説明

トランスコーダ、トランスコーディング方法及びトランスコーディング用コンピュータプログラムならびに動画像伝送装置

【課題】入力された符号化動画像データを少ない遅延時間でトランスコード可能なトランスコーダを提供する。
【解決手段】トランスコーダ1は、第1の符号化方式に従って符号化された第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号するデコーダ12と、復号された各ピクチャのうち、第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄するピクチャ廃棄部14と、ピクチャ廃棄部14により廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となるピクチャとして、第2の符号化方式に従ってその残りのピクチャを再符号化するエンコーダ15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される実施形態は、符号化された動画像データを他の符号化方式に従って符号化された動画像データに変換するトランスコーダ、トランスコーディング方法、トランスコーディング用コンピュータプログラム及びそれらを用いた動画像伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットプロトコル(Internet Protocol、IP)ネットワークを介して、動画像データを配信するサービスが提供されている。このようなサービスの一つとして、地上波デジタルテレビジョン放送を受信することが困難な地域に対して、放送電波により配信された動画像データを受信し、IPネットワークを通じてその動画像データを再配信するサービスが検討されている。
【0003】
しかし、IPネットワークで使用可能な通信帯域幅は、放送波で使用可能な通信帯域幅よりも狭い。そこで、入力された符号化動画像データを一旦復号し、その復号された動画像データをより符号化効率の高い符号化方式に従って再度符号化する技術が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。このように、特定の符号化方式に従って符号化された動画像データを他の符号化方式に従って符号化された動画像データに変換する処理はトランスコードと呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−96491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、放送電波により配信された動画像データを受信し、IPネットワークを通じてその動画像データを再配信するサービスでは、その再配信される動画像データに対して、放送電波により直接配信される動画像データとサービス及び技術面での同一性が要求される。そのため、放送電波により配信される動画像データを受信して、その動画像データを再配信する映像再送信システムは、放送電波により直接配信される動画像データに対する再配信される動画像データの遅延を極力小さくしなければならない。
例えば、地上デジタル放送補完再送信審査会は、再送信される動画像データに対する要件を定めた地上デジタル放送IP再送信方式審査ガイドラインを策定している。この地上デジタル放送IP再送信方式審査ガイドラインでは、「映像・音声・データ放送の遅延は、地上デジタルテレビジョン放送の電波による受信の場合に比べて、システム全体で2.5秒以下であること」と定められている。なお、地上デジタル放送IP再送信方式審査ガイドラインに関しては、http://nab.or.jp/shinsakaiに公開されているgideline20071026.pdfを参照されたい。
【0006】
そこで、本明細書は、入力された符号化動画像データを少ない遅延時間でトランスコード可能なトランスコーダ、トランスコーディング方法及びトランスコーディング用コンピュータプログラムならびに動画像伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、トランスコーダが提供される。このトランスコーダは、第1の符号化方式に従って符号化された第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号するデコーダと、復号された各ピクチャのうち、第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄するピクチャ廃棄部と、廃棄部により廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となるピクチャとして、第2の符号化方式に従ってその残りのピクチャを再符号化するエンコーダとを有する。
【0008】
また他の実施形態によれば、動画像伝送装置が提供される。この動画像伝送装置は、映像信号をパケット単位で受信する受信部と、映像信号から第1の符号化方式により符号化された第1の動画像データと、他のデータを分離するマルチプレクサと、第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号するデコーダと、復号された各ピクチャのうち、第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄するピクチャ廃棄部と、廃棄部により廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となるピクチャとして、第2の符号化方式に従ってその残りのピクチャを再符号化するエンコーダと、他のデータと第2の符号化方式に従って再符号化された各ピクチャを含む動画像データを多重化することによりパケットを作成するマルチプレクサと、パケットを暗号化する暗号化部と、暗号化されたパケットを出力する送信部とを有する。
【0009】
さらに他の実施形態によれば、トランスコーディング方法が提供される。このトランスコーディング方法は、第1の符号化方式に従って符号化された第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号し、復号された各ピクチャのうち、第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄し、復号された各ピクチャのうち、廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となるピクチャとして、第2の符号化方式に従ってその残りのピクチャを再符号化することを含む。
【0010】
さらに他の実施形態によれば、コンピュータに第1の符号化方式に従って符号化された動画像データを第2の符号化方式に従って符号化された動画像データに変換させるトランスコーディング用コンピュータプログラムが提供される。このコンピュータプログラムは、第1の符号化方式に従って符号化された第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号し、復号された各ピクチャのうち、第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄し、復号された各ピクチャのうち、廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となるピクチャとして、第2の符号化方式に従ってその残りのピクチャを再符号化することをコンピュータに実行させる命令を有する。
【0011】
本発明の目的及び利点は、請求項において特に指摘されたエレメント及び組み合わせにより実現され、かつ達成される。
上記の一般的な記述及び下記の詳細な記述の何れも、例示的かつ説明的なものであり、請求項のように、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明の効果】
