復号化回路29の出力)をそれぞれ選択し、動作モードがスリープモードの時には、符号化されていない送信データ(送信データTXD)および復号化されていない受信データ(受信データRX)をそれぞれ選択するように構成されている。
【0048】
また、ビット調停回路31は、送信データTXおよび受信データRXの信号レベルをバスクロックBCKの立ち上がりエッジ(符号の真ん中付近)のタイミングでサンプリングし、そのサンプリングした信号レベルを排他的論理和回路(XORゲート)で比較するように構成され、XORゲートの出力を衝突検出信号CDとして出力する。
【0049】
<<トランシーバの動作>>
ここで図6は、各動作モードでのトランシーバ20の動作を示すタイミング図である。
図6に示すように、トランシーバ20は、動作モードが通常モード(NSLP:非アクティブ)である期間(T1〜T3,T6〜T7参照)では、送信データTXDをPWM符号に符号化したものを送信データTXとして出力すると共に、受信データTXを復号化したものを受信データRXDとして出力する。また、トランシーバ20は、信号処理部10から送信データTXDの供給がない場合(図示せず)でもバス通信路5にレセッシブを出力し続けることによって、マスタ3a以外のノード3に、バスクロックBCKの再生に必要なクロック成分を供給するクロックマスタとして動作する。
【0050】
一方、動作モードがスリープモード(NSLP:アクティブレベル)である期間(T4,T5参照)では、送信データTXDをそのまま送信データTXとして出力すると共に、受信データRXをそのまま受信データRXDとして出力する。この時、タイミング生成部21,符号化回路27,復号化回路29は動作を停止した状態となる。
【0051】
<スレーブ>
図3に戻り、スレーブ3bは、マスタ3aと同様に、バス通信路5を介した他ノード3との通信によって得られた情報等に基づき、自ノード3に割り当てられた各種処理を実行する信号処理部40と、信号処理部40から供給されるNRZ符号の送信データTXDを、入力端子PIを介して取り込み、取り込んだ送信データTXDをPWM符号に符号化したもの、或いは符号化していないそのままのものを送信データTXとして通信端子PTを介してバス通信路5に出力すると共に、バス通信路5から通信端子PTを介して取り込んだ受信データRXをPWM符号からNRZ符号に復号化したもの、或いは復号化していないそのままのものを受信データRXDとして出力端子POを介して信号処理部40に供給するトランシーバ50とを備えている。
【0052】
また、トランシーバ50は、入力端子PI,出力端子PO,通信端子PTの他に、信号処理部10から供給されるモード設定信号NSLPを取り込むためのモード設定端子PMを備えている。
【0053】
<<信号処理部>>
信号処理部40は、トランシーバ50に対して内部クロックCKを供給する機能が省略され、代わりに、UART11を介することなく受信データRXDを取り込んでクロック(PWM符号送出)の有無を判定するクロック判定機能を有する点以外は、信号処理部10と同様に構成されている。
【0054】
このクロック判定機能は、動作モードがスリープモードの時に使用され、トランシーバ50が出力端子POから出力する受信データRXD、即ち、バス通信路5上の信号を復号化することなく通過させた信号を入力し、所定期間(例えば1ms)以内に所定回(例えば10回)以上、立ち下がりエッジを検出した場合に、バス通信路5を介してクロックが供給されているもの判定する。なお、クロックの有無の判定には、マイクロコンピュータが有する周知のインプットキャプチャ機能を利用し、所定のPWM波形(レセッシブ,ドミナント)を検出した場合に、クロック有りと判定するように構成してもよい。
【0055】
但し、スレーブ3bの信号処理部40は、必ずしもマイコンによって構成する必要はなく、UART11に相当する機能を少なくとも備えたシーケンサと、そのシーケンサを動作させる動作クロックを生成する発振回路とによって構成してもよい。
【0056】
<<トランシーバ>>
トランシーバ50は、トランシーバ20と同様に、タイミング生成部51,符号化復号化部52,送信バッファ23,受信バッファ24を備えており、タイミング生成部51および符号化復号化部52の構成の一部が、トランシーバ20のタイミング生成部21および符号化復号化部22とは異なっている。
【0057】
