説明

トランスフェラーゼのための方法およびキット

試料のトランスフェラーゼ活性を検出する方法は、基質、およびリン酸基ドナーとリン酸基アクセプタの少なくとも1つと試料との接触含む。基質は、レポーター化合物およびアミノ酸を含む。第1の速度で非リン酸化基質を切断し、第2の速度でリン酸化基質を切断するペプチダーゼが添加される。レポーター化合物のアウトプットは検出される。好ましい実施形態では、検出されるトランスフェラーゼ活性はキナーゼ活性である。別の好ましい実施形態では、検出されるトランスフェラーゼ活性はホスファターゼ活性である。トランスフェラーゼ反応における変化のスクリーニングの方法も提供される。本発明の方法の少なくとも1つを実施するためのキットおよびペプチド基質も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は酵素アッセイに関する。より具体的には、本発明は、トランスフェラーゼ活性、例えば、キナーゼ活性およびホスファターゼ活性などの検出に関する。さらに、本発明は、有望な阻害剤、活性剤、およびトランスフェラーゼ、例えば、キナーゼおよびホスファターゼなどの他の修飾因子をスクリーニングするためのプロセスに関する。さらに、本発明は、トランスフェラーゼ、例えば、キナーゼおよびホスファターゼなどの酵素活性を検出し、かつトランスフェラーゼの阻害剤および活性剤を検出するために使用されるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
酵素は、それらが触媒する反応の一般的な種類によってグループに分類されている。トランスフェラーゼは、1つの基質から別の基質への基の転移を触媒し、キナーゼおよびホスファターゼを含む。タンパク質キナーゼは、アデノシン三リン酸(ATP)またはグアノシン三リン酸(GTP)などのドナーからペプチドまたはタンパク質などのアクセプタへホスホ部分を転移し、それぞれ、リン酸化ペプチドまたはタンパク質、およびアデノシン二リン酸(ADP)またはグアノシン二リン酸(GDP)をもたらす。タンパク質ホスファターゼは、リン酸基をホスホペプチドまたはリンタンパク質ドナーから水などのアクセプタへ転移する酵素である。
【0003】
真核細胞ゲノムの約2ないし5パーセントは、タンパク質キナーゼおよびタンパク質ホスファターゼをコード化する。約870種類のタンパク質キナーゼがヒトゲノムにおいて同定されているが、何千もの別個の酵素が存在するとみられる。また、これらの酵素のタンパク質基質は、すべての細胞タンパク質の3分の1に達しうる。これらの酵素およびそのターゲットの理解は、細胞制御および細胞病理学の理解に重要である。
【0004】
タンパク質キナーゼはしばしば、リン酸化されているアミノ酸残基に基づき2つの主要なグループに分類される。第1のグループはセリン/スレオニンキナーゼであり、これはサイクリックAMP依存性タンパク質キナーゼ(PKA)、サイクリックGMP依存性タンパク質キナーゼ(PKG)、カルシウムおよびリン脂質依存性タンパク質キナーゼ(PKC)、カルシウムおよびカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ(CaMK)、カゼインキナーゼ、細胞サイクルタンパク質キナーゼ(cdcまたはcdk)、タンパク質キナーゼB(Akt)、などを含む。これらのキナーゼは通常、細胞質であり、またはおそらくタンパク質を固定することによって細胞の顆粒画分と関係がある。タンパク質セリン/スレオニンキナーゼは、細胞質内キナーゼの最も一般的な種類であり、細胞におけるリン酸化反応イベントの大部分に関与すると考えられている。また、セリン/スレオニン型の一部の受容体キナーゼ、例えば、形質転換成長因子ベータ(TGF−β)などがある。全体的に、セリン/スレオニンキナーゼは、細胞タンパク質キナーゼの70%超に相当する。
【0005】
キナーゼの第2のグループは、チロシンキナーゼと呼ばれ、チロシン残基をリン酸化する。全体的に、キナーゼの10%超がチロシンキナーゼである。チロシンキナーゼは少ないが、細胞制御において同じく重要な役割を果たす。研究により、多くのチロシンキナーゼが膜貫通タンパク質であり、その受容体ドメインは細胞の外側に位置し、そのキナーゼドメインは細胞の内側に配置されていることが示されている。50超の受容体チロシンキナーゼが知られている。これらのキナーゼは、いくつかの分子の受容体、例えば成長因子およびホルモン、サイトカイン、および神経伝達物質などを含む。これらの例としては、表皮成長因子受容体(EGFR)、インスリン受容体(IR)、および血小板由来成長因子受容体(PDGFR)が挙げられる。細胞質内チロシンキナーゼ、例えば、src、src-Nl、fyn、lyk、lynA、lckなどもある。また、他のキナーゼは、ヒスチジンまたはアスパラギン酸残基を含有するタンパク質またはペプチドをリン酸化する。
【0006】
タンパク質ホスファターゼは、かかる修飾を含有するタンパク質またはペプチドからリン酸部分の除去を触媒する酵素である。キナーゼと同様に、各クラスのホスファターゼは、その基質特異性および活性化のための他の分子への依存性によって区別される。3つの主要なクラスのホスファターゼが同定されている。第1のクラスは、1型タンパク質ホスファターゼ(タンパク質ホスファターゼ−1またはPP1)および2型タンパク質ホスファターゼ(PP2A、PP2B、およびPP2C)を含む。第2のクラスは、チロシンホスファターゼ、例えば、PTP-1B、およびYOP-51などを含む。このクラスにおける一部のホスファターゼは可溶性であるが、その他は大きな分子、例えば、受容体CD45などの一部を含む。第3の主要なクラスのホスファターゼは、ホスホセリン/ホスホスレオニンおよびホスホチロシンの両方からリン酸基質を除去する二重特異性タンパク質ホスファターゼを含む。
【0007】
タンパク質キナーゼおよびタンパク質ホスファターゼは、多くの細胞機能においてきわめて重要な役割を果たし、それらは細胞代謝、シグナル伝達、転写制御、細胞運動性、細胞分裂、細胞シグナル伝達プロセス、細胞増殖、細胞分化、アポトーシス、および分泌を含むが、これらに限定されない。これらのプロセスは、酵素、タンパク質基質、転写因子、ホルモンまたは成長因子受容体、および他の細胞タンパク質のリン酸化反応または脱リン酸化反応によって介される。
【0008】
また、タンパク質キナーゼおよびタンパク質ホスファターゼは、タンパク質のリン酸化反応状態を変化させる自然発生の毒素および病原体に対する反応の仲介に関与する。また、タンパク質キナーゼは、多くの疫学的に関連した癌遺伝子および腫瘍抑制遺伝子に関係がある。
【0009】
とりわけ、キナーゼが関係している400超のヒト疾患がある。例としては、神経変性疾患、例えば、筋萎縮性側索硬化症およびアルツハイマー病などが挙げられる。筋緊張性ジストロフィー症においては、障害の一形態における遺伝的欠陥が、第19染色体上のタンパク質キナーゼ遺伝子の3’非翻訳領域における増幅トリヌクレオチドリピートによって特徴づけられる。これらの修飾により、障害の異常な特徴の多くがいつか解明されるとみられる。
【0010】
人体病理学におけるキナーゼおよびホスファターゼのこの役割のため、キナーゼおよびホスファターゼの調節剤は可能性のある薬物ターゲットである。目下、キナーゼおよびホスファターゼの多くの阻害剤が種々の疾患の治療用に利用可能であるが、その他はかかる使用について試験されている。かかる阻害剤の1つがGleevecTM(メシル酸イマチニブ)(ノバルティス(Novartis)、スイス、バーゼル)であり、これはBcr-Ab1チロシンキナーゼのタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤である。このチロシンキナーゼの異常な構成性発現は、慢性骨髄性白血病(CML)における「フィラデルフィア染色体」異常によって生成される。GleevecTMは、Bcr-Ab1陽性細胞系およびフィラデルフィア染色体陽性CML患者からの新鮮な白血病細胞における増殖を阻害し、アポトーシスを誘発する。
【0011】
ファスジル(エリル(Eril)(登録商標)注S、旭化成株式会社)は、Rhoキナーゼの有力な阻害剤である。エリル(登録商標)は、日本では脳血管攣縮(cerebral vaspasm)の治療用に認可されており、経口製剤が現在、アンギナの治療用に臨床試験されている。
【0012】
臨床的に適切なホスファターゼの代表的な阻害剤がサイクロスポリンA(CSA)であり、これは移植臓器の進行中の急性拒絶反応を予防し、治療するために使用される。CSAは、ヘルパーT細胞によるインターロイキンIL-2の産生を阻害し、それによってT細胞の活性化および増殖を阻止する(かつ免疫応答の増幅を阻害する)。CSAの作用機序の現行モデルは、これがカルシニューリン(PP2B)と呼ばれるホスファターゼを阻止することを示す。
【0013】
さらに、ホスホチロシンホスファターゼ(PTP-1B)は目下、II型糖尿病の治療のターゲットとして検討中である。
【0014】
これらの例は、臨床的に関連した状況においてキナーゼおよびホスファターゼを調節する重要性を示す。
【0015】
キナーゼおよびホスファターゼ活性を測定し、有望なキナーゼおよびホスファターゼ阻害剤および活性剤を検出するために使用される現行の種類のアッセイとしては、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイ、蛍光偏光(FP)アッセイ、および放射活性に基づくシンチレーション近接アッセイ(SPA)などのアッセイが挙げられる。
【0016】
キナーゼ活性を検出するために使用されるFRETアッセイでは、2つの結合蛍光分子を有するタンパク質基質を利用する。2つの分子は近接しており、固定距離によって分離されている。1つの分子(ドナー)における励起電子のエネルギーは、共鳴によって隣接分子(アクセプタ)に移動する。高エネルギードナーフロウロフォアが、エネルギーを直接低エネルギーアクセプタ分子へ転移させる能力は、アクセプタ分子の感作蛍光を誘発し、同時にドナー蛍光を消す。この場合、ドナーの蛍光は、アクセプタに近接することによって「消され」、ドナーのエネルギーは非発光性の方法でアクセプタに転移される。エネルギー転移の効率は、フォルスター(Forster)方程式に従いドナー発色団とアクセプタ発色団との間の距離に依存する。ほとんどの場合、FRETは100オングストローム超の距離で観察されず、したがってFRETの存在は近接の優れた指標である。
【0017】
FRETが有用であるために、アクセプタ分子の蛍光はドナーの蛍光と大幅に異なる必要がある。有用なFRETに基づくタンパク質基質は、2つのフルオロフォア間のペプチドリンカーを切断する能力があるエンドペプチダーゼに対する特異性を維持するペプチドリンカーによって2つの蛍光分子の分離を含みうる。ペプチドがリン酸化している場合は、酵素はタンパク質を切断しえず、または低下した速度でこれを切断することができ、消光が生じるように蛍光分子を近接して維持する。他方、タンパク質がリン酸化していない場合は、エンドペプチダーゼはタンパク質基質を切断し、消光が軽減されるように2つの蛍光分子を放出し、2つの蛍光分子は独立して蛍光を発する。FRETアッセイは、これらの要件に合致するように注意深く人工的に作り出されなければならないペプチド基質を必要とする。すなわち、これらのペプチド基質はエンドペプチダーゼのために必要とされる酵素認識部位を含有する必要があり、2つのフルオロフォア間の距離は、FRETが生じることを可能にする範囲内でなければならず、蛍光分子はドナー蛍光が大幅に消えるような方法で対をなし、ドナーからのバックグラウンド蛍光を最小限にしなければならない。さらに、出発原料(「消光」基質))の蛍光は、生成物(「放出」非消光生成物)と大幅に異なる必要がある。これらの要件は、FRETに基づくアッセイを扱いにくく、かつ費用のかかるものにする。
【0018】
FPアッセイは、高アフィニティ結合試薬、例えば、抗体、キレート剤、または同様のものなどの、蛍光標識分子への結合に基づく。例えば、リン酸化蛍光標識ペプチドには結合するが非リン酸化蛍光標識ペプチドには結合しない抗体は、キナーゼアッセイ用に用いることができる。蛍光標識が平面偏光で励起されている場合、これは蛍光標識が励起状態の全体を通じて不動のままである限り同じ偏光面において発光する(励起状態の持続時間はフルオロフォアによって変動し、フルオロセインで4ナノ秒である)。しかし、励起蛍光標識が回転し、または励起状態時に偏光面から転がり出る場合は、光は初期励起状態のものと異なる面で放出される。偏光がフルオロフォアを励起させるために使用される場合は、発光強度は偏光面(励起面)に対して平行な面および偏光面に対して垂直な面の両方においてモニタリングされうる。発光強度が平行面から垂直面へ移動する程度は、蛍光標識分子の移動性と関係がある。蛍光標識分子が大きい場合、例えば、それらが結合試薬に結合している場合などは、蛍光標識分子は励起状態の間隔の間にほとんど移動せず、放出光は励起面に対して高度に偏光したままである。蛍光標識分子が小さい場合、例えば、結合試薬が蛍光標識分子に結合されていない場合などは、蛍光標識分子は迅速に回転または転がり、結果として生じる放出光は励起面に対して偏光解消する。したがって、FPアッセイは、高アフィニティ結合試薬、例えば、蛍光標識分子に対して高い特異性で結合する能力がある抗体を必要とする。ペプチドなど特異的蛍光標識分子と結合する抗体の時間と費用のかかる最適化が、抗体が使用される場合に必要である。また、FPアッセイは、偏光に干渉するリン酸化タンパク質および他の反応成分、例えば、脂質および界面活性剤の可能性がある。
【0019】
放射性標識を使用するキナーゼアッセイは、SPAを含む。SPAでは、修飾リガンド特異的またはリガンド捕捉分子がフルオロミクロスフェアに結合しているが、これは放射性標識分子によって励起されるとエネルギーを放出する物質で含浸された固相支持粒子またはビーズである。修飾リガンド、例えば、非リン酸化ペプチドと混合した放射性標識化ホスホペプチドなどに添加されると、ホスホペプチドのみがフルオロミクロスフェア上で捕捉され、放射エネルギーを放射させるのに十分近くに放射性標識化ペプチドをもたらし、フルオロミクロスフェアを活性化し、光エネルギーを放出する。フルオロミクロスフェアの濃度が最適化されている場合は、ターゲットに結合された放射性標識化リガンドからのシグナルのみが検出され、結合および遊離リガンドの分離の必要が除去される。放出される光エネルギーのレベルは、液体シンチレーションカウンタで測定されうるとともに、リガンドがターゲットに結合されている程度を示す。しかし、SPAは放射性標識化を必要とするが、これは高い廃棄コストおよび健康を危険にさらす可能性を有する。また、SPAは、重力によって安定させ、または遠心分離されるフルオロミクロスフェアを必要とし、追加のステップおよび時間がアッセイに加わる。
【0020】
きわめて多くの細胞機能および疾患に関与するリン酸化反応および脱リン酸化反応の事象により、キナーゼおよびホスファターゼ活性を同定することは大いに重要である。したがって、トランスフェラーゼ活性、例えば、タンパク質キナーゼ活性およびタンパク質ホスファターゼ活性などを検出するために、高価な、またはきわめて特殊な大量の出発原料を必要とせず、かつ完了するために大量の時間を必要としない、代わりの酵素アッセイが必要である。また、キナーゼおよびホスファターゼの活性剤および阻害剤を同定するための代わりのアッセイが必要である。また、かかるアッセイを実施するためのキットを提供することも望ましいであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
発明の概要
本開示の末尾に提示された請求の範囲によって規定されている本発明は、上記の問題の少なくとも一部を解決することを目的としている。例えば、本発明の1つの態様では、試料のトランスフェラーゼ活性を検出するための方法が提供される。この方法の好ましい実施形態では、試料は、基質およびリン酸基ドナーとリン酸基アクセプタの少なくとも1つと接触される。基質はレポーター化合物およびアミノ酸を含む。非リン酸化ペプチド基質を第1の速度で切断し、リン酸化ペプチド基質を第2の速度で切断するペプチダーゼが添加される。2つの速度の差は、トランスフェラーゼ活性の尺度である。次いで、レポーター化合物のアウトプットが検出される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
好ましい実施形態では、トランスフェラーゼ活性を検出する方法はキナーゼ活性を検出するために使用される。別の好ましい実施形態では、当該方法はホスファターゼ活性を検出するために使用される。
【0023】
トランスフェラーゼ反応の変化を検出するための方法も提供される。方法の好ましい実施形態では、トランスフェラーゼが活性である条件下にレポーター化合物およびアミノ酸を含む基質に被験物質が接触される。基質は、非リン酸化ペプチド基質を第1の速度で切断し、リン酸化ペプチド基質を第2の速度で切断するペプチダーゼで切断される。次いで、レポーター化合物のアウトプットが検出される。
【0024】
好ましい実施形態では、トランスフェラーゼ活性の変化を検出する方法は、キナーゼ活性の変化を検出するために使用される。別の好ましい実施形態では、方法はホスファターゼ活性の変化を検出するために使用される。
【0025】
試料のトランスフェラーゼ活性を検出する方法も提供される。当該方法の好ましい実施形態では、それに共役されたレポーター化合物を有する基質が提供される。多数の基質が試料を含有する溶液に添加される。試料は、トランスフェラーゼ活性が起こるのに十分な時間にわたり試料が活性である条件下に基質とインキュベートされる。ペプチダーゼが試料を含有する溶液に添加される。次いで、レポーター化合物のアウトプットが検出される。
【0026】
トランスフェラーゼのためのペプチダーゼ基質も提供される。好ましい実施形態では、ペプチド基質は、レポーター化合物およびレポーター化合物の第1の側面上でレポーター化合物に結合された第1のトランスフェラーゼ基質を含む。
【0027】
上記の方法の実施において使用されうるキットも提供される。好ましい実施形態では、キットは、レポーター化合物、リン酸基ドナーとリン酸基アクセプタの少なくとも1つ、およびトランスフェラーゼの酵素活性を維持するバッファーを含む基質を含む。さらに、非リン酸化ペプチド基質を第1の速度で切断し、リン酸化ペプチド基質を第2の速度で切断するペプチダーゼが含まれる。
【0028】
本明細書中で述べられる方法は、均質、迅速、感度がよく、簡単、かつ非放射性である。これらの方法は便利であり、任意の計装プラットホームで使用されうる。必要な試薬は、比較的容易に設計され、容易に合成されうる。これらの方法は、迅速な開発時間と低コストのアッセイをもたらす。
【0029】
本発明の好ましい代表的な実施形態は、添付の図面において示されているが、同様の参照数字は全体を通じて同様の部分を表す。
【0030】
本発明の実施形態を詳しく説明する前に、本発明はその適用において以下の説明に記載され、または図面に示された構成の詳細および成分の配置に限定されないことを理解すべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、または種々の方法で実施され、達成される。また、本明細書で使用される専門語および術語は、説明の目的であり、限定とみなすべきではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
定義:
本発明の目的のために、以下の定義が適用される。すなわち、
アミノ酸:標準のポリペプチド命名法、J. Biol. Chem., 243:3557-59、(1969)に従い、アミノ酸残基の略語は以下の対応表に示されている通りである。
【0032】
【表1】

【0033】
本明細書で使用される、「アミノルシフェリン」なる用語は、NH2基を含むように修飾されているルシフェリンを指す。
【0034】
本明細書で使用される、「バックグラウンド蛍光」なる用語は、ペプチド基質のアミノ酸に結合されている場合のレポーター化合物によってアウトプットされた蛍光を指す。
【0035】
本明細書で使用される、「生物発光」なる用語は、ルシフェラーゼを介した酸化反応の結果として特定の生物において産生される光を指す。ルシフェラーゼ遺伝子、例えば、発光甲虫(luminous beetle)からの遺伝子、および、特にフォチナス・ピラリス(Photinus pyralis)(北米の一般的なホタル)からのルシフェラーゼは目下、最も一般的に使用されている発光性レポーター遺伝子である。
【0036】
本明細書で使用される、「脱リン酸化反応」なる用語は、リン酸基の除去を指す。
【0037】
本明細書で使用される、「エクソペプチダーゼ」なる用語は、ペプチド結合を切断することによってペプチドまたはタンパク質の末端アミノ酸を除去する加水分解酵素を指す。
【0038】
本明細書で使用される、「ルシフェラーゼ」なる用語は、特記されていない限り、自然発生の、または人工的に作り出された鞘翅類ルシフェラーゼを指す。ルシフェラーゼは、自然発生の場合は、甲虫自体、具体的にはその光器官から当業者によって容易に得ることができる。ルシフェラーゼが、自然発生し、または人工的に作り出されているものであり、これが自然発生のルシフェラーゼのルシフェラーゼ−ルシフェリン反応において活性を保持する場合は、細菌、酵母、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、または同種であって、形質転換され、ルシフェラーゼをコード化するcDNAを発現するものの培養から容易に得られ、またはこれをコード化する核酸からルシフェラーゼを製造するためのインビトロ細胞フリー系から容易に得られる。
【0039】
本明細書で使用される、「ルシフェリン」なる用語は、鞘翅類ルシフェラーゼ酵素の基質である。例えば、ホタルルシフェリンは、ポリへテロサイクリック有機酸、D−(−)−2−(6’−ヒドロキシ−2’−ベンゾチアゾリル)−?2−チアゾリン−4−カルボン酸である。
【0040】
本明細書で使用される、「調節剤(modulator)」なる用語は、トランスフェラーゼ活性のアッセイを用いて同定される作用物質を指す。試料は候補作用物質で処理される。候補作用物質で処理された試料と候補作用物質で処理されていない試料との間のトランスフェラーゼ活性に変化がある場合は、この変化が調節剤の同定を示す。活性の変化は増大または減少しうる。
【0041】
本明細書で使用される、「ペプチド基質」なる用語は、レポーター化合物に結合されているペプチドを指す。好ましくは、ペプチド基質は、レポーター化合物の少なくとも1つの側に結合された少なくとも1つのアミノ酸を含む。
【0042】
本明細書で使用される、「ペプチド」なる用語は、隣接残基のアルファ−アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに接続された少なくとも2つのアミノ酸残基の線系列を指す。
【0043】
本明細書で使用される、「リン酸化反応」なる用語は、リン酸の添加を指す。リン酸化されているペプチド内のアミノ酸は、本明細書では、アミノ酸に先行する「p」またはアミノ酸に続くもしくは付着している(PO3)のいずれか、で示される。
【0044】
本明細書で使用される、「レポーター化合物」なる用語は、そのアウトプットが直接的または間接的のいずれかによって検出されうる化合物を指す。アウトプットは、レポーター化合物自体が検出されうる特性を有する場合に直接的に検出されうる。アウトプットは、例えば、レポーター化合物が、別の基質によって作用するときに検出されうる特性を産生する場合に間接的に検出されうる。
【0045】
I.トランスフェラーゼ活性およびトランスフェラーゼ活性の変化について試料をアッセイする方法
好ましい実施形態では、試料のトランスフェラーゼ活性を検出するための方法は、基質、およびリン酸基ドナーとリン酸基アクセプタの少なくとも1つと試料とを接触させることを含む。基質は、以下で詳しく説明されるように、レポーター化合物およびアミノ酸を含む。非リン酸化ペプチド基質を第1の速度で切断し、リン酸化ペプチド基質を第2の速度で切断するペプチダーゼが添加される。例えば、ペプチダーゼは、リン酸化ペプチド基質よりも速い速度で非リン酸化ペプチド基質を切断する。次いで、レポーター化合物のアウトプットが検出される。この一般的なアッセイは、キナーゼおよびホスファターゼを含むがこれらに限定されない種々のトランスフェラーゼをスクリーニングするように適合されうる。また、一般的なアッセイを用いて、トランスフェラーゼ活性、例えば、キナーゼおよびホスファターゼなどにおける変化をスクリーニングすることができる。例えば、このアッセイを用いてトランスフェラーゼ(キナーゼおよびホスファターゼ等)のエンハンサーおよび阻害剤をスクリーニングすることができる。
【0046】
好ましい実施形態では、トランスフェラーゼが活性である条件下でレポーター化合物およびアミノ酸を含む基質の存在下に被験物質がトランスフェラーゼに接触される。基質は、非リン酸化ペプチド基質を第1の速度で切断し、リン酸化ペプチド基質を第2の速度で切断するアミノペプチダーゼで切断される。次いで、レポーター化合物のアウトプットが検出される。
【0047】
好ましい実施形態では、レポーター化合物は、キナーゼ(およびホスファターゼ)反応およびペプチダーゼ反応が溶液相反応で行われうるように固体担体に結合されない。
【0048】
