説明

トリアリールメタンの製造プロセス

【課題】感光体層での使用に有用なトリアリールメタン化合物の改良された製造プロセスを提供する。
【解決手段】トリアリールメタン化合物の製造プロセスは、(a)アリールアセタールを電子の豊富なアリール化合物と共に反応混合物として供給するステップと、(b)酸触媒を前記反応混合物に添加するステップと、(c)前記酸触媒の存在下で前記アリールアセタールに前記電子の豊富なアリール化合物を反応させてトリアリールメタン化合物を生成するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、層状感光体(layered photoreceptor)デバイスなどの撮像部材に包含された抗酸化剤として有用な化合物、および改良されたその化学的製造プロセスに関する。撮像部材は、プリンタ、コピー機、スキャナ、ファクシミリを含み、デジタル、イメージ・オン・イメージなどのデバイスを含む、エレクトロフォトグラフィー、静電写真、電子写真などのデバイスで使用され得る。
【背景技術】
【0002】
電子写真、エレクトロフォトグラフィー撮像または静電写真撮像としても公知であるエレクトロフォトグラフィーにおいて、導電層上に光導電性絶縁層を含有するエレクトロフォトグラフィープレート、ドラム、ベルトなど(撮像部材または感光体)の表面は最初に、均一に静電的に帯電される。撮像部材は、次いで、活性化電磁放射(activating electromagnetic radiation)、例えば、光、のパターンに曝露される。光活性顔料によって発生した電荷は、印加された場の力の下で移動する。感光体を通じての電荷の移動は、静電潜像を残しながら、光導電性絶縁層の被照範囲に電荷を選択的に散逸させる。この静電潜像は次いで現像されて、光導電性絶縁層表面に逆の電荷に帯電された粒子を堆積させることによって可視像が形成され得る。得られた可視像は次いで、撮像部材から直接的または間接的に(例えば、転写または他の部材によって)印刷基材、例えば、透明シートまたは紙、に転写され得る。撮像プロセスは、再使用可能な撮像部材を用いて何回も反復され得る。
【0003】
さらに高度な光導電性感光体は、極めて特殊なコンポーネント層を含有する。例えば、エレクトロフォトグラフィー撮像システムで利用され得る多層感光体は、基材、アンダーコート層、任意の正孔遮断層または電荷遮断層、アンダーコート層および/または遮断層の上の電荷発生層(バインダ中の光発生材料、例えば、光活性顔料を含む)、ならびに電荷輸送層(バインダ中の電荷輸送材料を含む)の1つ以上を含み得る。追加の層、例えば、オーバーコート層またはカール防止バックコート層も含まれ得る。「感光体」という用語は一般に、「撮像部材」という用途と互換的に使用される。
【0004】
多層感光体で利用される光発生層(電荷発生層)としては例えば、フィルム形成ポリマーバインダ中に分散された無機光導電性粒子または有機光導電性粒子が挙げられる。無機または有機の光導電性材料は、連続的で均質な光発生層として形成され得る。
【0005】
光への曝露時に、発生した電荷は感光体を通じて移動される。電荷移動は電荷輸送層によって促進される。電荷が電荷輸送層を通じて移動される速度は、装置が動作できる速度に直接影響を及ぼす。装置速度(ppm)の所望の上昇を達成するために、感光体が電荷を移動させる能力も向上させる必要がある。したがってこれらの層での電荷輸送の向上は、より良好な感光体性能を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,265,990号明細書
【特許文献2】米国特許第5,891,594号明細書
【特許文献3】米国特許第5,709,974号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
摩損および摩耗からの保護を与えるために、感光体オーバーコート層は電荷輸送層の上に形成され得る。エレクトロフォトグラフィーコピー機、複写機およびプリンタの進歩によって、感光体がより厳密な条件および狭い動作限界を受けるので、撮像層の性能を改善して、保護をさらに改善するために各種の添加剤がオーバーコート層中に包含され得る。したがって感光体材料は、電荷発生特性および電荷輸送特性と、画像現像サイクル中の機械的摩損に耐えるための構造完全性および堅牢性とを示すことが必要とされる。このように、これらの感光体材料を効率的に合成するための改良されたプロセスへの要求が引き続き存在している。
【0008】
本明細書に示す実施形態により、感光体層での使用のための抗酸化剤と、上述の要求に対処するその製造のための改良された化学的プロセスが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態は、(a)アリールアセタールを電子の豊富なアリール化合物と共に反応混合物として供給するステップと、(b)酸触媒を反応混合物に添加するステップと、(c)トリアリールメタン化合物を生成するために、酸触媒の存在下でアリールアセタールを電子の豊富なアリール化合物と反応させるステップとを含む、トリアリールメタン化合物を生成するプロセスを含み得る。一実施形態において、上記のプロセスによって得たトリアリールメタンが提供される。別の実施形態において、基材と、基材上に配置されたアンダーコート層と、アンダーコート層上に配置された電荷発生層と、電荷発生層上に配置された電荷輸送層と、電荷輸送層上に配置され、上記のプロセスによって得たトリアリールメタン化合物を含むオーバーコート層とを含む、撮像部材が提供される。
【0010】
(a)ベンズアルデヒドジメチルアセタールを2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノールと共に反応混合物として供給するステップと、(b)スルホン酸を反応混合物に添加するステップと、(c)ビス−[2−メチル−4−(N−2−ヒドロキシエチル−N−エチル−アミノフェニル)]−フェニルメタンを生成するために、メタンスルホン酸の存在下でベンズアルデヒドジメチルアセタールを2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノールと反応させるステップとを含む、トリアリールメタン化合物を生成するプロセスを含み得る。
【0011】
(a)ベンズアルデヒドジメチルアセタールをN,N−ジエチル−3−メチルトルイジンと共に反応混合物として供給するステップと、(b)メタンスルホン酸を反応混合物に添加するステップと、(c)ビス−[2−メチル−4−(N,N−ジエチルアミノフェニル)]−フェニルメタンを生成するために、メタンスルホン酸の存在下でベンズアルデヒドジメチルアセタールをN,N−ジエチル−3−メチル−トルイジンと反応させるステップとを含む、トリアリールメタン化合物を生成するプロセスを含み得る。
【0012】
本実施形態のより良好な理解のために、添付図面への参照が行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態による多層エレクトロフォトグラフィー撮像部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態は、撮像部材、例えば、層状感光体デバイスとの使用のためのオーバーコート層で有用なトリアリールメタン化合物に関する。トリアリールメタンは、感光体の性能を維持するための抗酸化剤として使用される。スコロトロン帯電ユニットの下に位置する感光体範囲は、Aゾーン(28℃、相対湿度(RH)85%)からCゾーン(10℃、RH15%)への環境転換の間に、望ましくない黒色パッチを印刷する傾向がある。この発生は、「Cゾーンバンディング」として公知である。
【0015】
さらに詳細には、本実施形態は、Cゾーンバンディングを軽減するためにオーバーコート層中で抗酸化剤として使用されるトリアリールメタンと、反応時間を著しく短縮して、実質的に副生成物の生成を伴わずに生じるアルデヒドのアセタール誘導体を使用する、これらのトリアリールメタン化合物の合成のための改良された化学的プロセスに関する。
【0016】
従来、トリアリールメタン、例えば、ビス−[2−メチル−4−(N−2−ヒドロキシエチル−N−エチル−アミノフェニル)]−フェニルメタン(DHTPM)、ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン(BDETPM)、およびビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−4−ジエチルアミノフェニルメタン(TrisTPM)は、長い反応時間と困難な精製ステップを伴う、アリールアルデヒドと電子の豊富な(electron-rich)アリール化合物の過剰量との酸触媒縮合によって合成されてきた。さらに、反応は不完全であり、トリアリールメタンの低い収率をもたらした。例えば、DHTPMは、他のトリアリールメタンに勝るその改善された性能のために、主要な抗酸化剤候補として一般に選択され、硫酸およびメタンスルホン酸の存在下でのベンズアルデヒドの2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノールによる酸触媒縮合によって一般に合成される。
【0017】
【化1】

【0018】
合成は、過剰な開始材料、2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノールのために、18時間を超える反応時間、水の共沸除去および精製の必要を伴う。本合成は試験されて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってベンズアルデヒドが検出されたために18時間後に不完全であることが判明した。合成はわずか約67%の収率を与えた。
【0019】
