説明

トランス

【課題】トランスにおいて、製造コストの低減を図る。
【解決手段】トランス1は、磁性体基板2a、2bと、磁性体基板2a、2bに設けられたループ状コイル3a、3bと、を備える。磁性体基板2a、2bは、一つの表面に設けられた溝7と、各溝7に設けられた複数の配線8a、8bと、を有する。磁性体基板2a、2bの溝7が交差するように両基板2a、2bを対面させる。磁性体基板2a、2bの各配線8a、8b間を電気接続してループ状コイル3a、3bを形成し、両ループ状コイル3a、3bが磁性結合される。トランス1は、配線8a、8bの本数を変えることで、ループ状コイル3a、3bの巻数を調整することができ、コストの低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、スイッチング電源装置などに用いられるトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートパソコン等の小型携帯機器の小型化と高性能化を両立させるために、これら機器に使用される小型化されたトランスが知られている(例えば、特許文献1参照)。図8(a)(b)に、このようなトランス101の構成を示す。トランス101は、プリントコイル基板102、103と、これら基板上に設けられたコイル巻線104、105と、これら巻線に電流が流れたときに発生する磁束が通るコア106と、を備える。トランス101は、コイル巻線104、105がプリントコイル基板102、103の表面のみに形成されるため、小型化が可能である。しかし、トランス101は、コイル巻線104、105の巻数が大きくなると、コイル巻線104、105の大きさに対応する面積の大きいプリントコイル基板102、103が別に必要となってコスト高となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−260639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、異なるサイズの磁性体基板を用いることなくループ状コイルの巻数を自由に調整することができ、製造コストの低減を図ることができるトランスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、第1及び第2の磁性体基板と、前記磁性体基板に設けられた第1及び第2のループ状コイルと、を備えたトランスにおいて、前記磁性体基板は、一つの表面に設けられた一対の互いに平行な溝と、前記各溝に設けられた複数の配線と、をそれぞれ有し、前記第1及び第2の磁性体基板の各々の溝が互いに交差するように両基板を対面させ、前記第1及び第2の磁性体基板の各配線間を電気接続して前記第1及び第2のループ状コイルを形成し、両ループ状コイルが磁性結合されるものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のトランスにおいて、前記電気接続は、コンタクト部材を用いて成されるものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1に記載のトランスにおいて、前記電気接続は、立体回路配線を用いて成されるものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、溝に設置する配線の本数を変えることで、異なるサイズの磁性体基板を用いることなくループ状コイルの巻数を自由に調整することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、コンタクト部材が磁性体基板の内部に配置されて配線間の電気接続が成されるので、磁性体基板の外部に立体配線を設けなくてもよいために小型化が可能である。
【0010】
請求項3の発明によれば、立体回路配線が磁性体基板の表面に形成されるので、製造工程を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るトランスの外観図。
【図2】同トランスの透視図。
【図3】同トランスの平面図。
【図4】同トランスの簡略化されたループ状コイルを示す図。
【図5】(a)は同トランスがウェハーから製造される場合の各トランスにダイシングされる前のウェハーの平面図、(b)はダイシングされた後のウェハーの平面図。
【図6】同トランスの変形例の平面図。
【図7】(a)は本発明の第2の実施形態に係るトランスの外観図、(b)は同トランスの上記とは反対側から見た外観図。
【図8】(a)は従来のトランスの平面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るトランス1について、図1乃至図4を参照して説明する。図1及び図2に示されるように、トランス1は、第1及び第2の磁性体基板2a、2b上に、立体配線により第1及び第2のループ状コイル3a、3bを構成することにより製造されたものである。これらループ状コイル3a、3bは、磁性体基板2a、2bの各々に設けられた一対の互いに平行な溝7に設けられた配線8a、8bとコンタクト部材4a、4bにより構成される。ループ状コイル3a、3bは、接続部6a、6bを介して、外部からの給電を受ける電極パッド5a、5bとそれぞれ接続される。
【0013】
磁性体基板2a、2bは、焼結フェライト又は複合フェライト等の磁性材料で構成され、ザクリ加工によって1つの表面に溝7が形成され、溝7が形成されていない面同士を重ね合わせ、各々の溝7が互いに交差するように対面させて配置される。なお、第1及び第2の磁性体基板2a、2bの配置は、溝7が形成されている面同士を重ね合わせてもよいし、又は溝7が形成されている面と溝7が形成されていない面を重ね合わせてもよい。また、溝7は、ザグリ加工ではなく、磁性体基板2a、2bが積層構造で構成されることによって形成されてもよい。
【0014】