別の好ましい実施形態では、ペプチド基質は固体担体に結合され、キナーゼ(またはホスファターゼ)反応およびペプチダーゼ反応は固相で行われる。また、アウトプットは固相で検出される。ペプチド基質は官能基によって固体担体に結合される。ペプチド基質上の官能基は、固体担体に付着した別の官能基、または固体担体の別の一部に結合する能力を有するべきである。このために、ペプチド基質は官能基をペプチド基質上に組み込むことによって、かつペプチド基質および固体担体が共に結合されうるように固体担体上に対応する官能基を有することによって固体担体に結合されうる。
【0049】
有用な官能基の例としては、カルボキシ基を含有するものが挙げられる。ビオチンがかかる官能基の例である。官能基のカルボキシ基は、レポーター化合物またはペプチド上ののアミノ基に結合されている。ストレプトアビジンおよびアビジンは、アミノ基を有する官能基の例である。官能基のアミノ基は、固体担体上のカルボキシ基に結合されている。ビオチンは、ストレプトアビジンおよびアビジンの両方に対するアフィニティを有する。官能基、例えば、ビオチンおよびストレプトアビジンによって、ペプチド基質は固体担体上に固定されうる。
【0050】
官能基は、他の結合(linkage)によって、例えば、チオエーテル(または硫化物)結合などによってペプチド基質にも付着されうる。例えば、ペプチド基質は遊離スルフヒドリル基を含み、固体担体はマレイミド末端基を含有するように誘導されうる(ピアスバイオテクノロジー社(Pierce Biotechnology, Inc.)、イリノイ州、ロックフォード)。他の結合、例えば、ジスルフィド結合が使用されうる。例えば、ペプチド基質は、遊離スルフヒドリル基を含み、かつ当該基質はペプチド基質の遊離スルフヒドリル基を酸化させ、ジスルフィド結合を形成する遊離スルフヒドロキシ基を含む。また、ペプチド基質が遊離カルボキシ基および固体担体を含むアミド結合がアミノ基を含有する。遊離カルボキシ基は、遊離アミノ基を酸化させ、ペプチド基質と固体担体との間にアミド結合を形成する。注目すべきは、他の種類の結合も使用されうるとともに、上記の官能基の位置は逆にされうることである。例えば、ビオチン基は固体担体上に位置することができ、ストレプトアビジンまたはアビジン基はペプチド基質上に位置することができる。
【0051】
好ましい実施形態では、ビス−レポーター化合物、すなわち、2つのアミノ基を有するレポーター化合物が、第1のアミノ基上に官能基および第2のアミノ基上にペプチドを含む。別の好ましい実施形態では、ビス−レポーター化合物が、遊離アミノ基の1つに結合されたペプチドの遊離末端で官能基を含む。さらに別の好ましい実施形態では、ペプチド基質はレポーター化合物自体上に官能基を含む。これらのそれぞれをこれからより詳しく述べる。
【0052】
2つの遊離アミノ基を有するビス置換レポーター化合物の場合、レポーター化合物は第1のアミノ基によってペプチド基質に結合され、レポーター化合物の第2のアミノ基が官能基に結合されている。例えば、カルボキシ基を含むビオチン基は、アミド結合によってレポーター化合物の他のアミノ基に結合されうる。次いで、固体担体がストレプトアビジンまたはアビジン誘導体を含有するように誘導されうるが、その両方はビオチンに対するアフィニティ(またはアビディティ)を有する。また、アビジンもしくはストレプトアビジンまたはその誘導体のいずれかで構成される基質(matrix)をビオチン化レポーター化合物とともに用いることができる。ストレプトアビジンを含有する固体担体の例としては、ストレプトアビジン結合膜(SAM(登録商標))、ポリスチレン結合アビジン、ストレプトアビジンプレート、ストレプトアビジンまたはアビジンコートマイクロタイタープレートが挙げられる。固相反応については、液相反応について本明細書中に記載されたキナーゼ(またはホスファターゼ)およびペプチダーゼプロトコールに従うことができ、同じ検出が液相アッセイについて既述されたように実施されうる。
【0053】
2つのアミノ基がレポーター化合物上に存在する場合、第1のペプチドは第1のアミノ基に付着され、第2のペプチドは第2のアミノ基に付着されうる。官能基は、上記の方法のいずれかで第2のペプチドの遊離末端で付着されうる。この構成では、第2の基および官能基に付着したペプチドはリンカーとして作用し、ペプチダーゼのための基質として使用されることはない。また、官能基は、他の適切なリンカー、例えば、遊離アミノ基から延び、例えば、アミノ基で終わる一連の炭素によってレポーター化合物に結合されうる。この構成により、キナーゼ(またはホスファターゼ)反応およびペプチダーゼ反応両方における基質として作用する第1のアミノ基上のペプチドの使用が可能である。
【0054】
レポーターは、そのアミノ基の両方で問題の2つのペプチド(またはホスホペプチド)にも結合され、レポーター化合物、例えば、ローダミン110のベンジル基などの上の選択位置でも誘導されうる。好ましい実施形態では、官能基は直接、ベンジル基に付着される。他の好ましい実施形態では、官能基はリンカー、例えば、アミノ基を含有するC6またはC12などによって付着される。これによりレポーター化合物のアミノ基への同じペプチドの結合、またはレポーター化合物のアミノ基への異なるペプチドの結合が可能となる。アミノ基以外の位置で官能基を有する別の利点は、両方のアミノ基が、例えばレポーター化合物に付着したペプチドの切断によって遊離している場合に、蛍光の大きな増大が得られることである。1つのアミノ基が遊離している場合のローダミン110については、アミノ基が遊離していない場合に比べ蛍光の10倍の増大が認められる。2つのアミノ基が遊離している場合のローダミン110については、アミノ基が遊離していない場合に比べ蛍光の100倍の増大が認められる。したがって、ローダミン110がアミノ基以外の位置で官能基を有する場合、これにより両方のアミノ基が遊離され、結果として上記の通り蛍光の100倍の増大が生じることになる。アミノ基以外の位置で官能基を有する利点は、2つのペプチドがレポーター化合物に付着されうることである。
【0055】
II.タンパク質キナーゼ活性について試料をアッセイするための方法
a.一般
本発明の好ましい実施形態は、タンパク質キナーゼ活性をスクーリングするアッセイである。試料中のタンパク質キナーゼ活性は、タンパク質キナーゼのためのリン酸ドナーおよびペプチド基質と試料とを接触させることによって測定されうる。ペプチド基質は、タンパク質キナーゼのためのレポーター化合物、アミノ酸、およびリン酸化反応部位を含む。
【0056】
ペプチド基質は、リン酸化ペプチド基質を切断するのとは異なる速度で非リン酸化ペプチド基質を切断するペプチダーゼとインキュベートされる。好ましくは、リン酸化ペプチド基質を切断するよりも速い速度で非リン酸化ペプチド基質を切断するペプチダーゼである。次いで、レポーター化合物のアウトプットが検出される。レポーター化合物は、ペプチド基質の少なくとも1つのアミノ酸と結合されている場合、ペプチド基質のアミノ酸と結合していない場合とは異なるアウトプット特性を示す。リン酸化アミノ酸が存在していない場合、ペプチダーゼはアミノ酸を基質から切断し、レポーター化合物を遊離することができる。周囲のアミノ酸の加水分解によるなど、ペプチド基質から遊離されると、レポーター化合物は、それがペプチド基質と結合されている場合と比べるとアウトプットを増大させた。とりわけ、リン酸化アミノ酸の存在は、ペプチダーゼによるアミノ酸の除去を阻止し、または遅くする。レポーター化合物がペプチド基質のアミノ酸に結合されると、アウトプットは認められず、または減少しなかった。したがって、レポーター化合物のアウトプットを用いて、ペプチド基質がリン酸化しているかどうを測定することができる。
【0057】
本発明のアッセイは、単一のチューブまたはウェル中で実施されうる。また、本発明のアッセイは、ハイスループットスクリーニングに敏感に反応する。例えば、アッセイは96穴、384穴、およびさらに多くのウェルを有するプレート中で実行されうる。
【0058】
タンパク質キナーゼ活性をスクリーニングするアッセイの好ましい実施形態が、以下の式で概略的に示されうる。
【0059】
I.キナーゼ反応
ステップA
タンパク質
キナーゼ
ペプチド−RC−ペプチド+NTP/M ---------->PO3−ペプチド−RC−ペプチド+NDP/M

ステップB
タンパク質
キナーゼ
PO3-ペプチド-RC-ペプチド+NTP/M---------->PO3-ペプチド-RC-PO3-ペプチド+NDP/M
【0060】
II.ペプチダーゼ反応
ペプチダーゼ
ペプチド−RC−ペプチド---------->アミノ酸+RC(アウトプットの上昇) 迅速反応
ペプチダーゼ
PO3−ペプチド−RC−PO3−ペプチド---------->少ないRC放出(アウトプットの最小
の変化または変化なし)
緩慢反応
【0061】
上記の式中、RCはレポーター化合物であり、PO3はリン酸基であり、Mは金属または二価陽イオンであり、NTPがヌクレオチド三リン酸である。
【0062】
b.キナーゼ反応:
好ましい実施形態では、キナーゼ反応物は、バッファー、金属または二価陽イオン源、ヌクレオチド三リン酸(NTP)を含み、これらはリン酸ドナー、ペプチド基質、および、場合によっては、キナーゼの活性剤として作用しうる。バッファー、陽イオン、NTP、およびペプチド基質は、以下で説明されるように、検討中のタンパク質キナーゼに基づき選択される。必要に応じて、キナーゼの活性剤も添加することができる。試料は反応物に添加される。
【0063】
試料がタンパク質キナーゼを含有する場合は、タンパク質キナーゼはNTPからのリン酸基の転移を触媒し、ペプチド基質をリン酸化することができる。キナーゼ反応物は、酵素が活性である温度でインキュベートされうる。好ましくは、その温度は約21℃以上である。37℃以下の温度も好ましい。インキュベーション時間は、好ましくは5秒以上である。1時間以下のインキュベーション時間も好ましい。しかし、インキュベーション時間は、トランスフェラーゼがアッセイ条件下に活性のままであるよりも反応時間が長くない限り、1時間よりも長い場合もありうる。インキュベーション時間は、例えば、インキュベーション温度、検討中のキナーゼの安定性および量、並びに、ペプチド基質の量に依存して最適化されうる。反応は瞬間的であり、したがって測定は実行されるとすぐに得ることができる。
【0064】
キナーゼ反応において有用なバッファーとしては、検討中の特定の酵素に対して最適である濃度およびpHレベルでのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸(Tris−HCl)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸)(HEPES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、バッファー濃度は10mM以上である。100mM以下のバッファー濃度も好ましい。キナーゼ反応物のpHは好ましくは7.0以上である。9.0以下のpHも好ましい。
【0065】
キナーゼ反応のための好ましい二価陽イオンはマグネシウムである。他の二価陽イオン、例えば、マンガン、カルシウム、ニッケルなどがマグネシウムの代わりになりうる。また、これら他の二価陽イオンをマグネシウムと組み合せることができる。とりわけ、他の二価陽イオンの一部をキナーゼの最適な活性のために添加することができる。好ましくは、二価陽イオンは1mM以上の濃度で添加される。濃度50mM以下の濃度でマグネシウムを添加することも好ましい。他の二価陽イオンをマイクロモルからミリモルの範囲で添加することができる。
【0066】
キナーゼ反応物に添加されるNTPは通常、ATPまたはGTPである。当技術分野で周知のように、キナーゼ反応物に添加されるNTPの選択は、アッセイにおいて使用されるキナーゼに依存する。キナーゼ反応におけるNTPの好ましい濃度は、約1μM以上であり、好ましくは1mM以下であり、より好ましくは100μMである。
【0067】
キナーゼのためのペプチド基質は、キナーゼによってリン酸化されうるものである。すなわち、タンパク質キナーゼの可能なペプチド基質は、リン酸基アクセプタとして作用しうるアミノ酸を有する必要がある。例えば、セリン/スレオニンキナーゼのペプチド基質は、セリンまたはスレオニンを有する。種々のタンパク質キナーゼのコンセンサス配列が知られている。(Methods in Enzymology 200: 62-81 (1991))。表1は、種々のタンパク質キナーゼのコンセンサスリン酸化反応部位モチーフを示す。星印は、リン酸化可能残基を示す。「X」は任意のアミノ酸を示す。
【0068】
【表2】

【0069】
アッセイのための可能なペプチド基質の有用性は、キナーゼが活性であることが知られている条件下にキナーゼと可能なペプチド基質とをインキュベートすることによって測定されうる。キナーゼアッセイのための好ましいペプチド基質は、レポーター化合物および少なくとも1つのアミノ酸を含み、キナーゼ反応において有用であり、レポーター化合物および少なくとも2つのアミノ酸を含み、キナーゼ反応において有用であり、レポーター化合物および少なくとも4つのアミノ酸を含み、キナーゼ反応において有用であるペプチド基質である。キナーゼ反応において有用であるこれらのペプチド基質は、問題のキナーゼによってリン酸化されうるものである。他の好ましいペプチド基質は実施例に記載されている。
【0070】
ペプチド基質におけるレポーター化合物は、放出されると、検出可能にアウトプットされる特性を有し、または検出可能にアウトプットされる特性を産生する反応物における基質である任意の化合物である。例えば、蛍光発生レポーター化合物が使用されると、アウトプットは検出可能な蛍光である。蛍光発生レポーター化合物は好ましくは、ペプチド基質のアミノ酸に結合されると蛍光は有さず、または減少している。しかし、ペプチド基質から遊離されると、蛍光発生レポーター化合物の蛍光は増大している。
【0071】
レポーター化合物は、蛍光発生化合物、例えば、アミノメチルクマリン(AMC)もしくはローダミン110(R−110)、または検討中のキナーゼまたはホスファターゼの認識部位に干渉することなくペプチドに結合されうる他の蛍光発生化合物でありうる。ローダミン110が好ましい蛍光発生基質であり、ハイスループットスクリーニング用途における有用性が証明されている。
【0072】
好ましい実施形態では、レポーター化合物は、アミド結合によってペプチド基質に共有結合されている。AMCは、アミノ酸鎖が結合されうる単一部位を有するが、ローダミン110は2つ有する。ローダミン110がレポーター化合物として使用される場合、2つの結合部位の1つは、単一部位のみがペプチドへの結合のために利用可能であるように、適切な阻止化合物によって阻止されうる。また、両方の部位がローダミン110上で利用可能である場合、同じペプチドはそれに結合され、または異なるペプチドがそれに結合されうる。異なるペプチドが使用される場合、2種類のキナーゼが同じ修飾ペプチド基質を用いてアッセイされうる。
【0073】
別の好ましい実施形態では、レポーター化合物は、ペプチド基質に結合されると、生物発光酵素の基質ではない、光発生化合物である。例としては、アミノルシフェリンまたはルシフェリンの他の誘導体が挙げられる。例えば、アミノルシフェリンが酵素的にペプチド基質から放出されると、これはルシフェラーゼの基質として利用可能である。ルシフェラーゼは、アミノルシフェリンとATPとの間の反応における光の産生を触媒する生物発光酵素である。この結果として生じる光またはルミネセンスは、かかる光発生化合物が使用される場合に検出可能なアウトプットである。
【0074】
好ましくは、ペプチド基質は、マイクロモル濃度、例えば、少なくとも1μMの濃度などで添加される。25μM以下の濃度でペプチド基質を添加することも好ましい。
【0075】
活性剤が、必要に応じて、例えば、検討中のキナーゼが活性剤を必要とする場合に、キナーゼ反応物に添加されうる。活性剤を添加して最適なキナーゼ活性を得ることも望ましいとみられる。キナーゼ反応において有用な活性剤としては、カルシウム、リン脂質および他の脂質、およびホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)またはカルシウム−リン脂質依存性タンパク質キナーゼ(PKC)のための同様の活性剤、カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ(CaM K)のためのカルシウムおよびカルモジュリン、cAMP依存性タンパク質キナーゼ(PKA)ホロ酵素のためのcAMP、cGMP依存性タンパク質キナーゼ(PKG)のためのcGMP、DNK−PKのためのDNAが挙げられるが、これらに限定されない。活性剤は、検討中のキナーゼに応じてナノモル以上の濃度、およびマイクロモル以下の濃度で添加されうる。終了試薬を場合により、例えば、タンパク質キナーゼの活性を測定し、定量するための評価項目が望まれる場合、キナーゼ反応が生じている系に添加することができる。終了試薬は通常、キナーゼから金属を隔離するのに十分である濃度で添加される金属キレート化試薬である。また、キナーゼによって触媒されるリン酸化反応を終了する他の試薬を用いてリン酸化反応を終了させることができる。例えば、EDTA、EGTA、および1,10−フェナントロリンが、それぞれ、マグネシウム、カルシウム、および亜鉛のための優れたキレート剤である。他のイオンキレート剤を用いることができる。また、キナーゼは加熱不活性化されうる。
【0076】
キナーゼ反応は、リン酸ドナーとしてホスホペプチドおよびリン酸アクセプタとしてヌクレオシド二リン酸(NDP)を用いて、すなわち、既述された反応の逆も実行されうる。この構成では、キナーゼ反応は上述されている同じ方法で実行される。しかし、一般に検出されるアウトプットは、ホスホペプチドがリン酸ドナーであるキナーゼ反応のアウトプットの逆のものとなる。すなわち、このアッセイ構成でキナーゼ活性が認められる場合、アウトプットは、ホスホペプチド基質の脱リン酸化反応およびNDPのリン酸化反応が生じる場合に増大することになる。
【0077】
c.ペプチダーゼ 反応:
ペプチド基質のアミド結合に作用する加水分解酵素であるペプチダーゼがペプチド基質に添加される。本発明において特に有用であるペプチダーゼは、エンドペプチダーゼ活性がない、または実質的にないものを含む。また、非リン酸化ペプチド基質を第1の速度で切断し、リン酸化ペプチド基質を第2の速度で切断するペプチダーゼを有することが好ましい。例えば、好ましいペプチダーゼは、リン酸化反応によって修飾されていないアミノ酸を結合するアミド結合を切断する場合、リン酸化反応によって修飾されているアミノ酸を結合するアミド結合を切断するよりも比較的高い活性を示す。同じ濃度のプロテアーゼで処理されたリン酸化ペプチドのものと比べた、プロテアーゼで処理された非リン酸化ペプチドから生成される蛍光の比のこの差異を、キナーゼの指標におけるように使用することができ、ペプチド基質がリン酸化されているかどうの判定が可能である。好ましいペプチダーゼは、ペプチド基質の非リン酸化アミノ酸を連続的に加水分解し、次いでリン酸化アミノ酸に達すると加水分解を劇的に減速させるものである。この加水分解の減速により、リン酸化アミノ酸の分子の大部分において放出されるレポーター化合物の不足が生じる。これによりバックグラウンド蛍光、または非リン酸化アミノ酸が存在する場合よりも相当に低い蛍光が生じる。リン酸化アミノ酸の部分的加水分解は以下で概略的に示されている。
【化1】

【0078】
好ましい実施形態では、キナーゼ酵素の活性の増大は、酵素の濃度の上昇とともに検出可能なアウトプットの減少に比例している。逆に言えば、ホスファターゼ酵素の活性は、アウトプット、例えば、ホスファターゼの濃度の上昇とともに記録される蛍光と比較すると、アウトプット、例えば蛍光測定値の増大に比例している。
【0079】
非リン酸化ペプチド基質については、ペプチダーゼ活性は1つの速度を有する。リン酸化ペプチド基質については、ペプチダーゼ活性は第2の速度を有する。例えば、所定の酵素/基質のペアおよびアミノペプチダーゼMによる処理については、アウトプット、例えば、蛍光単位が、リン酸化ペプチド基質についてよりも非リン酸化ペプチド基質について高いrである。
【0080】
好ましくは、ペプチダーゼは、ペプチド基質の末端でアミノ酸の加水分解を開始するエクソペプチダーゼである。1つの好ましい実施形態では、ペプチダーゼは、ペプチドのアミノ末端からペプチドを切断するアミノぺプチダーゼである。アミノペプチダーゼが使用される場合、ペプチド基質は、ペプチドのアミノ末端が遊離しているようにレポーター化合物に結合されたカルボキシ末端を有する。アミノペプチダーゼとともに使用されるペプチド基質は、NH2−ペプチド−CO−[レポーター化合物]−CO−ペプチド−NH2で表すことができる。他に特に示されていない限り、アミノペプチダーゼとともに使用されるペプチド基質が本明細書中に記載されている場合、ペプチド基質はこの構成を有することが理解されるべきである。
【0081】
アミノペプチダーゼは、ペプチド、アミド、またはアリルアミドからN末端アミノ酸、X−|−Yの放出を触媒し、ここでXはProを含むほとんどのアミノ酸でありうるが、加水分解の速度は変動する。末端疎水性残基の後にプロリル残基がある場合、この2つは無傷X−Proジペプチドとして放出されうる。非リン酸化ペプチド基質については、アミノペプチダーゼは連続的にアミノ酸をペプチド基質のアミノ末端から切断し、レポーター化合物を自由にする。また、ペプチドをペプチドのアミノ末端から切断するジぺプチジルペプチダーゼを使用することができる。
【0082】
好ましいアミノペプチダーゼとしては、アミノペプチダーゼM(E.C.3.4.11.2)、およびアミノペプチダーゼIIが挙げられる。アミノペプチダーゼMは、膜アミノペプチダーゼである。アミノペプチダーゼMの他の名称としては、膜アラニルアミノペプチダーゼ、ミクロソームアミノペプチダーゼ、アミノペプチダーゼN、粒子結合アミノペプチダーゼ、アミノ−オリゴペプチダーゼ、アラニンアミノペプチダーゼ、粒子結合アミノペプチダーゼ、膜アミノペプチダーゼI、偽ロイシンアミノペプチダーゼ、CD13、Cys−Glyジペプチダーゼ、およびペプチダーゼEが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
アミノペプチダーゼIIは、コウジカビ(Aspergillus oryzae)株(ATCC20386)から単離されるペプチダーゼであり、金属酵素であり、かつ非特異的アミノぺプチダーゼ(EC3.4.11)である。酵素はほとんどのペプチド結合を切断し、酸性、塩基性中性、疎水性または親水性残基を切断する能力を有するが、酵素は、最後から2番目のN末端アミノ酸として存在するときのプロリンによる活性はほとんどない。リン酸化ペプチド基質とは比較的異なる速度で非リン酸化ペプチド基質を切断し、エンドペプチダーゼ活性がない、または実質的にない他のペプチダーゼを本発明のために使用することができる。
【0084】
とりわけ、バッファーを変更することなく完了したキナーゼ反応物にペプチダーゼを添加し、キナーゼ反応の成分、または他のステップを除去することができる。したがって、スクリーニングアッセイが単一のチューブまたはウェル中で達成されうる。好ましくは、少なくとも6.5ミリ単位のアミノペプチダーゼが添加される。100ミリ単位以下のアミノペプチダーゼを添加することも好ましい。アミノペプチダーゼの単位は、37℃およびpH7.0〜7.5で毎分1マイクロモルのLeu−pNAを加水分解する酵素の量と定義されている。低くかつ高い量のペプチダーゼを、例えば、ペプチド基質濃度およびペプチド切断の反応時間に応じて使用することができる。ペプチダーゼ反応は、酵素が活性である任意の温度で実行されうる。好ましくは、ペプチダーゼ反応物は少なくとも10℃の温度でインキュベートされる。40℃未満の温度も好ましい。好ましくは、ペプチダーゼ反応は5秒間以上にわたり行われる。180分以下の反応が行われることも好ましい。より長い反応時間は、例えば、酵素およびペプチド基質濃度に応じて用いることができる。より短い反応時間は、例えば、低いペプチド基質濃度および高い単位のアミノペプチダーゼとともに用いることができる。
【0085】
ペプチダーゼはカルボキシペプチダーゼでもありうるが、これはペプチドからカルボキシ末端アミノ酸を切断する。利用されうるカルボキシペプチダーゼとしては、アミノ酸を除去するカルボキシペプチダーゼA、および末端リシンまたはアルギニンに特異的であるカルボキシペプチダーゼBが挙げられるが、これらに限定されない。カルボキシペプチダーゼが使用される場合、ペプチド基質は、ペプチドのカルボキシ末端が遊離しているようにレポーター化合物に結合されているペプチドのアミノ末端を有する。カルボキシペプチダーゼとともに使用されるペプチド基質は、COOH−ペプチド−NH−[レポーター化合物]−NH−ペプチド−COOHで表すことができる。他に特に示されていない限り、カルボキシペプチダーゼとともに使用されるペプチド基質が本明細書中に記載されている場合、ペプチド基質はこの構成を有することが理解されるべきである。
【0086】
必要に応じて、ペプチダーゼのターミネーターが含まれる。代表的な活性剤としては、アクチノニン、ベスタチン、およびアマスタチンが挙げられるが、これらに限定されない。ペプチダーゼターミネーターの包含は、アウトプットの検出または測定がペプチダーゼ反応の終了よりも後の時点で行われる場合に特に有用である。亜鉛キレート剤、例えば、1,10−フェナントロリンなど他の試薬も使用できる。ペプチダーゼターミネーターは、マイクロモル以上の濃度で添加されうる。ペプチダーゼターミネーターは、ミリモル以下の濃度でも添加されうる。