【0012】
本明細書に開示されたトランスコーダ、トランスコーディング方法及びトランスコーディング用コンピュータプログラムならびに動画像伝送装置は、入力された符号化動画像データを少ない遅延時間でトランスコードすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係るトランスコーダの概略構成図である。
【図2】(a)〜(c)は、それぞれ、ピクチャを廃棄しない場合、1枚、2枚のピクチャを廃棄した場合の遅延時間の概念図である。
【図3】第1の実施形態に係るトランスコーダにより実行される、符号化動画像データのトランスコード処理の動作フローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係るトランスコーダの概略構成図である。
【図5】第2の実施形態に係るトランスコーダにより生じる遅延時間の概念図である。
【図6】第2の実施形態に係るトランスコーダにより実行される、符号化動画像データのトランスコード処理の動作フローチャートである。
【図7】第3の実施形態に係るトランスコーダの概略構成図である。
【図8】映像再送信システムの概略構成図である。
【図9】図8に示された映像再送信システムが有する、何れかの実施形態によるトランスコーダを有する動画像伝送装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照しつつ、第1の実施形態によるトランスコーダについて説明する。
このトランスコーダは、入力された符号化動画像データに含まれる、符号化演算量が相対的に多い、他のピクチャを符号化する際の基準として参照されるピクチャを含む最初の所定枚数のピクチャを廃棄することで、再符号化による遅延時間の短縮を図る。
なお、トランスコードされる動画像データに含まれるピクチャは、インターレース方式により取得されるフィールド、または、プログレッシブ方式により取得されるフレームの何れであってもよい。
【0015】
図1は、第1の実施形態によるトランスコーダ1の概略構成図である。図1に示すように、トランスコーダ1は、デマルチプレクサ11と、デコーダ12と、エンコード開始位置部13と、ピクチャ廃棄部14と、エンコーダ15と、バッファ16と、マルチプレクサ17とを有する。トランスコーダ1が有するこれらの各部は、例えば、それぞれ別個の回路とすることができる。またトランスコーダ1は、トランスコーダ1が有するこれらの各部の機能を有する回路が集積された集積回路であってもよい。あるいはまた、トランスコーダ1が有するこれらの各部は、トランスコーダ1が有する一つまたは複数のプロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールであってもよい。
【0016】
デマルチプレクサ11は、トランスコーダ1に入力された多重化された映像信号を、符号化された動画像データと、オーディオ信号、字幕などの他のデータに分離する。そしてデマルチプレクサ11は、符号化された動画像データをデコーダ12に渡す。またデマルチプレクサ11は、符号化された動画像データ以外のデータをバッファ16に保存する。
さらにデマルチプレクサ11は、符号化された動画像データに含まれる各ピクチャの符号化種別、各ピクチャのデータ量及び量子化スケールをエンコード開始位置決定部13に渡す。
【0017】
デコーダ12は、デマルチプレクサ11から受け取った、第1の符号化方式により符号化された動画像データに含まれる各ピクチャを、その第1の符号化方式に従った復号方法により復号する。例えば、第1の符号化方式がMoving Picture Experts Group phase 2(MPEG-2)であれば、デコーダ12は、符号化された動画像データの各ピクチャ及び動きベクトルなど付随するデータを可変長復号する。そしてデコーダ12は、可変長復号されたデータに対して逆量子化処理及び逆直交変換処理を実行する。逆量子化処理及び逆直交変換処理が行われることにより、復号対象となるピクチャがIピクチャであれば、そのピクチャは復号される。一方、復号対象となるピクチャがPピクチャあるいはBピクチャであれば、デコーダ12は、逆直交変換処理により得られた差分信号に、既に復号されている参照ピクチャの対応ブロックから求められた予測画像を加算することによりそのピクチャを復号する。
なお、Iピクチャは、符号化対象の1枚のピクチャ内に含まれる情報のみを用いてそのピクチャを符号化するイントラ符号化方法により符号化されるピクチャである。一方、Pピクチャ及びBピクチャは、符号化対象のピクチャの前後のピクチャの情報を用いて符号化するインター符号化方法により符号化されるピクチャである。このうち、Pピクチャは、符号化対象のピクチャよりも時間的に前のピクチャのみを用いて符号化される。またBピクチャは、符号化対象のピクチャよりも時間的に前のピクチャと時間的に後のピクチャの両方を用いて符号化される。
Iピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャは、予め定められた一定の周期で繰り返される。この一定周期で繰り返される、連続する複数のピクチャを含み、各ピクチャに対する符号化方法が規定された構造はGroup Of Pictures(GOP)と呼ばれる。
デコーダ12は、GOPの構造に従った符号化順序で各ピクチャを復号する。そしてデコーダ12は、ピクチャが復号される度に、その復号されたピクチャと、復号前におけるそのピクチャの符号化種別(すなわち、Iピクチャ、Pピクチャ、Bピクチャ)を示す情報をピクチャ廃棄部14に渡す。
【0018】
エンコード開始位置決定部13は、各ピクチャの符号化種別、各ピクチャのデータ量または量子化スケールに基づいて、トランスコードによる遅延時間が最小となるように、エンコーダ15が最初に再符号化するピクチャである符号化先頭ピクチャの位置を決定する。
GOPでは、一般的に、インター符号化される他のピクチャを符号化するための基準となるIピクチャが、符号化順序において先頭に配置される。そのため、符号化された動画像データをトランスコードするためには、通常、デコーダが各GOPのIピクチャを最初に復号し、次に、エンコーダがその復号されたIピクチャを再度符号化する。この場合、そのIピクチャに対する復号処理、符号化処理及びデータ伝送処理に要する時間がそのままトランスコードによる遅延時間となってしまう。
しかも、符号化されたIピクチャのデータ量は、符号化されたPピクチャ及びBピクチャのデータ量よりも一般的に多い。そのため、Iピクチャの復号処理、符号化処理及びデータ伝送に要する時間は、Pピクチャ及びBピクチャの復号処理、符号化処理及びデータ伝送に要する時間よりも長くなる。
【0019】
そこでエンコード開始位置決定部13は、元の動画像データの最初のGOPからIピクチャを含む最初の所定枚数のピクチャを廃棄することにより、再符号化される先頭のピクチャの位置を変更した場合の遅延時間を推定する。なお、放送電波によって配信される映像信号を通信ネットワークを介して再配信する映像再送信システムにこのトランスコーダ1が用いられる場合、上記のようなピクチャの廃棄は、映像再送信システムの起動時のみに発生する。そのため、ピクチャの廃棄に伴う不利益は、廃棄されたピクチャの枚数に相当する非常に僅かな時間だけ、サービス提供開始時刻が遅れること以外に発生しない。
【0020】
