説明

トリコモナスを検出するための方法および装置

【課題】ヒト対象における膣トリコモナス感染症を検出するための方法およびキットを提供する
【解決手段】膣スワブサンプルまたは尿等の体液サンプルが対象から入手され、トリコモナスアドヘシンペプチドに対して特異的な抗体と接触させられ、対象がトリコモナスに感染している場合は抗体−アドヘシンペプチド複合体が形成される。複合体の存在または不在は、膣スワブサンプルの場合は少なくとも80%の信頼性、そして尿サンプルの場合は少なくとも40%の信頼性で、対象におけるトリコモナス感染症の各々存在または不在を確定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリコモナス感染を検出するためのイムノアッセイ法およびキットに関する

【背景技術】
【0002】
トリコモナス原虫は、ヒトおよび動物に感染する寄生原虫類である。トリコモナス原虫
の種類は15種を超える。膣トリコモナス(Trichomonas vaginali
s)は、ヒトに感染し、男性および女性のどちらにおいてもトリコモナス症の状態を引き
起こすトリコモナス原虫の1種である。この寄生虫は性行為で感染し、現在は世界中で最
も一般的な非ウイルス性の性行為感染症(STD)の病因である。米国では年間五百万人
から八百万人の女性がトリコモナス症に罹患し、性的に活動的な女性の25%までがいず
れかの時点に感染すると推定されている。
【0003】
男性では、トリコモナス症は非クラミジア性、非淋菌性尿道炎の17%を占めると推測
されている。女性間では臨床症状は著しく相違し、無症候性の状態から顕性の膣炎までに
及び、そしてこの感染症は無期限に持続することがある。重篤な症状には、腐敗臭のする
分泌物を伴う腹痛が含まれ、膣酵母菌感染症に類似する炎症や不快感が付随する。男性は
平均4ヵ月間持続するほとんど無症候性の疾患を有する傾向があるが、感染した男性にお
いて尿道炎、前立腺炎、亀頭包皮炎等の疾患発現が記録されている。
【0004】
ヒトでは、トリコモナスへの感染は健康上の重篤な結果をもたらす。トリコモナスは膣
内の抗体、保護細胞層および免疫応答細胞を分解するプロテイナーゼを分泌し、それによ
って感染女性の他の性行為感染症に対する感受性を増加させる。試験によって、HIVに
対して高リスクの女性は膣トリコモナスに感染しているとHIV感染症の2〜10倍高い
リスクを有していること、そしてHIVおよびトリコモナスのどちらも陽性の男性は精液
中に6倍高いHIVを有しているので、それによりパートナーを感染させる確率が増加す
ることが証明されている(Wasserheit,1992)。さらに、トリコモナスに
よる感染は、子宮頸癌に罹患するリスクを増加させ、そして受精率および妊娠のどちらに
も有害な影響を及ぼす可能性がある(Yap et al.,1995;Zhang e
t al.,1995)。幸運にも、寄生虫による感染が的確に診断されれば、ほとんど
の症例で患者を治療することができる。
【0005】
現在のトリコモナス症の診断は女性の膣腔または男性の尿道から抽出した生存微生物の
検出および形態学的同定に基づいている。同定は、運動性微生物を直接視認するために生
理食塩水液浸標本の顕微鏡検査によって遂行される。液浸標本が陽性である場合は高度に
特異的であるが、無症候性または軽度の症候性患者および検査前24時間以内に膣洗浄し
ていた女性では陰性になることが多い。液浸標本顕微鏡検査の総合的感受性もしくは信頼
性は58%であり(Weise et al.)、30%という低さになることもある。
液浸標本顕微鏡検査はさらにまた、ペレット中にトリコモナス原虫を濃縮させるために遠
心した後の尿試料から試みることもでき、尿試料はその後再懸濁されて検査される。液浸
標本顕微鏡検査は尿サンプルについて実施した場合は高度に非効率的であり、感受性が(
培養法では40%であるのと比較して)7%と低い(van Der Schee C.
et al.,J.Clin.Microbiol.1999 Dec:37(12)4
127−30)。さらに、上記に記載したいずれかのサンプルタイプを利用した液浸標本
顕微鏡検査による検出法は、主観的で冗長かつ時間がかかり、さらに熟練者を必要とする

【0006】
泌尿生殖器試料の培養法は検出症例数を増加させることができる。だが不都合なことに
、この方法を完了するには数日間(典型的には2〜5日間)を要し、熟練者がいる特殊な
研究室で実施されなければならない。さらに、これらの方法はどちらも検出できる前にサ
ンプル中で寄生虫が生育可能であることを必要とするので、適合性が一定タイプのサンプ
ルに制約される。例えば尿は液浸標本より感受性が高いにもかかわらず、培養法に基づく
トリコモナス症診断に適切なサンプル手段ではないと判断されている(Mohamed
et al.,Sex.Transmitted Infect.,2001.77(1
)78−9)。尿ならびにその他のサンプルタイプからのトリコモナスの診断を改良する
ために、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を使用する多くの試みが実施されてきた。PC
Rは潜在的には液浸標本法または培養法より高感受性(上記の引用文献によると87%)
であるが、トリコモナス特異的であるプライマー配列に関して科学的合意は得られていな
い(PCRはFDA(米国食品医薬品局)に承認された診断方法ではない)。さらに、矛
盾するサンプルおよび汚染した臨床的サンプルの両方における偽陽性の問題がこの技術の
適用を妨害している。高度に増幅させたサンプルは、実際の感染症を明示するのではなく
以前の感染症の痕跡を表す陽性結果を生じさせることがある。さらに、PCRは多数の操
作および手順の制御を伴う高度の技術的方法であり、高価な装置を必要とし、ポイント・
オブ・ケア診断を許容しない。これらはすべて、トリコモナスに対する実際的診断方法と
しての適合性を妨げる因子である。
【0007】
サンプル中の微生物を溶解させてそれらの核酸を遊離させることによりトリコモナス感
染症を検出する方法は開示されている。トリコモナスの存在は、プローブを用いて遊離し
た核酸をハイブリダイズすることによって決定される。この方法は極めて多数の操作や高
価な検出装置の使用を含み、そして液浸標本顕微鏡検査より感受性が低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Alderete et al.,Infect.Immun.,40:284−291,1983.
【非特許文献2】Alderete et al.,Infect.Immun.,49:463−468,1985.
【非特許文献3】Alderete et al.,Infect.Immun.,52:70−75,1986.
【非特許文献4】Alderete et al.,Infect.Immun.,53:285−293,1986.
【非特許文献5】Alderete et al.,Infect.Immun.,53:697−699,1986.
【非特許文献6】Alderete et al.,Infect.Immun.,55:1037−1041,1987.
【非特許文献7】Alderete and Garza,Infection and Immunity,56(1):28−33,1988.
【非特許文献8】Alderete and Garza,Infection and Immunity,56(10):2256−2562,1988.
【非特許文献9】Alonzo and Pepe,Statistics in Medicine,18:2987−3000,1999.
【非特許文献10】Arroyo et al.,Molecular Microbiology,6(7):853−862,1992.
【非特許文献11】Arroyo et al.,Arch.Med.Res.26(4):36−369,1995.
【非特許文献12】Arroyo et al.,Molecular Microbiology,7(2):299−309,1993.
【非特許文献13】Cuatrecasas,J.Biol.Chem.,245:3059,1970.
【非特許文献14】Lehker et al.,Journal of Exp.Med.,174:311−318,1991.
【非特許文献15】van Der Schee C.et al.,J.Clin.Microbiol.1999 Dec:37(12)4127−30.
【非特許文献16】Wasserheit,J.N.,Sex.Trans.Dis.,19:61−77,1992.
【非特許文献17】Yap et al.,Genitouria.Med.,71:402−404,1995.
【非特許文献18】Zhang et al.,Ann.Epidemoil.,5:325−332,1995.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
トリコモナス感染症は高頻度に発生し、さらに迅速に治療されなかった症例は有害な転
帰を迎える可能性があることから、トリコモナス感染症を検出するための迅速で高感受性
かつ正確な診断試験および治療の有効性を評価する能力が明らかに必要である。診断試験
は、サンプルが生存微生物を含有するかどうかには関わらず、トリコモナスを含有するこ
とが疑われる様々なサンプルと一緒に使用するのに適合しなければならず、そして特に尿
(男性および女性からサンプル採取するために)および膣スワブサンプル中での検出を可
能にしなければならない。さらに、本方法は例えば感染した個体に対する陽性結果のよう
な高度の信頼性を与えなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様では、本発明にはヒト対象における膣トリコモナス感染症を検出するための
方法が含まれる。本方法を実践する際には、尿または膣スワブサンプル等の体液サンプル
が対象から入手され、そして対象がトリコモナスに感染している場合は抗体−アドヘシン
ペプチド複合体を形成させるために、トリコモナスアドヘシンペプチドに対して特異的な
抗体と接触させられる。この複合体の存在または不在は、臨床試料が膣スワブである場合
は少なくとも約80%、および典型的には90%より良好な信頼性を、そして臨床試料が
尿である場合は40%より高い信頼性を備えているため診断に役立つ。
【0011】
より一般的な態様では、本発明は、抗体試薬として膣トリコモナスアドヘシンタンパク
質に対する抗体、または例えばTt.foetus等の感染種由来の相同アドヘシンタン
パク質に対する抗体のどちらかを使用して、哺乳類、例えばウシまたはその他の家畜にお
けるトリコモナス感染症、例えばウシにおけるTt.foetus感染症を検出するため
に適合する。
【0012】
ヒトにおける膣トリコモナス感染症を検出するための代表的なアドヘシンタンパク質は
、膣トリコモナスAP65、AP51、AP33、AP23アドヘシンタンパク質、およ
びそれらの免疫学的に反応性のあるフラグメント、特別にはAP65およびAP33アド
ヘシンタンパク質である。同様に、代表的な抗体は抗AP65抗体、例えば細胞系DM1
16およびC55によって産生した抗体である。非ヒトアッセイのための代表的ペプチド
は、動物感染性トリコモナス種由来の相同アドヘシンペプチドである。
【0013】
1つの好ましいアッセイフォーマットでは、接触させるステップには、上流から下流方
向に、サンプル適用領域と、トリコモナスアドヘシンペプチドに対して特異的な非固定化
標識抗体を含有する反応ゾーンと、および複合体内のトリコモナスアドヘシンペプチドに
対して特異的な固定化抗体を含有する検出ゾーンと、を有するドライストリップのサンプ
ル適用ゾーン上にサンプルを配置するステップが含まれる。作業中には、(i)サンプル
は前記ストリップ上でサンプル適用ゾーンから反応ゾーンに向かって下流方向に移動し、
(ii)サンプル中のアドヘシンペプチド分析物は反応ゾーン内の非固定化抗体と反応し
て移動性の標識アドヘシンペプチド−抗体複合体を形成し、そして(iii)複合体は検
出ゾーンに向かって移動し、(iv)前記複合体は検出ゾーン内の固定化抗体と反応して
検出ゾーン内で固定化標識複合体を形成し、そして(v)非複合体化非固定化標識抗体は
検出ゾーンの下流方向に移動する。検出ステップには、検出ゾーンにおける固定化標識複
合体の存在または不在を検出するステップが含まれる。
【0014】
また別のアッセイフォーマットでは、入手されるサンプルはパップスミアであり、サン
プルは(例えばエタノールまたはメタノールを使用して)固定される。パップスミアは、
伝統的なパップスミアまたはCytyc社製Thin−Prep(薄層塗抹標本)パップ
スミアに代表されるリキッドベースのアッセイであってよい。サンプルは、固定プロセス
の変性条件にさらされたアドヘシンタンパク質を検出する標識抗体の存在下で調製される
。代表的な抗体はAP33抗体である。本方法は、非結合標識抗体を取り除くための薄層
塗抹標本を処理するステップを含むことができる。
【0015】
また別の態様では、本発明にはヒト対象における膣トリコモナス感染症を検出するキッ
トが含まれる。本キットは、それに適用された液体をストリップ内の毛管現象によって上
流のサンプル適用ゾーンから反応ゾーンを経由して下流の検出ゾーン内へ吸い上げること
のできるドライストリップを含む。反応ゾーンはそれと一緒に移動性のアドヘシンタンパ
ク質−抗体複合体を形成させるために有効な、トリコモナスアドヘシンペプチドに対して
特異的な非固定化標識抗体を含み、そして検出ゾーンは複合体内のトリコモナスアドヘシ
ンペプチドに対して特異的な固定化抗体を含有している。体液サンプルがサンプル適用ゾ
ーンへ適用された後は、(i)サンプルはストリップ上で反応ゾーンに向かって下流方向
に移動し、(ii)サンプル中のアドヘシンペプチド分析物は反応ゾーン内の非固定化捕
捉抗体と反応して移動性の標識アドヘシンペプチド−抗体複合体を形成し、(iii)複
合体は検出ゾーンに向かって移動し、(iv)複合体は検出ゾーン内の固定化抗体と反応
して検出ゾーン内で固定化標識複合体を形成し、そして(v)非複合体化非固定化標識抗
体は検出ゾーンの下流方向に移動する。対象におけるトリコモナス感染症の存在または不
在は、検出ゾーンにおける検出可能な標識の存在または不在によって決定される。
【0016】
キット内の代表的な非固定化抗体はAP65、AP51、AP33、AP23アドヘシ
ンタンパク質、およびそれらの免疫学的に反応性のあるフラグメントに対して免疫特異的
であるが、その中でもAP65が好ましい。キット内の代表的抗体は、DM116細胞系
により産生した抗体である。
【0017】
さらにまた別の態様では、ヒト対象におけるトリコモナス感染症を検出する方法は、対
象から唾液または血液等の体液サンプルを入手するステップと、対象がトリコモナス症に
感染している場合は抗体−アドヘシンペプチド複合体を形成させるためにサンプルとトリ
コモナスアドヘシンペプチドとを接触させるステップと、を含む。複合体の存在または不
在が、対象におけるトリコモナス感染症の存在または不在を各々確定するために検出され
る。
【0018】
代表的なアドヘシンペプチドはAP65、AP51、AP33、AP23アドヘシンタ
ンパク質、およびそれらの免疫学的に反応性のフラグメントである。
【0019】
1つのアッセイフォーマットでは、サンプルは上流から下流方向に、サンプル適用領域
と、非固定化標識トリコモナスアドヘシンペプチドを含有し、移動性の抗体−アドヘシン
ペプチド複合体を形成させるためにトリコモナス症感染者の体内に存在する抗トリコモナ
ス抗体と反応するのに効果的な反応ゾーンと、およびヒト抗体に対して特異的な固定化捕
捉抗体を含有する検出ゾーンと、を有するドライストリップのサンプル適用ゾーン上に置
かれる。サンプルが適用された後は、(i)サンプルはストリップ上で反応ゾーンに向か
って下流方向に移動し、(ii)サンプル中の抗トリコモナス抗体分析物は反応ゾーン内
の非固定化標識アドヘシンペプチドと反応して移動性の標識アドヘシンペプチド−抗体複
合体を形成し、そして(iii)複合体は検出ゾーンに向かって移動し、(iv)複合体
は検出ゾーン内の固定化抗体と反応して検出ゾーン内で固定化標識複合体を形成し、そし
て(v)非複合体化非固定化標識アドヘシンは検出ゾーンの下流方向に移動する。キット
内の代表的な固定化抗体は、C55細胞系により産生した抗体である。検出ゾーンにおけ
る固定化標識複合体の存在または不在は、検出ゾーンにおける標識複合体の存在または不
在によって決定される。
【0020】
本発明のこれら及びその他の目的および特徴は、添付の図面と結び付けて本発明の以下
の詳細な説明を読むことによってより完全に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるトリコモナスアッセイキット内のテストストリップの平面図である。
【図2】図1のテストストリップの側面図である。
【図3】本発明によるアッセイキットの平面図である。
【図4】図3のキットの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
I.用語の定義
下記の用語は、本明細書で他に特別に指示されない限り以下の意味を有する。
本明細書で使用する用語「トリコモナス」には、ヒトおよび動物の両方に感染する多数
の種を含むOrder Trichomonadida、Generas Ditric
homonas、Trichomonas、Tritrichomonas、およびPe
ntatrichomonasが含まれるが、それらに限定されない。「トリコモナス」
は、あらゆるトリコモナス種、例えばウシに感染するTritrichomonas f
oetus(Trichomonas foetus、Tt.fetusとしても知られ
る)、Tt.enteris、T.pavlovi、ブタに感染するTt.suis、T
t.rotunda、T.buttreyi、ヒツジに感染するDt.ovis、ウマに
感染するTt.equi、T.equibuccalis、トリに感染するT.anat
is、Tt.eberthi、T.gallinae、T.gallinarum、齧歯
類に感染するTt.caviae、Tt muris、Tt.wenoni、Tt.mi
nuta、T.microti、イヌやネコに感染するT.canistomae、T.
felistomae、生体サンプル中で霊長類(ヒトを含む)に感染するT.tena
x、T.vaginalis、Pt.Hominis、およびT.macacovagi
naeを意味する。ヒト疾患の場合には、「トリコモナス」は膣トリコモナス(T.va
ginalis)種を意味するが、それに限定されない。「膣トリコモナス」はヒトに感
染できる膣トリコモナスのあらゆる菌株を意味する。
【0023】
本明細書で使用する用語「抗体」には、分析物(抗原または抗体)に特異的に結合して
認識する、1つもしくは2つ以上の免疫グロブリン遺伝子、またはそのフラグメントによ
って実質的にコードされるポリペプチドが含まれるが、それに限定されない。「抗体」に
は、さらに1つ以上のトリコモナス抗原への曝露に反応して宿主によって産生される抗体
の抗原特異的結合領域(イディオタイプ)に特異的に結合して認識する、1つもしくは2
つ以上の免疫グロブリン遺伝子、またはそのフラグメントによって実質的にコードされる
ポリペプチドが含まれるが、それに限定されない。例には、ポリクローナル抗体、モノク
ローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、および一本鎖抗体等が含まれる。免疫グロブリ
ンのフラグメントには、Fabフラグメントおよびファージ提示法を含む発現ライブラリ
ーによって産生するフラグメントが含まれる。例えば、抗体の構造および専門用語につい
てはPaul,FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY,第三版,1993,R
aven Press,New Yorkを参照されたい。
【0024】
用語「エピトープ」は、抗体へ特異的に結合できる抗原決定基を意味する。エピトープ
は、通常はアミノ酸または糖側鎖等の分子の表面配置から構成され、通常は特異的な三次
元構造的特徴ならびに特異的な荷電特徴を有する。
【0025】
用語「へ特異的に結合する」および「と特異的に免疫反応性である」は、タンパク質お
よびその他の生物製剤の異種集団の存在下で標的分析物の存在を決定する結合反応を意味
する。そこで、指定アッセイ条件下では、規定の結合成分は特定標的分析物と優先的に結
合し、試験サンプル中に存在する他の成分には有意な量では結合しない。そのような条件
下での標的分析物への特異的結合には、特定標的分析物に対する特異性について選択され
ている結合部分を必要とすることがある。特定抗原と特異的に免疫反応性がある抗体を選
択するためには様々なイムノアッセイフォーマットを使用できる。例えば、分析物と特異
的に免疫反応性があるモノクローナル抗体を選択するためには固相ELISAイムノアッ
セイが日常的に使用されている。例えば、特異的免疫反応性を測定するために使用できる
イムノアッセイフォーマットおよび条件の説明については、Harlow and La
ne,ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL,Cold S
prings Harbor Publications,New York,(198
8)を参照されたい。典型的には、特異的または選択的反応はバックグラウンドシグナル
対雑音比の少なくとも2倍、およびより典型的にはバックグラウンドの10〜100倍以
上であろう。
【0026】
「タンパク質」は、アミノ酸またはアミノ酸アナログサブユニット、典型的には生体タ
ンパク質内で見いだされる20種の一般的L−アミノ酸の一部または全部から構成される
生体高分子を意味する。「タンパク質」は一般に例えば100アミノ酸以上を含有する相
当に大きなポリペプチドを意味し、「ペプチド」はより小さなポリペプチドを意味するが
、これらの用語は本明細書では互換的に使用される。すなわち、用語のタンパク質は大き
なポリペプチドならびに小さなペプチドを意味することができ、その逆も言える。
【0027】
タンパク質の「免疫学的に反応性のあるフラグメント」は、タンパク質自体と免疫学的
に反応性がある結合パートナー、例えば抗体と免疫学的に反応性があるタンパク質の一部
分を意味する。
【0028】
本発明のアッセイ方法に関連する「特異性」は、トリコモナス感染症を特異的に検出す
るアッセイの能力を意味する。
【0029】
本発明のアッセイ方法に関連する「信頼性」は、真陽性として検出される集団のパーセ
ンテージに関連する。例えば、少なくとも80%の信頼性は、例えば培養法またはPCR
等の確証試験によって決定したときに、本アッセイが実際にトリコモナスに感染している
被検者の少なくとも80%においてトリコモナス感染症を検出することを意味する。この
用語もまた、「感度」と互換的に使用される。
【0030】
II.本発明のアッセイ
本発明は、ヒトにおけるトリコモナス感染症、特に膣トリコモナス感染症が、トリコモ
ナスアドヘシンタンパク質、もしくはその免疫反応性フラグメントと、このタンパク質に
対して免疫特異的である抗体との免疫複合体を形成させるステップと、および該複合体を
検出するステップとによって、高感受性で容易に検出できるという発見に基づく。1つの
一般的実施形態では、トリコモナス感染症は身体サンプル中、例えば尿サンプルまたは膣
スワブ中のアドヘシンタンパク質もしくはその免疫学的フラグメントの存在によって検出
される。この実施形態では、アッセイ試薬はサンプル中に存在するアドヘシンタンパク質
と検出可能な複合体を形成することのできる標識抗アドヘシン抗体である。この試験の重
要な長所は、そのようなアドヘシンタンパク質が本発明のアッセイによりトリコモナス感
染症について試験されている実質的にすべてのトリコモナス感染女性における膣スワブ、
すなわち膣道もしくは膣頸部、子宮頸管からの膣分泌物、擦過物もしくはスワブ、または
パップスミア内で検出可能な量で存在することが見いだされていることにある。同様に、
アドヘシンタンパク質は、本発明のアッセイにより試験されているトリコモナス陽性の男
性および女性における尿中で検出可能な量で見いだされている。そこで、本アッセイは感
度が非常に高く、男性においては尿サンプルを用いて、ならびに女性では尿サンプルまた
は膣もしくは子宮頸部スワブサンプルのどちらかを用いて容易に実施できる。
【0031】
また別の一般的実施形態では、トリコモナス感染症は標識トリコモナスアドヘシンタン
パク質アッセイ試薬と免疫反応性である身体サンプル抗体の存在によって検出される。こ
の実施形態では、標識アッセイ試薬は感染者中に存在する抗アドヘシン抗体との検出可能
な複合体を形成することのできる標識トリコモナスアドヘシンタンパク質である。
【0032】
本発明のアッセイは、免疫学的結合反応に基づいている。イムノアッセイの一般的方法
の概観については、これにより参照して組み込まれるBASIC AND CLINIC
AL IMMUNOLOGY,第7版,D.Stites and A.Terr編集,
1991を参照されたい。本発明の1つの実施形態では、本アッセイはトリコモナス免疫
原の存在を検出する。本発明のまた別の実施形態では、本アッセイは宿主が生成した抗ト
リコモナス抗体を検出する。生物学的サンプル中のトリコモナス免疫原または宿主が生成
した抗トリコモナス抗体の存在は、トリコモナス感染症が発生したことを明示する。
【0033】
本発明のアッセイは、高度に特異的かつ感受性である。上記で述べたように、膣トリコ
モナスに対して特異的な本発明のアッセイは約80%を超える感度を有すること、そして
液浸標本法陰性患者の21%(28/131)が膣トリコモナスに対して陽性であること
が(確証的、または決定的試験として培養法を使用して)証明されている。この感受性レ
ベルの上昇は、追加して37%(103/75)のトリコモナス感染症患者の同定を可能
にする。本発明のアッセイの総合的特異性は約98%である。
【0034】
本方法を実施する際には、まず最初に被検者から体液サンプルを入手する。好ましい実
施形態と同様に被検者がヒトである場合は、適切な体液サンプルは膣スワブ、すなわち女
性における膣道もしくは膣頸部、または子宮頸管からの膣分泌物、擦過物もしくはスワブ
、またはパップスミア、または女性または男性における尿サンプルである。特別には抗ト
リコモナス抗体を検出するためのその他の適切な体液には、血清、血液、および唾液が含
まれる。被検者が家畜または飼育動物である場合は、尿および粘膜スワブ等の適切な体液
が選択される。
【0035】
あるいはまた、サンプルは例えば患者から、すなわち子宮頸管、子宮、卵管、精巣、肛
門、咽喉、肺、皮膚、眼、消化管、または体腔を含むがそれらに限定されないあらゆる感
染部位からの細胞から構成されてよい。これらのサンプルは、新鮮な状態で使用できる、
または後で使用するために保存(必要に応じて、冷凍、乾燥、冷蔵)することができる。
サンプルは、それらの天然形(尿)で使用できる、すなわち加工処理、抽出、可溶化、ま
たは操作することができる。これらのサンプル中のトリコモナスは、生存していても死滅
していても、全細胞であっても分裂していても、加工処理されていても加工処理されてい
なくてもどちらでもよい。
【0036】
トリコモナスを検出するためのイムノアッセイの開発は、安定性の種依存性抗原が欠如
するためにそのほとんどが不成功に終わっている。本発明が成功するか否かは、一部には
トリコモナスにおけるアドヘシンタンパク質の安定性に左右される。トリコモナスは極め
て大きな抗原異質性を示している(Alderete et al.,1985b;19
86a,1987a)。感染症を確立および維持するために、寄生虫は泌尿生殖器官の敵
対環境に抵抗すること、そして抵抗性の溶菌素生成抗体および宿主の補体等の免疫監視機
構を回避することができる。寄生虫は、多数の寄生虫が検出を回避するために使用する戦
略である表現型を変化させる能力を発達させてきた(Alderete et al.,
1986;Alderete et al.,1985)。異なる2つの時点に同一患者
から採取された単離物が異なる表現型を示す可能性があることが観察されている(Ald
erete et al.,1987)。さらに、寄生虫はその環境に反応して表現型を
変化させることも観察されている。例えば、インビボ環境は明白に特定の表面免疫原(P
270)の発現が欠如する膣トリコモナス菌を好む、または選択するが、インビトロ培養
ではこの寄生虫はP270を産生する反対の表現型へ復帰する。また別の例では、アドヘ
シンタンパク質AP65は典型的な培養環境では低レベルで発現するが、宿主内、または
インビボ様環境では有意な高レベルで発現する。そこで、インビトロ条件下で培養された
微生物に対して作られた抗体は、インビボサンプル中に含有されたトリコモナスへ結合さ
せるためには有効ではない可能性がある。典型的な培養環境中で増殖したトリコモナスに
よる発現レベルに基づくと、アドヘシンAP65タンパク質は診断アッセイに使用するた
めの潜在的分析物であると容易には認識されないであろう。さらに、寄生虫はタンパク質
分解性であり、すなわち、表面抗原および抗体を分解するプロテアーゼを分泌することが
できる。上記の防衛機構の結果として、抗トリコモナス抗体を開発するための環境におい
て知られている安定性の免疫原はない。
【0037】
トリコモナスアドヘシンタンパク質は、典型的には表面発現タンパク質であり、宿主動
物の泌尿生殖器官の内側を覆っている上皮細胞への寄生虫の細胞付着と関連付けられてき
た(Alderete and Garza,1988,Arroyo et al.,
1992;Lehker et al.,1991)。さらに、アドヘシンは機能的に活
性な酵素である。
【0038】
アドヘシンタンパク質は、代謝酵素であり、そしてそれらが典型的培養環境内では発現
しないという事実のために、当業者による診断使用のための明白な候補ではない。代謝酵
素は、全微生物中で基本的な役割を共有しているために高度に保存されており、偏在性宿
主タンパク質(他の代謝酵素等)と相同性を共有している。一般に見いだされるタンパク
質との相同性を共有する抗原は、一般には抗体産生および診断試験における使用には不適
当である。それらは典型的には免疫反応性ではない、または強度の免疫応答を引き出す可
能性が極めて低い。そこで、そのような抗原は検出のために十分な感染−反応抗体を誘導
する可能性が低く、または抗原自体を検出するために適切なポリクローナル抗体およびモ
ノクローナル抗体を生成する可能性も低いと思われる。さらに、アドヘシンは実験動物に
おいて高力価抗血清およびモノクローナル抗体(mAb)を生成する困難によって証明さ
れるように、免疫劣性であると思われることも報告されている(Alderete an
d Garza,1988;Arroyo et al.,1992,1993;Leh
ker et al.,1991)。さらに、そのような抗原に対して作られた抗体は、
宿主およびその他の共病原体由来の類似のタンパク質との反応のために、低特異性に苦し
むと思われる。実際に、宿主タンパク質に対するアドヘシンの類似性(模倣)は検出およ
び免疫攻撃を回避する病原体の能力の根拠となる可能性がある。本発明者らは、一定のア
ドヘシンタンパク質が動物宿主内で高度に発現し、特殊なインビボ様培養環境下で免疫反
応性であることを決定した。アドヘシンはさらにまた、抗体を作ることを許容する十分な
量で発現した。そこで、アドヘシンタンパク質の選択は、免疫学に基づく診断アッセイの
ための抗原選択における新規戦略を意味する。
【0039】
ヒト寄生虫膣トリコモナスについてのアドヘシンタンパク質およびそれらのコーディン
グ配列は米国特許第5,922,563号に開示されており、その開示は参照により本明
細書に組み込まれている。アドヘシンタンパク質の4つのファミリー(AP65、AP5
1、AP33、およびAP23)は、膣上皮細胞の受容体への結合を特異的に媒介するア
ドヘシンとして同定されている。4つの膣トリコモナスアドヘシンファミリーであるAP
65(65kDa)、AP51(51kDa)、AP33(33kDa)、およびAP2
3(23kDa)は、それらの相対分子量(Mr)に基づいて分類されている。少なくと
も3つのアドヘシンファミリーには、密接に関連している可能性がある独特の核酸基準を
有するメンバーが含まれる。このため、各アドヘシンは多重遺伝子ファミリーのメンバー
であり、本明細書で使用するように用語AP65、AP51、AP33、およびAP23
は対応するMrの膣トリコモナスアドヘシンタンパク質ファミリーの全メンバーを表す。
さらに、アドヘシンは膣トリコモナスのゲノム内に複数のコピーで存在する。
【0040】
本発明の1つの実施形態では、AP65アドヘシンタンパク質ファミリーが診断アッセ
イのための免疫原として選択される。AP65が好ましいが、他の安定性のアドヘシンタ
ンパク質を診断アッセイのための免疫原として選択することもできる。AP65タンパク
質の遺伝子は、長さがおよそ1.8kbである。AP65アドヘシンタンパク質ファミリ
ーには6つの知られているメンバーが含まれており、そのうちの(AP65−1、AP6
5−2、およびAP65−3)を有する3つは、参照により本明細書中に組み込まれるA
ldereteへの米国特許第5,922,563号に詳細に記載されている。各メンバ
ーは、別個のAP65遺伝子によってコードされる。AP65−1およびAP65−2の
N−末端配列は、12アミノ酸中9アミノ酸は同一で極めて類似している。AP65−1
、AP65−2およびAp65−3の疎水親水度プロット(Kyte and Dool
ittle,1982)は、極めて類似していてほんの少しの相違しか伴わない。AP6
5アドヘシンタンパク質は膣トリコモナスに対して独特である。膣トリコモナス、T.s
uis(ブタトリコモナス原虫)およびTt.foetus(ウシトリコモナス原虫)に
対するプローブとしてcDNAインサートを使用するクロス・ハイブリダイゼーション試
験と同時に実施されるリガンドアッセイを使用して、膣トリコモナスアドヘシンから産生
した血清が他の種とは交差反応性を示さないことが証明されている。
【0041】
A.アッセイフォーマット
本発明のアッセイは、直接的または競合的のどちらであってもよい。競合的結合アッセ
イでは、標的分析物、例えば膣トリコモナスアドヘシンタンパク質は、好ましくは固定化
結合剤、例えば適切な固体表面、例えばニトロセルロース、ナイロン、PVCまたはポリ
スチレン表面へ結合したアドヘシンタンパク質へ特異的に結合する抗体上での特異的結合
部位に対する標識分析物アナログと競合する。捕捉試薬に結合した標識分析物の濃度は、
サンプル中に存在する遊離分析物の量に反比例しており、これは溶液形または結合形で定
性的に検出できる、または例えば溶液中の標識アドヘシンタンパク質の分光学的測定によ
って定量することができる。
【0042】
直接的アッセイは、典型的にはサンドイッチアッセイであり、標的分析物、例えば膣ト
リコモナスアドヘシンタンパク質は、標識結合剤、例えば標識抗体および固定化捕捉抗体
の両方に結合し、検出可能な固定化標識サンドイッチ複合体を形成する。アッセイの正確
なフォーマットは、一般にはアッセイに対して予測される感受性または特異性に左右され
る。一部のアッセイでは、特別には不安定な試薬を使用するアッセイについては、標識試
薬または捕捉試薬のどちらかの有効性を確認するためにコントロール試薬を添加してもよ
い。
【0043】
特にパップスミア分析に使用される別の直接結合アッセイフォーマットでは、女性対象
からの子宮頸部スワブサンプルが干渉物質を除去するために処理され、スワブ成分、例え
ば膣トリコモナスアドヘシンタンパク質が例えば処理されたガラススライド表面に結合さ
せることによって固定化される固体上に置かれる。次に標識結合剤、例えば蛍光標識抗ア
ドヘシン抗体がスライドに適用され、免疫特異的標的に結合させられ、続いて非結合抗体
を除去するために洗浄される。その結果スワブサンプル中の分析物の存在または不在は、
スライドの蛍光顕微鏡検査によって決定することができる。米国特許第6,174,74
2号および第5,741,662号は、例として膣スワブ材料を採取および処理する方法
、および染色した材料を検出する方法を記載している。パップスミア試験のために適切な
1つのフォーマットは、Cytyc社により提供されるThin−Prep(登録商標)
パップテストである(http://www.cytyc.comを参照されたい)。
【0044】
直接的アッセイフォーマットの好ましい実施形態であるドライストリップ型アッセイキ
ットについては下記の第III章で詳述する。このアッセイフォーマットでは、毛細管流
動を可能にする多孔性または繊維性テストストリップは、上流から下流方向に、サンプル
適用ゾーン、反応ゾーン、および検出ゾーンを含む。サンプル適用ゾーンは、単純にはサ
ンプルが添加されるストリップ上の領域であってよい。反応ゾーンは、移動性の標識複合
体、すなわちテストストリップを通って典型的には毛細管流動によって、検出ゾーンへ向
かう下流方向に移動することのできる複合体を形成させるために、サンプル分析物、例え
ばアドヘシンタンパク質へ結合することのできる非固定化標識試薬を含有する。分析物が
アドヘシンタンパク質である場合、標識試薬は典型的には下記で詳述するように標識抗ア
ドヘシン抗体である。分析物が抗トリコモナス抗体である場合、標識試薬は標識アドヘシ
ンタンパク質である。典型的には、試薬は可溶形でストリップに添加され、ストリップへ
サンプルを適用して湿潤すると、乾燥した試薬が可溶相に進入してストリップ媒質を通っ
て移動できるように、乾燥させられる。詳細は、実施例3を含む下記に提供する。
【0045】
検出ゾーンは、このゾーン内の標識複合体を固定化するために移動性複合体の分析物部
分に結合できる固定化捕捉試薬を含有するが、他方では標識されているが非複合体化試薬
は移動しているサンプル液媒質とともにこのゾーンを通過する。固定化結合試薬は、スト
リップ基質に共有結合されてよく、または非共有結合、例えば静電気力もしくは分散力に
よって強固に結合されてよい。いずれにせよ固定化は、サンプル液が検出ゾーンを通って
移動するにつれて結合試薬が標識複合体を捕捉して固定化することを可能にするために十
分である。分析物がアドヘシンタンパク質である場合は、固定化結合試薬は好ましくは複
合体形内の分析物に接近できるアドヘシンエピトープへ特異的に結合することのできる抗
アドヘシン抗体である。すなわち、標識抗体および固定化捕捉抗体は、好ましくはアドヘ
シンタンパク質中で別個かつ独特のエピトープを認識する。分析物がヒト抗トリコモナス
抗体である場合は、結合剤は好ましくはヒト抗体との一般的免疫反応性を有する非ヒト抗
ヒト抗体である。
【0046】
ストリップは、さらに標識試薬がストリップを通って移動するために反応ゾーンから遊
離していること、および標識試薬が固定化捕捉物質によって捕捉されていることを確認す
るためのコントロールとして役立つように、非複合体化標識試薬をそこで捕捉できる第2
捕捉ゾーンを含むことができる。標識試薬が標識抗アドヘシン抗体である場合は、コント
ロール捕捉物質は好ましくは標識抗体と免疫反応性がある抗体である。そこで、例えば標
識抗体がマウスモノクローナル抗体である場合は、コントロール捕捉試薬はウサギ抗マウ
ス抗体であろう。
【0047】
明らかなように、標識試薬および捕捉試薬の様々な組み合わせを使用することによって
、本発明のアッセイはトリコモナスまたは宿主生成抗トリコモナス抗体いずれかの免疫原
を検出するために適している。動物の生物学的サンプル中におけるその存在はトリコモナ
ス感染症を明示する。例えば、トリコモナスの免疫原、例えば膣トリコモナスのAP65
アドヘシンタンパク質を検出するために特異的なアッセイでは、標識試薬および捕捉試薬
における結合部分は膣トリコモナスのAP65に対して作られた抗体であり、そして標識
試薬の定常(非エピトープ)領域に対して特異的である抗体または抗原がコントロール試
薬として使用される。宿主生成抗体、例えば抗AP65抗体の検出のために特異的なアッ
セイでは、標識試薬および捕捉試薬における結合部分はAP65アドヘシンタンパク質で
ある。アドヘシンタンパク質は、AP65アドヘシンタンパク質の天然形、キメラ形、フ
ラグメントまたは組換え形のいずれであってもよい。
【0048】
同様に、本発明のアッセイは、トリコモナスの様々な変種に対して特異的な様々な標識
試薬および捕捉試薬を使用することによってトリコモナスの様々な変種を検出するために
適合する。例えば、dsRNAウイルスに感染している膣トリコモナスに対して特異的な
抗体が使用された場合は、アッセイはウイルス感染膣トリコモナスと非ウイルス感染膣ト
リコモナス単離物とを弁別することができる。また別の例では、診断アッセイは抗体を使
用して、トリコモナス原虫の薬物耐性または薬物感受性を与える、またはさもなければ指
示する分析物の存在または不在を検出することができる。そのようなアッセイは、例えば
特定感染症を治療するために適した特定用量または薬物タイプに関して治療法の決定の指
針となるであろう。
【0049】
標識試薬を形成するために結合部分(抗体または抗原)と一緒に使用できる極めて広範
囲の標識がある。標識の選択は、必要とされる感受性、結合部分との共役結合の容易さ、
安定性要件、利用できる器具類、およびディスポーザル供給品に左右される。本発明の標
識は、可溶性、または微粒子状、金属、有機もしくは無機であってよく、そして緑色蛍光
タンパク質、蛍光色素(例、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘
導体、ビオチン、アビジン、およびストレプトアビジン)、化学発光化合物(例、ルシフ
ェリンおよびルミノール)等のスペクトル標識;および酵素(例、ホースラディッシュペ
ルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、コロイド状金等のスペクトル比色標識、
もしくは炭素粒子、または着色ガラスもしくはプラスチック(例、ポリスチレン、ポリプ
ロピレン、ラテックス等)ビーズを含むことができる。
【0050】
標識は、各々が参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第4,863,875号
および第4,373,932号に記載されているような当分野において周知の方法によっ
て、結合部分の成分に直接的または間接的に結合させることができる。非放射性標識は、
しばしば間接的手段によって付着させられる。一般に、リガンド分子(例、ビオチン)は
、結合部分へ共有的に結合する。リガンドは次に、本質的に検出可能である、または検出
可能な酵素、蛍光化合物、または化学発光化合物等のシグナル系へ共有的に結合している
抗リガンド(例、ストレプトアビジン)分子へ結合する。標識は、化学リンカーによって
結合部分へ付着させることができる。リンカードメインは、典型的には約5〜200アミ
ノ酸のポリ−グリ配列等のポリペプチド配列である。好ましいリンカーは、しばしば柔軟
性のアミノ酸サブ配列である。そのような柔軟性リンカーは、当業者には知られている。
例えば、ポリ(エチレングリコール)は市販で入手できる(Shearwater Po
lymers社、アラバマ州ハンツビル)。検出部分は、さらにまた例えば酵素もしくは
蛍光体との結合によって、シグナル発生化合物へ直接に共役結合させることもできる。
【0051】
標識の存在は、検査、または特定プローブもしくはプローブの組み合わせを監視する検
出器によって検出できる。典型的な検出器には、分光光度計、光電管および光ダイオード
、顕微鏡、シンチレーションカウンター、カメラ、フィルム等、ならびにそれらの組み合
わせが含まれる。適切な検出器の例は、当業者に知られている様々な市販入手源から広汎
に入手できる。
【0052】
本発明のためには、好ましい標識は非放射性であり、高性能の器具類を使用せずに容易
に検出される。好ましくは、標識は目視検査によって、または蛍光検出によって直ちに識
別できる視認できるシグナルを産生するであろう。好ましい標識には、1)化学発光(分
解産物として光子を産生する基質とともにホースラディッシュペルオキシダーゼおよび/
またはアルカリホスファターゼを使用する);2)変色(免疫反応性事象に伴い着色沈降
物を生じさせるコロイド状金)、および3)蛍光(例えばフルオレセイン、およびその他
の蛍光タグを使用して)として観察できる標識が含まれる。本発明の1つの好ましい実施
形態では、コロイド状金が標識として使用され、標識は結合部分(抗体または抗原)へ直
接的に共役結合させられる。金が標識として使用される場合は、標識試薬−分析物複合体
と捕捉試薬との反応は赤色沈着物の外観を生じさせる。当業者によって理解されるように
、複合体と捕捉ゾーンで固定化された捕捉試薬とが反応すると出現する色は使用した標識
に左右される。
【0053】
本発明の好ましいアッセイフォーマットでは、捕捉試薬およびコントロール捕捉試薬が
固体基質上に固定化される。本発明と一緒に使用するのに適している、当分野に知られて
いる様々な固体支持体がある。例えば、固体支持体はビーズ、膜(例、ニトロセルロース
)、マイクロタイターウェル(例、PVCもしくはポリスチレン)、ストリング、プラス
チック、ストリップまたはその上に抗体を配置または固定化することのできるあらゆる表
面であってよい。さらに、天然および合成両方の、広範囲の有機および無機ポリマーを固
体表面のための材料として使用できる。実例となるポリマーには、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリ(エチ
レンテレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)、ポリビニリデ
ンジフルオリド(PVDF)、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セ
ルロース、ニトロセルロース等が含まれる。その他の使用できる材料には、紙、ガラス、
セラミック、金属、メタロイド、半導性材料、セメント等が含まれる。さらに、タンパク
質(例、ゼラチン)等のゲルを形成する物質、リポ多糖類、ケイ酸塩、アガロースおよび
ポリアクリルアミドを使用できる。デキストランおよびポリアルキレングリコール等のい
くつかの水相を形成するポリマーまたはリン脂質もしくは長鎖(12〜24炭素原子)ア
ルキルアンモニウム塩等の界面活性剤もまた適している。
【0054】
様々な表面へ広範囲の化合物を結合させる方法は周知であり、文献に十分に例示されて
いる。例えば、それらの開示が参照により本明細書中に組み込まれるIMMOBILIZ
ED ENZYMES,Ichiro Chibata,Halsted Press,
New York,1978,および Cuatrecasas,1970を参照された
い。捕捉試薬およびコントロール試薬は、非特異的結合を通して共有的に結合させること
ができる、または非共有的に結合させることができる。化合物と表面との共有結合が所望
である場合は、表面は通常は多官能、または多官能化することができるであろう。表面上
に存在していて結合のために使用できる官能基には、カルボン酸、アルデヒド、アミノ基
、シアノ基、エチレン基、ヒドロキシル基、メルカプト基等を含むことができる。共有結
合に加えて、アッセイ成分を非共有的に結合するための様々な方法を使用できる。非共有
結合は、典型的には化合物の表面への非特異的吸収である。典型的には、表面は標識アッ
セイ成分の非特異的結合を防止するために第二化合物を用いて遮断される。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、実施例3に記載するように、捕捉試薬およびコントロ