第1のループ状コイル3aは、第1及び第2の磁性体基板2a、2bの溝7にそれぞれ1本ずつ設けられた配線8aと、配線8a間を電気接続するコンタクト部材4aとから成る(濃い灰色で表示)。第2のループ状コイル3bは、第1及び第2の磁性体基板2a、2bの溝7にそれぞれ1本ずつ設けられた配線8bと、配線8b間を電気接続するコンタクト部材4bとから成る(薄い灰色で表示)。ループ状コイル3a、3bは、電流が流れて磁束が発生することにより、それぞれ1次側、2次側となって磁性結合される。配線8a、8bは、電気伝導性と加工性に優れた銅や銀、アルミニウム等から成り、プリント印刷又は電気めっき等によって形成される。
【0015】
コンタクト部材4a、4bは、電気伝導性と加工性に優れた銅や銀、アルミニウム等から成り、円柱状のスルーホールで形成され、第1及び第2の磁性体基板2a、2bの内部に配置される。電極パッド5a、5bは、磁性体基板2a、2bの電極パッド5a、5bを形成しない部分をレジストでマスクし、Cr−Cu−Ni合金などの導電性材料をスパッタすることで、薄板状に形成される。
【0016】
また、コンタクト部材4a、4bは、図3に示されるように、トランス1を平面視したとき、井桁状に配置された配線8a同士及び配線8b同士の各交点に配置される。ただし、コンタクト部材4a、4bは、電極パッド5a、5b近傍にある交点には配置されない。
【0017】
第1及び第2のループ状コイル3a、3bは、図4に示されるように、上記のようにコンタクト部材4a、4bが配置されることで、トランス1の中心を軸にしてそれぞれ1周ずつ巻いた螺旋形状となる。なお、第1のループ状コイル3aは、溝7に配線8aを複数本ずつ増やして、複数周巻いた螺旋形状としてもよい。同様に、第2のループ状コイル3bは、溝7に配線8bを複数本ずつ増やして、複数周巻いた螺旋形状としてもよい。
【0018】
上記構成のトランス1の製造方法について、図5(a)(b)を参照して説明する。図5(a)に示されるように、ウェハーから製造される場合、磁性体基板2a、2bのウェハーに、複数の溝7を形成し、その溝7に配線8a、8bを設置する。さらに、磁性体基板2a、2bのウェハー同士を溝7が交差するようにして張り合わせて複数個のトランス1を一括して形成した後、二点鎖線に沿ってダイシング加工を行う。これにより、図5(b)に示されるように、各々のトランス1を個片化することができる。
【0019】
上記のように構成されるトランス1においては、溝7に設置する配線8a、8bの本数を変えることで、異なるサイズの磁性体基板2a、2bを用いることなくループ状コイル3a、3bの巻数を自由に調整することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、コンタクト部材4a、4bが磁性体基板2a、2bの内部に配置されて配線8a、8b間の電気接続が成されるので、磁性体基板2a、2bの外部に立体配線を設けなくてもよいために小型化が可能となる。
【0020】
本実施形態の変形例に係るトランスを図6に示す。このトランス1においては、第1のループ状コイル3aは、磁性体基板2a、2bの溝7にそれぞれ1本ずつ設けられた配線8aから構成され、第2のループ状コイル3bは、磁性体基板2a、2bの溝7にそれぞれ2本ずつ設けられた配線8bから構成されている。その他の構成は上記第1の実施形態と同様である。コンタクト部材4a、4bは、第1のループ状コイル3aが1周巻いた螺旋形状、第2のループ状コイル3bが2周巻いた螺旋形状となるように、井桁状に配置された配線8a同士及び配線8b同士の交点に適宜配置される。この変形例に係るトランス1においても、上述のトランス1と同等の作用効果が得られる。
【0021】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るトランスについて、図7(a)(b)を参照して説明する。このトランス1においては、ループ状コイル3a、3bが配線8a、8bと立体回路配線11a、11bとから形成されており、その他の構成は上記第1の実施形態と同様である。立体回路配線11a、11bは、銅などの金属の電気めっきにより形成される。第1のループ状コイル3aは、配線8aの端部同士を立体回路配線11aが電気接続することで形成される(濃い灰色で表示)。第2のループ状コイル3bは、配線8bの端部同士を立体回路配線11bが電気接続することで形成される(薄い灰色で表示)。立体回路配線11a、11bが第1及び第2の磁性体基板2a、2bの表面に形成されるので、製造工程を簡素化することができる。
【0022】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、円柱状のコンタクト部材がトランス内に設置されて電気接続が成される構成のものを示したが、円筒状のコンタクト部材がトランス内に設置されて電気接続が成される構成のものであっても構わない。
【符号の説明】
【0023】
1 トランス
2a 第1の磁性体基板
2b 第2の磁性体基板
3a 第1のループ状コイル
3b 第2のループ状コイル
4a、4b コンタクト部材
7 溝
8a、8b 配線
11a、11b 立体回路配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の磁性体基板と、前記磁性体基板に設けられた第1及び第2のループ状コイルと、を備えたトランスにおいて、
前記磁性体基板は、一つの表面に設けられた一対の互いに平行な溝と、前記各溝に設けられた複数の配線と、をそれぞれ有し、
前記第1及び第2の磁性体基板の各々の溝が互いに交差するように両基板を対面させ、前記第1及び第2の磁性体基板の各配線間を電気接続して前記第1及び第2のループ状コイルを形成し、両ループ状コイルが磁性結合されることを特徴とするトランス。
【請求項2】
前記電気接続は、コンタクト部材を用いて成されることを特徴とする請求項1に記載のトランス。
【請求項3】
前記電気接続は、立体回路配線を用いて成されることを特徴とする請求項1に記載のトランス。

【図4】
image rotate

【図8】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate