説明

トリガー式噴霧器

【課題】簡単な操作で霧の粒径を変化させることができ、しかも噴霧器先端のノズル部分のごく一部の改良により目的を達成でき、製造上のコストの増加も極めて少なくてすむトリガー式噴霧器を提案する。
【解決手段】トリガー操作により容器体内の液を先端のノズルより噴霧する如く構成したトリガー式噴霧器であって、裏面周囲にスピン機構44を配置した小径の第1噴出口41と、裏面周囲にスピン機構44を配置した大径の第2噴出口45とを備えたノズルCを設け、ノズルCを本体に対して回動可能に構成するとともに、本体内から第1噴出口41のみに至る第1流路と、本体内から第2噴出口45のみに至る第2流路とを、ノズルCの回転により切替可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトリガー式噴霧器に関し、詳しくは簡単な操作を行うことで噴霧する霧の粒径を変更することができるトリガー式噴霧器に関する。
【背景技術】
【0002】
トリガー式噴霧器として、揺動可能に設けたトリガーを引くことで内蔵ポンプ機構の作用で先端のノズルから液を噴霧するものが知られている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
上記トリガー式噴霧器は、ノズル内にポンプ内と連通する蓄圧弁を備え、一定圧以上になると蓄圧弁が開放され、その下流の噴出口近傍に設けたスピン機構を介して液を噴出させることで噴出口より霧状に液を噴出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−204989号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのトリガー式噴霧器において、用途によって霧の粒径が大きいものが相応しい場合もあり、また、小さい粒径が相応しいものもあり、従来はそれらの用途に相応した粒径の霧を噴霧するトリガー式噴霧器をそれぞれ用意していた。
【0006】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、簡単な操作で霧の粒径を変化させることができ、しかも噴霧器先端のノズル部分のごく一部の改良により目的を達成でき、製造上のコストの増加も極めて少なくてすむトリガー式噴霧器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、トリガーE操作により容器体内の液を先端のノズルより噴霧する如く構成したトリガー式噴霧器であって、裏面周囲にスピン機構44を配置した小径の第1噴出口41と、裏面周囲にスピン機構44を配置した大径の第2噴出口45とを備えたノズルCを設け、ノズルCを本体Aに対して回動可能に構成するとともに、本体A内から第1噴出口41のみに至る第1流路と、本体A内から第2噴出口45のみに至る第2流路とを、ノズルCの回転により切替可能に構成した。
【0008】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、ノズルCの本体Aに対する第1流路の連通位置と、第2流路の連通位置との他に、本体A内と各第1噴出口41及び第2噴出口45とが非連通なストップ位置を設けた。
【0009】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれか一つの手段に於いて、第1流路及び第2流路の上流に一定圧以上で開弁する蓄圧弁を設けた。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1流路が連通している場合には、細かい霧の噴霧が可能であり、また、第2流路に切り替えることで霧の粒径を大きくすることができ、これらの切り替えをノズルCを回転させるという簡単な操作で行えるため、取り扱いも極めて便利である。
【0011】
ノズルCの本体Aに対する第1流路の連通位置と、第2流路の連通位置との他に、本体A内と各第1噴出口41及び第2噴出口45とが非連通なストップ位置を設けた場合には、トリガーEの誤った引き込みで不用意に噴霧されるという不都合を確実に防止できる。
【0012】
第1流路及び第2流路の上流に一定圧以上で開弁する蓄圧弁を設けた場合には、常時安定した液圧で第1流路或いは第2流路に液の導入を行えるため、常時安定した霧の状態を現出できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】トリガー式噴霧器の一部切欠側面図である。(実施例1)
【図2】ノズル部分の拡大断面図である。(実施例1)
【図3】ノズル部分の拡大正面図である。(実施例1)
【図4】第1ノズルチップの背面図である。(実施例1)
【図5】流路切替状態のノズル部分の拡大断面図である。(実施例1)
【図6】流路非連通時のノズル部分の拡大断面図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明トリガー式噴霧器の一例を示し、トリガー式噴霧器1は、本体Aの先端にエレメントBを介してノズルCを装着している。また、容器体口頸部(図示せず)に装着筒Dを嵌合させることで容器体に装着し、本体Aより揺動可能に垂設したトリガーEを引くことで、内臓ポンプ機構(図示せず)の作用で先端のノズルCより噴出する如く構成している。内蔵ポンプ機構等は従来のこの種のトリガー式噴霧器に使用されるている機構を採用できる。
【0016】
本発明において、ノズルCは、図2に拡大図で示す如く、本体Aの流路を形成する射出筒10の先端にエレメントBを介して回動可能に嵌合させており、その内部には蓄圧弁体Fを内蔵している。
【0017】
射出筒10は先端の先端壁11の前面に小径シリンダ12を突設し、その外方に大径の支持筒13を突設している。小径シリンダ12内には中央部が棒状に突出したコイルスプリング係止用の突部14を突設し、先端壁11からこのコイルスプリング係止用の突部14を貫通する流路孔15を穿設している。
【0018】
エレメントBは支持筒13の外周に嵌合筒部20を回動不能に嵌着し、嵌合筒部20の前端縁に画壁21を掛け渡し、画壁21の後面中央部より後方ヘ弁座筒22を延設し、また、弁座筒22の外方に大径シリンダ23を後方へ延設している。弁座筒22の内面には蓄圧弁座24を備え、後端部内面に突設した係止突条部分を含めた蓄圧弁座24後方位置には切欠25を穿設している。また、画壁21の中央からは中心軸26を突設し、中心軸26の外方に筒部27を突設している。また、中心軸26の基端部には、本体A内と筒部27内とを蓄圧弁を介して連通する連通孔28を穿設している。また、中心軸26の外周前部所定位置には連通用溝29を凹設している。
【0019】
ノズルCは、筒部27外周に回動可能に嵌合させた回動筒30を前壁31裏面より後方へ延設し、前壁31の周縁より後方へ外周壁32を延設している。また、回動筒30内方部分の回動筒内前壁31a は後方へ肉厚に掛け渡され、回動筒内前壁31a の裏面中央部からは中心軸26の先端に回動可能に密嵌されたボス54を突設して中心軸26を液密に閉塞している。更に、回動筒内前壁31a から中心軸26外周に回動可能に密嵌させた連結筒部33を突設し、また、連結筒部33の外方の回動筒内前壁31a からはエレメントBの筒部27内周に回動可能に密嵌するシール筒部34を延設している。また、回動筒内前壁31a 前面にはその中央下部に第1ノズルチップ嵌合用の第1環状凹溝35を、中央上部に第2ノズルチップ嵌合用の第2環状凹溝36をそれぞれ穿設している。各環状凹溝は中央に第1チップ嵌合用突部37及び第2チップ嵌合用突部38をそれぞれ画成している。
【0020】
第1チップ嵌合用突部37外面には第1ノズルチップ39を嵌着しており、同様に第2チップ嵌合用突部38外面には第2ノズルチップ40を嵌着している。第1ノズルチップ39は、第1噴出口41を穿設した第1噴出口壁42の周縁より第1周壁43を延設し、第1噴出口壁42裏面の第1噴出口41周縁部にはスピン機構44を刻設している。同様に第2ノズルチップ40は、第2噴出口45を穿設した第2噴出口壁46の周縁より第2周壁47を延設し、第2噴出口壁46裏面の第2噴出口45周縁部にはスピン機構44を刻設している。各スピン機構44は、図4の第1ノズルチップ39を例に示す如く、第1噴出口41の裏面周囲に湾曲した放射状凹部48を凹設している公知形態のもので、ここを液が通過して第1噴出口41より噴出された際に霧状に噴出される様に構成されている。第2ノズルチップ40の場合も同様である。
【0021】
また、上記第1チップ嵌合用突部37外周面にはスピン機構44と第1環状凹溝35後端部内とを連通する第1凹溝50を凹設し、上記第2チップ嵌合用突部38外周面にはスピン機構44と第2環状凹溝36後端部内とを連通する第2凹溝51を凹設している。それ等第1凹溝50と連通する第1通孔52及び第2凹溝51と連通する第2通孔53をそれぞれその後方の回動筒内前壁31a に設けている。
【0022】
蓄圧弁体Fは、大径シリンダ23内周を摺動する大径摺動部60と小径シリンダ12内周を摺動する小径摺動部61を、前後に連設した環状基部62を備え、また、蓄圧弁座24に圧接する弁板63を備え、環状基部62と弁板63とを周方向複数の連結板64により一体に連結して構成している。そして、弁板63とコイルスプリング係止用の突部14との間にコイルスプリングsを介在させて常時蓄圧弁座24に弁板63を圧接している。
【0023】
本発明では、霧の粒径を変化させることができる切替機構を備えている。上記第1噴出口41と第2噴出口45とはその径が相違し、第1噴出口41が小径で第2噴出口45が大径に構成されている。そして、小径の第1噴出口41より噴出される霧は粒径が小さく、大径の第2噴出口45より噴出される霧は粒径が大きく噴霧される。第1噴出口41及び第2噴出口45の実際の径或いは相対比等は噴霧する内容液の種類等により適宜選択すると良い。
【0024】
上記切替機構は、ノズルCの本体Aに対する所定位置では、本体Aから蓄圧弁を介して第1噴出口41のみに連通する第1流路と、ノズルCの回転により本体Aから蓄圧弁を介して第2噴出口45のみに連通する第2流路とを切替可能に構成している。
【0025】
第1流路は、エレメントBの連通孔28から回動筒30後部内面の周方向所定位置に凹設した切替溝49、エレメントBの連通用溝29、第1通孔52、第1チップ嵌合用突部37の第1凹溝50、スピン機構44を介して第1噴出口41に至る流路であり、また、第2流路は、図5に示す如く、エレメントBの連通孔28から回動筒30後部の周方向所定位置に凹設した切替溝49、エレメントBの連通用溝29、第2通孔53、第2チップ嵌合用突部38の第2凹溝51、スピン機構44を介して第2噴出口45に至る流路である。上記連通用溝29及び切替溝49は、第1流路及び第2流路が連通するノズルBの回動角度にあわせて設けている。
【0026】
上記の如く構成したトリガー式噴霧器1を使用する場合について説明する。図1の状態からトリガーEを引くと、内臓ポンプ機構の作用で射出筒10先端から小径シリンダ12及び大径シリンダ43内に液が導入され、ここで、大径摺動部60と小径摺動部61との径差で生じる圧力により蓄圧弁体Fが上流側に押圧され、コイルスプリングsの付勢力に抗して蓄圧弁が開き、加圧液がその下流に導入される。
【0027】
その際、図2に示す如く、第1流路が連通している場合には、上記した如き第1流路を介して第1噴出口41より霧として噴霧される。この際に霧は相対的に細かい粒径をなしている。
【0028】
次に、図2の状態からノズルを図5の状態に回転させて第2流路が連通している状態にした後、再びトリガーEを引いて液の噴出を行えば、加圧液は第2流路を介して第2噴出口45より噴霧される。この場合の霧は相対的に粒径が大きくなる。
【0029】
尚、本例では、第1流路が連通する際の連通用溝29と第2流路が連通する際の連通用溝29との間に所定の間隔を採って、ノズルCの本体Aに対する第1流路の連通位置と、第2流路の連通位置との他に、図6に示す如く、本体A内と各第1噴出口41及び第2噴出口45とが非連通なストップ位置を設けている。このストップ位置はノズル外面等に設けた目印等により選択できる。
【符号の説明】
【0030】
1…トリガー式噴霧器
A…本体
10…射出筒,11…先端壁,12…小径シリンダ,13…支持筒,
14…コイルスプリング係止用の突部,15…流路孔
B…エレメント
20…嵌合筒部,21…画壁,22…弁座筒,23…大径シリンダ,24…蓄圧弁座,
25…切欠,26…中心軸,27…筒部,28…連通孔,29…連通用溝
C…ノズル
30…回動筒,31…前壁,31a …回動筒内前壁,32…外周壁,33…連結筒部,
34…シール筒部,35…第1環状凹溝,36…第2環状凹溝,
37…第1チップ嵌合用突部,38…第2チップ嵌合用突部,39…第1ノズルチップ, 40…第2ノズルチップ,41…第1噴出口,42…第1噴出口壁,43…第1周壁,
44…スピン機構,45…第2噴出口,46…第2噴出口壁,47…第2周壁,
48…放射状凹部,49…切替溝,50…第1凹溝,51…第2凹溝,52…第1通孔,
53…第2通孔,54…ボス
D…装着筒
E…トリガー
F…蓄圧弁体
60…大径摺動部,61…小径摺動部,62…環状基部,63…弁板,64…連結板
s…コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガーE操作により容器体内の液を先端のノズルより噴霧する如く構成したトリガー式噴霧器であって、裏面周囲にスピン機構44を配置した小径の第1噴出口41と、裏面周囲にスピン機構44を配置した大径の第2噴出口45とを備えたノズルCを設け、ノズルCを本体Aに対して回動可能に構成するとともに、本体A内から第1噴出口41のみに至る第1流路と、本体A内から第2噴出口45のみに至る第2流路とを、ノズルCの回転により切替可能に構成したことを特徴とするトリガー式噴霧器。
【請求項2】
ノズルCの本体Aに対する第1流路の連通位置と、第2流路の連通位置との他に、本体A内と各第1噴出口41及び第2噴出口45とが非連通なストップ位置を設けた請求項1記載のトリガー式噴霧器。
【請求項3】
第1流路及び第2流路の上流に一定圧以上で開弁する蓄圧弁を設けた請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のトリガー式噴霧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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