具体的には、タイミング生成部51は、各種タイミング信号を生成する際に、同期の対象となる信号が、内部クロックCKではなく、受信バッファ24を介してバス通信路5から取得した受信データRXである点、および、タイミング信号の一つであるレセッシブ生成用クロックRCKの生成が省略され、バスクロックBCKとドミナント生成用クロックDCKを生成する点がタイミング生成部21とは異なっている。
【0058】
また、符号化復号化部52は、符号化回路27の動作が一部異なる以外は、符号化復号化部22と同様に構成されている。以下では、符号化復号化部52の符号化回路を、符号化復号化部22の符号化回路27と区別するために「符号化回路57」と記す。
【0059】
符号化回路57は、送信データTXDがロウレベル(0)の時には、バスクロックBCKおよびドミナント生成用クロックDCKを用いて、バスクロックBCKの立ち下がりエッジより少し遅れたタイミングでロウレベルに変化し、ドミナント生成用クロックDCKのタイミングでハイレベルに変化する第1符号を生成し、送信データTXDがハイレベル(1)の時には、1ビットの全期間に渡ってハイベルとなる第2符号を生成する。
【0060】
これら第1符号および第2符号は、送信バッファ23を介してバス通信路5に出力されると、他ノード3がデータの送信を行っていない時(マスタ3aからクロックマスタの機能によってレセッシブが出力されている時)または他ノード3がレセッシブを送信している時には、バス通信路5上で、第1符号はドミナント、第2符号はレセッシブに変換されて他ノード3に伝送される。
【0061】
また、他ノード3がドミナントを送信している時には、バス通信路5上で、第1符号および第2符号のいずれもドミナントに変換されるため、第1符号を送信した場合は調停勝ち、第2符号を送信した場合は調停負けしたと判定されることになる。
【0062】
このように、スレーブ3bのトランシーバ50は、クロックマスタとしての機能が省略されている以外は、トランシーバ20と同様の機能、即ち、動作モードに応じて、送信データおよび受信データの符号化,復号化を有効/無効にする機能を有している。
【0063】
<信号処理部での処理>
ここで、信号処理部10,40が実行するウェイクアップ処理およびスリープ処理について説明する。
【0064】
図7はウェイクアップ処理、図8はスリープ処理の内容を示すフローチャートである。
<<ウェイクアップ処理>>
ウェイクアップ処理は、動作モードがスリープモードである時に、予め設定されたウェイクアップ要因が存在する場合に起動する。ウェイクアップ要因としては、例えば、ライトSW入力など、車両の乗員による各種スイッチ操作がある。但し、マスタ3a(クロックマスタ)に限り、ウェイクアップ要因の一つにウェイクアップパルスの受信が含まれている。
【0065】
本処理が起動すると、図7に示すように、まず、S110では、自ノードがマスタ3aであるか否かを判断する。
自ノードがマスタ3aであれば、S140に進み、モード設定信号NSLPを1(非アクティブ)に変化させると共に、トランシーバ20に対して内部クロックCKの出力を開始する。
【0066】
これにより、トランシーバ20では、内部クロックCKに基づく各種タイミング信号の生成が開始される。その結果、バス通信路5へのクロック(PWM符号)の送出が開始されると共に、送信データの符号化、受信データの復号化が可能な状態となる。
【0067】
続くS150では、信号処理部10で実行される各アプリケーションに対し、バス通信路5を介した他のノードとの通信を許可して、本処理を終了する。
一方、先のS110にて、自ノードがマスタ3aではなくスレーブ3bであると判断した場合、S120に進み、ウェイクアップパルス(ロウレベルのパルス)を送信する。ウェイクアップパルスは、例えば、UART11を介して、任意のブロックデータを送信すればよい。即ち、ブロックデータにはスタートビットが含まれるため、このスタートビットがウェイクアップパルスとなる。また、UART11とは別に設けられた出力ポートを操作することで、UART11を用いることなくウェイクアップパルスを送信するように構成されていてもよい。
【0068】
このようにしてスレーブ3bの信号処理部40から出力されたウェイクアップパルスは、トランシーバ50にて符号化されることなく、バス通信路5に送出され、更に、バス通信路5からノード3に取り込まれたウェイクアップパルスは、トランシーバ20,50で復号化されることなく信号処理部10,40に供給される。
【0069】
但し、スレーブ3bの信号処理部40では、ウェイクアップパルスの受信は無視され、一方、マスタ3aの信号処理部10では、ウェイクアップパルスの受信によってウェイクアップ処理が起動され、先に説明したS110にて肯定判断された場合の通りに動作し、バス通信路5へのクロックの送出が開始される。
