説明

トリガー式液体噴出器

【課題】液体射出用の主流路が閉鎖された状態のままでトリガーを引いたときにポンプ内の液体を主流路の外に逃がすリーク弁を設けた液体噴出器を提案する。
【解決手段】容器体内への挿入用の吸込口12から逆止弁14とトリガーの操作で作動するポンプ34とを通って射出口18へ至る液体噴出用の主流路30を含む噴出器本体6と、その主流路の射出口18側に嵌合され、ノズル孔42とこのノズル孔を開閉するための蓋体46とを有するノズル部材40とを具備し、ポンプ34は、先端面開放の2重筒状のシリンダ部22と、それら2重筒の間隙内へ、トリガーの操作による進退可能に挿入された筒状ピストン32とで形成しており、このポンプは、内筒24の内周面側から内筒の先方へ拡開する筒状の弁体24aの先部を筒状ピストン32の内周面へ圧接させることでリーク弁Vを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種トリガー式液体噴出器として、トリガーの操作で作動するポンプを利用して容器体側から液体を吸い上げるとともにポンプ内で加圧した液体を射出用流路の先端側へ圧送する噴出器本体と、この射出用流路の先端側へ付設したノズル部材とを具備し、このノズル部材の先端にノズル孔を開閉可能な蓋体を付設したものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−136412
【特許文献2】特表2006−517858
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の液体噴出器は、ノズル孔を閉じるための蓋体を設けているので、ノズル孔にほこりが付着するなどの不都合を防止することができるが、その反面、利用者がノズル部材の先端面から蓋体を外すことを忘れたままでトリガーを引いてしまうことがある。
【0005】
ノズル孔を蓋体で閉塞したままでトリガーを引こうとしても液体を噴出することができないので、トリガーを引く指に大きな抵抗を生ずる。そのことにより利用者が蓋体をノズル部材の先端面から外していないことに気づけばよいのであるが、単にトリガーが重いだけと勘違いして力いっぱいにトリガーを引いてしまう場合がある。そうなるとトリガーの枢着部に不測の力が加わったり、噴出器本体のポンプ及び射出用流路内の液圧が過剰に高まり、この流路の先端部からノズル部材が不意に外れてしまうおそれがある。
【0006】
この問題を解決するための方策の一つとして、トリガーの引き寄せ力に対抗してノズル部材が外れない程度に噴出器本体との嵌合保持力を高めることが考えられる。しかしながら、トリガーの引き寄せ力に対抗するという着想では、容器のさまざまな箇所(例えばトリガーの枢着部など)に無用の負荷がかかる。
【0007】
またトリガーの引き寄せ力に対抗する代りに液体流路内の液体を逃すということも考えられるが、具体的にどの様な構造でどこに逃すのかということが問題である。
【0008】
例えばポンプ式のディスペンサ容器のノズルに、容器の内外の圧力の不均衡を解消するための空気漏らし弁が知られているが(特許文献2の段落0060)、この弁は容器の外部からノズル内部へ空気をリークするものに過ぎない。
【0009】
本発明の目的は、液体射出用の主流路が閉鎖された状態のままでトリガーを引いたときにポンプ内の液体を主流路の外に逃がすリーク弁を設け、ポンプ及び主流路内部が過剰圧力とならないようにした液体噴出器を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の手段は、容器体内への挿入用の吸込口12から逆止弁14とトリガーの操作で作動するポンプ34とを通って射出口18へ至る液体噴出用の主流路30を含む噴出器本体6と、
その主流路30の射出口18側に嵌合され、ノズル孔42とノズル孔開閉機構46とを有するノズル部材40とを具備し、
上記ポンプ34は、先端面開放の2重筒状のシリンダ部22と、それら2重筒の間隙内へ、トリガーの操作による進退可能に挿入された筒状ピストン32とで形成しており、
このポンプは、通常のトリガー操作では閉弁しておりかつノズル孔を閉じたままでトリガー操作をしたときに開いてポンプ内の過剰圧力を主流路30の外に逃がすリーク弁Vを有し、
このリーク弁Vは、内筒24の内周面側から内筒の先方へ拡開する筒状の弁体24aの先部を筒状ピストン32の内周面へ圧接させることで形成した。
【0011】
本手段は、図1に示すポンプ34のシリンダ部22の内筒24にリーク弁Vを設け、ノズル孔を閉じた状態でトリガー36を引いたときに図6のように開いて、過剰圧力を主流路30の外に逃がすようにしている。もっともノズル孔を閉じてトリガーを引くと直ちに開弁するのではなく、ポンプ内の過剰圧力が一定レベルになったときに開弁するように設定することが出来る。
【0012】
「リーク弁」は、ノズル孔が開いときに通常のトリガー操作では確実に密閉状態を保つようにする。そのためにはリーク弁の弁体をやや硬めの材料(PPなど)で形成することが望ましい。「ノズル孔開閉機構」は、図示の蓋体に限らず、ノズル孔を通る液体通路を実質的に閉じることができればよく、例えばノズルヘッドを回転させることでノズル孔の通路を開閉する構造を含む。
【0013】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記リーク弁Vの弁体24aは、内筒24の筒壁と一体に、内筒の先端側に形成されている。
【0014】
本手段では、設計効率のよいリーク弁の態様を提案している。リーク弁の位置は、内筒の先端から離れた場所よりも内筒の先端側とした方が設計し易い。好適な図示例では、図4に示すように内筒の筒壁の先端面に、その面の外縁から一定の間隔を存して環状の切割り(V字溝)50を穿設することでこの溝の径方向外側部分をリーク弁の弁体24aとしている。
【0015】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ上記リーク弁Vから内筒24の内部を通って容器体側への戻し口56aへ至る補助流路56を構成している。
【0016】
本手段は、図1に示すようにリーク弁Vから容器体側へ延びる補助流路56を設けている。これによりリーク弁から漏れた液体を無駄にしないようにしている。
【発明の効果】
【0017】
第1の手段に係る発明によれば、ポンプに過剰圧力を逃がすリーク弁Vを設けたから、ノズル孔が閉塞した状態で無理にトリガーを引いてもノズル部材40がとれてしまうなどの不都合を回避できる。
【0018】
第2の手段に係る発明によれば、上記リーク弁Vの弁体を内筒24と一体とし、かつ内筒の先端部側に設けたから、設計が容易である。
【0019】
第3の手段に係る発明によれば、リーク弁Vから逃がした液体を容器体側へ戻すための補助流路56を設けたから、逃がした液体が無駄になることがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体噴出器の縦断面図である。
【図2】図1の液体噴出器の一の要部の拡大図である。
【図3】図1の液体噴出器の他の要部の拡大図である。
【図4】図3の拡大図をさらに拡大して示す図である。
【図5】図1の液体噴出器のリーク弁が開いた状態で図3の要部を示す図である。
【図6】図5の拡大図をさらに拡大して示す図である。
【図7】図6に示す要部を正面方向から見た部分拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1から図7は、本発明の第1の実施形態に係る液体噴出器である。この液体噴出器は、装着筒2と、噴出器本体6と、ノズル部材40とで構成している。これらの部材は特に断らない限り合成樹脂で形成することができる。説明の都合上、本発明の構成の特徴部分を後にして、前提的な構成要件をまず説明する。
【0022】
装着筒2は、図1に示すように、筒壁内部に容器体の口頸部に取り付けるためのねじ構造を有しており、筒壁の上端部に内向きフランジ2aを付設している。しかしその構造は適宜変更することができる。
【0023】
噴出器本体6は、上記装着筒の内向きフランジ2a下面に下端部を係合させた垂直管8を有する。図示例では、上記垂直管の下端部を、有頂大径の筒形であって装着筒内へ取付け可能な取付け筒部9に形成している。この垂直管の下端から垂下する吸引チューブ10の下端に吸込口12を開口し、また垂直管8の上端部内に逆止弁14を設けている。垂直管8の上部からは逆止弁を介して垂直管の内部に連通する射出筒16を前方突出する。
【0024】
この射出筒16の先部は、内向きフランジ状の前壁を介して射出口18を前方へ開口しており、かつ上記前壁から、後述のノズル部材を嵌合させるための小径の連結筒20を前方突出している。図示例では、射出筒の先部を別体として形成しているが、これは必須の構成ではない。
【0025】
この射出筒16の下方には、垂直管8に連結してシリンダ部22を設ける。このシリンダ部22は、垂直管の前壁部から前方へ延びる同心状の内筒24と外筒26とからなり、これら両筒の間をポンプ室28としている。
【0026】
このポンプ室28は、射出筒の筒孔の適所(図示例では後部)に連通しており、上述の吸込口12から垂直管・ポンプ室・射出筒の各内部を経て射出口18へ至る主流路30が形成されている。
【0027】
上記ポンプ室内には、垂直管の前壁との間に筒状ピストン32を前後方向への進退可能に嵌挿している。この種の筒状ピストンは、例えば特許文献1に示すように外周側及び内周側にそれぞれ外筒及び内筒と当接するためのスカート状のシール部を設けているが、本発明では、外周側のシール部33のみを設けている。これについては、後述する。
【0028】
これら筒状ピストン32とシリンダ部22とでポンプ34を構成している。また上記射出筒16から揺動可能に垂下するトリガー36の上部を、上記筒状ピストン32の前部に枢着している。この筒状ピストン32は、射出筒とトリガー36との間に介装したスプリング38で前方へ付勢されている。
【0029】
上記射出筒16の先端部には、ノズル孔42を有するノズル部材40を嵌合させている。好適な図示例では、ノズル部材40が有する基筒44を、上記噴出器本体の連結筒20に外嵌し、図2に示すように連結筒20の外面と基筒44の内面とに相互に係合する第1、第2嵌合条20a、44aとを周設し、これら両嵌合条でノズル部材の嵌合保持手段Aを構成している。
【0030】
上記ノズル部材40は、ノズル孔の開状態及び閉状態を切替可能なノズル孔開閉機構46を有する。図示例のノズル孔開閉機構は、ノズル部材の筒壁前面に枢着した蓋体として形成しているが、その構造は適宜変更することができる。
【0031】
本発明においては、図3に示すように、ポンプ室にリーク弁Vを設ける。このリーク弁は、内筒に付設した弁体24aと、筒状ピストン32の内周面の一部である弁座32aとで形成する。
【0032】
好適な図示例では、図4に示す如く上記内筒24の先端面(前端面)に当該先端面の外縁から一定の間隔dを存して切割り50を穿設するとともに、この切割り外側の筒壁部分を前方側やや大径のテーパ状筒として上記弁体24aとしている。
【0033】
上記切割り50は断面V字形であり、上記弁体が縮径変形できるように溝内の間隙52を弁体の変形代としている。
【0034】
上記筒状ピストン32は、その内周面の全体を直筒形に形成しており、その内周面のうち弁体付近の部分を弁座32aとしている。
【0035】
上記弁体24aは、通常のポンプ動作を妨げない程度の硬い弾性を有する。すなわちリーク弁Vは、ノズル孔42が開放されている状態でのトリガー操作によるポンプ室内の液圧の最大値では開弁せず、かつ上記ノズル部材40の嵌合保持手段Aの嵌合力相応の圧力より低い圧力で開弁するように構成する。
【0036】
また図示例では、内筒24の前端部は、通液孔54を含む前壁で閉塞している。しかしながら、この構成は適宜変更することができる。
【0037】
本実施形態では、上記リーク弁Vから上記通液孔54を通り、垂直管8の前壁部内を縦断し、取付け筒部9の頂壁を貫通して、容器体側への戻し口56aへ至る補助通路56を開通する。
【0038】
上記構成において、本願の液体噴出器を使用するときには、液体噴出器の装着筒を図1に想像線で示す容器体の口頸部に装着すればよい。ノズル孔開閉機構46である蓋体でノズル孔42を閉塞した状態で無理にトリガー36を引こうとすると、図6に示すようにポンプ室内の液圧が上昇し、リーク弁Vが開弁する。リーク弁から漏れた液体は上記補助通路56を介して容器体側へ回収される。これによりポンプ室28及び逆止弁14よりも下流側の主流路部分内での液体の上昇は緩和される。従ってノズル部材40が噴出器本体6から外れてしまうことを防止できる。
【符号の説明】
【0039】
2…装着筒 2a… 内向きフランジ 6…噴出器本体 8…垂直管 9…取付け筒部
10…吸引チューブ 12…吸込口 14…逆止弁 16…射出筒 18…射出口
20…連結筒 20a…第1嵌合条 22…シリンダ部
24…内筒 24a…弁体 26…外筒
28…ポンプ室 30…主流路 32…筒状ピストン 32a…弁座
33…シール部 34…ポンプ 36…トリガー 38…スプリング
40…ノズル部材 42…ノズル孔 44…基筒 44a…第2嵌合条
46…ノズル孔開閉機構
50…切割り 52…間隙 54…通液孔 56…補助流路 56a…戻し口
A…嵌合保持手段 V…リーク弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体内への挿入用の吸込口(12)から逆止弁(14)とトリガーの操作で作動するポンプ(34)とを通って射出口(18)へ至る液体噴出用の主流路(30)を含む噴出器本体(6)と、
その主流路(30)の射出口(18)側に嵌合され、ノズル孔(42)とノズル孔開閉機構(46)とを有するノズル部材(40)とを具備し、
上記ポンプ(34)は、先端面開放の2重筒状のシリンダ部(22)と、それら2重筒の間隙内へ、トリガーの操作による進退可能に挿入された筒状ピストン(32)とで形成しており、
このポンプは、通常のトリガー操作では閉弁しておりかつノズル孔を閉じたままでトリガー操作をしたときに開いてポンプ内の過剰圧力を主流路(30の外に逃がすリーク弁(V)を有し、
このリーク弁(V)は、内筒(24)の内周面側から内筒の先方へ拡開する筒状の弁体(24a)の先部を筒状ピストン(32)の内周面へ圧接させることで形成したことを特徴とする、トリガー式液体噴出器。
【請求項2】
上記リーク弁(V)の弁体(24a)は、内筒(24)の筒壁と一体に、内筒の先端側に形成されたことを特徴とする、請求項1記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項3】
上記リーク弁(V)から内筒(24)の内部を通って容器体側への戻し口(56a)へ至る補助流路(56)を構成したことを特徴とする、請求項2記載のトリガー式液体噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−46243(P2012−46243A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192857(P2010−192857)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】