ール試薬はニトロセルロース膜上に非特異的に吸収され、ブロッキングバッファー(4%
のショ糖を含むPBS中に0.5%のBSA)によって遮断される。
【0056】
1つの好ましい実施形態では、本アッセイはトリコモナス特異的免疫原、例えば膣トリ
コモナスのAP65アドヘシンタンパク質を検出する。標識試薬および捕捉試薬の結合部
分は、免疫原のエピトープに対して作られた、または実質的に作られた抗体である。本ア
ッセイは、さらに内部または外部コントロールのいずれかであってよいコントロール試薬
が含まれる。内部コントロールは、場合によっては標識試薬および捕捉試薬の抗体を作る
ために使用された種とは潜在的に相違する種から入手される抗−抗体から構成されてよい
、すなわち、標識試薬および捕捉試薬がウサギから入手された場合は、コントロール領域
に配置される抗体はヤギ抗マウスIgG、ヒツジ抗マウスIgG、ブタ抗マウスIgG等
であってよい。そのような抗体の産生については以下で考察する。外部コントロールは、
それに標識試薬および捕捉試薬が結合する細胞精製物、粗抽出液、または組換えタンパク
質いずれかからのトリコモナス由来抗原から構成することができる。
【0057】
これらの抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれであってもよい
が、好ましくはモノクローナル抗体である。一本鎖抗体および抗体のフラグメントもまた
結合部分として有用である。そこで、本明細書で使用する用語「抗体」には、さらにまた
一本鎖抗体、および抗体全体の修飾により産生した、あるいは組換えDNA方法を使用し
て新規に合成されたいずれかの抗体フラグメントが含まれる。
【0058】
本発明のアッセイに使用される抗体は、従来型の抗体作製技術によって入手できる。例
えば、Harlow and Lane eds.,ANTIBODIES;A LAB
ORATORY MANUAL,Coldspring Habor Laborato
ry,Coldspring,N.Y.を参照されたい。抗体を調製するために適切な接
種体には、天然タンパク質、組換えタンパク質、粗膜調製物または寄生虫の粗調製物が含
まれるがそれらに限定されない。適切な抗体は、水性およびイオン性および非イオン性洗
剤バッファー条件下で免疫反応性でなければならない。
【0059】
ポリクローナル抗体は、例えばHarboe and Ingild,Scand.J
.Immun.2(別巻1),161−164頁,(1973)に記載されている通りに
調製できる。より詳細には、ポリクローナル抗体はウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤ
ギ等を含むがそれらに限定されない種々の宿主動物のいずれかにフロイント不完全または
完全アジュバント等の適切なアジュバント中に含まれる上記の接種物を接種することによ
って入手できる。接種後には、適切な間隔(例、1もしくは2週間から1ヵ月間)をあけ
て1もしくは2回以上のブースター注射を行うことができる。動物からは例えば1週間間
隔で定期的に採血し、そして血清から抗体を単離する。
【0060】
好ましくは、モノクローナル抗体は(例えば、Kohler and Milstei
n,Nature 256,1975、第495頁、またはAldereteへの米国特
許第4,707,442に記載されているように)ハイブリドーマ細胞系を使用して産生
させる。融合細胞ハイブリッドを産生させるためには、P3/X63−Ag 8、P3/
NSI/1−Ag 4−1、Sp2/10−Ag14およびS194/5.XXO.BU
T.1を含む数種の骨髄腫細胞系を使用できる。典型的な融合法では、選択した抗原に対
して免役した動物由来の脾リンパ球が骨髄腫細胞と融合させられる。得られたハイブリド
ーマは次に、所望の抗体を産生する培養液についてスクリーニングするために一連の個別
培養管またはマイクロタイタープレートウェル中に分散される。陽性培養は、単一細胞か
ら発生するコロニー(クローン)を入手するためにさらに希釈される。クローンは再び、
所望の抗体の産生についてスクリーニングされる。モノクローナル抗体を作製するために
使用されたハイブリドーマ細胞はインビトロまたは動物の体腔内で増殖させられる。モノ
クローナル抗体は、培養したハイブリドーマ細胞の上清または腹水から、遠心濾過法、沈
降法、クロマトグラフィー法またはそれらの組み合わせ等の従来型方法を使用して単離か
つ精製できる。
【0061】
本発明の1つの好ましい実施形態では、結合抗体は膣トリコモナスアドヘシンタンパク
質AP65に対して作られ、DM116およびC55細胞系によって産生される。これら
およびその他の抗アドヘシンMabはテキサス州サンアントニオ所在のテキサス大学保健
科学センターのハイブリドーマ貯蔵所に保管されている。そのような抗体は、高い確率お
よび予測可能性で、参照により本明細書中に組み込まれる上記に挙げた引用文献の中で開
示されている2つの一般的方法のどちらかを使用して作製できる。
【0062】
第一の一般的方法では、動物、例えばマウスに膣トリコモナス由来の全細胞または膜タ
ンパク質が注射される(例えば、Alderete,1986を参照)。マウスからの抗
体産生細胞が不死化され、不死化細胞により産生したMabは例えば培養中で膣トリコモ
ナスとの反応性でスクリーニングされる。Mabは次に、1つもしくは2つ以上のアドヘ
シンタンパク質に対する反応性についてさらにスクリーニングされる。同一アドヘシンタ
ンパク質の様々なエピトープと相互作用する2種のMabを同定するために、タンパク質
は例えば10〜25アミノ酸残基の別個の重複するフラグメントに分割し、そしてこれら
のフラグメントをさらに相違する個別アドヘシンフラグメントと免疫反応性である上記で
同定されたそれらの2つもしくは3つ以上のMabに対する免疫反応性についてスクリー
ニングすることができる。あるいはまた、標準競合的結合試験を使用して同一アドヘシン
タンパク質の相違するエピトープへ結合する対のMabを試験することができる。
【0063】
もう1つの一般的方法では、アドヘシンタンパク質またはタンパク質フラグメントは、
例えば上記で言及した米国特許第5,922,563号に開示されているように、例えば
膣トリコモナスアドヘシンコーディング配列の組換え発現によって調製できる。単離した
1つ以上のアドヘシンタンパク質または1つ以上のタンパク質フラグメントは次に、例え
ばマウスにおいてハイブリドーマ細胞系を産生するための免疫原として直接使用される。
細胞系により産生したMabは、次にアドヘシンタンパク質に対して免疫反応性の抗体に
ついてスクリーニングされる。上記に開示した方法の1つは、次にアドヘシンタンパク質
の様々なエピトープと免疫反応性である2つ以上のMabを同定するために使用できる。
【0064】
アドヘシン抗体は、広範囲の様々なアプローチを使用して複数の機会に作製されてきた
。例えば、ハイブリドーマ細胞系を分泌する抗AP65抗体は、全トリコモナス菌、トリ
コモナス膜調製物、精製天然AP65、組換えAP65ならびにホルムアルデヒドおよび
グルタルアルデヒド固定全トリコモナス菌のいずれかに対するマウスの接種から生成され
ている。使用されるアジュバントには、フロイントアジュバント、アクリルアミド(ゲル
精製タンパク質の場合)およびAP65へ融合したキメラタンパク質の非AP65部分が
含まれた。免疫反応性抗体を産生する細胞系の典型的収率は、ハイブリドーマ融合から生
成する全細胞系の5〜10%であり、この割合は他の非アドヘシン抗体細胞系の生成につ
いての典型的割合に一致している。
【0065】
標識試薬および捕捉試薬の結合部分は、トリコモナスアドヘシンタンパク質、例えば膣
トリコモナスAP65、AP51、AP33、AP23アドヘシンタンパク質等の膣トリ
コモナスアドヘシンタンパク質、およびそれらの免疫学的に反応性を有するフラグメント
、特別にはAP65アドヘシンタンパク質またはそれらの免疫学的フラグメントである。
本発明のアッセイに使用するためには、トリコモナスアドヘシンタンパク質は天然、化学
合成または組換え作製した、全分子またはフラグメントであってよい。1つの実施形態で
は、アドヘシンタンパク質は組換え手段により調製される。少なくとも1つの免疫反応性
エピトープを含有する組換え免疫原を調製する方法は、当業者には知られており、そして
それらの開示が参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第5,876,985号お
よび第5,922,563号に開示されている。手短には、組換え免疫原は抗原をコード
する1つもしくは2つ以上の遺伝子を含有する発現ベクターを使用して調製できる。コー
ディング遺伝子は、標的トリコモナス原虫のcDNA発現ライブラリーから、当該抗原の
粗調製物に対して作られているポリクローナル抗体を用いてライブラリーをスクリーニン
グすることによって選択できる。当該抗原を発現する発現プラスミドからのcDNAイン
サートは次にサブクローニングおよびシーケンシングされる。免疫原ファミリー、または
数種の非関連性免疫原のファミリーの相違するメンバーをコードする抗原コーディングイ
ンサートはプールされ、発現ベクター内にクローニングされ、大腸菌またはその他の適切
な宿主細胞を形質転換させるために使用される。様々な膣トリコモナスアドヘシンタンパ
ク質の代表的コーディング配列は、上記に挙げた米国特許に提供されている。免疫原が膣
トリコモナスのアドヘシンタンパク質ファミリーAP65である本発明の1つの実施形態
では、組換え抗原は保存されたエピトープを有するほぼ同一の6つのAP65アドヘシン
遺伝子のカセットから発現される。結果として得られた組換え抗原は高度に保存されてお
り、抗体作製に対して安定性がある。しかし、組換え抗原混合物を産生するための発現カ
セット内には様々な数の遺伝子および遺伝子フラグメントを含めることができると理解さ
れており、そして適切な遺伝子および遺伝子フラグメントの選択は当業者の知識の範囲内
にある。
【0066】
親もしくは天然アドヘシンタンパク質の所望の免疫反応性を有する免疫学的フラグメン
トを選択するためには、タンパク質は例えばタンパク質分解性消化、および天然タンパク
質に対する抗体への結合についてのフラグメント試験によってフラグメント化することが
できる。結合したフラグメントの限定されたN−末端またはC−末端アミノ酸分析は当該
結合フラグメントを同定するために使用できる。あるいはまた、組換え発現状況では、ア
ドヘシンコーディング配列は長さが約25〜300アミノ酸のアドヘシンフラグメントを
コードできるフラグメントを形成する従来型手段によってフラグメント化することができ
る。そのようにコードされたフラグメントは、例えばgt10またはgt11発現系等の
標準発現系において、標識抗アドヘシン抗体に対して選択することにより、従来型方法で
分析できる。
【0067】
III.ドライストリップ型アッセイキット
上記でドライストリップ側方流動アッセイキットと呼ばれた本発明のキットは、生体サ
ンプル中に存在するトリコモナス分析物(アドヘシンタンパク質または抗トリコモナス抗
体)を検出するための「ワンステップ」側方流動アッセイを提供する。上記のように、本
キットには一般に流路に沿ってサンプル溶液の毛管流を許容する材料から構成されたマト
リックスが含まれる。マトリックスは、サンプル適用ゾーン、反応ゾーン、検出ゾーン、
および任意でコントロール捕捉ゾーンを規定する。
【0068】
本アッセイ装置のマトリックスは、典型的には非吸収性側方流動が可能な多孔性材料で
あろう。「非吸収性側方流動」は、例えば1つ以上の成分を吸着または吸収することので
きる材料中において発生するような1つ以上の成分の優先的滞留とは対照的に、液体の溶
解または分散した成分が実質的に等しい速度および膜を通って側方へあまり妨害されない
流動が実施される液体流動を意味する。
【0069】
典型的な非吸収性マトリックス材料はガラス繊維濾紙である。ポリスルホンマイクロポ
ーラス膜、ニトロセルロース、酢酸セルロース膜、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢
酸ビニルおよび塩化ビニルのコポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ナイロン、オ
ーロン、ポリエステル、ポリエステル、ポリスチレン等の他の非吸収性膜または混合物も
また使用できる。所望の材料特性および流速を備えるマトリックス材料の選択は、一般に
当業者の知識の範囲内に含まれる。
【0070】
マトリックスのサイズおよび形状は、決定的に重要ではなく変動してよい。一般に、マ
トリックスは長方形で流路は軸方向である。多孔性マトリックスは、一般には概して不浸
透性の固体支持体によって裏張りされている。マトリックスはさらにまた、典型的にはプ
ラスチックもしくは類似の耐水性材料から製造されたハウジングまたは容器の内部に含有
されていてよい、もしくは一部分が内部に含有されていてよい。
【0071】
吸収ゾーンは、一般には本発明の装置に含まれている。吸収ゾーンは、捕捉ゾーンから
下流に位置する。吸収ゾーンは、流路に沿って所望の毛細管流動を維持するために、装置
のマトリックスから過剰なサンプルおよび非結合標識を除去するための手段である。一般
に、吸収ゾーンには濾紙、ガラス繊維フィルター等の吸収性材料が含まれる。
【0072】
液体サンプル、典型的には抽出された子宮頸管内膜スワブもしくは膣スワブ、尿、また
は血清もしくは唾液がサンプル受入ゾーンでマトリックスにアプライされる。調製したサ
ンプルが検出ゾーンを通って流れるにつれて、サンプル中に分析物が存在する場合は、標
識試薬は標的分析物に結合して標識試薬−分析物複合体を形成する。サンプルが捕捉ゾー
ンに流入するにつれて、標識標的分析物は固定化された免疫グロブリンに結合され、それ
により捕捉ゾーン内に標識を保持する。サンプルがコントロールゾーンに流入するにつれ
て、サンプル液と一緒に運ばれた過剰な標識試薬はコントロール試薬に結合され、それに
よりコントロールゾーン内に非複合化標識を保持する。
【0073】
視認可能な標識の蓄積は、視覚的に、または光学的検出装置のどちらかによって評価で
きる。捕捉ゾーン内の標識の保持は、サンプル中の標的分析物の存在を明示する。コント
ロールゾーン内の標識の保持は、十分な液体が標識ゾーンおよび捕捉ゾーンを流れて通過
すること、そして標識試薬が保管、バッファー組成およびサンプル組成等に起因して変性
または分解しないこと、そしてアッセイが妥当であることを明示する。
【0074】
さらに、蓄積した標識の視認可能な強度は患者サンプル中の分析物の濃度または力価(
希釈)と関連付けることができる。蓄積した標識の視認可能な強度および分析物の濃度は
、視認可能な強度と参照標準との比較によって関連付けることができる。そこで、分析物
の標識は本発明の装置によって測定できる。
【0075】
図1および2は、本発明のアッセイ方法を実施するために有用な本発明の装置の実施形
態であるテストストリップ10を示している。テストストリップ10には、固体支持体1
3によって支持された、各々上流端および下流端14、15を有する細長い多孔性マトリ
ックス12が含まれている。多孔性材料パッド16は、マトリックス12の上流部分上に
配置されている。このパッドには、その上でアドヘシンペプチドを含有するサンプルがス
トリップへアプライされるサンプル装填もしくはサンプル受入ゾーンもしくは領域17、
およびサンプル装填ゾーンの下流で、移動性のレポーター標識抗アドヘシン抗体を含有す
る反応領域もしくはゾーン20が含まれている。
【0076】
図2に明らかなように、パッド16はマトリックス12の上面に取り付けられており、
毛細管液体流動によってマトリックス12と連絡している。そこで、サンプル適用パッド
にアプライされるサンプル液は、パッド16内へ、パッド16を経由して反応領域内へ流
動する。この場合、サンプル液は溶液内への移動性の抗体の遊離を引き起こし、そこでサ
ンプルアドヘシンと反応し、パッドを経由して、パッドおよび隣接するマトリックスを通
る毛細管流動によってマトリックス12内へ移動できる移動性アドヘシン標識複合体を形
成する。
【0077】
マトリックス12には、順に捕捉試薬のストライプが置かれている検出ゾーン22およ
びコントロール試薬のストライプが置かれているコントロールゾーン24が含まれる。こ
の例示した実施形態では、捕捉試薬およびコントロール試薬はストライプが細長いマトリ
ックス12の幅を横切るように配置されている。しかし、捕捉試薬およびコントロール試
薬はあらゆる適切なフォーマット内に配置できることが理解されている。
【0078】
その下流端でマトリックス12を被覆しているのは、吸収性パッド28である。吸収性
パッド28の上方のテープカバーは、テストストリップのためのつかみ面またはつかみ部
を提供する。パッド28の目的は、検出ゾーンおよびコントロールゾーンを通して適用ゾ
ーンからサンプル液を吸引し続けるための吸収性リザーバーとして機能することである。
【0079】
マトリックス12は、サンプル受入ゾーン17に受け入れられたサンプルがテストスト
リップ10の長手軸に沿って毛細管作用によって流動することを可能にするガラス繊維濾
紙から構成される。上記に記載した非吸収性マトリックス材料等の他の多孔性材料もまた
使用できる。固体支持体13はニトロセルロース膜から形成されている。紙、ナイロン膜
、ガラス、プラスチック、金属等のその他の適切材料もまた使用できる。
【0080】
1つの特定実施形態では、テストストリップ10は膣トリコモナスのアドヘシンタンパ
ク質AP65(分析物)を検出するために設計されており、検出ゾーンは金共役結合ウサ
ギ抗AP65IgGを用いてストライプ状にされ、捕捉ゾーンは抗AP65IgGを用い
てストライプ状にされている。テストストリップ10を製造するための代表的方法は、実
施例1〜6に記載されている。
【0081】
テストストリップ10は、ストリップの取扱いを容易にするためにハウジング内に収容
することができる。図3および4は、ハウジング52内に封入されたテストストリップ1
0を含むテストストリップカセット50を図示している。ハウジング52は、アッセイ実
施者が容易につかめるように設計されている。ハウジング52は、各々上方部分および下
方部分54および56から構成される。下方部分56は、その中にテストストリップ10
を受け入れるためのウェル58を含有する。上方部分56には、2つの窓60および62
が含まれる。窓60は、液体サンプルを受け入れるために適合する。窓62はアッセイ結
果を視認するための窓である。上方部分54には、テストストリップをウェル内に固定す
るために、ウェル58の上方にアライメントされたペグ64が用意されている。2つの部
分は、部分56内の穴68等の対応する穴に受け入れられた部分54におけるピン66等
のコーナーピンによって一直線上に一緒に保持されている。
【0082】
ハウジング52は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のプラスチ
ック材料のような適正な強度を有するいずれかの耐水性材料から構築できる。プラスチッ
ク材料が使用される場合は、ハウジング52はいずれかの従来型成形技術によって製造で
きる。
【0083】
カセット50は、最初に下方部分56のウェル58内にテストストリップ10を配置す
ることにより容易に組み立てることができる。上方部分54は次に、窓60をサンプル装
填ゾーン17にアライメントし、窓62を検出(捕捉)ゾーンおよびコントロールゾーン
22、24にアライメントし、そしてペグ64を吸収性パッド28と接触させて下方部分
に接触させることで配置される。これら2つの部分は次に、嵌合ピンおよび開口部を通し
て噛み合わせることができる。
【0084】
本発明のキットには、上記のような単一アッセイストリップ、または複数のテストスト
リップを含めることができる。複数のストリップは、二重試験のため、または相違するト
リコモナス種、単離物または薬物耐性マーカーについて試験するために設計することがで
きる、または1パネルの他のSTD(例えば、クラミジア)、もしくは他の膣炎を引き起
こす物質(例えば、カンジダ酵母菌およびGardenerella菌)の追加の病原体
、または数種の動物トリコモナス種を検出することのできる複数の装置を試験するために
設計されている。本キットは、サンプリングツール、例えば子宮頸管内膜サンプルを入手
するための無菌綿棒、およびサンプル濾過および濃縮装置を含むことができる。本キット
は、さらにまたサンプル調製溶液、例えばサンプルを中和するため、またはトリコモナス
抗原を溶液内で抽出/可溶化するためのバッファーも含むことができる。アッセイを実施
するために有用な試験管、ホールピペット等を含む、その他の材料もまたキット内に含め
ることができる。含まれる装置および試薬は実施される試験のタイプに依存して変動し、
一般には当業者の知識の範囲内に含まれる。
【0085】
1つの好ましい実施形態では、キットは膣トリコモナスを検出するためのキットである
。本装置には、検出ゾーンの範囲内に含有されたアドヘシンタンパク質のAP65ファミ
リーに対して作られた金共役結合抗体DM116、および捕捉ゾーン内に固定化されたD
M116によって結合されたものとは相違するAP65エピトープに特異的に結合するC
55抗体またはそのフラグメントが含まれる。また別の好ましい実施形態では、キットに
は約4.0〜約9.0のpHを有するバッファー溶液が含まれる。好ましくは、バッファ
ーは再蒸留水中に約0.5%のTriton X−100および0.1%BSAを含有す
るサンプル溶解バッファーである。装置、溶液試薬、容器およびサンプリングツールは、
一般にはイムノアッセイキットのための従来型タイプの包装、例えば箱、バッグ、円筒、
シュリンクラップ・カード等内に一緒に含まれる。任意で、本キットはさらに本発明の方
法ステップについて記載した文書による取扱説明書を含むことができる。分析用の生体サ
ンプルを調製するためには、リン酸塩、Tris等の多数の標準バッファー水溶液、また
はTriton X−100、BSAおよび蒸留水を含有するバッファーのいずれかを約
4.0〜約9.0のpHで使用できる。適切なバッファーの選択は、当業者の知識の範囲
内である。
【0086】
尿が生体サンプルである場合は、サンプルは天然尿、天然尿の分別部分、またはさもな
ければ濃縮形もしくは希釈形のいずれかの例えば濾過によって処理された尿であってよい
。尿試験サンプルの最適な単一ステップ濾過および試験のための代表的装置は、試験抗体
およびコントロール抗体のための支持媒体として機能するフィルター基質を含有する。抗
原または抗原/標識抗体複合体は、液体がフィルター基質の上方および中を通過するにつ
れて接触させられる。診断用装置内を通るそのような流動は当業者には知られており、こ
の方法は本発明の方法と一致している。Triton X−100またはリン酸バッファ
ーを用いて天然尿を希釈するためにはいずれかの数のバッファー溶液を使用できるが、約
4.0〜約9.0のpHが好ましい。天然尿の液体分画および微粒子分画は、別個に分析
できる。天然尿の2つの分画は、沈降法、遠心法、または濾過法等の当分野において知ら
れているいずれかの固体−液体分離法によって分離することができ、液体および微粒子は
別個に収集される。微粒子は次に当該分析物タンパク質を可溶化または抽出するために、
バッファー中、例えばTriton X−100バッファー溶液中に再懸濁させられる。
懸濁液は、次に分析物の存在について分析することができる。分離された尿の液体分画は
、そのままで、または分析前に前処理して分析することができる。前処理には、濃縮、希
釈または中和を含むことができる。
【0087】
膣スワブが生物学的サンプルであるまた別の実施形態では、スワブ内に含有される生体
液体が最初に可溶化され、バッファー溶液中に抽出される。代表的抽出法は、実施例4に
記載されている。好ましいバッファーには、0.5%のTriton X−100、0.
1%のBSA、および再蒸留水が含まれる。いずれか他のバッファー溶液、例えば約4〜
9のpH範囲を有するリン酸バッファーもまた使用できる。
【0088】
調製された液体サンプル(尿または膣スワブ)は次に本発明の装置の1つ、例えばテス
トストリップ10または試験カセット50にアプライされる(図1および3)。テストス
トリップを使用する場合は、ストリップはサンプル液を吸引するためのディップスティッ
クとして使用できる。試験カセット50を使用する場合は、サンプル液はピペットを使用
して移すことによりサンプル受入窓60内に入れることができる。受け入れられた液体は
、検出ゾーン、捕捉ゾーンおよびコントロールゾーンに向かう毛細管作用下で多孔性マト
リックスに沿って流動する。試験の結果は、捕捉ゾーンおよびコントロールゾーン内に捕
捉された標識から直接読み取ることができる。捕捉ゾーンおよびコントロールゾーンの着
色(標識がコロイド状金である場合は、赤色)ラインは、トリコモナス感染症を検出する
ための陽性結果を明示する。コントロールゾーンでの着色ラインは、陰性結果および試験
が妥当でないことだけを明示する。線がないことは試験が妥当ではないことを明示する。
【0089】
上記から、本発明の様々な目的および特徴が満たされる方法が理解されるであろう。本
アッセイは、単純かつ迅速であり、医師の診察室または在宅環境に容易に適合する。本発
明の1つの重要な特徴によると、本アッセイは高感度であり、膣トリコモナスに感染した
ヒト対象における実質的にすべての陽性を拾い上げる(以下の実施例4および5を参照さ
れたい)。膣トリコモナス感染症を検出するための本発明のアッセイの実施形態の性能特
徴は、複合参照標準サンプルセット(CRS)から決定した。このサンプルセットは、膣
炎の症状を提示する患者206例からの膣試料のコレクションである。これらの試料を液
浸標本顕微鏡および本発明の装置によって膣トリコモナスの存在について試験した。2つ
のアッセイ間の不一致は、培養法(In−pouch−Tv(商標)培養法、BioMe
d社、カリフォルニア州サンノゼ)によって解決した。
【0090】
本発明の試験装置によって具現化したアッセイは、全液浸標本法陽性患者(75例)を
陽性結果と同定し、そして液浸標本法陰性患者の21%(28/131、培養法によって
確証)についても膣トリコモナス陽性結果と同定したことが証明されている。アッセイの
感度は、約100%であると報告されている。アッセイの総合的感度は98%であると報
告されている。本特許出願に報告した研究の前には、検出プロトコールを使用してそのよ
うな高い感受性および特異性を達成する能力を予測できなかった。これらの結果は実施例
5に詳述されている。
【0091】
さらにその上、本アッセイの有益な特徴は、体液サンプルとして尿を使用して、便宜的
かつ人目に触れないサンプル採取ならびに男性および女性両方にとってのアッセイ測定を
可能にすることにより所見される。同様に、本アッセイを通常はパップスミアの一部とし
て実施される1つもしくは2つ以上の他のアッセイに含めることを可能にすることにより
、本アッセイの免疫反応性試薬はパップスミア試験、またはパップスミア試験からの残留
液体に容易に適用できる。さらに、本アッセイの免疫反応性試薬は、サンプルが膜もしく
はフィルター基質を通って流れる流動タイプの試験等の他の迅速な試験フォーマットに容
易に適用できる。
【0092】
以下の実施例では、本発明を例示し、サンプル中のトリコモナスの存在を同定および試
験するために使用できる方法の説明を提供するために、そして当業者が本発明を理解およ
び実施するのに役立つように、本発明の特定の態様を記載する。これらの実施例は、決し
て本発明を限定すると解釈されてはならない。
【実施例1】
【0093】
モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗トリコモナス抗体(Mab)は、Aldereteへの米国特許第4
,707,442号に記載された通りに調製した。Mabは、培養上清または腹水のどち
らかからタンパク質A−セファロースクロマトグラフィーによって精製した(Godin
g,J.Immunol.Meth.(1976)42:17)(Pharmacia
LKB社)。適切なハイブリドーマから作製した約2〜6mLの腹水液は、1.5Mのグ
リシン、3MのNaClを含有するpHを約8.9に調製した結合バッファーを用いて1
:1に希釈した。DM116 Mab腹水は、室温で一晩かけて結合バッファーを用いて
透析にかけた。透析したMab腹水は、0.5mL/分の速度で結合バッファーを用いて
タンパク質A−セファロースCL−4Bアフィニティー・ゲルクロマトグラフィーから溶
出した。溶出は、各サンプルの吸光度を280nmで測定することによって監視し、そし
て吸光度が0.001O.D.より下になるまでカラムを洗浄した。次に、約pH4.0
へ調整した0.1Mのクエン酸バッファーを使用してカラムからIgGを溶出した。免疫
グロブリンの溶出は、280nmで各サンプルの吸光度を測定することによって監視した

【実施例2】
【0094】
モノクローナル抗体−金コンジュゲートの調製
100mLの超純水を含有するフラスコを約80〜85℃に加熱した。次に、穏やかに
攪拌しながら、1mLの1%のAuCl(2×0.5mL)および1.75mLの1%の
クエン酸ナトリウム溶液(2×0.5、および次に0.75mLのアリコート)を連続的
に温水へ添加した。この溶液をかすかな黄色から紫色がかった黒色そしてチェリーワイン
色へ変色するまでさらに80〜85℃で加熱した。
【0095】
ガラス管内で、上記の通りに調製した10mLの1:1.75金溶液へ200μLの新
たに調製した100mMの炭酸塩(100mM)を添加した。この溶液を3秒間ボルテッ
クスミキサーにかけた。次に300μLのDM116 IgG(1m/mL)を添加し、
そしてこの溶液を再び3秒間ボルテックスミキサーにかけた。この試験管を室温で30分
間培養し、3秒間ボルテックスミキサーにかけながら100μLのコンジュゲートブロッ
キング液を添加し、その後8,000rpmで30分間遠心した。この遠心機は、制動シ
ステムを使用せずに完全に停止させることができた。コンジュゲートブロッキング液は、
約25mMのリン酸カリウム(pH7.4〜7.6)、約5%のウシ血清アルブミンおよ
び約0.10%の蔗糖から構成される。残留用量が約300μLとなるように上清を吸引
して取り出した。次に濃縮コンジュゲートを新しい容器に移し、その用量を測定した。濃
縮コンジュゲートは、コンジュゲート再懸濁液を添加することにより10倍濃度へ希釈し
た。コンジュゲート再懸濁液は、25mMのリン酸カリウム(pH7.4〜7.6)、約
1%のウシ血清アルブミンおよび約0.10%の蔗糖を含有していた。添加すべきコンジ
ュゲート再懸濁液の量は、金溶液の総量を(10−新規容器に移されている濃縮コンジュ
ゲートの用量)で割ることによって決定した。モノクローナル抗体金コンジュゲートは、
使用時まで、好ましくは約2〜8℃で冷蔵庫に保管することができた。
【実施例3】
【0096】
アッセイ用ドライストリップの調製
A.ドライストリップへの固定化抗体の添加
1mg/mLのウサギ抗膣トリコモナスIgGの調製物は、室温で一晩かけて、50m
Mの炭酸塩−重炭酸塩バッファー(pH9.6)からなるコーティングバッファーに対し
て透析した。次にIgGをX−Y−Z分注プラットフォーム(BIO.DOT社)上に装
填し、1μL/cmの液体をニトロセルロース膜上に送達するように機械をプログラミン
グした。次に膜を約3時間かけて室温から37℃で乾燥させた。ブロッキングバッファー
(4%のショ糖を含むPBS中に0.5%のBSA)を次に膜にスプレーし、膜を室温で
一晩かけて乾燥させた。この膜を水分の不在下で約2〜8℃で保管した。
【0097】
B.反応ゾーンでの金−DM116抗体コンジュゲートの適用
ガラス繊維濾紙を金パッド前処理バッファー(0.5%(w/v)の多価アルコール;
0.71%(w/v)のリン酸二ナトリウム;0.1%(v/v)のTriton X−
100;0.5%のBSA(w/v);DDW;pH7.4)中に沈めた。ガラス繊維濾
紙は3時間かけて40〜50℃のオーブンで乾燥させるか、または一晩かけて風乾させた
。金−DM116抗体コンジュゲートを次に処理したガラス繊維濾紙上に適用し、その後
パッドが乾燥したように思われるまで、室温で一晩かけて風乾させるか、または37℃の
オーブン内で乾燥させた。このパッドは水分の不在下で約2〜8℃で保管した。
【0098】
C.テストストリップのアセンブリー
A部で調製した抗体塗布ニトロセルロース膜上に、Whatman/Gelman濾紙
(2.5cm×30.0cm)のストリップを2枚が一番上で1mm重複するように配置
した。次にB部で調製した金コンジュゲートパッドを、底部で1mm重複するように配置
した。金コンジュゲートパッドの底部1mmとWhatman/Gelman濾紙の第2
ストリップと重なり合わせた。このアッセンブリーは、一重のプラスチック製粘着テープ
で被覆することにより適所に保持した。このアッセンブリーを次に幅約2mmの小さなス
トリップに切断し、水分の不在下で約2〜8℃で保管した。
【実施例4】
【0099】
試験方法および結果
本発明のテストストリップを使用した試験方法は以下の通りである。
1.無菌綿棒を使用して患者の膣道から試験サンプルを採取する。試料の採取後、でき
る限り迅速に綿棒を処理する。しかし、本発明のアッセイは処理のために生存微生物を必
要としないので、サンプル綿棒を保管したり、乾燥形で輸送したりすることができる。綿
棒はさらにまた、抽出および試験の24時間前まで2〜8℃で保管することもできる。あ
るいはまた、綿棒を抽出し、抽出した試料を24時間まで2〜8℃で保管することができ
る。
【0100】
2.スワブを約1mLのサンプル溶解バッファー(0.5%のTriton X−10
0;0.1%のBSA;DDW)に浸ける。容器の側面に激しくぶつかるように綿棒を少
なくとも10回回転させて(浸漬したままで)この溶液を力強く混合する。試験結果は、
試料を溶液中で力強く抽出したときに取得する。再度混合する前の1分間は、綿棒をサン
プル中に浸漬させる。綿棒を抜き出すときに綿棒を試験管の側面に押しつけて回転させる
ことにより、綿棒からできるだけ多量の液体を絞り出す。綿棒を廃棄する。
【0101】
3.実施例7で調製したディップスティック型テストストリップを混合サンプル溶液の
バイアルへ挿入する。
【0102】
4.10分後に結果を読み取る(一部の陽性結果はもっと早く読み取れることがある)
。10分後に試験結果が陰性であると思われる場合は、試験結果を確認する前にバックグ
ラウンドのすべての色が消失するまでさらに10分間待つ。
【0103】
5.不均一な色むらを伴っている場合でも、赤い線は結果が妥当と見なされる。中等度
もしくは高度の陽性試料の場合は、試験ラインの後ろに赤色が見えることがある。試験ラ
インおよびコントロールラインを視認できる限り、結果は妥当である。結果は以下のよう
に解釈する。
2本の線−陽性。赤い試験ラインと赤いコントロールラインは、トリコモナス抗原の検
出に対して陽性結果である。赤色の線が色の影であってよいことに注意すること。
1本の線−陰性。コントロールラインは赤いが試験ラインが赤くない場合は、推定陰性
結果である。
線なし−試験が妥当ではない。赤いコントロールラインが現れない、またはバックグラ
ウンドの色によって赤いコントロールラインの読取りが不可能な場合は、結果は妥当では
ない。
【0104】
本発明のアッセイの性能特徴は、複合参照標準サンプルセット(CRS)から決定した
。このサンプルセットは、膣炎の症状を提示する患者206例からの膣試料のコレクショ
ンである。これらの試料を液浸標本顕微鏡検査および本発明のアッセイによってトリコモ
ナスの存在について試験した。2つの方法間の不一致は、培養法(In−pouch−T
v(商標)培養法、BioMed社、カリフォルニア州サンノゼ)によって解決した。A
lonzo and Pepe(1999)も参照されたい。
【0105】
複合参照標準中の計206例のサンプルについて、液浸標本法によって75例は陽性と
同定され、そして131例は陰性と同定された。本発明の装置は、全液浸標本法陽性サン
プル(75例)を陽性と、そして101例の液浸標本法陰性サンプルを陰性と同定した。
しかし本装置は、残りの液浸標本法陰性サンプルを膣トリコモナスの存在について陽性と
同定した。
【0106】
さらに、液浸標本法と本発明の装置との不一致を解決するために、131例の液浸標本
法陰性サンプルを培養法によって分析した。液浸標本法により陰性と判定されたが、本発
明のアッセイにより陽性と判定された30例のサンプル中、培養法によって28例は陽性
、そして2例は陰性と判定されたことが見いだされた。さらに、液浸標本法および本発明
のアッセイのどちらによっても陰性であったサンプル101例は培養法によっても陰性で
あることが見いだされている。結果は、以下の表1に表示した。
【0107】
【表1】

【0108】
液浸標本顕微鏡検査と比較して、培養法によって解決した本発明のアッセイの性能は以
下の通りである。
XenoStrip−Tv(商標)の感度=X(+)WM(+)+X(+)WM(−)C
(+)/X(+)WM(+)+X(+)WM(−)C(+)+
X(−)WM(+)+X(−)WM(−)C(+)
=75+28/75+28+0+0
=103/103
=100.0%(C1 100%−100%)
【0109】
XenoStrip−Tv(商標)の特異性=X(−)WM(−)C(−)/X(−)W
M(−)C(−)+X(+)WM(−)C(−)
=101/101+2
=101/103
=98.1%(C1 95.4%−100%)
【0110】
XenoStrip−TV(商標)のNPV=X(−)WM(−)C(−)/X(−)W
M(−)C(−)+X(−)WM(+)+X(−)WM(−)C(+)
101/101+0+0
=101/101
=1.000(C1 1.000−1.000)
【0111】
XenoStrip−Tv(商標)のPPV=X(+)WM(+)+X(+)WM(−)
C(+)/X(+)WM(+)+X(+)WM(−)C(+)+
X(+)WM(−)C(−)
=75+28/75+28+2
=103/105
=0.981(C1 0.955−1.000)
【0112】
本発明のアッセイに使用される抗体試薬は、正常膣フローラ、他の性交渉感染性細菌(
Gardenerella vaginalisおよびカンジダ種を含む)および正常非
感染個体由来の泌尿生殖器サンプルとは非反応性であることが証明されている。
【0113】
本発明の抗体装置は、膣スワブ由来材料中に患者の分泌物から予想されるより低濃度の
10〜1000個(微生物)で存在する可溶性抗原を検出した。
【0114】
液浸標本顕微鏡検査による分析結果を培養法と比較し、方法の性能について、液浸標本
法対培養法および培養法対液浸標本法の比較を各々表2および3に表示した。
【0115】
【表2】

【0116】
【表3】

【0117】
表4では、本発明のアッセイの性能を培養法および液浸標本顕微鏡検査と比較する。
【0118】
【表4】

【実施例5】
【0119】
追加の試験
本発明のアッセイおよび装置の評価が3ヵ所の医師の診察室で実施された。各試験場所
での試験は、教育に関する背景が異なった個人によって実施された。各試験場所では、陰
性(3)、低陽性(3)、中陽性(3)、および高陽性(3)サンプルからなる無作為に
コード化されたパネルを試験した。入手された試験結果は、予想された結果と100%一
致した。
【0120】
本発明の好ましい実施形態を例示かつ記載してきたが、本発明の精神および範囲から逸
脱することなく様々な変更を加えられることは理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象における膣トリコモナス感染症を女性対象由来の膣スワブサンプルでは80%
を超える、および男性または女性対象由来の尿サンプルでは40%を超える信頼性で検出
する方法であって、
対象から膣スワブサンプルまたは尿サンプルを入手するステップと、
サンプルをトリコモナスアドヘシンペプチドに対する特異的な抗体と接触させるステッ
プと、
前記接触させるステップによって、対象がトリコモナスに感染している場合は抗体−ア
ドヘシンペプチド複合体を形成させるステップと、および
それにより規定の信頼性で対象におけるトリコモナス感染症の存在または不在を各々検
出するために、前記複合体の存在または不在を検出するステップと、を含む方法。
【請求項2】
接触させる抗体がAP65、AP51、AP33、AP23アドヘシンタンパク質、お
よびそれらの免疫学的に反応性を示すフラグメントからなる群から選択されるアドヘシン
ペプチドに対して免疫特異的である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記アドヘシンペプチドがAP65アドヘシンタンパク質である、請求項2の方法。
【請求項4】
前記抗体が抗AP65抗体である、請求項2の方法。
【請求項5】
前記接触させるステップ、形成させるステップ、および検出するステップが90%を超
える信頼性で膣サンプルからトリコモナス感染症を検出するために有効である請求項1の
方法。68において。前記接触させるステップが、上流から下流方向に、サンプル適用領
域と、トリコモナスアドヘシンペプチドに対して特異的な非固定化標識抗体を含有する反
応ゾーンと、および前記複合体内のトリコモナスアドヘシンペプチドに対して特異的な固
定化抗体を含有する検出ゾーンと、を有するドライストリップのサンプル適用ゾーン上に
サンプルを配置するステップを含み、このとき(i)サンプルは前記ストリップ上で反応
ゾーンに向かって下流方向に移動し、(ii)サンプル中のアドヘシンペプチド分析物は
反応ゾーン内の非固定化抗体と反応して移動性の標識アドヘシンペプチド−抗体複合体を
形成し、そして(iii)複合体は検出ゾーンに向かって移動し、(iv)前記複合体は
検出ゾーン内の固定化抗体と反応して検出ゾーン内で固定化標識複合体を形成し、そして
(v)非複合体化非固定化標識抗体は検出ゾーンの下流方向に移動し、そして検出するス
テップは検出ゾーンにおける固定化標識複合体の存在または不在を検出するステップを含
む、請求項1の方法。
【請求項6】
入手されるサンプルがパップスミアであり、前記接触させるステップが標識抗体の存在
下でパップスミアを形成するステップを含む請求項1の方法であって、そして該方法がさ
らに非結合標識抗体を取り除くためにパップスミアを処理するステップを含む方法。
【請求項7】
入手されて接触させられるサンプルがパップスミアを形成するステップから得られる残
留液である、請求項6の方法。
【請求項8】
入手されるパップスミアサンプルがCytyc社製Thin−Prepパップスミアに
より例示されるリキッドベースのパップスミアである、請求項7の方法。
【請求項9】
入手されて接触させられるサンプルがリキッドベースのパップスミアを形成するステッ
プから得られる残留液である、請求項7の方法。
【請求項10】
ヒト男性対象においてトリコモナス感染症を検出するための請求項1の方法であって、
入手される前記体液サンプルが尿であり、そして前記接触させるステップ、形成させるス
テップ、および検出するステップがトリコモナスに感染した40%を超えるヒト男性対象
においてトリコモナス感染症を検出するために有効である方法。
【請求項11】
ヒト対象における膣トリコモナス感染症を女性対象由来の膣スワブサンプルでは80%
を超える、および男性または女性対象由来の尿サンプルでは40%を超える信頼性で検出
するためのキットであって、
それに適用された液体をストリップ内の毛管現象によって吸い上げることのできるドラ
イストリップであって、前記ストリップが上流から下流方向に、サンプル適用ゾーン、反
応ゾーン、および検出ゾーンを有するドライストリップを含み、
前記反応ゾーンはそれと一緒に移動性のアドヘシンタンパク質−抗体複合体を形成させ
るために有効なトリコモナスアドヘシンペプチドに対して特異的な非固定化標識抗体を含
有し、
前記検出ゾーンは前記複合体内にトリコモナスアドヘシンペプチドに対して特異的な固
定化抗体を含有し、
このとき、体液サンプルをサンプル適用ゾーンへ適用した後に、(i)サンプルはスト
リップ上で反応ゾーンに向かって下流方向に移動し、(ii)サンプル中のアドヘシンペ
プチド分析物は反応ゾーン内の非固定化抗体と反応して移動性の標識アドヘシンペプチド
−抗体複合体を形成し、(iii)複合体は検出ゾーンに向かって移動し、(iv)複合
体は検出ゾーン内の固定化抗体と反応して検出ゾーン内で固定化標識複合体を形成し、そ
して(v)非複合体化非固定化標識抗体は検出ゾーンの下流方向に移動し、対象における
トリコモナス感染症の存在または不在を検出ゾーンにおける検出可能な標識の存在または
不在によって決定することを可能にするキット。
【請求項12】
非固定化抗体がAP65、AP51、AP33、AP23アドヘシンタンパク質、およ
びそれらの免疫学的に反応性のあるフラグメントからなる群から選択されるアドヘシンペ
プチドに対して免疫特異的である、請求項11のキット。
【請求項13】
前記アドヘシンペプチドがAP65アドヘシンタンパク質である、請求項12のキット

【請求項14】
非固定化抗体が抗AP65抗体である、請求項13のキット。
【請求項15】
前記抗体が細胞系DM116または細胞系C55によって産生する、請求項14のキッ
ト。
【請求項16】
ヒト対象におけるトリコモナス感染症を検出するための方法であって、
対象から体液サンプルを入手するステップと、
サンプルをトリコモナスアドヘシンペプチドと接触させるステップと、
前記接触させるステップによって、対象がトリコモナスに感染している場合は抗体−ア
ドヘシンペプチド複合体を形成させるステップと、および
それにより対象におけるトリコモナス感染症の存在または不在を各々確定するために前
記複合体の存在または不在を検出するステップと、を含む方法。
【請求項17】
アドヘシンペプチドがAP65、AP51、AP33、AP23アドヘシンタンパク質
、およびそれらの免疫学的に反応性のフラグメントからなる群から選択される、請求項1
6の方法。
【請求項18】
前記アドヘシンペプチドがAP65アドヘシンタンパク質である、請求項17の方法。
【請求項19】
前記接触させるステップが、上流から下流方向に、サンプル適用領域と、非固定化標識
トリコモナスアドヘシンペプチドを含有し、移動性の抗体−アドヘシンペプチド複合体を
形成させるためにトリコモナス感染者の体内に存在する抗トリコモナス抗体と反応させる
のに効果的な反応ゾーンと、およびヒト抗体に対して特異的な固定化抗体を含有する検出
ゾーンと、を有するドライストリップのサンプル適用ゾーン上にサンプルを配置するステ
ップを含み、このとき(i)サンプルは前記ストリップ上で反応ゾーンに向かって下流方
向に移動し、(ii)サンプル中の抗トリコモナス抗体分析物は反応ゾーン内の非固定化
標識アドヘシンペプチドと反応して移動性の標識アドヘシンペプチド−抗体複合体を形成
し、(iii)複合体は検出ゾーンに向かって移動し、(iv)前記複合体は検出ゾーン
内の固定化抗体と反応して検出ゾーン内で固定化標識複合体を形成し、そして(v)非複
合体化非固定化標識アドヘシンは検出ゾーンの下流方向に移動し、そして検出するステッ
プは検出ゾーンにおける固定化標識複合体の存在または不在を検出するステップを含む、
請求項16の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−190899(P2010−190899A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−44521(P2010−44521)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【分割の表示】特願2003−582539(P2003−582539)の分割
【原出願日】平成15年3月27日(2003.3.27)
【出願人】(504367586)ゼノトープ・ダイアグノスティクス,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】