【0070】
続くS130では、クロック判定機能を用いて、バス通信路5上にクロックが送出されていることが確認されるまで待機し、クロックの送出が確認されると、先に説明したS140,S150の処理を実行する。
【0071】
但し、本ステップでの処理について、スレーブ3bの信号処理部40では、マスタ3aの信号処理部10とは異なり、トランシーバ50に対する内部クロックCKの出力は省略される。
【0072】
これにより、スレーブ3bのトランシーバ50は、バス通信路5上の信号から抽出したクロック成分に基づく各種タイミング信号の生成、そのタイミング信号に従った送信データの符号化、受信データの復号化が可能な状態となる。
【0073】
<<スリープ処理>>
次に、スリープ処理は、動作モードが通常モードである時に、予め設定されたスリープ禁止要因が存在しない場合に起動する。スリープ禁止要因としては、例えば、ライトSW入力などがある。但し、マスタ3aでは、スリープコマンドを受信した場合にも本処理が起動するように構成されている。
【0074】
本処理が起動すると、図8に示すように、まず、S210では、自ノードがマスタ3aであるか否かを判断する。
自ノードがマスタ3aであれば、S240に進み、モード設定信号NSLPを0(アクティブ)に変化させると共に、トランシーバ20に対する内部クロックCKの供給を停止する。
【0075】
これにより、トランシーバ20では、内部クロックCKに基づく各種タイミング信号の生成が停止する。その結果、バス通信路5へのクロックの送出も停止され、送信データや受信データを符号化,復号化することなく通過させる状態となる。
【0076】
S250では、信号処理部10で実行される各アプリケーションに対し、バス通信路5を介した他のノードとの通信を禁止して、本処理を終了する。
一方、先のS210にて、自ノードがマスタ3aではないと判断した場合、S220に進み、スリープコマンドを送信する。
【0077】
このスレーブ3bの信号処理部40から出力されたスリープコマンドは、トランシーバ50にてPWM符号に符号化後、バス通信路5に送出され、更に、バス通信路5からノード3に取り込まれたスリープコマンドは、トランシーバ20,50で復号化後、信号処理部10,40に供給される。
【0078】
但し、スレーブ3bの信号処理部40では、スリープコマンドの受信は無視され、一方、クロックマスタの信号処理部10では、スリープコマンドの受信によってスリープ処理が起動され、先に説明したS210にて肯定判断された場合の通りに動作し、バス通信路5へのクロック(レセッシブ符号)の送出を停止する。
【0079】
続くS230では、バス通信路5上へのクロックの送出が停止されたことが確認されるまで待機し、クロックの停止が確認されると、先に説明したS240,S250の処理を実行する。
【0080】
但し、クロックスレーブの信号処理部40では、クロックマスタの信号処理部10での処理とは異なり、トランシーバ50に対する内部クロックCKの供給停止は省略される。
これにより、トランシーバ50は、バス通信路5上の信号から抽出したクロック成分に基づく各種タイミング信号の生成が停止し、そのタイミング信号に従った送信データの符号化、受信データの復号化も不能な状態となる。
【0081】
<効果>
以上説明したように、トランシーバ20,50は、タイミング生成部21,51が作動状態となる通常モードの時には、信号処理部10,40から供給される送信データTXDをPWM符号に符号化したものを送信データTXとしてバス通信路5に出力すると共に、バス通信路5から取り込んだ受信データRX、NRZ符号に復号化したものを受信データRXDとして信号処理部10,40に供給し、タイミング生成部21,51が停止状態となるスリープモードの時には、信号処理部10,40から供給される送信データTXDをそのまま送信データTXとしてバス通信路5に出力すると共に、バス通信路5から取り込んだ受信データRXをそのまま受信データRXDとして信号処理部10,40に供給するように構成されている。
【0082】
従って、トランシーバ20,50を用いて構成されたノード3によれば、スリープモードにあるノードの消費電力を増大させることなく、スリープモードから通常モードへの遷移をスレーブ3bからマスタ3aに要求する際に使用されるウェイクアップパルス(起動用信号)を送受信することができる。
【0083】