【0087】
d.アウトプットの検出
使用されるレポーター化合物のアウトプットは、ペプチド基質のペプチダーゼ処理の後に検出される。蛍光発生レポーター化合物が使用される場合、蛍光はアウトプットとして使用されうる。蛍光光度計を用いて蛍光を検出することができる。単一チューブ機器である蛍光光度計またはマルチウェルプレート蛍光リーダーである蛍光光度計を用いて蛍光を検出することができる。例えば、クオーツキュベットを装備したフルオロログ−2スペクトロ蛍光光度計(SPEXインダストリーズ社(SPEX Industries, Inc.)、ニュージャージー州、エジソン)を単一チューブアッセイ用に用いることができる。Cytofluor(登録商標)IIマルチウェル蛍光プレートリーダー(パーセプティブバイオシステムズ社(PerSeptive Biosystems, Inc.)、マサチューセッツ州、フラミンガム)およびフルオロスキャンアセントCF(Fluoroscan Ascent CF)(ラブシステムズ(LabSystems)OY、フィンランド、ヘルシンキ)は、いずれも適切なフィルタが装備されているが、これらを用いて蛍光を検出することができる。蛍光単位または測定値を記録することができる。ローダミン110がレポーター化合物として使用される場合、ペプチダーゼ処理後にキナーゼ反応は好ましくは485nmでの励起および520〜530nmでの発光を読むことによって測定される。AMCが使用される場合、反応は好ましくは360nmで励起し、420nmでの発光を読むことによって測定される。
【0088】
光発生レポーター化合物が使用される場合、ルミネセンスをアウトプットとして使用することができる。照度計装置または他の適切な装置(ベクター1420マルチウェルカウンタ、ワラック(Wallac)Oy、パーキンエルマー(Perkin Elmer)、フィンランド、トゥルクなど)を用いて、ペプチダーゼ処理からの結果として生じるルミネセンスを検出することができる。
【0089】
キナーゼアッセイからの一般的なアウトプットが図1に示されているが、これは少ないキナーゼが添加される場合に高い蛍光を、多くのキナーゼが添加される場合に低い蛍光単位を示す。滴定曲線の形状は、ペプチド基質を切断し、レポーター化合物を放出するアミノペプチダーゼの能力が、存在するキナーゼの濃度が増大すると減少するように、ペプチド基質をリン酸化するキナーゼによって説明されうる。
【0090】
好ましい実施形態では、両方のペプチドが同じ濃度のペプチダーゼで処理されている場合、非酸化ペプチド基質のアウトプットをリン酸化ペプチド基質のアウトプットと比較することによって相対アウトプットが測定される。例えば、アッセイでは、蛍光発生化合物が使用される場合に相対蛍光の変化、またはルミネセンス発生化合物が使用される場合に相対ルミネセンスの変化を使用することができる。レポーター化合物の検出可能なアウトプットの相対変化は、好ましくは、対照試料アウトプットに対する被験試料アウトプットの比である。この比は相対蛍光強度(RFU)として表すことができる。例えば、アウトプット比は、キナーゼで処理された試料およびキナーゼで処理されていない試料について計算されうる。
【0091】
III.ホスファターゼ活性のアッセイのための方法
本発明の別の好ましい実施形態は、ホスファターゼ活性をスクリーニングするアッセイである。一般に、ホスファターゼ活性のスクリーニングは、キナーゼ活性のスクリーニングと同様に達成されるが、主な例外は、ホスファターゼの基質、通常はホスホペプチド基質をキナーゼにおけるペプチド基質の代わりに使用することである。キナーゼ活性アッセイとホスファターゼ活性アッセイとの間の他の差異は以下およびその後の実施例において述べられている。
【0092】
試料のホスファターゼ活性を検出するために好ましい実施形態では、試料はホスホペプチド基質およびリン酸アクセプタと接触される。ペプチド基質としては、レポーター化合物、ホスファターゼの脱リン酸化反応部位、およびアミノ酸が挙げられる。タンパク質ホスファターゼの可能なペプチド基質は、リン酸基ドナーとして作用しうるホスホアミノ酸を有する必要がある。例えば、セリン/スレオニンホスファターゼのペプチド基質はリン酸化セリン/スレオニンを有し、チロシンホスファターゼのペプチド基質はリン酸化チロシンを有する。ホスホペプチド基質は、上記の通り、レポーター化合物に結合される。
【0093】
試料のホスファターゼ活性を検出するための好ましい実施形態では、試料はホスホペプチド基質およびリン酸アクセプタと接触される。ペプチド基質としては、レポーター化合物、ホスファターゼの脱リン酸化反応部位、およびアミノ酸が挙げられる。タンパク質ホスファターゼの可能なペプチド基質は、リン酸基ドナーとして作用しうるホスホアミノ酸を有する必要がある。例えば、セリン/スレオニンホスファターゼのペプチド基質はリン酸化セリン/スレオニンを有し、チロシンホスファターゼのペプチド基質はリン酸化チロシンを有する。アッセイのための可能なペプチド基質の有用性は、酵素が活性であることが知られている条件下に酵素と可能なホスホペプチド基質をインキュベートすることによって測定されうる。ホスホペプチド基質は、上記の通り、レポーター化合物に結合される。
【0094】
ホスファターゼ基質選好はキナーゼ基質選好よりも厳しくはないが、種々のタンパク質ホスファターゼが実際には既知の基質選好を有する。(例えば、Eur. J.Biochem 219: 109-117 (1994)を参照)。例えば、Ser/Thr特異的酵素のファミリーに属するだけではなくホスホチロシン残基に活性でもあるホスファターゼ−2B(PP-2B)については、高次構造がその基質特異性に重要な決定因子であると考えられている。しかし、多くの短いペプチドもPP-2Bによって適切に脱リン酸化され、基質としてのその効率は局所の構造的特徴に依存する。例えば、PP-2Bによって適切に脱リン酸化されるペプチドのすべては、アミノ末端側で塩基性残基を含有する。リン酸化残基に対して3位に位置する塩基性残基は、短いホスホペプチドの脱リン酸化反応を測定することにおける特に適切な好ましい役割を果たす。ホスホアミノ酸のカルボキシ末端側に隣接した酸性残基は、反対に強いマイナスの決定因子であり、別に適切なペプチド基質の脱リン酸化反応を阻止する。しかし、PP-2Bは、ホスホスレオニルペプチドにごく適度の選好を示すが、反対にSer/Thr特異的タンパク質ホスファターゼの他のクラスによって、そのホスホセリル対応物が著しく好まれる。さらに、PP-2Bは、ペプチドにおけるモチーフSer/Thr−Proを強いマイナスの決定因子として感知することはないが、このモチーフはSer/Thrタンパク質ホスファターゼの他のクラスによる脱リン酸化反応を阻止する。ホスホチロシルペプチドで試験されるときは、PP-2Bは、真正のタンパク質チロシンホスファターゼであるT細胞タンパク質チロシンホスファターゼのものと著しく異なる特異性を示す。具体的には、後者の酵素は、そのアミノ末端部分が主に酸性であるPP-2Bおよびsrc産物のホスホアクセプタ部位を再現する多くのホスホペプチドに対して特に活性であるが、2位にアルギニン残基を有する人工的な基質ホスホ−アンギオテンシンIIは、同様のサイズのすべてのホスホチロシルペプチドに対してPP-2Bによってはるかに好ましい。まとめると、これらの結果は、PP-2Bの特異性が、所定のコンセンサス配列に依存するのではなく、他の既知のタンパク質ホスファターゼのものと異なる全体的な選択性をそれに付与する種々の一次および高次構造的特徴によって決定されることを示す。
【0095】
ホスファターゼアッセイの好ましいペプチド基質としては、レポーター化合物および少なくとも1つのアミノ酸を含み、ホスファターゼ反応において有用であり、レポーター化合物および少なくとも2つのアミノ酸を含み、ホスファターゼ反応において有用であり、レポーター化合物および少なくとも4つのアミノ酸を含み、ホスファターゼ反応において有用であるペプチド基質が挙げられる。ホスファターゼ反応において有用であるペプチド基質は、問題のホスファターゼによって脱リン酸化されうるものである。好ましいペプチド基質としては、Y(PO3)(配列番号:33)−レポーター化合物−Y(PO3)[ここでレポーター化合物は任意のレポーター化合物である]、Y(PO3)−R−110−Y(PO3)、およびAAY(PO3)AXAA(配列番号:34)−R−110−AAXAY(PO3)AA[ここでXは任意のアミノ酸である]が挙げられる。他の好ましいペプチド基質は実施例に記載されている。
【0096】
ホスファターゼ反応には、詳しく上述されているように、リン酸化ペプチド基質を切断するよりも速い速度で非リン酸化ペプチド基質を切断するペプチダーゼが添加される。これによりホスホペプチド基質の脱リン酸化反応の評価が可能となる。レポーター化合物の検出可能なアウトプットは、詳しく上述されているように、検出されうる。ホスファターゼ活性アッセイの代表的なアウトプット結果は、例えば、図6に示されている。
【0097】
タンパク質ホスファターゼ活性アッセイは、以下の式で概略的に示されうる。
【0098】
I.ホスファターゼ反応
ステップA
タンパク質
ホスファターゼ
PO3-ペプチド-RC-PO3-ペプチド+NDP/M---------->PO3-ペプチド-RC-ペプチド+NTP/M

ステップB
タンパク質
ホスファターゼ
PO3-ペプチド-RC-ペプチド+NDP/M---------->ペプチド-RC-ペプチド+NTP/M
【0099】
II.ペプチダーゼ反応
ペプチダーゼ
ペプチド-RC-ペプチド---------->アミノ酸+RC(アウトプットの上昇)
迅速反応
ペプチダーゼ
PO3-ペプチド-RC-PO3-ペプチド---------->少ないRC放出(アウトプット最小変化)
緩慢反応
【0100】
上記の式中、RCはレポーター化合物であり、PO3はリン酸基であり、Mは金属または二価陽イオンである。
【0101】
ホスホペプチド基質の脱リン酸化反応およびその加水分解は以下に概略的に示されている。
【化2】

【0102】
セリン/スレオニンホスファターゼの好ましい実施形態では、ホスファターゼ反応物は、ホスホペプチド基質、トリス−HCl、pH7.5などのバッファー、ウシ血清アルブミン(BSA)、金属または二価陽イオン、例えば、MgCl2またはMnCl2などを含む。また、当技術分野で周知のように、他の活性剤、例えば、カモルジュリンなどを添加し、最適な酵素活性を達成することができる。反応物は、ホスファターゼが活性である任意の温度でインキュベートされうる。好ましくは、反応物は30分間、室温でインキュベートされる。
【0103】
必要に応じて、ホスファターゼ反応は、オカダ酸、EDTAおよび/またはEGTAを添加することによって終了させることができる。終了後(使用される場合)、ペプチダーゼが添加され、反応物は、好ましくは少なくとも60分間、25℃でインキュベートされる。レポーター化合物が蛍光発生化合物、例えば、ローダミン110などの場合、蛍光が480nmの励起および520nmの発光で測定されうる。
【0104】
IV.キナーゼ活性における、またはこれに対する変化のスクリーニング方法
本発明の別の実施形態は、キナーゼ反応における、またはこれに対する変化についてスクリーニングするアッセイである。変化として、キナーゼ反応の活性化または阻害が挙げられるが、これらに限定されない。このために、キナーゼの有望な活性剤または阻害剤である被験物質が、キナーゼといっしょにアッセイに添加される。アッセイは通常、バッファー、陽イオン、NTP、ペプチド基質、および0.05単位以上の問題のキナーゼを含む。
【0105】
有望な阻害剤または活性剤は反応物に添加され、化合物がリン酸化反応を阻害または刺激するかどうかを判定する。また、詳しく上述されているように反応物にペプチダーゼが添加される。有望な阻害剤または活性剤は、レポーター化合物からの検出可能なアウトプットの変化をひき起こしうる。例えば、有望な阻害剤がアッセイに含まれる場合、通常、レポーター化合物からの検出可能なアウトプットの増大はキナーゼの阻害を示す。この増大はおそらくキナーゼの阻害によるものであり、キナーゼの阻害はペプチド基質のリン酸化反応の減少をもたらすだろう。リン酸化されたペプチド基質のアミノ酸が少ないことにより、ペプチダーゼはペプチド基質のより多くの分子を切断し、非阻害キナーゼ反応よりも多くのレポーター化合物を遊離させうる。反対に、有望なエンハンサーがアッセイに含まれる場合、有望なエンハンサーを含まない対照反応と比べると、レポーター化合物からのアウトプットの減少はキナーゼの増強を示す。
【0106】
好ましい実施形態では、被験物質と接触した被験試料からのアウトプットが、被験物質と接触されていない対照試料のアウトプットと比較される。好ましくは、これら検出されたアウトプットから比が計算される。この比は、キナーゼによるレポーター化合物のリン酸化反応(またはその欠如)の尺度である。
【0107】
V.ホスファターゼ活性における、またはこれに対する変化をスクリーニングのための方法
本発明のさらなる実施形態は、ホスファターゼ反応における、またはこれに対する変化についてスクリーニングするアッセイである。変化としては、ホスファターゼ反応の活性化または阻害が挙げられるが、これらに限定されない。このために、ホスファターゼの有望な阻害剤である被験物質が、ホスファターゼといっしょにアッセイに添加される。アッセイは通常、バッファー、陽イオン、ホスホペプチド基質、および0.1単位以上の問題のホスファターゼを含む。
【0108】
有望な阻害剤または活性剤は反応物に添加され、化合物が脱リン酸化反応を阻害または刺激するかどうかを判定する。また、詳しく上述されているように反応物にペプチダーゼが添加される。有望な阻害剤または活性剤は、レポーター化合物からの検出可能なアウトプットの変化をひき起こしうる。例えば、有望な阻害剤がアッセイに含まれる場合、通常、レポーター化合物からの検出可能なアウトプットの減少はホスファターゼの阻害を示す。この減少はおそらくホスファターゼの阻害によるものであり、ホスファターゼの阻害はペプチド基質の脱リン酸化反応の減少をもたらすだろう。リン酸化された残りのペプチド基質のアミノ酸が多いことにより、ペプチダーゼはペプチド基質のより少ない分子を切断し、非阻害ホスファターゼ反応よりも少ないレポーター化合物を遊離させうる。反対に、有望なエンハンサーがアッセイに含まれる場合、有望なエンハンサーを含まない対照反応と比べると、レポーター化合物からのアウトプットの増大はホスファターゼの増強を示す。
【0109】
好ましい実施形態では、被験物質と接触した被験試料からのアウトプットが、上述されている通り被験物質と接触されていない対照試料のアウトプットと比較される。
【0110】
VI.キット
本発明は、上述された方法を実施するためのキットにも関する。好ましい実施形態では、キットは、レポーター化合物を含む基質、トランスフェラーゼの酵素活性を維持するバッファー、リン酸ドナーとリン酸アクセプタの少なくとも1つ、および基質と適合するペプチダーゼを含む。検討中のトランスフェラーゼをキットに含めることができ、または使用者によって供給されうる。トランスフェラーゼは、キナーゼ、ホスファターゼ、または検討中の別のトランスフェラーゼでありうる。トランスフェラーゼがキナーゼである場合、基質は好ましくはリン酸基アクセプタとして作用するペプチド基質であり、リン酸ドナーは好ましくはキナーゼが使用可能であるNTPである。トランスフェラーゼがホスファターゼである場合、基質は好ましくはリン酸基ドナーとして作用するホスホペプチド基質である。他の成分、例えば、そのすべてが既述されている、検討中のトランスフェラーゼの活性剤、トランスフェラーゼのターミネーター、ペプチダーゼのターミネーター等なども含めることができる。好ましい実施形態では、トランスフェラーゼ活性のスクリーニングのためのキットも、制御反応のために使用されうるトランスフェラーゼを任意に含む。トランスフェラーゼを含むキットは、被験物質がトランスフェラーゼの活性を変化させるかどうかを判定するためにも使用されうる。例えば、キットは、被験物質が試験中のトランスフェラーゼを増強または阻害するかどうを判定するために使用されうる。
【0111】
1つの好ましい実施形態においては、基質はキナーゼ基質である。別の好ましい実施形態においては、基質はホスファターゼ基質である。好ましくは、キットのペプチダーゼはアミノペプチダーゼであるが、別のペプチダーゼ、例えば、カルボキシペプチダーゼなどでありうる。好ましいアミノペプチダーゼとしては、アミノペプチダーゼMおよびアミノペプチダーゼIIが挙げられるが、これらに限定されない。基質のための好ましいレポーター化合物は蛍光発生または光発生化合物であり、上述されている通りである。
【0112】
実施例
以下の実施例は、例示目的のみに提供されている。これらの実施例は、本明細書では、現在記述された発明をより完全に理解するのに単に役立てるために含まれている。これらの実施例は、任意の方法で本明細書で記述され請求された発明の範囲を限定することはない。
【実施例1】
【0113】
R110修飾ペプチド基質およびアミノペプチダーゼMを用いたSer/Thrキナーゼの検出:
LRRASLG−(R110)−GLSARRLによるPKAアッセイ。プロメガ社(Promega Corp.)(ウィスコンシン州、マディソン)製のcAMP依存性タンパク質キナーゼ(PKA)の触媒サブユニットのキナーゼ活性について以下の反応成分を用いて96穴プレートにおいてトリプリケートで試験した。すなわち、40mM トリス−HCl、pH7.5、20mM MgCl2、0.lmg/ml ウシ血清アルブミン(BSA)、50μM ATP、および5μMのLRRASLG(配列番号:1)−R110−GLSARRL、「ビス−ケムプチド(kemptide)」としても知られるビス−ローダミンペプチドキナーゼ基質。最終反応体積は50μLであった。各反応に添加されるPKAの量は、0.001単位から1単位の範囲で、2倍の単位増分で滴定された。0単位による対照反応も実行された。すべてのキナーゼ反応物が20分間、室温でインキュベートされた。
【0114】
キナーゼ反応は、100mM EDTAおよび25mU アミノペプチダーゼM(カルビオケム(Calbiochem)社、カリフォルニア州、サンディエゴ)を含有する終了/検出試薬(25μl)を添加することによって終了された。
【0115】
終了反応物を30分間、室温でインキュベートし、次いでアミノペプチダーゼ活性を最終濃度2.5μM アクチノニン/ウェルの添加によって終了した。キナーゼの酵素活性は、アクチノニンの添加時および3時間後に蛍光の測定値を取ることによって測定され、480nmでの励起によるシグナルの安定性、および520〜530nmでの蛍光放出を試験した。
【0116】
図1に示されているように、反応における酵素の濃度または単位に増大とともに蛍光アウトプットの対応する減少が認められる。また、PKAのより大きな単位の酵素サブユニットがより低い蛍光アウトプットをもたらすことも判定された。これは、アミノぺプチターゼMによって切断の速度を低下させ、ローダミン110の放出の減少をもたらすペプチド基質のリン酸化反応によって説明されうる。さらに、シグナルは、アミノペプチダーゼ活性の終了後3時間に得られたほぼ同一のプロファイルによって示されているように、長時間にわたってきわめて安定であった。
【0117】
他のタンパク質キナーゼ源(例えば、キャルザイムラボラトリーズ社(Calzyme Laboratories)(カリフォルニア州、サンルイスオビスポ)も試験され、実質的に同様の結果を示した。
【実施例2】
【0118】
Ser/Thrタンパク質キナーゼの阻害:
阻害剤によるPKAアッセイ。PKAキナーゼの種々の阻害剤の効果を試験した。PKAの既知かつ特異的阻害剤(PKI−「タンパク質キナーゼ阻害剤」)、PKAの一般かつ非特異的阻害剤(スタウロスポリン((9S−(9a,10β,11β,13a)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−11−(メチルアミノ)−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3’,2’,1’−1m]ピロロ{3,4−j]][1,7]ベンゾジアゾニン−1−オン)))、PKAの弱い不十分(poor)阻害剤(H7)(1−(5−イソキノリンスルホニル)−2−メチルピペラジン)、およびPKAを阻害しない化合物(U0126)(1,4−ジアミノ−2,3−ジシアノ−1,4−ビス−(2−アミノフェニルチオ)ブタジエン)をPKAのキナーゼ活性に対するその効果について試験した。キナーゼ反応およびアミノペプチダーゼ反応を、阻害剤を上昇濃度で含み、かつ0.5単位のPKAを使用したことを除き、実施例1に記載されたものと同様の条件下に実行した。いかなる阻害剤も含有しない対照を含めた。
【0119】
480nmの励起および520〜530nmの蛍光放出で蛍光を検出した。図2に示されているように、PKIおよびスタウロスポリンの濃度を上昇されることにより蛍光アウトプットの増大が生じ、PKA酵素活性の阻害を示した。化合物H7およびU0126は、蛍光アウトプットが変化しなかったため効果なしであった。PKIがスタウロスポリンよりも有力な阻害剤であることも明らかであり、低い濃度の前者は後者よりも酵素活性を50%阻害(IC50)する能力があった(図2)。
【0120】
2つの追加のペプチド基質、すなわち、ペプチド基質ビス−SPK−2(KKALRRASLKG(配列番号:2)−R110−GKLSARRLAKK)およびビス−SPK−4(KKALRKASVRG(配列番号:3)−R110−GRVSAKRLAKK)によるキナーゼ反応も上記と同様の条件下に実行した。この試験では、ペプチド基質ビス−SPK−2が、ペプチド基質ビス−SPK−4よりもPKAに対して優れた基質であることが示された。また、モノアミドペプチド基質をビスアミドペプチド基質と比較し、同様のプロファイルを得たが、例外として、バックグラウンドは、ビス置換ローダミン110誘導体と比べ、モノ置換ローダミン110についてより高かった。ローダミン110誘導体のこの特性は当技術分野で公知である(結果は示さず)。
【0121】
反応は、単一チューブ、96穴、および384穴フォーマットで行われ、白と黒の両方のプレートを使用した。黒のプレートは、低い反射率により、機器関連バックグラウンドが低くなるため、これが好ましい。他のセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ、例えば、PKG、PKC、AKTなども基質SPK−2を用いて試験し、各アッセイにおけるアウトプット蛍光の変化は、反応における酵素の量に反比例した(結果は示さず)。
【実施例3】
【0122】
AMC修飾ペプチド基質およびアミノペプチダーゼMを用いたSer/Thrキナーゼ活性の検出:
LRRASLG−AMCによるcAMP依存性タンパク質キナーゼ(PKA)アッセイ。他の蛍光発生レポーター、例えば、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)をPKAと使用するためにその安定性について試験した。AMCは遊離アミノ基によってアミド結合でペプチドLRRASLGに結合され、ペプチド基質ケムプチド−AMCを産生した。この基質をローダミン110修飾ペプチド基質とともに使用したものと同一であるアッセイ条件下に使用したが、例外として、40μMの濃度で基質を添加した。反応物を30分間、室温でインキュベートし、アミノペプチダーゼMを50mU/ウェルの最終濃度で添加し、60分間、室温でインキュベートした。反応は50μM ATPの存在下および非存在下に行い、PKAのホスホトランスフェラーゼ活性がATPを必要とすることを示した。蛍光データは、アクトニンの添加なしに60分で得られた。蛍光は、360nmの励起および420nmでの蛍光放出で検出された。
【0123】
図3における結果は、ATPの非存在下には、酵素濃度の増大とともに蛍光アウトプットの変化がないことを示す。ATPの存在下には、蛍光アウトプットは酵素の量の増大に比例して減少した。これらのデータは、蛍光発生レポーター化合物が本発明において使用されうることを示す。
【実施例4】
【0124】
R110修飾ペプチド基質およびアミノペプチダーゼMを用いたチロシンキナーゼの検出:
チロシンキナーゼアッセイ。チロシンキナーゼのキナーゼ活性は、リン酸化可能アミノ酸残基としてチロシンを含有するペプチド基質を用いて示された。タンパク質チロシンキナーゼのSrcファミリー、例えば、Fyn、Lyn A、Lyk、Src、Src N1などの一部の酵素のキナーゼ活性、および成長因子受容体チロシンキナーゼ(インスリン受容体)のキナーゼ活性について試験した。
【0125】
チロシンキナーゼ反応の条件としては、50μl/ウェル体積中、トリス−HCl、pH7.5、0.1mg/ml BSA、20mM MgCl2、1mM MnCl2、0.2mM EGTA、100μM バナジン酸ナトリウム、8mM ベータグリセロホスフェート、2μM ビス−PTK−5(YIYGAFKRRG(配列番号:4)−R110−GRRKFAGYIY)が挙げられる。0.07mUから40mUの2倍の増分の酵素、および酵素を含有しない対照とともにチロシンキナーゼlckの酵素滴定を実行した。反応は、30分間、室温で100μM ATPの有無で実行した。試料は、ダイネックス(Dynex)(登録商標)マイクロフルオル(Microfluor)(登録商標)2、黒、96穴プレート(ダイネックステクノロジーズ社(Dynex Technologies, Inc.)、バージニア州、チャンティリー)で実行した。