本実施形態は、従来使用されたアルデヒドのアセタール誘導体を使用することによって、トリアリールメタンを合成する改良された工程を提供し、工程において反応時間は18時間超から12時間未満に著しく短縮されて、アリール型副生成物の生成を実質的に伴わない。加えてアセタール誘導体は、必要ならば合成反応の前にインサイチュー(in situ)で調製され得る。
【0020】
アリールアルデヒドに代わるアリールアセタールの使用は、反応時間の著しい短縮につながることが見出されている。これは、反応中に生成された化学中間体および反応化合物の両方からの、水よりも容易なアルコールまたはジオールの除去に起因し得る。工程は、反応ステップ中に揮発性反応成分および/または副生成物を実質的に除去する。例えば、このような揮発性反応成分および/または副生成物としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、およびその混合物が挙げられる。
【0021】
例えば、DHTPMを生成する際のベンズアルデヒドに代わってのベンズアルデヒドジメチルアセタールの使用は、トリアリールメタン合成の反応時間の著しい短縮につながる。実施形態において、反応時間は約41時間から約24時間に短縮される。アセタールを使用するDHTPMの合成反応を以下に示す:
【0022】
【化2】

【0023】
上の反応では、2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノールの量は約0.5当量減少されて、このことは得られた生成物の容易な精製につながる。反応において、アリールアセタールの、電子の豊富なアリール化合物に対するモル比は、約1:2〜1:5である。一実施形態において、アリールアセタールがArCHRからなる群より選択され、Arは、非置換であるか、あるいはハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、シアノ、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ナフチル、アミノ、ニトロおよびスルホ、ならびにその混合物からなる群より選択される1個または複数の置換基によって置換されるか、のどちらかの、フェニル、ナフチル、スチルベニル、ビフェニル、アントリル、チエニル、カルバゾリル、キノリル、ピレニル、ペリレニル、およびトリフェニレニルからなる群より選択されるアリールであり;RおよびRが炭素数1〜6(以下C〜Cのように略記する)のアルコキシおよびC〜Cω−ヒドロキシアルコキシであり、RおよびRは同じであるかまたは異なることがあり、RおよびRは、5員環または6員環(それぞれ1,3−ジオキソランまたは1,3−ジオキサン)において結合される。特定の実施形態において、アリールアセタールは、ベンズアルデヒドジメチルアセタール、ベンズアルデヒドジエチルアセタール、ベンズアルデヒドジ−n−プロピルアセタール、ベンズアルデヒドジ−i−プロピルアセタール、およびその混合物からなる群より選択され得る。電子の豊富なアリール化合物は、以下の1つより選択され得る:
【0024】
【化3】

【0025】
上記式中、RはHあるいはヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、シアノ、アルキル、シクロアルキルフェニル、ナフチル、ニトロおよびスルホ、ならびにその混合物からなる群より選択される1個または複数の置換基によって置換され;RおよびRはH、アルキル(C〜C)、アルキルエーテル、アリールアルキル、ω−ヒドロキシアルキル、ω−アミノアルキル置換基、およびその混合物である。例えば、電子の豊富なアリール化合物は、2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノール、N,N−ジエチル−3−メチルトルイジン、およびその混合物からなる群より選択され得る。実施形態において、2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノールは、窒素上に炭素数が10までの可撓性の(flexible)置換基を有し得る。さらなる適切なアリール化合物としては、これに限定されるわけではないが、パラ置換アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、末端に官能基、例えば、−OH、NH、NHR(Rは炭素数6までである)を有するアリール化合物などが挙げられる。Rは、同じ条件下でアリール、例えば、パラ置換であってよく、SH、アンモニウム、シアノであってもよく、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素を含むヘテロ原子、および同様のヒドロキシ基、アミン基、アンモニウム基、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、サルフェート基、スルホナート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アジド基、アゾ基、シアナート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基など、およびその混合物を有することが可能であり、2つ以上の置換基が結合されて環を形成することができる。実施形態において、アリールアセタールは酸触媒の存在下で電子の豊富なアリール化合物の過剰量と反応させられる。反応において、酸は約2以下のpKaを有する(HO中で測定)。実施形態において、反応ステップの温度は約50〜150℃である。