遅延時間を推定するために、エンコード開始位置決定部13は、符号化先頭ピクチャの復号開始待機期間を推定する。この復号開始待機期間は、元の動画像データの最初のIピクチャがデコーダ12に伝送開始されてから、元の動画像データのGOPの符号化順序に従って符号化先頭ピクチャがデコーダ12に伝送開始されるまでの期間である。またエンコード開始位置決定部13は、所定枚数のピクチャを廃棄したときの符号化先頭ピクチャの再符号化処理期間を推定する。この再符号化処理期間は、元の動画像データの最初のIピクチャがデコーダ12に伝送開始されてから、エンコーダ15が再符号化された符号化先頭ピクチャを出力終了するまでに要する時間である。再符号化処理期間には、元の動画像データのGOPの符号化順序に従って符号化先頭ピクチャまでの各ピクチャが復号されるのに要する期間と、符号化先頭ピクチャがエンコーダ15により再符号化されるのに要する期間が含まれる。さらに再符号化処理期間には、元の動画像データの最初のIピクチャがデマルチプレクサ11からデコーダ12へ伝送されるために要する期間と、復号された符号化先頭ピクチャがデコーダ12からエンコーダ15まで伝送されるために要する期間及び再符号化された符号化先頭ピクチャがエンコーダ15からマルチプレクサ17へ伝送されるために要する期間が含まれる。そしてエンコード開始位置決定部13は、符号化先頭ピクチャの再符号化処理期間から復号開始待機期間の差を遅延時間とする。
【0021】
図2(a)〜図2(c)は、それぞれ、ピクチャを廃棄しない場合、1枚、2枚のピクチャを廃棄した場合の遅延時間の概念図である。なお、簡単化のために、図2(a)〜図2(c)では、GOPは符号化順序と画像の再生順序が一致し、Bピクチャが含まれないIPPP構成を有するものとして説明する。図2(a)〜図2(c)のそれぞれにおいて、横軸は経過時間を表す。グラフ201は、トランスコーダ1に入力された第1の符号化方式により符号化された元の動画像データのGOPを復号するのに要する時間を表す。そしてグラフ201内の縦線のそれぞれは、GOP内の一つのピクチャがデマルチプレクサ11からデコーダ12に伝送開始された時刻に対応する。またグラフ202〜204は、それぞれ、トランスコーダ1によりトランスコードされた動画像データの一つのGOPのトランスコードに要する時間を表す。グラフ202〜204のそれぞれにおいて、グラフ内の縦線は、それぞれ一つのピクチャについてエンコーダ15が出力を終了した時刻、すなわち、マルチプレクサ17への伝送を終了した時刻に対応する。
【0022】
例えば、図2(a)では、遅延時間Δtは、元の動画像データの先頭のIピクチャがデコーダ12に伝送開始された時刻t0と、そのIピクチャがエンコーダ15によりIピクチャとして再符号化され、マルチプレクサ17への伝送が終了した時刻t1との差(t1-t0)となる。この場合、復号処理及びデータ伝送に要する時間が長いIピクチャが再度Iピクチャとして符号化されるため、全体としての遅延時間Δtも長くなる。
一方、図2(b)では、遅延時間Δtは、元の動画像データのGOP内の2番目に位置するPピクチャがデコーダ12に伝送開始された時刻t2と、そのPピクチャがIピクチャとして再符号化され、マルチプレクサ17への伝送が終了した時刻t3との差(t3-t2)となる。この場合、復号処理及びデマルチプレクサ11からデコーダ12へのデータ伝送に要する時間が比較的短いPピクチャがIピクチャとして再符号化されるため、再符号化が開始されるまでに要する時間がグラフ202に示した場合よりも短縮される。同様に、図2(c)では、遅延時間Δtは、元の動画像データの3番目に位置するPピクチャがデコーダ12に伝送開始された時刻t4と、そのPピクチャがIピクチャとして再符号化され、マルチプレクサ17への伝送が終了した時刻t5との差(t5-t4)となる。
【0023】
符号化先頭ピクチャの復号開始待機期間及び再符号化処理期間を推定するために、Iピクチャ、Pピクチャなど、ピクチャの符号化種別ごとに復号処理、符号化処理及び各部間のデータ伝送に要する時間が予め設定されてもよい。あるいは、エンコード開始位置決定部13は、各符号化種別のピクチャの復号処理、符号化処理及び各部間のデータ伝送に要する時間を、符号化種別とともに、第1の符号化方式により符号化された各ピクチャの符号化データ量に基づいて決定してもよい。この場合、符号化種別及び符号化データ量と、復号処理、符号化処理及びデータ伝送に要する時間の関係は、トランスコーダ1の処理能力に応じて予め求められる。例えば、その関係を表す参照テーブルがエンコード開始位置決定部13が有するメモリに予め記憶される。そしてエンコード開始位置決定部13は、その参照テーブルを参照することにより、デマルチプレクサ11から受け取った符号化種別及び符号化データ量に対応する復号処理、符号化処理及び各部間のデータ伝送に要する時間を特定できる。さらにエンコード開始位置決定部13は、各符号化種別のピクチャの復号処理、符号化処理及び各部間のデータ伝送に要する時間を、符号化種別、各ピクチャの符号化データ量及びその符号化に用いられた量子化スケールに基づいて決定してもよい。この場合も、符号化種別、符号化データ量及び量子化スケールと、復号処理、符号化処理及びデータ伝送に要する時間の関係は、トランスコーダ1の処理能力に応じて予め求められる。そして、その関係を表す参照テーブルがエンコード開始位置決定部13が有するメモリに予め記憶される。エンコード開始位置決定部13は、その参照テーブルを参照することにより、デマルチプレクサ11から受け取った符号化種別、符号化データ量及び量子化スケールに対応する復号処理、符号化処理及び各部間のデータ伝送に要する時間を特定できる。
【0024】
エンコード開始位置決定部13は、符号化先頭ピクチャの位置をGOPに含まれる枚数以内で一つずつ変更し、各位置に対する遅延時間をそれぞれ算出する。ただし、元の動画像データのGOPの構造によっては、ピクチャの符号化順序とピクチャの再生順序が異なることがある。符号化順序と再生順序が異なる場合、ピクチャの廃棄枚数によっては、エンコーダ15が何れかのピクチャについて再符号化を開始するまでに、デコーダ12によるそのピクチャの復号処理が終了しないこともある。そこでエンコード開始位置決定部13は、所定の廃棄枚数について、何れかのピクチャの再符号化開始までにそのピクチャの復号が終了しない場合、その廃棄枚数に対応する符号化先頭ピクチャの位置が選択されないように遅延時間を決定する。例えば、エンコード開始位置決定部13は、その所定の廃棄枚数に対する遅延時間を、ピクチャを1枚も廃棄しない場合の遅延時間よりも大きな値とする。
エンコード開始位置決定部13は、遅延時間が最小となる符号化先頭ピクチャの位置に対応するピクチャの廃棄枚数を決定する。そしてエンコード開始位置決定部13は、遅延時間が最小となるピクチャの廃棄枚数をピクチャ廃棄部14に通知する。
【0025】
ピクチャ廃棄部14は、デコーダ12から受け取った、復号された動画像データのうち、最初のGOPについて、エンコード開始位置決定部13から通知された廃棄枚数のピクチャを廃棄する。そしてピクチャ廃棄部14は、廃棄されたピクチャ以降のピクチャをエンコーダ15に渡す。
【0026】
エンコーダ15は、ピクチャ廃棄部14から受け取った各ピクチャを、第1の符号化方式よりも符号化効率の高い第2の符号化方式に従って再符号化する。例えば、第2の符号化方式がH.264 MPEG-4 Advanced Video Coding(H.264 MPEG-4 AVC)である場合、エンコーダ15は、Iピクチャに対しては、マクロブロック単位でピクチャ内予測を行う。そしてエンコーダ15は、ピクチャ内予測信号の基準となるマクロブロック及びピクチャ内予測信号との差分信号に対して直交変換処理、量子化処理を実行する。一方、PピクチャまたはBピクチャに対しては、エンコーダ15は、マクロブロック単位でピクチャ間の動き予測及び動き補償を行うことにより予測信号を作成し、その予測信号とマクロブロックとの差分信号に対して直交変換処理、量子化処理を実行する。そしてエンコーダ15は、量子化処理された各ピクチャ及び動きベクトルを可変長符号化することにより、第2の方式に従って符号化された符号化動画像データを生成する。
またエンコーダ15は、ピクチャ廃棄部14から受け取った各ピクチャのうち、先頭のピクチャをIピクチャとして再符号化する。なお、エンコーダ15は、元の符号化動画像データのGOP構造とは異なるGOP構造を持つように、動画像データを再符号化してもよい。
エンコーダ15は、第2の符号化方式に従って再符号化された符号化動画像データをマルチプレクサ17へ出力する。
【0027】
バッファ16は、デマルチプレクサ11から受け取った符号化された動画像データ以外のオーディオ信号、字幕などのデータを一時的に保存する。そしてバッファ16は、動画像データのトランスコードに要する一定期間の後、保存しているデータをマルチプレクサ17へ出力する。
【0028】
マルチプレクサ17は、エンコーダ15から受け取った符号化動画像データと、バッファ16から受け取ったオーディオ信号、字幕などのデータを多重化する。そしてマルチプレクサ17は、その多重化により生成された映像データを、例えばMPEG-2 TS形式に従ってパケット単位に分割し、パケットごとに出力する。
【0029】
図3は、トランスコーダ1により実行されるトランスコード処理の動作フローチャートである。なお、トランスコーダ1の各部がコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである場合、図3に示す動作フローは、トランスコーダ1が有するプロセッサ上で動作するコンピュータプログラムにより制御される。
まず、デマルチプレクサ11は、トランスコーダ1に入力された多重化された映像信号を、第1の符号化方式に従って符号化された動画像データと、オーディオ信号、字幕などの他のデータに分離する(ステップS101)。そしてデマルチプレクサ11は、符号化された動画像データをピクチャ単位でデコーダ12に渡す。またデマルチプレクサ11は、符号化された動画像データ以外のデータをバッファ16に保存する。さらにデマルチプレクサ11は、符号化された動画像データに含まれる各ピクチャの符号化種別、各ピクチャのデータ量及び量子化スケールをエンコード開始位置決定部13に渡す。
デコーダ12は、デマルチプレクサ11から符号化されたピクチャを受け取る度に、その符号化されたピクチャを第1の符号化方式に応じた復号方法によって復号する(ステップS102)。そしてデコーダ12は、ピクチャを復号する度に、その復号されたピクチャをピクチャ廃棄部14に渡す。
【0030】
また、エンコード開始位置決定部13は、符号化された動画像データの最初のGOPについて、再符号化される符号化先頭ピクチャの位置を変更しつつ、各位置に対する遅延時間を推定する(ステップS103)。そしてエンコード開始位置決定部13は、遅延時間が最小となる符号化先頭ピクチャの位置に対応するピクチャの廃棄枚数を決定する(ステップS104)。エンコード開始位置決定部13は、求めた廃棄枚数をピクチャ廃棄部14へ通知する。
【0031】
ピクチャ廃棄部14は、デコーダ12から順次受け取った、復号されたピクチャのうち、先頭のピクチャからエンコード開始位置決定部13により決定された廃棄枚数分のピクチャを廃棄する(ステップS105)。そしてピクチャ廃棄部14は、残りのピクチャをエンコーダ15に渡す。エンコーダ15は、ピクチャ廃棄部14から受け取った残りのピクチャの先頭ピクチャをIピクチャとして、各ピクチャを第2の符号化方式に従って符号化することで再符号化された動画像データを作成する(ステップS106)。エンコーダ15は、1枚のピクチャの符号化処理が終了する度に、その符号化されたピクチャをマルチプレクサ17に渡す。そしてマルチプレクサ17は、再符号化された動画像データと、オーディオ信号、字幕などの他のデータを多重化することで映像信号を作成し、その多重化された映像信号を出力する(ステップS107)。
なお、トランスコーダ1は、ステップS102とステップS103、S104の処理順序を入れ替えてもよい。あるいは、トランスコーダ1は、ステップS102の処理とステップS103、S104の処理を並列に実行してもよい。
【0032】
以上に説明してきたように、第1の実施形態によるトランスコーダは、入力された符号化動画像データに含まれる、トランスコードに要する時間が長いIピクチャを含む最初の所定枚数のピクチャを廃棄する。これにより、このトランスコーダは、データ伝送及び復号処理の時間が短いPピクチャまたはBピクチャをIピクチャとして再符号化できるため、トランスコードによる遅延時間を短縮することができる。
【0033】
なお、ピクチャ廃棄部は、復号された動画像データに含まれる最初のGOPにおいて、Iピクチャを含む予め定められた所定枚数のピクチャを廃棄してもよい。この所定枚数は、例えば、1枚からGOPに含まれるピクチャ枚数の総計よりも1少ない枚数の範囲内の任意の枚数の設定される。この場合、エンコード開始位置決定部は省略されてもよい。
【0034】
次に、第2の実施形態に係るトランスコーダについて説明する。
このトランスコーダは、映像信号を受信したときの基準ピクチャの受信タイミングに基づいて、トランスコードされた基準ピクチャの送信タイミングを決定し、送信タイミング調整をマルチプレクサで実行する。そしてこのトランスコーダは、デコーダ、エンコーダなどの各部がピクチャを出力するタイミングを調節するために、一時的にデータをバッファしなくてもよくすることにより、冗長な待機時間を省くことで遅延時間の短縮を図る。
【0035】
図4は、第2の実施形態によるトランスコーダ2の概略構成図である。図2に示すように、トランスコーダ2は、デマルチプレクサ11と、デコーダ12と、エンコーダ15と、バッファ16と、マルチプレクサ17と、ピクチャタイミング検出部18とを有する。
第2の実施形態によるトランスコーダ2は、エンコード開始位置決定部13およびピクチャ廃棄部14の代わりに、ピクチャタイミング検出部18を有する点で、第1の実施形態によるトランスコーダ1と異なる。そのため、以下では、第1の実施形態によるトランスコーダ1と異なる点を主として説明する。なお、図4に示されるトランスコーダ2の各構成要素には、図1に示されたトランスコーダ1の対応する構成要素と同一の参照番号を付した。
またトランスコーダ2が有するこれらの各部は、例えば、それぞれ別個の回路とすることができる。またトランスコーダ2は、トランスコーダ2が有するこれらの各部の機能を有する回路が集積された集積回路であってもよい。あるいはまた、トランスコーダ2が有するこれらの各部は、トランスコーダ2が有する一つまたは複数のプロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールであってもよい。
【0036】
デマルチプレクサ11は、トランスコーダ1にパケット単位で入力された多重化された映像信号を、第1の符号化方式に従って符号化された動画像データと、オーディオ信号、字幕などの他のデータに分離する。そしてデマルチプレクサ11は、符号化された動画像データをピクチャ単位でデコーダ12に渡す。またデマルチプレクサ11は、符号化された動画像データ以外のデータをバッファ16に保存する。
さらにデマルチプレクサ11は、入力された映像信号のパケットから、符号化された動画像データのピクチャが含まれるパケットのヘッダ情報をピクチャタイミング検出部18に通知する。このパケットは、例えば、MPEG-2のPacketized Elementary Stream(PES)パケットである。またデマルチプレクサ11は、各パケットの受信時刻をピクチャタイミング検出部18に通知する。
【0037】
ピクチャタイミング検出部18は、デマルチプレクサ11から受け取ったパケットのヘッダ情報から、基準となるピクチャ、例えば、最初のGOPのIピクチャが含まれるパケットを検出する。そしてデマルチプレクサ11は、そのパケットに対して、基準ピクチャが含まれていることを示す識別情報を基準ピクチャ識別情報として抽出する。なお、この識別情報は、例えば、MPEG-2 TS/PSにおいて使用されるPresentation Time Stamp(PTS)とすることができる。
【0038】
さらにピクチャタイミング検出部18は、トランスコードされた基準ピクチャが含まれるパケットをトランスコーダ2が送出するタイミングである送信タイミングを決定する。そこでピクチャタイミング検出部18は、基準となるピクチャを含むパケットがトランスコーダ2に入力されてから、トランスコードされた基準ピクチャを含むパケットが送出されるまでの遅延時間を表す遅延設定量を決定する。この遅延設定量は、例えば、トランスコーダ2の各部が基準ピクチャに対して一連の処理を実行するために必要とする演算量と、トランスコーダ2の処理能力に基づいて予め設定される。あるいは、この遅延設定量は、基準ピクチャを含むパケットがデマルチプレクサ11に入力されてから、その基準ピクチャについてマルチプレクサ17への伝送が終了するまでの所要時間の履歴に基づいて設定されてもよい。この場合、トランスコーダ2は、基準ピクチャが入力される度にその所要時間を計測し、その所要時間をトランスコーダ2が有するメモリ(図示せず)に記憶しておく。そしてピクチャタイミング検出部18は、例えば、記憶されている所要時間の最大値を遅延設定量とする。
【0039】
ピクチャタイミング決定部18は、デマルチプレクサ11から通知された、各パケットの受信時刻から、基準ピクチャが含まれるパケットの受信時刻を特定する。そしてピクチャタイミング決定部18は、基準ピクチャが含まれるパケットの受信時刻に、遅延設定量を加算することにより、送信タイミングを決定する。
ピクチャタイミング検出部18は、基準ピクチャ識別情報及び基準ピクチャを含むパケットの送信タイミングをマルチプレクサ17へ通知する。
【0040】
デコーダ12は、第1の符号化方式(例えば、MPEG-2)に従って符号化された動画像データに含まれる各ピクチャを復号し、復号された各ピクチャをエンコーダ15に渡す。またエンコーダ15は、その復号された各ピクチャを第2の符号化方式(例えば、H.264 MPEG-4 AVC)に従って再符号化し、その再符号化された各ピクチャ、すなわち、トランスコードされた各ピクチャをマルチプレクサ17へ出力する。
またデマルチプレクサ11、デコーダ12及びエンコーダ15は、デマルチプレクサ11が受信したパケットのうち、基準ピクチャが含まれているパケットから抽出された基準ピクチャを示す識別情報を基準ピクチャとともに伝送する。デマルチプレクサ11から、デコーダ12及びエンコーダ15を経由してマルチプレクサ17へ伝送されるこの識別情報は、ピクチャタイミング検出部18により抽出される基準ピクチャ識別情報と同一である。そのため、マルチプレクサ17は、エンコーダ15から受け取った識別情報が基準ピクチャ識別情報と一致するか否かを調べることにより、基準ピクチャを受け取ったか否か判別できる。
【0041】
マルチプレクサ17は、エンコーダ15から受け取った符号化動画像データと、バッファ16から受け取ったオーディオ信号、字幕などのデータを多重化し、それらのデータが含まれるパケットを作成する。
またマルチプレクサ17は、エンコーダ15から再符号化されたピクチャとともに受け取った識別情報が、ピクチャタイミング検出部18から受け取った基準ピクチャ識別情報と一致するか否か判定する。そしてそれら二つの識別情報が一致する場合、マルチプレクサ17は、基準ピクチャを受け取ったと判定する。そしてマルチプレクサ17は、その基準ピクチャが格納されたパケットを、ピクチャタイミング検出部18から受け取った送信タイミングにおいて送出開始する。
なお、マルチプレクサ17は、基準ピクチャ以後の各ピクチャが含まれるパケットの送信タイミングを、基準ピクチャに対応するクロック(例えば、Program Clock Reference、PCR)を基準として決定する。そしてマルチプレクサ17は、各ピクチャが含まれるパケットの送信タイミングを、基準ピクチャに対応するクロックと、各ピクチャに対応するクロックとの差を基準ピクチャが含まれるパケットの送信タイミングに加算することにより決定する。
【0042】
図5は、トランスコーダ2により生じる遅延時間の概念図である。図5において、パケット群510は、トランスコーダ2に入力される映像信号が含まれるパケット群である。またパケット群520は、トランスコーダ2によりトランスコードされた動画像データが含まれ、トランスコーダ2により出力されるパケット群である。そしてパケット群510のうちのパケットA〜Dに基準ピクチャが含まれている。特にパケットAに、基準ピクチャに対応するPTSが含まれており、12時0分0秒丁度にパケットAがトランスコーダ2に入力されたとする。また遅延設定量は500m秒に設定される。
この場合、マルチプレクサ17は、エンコーダ15から再符号化されたピクチャとともに送られてきたPTSが、ピクチャタイミング決定部18から送られてきたPTSと一致すると、そのピクチャが基準ピクチャであると判定する。そしてマルチプレクサ17は、パケット群520のうちの基準ピクチャが含まれるパケットa〜cを、パケットaから順に、12時0分0秒に遅延設定量である500m秒を加えた時刻に送出開始する。
【0043】
図6は、トランスコーダ2により実行されるトランスコード処理の動作フローチャートである。なお、トランスコーダ2の各部がコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである場合、図6に示す動作フローは、トランスコーダ2が有するプロセッサ上で動作するコンピュータプログラムにより制御される。
【0044】
先ず、デマルチプレクサ11は、パケット単位で入力された多重化された映像信号を、第1の符号化方式に従って符号化された動画像データと、オーディオ信号、字幕などの他のデータに分離する(ステップS201)。そしてデマルチプレクサ11は、符号化された動画像データをピクチャ単位でデコーダ12に渡す。その際、デマルチプレクサ11は、パケットのヘッダ情報から基準ピクチャに対する識別情報を検出し、その識別情報を基準ピクチャとともにデコーダ12に渡す。またデマルチプレクサ11は、符号化された動画像データ以外のデータをバッファ16に保存する。さらにデマルチプレクサ11は、符号化された動画像データのピクチャが含まれるパケットのヘッダ情報をピクチャタイミング検出部18に通知する。
ピクチャタイミング検出部18は、パケットのヘッダ情報から基準ピクチャ識別情報を検出し、かつ基準ピクチャが含まれるパケットの受信時刻に所定の遅延時間を加算することにより、送信タイミングを決定する(ステップS202)。そしてピクチャタイミング検出部18は、基準ピクチャ識別情報及び送信タイミングをマルチプレクサ17に通知する。
【0045】
デコーダ12は、デマルチプレクサ11から符号化されたピクチャを受け取る度に、各ピクチャを第1の符号化方式に応じた復号方法により復号する(ステップS203)。そしてデコーダ12は、復号された各ピクチャをエンコーダ15に渡す。その際、デコーダ12は、基準ピクチャに対する識別情報を復号された基準ピクチャとともにエンコーダ15に渡す。エンコーダ15は、復号された各ピクチャを第2の符号化方式に従って符号化する(ステップS204)。そしてエンコーダ15は、再符号化された各ピクチャをマルチプレクサ17に渡す。その際、エンコーダ15は、基準ピクチャに対する識別情報を再符号化された基準ピクチャとともにマルチプレクサ17に渡す。
【0046】
マルチプレクサ17は、再符号化された動画像データの各ピクチャと、オーディオ信号、字幕などの他のデータを多重化してパケット作成する(ステップS205)。またマルチプレクサ17は、基準ピクチャ識別情報と一致する識別情報をエンコーダ15から受信したか否か判定する(ステップS206)。基準ピクチャ識別情報と一致する識別情報をエンコーダ15から受信していない場合(ステップS206−No)、マルチプレクサ17は、ステップS206の処理を繰り返す。一方、基準ピクチャ識別情報と一致する識別情報をエンコーダ15から受信した場合(ステップS206−Yes)、マルチプレクサ17は、その識別情報とともに受信したピクチャを基準ピクチャと判定することにより、基準ピクチャが含まれるパケットを特定する(ステップS207)。
【0047】
次に、マルチプレクサ17は、現在時刻が送信タイミングになったか否か判定する(ステップS208)。現在時刻が送信タイミングになっていない場合(ステップS208−No)、マルチプレクサ17は、ステップS208の処理を繰り返す。一方、現在時刻が送信タイミングになった場合(ステップS208−Yes)、マルチプレクサ17は、再符号化された基準ピクチャが含まれるパケットから送信開始する(ステップS209)。
【0048】
以上に説明してきたように、第2の実施形態によるトランスコーダは、映像信号を受信したときの基準ピクチャの受信タイミングに基づいて、トランスコードされた基準ピクチャの送信タイミングを決定する。そしてこのトランスコーダは、その送信タイミング調整をマルチプレクサで実行する。そのため、このトランスコーダは、デコーダ、エンコーダなどの各部がピクチャを出力するタイミングを調節するために、一時的にデータをバッファしなくてもよいため、冗長な待機時間を省くことができる。したがって、このトランスコーダは、トランスコードによる遅延時間を短縮することができる。
【0049】
次に、第3の実施形態によるトランスコーダについて説明する。このトランスコーダは、第1の実施形態によるトランスコーダの機能と第2の実施形態によるトランスコーダの機能を組み合わせることにより、さらなる遅延時間の短縮を図るものである。
【0050】
図7は、第3の実施形態によるトランスコーダ3の概略構成図である。図7に示すように、トランスコーダ3は、デマルチプレクサ11と、デコーダ12と、エンコード開始位置決定部13と、ピクチャ廃棄部14と、エンコーダ15と、バッファ16と、マルチプレクサ17と、ピクチャタイミング検出部18とを有する。なお、図7に示されるトランスコーダ3の各構成要素には、図1に示されたトランスコーダ1及び図4に示されたトランスコーダ2の対応する構成要素と同一の参照番号を付した。
【0051】
第3の実施形態によるトランスコーダ3は、第1の実施形態によるトランスコーダ1の各部と、第2の実施形態によるトランスコーダ2の各部を併せ持つ。そしてエンコーダ3の各部は、トランスコーダ1の対応する各部及びトランスコーダ2の対応する各部と同様の機能を有する。
ただし、デマルチプレクサ11は、元の動画像データに含まれる最初のIピクチャだけでなく、最初のGOPの各ピクチャとともに、それぞれのピクチャが含まれるパケットを示す識別情報をデコーダ12に伝送する。ピクチャタイミング検出部18は、エンコード開始位置決定部13により決定された、再符号化される符号化先頭ピクチャを基準ピクチャとする。そしてピクチャタイミング検出部18は、その基準ピクチャに対応する基準ピクチャ識別情報及び送信タイミングを決定する。またピクチャタイミング検出部18は、送信タイミングの決定に用いる遅延設定量を、第2の実施形態によるトランスコーダ2が使用する遅延設定量よりも短く設定できる。これは、第1の実施形態について説明したように、最初の所定枚数のピクチャが廃棄されることで、トランスコード処理による遅延時間が短縮されるためである。
そのため、第3の実施形態によるトランスコーダは、第1の実施形態及び第2の実施形態によるトランスコーダよりも、トランスコード処理による遅延時間を短縮することができる。
なお、トランスコーダ3においても、ピクチャ廃棄部14が、元の動画像データに含まれる最初のGOPのIピクチャを含む、予め定められた所定枚数のピクチャを廃棄する場合、エンコード開始位置決定部13は省略されてもよい。この場合、ピクチャタイミング検出部18は、その廃棄される所定枚数のピクチャの次のピクチャを基準ピクチャとする。
【0052】
なお、上記の各実施形態において、第1の符号化方式は、MPEG-2に限られず、他の符号化方式であってもよい。例えば、第1の符号化方式は、Digital Video(DV)方式であってもよい。また、第2の符号化方式も、H.264 MPEG-4 AVCに限られず、他の符号化方式であってもよい。例えば、第2の符号化方式は、MPEG-4であってもよい。
また、第1の符号化方式と第2の符号化方式は同一であってもよい。ただしこの場合には、トランスコーダが有するエンコーダは、第1の符号化方式により符号化された元の動画像データのGOP構成よりも圧縮効率の高いGOP構成の動画像データに変換することが好ましい。例えば、元の動画像データのGOP構成が、Bピクチャを含まない、いわゆるIPPP構成である場合、エンコーダは、動画像データのGOP構成を、Bピクチャを含む、例えば、IBBP構成に変換する。
【0053】
図8は、上記の各実施形態の何れかのトランスコードを含む、映像再送信システムの概略構成図である。図8に示すように、映像再送信システム100は、アンテナ101と、チューナー装置102と、動画像伝送装置103と、TS−IP変換装置104とを有する。
映像再送信システム100は、アンテナ101を介して、放送電波により搬送された映像信号を受信する。そしてその映像信号は、アンテナ101と接続されたチューナー装置102に伝送される。
チューナー装置102は、受け取った映像信号をアナログ−デジタル変換する。そしてチューナー装置102は、デジタル化された映像信号を放送電波の変調方式に応じた復調方式(例えば、直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing、OFDM)復調方式)にて復調する。チューナー装置102は、その復調された映像信号に対して、前方誤り訂正などの誤り訂正処理を実行する。そしてチューナー装置102は、復調され、かつ誤り訂正処理が施されることにより得られたMPEG-2 TSパケットなどのようにパケット化された映像信号を動画像伝送装置103に出力する。
【0054】
動画像伝送装置103は、チューナー装置102から受け取った、パケット化された映像信号をトランスコードする。
図9は、動画像伝送装置103の概略構成図である。図9に示すように、動画像伝送装置103は、受信部41と、リアルタイムトランスコーダ42と、暗号化部43と、送信部44とを有する。
【0055】
受信部41は、チューナー装置102と動画像伝送装置103とを接続するための通信インターフェースを有する。そして受信部41は、チューナー装置102からパケット化された映像信号を受信し、その映像信号をリアルタイムトランスコーダ42に渡す。
【0056】
リアルタイムトランスコーダ42は、受信部41を介して受け取った映像信号に含まれる、第1の符号化方式による符号化された動画像データを第2の符号化方式に従った符号化動画像データに変換する。そしてリアルタイムトランスコーダ42は、第2の符号化方式で符号化された動画像データを、再度MPEG-2 TSパケットなど、動画像伝送用の規格に従ったパケットに含める。そのために、リアルタイムトランスコーダ42は、上記の各実施形態のトランスコーダの何れかとすることができる。
【0057】
暗号化部43は、リアルタイムトランスコーダ42から受け取った映像信号を暗号化する。暗号化部43は、映像信号を暗号化するために、例えば、Advanced Encryption Standard(AES)、Camelliaなどの共通鍵暗号方式、あるいはRSA暗号などの公開鍵暗号方式を用いることができる。
【0058】
送信部44は、TS−IP変換装置104と動画像伝送装置103を接続する通信インターフェースを有する。そして送信部44は、暗号化部43により暗号化された映像信号をTS−IP変換装置104へ出力する。
【0059】
TS−IP変換装置104は、動画像伝送装置103から受け取った映像信号を、インターネットプロトコル(Internet Protocol、IP)に従ったIPパケットに分割する。そしてTS−IP変換装置104は、そのIPパケットを、インターネットプロトコルに従ってデータ通信するコンテンツ配信網(Contents Delivery Network、CDN)105を介して、各映像再生機106へ送信する。
なお、動画像伝送装置103とTS−IP変換装置104の接続順序は入れ替わってもよい。この場合、動画像伝送装置103は、IPパケット化された映像信号を受信することになるので、リアルタイムトランスコーダ42のデマルチプレクサは、そのIPパケットから動画像伝送用の規格に従ってパケット化された映像信号を取り出す。また送信部44は、暗号化部43から出力された、動画像伝送用の規格に従ってパケット化された映像信号をIPパケット化して出力する。
【0060】
この映像再送信システムは、上記の実施形態の何れかのトランスコーダを用いて映像信号に含まれる動画像データをトランスコードしているため、動画像伝送装置におけるトランスコードにより発生する遅延時間を低減できる。そのため、この映像再送信システムは、放送電波により直接される映像信号に対する、再送信された映像信号の遅延を抑制することができる。
【0061】
ここに挙げられた全ての例及び特定の用語は、読者が、本発明及び当該技術の促進に対する本発明者により寄与された概念を理解することを助ける、教示的な目的において意図されたものであり、本発明の優位性及び劣等性を示すことに関する、本明細書の如何なる例の構成、そのような特定の挙げられた例及び条件に限定しないように解釈されるべきものである。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【0062】
以上説明した実施形態及びその変形例に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
第1の符号化方式に従って符号化された第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号するデコーダと、
前記復号された各ピクチャのうち、前記第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄するピクチャ廃棄部と、
前記廃棄部により廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となるピクチャとして、第2の符号化方式に従って当該残りのピクチャを再符号化するエンコーダと、
を有するトランスコーダ。
(付記2)
前記先頭ピクチャの位置を変更しつつ、それぞれの先頭ピクチャの位置に対する、当該先頭ピクチャが前記デコーダへ伝送開始されてから、前記エンコーダが当該符号化された先頭ピクチャを出力終了するまでの所要時間である遅延時間を推定し、該推定された遅延時間が最小となる先頭ピクチャの位置と前記第1のピクチャの位置との差に対応するピクチャの枚数を、前記廃棄するピクチャの枚数として算出し、該枚数を前記ピクチャ廃棄部に通知するエンコード開始位置決定部をさらに有する、付記1に記載のトランスコーダ。
(付記3)
前記エンコード開始位置決定部は、前記第1の符号化方式に応じた復号順序に従って前記第1のピクチャが前記デコーダへ伝送開始されてから前記先頭ピクチャが前記デコーダへ伝送開始されるまでの復号開始待機期間と、前記第1のピクチャが前記デコーダへ伝送開始されてから前記エンコーダが再符号化された前記先頭ピクチャを出力終了するまでの再符号化処理期間とを推定し、該再符号化処理期間と前記復号開始待機期間の差を前記遅延時間とする、付記2に記載のトランスコーダ。
(付記4)
前記エンコード開始位置決定部は、前記第1の符号化方式により符号化された前記第1のピクチャから前記先頭ピクチャまでの各ピクチャのデータ量及びピクチャの符号化方法の種別と、ピクチャのデータ伝送、前記デコーダによる復号処理に要する時間及び前記エンコーダによる符号化処理に要する時間の関係を示すテーブルを参照することにより、前記復号開始待機期間及び前記再符号化処理期間を算出する、付記3に記載のトランスコーダ。
(付記5)
映像信号をパケット単位で受信し、該映像信号から第1の符号化方式により符号化された動画像データを抽出し、該動画像データに含まれる各ピクチャ及び該各ピクチャのうちの他のピクチャの符号化の基準となる基準ピクチャに対応する第1の識別情報を出力するデマルチプレクサと、
前記基準ピクチャが含まれる第1のパケットを受信した時刻に所定の遅延時間を加算することにより、前記基準ピクチャが送信されるタイミングを表す送信タイミングを決定し、かつ前記第1のパケットから前記基準ピクチャを識別する第2の識別情報を抽出するピクチャタイミング決定部と、
第1の符号化方式に応じて前記符号化された各ピクチャを復号し、該復号されたピクチャのそれぞれを出力し、かつ復号された前記基準ピクチャに関連付けて前記デマルチプレクサから受け取った前記第1の識別情報を出力するデコーダと、
前記復号された各ピクチャを、第2の符号化方式に従って再符号化し、該再符号化されたピクチャのそれぞれを出力し、かつ再符号化された前記基準ピクチャに関連付けて前記デコーダから受け取った前記第1の識別情報を出力するエンコーダと、
前記再符号化された各ピクチャをパケット化するとともに、前記ピクチャタイミング決定部から受け取った前記第2の識別情報と一致する前記エンコーダから受け取った前記第1の識別情報に関連付けられた基準ピクチャを含むパケットを前記送信時刻に送信開始するマルチプレクサと、
を有するトランスコーダ。
(付記6)
映像信号をパケット単位で受信し、該映像信号から第1の符号化方式により符号化された動画像データを抽出し、該動画像データに含まれる各ピクチャ及び各ピクチャを識別する第1の識別情報をそれぞれ出力するデマルチプレクサと、
第1の符号化方式に従って符号化された第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号し、該復号されたピクチャのそれぞれを出力し、かつ復号された前記ピクチャのそれぞれに対応する前記デマルチプレクサから受け取った前記第1の識別情報を出力するデコーダと、
前記復号された各ピクチャのうち、前記第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄するピクチャ廃棄部と、
前記廃棄部により廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となる基準ピクチャとして、第2の符号化方式に従って当該残りのピクチャを再符号化し、該再符号化されたピクチャのそれぞれを出力し、かつ再符号化された前記ピクチャのそれぞれに対応する前記デコーダから受け取った前記第1の識別情報を出力するするエンコーダと、
前記基準ピクチャが含まれる第1のパケットを受信した時刻に所定の遅延時間を加算することにより、前記基準ピクチャが送信されるタイミングを表す送信タイミングを決定し、かつ前記第1のパケットから前記基準ピクチャを識別する第2の識別情報を抽出するピクチャタイミング決定部と、
前記エンコーダから受け取った前記再符号化された各ピクチャをパケット化するとともに、前記ピクチャタイミング決定部から受け取った前記第2の識別情報と前記第1の識別情報が一致する場合、当該第1の識別情報に対応する基準ピクチャを含むパケットを前記送信時刻に送信開始するマルチプレクサと、
を有するトランスコーダ。
(付記7)
映像信号をパケット単位で受信する受信部と、
前記映像信号から第1の符号化方式により符号化された第1の動画像データと、他のデータを分離するマルチプレクサと、
