説明

トランス−1,2−シクロヘキサンビス[尿素−ウレタン]化合物

【課題】110℃以下の低減された温度で噴出させてコストおよびエネルギー節減を可能にし得る相変化インク等に有用なビス[尿素−ウレタン]化合物の提供。
【解決手段】トランス−1,2−シクロヘキサンビス[尿素−ウレタン]化合物であって、該化合物は、例えば等モルの1,6−ジイソシアネートヘキサンと2−エチルヘキサノールの反応生成物(末端にイソシアネート基を持つウレタン化合物)を形成し、さらにこの化合物とトランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンとを縮合反応させて得られる、分子中に2個の尿素及びウレタン結合を有するトランス−1,2−シクロヘキサンビス[尿素−ウレタン]化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明においては、トランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]化合物を開示する。さらに詳細には、本発明においては、ある種のトランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]化合物、並びにこれらの化合物を含有するホットメルトまたは相変化インクを開示する。
【背景技術】
【0002】
トランス-1,2-シクロヘキサンビス-尿素有機ゲル化剤化合物は、高融点および高度の結晶化度のような、相変化固形インクビヒクル中で機能するための幾つかの欠点を示す。さらに、これらの化合物は、一般に、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサンを2モル当量の一官能性イソシアネートと反応させることによって製造されており、その大規模商業生産は、多くの場合、安全衛生理由のために規制されている入手可能な一官能性イソシアネート原料の使用に限られている。
多くの現在使用されている相変化インクは、約140℃以上の高噴出温度を必要とし、さらにまた、プリンターにおける比較的長い起動時間も必要とする。さらに、多くの現在使用されている相変化インクは、比較的貧弱な引掻き抵抗性と比較的貧弱な像耐久性を有する像を発生させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
公知の組成物および方法はその意図する目的には適しているけれども、110℃以下の低減された温度で噴出させ、それによってコストおよびエネルギー節減を可能にし得る相変化インク;短縮された起動時間でのプリンティングを可能にする相変化インク;改良された引掻き抵抗性を有する像を発生させる相変化インク;改良された像耐久性を有する像を発生させる相変化インク;改良された像品質を有する像を発生させる相変化インク;インクを先ず中間転写部材上に噴出させ、続いて、該中間転写部材から普通紙もしくはコーテッド紙または透明体のような最終プリント基体に転写させるプリンティング法において使用するときに、上述の各利点を示す相変化インク;インクを普通紙もしくはコーテッド紙または透明体のような最終プリント基体に直接噴出させるプリンティング法において使用するときに、上述の各利点を示す相変化インク;比較的高速度のプリンティング法において使用するときに、上述の各利点を示す相変化インク;相変化インクにおいてさらなる利点を与えるゲル化剤化合物も含有する、望ましい低融点を有する相変化インク;望ましい低度の結晶化度を有する、相変化インクおよび他の用途において使用するためのゲル化剤化合物;相変化インク担体中で可溶性であるゲル化剤化合物;固相と液相間で中間ゲル相を示す相変化インク;ゲル相転移が望ましく狭い中間ゲル相を示す相変化インク;望ましく狭いゲル相転移を可能にするゲル化剤化合物;ゲル相転移が10未満のタンデルタ(tan-delta)を伴う中間ゲル相を示す相変化インク;10未満のタンデルタを伴うゲル相転移を可能にするゲル化剤化合物;および、あまり高結晶性ではなく、より結晶性の物質がそうである程には分子ネットワーク内に緊密には充填せず、それによって溶融相変化インク中に可溶性し得るゲル化剤化合物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のトランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]化合物は、下記の式を有する:
【化1】

上記式中、R1およびR'1は、各々互いに独立に、下記の基である:
(i) 各実施態様において少なくとも2個、4個および6個の炭素原子を有し、また、各実施態様において100個、60個および20個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアルキレン基(線状、枝分れ、環状、置換および非置換アルキレン基を含み;酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のようなヘテロ原子が該アルキレン基内に存在していても存在していなくてもよい)。限定するものではないが、ヘテロ原子を含有しない線状飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れ飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない線状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れエチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない線状飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れ飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で置換された、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない線状エチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れエチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状エチレン系不飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で置換された、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れ飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有する脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れエチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有する脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れ飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で置換された、ヘテロ原子を含有する脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状エチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れエチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状エチレン系不飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で置換された、ヘテロ原子を含有する脂肪族基がある。
(ii) 各実施態様において少なくとも5個および6個の炭素原子を有し、また、各実施態様において18個、12個および6個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアリーレン基(置換および非置換アリーレン基を含み;酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のようなヘテロ原子が該アリーレン基内に存在していても存在していなくてもよい)。
(iii) ベンジレン等のような、各実施態様において少なくとも6個および7個の炭素原子を有し、また、各実施態様において100個、60個および20個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアリールアルキレン基(置換および非置換アリールアルキレン基を含み;酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のようなヘテロ原子が該アリールアルキレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれか内に存在していても存在していなくてもよい)。
または、(iv) トリレン等のような、各実施態様において少なくとも6個および7個の炭素原子を有し、また、各実施態様において100個、60個および20個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアルキルアリーレン基(置換および非置換アルキルアリーレン基を含み;酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のようなヘテロ原子が該アルキルアリーレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれか内に存在していても存在していなくてもよい)。
【0005】
R2およびR'2は、各々互いに独立に、下記の基である:
(i) 各実施態様において少なくとも1個、4個および10個の炭素原子を有し、また、各実施態様において100個、60個および20個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアルキル基(線状、枝分れ、環状、置換および非置換アルキル基を含み;酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のようなヘテロ原子が該アルキル基内に存在していても存在していなくてもよい)。限定するものではないが、ヘテロ原子を含有しない線状飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れ飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない線状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れエチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない線状飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れ飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で置換された、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない線状エチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れエチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状エチレン系不飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で置換された、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れ飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有する脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れエチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有する脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れ飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で置換された、ヘテロ原子を含有する脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状エチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れエチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状エチレン系不飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で置換された、ヘテロ原子を含有する脂肪族基がある。
(ii) 各実施態様において少なくとも5個および6個の炭素原子を有し、また、各実施態様において18個、12個および6個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアリール基(置換および非置換アリール基を含み;酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のようなヘテロ原子が該アリール基内に存在していても存在していなくてもよい)。
(iii) ベンジル等のような、各実施態様において少なくとも6個および7個の炭素原子を有し、また、各実施態様において100個、60個および20個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアリールアルキル基(置換および非置換アリールアルキル基を含み;酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のようなヘテロ原子が該アリールアルキル基のアリールまたはアルキル部分のいずれか内に存在していても存在していなくてもよい)。
または、(iv) トリル等のような、各実施態様において少なくとも6個および7個の炭素原子を有し、また、各実施態様において100個、60個および20個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアルキルアリール基(置換および非置換アルキルアリール基を含み;酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のようなヘテロ原子が該アルキルアリール基のアリールまたはアルキル部分のいずれか内に存在していても存在していなくてもよい)。
【0006】
R3およびR'3は、各々互いに独立に、水素原子、または1つの実施態様において少なくとも1個の炭素原子を有し、また、1つの実施態様において3個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアルキル基(線状、枝分れ、置換および非置換アルキルを含む)である。
R4およびR'4は、各々互いに独立に、水素原子;フッ素原子;1つの実施態様において少なくとも1個の炭素原子を有し、また、各実施態様において6個、3個および2個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアルキル基(線状、枝分れ、置換および非置換アルキルを含み、酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のようなヘテロ原子が該アルキル基内に存在していても存在していなくてもよい);またはフェニル基である。上記アルキル基としては、限定するものではないが、ヘテロ原子を含有しない線状飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れ飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない線状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れエチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない線状飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れ飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で置換された、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない線状エチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れエチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状エチレン系不飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で置換された、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れ飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有する脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れエチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有する脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れ飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で置換された、ヘテロ原子を含有する脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状エチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れエチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状エチレン系不飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で置換された、ヘテロ原子を含有する脂肪族基がある。
【0007】
nは、0、1、2、3または4の整数である。
各R5は、互いに独立に、下記の基である:
(i) 1つの実施態様において少なくとも1個の炭素原子を有し、また、各実施態様において100個、60個および20個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアルキル基(線状、枝分れ、環状、置換および非置換アルキル基を含み;酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のようなヘテロ原子が該アルキル基内に存在していても存在していなくてもよい)。限定するものではないが、ヘテロ原子を含有しない線状飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れ飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない線状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れエチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない線状飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れ飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で置換された、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない線状エチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない枝分れエチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有しない環状エチレン系不飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で置換された、ヘテロ原子を含有しない脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れ飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有する脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れエチレン系不飽和非置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状エチレン系不飽和非置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で非置換の、ヘテロ原子を含有する脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れ飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、飽和で置換された、ヘテロ原子を含有する脂肪族基;ヘテロ原子を含有する線状エチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する枝分れエチレン系不飽和置換脂肪族基;ヘテロ原子を含有する環状エチレン系不飽和置換脂肪族基;環式および非環式部分の双方を含有する脂肪族基であって、エチレン系不飽和で置換された、ヘテロ原子を含有する脂肪族基がある。
(ii) 各実施態様において少なくとも5個または6個の炭素原子を有し、また、各実施態様において18個、12個または6個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアリール基(置換および非置換アリール基を含み;酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のようなヘテロ原子が該アリール基内に存在していても存在していなくてもよい)。
(iii) ベンジル等のような、各実施態様において少なくとも6個または7個の炭素原子を有し、また、各実施態様において100個、60個または20個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアリールアルキル基(置換および非置換アリールアルキル基を含み;酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のようなヘテロ原子が該アリールアルキル基のアリールまたはアルキル部分のいずれか内に存在していても存在していなくてもよい)。
(iv) トリル等のような、各実施態様において少なくとも6個または7個の炭素原子を有し、また、各実施態様において100個、60個および20個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよいアルキルアリール基(置換および非置換アルキルアリール基を含み;酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素等のようなヘテロ原子が該アルキルアリール基のアリールまたはアルキル部分のいずれか内に存在していても存在していなくてもよい)。
または、(v) アルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基以外の置換基。
【0008】
R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4、R'4およびR5における置換基アルキル、アルキレン、アリール、アリーレン、アリールアルキル、アリールアルキレン、アルキルアリールおよびアルキルアリーレン基上の置換基、並びにアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基以外の置換基は、限定するものではないが、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子のようなハロゲン原子;イミン基;アンモニウム基;シアノ基;ピリジニウム基;エーテル基;アルデヒド基;ケトン基;エステル基;カルボニル基;チオカルボニル基;スルフィド基;スルホキシド基;ホスフィン基;ニトリル基;メルカプト基;ニトロ基;ニトロソ基;スルホン基;アシル基;ウレタン基;尿素基;これらの混合物等であり得、2個以上の置換基を一緒に結合させて環を形成させ得る。
ヘテロ原子をR1およびR'1基中に含ませ得るので、R1およびR'1は、窒素原子の1つに直接結合する酸素原子がないことを条件として、アルキレンオキシ、アリーレンオキシ、アリールアルキレンオキシ、アルキルアリーレンオキシ、ポリアルキレンオキシ、アルコキシアルキレン、アルコキシアリーレン、ピロリジン、イミダゾール、ピリミジノン、オキサゾリン、チアゾリン等の基も含む。さらに、ヘテロ原子をR1およびR'1基中に含ませ得るので、R1およびR'1は、複素環基も含む。
ヘテロ原子をR2およびR'2基中に含ませ得るので、R2およびR'2は、窒素原子の1つに直接結合する酸素原子がないことを条件として、アルコキシ、アリーロキシ、アリールアルコキシ、アルキルアリーロキシ、ポリアルキレンオキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアリール、ピロリジン、イミダゾール、ピリミジノン、オキサゾリン、チアゾリン等の基も含み得る。さらに、ヘテロ原子をR2およびR'2基中に含ませ得るので、R2よびR'2は、複素環基も含む。
ヘテロ原子をR5基中に含ませ得るので、これらの基は、アルコキシ、アリーロキシ、アリールアルコキシ、アルキルアリーロキシ、ポリアルキレンオキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアリール、ピロリジン、イミダゾール、ピリミジノン、オキサゾリン、チアゾリン等の基も含み得る。さらに、ヘテロ原子をR5基中に含ませ得るので、これらの基は、複素環基も含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1つの特定の局面においては、R1およびR'1の少なくとも1つは、1つの実施態様において少なくとも2個の炭素原子、もう1つの実施態様において少なくとも4個の炭素原子、さらにもう1つの実施態様において少なくとも6個の炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよい。もう1つの特定の局面においては、R1およびR'1は、各々、1つの実施態様において少なくとも2個の炭素原子、もう1つの実施態様において少なくとも4個の炭素原子、さらにもう1つの実施態様において少なくとも6個の炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよい。
1つの特定の局面においては、R1およびR'1は、各々、1つの実施態様において50個よりも多くない炭素原子、もう1つの実施態様において36個よりも多くない炭素原子、さらにもう1つの実施態様において12個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよい。
1つの特定の局面においては、R1およびR'1の少なくとも1つは、1つの実施態様において少なくとも6個の炭素原子、もう1つの実施態様において少なくとも8個の炭素原子、さらにもう1つの実施態様において少なくとも12個の炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよい。もう1つの特定の局面においては、R2よびR'2は、各々、1つの実施態様において少なくとも6個の炭素原子、もう1つの実施態様において少なくとも8個の炭素原子、さらにもう1つの実施態様において少なくとも12個の炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよい。
1つの特定の局面においては、R2およびR'2は、各々、1つの実施態様において50個よりも多くない炭素原子、もう1つの実施態様において30個よりも多くない炭素原子、さらにもう1つの実施態様において18個よりも多くない炭素原子を有するが、炭素原子数はこれらの範囲外であってもよい。
1つの特定の局面においては、R1、R'1、R2およびR'2は、エチレン系不飽和を有さない。もう1つの特定の局面においては、R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4、R'4およびR5は、エチレン系不飽和を有さない。
1つの特定の実施態様においては、R1およびR'1は同じである。もう1つの特定の実施態様においては、R1およびR'1は同じであり、R2およびR'2は同じである。さらにもう1つの特定の実施態様においては、R1およびR'1は同じであり、R2およびR'2は同じであり、R3およびR'3は同じであり、R4およびR'4は同じである。さらにもう1つの特定の実施態様においては、R1およびR'1は同じであり、R2およびR'2は同じであり、R3およびR'3は同じであり、R4およびR'4は同じであり、nは0である。もう1つの特定の実施態様においては、R1およびR'1は同じであり、R2およびR'2は同じであり、R3およびR'3は共に水素であり、R4およびR'4は共に水素であり、nは0である。さらにもう1つの特定の実施態様においては、R1およびR'1は同じであり、R2およびR'2は同じであり、R3およびR'3は共に水素であり、R4およびR'4は共にフッ素であり、nは0である。
【0010】
本発明のトランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]化合物は、任意の所望のまたは有効な方法によって調製し得る。例えば、式R2-OHのモノアルコールを、およそ等モル量の式OCN-R1-NCOのジイソシアネートと、昇温下に、必要に応じて触媒の存在下に、必要に応じて溶媒の存在下に反応させ得る。その後、得られた生成物を室温に冷却し、所望通りに置換した1モルの1,2-ジアミノシクロヘキサン当り2モルの生成物で、必要に応じて溶媒の存在下に室温で反応させ得る。反応は、下記のように進行する(立体化学を表示することなく下記に示す;星印は、キラル中心を示す):
【化2】

上記モノアルコールとジイソシアネートは、任意の所望のまたは有効な相対量で、1つの実施態様においてはジイソシアネート1モル当り少なくとも0.4モルのモノアルコール、もう1つの実施態様においてはジイソシアネート1モル当り少なくとも0.6モルのモノアルコール、さらにもう1つの実施態様においてはジイソシアネート1モル当り少なくとも0.8モルのモノアルコール、1つの実施態様においてはジイソシアネート1モル当り1.4モルよりも多くないモノアルコール、もう1つの実施態様においてはジイソシアネート1モル当り1.2モルよりも多くないモノアルコール、さらにもう1つの実施態様においてはジイソシアネート1モル当り1モルよりも多くないモノアルコールで存在するが、この相対量は、これらの範囲外であってもよい。
【0011】
適切な触媒の例としては、限定するものではないが、ジブチル錫ジラウレート、ビスマストリス-ネオデカノエート、安息香酸コバルト、酢酸リチウム、オクタン酸第一スズ、トリエチルアミン、塩化第二鉄、三塩化アルミニウム、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、四塩化チタン、四塩化錫等のようなルイス酸触媒類がある。触媒は、存在する場合、ジイソシアネート量基準で、任意の所望のまたは有効な量、1つの実施態様においては少なくとも0.2モル%、もう1つの実施態様においては少なくとも0.5モル%、さらにもう1つの実施態様においては少なくとも1モル%、1つの実施態様においては10モル%よりも多くない量、もう1つの実施態様においては7.5モル%よりも多くない量、さらにもう1つの実施態様においては5モル%よりも多くない量で存在するが、この量は、これらの範囲外であってもよい。
反応の最初の部分における適切な溶媒の例としては、限定するものではないが、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、メチルエチルケトン等、並びにこれらの混合物がある。存在する場合、溶媒は、任意の所望量で、1つの実施態様においてはジイソシアネートミリモル当り少なくとも10ミリリットル、もう1つの実施態様においてはジイソシアネートミリモル当り少なくとも20ミリリットル、もう1つの実施態様においてはジイソシアネートミリモル当り少なくとも30ミリリットル、1つの実施態様においてはジイソシアネートミリモル当り100ミリリットルよりも多くない、もう1つの実施態様においてはジイソシアネートミリモル当り80ミリリットルよりも多くない、さらに1つの実施態様においてはジイソシアネートミリモル当り50ミリリットルよりも多くない量で存在するが、この量は、これらの範囲外であってもよい。
上記ジイソシアネートとモノアルコールは、任意の所望のまたは有効な温度、1つの実施態様においては少なくとも25℃、もう1つの実施態様においては少なくとも40℃、さらにもう1つの実施態様においては少なくとも50℃、1つの実施態様においては125℃よりも高くない温度、もう1つの実施態様においては100℃よりも高くない温度、さらにもう1つの実施態様においては75℃よりも高くない温度に加熱するが、この温度は、これらの範囲外であってもよい。
上記ジイソシアネートとモノアルコールは、任意の所望のまたは有効な時間、1つの実施態様においては少なくとも5分間、もう1つの実施態様においては少なくとも10分間、さらにもう1つの実施態様においては少なくとも15分間、1つの実施態様においては80分よりも長くない時間、もう1つの実施態様においては40分よりも長くない時間、さらにもう1つの実施態様においては30分よりも長くない時間で加熱するが、この時間は、これらの範囲外であってもよい。
【0012】
上記ジイソシアネートとモノアルコールとの反応の後、この第1の反応生成物を回収する必要はない;反応混合物を室温に冷却し、この反応混合物に、適切に置換した1,2-ジアミノシクロヘキサンを必要に応じてさらなる溶媒と一緒に添加して反応を完了させ得る。
上記第1反応生成物と1,2-ジアミノシクロヘキサンは、任意の所望のまたは有効な反応量、1つの実施態様においては1,2-ジアミノシクロヘキサン1モル当り少なくとも1.75モルの第1反応生成物、もう1つの実施態様においては1,2-ジアミノシクロヘキサン1モル当り少なくとも1.9モルの第1反応生成物、さらにもう1つの実施態様においては1,2-ジアミノシクロヘキサン1モル当り少なくとも2モルの第1反応生成物、1つの実施態様においては1,2-ジアミノシクロヘキサン1モル当り2.3モルよりも多くない第1反応生成物、もう1つの実施態様においては1,2-ジアミノシクロヘキサン1モル当り2.1モルよりも多くない第1反応生成物、さらにもう1つの実施態様においては1,2-ジアミノシクロヘキサン1モル当り2モルよりも多くない第1反応生成物で存在するが、この相対量は、これらの範囲外であってもよい。
上記第1反応生成物と1,2-ジアミノシクロヘキサンは、任意の所望のまたは有効な温度、1つの実施態様においては少なくとも10℃、もう1つの実施態様においては少なくとも20℃、さらにもう1つの実施態様においては少なくとも30℃、1つの実施態様においては75℃よりも高くない温度、もう1つの実施態様においては50℃よりも高くない温度、さらにもう1つの実施態様においては40℃よりも高くない温度で反応させるが、この温度は、これらの範囲外であってもよい。
上記第1反応生成物と1,2-ジアミノシクロヘキサンは、任意の所望のまたは有効な時間、1つの実施態様においては少なくとも5分間、もう1つの実施態様においては少なくとも10分間、さらにもう1つの実施態様においては少なくとも20分間、1つの実施態様においては3時間よりも長くない時間、もう1つの実施態様においては1.5時間よりも長くない時間、さらにもう1つの実施態様においては1時間よりも長くない時間で反応させるが、この時間は、これらの範囲外であってもよい。
その後、生成物を少量のヘキサンまたは塩化メチレンのような非溶媒の添加によって沈降させ、続いて良好に攪拌し得る。その後、生成物を濾過によって回収し得る。
【0013】
何ら特定の理論によって限定するつもりはないが、本発明において開示するトランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]化合物は、可逆的な水素結合を形成して、共有結合の代りに非共有水素結合によって一緒に保持されたオリゴマーおよびオリゴマーネットワークの形成を生じるものと信じている。そのような結合形成の1つの例を下記のように例示する:
【化3】

何ら特定の理論によって限定するつもりはないが、これらのトランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]化合物を含有するインクにおいては、これらの水素結合の少なくとも1部、おそらくは全てが、ホットメルトインクジェットプリンティングが生ずる温度(典型的には、必須ではないが、100℃よりも高い)において破壊され得るものと信じている。インクが中間転写部材または最終記録基体上にプリントされるとき、インクはプリントされるときに冷却し、それによって加熱によって破壊された水素結合の再形成をもたらす。そのようにして形成されたポリマー様物質は、通常の共有結合ポリマーのように挙動して像の耐久性を増強する。像堅牢性は、トランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]ゲル化剤化合物をインクに添加することによって増大させ得る。該ゲル化剤分子は、分子間水素結合およびファンデルワールス相互作用により、三次元繊維状ネットワークとして自己結集し得る。溶融インクは、これらのゲルネットワーク中に捕捉される状態となり半固体またはゲルを形成することが予測される。さらに、該ゲル化インクは、液状にあると想定される領域において弾性挙動を示す点で、通常のホットメルトまたは相変化インクと異なる粘弾性流動特性を示す。この挙動は、G' (貯蔵弾性率)とG” (損失弾性率)のクロスオーバーによって明らかにされており、G'はG”よりも高く、該物質が弾性であることを示唆している。該物質の弾性は、G”対G'の比、即ち、G”/G'として定義されるタンデルタを使用しても表し得る。1未満のタンデルタを有する物質は弾性であり、一方、非弾性物質はその融点よりも上で1未満のタンデルタを有さない。トランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]ゲル化剤化合物は、相変化インク中に存在するとき、ゲル相転移が1つの実施態様においては10未満、もう1つの実施態様においては5未満、さらにもう1つの実施態様においては1未満のタンデルタを伴う中間ゲル相を可能にし得るが、このタンデルタは、これらの範囲外であってもよい。この弾性は、トランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]化合物を含有するインクによって発生させた像の堅牢性をさらに増強させ得る。トランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]ゲル化剤化合物は、インク中で、1つの実施態様においてはゲル相転移0.1〜40℃幅、もう1つの実施態様においてはゲル相転移0.1〜20℃幅、さらにもう1つの実施態様においてはゲル相転移0.1〜15℃幅の望ましく狭いゲル相転移も可能にし得るが、このゲル相転移は、これらの範囲外であってもよい。
【0014】
本発明において開示するような相変化インクは、1つの特定の実施態様においてはインク融点よりも1℃〜40℃高いゲル相または状態を示し、もう1つの特定の実施態様においてはインク融点よりも1℃〜20℃高いゲル相または状態を示し、さらにもう1つの特定の実施態様においてはインク融点よりも2℃〜15℃高いゲル相または状態を示すが、このゲル相または状態は、これらの範囲外も示し得る。
特定のインク担体物質からの水素結合オリゴマーまたはポリマーの形成は、任意の所望の方法によって判定し得る。例えば、冷却時の樹脂特性および粘弾性特性の劇的な発生は、インク担体物質または物質の組合せからの水素結合オリゴマーまたはポリマーの形成を指標し得る。水素結合および水素結合オリゴマーまたはポリマーの形成は、IR分光法によっても検出し得る。NMR分光法も、水素結合オリゴマーまたはポリマーの存在を検出する助けとなる。インク担体物質が結晶性である状況においては、X線結晶学手法を使用してオリゴマーまたは高分子構造を特徴付けし得る。
ゲルに関するさらなる情報は、例えば、Gels Handbook, Vol. 1-4, Editors-in-Chief, Y. Osada and K. Kajiwara (翻訳、H. Ishida), 2001, Academic Pressに開示されている。
【実施例1】
【0015】
室温で攪拌中の1,6-ジイソシアネートヘキサン(4.04グラム、24.0ミリモル;ウィスコンシン州ミルウォーキーのSigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手)および無水テトラヒドロフラン(100mL;ウィスコンシン州ミルウォーキーのSigma-Aldrich Fine Chemicals社)を含有する溶液に、2-エチルヘキサノール(3.13グラム、24.0ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手)および触媒としてのジブチル錫ジラウレート(0.38グラム、0.6ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手)を添加した。混合物を撹拌し、70℃の内部温度に加熱した。反応の進行は、1H-NMR分光法により、-CH2OH多重項の消失(シグナルが3.35〜3.40ppmに位置する中間イソシアネート生成物のダウンフィールド末端でのショルダーピークとして3.5ppmで出現する)によって示される2-エチルヘキサノール出発物質の消費についてモニターした。混合物を5℃の内部温度に冷却した;その後、この混合物に、無水テトラヒドロフラン(10mL)中に溶解したトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(1.37グラム、12ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から(1R、2R)と(1S、2S)立体異性体のラセミ混合物として入手)の溶液を滴下により添加した。混合物を30分間室温に温めながら攪拌し、濃縮してゼラチン状スラリーを調製した。反応サンプルのFTIR分光分析は、極めて僅かな未反応イソシアネートを示した(2180cm-1でのピーク、KBrペレットとして調製したサンプル)。残留イソシアネートを5mLのメタノールの添加により失活させた。結晶性生成物を、スラリーから、先ず塩化メチレン(40mL)を添加し、次いでおよそ20分間攪拌してゲルスラリーの完全な沈降を確保することによって単離した。固形物を濾紙上で吸引により濾過し、塩化メチレン(10mL)で洗浄し、次いで風乾させて7.36グラムの純白でない固形物を得た(収率86%)。生成物は、下記の式を有するものと信じられた:
【化4】

上記固形物の1H-NMR分光分析をDMSO-d6 (300 MHz)中で高温(60℃)にて実施したところ、以下に示すピークにより、上記構造を示唆していた:0.90 ppm (多重項、6個のH集積(integration)、-OCH2CH(CH2CH3)CH2CH2CH2CH3);1.0〜1.95 ppm (広い多重項、20個のH集積、2-エチルヘキサノール部分からの8個のメチレンプロトン、1,6-ジイソシアネートヘキサン部分からの8個のメチレンプロトン、およびシクロヘキサン環部分からの4個のメチレンプロトン);2.95 ppm (狭い多重項、4個のH集積、NH(C=O)NHCH2(CH2)4CH2NH(C=O)O);3.20 ppm (広い一重項、1個のH集積、シクロヘキサン環上の尿素基に隣接した第三級メチンプロトン);3.90 ppm (二重項、2個のH集積、OCH2CH(CH2CH3)CH2CH2CH2CH3);5.65 ppmおよび5.75 ppm (各々広い一重項、1個のH集積、尿素NHプロトン);6.75 ppm (広い一重項、1個のH集積、ウレタンNHプロトン)。元素分析は、計算値でC:64.19%、H:10.49%、N:11.82%;分析値でC:61.70%、H:9.86%、N:14.91%であった。
【実施例2】
【0016】
室温で攪拌中の1,6-ジイソシアネートヘキサン(4.04グラム、24.0ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手)および無水テトラヒドロフラン(100mL;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社)を含有する溶液に、1-オクタノール(3.13グラム、24.0ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手)および触媒としてのジブチル錫ジラウレート(0.15グラム、0.24ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手)を添加した。混合物を撹拌し、65℃の内部温度に加熱した。反応の進行は、1H-NMR分光法により、-CH2OH多重項の消失(シグナルが3.35ppmに位置する中間イソシアネート生成物の3.6ppmダウンフィールドで出現する)によって示される1-オクタノール出発物質の消費についてモニターした。混合物を15℃の内部温度に冷却した;その後、この混合物に、無水テトラヒドロフラン(10mL)中に溶解したトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(1.37グラム、12ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から(1R、2R)と(1S、2S)立体異性体のラセミ混合物として入手)の溶液を滴下により添加した。混合物を60分間室温に温めながら攪拌し、濃縮してゼラチン状スラリーを調製した。反応サンプルのFTIR分光分析は、極めて僅かな未反応イソシアネートを示した(2180cm-1でのピーク、KBrペレットとして調製したサンプル)。残留イソシアネートを5mLのメタノールの添加により失活させた。結晶性生成物を、スラリーから、先ずジエチルエーテル(20mL)を添加し、次いでおよそ30分間攪拌してゲルスラリーの完全な沈降を確保することによって単離した。固形物を濾紙上で吸引により濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、次いで風乾させて6.20グラムの純白でない固形物を得た(収率77.5%)。生成物は、下記の式を有するものと信じられた:
【化5】

上記固形物の1H-NMR分光分析をDMSO-d6 (300 MHz)中で高温(60℃)にて実施したところ、以下に示すピークにより、上記構造を示唆していた:0.90 ppm (多重項、3個のH集積、-OCH2(CH2)6CH3);1.05〜1.95 ppm (広い多重項、24個のH集積、2-エチルヘキサノール部分からの12個のメチレンプロトン、1,6-ジイソシアネートヘキサン部分からの8個のメチレンプロトン、およびシクロヘキサン環部分からの4個のメチレンプロトン);2.95 ppm (狭い多重項、4個のH集積、-NH(C=O)NHCH2(CH2)4CH2NH(C=O)O);3.35 ppm (二重項、1個のH集積、シクロヘキサン環上の尿素基に隣接した第三級メチンプロトン);3.90 ppm (複数の二重項の二重項、2個のH集積、NH(C=O)OCH2(CH2)6CH3);5.70 ppmおよび5.85 ppm (各々広い一重項、1個のH集積、尿素NHプロトン);7.00 ppm (広い一重項、1個のH集積、ウレタンNHプロトン)。元素分析は、計算値でC:64.19%、H:10.49%、N:11.82%;分析値でC:64.46%、H:10.63%、N:10.69%であった。
【実施例3】
【0017】
室温で攪拌中の1,6-ジイソシアネートヘキサン(2.35グラム、13.95ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手)および無水ヘキサン(100mL;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手)を含有する溶液に、塩化カルシウム粒子上で前以って乾燥させたジエチレングリコールブチルエーテル(2.27グラム、14.0ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手)および触媒としてのジブチル錫ジラウレート(0.095グラム、0.15ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手)を添加した。混合物を撹拌し、45℃の内部温度に加熱した。反応の進行は、1H-NMR分光法により、ジエチレングリコールブチルエーテル出発物質の消費についてモニターした。混合物を15℃の内部温度に冷却した;その後、この混合物に、無水ヘキサン(20mL)中に溶解したトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(0.80グラム、7.0ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から(1R、2R)と(1S、2S)立体異性体のラセミ混合物として入手)の溶液を滴下により添加した。混合物を30分間室温に温めながら攪拌した。反応サンプルのFTIR分光分析は、未反応イソシアネートを示さなかった(2180cm-1でのピーク、KBrペレットとして調製したサンプル)。結晶性生成物を、濾紙上で真空濾過により単離し、ヘキサンで洗浄し、次いで風乾させて4.82グラムの白色粉末を得た(収率88.8%)。生成物は、下記の式を有するものと信じられた:
【化6】

上記固形物の1H-NMR分光分析をDMSO-d6 (300 MHz)中で80℃にて実施したところ、以下に示すピークにより、上記構造を示唆していた:0.90 ppm (多重項、3個のH集積、-OCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2CH2CH3);1.05〜1.95 ppm (広い多重項、16個のH集積、ブチルエーテル末端からの4個のメチレンプロトン、1,6-ジイソシアネートヘキサン部分からの8個のメチレンプロトン、およびシクロヘキサン環部分からの4個のメチレンプロトン);3.0 ppm (狭い多重項、5個のH集積、-NH(C=O)NHCH2(CH2)4CH2NH(C=O)O、さらにまたシクロヘキサン環上の尿素基に隣接した第三級メチンプロトン);3.40〜3.70 ppm (複数の多重項、8個のH集積、NH(C=O)OCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2CH2CH3);4.10 ppm (一重項、2個のH集積、NH(C=O)OCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2CH2CH3);5.60 ppmおよび5.70 ppm (各々広い一重項、1個のH集積、尿素NHプロトン);6.75 ppm (広い一重項、1個のH集積、ウレタンNHプロトン)。元素分析は、計算値でC:58.83%、H:9.54%、N:10.83%;分析値でC:58.81%、H:9.58%、N:12.17%であった。
【実施例4】
【0018】
室温で攪拌中の1,6-ジイソシアネートヘキサン(1.86グラム、11.09ミリモル;Aldrich Fine Chemicals社から入手)およびヘキサン(250mL)を含有する溶液に、無水テトラヒドロフラン(50mL;Aldrich Fine Chemicals社から入手)中の1-オクタデカノール(3.0グラム、11.09ミリモル;Aldrich Fine Chemicals社から入手)の溶液および触媒としてのジブチル錫ジラウレート(0.07グラム、1モル%;Aldrich Fine Chemicals社から入手)を添加した。得られた溶液を60℃に1時間加熱し、その間に、白色沈殿が生成した。混合物を室温に冷却した(20〜25℃)。ヘキサン(50mL)中のトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(0.69グラム、6.09ミリモル;Aldrich Fine Chemicals社から入手)の溶液を反応混合物に滴下漏斗によりゆっくり添加した。混合物を室温で2時間激しく攪拌し、その間に、より粘稠な白色沈殿が生成した。IRスペクトルは、痕跡量のイソシアネートの存在を示した。さらなるトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサンを添加し(0.1グラム、0.87ミリモル)、さらに30分間攪拌し、その間に、イソシアネートの全てがIRによって示されたように消費された。生成物を、濾紙上で真空濾過により単離し、ヘキサンで洗浄し、60℃で真空下に2時間乾燥させて5グラムの純白でない粉末を得た(収率91%)。生成物は、下記の式を有するものと信じられた:
【化7】

上記生成物のIRおよび1H-NMR分光分析は、生成物が高純度を有することを示唆していた。IR (KBr):3318、2921、2849、1684、1634、1539、1276 cm-11H NMR (100℃でのDMSO-d6):0.89 ppm (三重項、6個のH集積、CH3(CH2)16CH2CONH-)、1.01〜1.82 ppm (多重項、86H、シクロヘキシル環上の6個のメチレンプロトン、-NHCONHCH2(CH2)4CH2NHCO2-,CH3(CH2)16CH2CONH-)、1.83 ppm (広い二重項;0.4 H、NH尿素に結合した各炭素に隣接したシクロヘキシル環上のCH)、1.89 ppm (広い二重項、1.6 H、シクロヘキサン環上の尿素基に隣接した第三級メチンプロトン)、2.25 ppm (三重項の二重項、0.2 H、-NHCONHCH2(CH2)4CH2NHCO2-)、2.8 ppm (複数の二重項の二重項、0.3 H、NH尿素の次のシクロヘキシル環上のCH)、3.00 ppm (四重項、7.8 H、-NHCONHCH2(CH2)4CH2NHCO2-)、3.18 ppm (多重項、1.7 H、NH尿素の次のシクロヘキシル環上のCH)、4.02 ppm (三重項、4 H、-NHCO2CH2(CH2)16CH3)、5.37 (広い三重項、0.7 H、-NHCONH-)、5.71 ppm (広い二重項、3.3 H、-NHCONH-)、6.48 ppm (広い一重項、2 H、-NHCO2-);DSCによる融点:119.5℃。
【実施例5】
【0019】
室温で攪拌中の1,6-ジイソシアネートヘキサン(2.07グラム、12.34ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手)およびヘキサン(250mL)を含有する溶液に、無水テトラヒドロフラン(50mL;Aldrich Fine Chemicals社から入手)中の1-ドデカノール(2.30グラム、12.34ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手)の溶液および触媒としてのジブチル錫ジラウレート(0.08グラム、1モル%;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手)を添加した。得られた溶液を45℃に1時間加熱し、その間に、白色沈殿が生成した。混合物を室温に冷却した(20〜25℃)。ヘキサン(50mL)中のトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(0.775グラム、6.79ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から(1R、2R)および(1S、2S)立体異性体のラセミ混合物として入手)の溶液を反応混合物に滴下漏斗によりゆっくり添加した。混合物を室温で1時間攪拌し、その間に、より粘稠な白色沈殿が生成した。IRスペクトルは、痕跡量のイソシアネートの存在を示した。さらなるトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサンを添加し(0.07グラム、0.6ミリモル)、さらに30分間攪拌し、その間に、イソシアネートの全てがIRによって示されたように消費された。生成物を、濾紙上で真空濾過により単離し、ヘキサンで洗浄し、60℃で真空下に2時間乾燥させて4.6グラムの生成物を純白でない粉末として得た(収率90%)。生成物は、下記の式を有するものと信じられた:
【化8】

上記生成物の1H-NMR分析は、生成物が高純度を有することを示唆していた。IR (KBr):3320、2919、2851、1684、1635、1538、1265 cm-11H NMR (80℃でのDMSO-d6):0.89 ppm (三重項、6 H、CH3(CH2)16CH2CONH-)、1.01〜1.80 ppm (多重項、62 H、シクロヘキシル環上の6個のメチレンプロトン、-NHCONHCH2(CH2)4CH2NHCO2-、CH3(CH2)16CH2CONH-)、1.87 ppm (広い二重項、2 H、NH尿素に結合した各炭素に隣接したシクロヘキシル環上のCH2水素の1個)、2.98 ppm (四重項、8 H、NHCONHCH2(CH2)4CH2NHCO2-)、3.24 ppm (多重項、2 H、NH尿素の次のシクロヘキシル環上にCH)、4.93 ppm (三重項、4 H、-NHCO2CH2(CH2)16CH3)、5.56 ppm (広い一重項、2 H、-NHCONH-)、5.60 ppm (広い多重項、2 H、NHCONH-)、6.60 ppm (広い一重項、2 H、-NHCO2-);DSCによる融点:111.7℃。
【実施例6】
【0020】
実施例1の方法を繰返すが、4-フェニルフェノールを2-エチルヘキサノールの代りに使用する。無水テトラヒドロフラン(100mL;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手可能)中に溶解した4-フェニルフェノール(4.08グラム、24.0ミリモル;ウィスコンシン州ミルウォーキーのSigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手可能)の溶液を、室温で攪拌中の無水テトラヒドロフラン(100mL)中に溶解した1,6-ジイソシアネートヘキサン(4.04グラム、24.0ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手可能)を含有する第2溶液に添加する。ジブチル錫ジラウレート(0.38グラム、0.6ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手可能)を触媒として添加し、混合物を80℃の内部温度に30〜60分間加熱する。次に、混合物を20℃の内部温度に冷却し、その後、混合物に、無水テトラヒドロフラン(10mL)中に溶解したトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(1.37グラム、12ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から(1R、2R)および(1S、2S)立体異性体のラセミ混合物として入手可能)の溶液を滴下により添加する。混合物を室温に温めながら60分間攪拌する。残留イソシアネートを5mLのメタノールの添加により失活させる。結晶性生成物は、混合物から、ヘキサン(40mL)を添加し次いでおよそ30分間攪拌することによって沈降させ得るものと信じている。固形物は、真空濾過し、ヘキサンおよびジエチルエーテル(各10mL)で洗浄し、次いで風乾させることによって回収し得る。下記の式を有する化合物が得られるものと信じている:
【化9】

【実施例7】
【0021】
実施例5の方法を繰返すが、3-ペンタデシルフェノールを4-フェニルフェノールの代りに使用する。無水テトラヒドロフラン(100mL;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手可能)中に溶解した3-ペンタデシルフェノール(7.31グラム、24.0ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手可能)の溶液を、室温で攪拌中の無水テトラヒドロフラン(100mL)中に溶解した1,6-ジイソシアネートヘキサン(4.04グラム、24.0ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手可能)を含有する第2溶液に添加する。ジブチル錫ジラウレート(0.38グラム、0.6ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手可能)を触媒として添加し、混合物を80℃の内部温度に30〜60分間加熱する。次に、混合物を20℃の内部温度に冷却し、その後、混合物に、無水テトラヒドロフラン(10mL)中に溶解したトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(1.37グラム、12ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から(1R、2R)および(1S、2S)立体異性体のラセミ混合物として入手可能)の溶液を滴下により添加する。混合物を室温に温めながら60分間攪拌する。残留イソシアネートを5mLのメタノールの添加により失活させる。結晶性生成物は、混合物から、ヘキサン(40mL)を添加し次いでおよそ30分間攪拌することによって沈降させ得るものと信じている。固形物は、真空濾過し、ヘキサンおよびジエチルエーテル(各10mL)で洗浄し、次いで風乾させることによって回収し得る。下記の式を有する化合物が得られるものと信じている:
【化10】

【実施例8】
【0022】
実施例5の方法を繰返すが、4-フェニル-1-ブタノールを4-フェニルフェノールの代りに使用する。無水テトラヒドロフラン(100mL;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手可能)中に溶解した4-フェニル-1-ブタノール(3.60グラム、24.0ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手可能)の溶液を、室温で攪拌中の無水テトラヒドロフラン(100mL)中に溶解した1,12-ジイソシアネートドデカン(6.06グラム、24.0ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手可能)を含有する第2溶液に添加する。ジブチル錫ジラウレート(0.38グラム、0.6ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から入手可能)を触媒として添加し、混合物を80℃の内部温度に30〜60分間加熱する。次に、混合物を20℃の内部温度に冷却し、その後、混合物に、無水テトラヒドロフラン(10mL)中に溶解したトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(1.37グラム、12ミリモル;Sigma-Aldrich Fine Chemicals社から(1R、2R)および(1S、2S)立体異性体のラセミ混合物として入手可能)の溶液を滴下により添加する。混合物を室温に温めながら60分間攪拌する。残留イソシアネートを5mLのメタノールの添加により失活させる。結晶性生成物は、混合物から、ヘキサン(40mL)を添加し次いでおよそ30分間攪拌することによって沈降させ得るものと信じている。固形物は、真空濾過し、ヘキサンおよびジエチルエーテル(各10mL)で洗浄し、次いで風乾させることによって回収し得る。下記の式を有する化合物が得られるものと信じている:
【化11】

【0023】
[インク実施例1]
シアンインク組成物を、ビーカー内で、(1) 21.6グラム(61.03質量部)のポリエチレンワックス(オクラホマ州タルサのBaker Petrolite社から入手したPE 500;C-36の平均鎖長を有するポリエチレンホモポリマー)、(2) 9.76グラム(27.41質量部)の線状第一級長鎖アルコール(オクラホマ州タルサのBaker Petrolite社から入手したUNILINR 425;C-30の平均鎖長を有する)、(3) 1.27グラム(3.59質量部)の水素化(ロジン)酸のグリセリンエステル(日本国大阪のArakawa Chemistry Industries社から入手したKE-100)、(4) 0.91グラム(2.57質量部)の下記の式:
【化12】

を有するアルキルベンジルフタレート(ニュージャージー州ブリッジポートのFerro Corporation社から入手したSANTICIZERR 278)、(5) 0.03グラム(0.08質量部)のNAUGUARDR 445酸化防止剤(コネチカット州ミドルベリのUniroyal Chemical社から入手)、および(6) 1.04グラム(2.83質量部)の実施例4で調製したトランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]を添加するによって調製した。各物質を、テレモデル 40CTにより制御する反応ブロック(ミュンヘンのH + P Labortechnik GmbH社から)内で、135℃の温度で一緒に溶融させ、500rpmで2時間攪拌した。その後、この混合物に、(7) 0.89グラム(2.49質量部)の米国特許第6,472,523号の実施例Vに開示されているシアン着色剤を添加した。インクをさらに2時間攪拌し、次いで室温に冷却した。このようにして調製したシアンインクは、110℃でRFS3 Rheometrics平行プレート粘度計により測定したとき、7.2センチポイズの粘度を示した。
【0024】
[インク実施例2]
シアンインクをインク実施例1に記載したようにして調製したが、3.5質量部のトランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]を使用した。このようにして調製したシアンインクは、120℃でRFS3 Rheometrics平行プレート粘度計により測定したとき、26センチポイズの粘度を示した。
【0025】
[比較例A]
シアンインクをインク実施例1に記載したようにして調製したが、トランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]は存在しなかった。このインクにおける各成分のインクの質量部で表す相対量は、下記の表に示している。


【0026】
各インクの流動性を、通常の平行プレート形状のRheometrics Scientific社から入手した制御型歪みレオメーターを使用して測定した。下記の表は、上記2種のインクの融点よりも高い領域(各インクの融点は、上記レオメーターにより測定したとき、90℃辺りである)におけるタンデルタ(損失弾性率即ち粘稠弾性率G”対貯蔵弾性率即ち弾性率G'の比)を示す。インク1およびインク2は、この領域において低めのタンデルタを有しており、G'(弾性率)の増大および95℃でのタンデルタよりも低いタンデルタを示し、G'がG”よりもはるかに高いことを示し、上記物質がその領域において弾性であることを示唆している。一方、比較インクAは、同じ領域において高いタンデルタを有しており、インク1および2に対比して極めて低い弾性を示唆している。これらのデータは、トランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]が、これを含有する固形インクの流動特性に有意に影響していることを実証している。上記インクのその融点よりも上での弾性の増大は、より堅牢な像に変換することが期待される。


【0027】
[インク実施例3]
インクをインク実施例1に記載したようにして調製するが、シアン染料を3質量部の米国特許第6,713,614号の実施例Iに開示されているイエロー着色剤と置換える。イエロー相変化インクは、このようにて調製する。
[インク実施例4]
インクをインク実施例1に記載したようにして調製するが、実施例4で調製したトランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]を5質量部の実施例5で調製したトランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]と置換える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式を有するトランス-1,2-シクロヘキサンビス[尿素-ウレタン]化合物:
【化1】

(式中、R1およびR'1は、各々、互いに独立に、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり;R2およびR'2は、各々、互いに独立に、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基またはアルキルアリール基であり;R3およびR'3は、各々、互いに独立に、水素原子またはアルキル基であり;R4およびR'4は、各々、互いに独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基またはフェニル基であり;nは、0、1、2、3または4の整数であり;R5は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、またはアルキル、アリール、アリールアルキルもしくはアルキルアリール基以外の置換基である)。
【請求項2】
R3およびR'3が各々水素原子であり、R1およびR'1が互いに同じであり、R2およびR'2が互いに同じである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1およびR'1が互いに同じであり、R2およびR'2が互いに同じであり、R3およびR'3が各々水素原子であり、R4およびR'4が互いに同じであり、R4およびR'4が水素原子またはフッ素原子であり、nが0である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
下記の式を有する、請求項1記載の化合物:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】


【公開番号】特開2006−160734(P2006−160734A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340496(P2005−340496)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】