【0026】
別の実施形態において、例えば、アセタールが市販されていない場合、アセタールはインサイチューで生成され得る。例えば、ベンズアルデヒドをトリエチルオルトホルメートおよび触媒量のメタンスルホン酸によって処理することにより、ベンズアルデヒドジエチルアセテートが生成される。2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノールの続いての添加は次に、以下に示すようにDHTPMの生成をもたらす:
【0027】
【化4】

【0028】
インサイチュー反応において、アリールアルデヒドの開始量はオルトホルメートの開始量に対して、約1:1〜約1:10のモル比を有し得る。オルトホルメートは、アルキルがC〜Cを有するトリアルキルオルトホルメートであり得る。特定の実施形態において、オルトホルメートは、トリエチルオルトホルメートなどである。酸触媒は、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸など、およびその混合物からなる群より選択され得る。酸触媒は、トリアリールメタンの続いての生成において、アリールアセタールと電子の豊富なアリール化合物とを反応させるために使用される酸触媒と同じ酸触媒、または異なる酸触媒から選択され得る。アリールアルデヒドは、ArCHOであってよく、ここでArは、非置換であるか、あるいはハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、シアノ、アルキル、シクロアルキルフェニル、ナフチル、アミノ、ニトロおよびスルホ、およびその混合物からなる群より選択される1個または複数の置換基によって置換されるか、のどちらかである、フェニル、ナフチル、スチルベニル、ビフェニル、アントリル、チエニル、カルバゾリル、キノリル、ピレニル、ペリレニル、およびトリフェニルエニルからなる群より選択される。
【0029】
別の実施形態において、インサイチュー反応は酸触媒の存在下でのアリールアルデヒドとアルコールとの間であり得る。反応混合物における、アルコールに対するアリールアルデヒドのモル比は、約1:2〜約1:50であり得る。
【0030】
関連するトリアリールメタン、Tris−TPMの調製では、トリエチルオルトホルメートが脱水剤として添加され、反応時間が著しく短縮されることが示された。トリエチルオルトホルメートは、インサイチュー乾燥剤として作用することが可能であり、反応の著しい速度向上の理由と考えられる。
【0031】
【化5】

【0032】
トリエチルオルトホルメートがベンズアルデヒドに基づくDHTPM反応に添加されると、反応時間が著しく短縮される。しかしながら、以前に生成されなかった不純物がHPLCによって検出された。
【0033】
【化6】

【0034】
この不純物は、最終収率において約15%の量で存在した。不純物およびDHTPMのUV可視スペクトルは同様であり、2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノールがトリエチルオルトホルメートと競合的に反応することが示唆されるが、これはまだ実験的に確認されていない。反応が100℃に達した15分後に採取されたサンプルのHPLC分析で、検出可能な量のベンズアルデヒドが存在しないことが示された。
【0035】
オルトホルメートは、酸性条件下でアルデヒドと反応してアセタールを生成することが公知である。対照実験として、ベンズアルデヒドを2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノールの添加前にトリエチルオルトホルメートおよび酸触媒と反応させると、DHTPMが生成され、不純物は検出されなかった。したがってアセタールはインサイチューで、例えば、ベンズアルデヒドジエチルアセテートの場合に、ベンズアルデヒドをトリエチルオルトホルメートおよび触媒量のメタンスルホン酸で処理することによって生成され得る。2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノールの続いての添加は次いで、DHTPMの生成をもたらす。
【0036】