【0126】
キナーゼ反応は、100mM EDTAを25μl添加することによって終了させた。アミノペプチダーゼM(50mU)を添加し、90分間、25℃でインキュベートした。次いで、実施例1におけるように、480での励起および520〜530nmでの発光を用いて蛍光を測定した。図4に示されている結果は、100μM ATPが含まれていた場合、蛍光アウトプットの減少は反応における酵素の量の増大に比例し、ATPの非存在下に変化がほとんど、またはまったく確認されなかったことを示す。
【0127】
別の実験では、キナーゼを阻害しない化合物(U0126)ではなく、チロシンキナーゼlckの非特異的阻害剤(スタウロスポリン)が、蛍光の変化を逆転しうることが示され、蛍光の変化がlckの酵素活性に起因することを確認した(図5)。
【実施例5】
【0128】
R110修飾ペプチド基質およびアミノペプチダーゼMを用いたSer/Thrホスファターゼ活性の検出:
STP−R−110によるPP2A活性。ホスファターゼ2A(PP2A)のホスファターゼ活性は、5μM ホスホペプチド基質ビス−STP−R110(RRAT(PO3)VA(配列番号:5)−R110−AV(PO3)TARR)、40mM トリス−HCl、pH7.5、および0.1mg/ml BSAを含有する50μl体積中で実行された。ホスファターゼ反応は、プロメガ(Promega)(ウィスコンシン州、マディソン)製の酵素セリン/スレオニンホスファターゼPP2Aを添加することによって開始された。各反応物に添加されるPP2Aの量は、0.0075ng(0.015m単位)から7.5ナノグラム(15m単位)の範囲で、1/2増分、および酵素を含有しない対照反応物で滴定した。ホスファターゼ反応は、96穴プレート中で室温に10分間、実行された。
【0129】
ホスファターゼ反応は、PP2Aの既知の阻害剤である、2μM オカダ酸((9,10−デエピチオ(Deepithio)−9,10−ジデヒドロアカンティホリシン) (ナトリウム塩) )25μlで終了させた。終了後、25mU/ウェルのアミノペプチダーゼMを40mM トリスバッファー、pH7.5、0.1mg/ml BSA中に添加した。アミノペプチダーゼ反応物を90分間、室温、25℃でインキュベートした。実施例1におけるように蛍光を測定した。図6における結果は、PP2Aが基質を効果的に脱リン酸化し、蛍光が反応における酵素の量に比例して増大したことを示す。
【0130】
アッセイ系におけるこの基質を用いるホスファターゼ活性の特異性もPP2Aの特異的阻害剤(オカダ酸)を用いて、かつPP2AではなくPP1を阻害することが知られているPP1阻害剤−2、およびこれもPP2Aを阻害しないスタウロスポリンを用いて検証された。本明細書中で述べられた同じアッセイプロトコールを、2ナノグラムのPP2A(4m単位)および5μMのホスホペプチド基質STP5の存在下に用いた。阻害剤ゼロから100nMまでの範囲の濃度で阻害剤を反応物に含めた。図7から明らかなように、PP2Aによる基質の脱リン酸化反応は、濃度を上昇させたオカダ酸の存在下によってのみ阻害され、PP1阻害剤−2またはスタウロスポリンの存在下には阻害されず、PP2Aに対するアッセイの特異性が確認された。PP2A活性を50%阻害するために必要とされるオカダ酸の濃度(IC50)は1nM未満であり、これはPP2Aのオカダ酸阻害に対する既知の値と合致する。
【0131】
ホスファターゼPP2Aも384穴フォーマットで試験した。384プレートにおける再現性は優れていることがわかった。
【0132】
PP1、PP2B、およびPP2Cの酵素活性も同じ基質を用いて、ただし各酵素に添加された適切な既知の共同因子とともに試験し、アッセイにおける最適な酵素活性を得た。得られた結果は、基質の蛍光アウトプットと脱リン酸化反応との間で優れた比例を示す。反応における酵素の量および各酵素の活性は、対応する活性剤の存在に依存した。さらに、特異的阻害剤の添加は、対応する酵素のホスファターゼ活性を無効にした。
【実施例6】
【0133】
ローダミン110修飾ペプチド基質およびアミノペプチダーゼIIを用いたホスファターゼ活性の検出:
STP−R110によるPP2A活性。PP2Aのホスファターゼ活性を、上記の実施例5において述べられた同じ条件を用いて試験したが、例外として、PP2Aを0.000001mUから0.01mUの範囲の濃度で試験し、酵素を含有しない対照反応をプラスした。反応は、10分間、96穴プレート中で室温で行い、オカダ酸(9,10−デエピチオ(Deepithio)−9,10−ジデヒドロアカンティホリシン)で終了させた。アミノペプチダーゼMの代わりに、25mUのアミノペプチダーゼIIを添加し、反応物を90分間、室温でインキュベートした。蛍光アウトプットを既述したように測定した。図8は、ホスファターゼ活性の増大により蛍光の増大が生じたことを示す。これらのデータは、任意のアミノペプチダーゼを本発明において使用できることを示す。
【実施例7】
【0134】
R110修飾ペプチド基質およびアミノペプチダーゼMを用いたチロシンホスファターゼ活性の検出:
PTK5−R110によるCD45およびPTP−1Bアッセイ。ホスファターゼ反応は、組換えヒト受容体タンパク質チロシンホスファターゼであるCD45、または可溶性チロシンホスファターゼであるPTP−1Bのいずれかを用いて行われた。反応は、1μMのホスホペプチド基質ビス−PTK5p−R110(YIY(PO3)GAFKRRG(配列番号:6)−R110−GRRKFAG(PO3)YIY)、40mM トリス−HCl、pH7.5、0.1mg/ml BSAを含有する50μl体積中で行われた。反応は、96穴プレート中、室温で10分間、増大させた濃度のホスファターゼ(0〜2単位のCD45、または0〜0.025単位のPTP−1B)の存在下に行われた。
【0135】
ホスファターゼ反応を、40mM トリス−HCl、pH7.5、0.1mg/ml BSA、300μM Na3VO4、および1mU/μlのアミノペプチダーゼMを含有する25μlの溶液で終了させた。反応物を室温でさらに90分間インキュベートした。蛍光を実施例1で既述されているように測定した。図9における結果は、蛍光アウトプットの増大が反応につき添加されたホスファターゼの量に比例していることを示す。このアッセイは、低濃度のホスファターゼに対してもきわめて感受性であった。同様のプロファイルが、YOP51を含む他のチロシンホスファターゼにより得られた。
【実施例8】
【0136】
R110修飾ペプチド基質およびアミノペプチダーゼMを用いたチロシンホスファターゼ活性の検出:
PTK5−R110によるPTP 1B活性。酵素チロシンホスファターゼPTP−1Bによるビス−PTK5p−R110の脱リン酸化反応に対する種々の阻害剤の効果を試験した。バナジン酸ナトリウム、(Na3VO4、PTP−1Bの特異的阻害剤)、およびスタウロスポリン(PTP−1BではなくPKAの既知の阻害剤)を試験した。阻害剤は、阻害剤ゼロから50μMまでの範囲の濃度で反応において含めた。ホスファターゼ反応は、PTB−1Bを添加することによって開始されたが、これは各反応物に25mU/ウェルで添加された。酵素を含有しない対照反応も実行した。ホスファターゼ反応は一般にPTP−1Bについて実施例7で述べられているように行われた。
【0137】
ホスファターゼ反応を、Na3VO4、および25mU/ウェルのアミノペプチダーゼMの溶液25μlで終了させた。反応物を室温で60分間インキュベートした。蛍光を既述されているように測定した。図10における結果は、PTB−1Bによる基質の脱リン酸化反応は、濃度を上昇させたNa3VO4存在下においてのみ阻害され、スタウロスポリンの存在下には阻害されなかったことを示す。Na3VO4の濃度を上昇させることにより蛍光アウトプットの減少が生じ、PTP 1B酵素活性の阻害を示したが、スタウロスポリンの量の増大とともに蛍光アウトプットが無変化であったため、スタウロスポリンには効果がなかった。
【実施例9】
【0138】
ルシフェリン修飾ペプチド基質およびアミノペプチダーゼMを用いたSer/Thrキナーゼの検出:
LRRASLG−(ルシフェリン)によるPKAアッセイ。タンパク質キナーゼアッセイは、室温、96穴プレート中の50μl体積中、50μMでのペプチド基質LRRASLG−ルシフェリン、および実施例1において述べられたように反応バッファーにおけるタンパク質キナーゼAの異なる酵素濃度(0.001から1単位)で行われる。反応は、20分後に5分間、70℃で加熱不活性化によって終了される。反応混合物は室温に冷却され、40mM トリスHCl、pH7.5、および0.1mg/ml BSA中50mU/μlのアミノペプチダーゼMを含有する25μlの検出バッファーである。反応は、2.5μMの最終濃度でアクチノニンを添加することによって最適な終了の前にさらに60分間室温に維持される。25μlの安定グロー(steady glow)バッファー(プロメガ社(Promega Corp.))中100μg/mlでルシフェラーゼ(プロメガ社(Promega Corporation))が添加され、次いでルミネセンスが30分時点でオリオンプレート照度計、ベルトホールドディテクションシステムズ(Berthold Detection Systems)(ドイツ、フォルツハイム(Pforzheim))で測定される。酵素活性の発現は、実施例1に示されている蛍光標識基質で述べられているものと同様であること、すなわち、酵素濃度または活性の増大に応じてルミネセンスアウトプットの減少が予想される。
【0139】
本発明の異なる可能な特徴およびこれらの特徴を組合わせることができるさまざまな方法を例示するために種々の好ましい実施形態が示され、上述されていることが理解される。さまざまな方法で上記実施例の異なる特徴を組合わせることは別として、他の変形も本発明の範囲内で考えられる。本発明は、上述された好まれる実施形態に限定されることは意図されず、以下に詳述された特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図されている。したがって、本発明は、文字どおりに、または同様な意味合いでこれら特許請求の範囲の範囲内にあるすべてのほかの実施形態を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】反応物に添加されるキナーゼが滴定されたセリン/スレオニンタンパク質キナーゼアッセイからの検出アウトプットを示すグラフである。検出アウトプットは相対蛍光強度単位(RFU)で示されている。
【図2】特定の阻害剤の存在下のセリン/スレオニンタンパク質キナーゼアッセイからのRFUでの検出アウトプットを示すグラフである。
【図3】アミノメチルクマリン標識ペプチド基質を用いたセリン/スレオニンタンパク質キナーゼアッセイからのRFUでの検出アウトプットを示すグラフである。
【図4】タンパク質チロシンキナーゼアッセイからのRFUでの検出アウトプットを示すグラフである。
【図5】特定の阻害剤の存在下のタンパク質チロシンタンパク質キナーゼアッセイからのRFUでの検出アウトプットを示すグラフである。
【図6】反応物に添加されるホスファターゼが滴定されたセリン/スレオニンタンパク質ホスファターゼアッセイからのRFUでの検出アウトプットを示すグラフである。
【図7】特定の阻害剤の存在下のセリン/スレオニンタンパク質ホスファターゼアッセイからのRFUでの検出アウトプットを示すグラフである。
【図8】図1−7で使用されているアミノぺプチダーゼとは異なるアミノぺプチダーゼ(アミノぺプチダーゼII)を用いたセリン/スレオニンタンパク質ホスファターゼアッセイからのRFUでの検出アウトプットを示すグラフである。
【図9】反応物に添加されるホスファターゼが滴定されたタンパク質チロシンホスファターゼアッセイからのRFUでの検出アウトプットを示すグラフである。
【図10】特定の阻害剤の存在下のタンパク質チロシンホスファターゼアッセイからのRFUでの検出アウトプットを示すグラフである。
【配列表】





















【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のトランスフェラーゼ活性を検出するための方法であって、前記方法は、
(A)前記試料を、基質およびリン酸基ドナーとリン酸基アクセプタの少なくとも1つと接触させるものであって、前記基質がレポーター化合物およびアミノ酸を含み、
(B)非リン酸化ペプチド基質を第1の速度で切断し、リン酸化ペプチド基質を第2の速度で切断するペプチダーゼを添加し、および、
(C)前記レポーター化合物のアウトプットを検出すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記レポーター化合物が、前記ぺプチド基質のアミノ酸に結合されていない場合に比較すると前記ペプチド基質の少なくとも1つのアミノ酸に結合している場合に、異なるアウトプット特性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レポーター化合物が蛍光発生化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記蛍光発生化合物が、ローダミン110およびアミノメチルクマリンの少なくとも1つから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記レポーター化合物が光発生化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチダーゼの添加が、前記基質の末端から前記基質を加水分解するペプチダーゼの添加を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ペプチダーゼの添加が、前記ペプチド基質のアミノ末端から前記基質を加水分解するペプチダーゼの添加を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ペプチダーゼの添加が、前記基質のカルボキシ末端から前記ペプチド基質を加水分解するペプチダーゼの添加を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
検出される前記トランスフェラーゼがキナーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記基質がリン酸基アクセプタである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
添加される前記基質がリン酸基ドナーである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
検出される前記トランスフェラーゼがホスファターゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
添加される前記基質がリン酸基ドナーである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
添加される前記基質がリン酸基アクセプタである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記基質を固体担体に結合させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記基質が、前記基質上の第1の官能基および前記固体担体上の第2の官能基によって前記固体担体に結合される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
試料のトランスフェラーゼ活性を検出するための方法であって、前記方法は、
(A)前記試料を、基質およびリン酸ドナーとリン酸アクセプタの少なくとも1つと接触させるものであって、前記基質が蛍光発生レポーター化合物およびアミノ酸を含み、
(B)非リン酸化ペプチド基質を第1の速度で切断し、リン酸化ペプチド基質を第2の速度で切断するアミノペプチダーゼMを添加し、および、
(C)前記レポーター化合物のアウトプットを検出するスこと、
を含む方法。
【請求項18】
検出される前記トランスフェラーゼがキナーゼを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
検出される前記トランスフェラーゼがホスファターゼを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
トランスフェラーゼ反応における変化を検出するための方法であって、前記方法は、
(A)前記トランスフェラーゼが活性である条件下にレポーター化合物およびアミノ酸を含む基質に被験物質を接触させ、
(B)非リン酸化ペプチド基質を第1の速度で切断し、リン酸化ペプチド基質を第2の速度で切断するペプチダーゼで前記基質を切断し、および、
(C)前記レポーター化合物のアウトプットを検出すること、
を含む方法。
【請求項21】
前記被験物質と接触されていない対照試料のアウトプットと比較されたアウトプットの変化が、前記トランスフェラーゼ反応の変化の尺度である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記レポーター化合物が蛍光発生化合物を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記レポーター化合物が光発生化合物を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
ペプチダーゼの添加が、前記基質の末端から前記基質を加水分解するペプチダーゼの添加を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
ペプチダーゼの添加が、前記基質のアミノ末端から前記基質を加水分解するペプチダーゼの添加を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ペプチダーゼの添加が、前記ペプチド基質のカルボキシ末端から前記基質を加水分解するペプチダーゼの添加を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
トランスフェラーゼ反応の変化を検出するための方法であって、前記方法は、
(A)前記トランスフェラーゼが活性である条件下に蛍光発生レポーター化合物およびアミノ酸を含む基質に被験物質を接触させ、
(B)非リン酸化ペプチド基質を第1の速度で切断し、リン酸化ペプチド基質を第2の速度で切断するアミノペプチダーゼMで前記基質を切断し、および、
(C)前記レポーター化合物のアウトプットを検出すること、
を含む方法。
【請求項28】
トランスフェラーゼ反応の前記変化がキナーゼ反応の変化である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
トランスフェラーゼ反応の前記変化がホスファターゼ反応の変化である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
試料のトランスフェラーゼ活性を検出する方法であって、
(A)それに共役したレポーター化合物を有する基質を提供し、
(B)前記試料を含有する溶液に多量の前記基質を添加し、
(C)トランスフェラーゼ活性が起こるのに十分な時間、前記試料が活性である条件下に、前記基質と前記試料をインキュベートし、
(D)前記試料を含有する前記溶液にペプチダーゼを添加し、
(E)前記レポーター化合物のアウトプットを検出すること、
を含む前記方法。
【請求項31】
ステップ(A)において、それに共役した蛍光分子を有する基質が提供される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(A)において、それに共役した光発生分子を有する基質が提供される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記トランスフェラーゼ反応の終了をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記ペプチダーゼ反応の終了をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記基質を固体担体に結合することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記基質が、前記基質上の第1の官能基および前記固体担体上の第2の官能基によって前記固体担体に結合される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
トランスフェラーゼ活性を測定するためのキットであって、前記キットが、
(A)レポーター化合物を含む基質と、
(B)リン酸基ドナーおよびリン酸基アクセプタの少なくとも1つと、
(C)前記トランスフェラーゼの酸素活性を維持するバッファーと、および、
(D)非リン酸化ペプチド基質を第1の速度で切断し、リン酸化ペプチド基質を第2の速度で切断するペプチダーゼと
を含むキット。
【請求項38】
前記基質がキナーゼのための基質を含む、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
前記キットがトランスフェラーゼをさらに含む、請求項37に記載のキット。
【請求項40】
前記基質がリン酸のための基質を含む、請求項37に記載のキット。
【請求項41】
前記ペプチダーゼがアミノペプチダーゼを含む、請求項37に記載のキット。
【請求項42】
前記レポーター化合物が蛍光発生化合物を含む、請求項37に記載のキット。
【請求項43】
前記レポーター化合物が光発生化合物を含む、請求項37に記載のキット。
【請求項44】
(A)レポーター化合物と、
(B)前記レポーター化合物の第1の側面上で前記レポーター化合物に結合された第1のトランスフェラーゼ基質と
を含むペプチド基質。
【請求項45】
前記第1のトランスフェラーゼ基質がホスホチロシンである、請求項44に記載のペプチド基質。
【請求項46】
前記レポーター化合物の第2の側面上で前記レポーター化合物に結合された第2のトランスフェラーゼ基質をさらに含むものであって、レポーター化合物がローダミン110であり、かつ前記第1および第2のトランスフェラーゼ基質がホスホチロシンである、請求項44に記載のペプチド基質。
【請求項47】
前記レポーター化合物の第2の側面上で前記レポーター化合物に結合された第2のトランスフェラーゼ基質をさらに含むものであって、レポーター化合物がローダミン110であり、かつ前記第1および第2のトランスフェラーゼ基質がAAXAY(PO3)AAである、請求項44に記載のペプチド基質。
【請求項48】
前記レポーター化合物の第2の側面上で前記レポーター化合物に結合された第2のトランスフェラーゼ基質をさらに含むものであって、レポーター化合物がローダミン110であり、かつ前記第1および第2のトランスフェラーゼ基質がGLSARRLである、請求項44に記載のペプチド基質。
【請求項49】
前記レポーター化合物の第2の側面上で前記レポーター化合物に結合された第2のトランスフェラーゼ基質をさらに含むものであって、レポーター化合物がローダミン110であり、かつ前記第1および第2のトランスフェラーゼ基質がGKLSARRLAKKである、請求項44に記載のペプチド基質。
【請求項50】
前記レポーター化合物の第2の側面上で前記レポーター化合物に結合された第2のトランスフェラーゼ基質をさらに含むものであって、レポーター化合物がローダミン110であり、かつ前記第1および第2のトランスフェラーゼ基質がGRVSAKRLAKKである、請求項44に記載のペプチド基質。
【請求項51】
前記レポーター化合物の第2の側面上で前記レポーター化合物に結合された第2のトランスフェラーゼ基質をさらに含むものであって、レポーター化合物がローダミン110であり、かつ前記第1および第2のトランスフェラーゼ基質がGRRKFAGYIYである、請求項44に記載のペプチド基質。
【請求項52】
前記レポーター化合物の第2の側面上で前記レポーター化合物に結合された第2のトランスフェラーゼ基質をさらに含むものであって、レポーター化合物がローダミン110であり、かつ前記第1および第2のトランスフェラーゼ基質がAV(PO3)TARRである、請求項44に記載のペプチド基質。
【請求項53】
前記レポーター化合物の第2の側面上で前記レポーター化合物に結合された第2のトランスフェラーゼ基質をさらに含むものであって、レポーター化合物がローダミン110であり、かつ前記第1および第2のトランスフェラーゼ基質がGRRKFAG(PO3)YIYである、請求項44に記載のペプチド基質。
【請求項54】
前記レポーター化合物が7−アミノ−4−メチルクマリンであり、かつ前記第1トランスフェラーゼ基質がLRRASLGである、請求項44に記載のペプチド基質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−508043(P2006−508043A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−523486(P2004−523486)
【出願日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/022315
【国際公開番号】WO2004/009540
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】