前記第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号するデコーダと、
前記復号された各ピクチャのうち、前記第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄するピクチャ廃棄部と、
前記廃棄部により廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となるピクチャとして、第2の符号化方式に従って当該残りのピクチャを再符号化するエンコーダと、
前記他のデータと前記第2の符号化方式に従って再符号化された各ピクチャを含む動画像データを多重化することによりパケットを作成するマルチプレクサと、
前記パケットを暗号化する暗号化部と、
暗号化された前記パケットを出力する送信部と、
を有する動画像伝送装置。
(付記8)
第1の符号化方式に従って符号化された第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号し、
前記復号された各ピクチャのうち、前記第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄し、
前記復号された各ピクチャのうち、廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となるピクチャとして、第2の符号化方式に従って当該残りのピクチャを再符号化する、
ことを含むトランスコーディング方法。
(付記9)
第1の符号化方式に従って符号化された第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号し、
前記復号された各ピクチャのうち、前記第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄し、
前記復号された各ピクチャのうち、廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となるピクチャとして、第2の符号化方式に従って当該残りのピクチャを再符号化する、
ことをコンピュータに実行させるトランスコーディング用コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0063】
1、2、3 トランスコーダ
11 デマルチプレクサ
12 デコーダ
13 エンコード開始位置決定部
14 ピクチャ廃棄部
15 エンコーダ
16 バッファ
17 マルチプレクサ
18 ピクチャタイミング検出部
100 映像再送信システム
101 アンテナ
102 チューナー装置
103 動画像伝送装置
104 TS−IP変換装置
41 受信部
42 リアルタイムトランスコーダ
43 暗号化部
44 送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の符号化方式に従って符号化された第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号するデコーダと、
前記復号された各ピクチャのうち、前記第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄するピクチャ廃棄部と、
前記廃棄部により廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となるピクチャとして、第2の符号化方式に従って当該残りのピクチャを再符号化するエンコーダと、
を有するトランスコーダ。
【請求項2】
前記先頭ピクチャの位置を変更しつつ、それぞれの先頭ピクチャの位置に対する、当該先頭ピクチャが前記デコーダへ伝送開始されてから、前記エンコーダが該符号化された先頭ピクチャを出力終了するまでの所要時間である遅延時間を推定し、当該推定された遅延時間が最小となる先頭ピクチャの位置と前記第1のピクチャの位置との差に対応するピクチャの枚数を、前記廃棄するピクチャの枚数として算出し、該枚数を前記ピクチャ廃棄部に通知するエンコード開始位置決定部をさらに有する、請求項1に記載のトランスコーダ。
【請求項3】
前記エンコード開始位置決定部は、前記第1の符号化方式に応じた復号順序に従って前記第1のピクチャが前記デコーダへ伝送開始されてから前記先頭ピクチャが前記デコーダへ伝送開始されるまでの復号開始待機期間と、前記第1のピクチャが前記デコーダへ伝送開始されてから前記エンコーダが再符号化された前記先頭ピクチャを出力終了するまでの再符号化処理期間とを推定し、該再符号化処理期間と前記復号開始待機期間の差を前記遅延時間とする、請求項2に記載のトランスコーダ。
【請求項4】
前記エンコード開始位置決定部は、前記第1の符号化方式により符号化された前記第1のピクチャから前記先頭ピクチャまでの各ピクチャのデータ量及びピクチャの符号化方法の種別と、ピクチャのデータ伝送、前記デコーダによる復号処理に要する時間及び前記エンコーダによる符号化処理に要する時間の関係を示すテーブルを参照することにより、前記復号開始待機期間及び前記再符号化処理期間を算出する、請求項3に記載のトランスコーダ。
【請求項5】
映像信号をパケット単位で受信する受信部と、
前記映像信号から第1の符号化方式により符号化された第1の動画像データと、他のデータを分離するマルチプレクサと、
前記第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号するデコーダと、
前記復号された各ピクチャのうち、前記第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄するピクチャ廃棄部と、
前記廃棄部により廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となるピクチャとして、第2の符号化方式に従って当該残りのピクチャを再符号化するエンコーダと、
前記他のデータと前記第2の符号化方式に従って再符号化された各ピクチャを含む動画像データを多重化することによりパケットを作成するマルチプレクサと、
前記パケットを暗号化する暗号化部と、
暗号化された前記パケットを出力する送信部と、
を有する動画像伝送装置。
【請求項6】
第1の符号化方式に従って符号化された第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号し、
前記復号された各ピクチャのうち、前記第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄し、
前記復号された各ピクチャのうち、廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となるピクチャとして、第2の符号化方式に従って当該残りのピクチャを再符号化する、
ことを含むトランスコーディング方法。
【請求項7】
第1の符号化方式に従って符号化された第1の動画像データに含まれる各ピクチャを復号し、
前記復号された各ピクチャのうち、前記第1の動画像データにおいて他のピクチャを符号化するための基準となった第1のピクチャを含む所定枚数のピクチャを廃棄し、
前記復号された各ピクチャのうち、廃棄されなかった残りのピクチャのうちの先頭のピクチャを、他のピクチャの符号化の基準となるピクチャとして、第2の符号化方式に従って当該残りのピクチャを再符号化する、
ことをコンピュータに実行させるトランスコーディング用コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−239546(P2010−239546A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87270(P2009−87270)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】