本発明のさらなる実施形態により、少なくとも基材層と、基材層上に配置された撮像層と、撮像層上に配置された任意のオーバーコート層とを一般に含む、エレクトロフォトグラフィー撮像部材が提供される。撮像部材は、撮像層、電荷輸送層および電荷発生層を含む。撮像部材はエレクトロフォトグラフィーの撮像工程で利用することが可能であり、そこでは導電層上に光導電性絶縁層を含有するエレクトロフォトグラフィープレート、ドラム、ベルトなど(撮像部材または感光体)の表面が最初に、均一に静電的に帯電される。撮像部材は次いで、活性化電磁放射、例えば、光、のパターンに曝露される。放射は、静電潜像を残しながら、光導電性絶縁層の被照区域に電荷を選択的に散逸させる。この静電潜像は次いで現像されて、光導電性絶縁層表面に逆に帯電された粒子を蒸着させることによって可視像が形成され得る。得られた可視像は次いで、撮像部材から直接的または間接的に(例えば、転写または他の部材によって)印刷基材、例えば、透明シートまたは紙に転写され得る。撮像工程は、再使用可能な撮像部材を用いて何回も反復され得る。
【0037】
代表的な静電写真複写装置、例えば、感光体を使用するエレクトロフォトグラフィー撮像システムにおいて、コピーされる原稿の光像が撮像部材上に静電潜像の形で記録され、次に現像剤混合物の塗布によって潜像が可視化される。中にトナー粒子が含有された現像剤は静電潜像と接触させられて、電荷保持表面を有する静電撮像部材上で画像を現像する。現像されたトナー画像は次いで、転写部材を介して画像を受像する紙などのコピー基材に転写され得る。
【0038】
あるいは現像された画像は別の中間転写デバイス、例えば、ベルトまたはドラムに転写部材を介して転写され得る。画像は次いで別の転写部材によって紙に転写され得る。トナー粒子は熱および/または圧力によって紙に転写定着または融着され得る。最終受像媒体は紙に限定されない。それは布、ポリマーあるいは金属の伝導性または非伝導性などの各種の基材であり得る。それは各種の形、シートまたは湾曲表面であり得る。トナーが撮像部材に転写された後に、次いでトナーは高圧ローラまたは融着部品によって熱および/または圧力の下で転写定着され得る。
【0039】
撮像部材の実施形態を図1に示す。基材32は任意の導電層30を有する。任意のアンダーコート層34も、アンダーコート34層上の任意の接着層36と同様に、導電層の上に塗布され得る。電荷発生層38は、接着層36と電荷輸送層40との間に示されている。任意の接地ストリップ41は、電荷発生層38および電荷輸送層40を導電層30に操作可能に接続する。カール防止バックコート層33は、電気活性層と対向する基材32側に塗布されて、撮像部材に所望の平坦性を与える。撮像部材の他の層としては例えば、電荷輸送層40のすぐ上の、摩損および摩耗からの保護を与えるための任意のオーバーコート層42も挙げられる。
【0040】
基材32の上の導電性接地面30は通例、薄い金属層、例えば、10ナノメートル厚のチタンコーティングであり、真空蒸着工程またはスパッタリング工程によって基材上に蒸着され得る。層34、36、38、40および42は、1つ以上の溶媒を含む溶液の湿潤コーティング層として、基材32の導電性接地面30の表面上へ別々に連続して蒸着されることができ、各層は次のコーティング層の蒸着前に完全に乾燥される。カール防止バックコート層33も溶液コーティングされ得るが、カールのバランスを保って、撮像部材のフラッシュ光を与えるために基材32の裏側に塗布される。
【0041】
実施形態において、本発明の撮像部材は、基材と、基材上に配置された電荷発生層と、電荷発生層の上に配置された少なくとも1つの電荷輸送層とを含む。オーバーコート層は電荷輸送層の上に配置されて、撮像層を保護する。オーバーコート層は、抗酸化剤として使用するためのトリアリールメタン化合物を含む。トリアリールメタン化合物は、アリールアセタールに電子の豊富なアリール化合物を反応させることによって得られ、このことは従来の合成よりもはるかに短時間で実質的に完全な合成を与える。さらなる実施形態において、オーバーコート層に含まれるトリアリールメタンは、ベンズアルデヒドジメチルアセタールに2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノールを反応させることによって得たDHTPMである。他の実施形態としては、同様の合成によって得られ、オーバーコート層抗酸化剤として使用されるBDTPMおよびTrisTPMを含むオーバーコート層が挙げられる。
【0042】
さらなる実施形態において、オーバーコート層は、酸触媒の存在下でのアリールアルデヒドとオルトホルメートとの反応によってアリールアセタールを最初に合成することと、次に電子の豊富なアリール化合物、例えば、2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノールを添加することとによって得られるトリアリールメタン化合物を含み得る。
【0043】
オーバーコート層は、ナノ粒子、例えば、シリカ、金属酸化物、ACUMIST(ろう様(waxy)ポリエチレン粒子)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの分散物を含み得る。ナノ粒子は電荷輸送層の潤滑性、耐スクラッチ性、および耐摩耗性を向上させるために使用され得る。
【0044】
いずれの適切な従来の技法もオーバーコート層混合物を生成して、その後に撮像層に塗布するために利用され得る。代表的な塗布技法としては例えば、押出コーティング、ドローバーコーティング、ロールコーティング、ワイヤ巻付ロッドコーティングなどが挙げられる。オーバーコート層は、1回のコーティングステップまたは複数のコーティングステップで形成され得る。蒸着コーティングの乾燥は、乾燥機による乾燥、赤外線放射乾燥、空気乾燥などのいずれの適切な従来技法によっても行われ得る。乾燥されたオーバーコート層の厚さは、利用された帯電、洗浄、現像、転写などのシステムの摩損性に応じて変化することがあり、約15マイクロメートルまでの範囲に及び得る。これらの実施形態において、厚さは約3マイクロメートル、および約10マイクロメートルであり得る。撮像部材の他の層の説明は以下のように与えられる。
【0045】
撮像部材のために選択された基材層の例示的な例は、不透明または実質的に透明であり、必要な機械的特性を有するいずれの適切な材料を含んでもよい。したがって基材は、無機または有機のポリマー材料、例えば、市販のポリマーであるMYLAR、MYLAR含有チタンなどを含む絶縁材料の層、半導電性表面層を有する有機材料または無機材料、例えば、インジウムスズ酸化物、またはその上に配置されたアルミニウムの層、あるいはアルミニウム、アルミニウム処理ポリエチレンテレフタレート、チタン処理ポリエチレンクロム、ニッケル、真鍮などを含む導電性材料を含み得る。基材は可撓性であり、継目がなく、または剛性であり、例えば、プレート、円筒状ドラム、巻物状、エンドレス可撓性ベルトなどの多くの各種形状を有し得る。一実施形態において、基材は継目のない可撓性ベルトの形である。カール防止バックコーティングは、基材の裏側に塗布される。
【0046】
基材層の厚さは経済的な考慮事項を含む多くの因子によって変わり、したがってこの層は、例えば、3,000マイクロメートルを超える実質的な厚さであり得るか、または部材に著しい悪影響のない限り最小限の厚さであり得る。実施形態において、この層の厚さは約75マイクロメートル〜約300マイクロメートルである。
【0047】
さらに、基材は一部の実施形態では、公知のアンダーコート層、例えば、適切なフェノール樹脂、フェノール化合物、フェノール樹脂およびフェノール化合物の混合物、TiO/SiOなどの酸化チタン、酸化ケイ素混合物を含むアンダーコート層をその上に含有し得る。
【0048】
実施形態において、アンダーコート層はバインダ成分も含有し得る。バインダ成分の例としては、これに限定されるわけではないが、ポリアミド、塩化ビニル、酢酸ビニル、フェノール樹脂、ポリウレタン、アミノプラスチック、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル系、スチレンアクリルコポリマー、メタクリル系、塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール、エポキシ、シリコーン、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース、エチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、デンプン、酢酸デンプン、アミノデンプン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ジルコニウムキレート化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物、有機チタニル化合物、シランカップリング剤、およびその組合せが挙げられる。実施形態において、バインダ成分は、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、グリコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリルコポリマー、およびその混合物からなる群より選択される部材を含む。
【0049】
実施形態において、アンダーコート層は任意の光散乱粒子を含有し得る。さまざまな実施形態において、光散乱粒子はバインダとは異なる屈折率を有し、約0.8μmを超える数平均粒子サイズを有する。さまざまな実施形態において、光散乱粒子は、エスピリット・ケミカル社(Espirit Chemical Co.)より市販されているアモルファスシリカP−100である。さまざまな実施形態において、光散乱粒子は、アンダーコート層の総重量の約0%〜約10%の量で存在する。
【0050】
実施形態において、アンダーコート層は各種の着色料を含有し得る。さまざまな実施形態において、アンダーコート層は、これに限定されるわけではないが、アゾ顔料、キノリン顔料、ペリーレン顔料、インディゴ顔料、チオインディゴ顔料、ビスベンズイミダゾール顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キノリン顔料、レーキ顔料、アゾレーキ顔料、アントラキノン顔料、オキサジン顔料、ジオキサジン顔料、トリフェニルメタン顔料、アズレニウム染料、スクアリウム染料、ピリリウム染料、トリアリールメタン染料、キサンタン染料、チアジン染料、およびシアニン染料を含む有機顔料および有機染料を含有し得る。さまざまな実施形態において、アンダーコート層としては無機材料、例えば、アモルファスケイ素、アモルファスセレン、テルル、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、硫化アンチモン、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、および硫化亜鉛、ならびにその組合せが挙げられる。実施形態において、アンダーコート層の厚さは約0.1μm〜30μmであり得る。
【0051】
実施形態において、本発明の光導電性撮像部材は、一連の支持基材と、アンダーコート層と、接着層と、電荷発生層と、電荷輸送層とを含み得る。例えば、接着層は、例えば、約75,000の重量平均分子量Mおよび約40,000の数平均分子量Mを有するポリエステルを含み得る。
【0052】
実施形態において、光導電性撮像部材はさらに、約70,000のMおよび約35,000のMを有するポリエステルの接着層を含む。接着層はいずれの適切な材料、例えば、いずれの適切なフィルム形成ポリマーも含み得る。代表的な接着層材料としては、例えば、これに限定されるわけではないが、コポリエステル樹脂、ポリアリレート、ポリウレタン、樹脂のブレンドなどが挙げられる。実施形態では、接着層コーティング溶液を生成するために、いずれの適切な溶媒も選択され得る。代表的な溶媒は、これに限定されるわけではないが、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン、モノクロロベンゼン、およびその混合物などが挙げられる。
【0053】
一般に電荷発生層の厚さは、他の層の厚さおよび電荷発生層に含有される光発生材料または光発生顔料の量を含む多数の因子によって変わる。したがってこの層は、例えば、顔料が約30〜約75体積パーセントで存在しているときに、例えば、約0.05マイクロメートル〜約5マイクロメートルの、または約0.25マイクロメートル〜約2マイクロメートルの厚さであり得る。実施形態におけるこの層の最大厚は主に、感光性、電気特性および機械的考慮事項などの因子に左右される。各種の適切な量で、例えば、約1〜約50質量パーセントまたは約1〜約10質量パーセントで存在する電荷発生層バインダ樹脂は、多数の公知のポリマー、例えば、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(塩化ビニル)、ポリアクリレートおよびメタクリレート、塩化ビニルおよび酢酸ビニルのコポリマー、フェノキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、ポリスチレンなどから選択され得る。
【0054】
実施形態において、電荷輸送層は電荷輸送成分およびバインダを含む。電荷輸送層は厚さが約10μm〜約50μmであり得る。電荷輸送層のために選択されたバインダ材料の例としては、その開示が参照により本明細書に完全に組み入れられる、米国特許第3,121,006号に記載されているような成分が挙げられる。ポリマーバインダ材料の具体例としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(シクロオレフィン)、およびエポキシ、ならびにそのランダムコポリマーまたは交互コポリマーが挙げられる。実施形態において、電気的に不活性なバインダは、例えば、約20,000〜約100,000の分子量Mを、さらに具体的には、約50,000〜約100,000の分子量Mを持つポリカーボネート樹脂から構成される。ポリカーボネートの例は、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−ジフェニレン)カーボネート(ビスフェノール−A−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−シクロヘキシリデンジフェニレン)カーボネート(ビスフェノール−Z−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−3,3’−ジメチル−ジフェニル)カーボネート(ビスフェノール−C−ポリカーボネートとも呼ばれる)などである。実施形態において、電荷輸送層、例えば、ホール(正孔)輸送層は、約10〜55マイクロメートルの厚さを有し得る。実施形態において、電気的に不活性なバインダは、約20,000〜約100,000の、または約50,000〜約100,000の分子量を有するポリカーボネート樹脂から構成される。一般に(電荷)輸送層は、約10〜約75質量パーセントの電荷輸送材料を、または約35〜約50質量パーセントのこの(電荷輸送)材料を含有する。
【0055】
実施形態において、少なくとも1つの電荷輸送層は約1〜約7の層を含む。例えば、実施形態において、少なくとも1つの電荷輸送層は、上部の電荷輸送層および底部の電荷輸送層を含み、そこで底部層は電荷発生層と上部層との間に位置する。
【実施例】
【0056】
[実施例1]
2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノール(108g、106mL、600mmol、2.0当量)、n−ブタノール(105mL)、ベンズアルデヒドジメチルアセタール(45mL、300mmol、1当量)、およびメタンスルホン酸(3.9mL、60mmol、0.2当量)を、磁気撹拌、ディーン・スターク装置および還流凝縮器を装備した500mLの丸底フラスコ(RBF)内で合せた。反応混合物は淡黄色であった。
【0057】
混合物を油浴(温度=120℃)で加熱して、MeOHをディーン・スターク・トラップ内に回収した(11.3mL)。反応は、12時間未満で完了した。HPLC分析は以下の結果を与えた(12時間、未精製):残留する2−(N−エチル−m−トルイジノ)−エタノール(10.4%)、生成物(86%)。
【0058】
反応物を室温まで冷却して、NaOH(1M水溶液、60mL)を添加した。混合物を室温で20分間撹拌した。NHCl(飽和水溶液、20mL)を添加して(pH6〜7)、混合物をEtOAc(400mL)で希釈し、分液漏斗に移した。有機物を水(2×300mL)および塩水(400mL)で洗浄して、乾燥(MgSO)させ、濾過し、濃縮して粘性琥珀色油とした。残留するBuOHおよび未反応の開始材料を高真空蒸留(<1mmHg、150℃)によって除去して、琥珀色のガラス様物質(117.2g、87%)を得た。サンプルを高温のままアルミ箔トレーに移して、固化し、黄色のガラス様物質とした。破砕および粉砕後にオフホワイト色の粉末を得た。生成物は、H NMR、13C NMR、HPLC、熱重量測定分析(TGA)、および示差走査熱量計(DSC)によって特徴づけられた。サンプル純度は、HPLCによって約97%と決定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アリールアセタールを電子の豊富なアリール化合物と共に反応混合物として供給するステップと、
(b)酸触媒を前記反応混合物に添加するステップと、
(c)前記酸触媒の存在下で前記アリールアセタールに前記電子の豊富なアリール化合物を反応させてトリアリールメタン化合物を生成するステップと、
を含む、トリアリールメタン化合物を生成するプロセス。
【請求項2】
前記アリールアセタールが、ArCHRからなる群より選択され、式中、Arは、非置換であるか、あるいはハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、シアノ、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ナフチル、アミノ、ニトロおよびスルホ、ならびにその混合物からなる群より選択される1または複数の置換基によって置換されたものであるか、のどちらかの、フェニル、ナフチル、スチルベニル、ビフェニル、アントリル、チエニル、カルバゾリル、キノリル、ピレニル、ペリレニル、およびトリフェニレニルからなる群より選択されるアリールであり;RおよびRは、炭素数1から6のアルコキシおよび炭素数1から6のω−ヒドロキシアルコキシであり、RおよびRは同じであるかまたは異なることがあり、RおよびRは、5員環または6員環(それぞれ1,3−ジオキソランまたは1,3−ジオキサン)において結合される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記電子の豊富なアリール化合物が、以下の1つより選択される、請求項1に記載のプロセス。
【化1】


(式中、Rは、水素あるいはヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、シアノ、アルキル、シクロアルキルフェニル、ナフチル、ニトロおよびスルホ、ならびにその混合物からなる群より選択される1個または複数の置換基によって置換され;RおよびRは、水素、アルキル(炭素数1から6)、アルキルエーテル、アリールアルキル、ω−ヒドロキシアルキル、ω−アミノアルキル置換基、およびその混合物である。)
【請求項4】
前記反応混合物における前記アリールアセタールの前記電子の豊富なアリール化合物に対するモル比が約1:2〜約1:5である、請求項1に記載のプロセス。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−292816(P2009−292816A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126151(P2009−126151)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】