なお、上記実施形態において、符号化回路27,57が本発明における符号化回路、復号化回路29が本発明における復号化回路、送信側セレクタ28が本発明における送信切替回路、受信側セレクタ30が本発明における受信切替回路、タイミング生成部21,51が本発明におけるタイミング生成回路に相当する。また、カウント用クロックCCKが本発明におけるクロック信号、タイミング生成部21,51にてカウント用クロックCCKを発生させる発振回路が本発明におけるクロック発生部、送信データTX,受信データRXが本発明における通信データに相当する。
【0084】
<他の実施形態>
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様にて実施することが可能である。
【0085】
例えば、上記実施形態では、マスタ3aがクロックマスタを兼ねるように構成したが、スレーブ3bのいずれかがクロックマスタとなるように構成してもよい。この場合、クロックマスタとなるスレーブを、上述のマスタ3aと同様に構成すればよい。
【0086】
上記実施形態では、PWM符号におけるロウレベルの期間が、1ビットの1/3または2/3となるように設定されているが、これに限るものではなく、例えば1ビットの1/4または3/4となるように設定されていてもよい。
【0087】
上記実施形態では、フレームのヘッダに設定するIDによって送信を許可するデータを指定しているが、送信を許可するノードを指定するようにしてもよい。
上記実施形態では、ビット調停回路31を、送信データTXと受信データRXとを比較するように構成したが、送信データTXDと受信データRXDとを比較するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…通信システム 3…ノード 3a…マスタ 3b…スレーブ 5…バス通信路 10,40…信号処理部 12…発振回路 20,50…トランシーバ 21,51…タイミング生成部 22,52…符号化復号化部 23…送信バッファ 24…受信バッファ 27,57…符号化回路 28…送信側セレクタ 29…復号化回路 30…受信側セレクタ 31…ビット調停回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NRZ符号で表された送信データを入力するための入力端子、NRZ符号で表された受信データを出力するための出力端子、通信路を介して伝送される通信データを入出力するための通信端子、NRZ符号から予め設定された伝送路符号への符号化および前記伝送路符号からNRZ符号への復号化を行う動作モードである通常モード、符号化および復号化する機能を停止させ低消費電力状態にする動作モードであるスリープモードのいずれかを指定するモード設定信号を入力するためのモード設定端子を備えたトランシーバであって、
NRZ符号から前記伝送路符号に符号化する符号化回路と、
前記伝送路符号からNRZ符号に復号化する復号化回路と、
前記モード設定信号で示された動作モードが通常モードである場合、前記入力端子から入力される送信データを前記符号化回路に供給することによって、該符号化回路にて符号化された送信データを前記通信データとして前記通信端子から出力させ、前記モード設定信号で示された動作モードがスリープモードである場合、前記入力端子から入力される送信データをそのまま前記通信データとして前記通信端子から出力させる送信切替回路と、
前記モード設定信号で示された動作モードが通常モードである場合、前記通信端子から入力される通信データを前記復号化回路に供給することによって、該復号化回路にて復号化された通信データを前記受信データとして前記出力端子から出力させ、前記モード設定信号により示された動作モードがスリープモードである場合、前記通信端子から入力される通信データをそのまま前記受信データとして前記通信端子から出力させる受信切替回路と、
を備えることを特徴とするトランシーバ。
【請求項2】
クロック信号を発生させるクロック発生部を有し、該クロック発生部が発生させたクロック信号に基づき、前記符号化回路および前記復号化回路の動作を制御するための各種タイミング信号を生成するタイミング生成回路を備え、
前記タイミング生成回路は、前記モード設定信号で示された動作モードがスリープモードである場合、前記クロック発生部の動作を停止することによって、前記符号化回路および復号化回路の動作を停止させることを特徴とする請求項1に記載のトランシーバ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate