説明

トリコーム特異的なプロモーター

トリコーム特異的な植物プロモーターが本発明で提供される。また、トリコーム特異的プロモーターを含んでいるトランスジェニックの細胞および生物体(特に、植物細胞および植物)およびトリコーム特異的プロモーターを用いて細胞および生物体において核酸配列を発現させる方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリコーム特異的な植物プロモーター及びそれらの使用に関する。前記プロモーターは、トリコーム細胞における相同性または異種性のタンパク質の発現のため, または活性な核酸分子(例えば、センスおよび/またはアンチセンス RNA)の発現のため使用しえる。プロモーター活性を有している核酸配列、同様に、キメラ遺伝子, ベクター および 組換え型の(トランスジェニック)細胞及びこれらを含んでいる生物体が提供される。また、前記プロモーターを含んでいる、トランスジェニックの細胞および生物体(特に、植物および植物細胞)を作出するための方法が提供される。前記プロモーターは、農薬(pesticides), 揮発性油(volatile oils), 香料(flavours)または芳香剤(fragrances), 薬学的成分(pharmaceutical components), 細胞傷害性タンパク質(cytotoxic proteins)などのトリコームにおける様々な化合物の産生に有用である。
【0002】
[発明の背景]
トリコームは、分枝状および非分枝状の毛, ベシクル(vesicles), フック 棘および 刺毛を含む植物における表皮の様々な増殖物(outgrowths)である。トリコームは草食動物に対する植物の保護に重要と考えられる囲まれた(staked)多細胞性の隆起している構造であるが、また蒸散による水分損失およびUV照射に対する構造(Mauricio & Rausher, 1997, Evolution 51, 1435 Wagner et al. 2004, Ann Bot 93, 3 ), 毒性の重金属および生体異物のためのシンク(Salt et al., 1995, Plant Phys 109, 1427; Dominguez-Solis et al. 2001, J Biol Chem 276, 9297; Gutierrez-Alcala et al. 2000, PNAS 97, 11108)としての構造でもある。
【0003】
様々な二次的な化合物を含んでいる腺性(Glandular)のトリコームは多くのナス科の種の葉に存在し、様々な有害生物への耐性における役割が記載されており(例えば、Juvik et al. 1988, J Chem Ecol 14, 1261; Heinz & Zalom, 1995, J Econ Entomol 88, 1494; Kennedy & Sorenson, 1985, J Econ Entomol 78, 547; Gurr, 1995, Plant Prot Quart 10,17; Gurr & McGrath, 2002, Ann App Biol Calo et al., 2006, J Exp Bot 57, 3911 )、トマトの腺性のトリコームは多量のテルペン (van der Hoeven et al., 2000) および メチルケトン(Fridman et al., 2005)を含む。トリコームは、タイプ I からVII(Luckwill, 1943, Aberdeen University Press, UK)に分類され、タイプ I, IV, VI および VIIは腺性トリコームタイプおよび II, III, および Vが非腺性として分類される。IV, V およびVI型は、野生のトマト S. habrochaites (Simmons and Gurr, 2005, Agricultural and Forest Entomol 7, 265)のトリコームで優勢である。S. pennelliにおいて、有害生物への抵抗性は、主にIV型の腺性トリコームの化学的性質および密度(density)に関連し、これにより植物の全ての部分がカバーされる (Simmons et al., 2003 Aus J Entomol 43, 196; 2004, Entomol Exp App 113, 95)。腺性トリコームの浸出物が物理的に除去される場合、有害生物の生存および寿命が増加し、死亡率および捕捉(entrapment)が減少する(Simmons and Gurr, 2005, Agricultural and Forest Entomol 7, 265)。トリコームタイプ IV および VIは、有害生物の制御とポジティブに関連する。
【0004】
綿の胚珠の非腺性トリコームは、高い経済的な重要性を有するバイオテクノロジーの標的として探索された(Kim and Triplett, 2001, Plant Physiol 127, 1361)。S. pennelliにおけるアシル糖およびS. habrochaitesにおけるメチルケトンおよびテルペンなどの様々な植物化学物質を分泌する腺性トリコームの能力から、これらの構造はバイオテクノロジーの適用に潜在的に適切とされ、トリコームに基づいて有害生物を管理する機会が提供される。
【0005】
トリコームにおけるタンパク質発現を有用な化合物(例えば、農薬, 薬学的成分, 揮発性油, 香料および芳香剤)の産生に利用できる(Callow, 2000 Advances in botanical research eds. Hallahan and Gray, San Diego Academic Press; Wagner 2004 Ann Bot 93, 3)。トリコームに特異的に成分を産生させるために、植物トリコームにおける遺伝子発現の制御が必要である。特殊化した構造または細胞における直接的なタンパク質発現の可能性によって、植物の代謝経路における(結果的に植物の性能における)干渉が避けられる。
【0006】
周知のカリフラワーモザイクウイルスプロモーター(CaMV 35S) プロモーターなどの構成的な強いプロモーターは、一般に異所性発現の研究に使用される。しかしながら、このタイプのプロモーターは、特異的な(おそらく)植物毒性の化合物(例えば、テルペン)の発現にそれほど適切ではない。そのうえ、代謝プールの消耗(exhaustion)が問題となるであろう。
【0007】
Gutierrez-Alcala (Gutierrez-Alcala 2005, J Exp Bot 56, 2487)は、タバコの腺性および非腺性トリコームの両方に活性を有するシロイヌナズナ OASA1 遺伝子のプロモーターを記載している。
【0008】
Wang等(Wang et al. 2002, J Exp Bot 53, 1891)は、全ての発生段階でタバコの腺性トリコームにおいて発現を示すタバコ P450 遺伝子(CYP71D16)からのトリコーム特異的プロモーターを記載する。
【0009】
WO2004/111183は、トマトおよびタバコの葉からのトリコーム特異的プロモーターを記載する。しかしながら、WO2004/111183に記載されたトランスジェニックの試験に際して、発現はトリコーム特異的ではない(例えば、葉の静脈における付加的な発現)、発現が弱いという意味で満足な結果がえられていなかった。
【0010】
トリコーム特異的プロモーターは単離されているが、異なるトリコーム特異的な又はトリコーム好適なプロモーターはなおも必要とされている。本発明はトリコームにおける作動可能に連関された核酸分子の発現を支配するため適切であるトリコーム特異的な転写制御配列を提供し、これは特に様々な植物の表面〔葉, 茎, 花の器官などの空気の部分(aerial parts)〕に見つけられる腺性トリコームにおけるものであるが、幾つかの種において、それらは特定の植物の表面(例えば、果実、種子)には非存在である。単純トリコーム(Simple trichomes)は、大抵の被子植物および幾つかの裸子植物およびコケ植物の空気表面(aerial surfaces)に存在する(Wagner et al. 2004, Ann Bot 93, 3)。被子植物において、トリコームは、種により葉, 花弁, 葉柄, 花柄, 茎および種皮に生じえる。腺性トリコーム(Glandular trichomes)は、おそらく維管束植物の30%に見つけられる(Dell and McComb, 1978, Adv Bot Res 6, 227; Fahn, 2000, Adv Bot Res 31, 37)。
【0011】
[発明の概要]
ゲノムに統合されたキメラ遺伝子を含んでいるトランスジェニック植物または植物細胞または植物の組織または器官が提供され、前記キメラ遺伝子は相同性または異種性の核酸配列に作動可能に連関されたトリコーム特異的プロモーターを含み、前記プロモーターが以下の群から選択されることを特徴とする:
(a) 配列番号 1, 配列番号 2または配列番号 3の核酸配列(または、その相補物),
(b) 配列番号 1, 配列番号 2または配列番号 3の機能的な断片(または、その相補物);
(c) 配列番号 1または配列番号 2または配列番号 3と少なくとも70%の配列同一性を含んでいる核酸配列(または、その相補物);
(d) 転写調節活性を含んでいる(c)の核酸配列の機能的な断片。
【0012】
また、植物細胞に導入された場合にプロモーター活性を有している単離された核酸配列が提供され、前記核酸配列は以下のものから選択される配列を含んでいる:
(a) 配列番号 1, 配列番号 2または配列番号 3の核酸配列(または、その相補物),
(b) 配列番号 1, 配列番号 2または配列番号 3の機能的な断片(または、その相補物);
(c) 配列番号 1または配列番号 2または配列番号 3と少なくとも70%の配列同一性を含んでいる核酸配列(または、その相補物);
(d) 転写調節活性を含んでいる(c)の核酸配列の機能的な断片。
【0013】
また、上記配列を含んでいるベクター, キメラ遺伝子および宿主細胞は、本発明の一態様である。
【0014】
更に、トランスジェニック植物または植物細胞を作出するための方法が提供され、該方法は以下の工程を含む:
(a) 転写される核酸配列(任意で、更に3'UTR 核酸配列に)に作動可能に連関された上記のプロモーターを含んでいるキメラ遺伝子または係るキメラ遺伝子を含んでいるベクターを作ること;
(b) 植物または植物細胞を前記キメラ遺伝子またはベクターで形質転換すること;および、任意で、
(c) トランスジェニック植物または植物細胞を再生すること。
【0015】
前記方法は、さらにトランスジェニック植物(又はその派生体、例えば、交配または自殖から派生し、前記派生体はキメラ遺伝子を保持する)を成長させること、トリコーム又はその部分(トリコームの浸出物)を更なる使用(分子農業)のため収穫することを含んでもよい。
【0016】
代わりに、例えば、キメラ遺伝子が植物の有害生物および/または病原体の抵抗性を増加させる場合、前記方法はさらにトランスジェニック植物(又はその派生体、例えば、交配または自殖から派生し、前記派生体はキメラ遺伝子を保持する)を成長させること、前記植物の全てまたは部分(例えば、葉, 果実, 種子, など)を更なる使用のため収穫することを含んでもよい。
【0017】
本発明で提供されるプロモーター配列は、明らかに腺性トリコームに特異的な発現を示す。さらに、野生のトマトからのプロモーター配列は栽培されたトマトのトリコームにおいて活性であることが本発明で示される。
【0018】
一般的な定義
本発明において「トリコーム(Trichome)」は、異なるタイプのトリコーム, 腺性トリコームおよび/または非腺性トリコームの両方を包含する。「トリコーム細胞(Trichome cells)」は、腺, または分泌性の細胞, 基部の細胞および柄(base cells and stalk), または葉柄細胞(stipe cells), 細胞外の腔およびクチクラ細胞(cuticle cells)などのトリコーム構造を構成する細胞を参照する。また、トリコームは、一つの単細胞からなりえる。本発明において「分子農業(Molecular farming)」は、一または二以上のキメラ遺伝子をトリコームにおいて発現しているトランスジェニック植物のトリコームから有用な化合物を産生および/または回収すること、例えば、二次的な代謝物, 薬学的化合物, 芳香剤または香料をトリコームにおいて産生することを参照する。「核酸配列」(または核酸分子)の用語は、一本または二本鎖の形態におけるDNAまたはRNA分子を参照し、特に本発明によるプロモーター活性を有しているDNAまたはタンパク質またはタンパク質フラグメントをコード化しているDNAを参照する。「単離された核酸配列(isolated nucleic acid sequence)」は、もはや天然の環境にない単離された核酸配列を参照し、例えば、細菌性の宿主細胞または植物の核またはプラスチドのゲノムにおける前記核酸配列である。
【0019】
「タンパク質」または「ポリペプチド」は、互換的に使用され、特定の作用様式, サイズ, 3-次元構造または起源と無関係にアミノ酸の鎖からなる分子を参照する。従って、タンパク質の「断片(fragment)」または「部分(portion)」は、なお「タンパク質」と参照されえる。「単離されたタンパク質(isolated protein)」は、インビトロまたは組換え型の細菌性または植物性の宿主細胞に存在するなどで、その天然の環境にもはやないタンパク質を参照するため使用される。
【0020】
「遺伝子(gene)」は、適切な転写調節性の領域(例えば、プロモーター)に作動可能に連関され、細胞中でRNA分子(例えば、mRNA)に転写される領域(転写された領域)を含んでいるDNA 配列を意味する。従って、遺伝子は、プロモーター, 翻訳開始に関与する配列などを含んでいる5' 非翻訳リーダー配列(翻訳開始コドンの上流の転写されたmRNA 配列に対応する5'UTRとも参照される), (タンパク質)コード領域(cDNAまたはゲノムの DNA)および転写終結部位およびポリアデニル化部位(例えば、AAUAAA又はそのバリアント)などを含んでいる3'非翻訳配列(3' 非翻訳領域,または3'UTRとも参照される)などの幾つかの作動可能に連関された配列を含みえる。
【0021】
「キメラ遺伝子」(組換え型の遺伝子)は、一または二以上の部分的な核酸配列が存在する特定の遺伝子において、通常天然で種に見つけられない、互いに天然で関連していない任意の遺伝子を参照する。例えば、プロモーターは、天然で転写される領域の部分または全てと又は別の調節領域と関連しない。「キメラ遺伝子(chimeric gene)」の用語は、プロモーターまたは転写調節配列が一または二以上のセンス配列(例えば、コード配列)またはアンチセンス(センス鎖の逆の相補物)または逆方向反復配列(センスおよびアンチセンス, そのRNA 転写物が転写に際して、二本鎖のRNAを形成する)に作動可能に連関された発現構築物を含むと理解される。
【0022】
「3' UTR」または「3' 非翻訳配列」(しばしば3' 非翻訳領域,または3’末端と参照される)は、転写終結点および(殆どであるが、全てではない真核生物のmRNAs)ポリアデニル化シグナル〔例えば、AAUAAA又はそのバリアント〕などを含む、遺伝子のコード配列の下流に見つけられる核酸配列を参照する。転写終結の後、mRNA転写物はポリアデニル化シグナルの下流で切断されえる。また、ポリ(A)テールが付加されてもよく、これはmRNAの細胞質(翻訳が生じる)への輸送に関与する。
【0023】
「遺伝子の発現」は、適切な調節領域(特に、プロモーター)に作動可能に連関されたDNA領域が、生物学的に活性〔即ち、生物学的に活性なタンパク質またはペプチド(または活性なペプチド断片)に翻訳される能力がある又はそれ自身活性である(例えば、転写後の遺伝子サイレンシングまたはRNAi, またはmiRNAsでのサイレンシング)〕であるRNAに転写されるプロセスを参照する。特定の態様における活性タンパク質は、存在するリプレッサードメインが原因でドミナントネガティブ機能を有しているタンパク質を参照する。コード配列は、好ましくはセンス配向にあり、所望の, 生物学的に活性なタンパク質またはペプチド,または活性なペプチド断片をコードする。遺伝子サイレンシングのアプローチにおいて、DNA配列は、好ましくはアンチセンスで,またはセンスおよびアンチセンス配向で標的遺伝子の短配列を含んでいるアンチセンス DNAまたは逆方向反復DNAの形態で存在する。また、遺伝子発現のダウンレギュレーションは、ステム−ループRNA 前駆体(pre-miRNAs)からプロセスされた内因性の21-24 ヌクレオチドの小さいRNAsのmicroRNAs (miRNA)の作用を通じて起こりえる。RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)に導入され、miRNAsはmRNA切断または翻訳の抑制により遺伝子発現をダウンレギュレートする。
【0024】
「異所性発現(Ectopic expression)」は、遺伝子が通常発現されない組織における発現を参照する。
【0025】
「転写調節配列(transcription regulatory sequence)」は、本発明において、転写調節配列に作動可能に連関された核酸配列の転写の割合を制御する能力のある核酸配列と規定される。従って、本発明で規定される転写制御配列は、転写を維持するため及び制御するための転写の開始に必要な全ての配列因子(プロモーター因子)を含み、例えば、アテニュエータ(attenuators)またはエンハンサー, サイレンサーも含まれる。たいていはコード配列の (5')上流の転写調節配列が参照されるが、コード配列の(3')下流に認められる調節配列もこの規定で包含される。
【0026】
本発明における「プロモーター」の用語は核酸断片を意味し、該断片は、機能して一以上の遺伝子の転写をコントロールし、前記遺伝子の転写開始部位の転写の方向に対し(5')上流に配置され(転写開始は、配列のポジション+1と参照され、それと相対的に上流のヌクレオチドはマイナスの番号を用いて参照される)、DNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位、転写開始部位および任意の他のDNAドメイン(シス作動性配列)の存在により構造的に同定され、転写因子結合部位、リプレッサーおよびアクチベータータンパク質の結合部位、および当業者に既知の、プロモーターからの転写量を直接的または間接的に作用して制御するヌクレオチドの任意の他の配列を含むが、それらに限定されない。真核生物の転写開始(+1)の上流のシス作用性配列の例には、TATAボックス (一般に、転写開始部位の約 -20〜-30 のポジション), CAAT ボックス (一般に、転写開始部位に対し約 -75 のポジション), 5'エンハンサーまたはサイレンサ因子などが含まれる。
【0027】
「構成的な」プロモーター(例えば、CaMV 35Sプロモーター)は、大抵の生理的な及び/又は発生の条件下で、基本的に全ての組織および器官において活性なプロモーターである。より好ましくは、構成的なプロモーターは、全ての主要な器官〔例えば、少なくとも葉, 茎(stems), 根, 種子, 果実および花〕における基本的に全ての生理的および発生の条件下で活性である。最も好ましくは、前記プロモーターは、全ての器官で大抵(好ましくは、全て)の生理的および発生の条件下で活性である。
【0028】
しかしながら、組織特異的な又は組織好適(tissue-preferred)なプロモーター(例えば、本発明によるプロモーター)も、「構成的に活性」であると参照しえる。従って、前記プロモーターは、大抵の発生の及び/又は生理的な条件下で活性であるが、特異的な組織のみにおいて又は主に特異的な組織においてである。従って、植物または植物細胞において「構成的な活性を有するプロモーター」または「構成的」であるプロモーターは、植物または植物細胞の特定の組織において、大抵の生理的な及び発生の条件下で転写を与える(confers)核酸配列を参照する。
【0029】
「誘導性」プロモーターは、生理的(例えば、特定の化合物の外部適用により)又は発生的に制御されるプロモーターである。
【0030】
「組織特異的」プロモーターは、トリコーム細胞などの特定のタイプの組織または細胞においてのみ活性である。それ故、プロモーター活性は、プロモーターがプロモーターの下流(3')に作動可能に連関された核酸配列の転写を与える状況を参照することにより記載されえる。
【0031】
「組織好適な(tissue preferred)」プロモーターは、特定の組織または細胞(例えば、トリコーム細胞および表皮細胞において)において優先的(しかし、排他的ではない)に活性である。
【0032】
「一または二以上の生物的および/または非生物的なストレスに非感受性である」又はその活性が「一または二以上の生物的および/または非生物的なストレス条件に暴露された場合に低下しない」プロモーターは、正常な生理的な及び発生の条件下でプロモーター活性を有し、生物的および/または非生物的なストレスが前記プロモーターを含んでいる生物体(例えば、植物)または細胞または組織または器官に付与される場合に前記活性は定量的に減少しない(少なくとも有意に減少しない)核酸配列を参照する。
【0033】
「ストレス」は、植物の量の欠損および/または質の欠損に至りえるが、植物に致死的ではない植物または植物細胞で作用する物理的な, 化学的な又は生物学的な起源の条件(conditions)または圧力(pressures)を参照する。本発明において「非ストレス条件(Non-stress conditions)」は、生理および発生が正常または至適な条件を参照する。「生物的ストレス(Biotic stress)」は、生物的な(生きた)因子、例えば、真菌, ウイルス, マイコプラズマ様生物体, 昆虫, 節足動物, 細菌, 線形動物など(即ち、特に、植物の有害生物および病原体)により生じたストレスを参照する。「非生物的ストレス(Abiotic stress)」は、非生物的な(生きていない)因子、例えば、温度ストレス(冷却/凍結, 熱), 塩分 (塩), 風, 金属, 日長(光周期), 水ストレス〔例えば、非常に僅かな又は非常に多い水の利用可能性、即ち、乾燥, 脱水, ウォータロギング(water-logging), など〕などにより生じたストレスを参照する。
【0034】
本発明に使用される、「作動可能に連関された(operably linked)」の用語は、機能的な関連性におけるポリヌクレオチド因子の連関を参照する。核酸が「作動可能に連関される」とは、それが別の核酸配列と機能的に関連付けられ配置された場合である。例えば、プロモーターまたは転写調節配列がコード配列に作動可能に連関されるとは、それが前記コード配列の転写に影響する場合である。作動可能に連関されるとは、連関されているDNA配列が典型的には近接(contiguous)し、二つのタンパク質コード領域を連結することが必要な場合には、「キメラタンパク質」を産生するために近接し、読み枠内にあることを意味する。「キメラタンパク質(chimeric protein)」または「ハイブリッドタンパク質(hybrid protein)」は、それ自体として天然に見つけられないが、連結されて機能的なタンパク質を形成し、連結されたドメインの機能(例えば、DNA結合ドメインまたはドミナントネガティブな機能を導く機能ドメインの抑圧)を呈する様々なタンパク質「ドメイン」から構成されるタンパク質である。また、キメラタンパク質は、天然で生じる二または三以上のタンパク質の融合タンパク質であってもよい。本発明に使用される「ドメイン」の用語は、少なくともドメインの機能的な特徴を有する新しいハイブリッドタンパク質を提供するため別のタンパク質に移すことができる特定の構造または機能を有するタンパク質の部分またはドメインを意味する。
【0035】
「標的ペプチド(target peptide)」の用語は、タンパク質を細胞内のオルガネラ(例えば、プラスチド, 好ましくは葉緑体, ミトコンドリア),または細胞外間隙(分泌シグナルペプチド)を標的(target)とさせるアミノ酸配列を参照する。標的ペプチドをコード化している核酸配列は、タンパク質のアミノ末端の終端(N末端の終端)をコード化している核酸配列に(インフレームで)融合されてもよい。例えば、トリコーム細胞に関する標的ペプチドは、前記細胞の白色体, 葉緑体, ミトコンドリア, 核, ペルオキシソーム, 小胞体, プラスチド, 細胞外の腔(extra-cellular cavities)または小胞(vacuoles)を標的とするペプチドを含む。
【0036】
「核酸構築物」または「ベクター」は、本発明で、組換えDNA技術の使用から生じ、外因性DNAを宿主細胞に送達するため使用される人造の核酸分子を意味すると理解される。ベクターバックボーン(vector backbone)は、例えば、当該技術分野において既知であり、本発明の他で記載される、バイナリーまたはスーパーバイナリーベクター(例えば、US 5,591,616, US2002138879およびWO 95/06722を参照されたい), 同時統合ベクター、またはT-DNAベクターであってもよく、そのなかにキメラ遺伝子が統合される又は適切な転写調節配列 / プロモーターが既に存在する場合、所望の核酸配列 (例えば、コード配列, アンチセンスまたは逆方向反復配列)のみが転写 調節配列 / プロモーターの下流に統合される。通常、ベクターは、選択可能なマーカー, マルチプルクローニングサイトなどの分子クローニングにおける使用を促進するための更なる遺伝的な因子を含む(以下の記載を参照されたい)。
【0037】
「宿主細胞(host cell)」または「組換え型の宿主細胞(recombinant host cell)」または「形質転換した細胞(transformed cell)」は、特に所望のタンパク質または転写の際に標的遺伝子/遺伝子ファミリーをサイレンシングするためのアンチセンスRNAまたは逆方向反復RNA(またはヘアピンRNA)を産生する核酸配列をコード化しているキメラ遺伝子を含んでいる少なくとも一つの核酸分子を前記細胞に導入した結果として生じる新しい個々の細胞(または生物体)を参照している用語である。宿主細胞は、好ましくは植物細胞であるが、細菌細胞, 真菌細胞(酵母細胞を含む), などであってもよい。宿主細胞は、染色体外(extra-chromosomally)の(エピソーム)複製分子として核酸構築物、または、より好ましくは宿主細胞の核またはプラスチドのゲノムに統合されるキメラ遺伝子を含んでもよい。
【0038】
「選択可能なマーカー(selectable marker)」の用語は、当業者に馴染みのある用語であり、発現した場合に選択可能なマーカーを含んでいる細胞(a cell)または細胞(cells)を選択するため使用できる遺伝的な実体(genetic entity)を記載するため本発明において使用される。選択可能なマーカー遺伝子産物によって、例えば、抗生物質抵抗性,またはより好ましくは除草剤抵抗性または表現型の形質(例えば、色素の変化)または栄養要求性(nutritional requirement)などの別の選択可能な形質が与えられる。「レポーター(reporter)」の用語は、主に可視のマーカー, 例えば、緑色蛍光タンパク質 (GFP), eGFP, ルシフェラーゼ, GUSなど、同様に、nptIIマーカーなどを言及するため使用される。
【0039】
遺伝子またはタンパク質の「オルソログ(ortholog)」の用語は、本発明において、遺伝子またはタンパク質として同じ機能を有するが、遺伝子を保持している種が分岐した際の時点から配列が(通常)分岐した別の種に見つけられる相同的(homologous)な遺伝子またはタンパク質を参照する(即ち、遺伝子が種分化で共通の祖先から進化した)。従って、一つの植物種からの遺伝子のオルソログは、配列比較(例えば、全体配列または特異的なドメインに対する配列同一性のパーセンテージ) および 機能解析の両方に基づいて他の植物種で同定されえる。
【0040】
「相同(homologous)」および「異種(heterologous)」の用語は、核酸またはアミノ酸の配列とその宿主の細胞または生物体(特に、トランスジェニック生物体)との間の関連性を参照する。それゆえ、相同的な配列は宿主の種において天然で見つけられ(例えば、トマト遺伝子で形質転換されたトマト植物)、異種性の配列は宿主細胞において天然で見つけられない(例えば、ジャガイモ植物からの配列で形質転換されたトマト植物)。前後関係に応じて、「ホモログ(homolog)」または「相同的(homologous)」は、共通の祖先の配列からの子孫である配列を参照しえる(例えば、それらはオルソログであってもよい)。
【0041】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件(Stringent hybridisation conditions)」は、所与のヌクレオチド配列と実質的に同一のヌクレオチド配列を同定するため使用しえる。ハイブリダイゼーション条件の厳密性は、配列依存的であり、異なる状況において異なるであろう。一般に、ストリンジェントな条件は、既定のイオン強度およびpHで特定の配列に関するメルティングポイント(Tm)の 温度よりも約5℃低いように選択される。Tmは、特定の温度(既定のイオン強度およびpHのもとでの)であり、その温度で標的配列の50%が、完全にマッチしたプローブとハイブリダイズする。典型的に、ストリンジェントな条件は、塩 (NaCl) 濃度が約 0.02 モル、pH 7 、温度が少なくとも60゜Cで選択される。塩濃度を低下させること及び/又は温度を増加させることによって、ストリンジェンシー(stringency)が増加する。RNA-DNA ハイブリダイゼーション(例えば、100 ntのプローブを用いるノーザンブロット)のためのストリンジェントな条件は、例えば、少なくとも 0.2X SSC で63゜C で20 minでの一洗浄を含む条件または均等な条件である。DNA-DNA ハイブリダイゼーション(例えば、100 ntのプローブを用いるサザンブロット)のためのストリンジェントな条件は、例えば、少なくとも 0.2X SSC で少なくとも 50゜Cの温度(通常は約 55゜C)で20 minでの一洗浄(通常は2)を含む条件または均等な条件である。Sambrook 等(1989)並びにSambrook およびRussell (2001)をも参照されたい。
【0042】
「高度にストリンジェント」な条件は、例えば、ハイブリダイゼーションを65゜Cで、6x SSC (20x SSC は3.0 M NaCl, 0.3 M Na-クエン酸, pH 7.0を含む), 5x デンハート液(100X デンハートは2% フィコール, 2% ポリビニルピロリドン, 2% ウシ血清アルブミンを含む), 0.5% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS), および 20 μg/mlの変性キャリヤー DNA (一本鎖の魚精子DNA, 平均長120 - 3000 ヌクレオチド)を非特異的なコンペティターとして含んでいる水溶液中で行うことで提供できる。ハイブリダイゼーションにつづき、高度の厳密性での洗浄を幾つかの工程でおこない、最終的な洗浄 (約 30 min)を前記ハイブリダイゼーション温度で0.2-0.1 x SSC, 0.1% SDSでおこなってもよい。
【0043】
「中等度にストリンジェント」は、上記の溶液中でのハイブリダイゼーションと均等であるが、約 60-62゜Cである条件を参照する。その場合、最終的な洗浄が前記ハイブリダイゼーション温度で1x SSC, 0.1% SDSで行われる。
【0044】
「低度にストリンジェント」は、上記の溶液中でのハイブリダイゼーションと均等で約 50-52゜Cの条件を参照する。その場合、最終的な洗浄が前記ハイブリダイゼーション温度で2x SSC, 0.1% SDSで行われる。Sambrook 等(1989)並びにSambrook およびRussell (2001)をも参照されたい。
【0045】
「配列同一性(Sequence identity)」および「配列類似性(sequence similarity)」は、二つの配列の長さに応じて、グローバルまたはローカルアラインメントアルゴリズムを用いて二つのペプチドまたは二つのヌクレオチド配列のアラインメントで決定できる。類似する長さの配列は、好ましくは配列を全体長に対して至適に整列させられるグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman Wunsch)を用いて整列させられ、実質的に異なる長さの配列は好ましくはローカルアラインメントアルゴリズム(例えば、Smith Waterman)を用いて整列させられる。配列(例えば、プログラム GAPまたはBESTFITで初期設定パラメータを用いて至適に整列させられた場合)が少なくとも特定の最小のパーセンテージの配列同一性(以下に規定される)を共有する場合、配列は「実質的に同一(substantially identical)」または「本質的に類似(essentially similar)」と参照されえる。GAP(ギャップ)は、Needleman および Wunsch のグローバルアラインメントアルゴリズムを使用して二つの配列を全体長(全長)に対して整列させ、マッチする数を最大化し、ギャップの数を最小化させる。二つの配列が類似する長さを有する場合、グローバルアラインメントを適切に使用して配列同一性が決定される。一般に, ギャップ初期設定パラメータは、ギャップクリエーションペナルティー = 50 (ヌクレオチド) / 8 (タンパク質) およびギャップエクステンションペナルティー = 3 (ヌクレオチド) / 2 (タンパク質)で使用される。ヌクレオチドに関して使用される初期設定のスコアリングマトリックスはnwsgapdnaであり、タンパク質に関して初期設定のスコアリングマトリックスはBlosum62である(Henikoff & Henikoff, 1992, PNAS 89, 915-919)。配列アラインメントおよび配列同一性パーセンテージのスコアは、コンピュータ・プログラム(例えば、Accelrys Inc., 9685 Scranton Road, San Diego, CA 92121-3752 USA.から利用可能なGCG Wisconsin Package, Version 10.3)を用いて又はオープンソース・ソフトウェア〔例えば、EmbossWIN(version 2.10.0)におけるプログラム「needle」(グローバルのNeedleman Wunschアルゴリズムを用いる)又は「water」(ローカルのSmith Watermanアルゴリズムを用いる)〕を用いて、上記のGAPの同じパラメータを用いて又はデフォルトの設定〔「needle」および「water」の両方で、タンパク質およびDNAアラインメントの両方で、デフォルトのギャップオープニングペナルティーは10.0 およびデフォルトのギャップエクステンションペナルティーは0.5であり; デフォルトのスコアリングマトリックスはタンパク質に関してBlossum62、DNAに関してDNAFullである〕を用いて決定しえる。配列が実質的に異なる全体長を有する場合、ローカルアラインメント(例えば、Smith Watermanアルゴリズムを用いて)が好適である。代わりに、パーセンテージ類似性または同一性を、公共のデータベースをFASTA, BLAST, などのアルゴリズムを用いて探索することで決定しえる。
【0046】
本明細書及び請求項において、「含む(to comprise)」の動詞及びその変化形は、その単語につづく事項が含まれるが、具体的に言及されない事項が除外されない非限定的な意味で使用される。加えて、不定冠詞「a」または「an」による事項の参照によって、僅か一つの事項が存在することを明らかに必要とする文脈がないかぎり一を超える事項が存在する可能性が除外されない。従って、不定冠詞「a」または「an」は、通常「少なくとも一つ(at least one)」を意味する。本発明において「配列(sequences)」を参照している場合、一般に特定の配列のサブユニットを有する実際の物理的な分子(例えば、アミノ酸)が参照されることがさらに理解される。
【0047】
本発明の「植物(plant)」または「植物(plants)」(または複数の植物)の参照がなされる場合は常に、植物の部分(細胞, 組織または器官, 種子, 切断された又は収穫された部分, 葉, 実生, 花, 花粉, 果実, 茎, 根, カルス, プロトプラスト, など), 親を区別している特徴(例えば、トランス遺伝子の存在)を保持する植物の後代(progeny)またはクローンの繁殖体(clonal propagations)、例えば、自殖またはハイブリッド種子などの交配で得られる種子(二つの近交系の親株を交配することで得られる), ハイブリッド植物及びそれから由来する植物の部分が、他に断らない限り本発明に包含されることが理解される。
【0048】
[詳細な記載]
構成的なプロモーター〔例えば、CaMV 35S プロモーター(単一の 35S プロモーター, Franck et al., 1980, Cell 21, 285-294により記載される)〕は、特異的な組織レベルまたは特異的な条件でのみ制御される必要がある遺伝子の発現に有用とは考えられない。
【0049】
本発明において、幾つかの植物プロモーターが提供され、これらは構成的であるが、トリコームにおいて組織特異的活性を呈し、任意で一または二以上の生物的および/または非生物的なストレスに本質的に非感受性である。係るプロモーターは、トランスジェニック植物における核酸配列の発現の制御に望まれる。
【0050】
一態様において、本発明は、トマト遺伝子(トマトのテルペンシンターゼ並びにそのオルソログおよびホモログ)のプロモーター領域を提供し、これにより栽培トマト(Solanum lycopersicum), 他のナス科および他の植物のファミリーおよび種などの宿主植物において構成的で特異的な腺性トリコームおよび/または好適に発現する腺性トリコームが与えられる。
【0051】
核酸配列, キメラ遺伝子およびベクター
一態様において、植物細胞においてプロモーター活性を有している単離された核酸 配列(好ましくは、ゲノムまたは合成のDNA配列)を提供し、これは植物のトリコーム(例えば、葉, 茎 および花の器官に認められるトリコームにおいて)において強い構成的な転写性のトリコーム特異的活性を示す。好ましくは、前記プロモーターは、一または二以上の腺性 (タイプ I, IV, VI および/またはVII)において活性である。
【0052】
トランスジェニック植物または植物 組織 または器官が一または二以上の非生物的な及び/又は生物的なストレスに供される場合、好ましくは本発明による核酸配列のプロモーター活性は減少しない(少なくとも、有意に減少しない)。この事項における有意な減少は、非ストレス条件下で同じ組織または器官における活性と比較して1%以上(例えば、2%, 3%, 5%, 10%, など., 100%まで)のプロモーター活性の統計的に有意な(定量的な)減少を参照する。従って、好ましくはプロモーターは、一または二以上のストレス条件下で(トリコーム細胞において)強く構成的なままである。
【0053】
一態様において、配列番号1, 配列番号2, または配列番号3, 又はそれと本質的に類似するヌクレオチド配列(「バリアント(variants)」と参照される, 以下の定義を参照されたい), または一または二以上のトリコームタイプおよび/またはトリコーム細胞においてプロモーター 活性を有するもののいずれかの活性(機能的な)な断片(例えば、配列番号: 1, 2 または3の少なくとも 200, 300, 400, 500, 600, 800, 900, 1000, 1200, 1500, 2000, 2400 またはそれ以上の連続的なヌクレオチドの又はそのバリアントの断片)を含んでいる又はからなるトリコーム特異的プロモーターが提供される。
【0054】
「活性な断片(Active fragments)」または「機能的な断片(functional fragments)」, または「プロモーター活性を有している断片(fragments having promoter activity)」は、一または二以上の異なるタイプの植物組織および器官(例えば、茎, 葉, 花芽または花の部分における)に見つけられる一または二以上のトリコームタイプおよび/または一または二以上のトリコーム細胞において転写を与える能力のある核酸断片を参照する。好ましくは、活性フラグメントによって、トリコーム特異的および/または少なくともトリコーム好適な発現が与えられ、それらフラグメントは好ましくは少なくとも配列番号 1, 2 または3のプロモーターと類似する強さ(または、より高い強度)を有する。この事項は以下の記載のとおり、植物を係る断片(好ましくはレポーター遺伝子に作動可能に連関される)で形質転換すること, およびトリコームにおけるプロモーター活性を定性的(空間時間的な転写)および/または好ましくは定量的にアッセイすることで試験できる。明らかに、DNA断片は、例えば、de novo DNA合成, または制限酵素, または末端ヌクレアーゼなどを用いる幾つかの様式で産生しえる。例えば、様々なサイズの5' 欠失を含む断片が作られる欠失分析(Deletion analysis)を使用して、強力および/または特異的な転写活性を創造することができる。
【0055】
一態様において、プロモーター断片の強さは、35S プロモーターのものと定量的に本質的に同一(または、より強力)である。
【0056】
配列番号 1, 2 または3を含んでいる又はからなるプロモーター, そのバリアント又はこれらの何れかの機能的な断片は、好ましくは前記プロモーターを含んでいる植物または植物細胞, 組織又は器官が暴露されえる少なくとも一つ(しかし、好ましくはより多くの, 最も好ましくは任意の)の生物的および/または非生物的なストレスに非感受性である(以下を参照されたい)。従って、活性は、一または二以上のストレス条件への曝露の間にトリコームにおいて構成的で強いままである。
【0057】
また、上記のトリコーム特異的プロモーターの「バリアント」, および係るバリアントの機能的な断片が提供される。これらのバリアントは、配列番号 1 および/または 配列番号 2 および/または 配列番号 3 (および、これらのバリアント配列の機能的な断片, 上記)と本質的に類似する核酸配列を含み、プロモーター活性を有する〔即ち、植物のトリコームにおいて(好ましくは構成的な)転写を提供する能力もある〕。配列番号1および/または 2 および/または 3と「本質的に類似(essentially similar)」する配列は、NeedlemanおよびWunschまたはSmith Waterman ペアワイズアラインメント〔例えば、Embosswin(例えば、バージョン2.10.0)のプログラム「needle」又は「water」で、デフォルトのgapクリエーションおよびgapエクステンションペナルティー〕を用いて、配列番号1 および/または配列番号2 および/または配列番号3と少なくとも約 50, 55, 60, 65, 70, 75, 80, 85, 90, 95, 96, 97, 98, 99% 以上の核酸配列同一性を含んでいる核酸配列であり、これらはトリコーム特異的に活性である。好適な態様において、バリアント(および機能的な断片)の活性は、トリコームにおいて強い〔即ち、配列番号 1, 2 または3で提供される活性と定量的に少なくとも同等に強い(または、より強い)〕。また、細胞タイプ特異性は、少なくとも配列番号 1, 2 または3の特異性と同じ又はより特異的である。更なる態様において、これらのバリアント(および、その機能的な断片)の活性は、一または二以上の生物的および/または非生物的なストレスに非感受性である。
【0058】
本発明に提供される核酸配列のバリアントまたは機能的な断片を同定, 合成または単離するため多くの方法(例えば、核酸ハイブリダイゼーション, PCR技術, インシリコ分析および核酸合成など)を使用できることは明らかである。例えば、核酸ハイブリダイゼーションを使用して、配列番号 1, 2 または3に又はこれらの断片に、ストリンジェントな条件または中等度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする他の植物種または品種中のDNA配列を同定することができる。
【0059】
代わりに、配列データベースを、インシリコでバリアント配列に関し既知のアルゴリズム(例えば、 BLAST, FASTA, など)を用いてスクリーニングできる。この様式において、バリアント配列をトマトの他の植物種または他の品種から単離することが可能である。特に本発明に含まれるものは、トマトの他の品種または他の植物種(特に、Solanum属の種)に見つけられる同じ遺伝子(モノテルペン シンターゼ 1, 例えば、リナロール シンターゼ; セスキテルペン シンターゼ 1)の他の対立遺伝子のプロモーターである(以下に記載される)。例えば、cDNA ライブラリーを、一または二以上の植物種, 一または二以上の品種, または一つの種または品種の異なる組織から構築しえる。cDNA ライブラリーを、モノテルペン シンターゼ 1 またはセスキテルペン シンターゼ 1 cDNAsに関してスクリーニングしてもよい(例えば、配列番号 1, 2, 3又はその断片またはバリアントから由来するプローブまたはプライマーを用いて)。同等に、ディファレンシャルディスプレイ法(例えば、cDNA-AFLP)を使用して係る転写物を同定しえる。TAIL-PCR(Liu et al. 1995, Genomics 25(3):674-81; Liu et al. 2005, Methods Mol Biol. 286:341-8), Linker-PCR, またはInverse PCR (IPCR)などの方法を使用して遺伝子の上流の転写調節領域を単離しえる。
【0060】
同じ遺伝子のバリアント〔即ち、モノテルペン シンターゼ 1 (リナロール シンターゼ) およびセスキテルペン シンターゼ 1のオルソログ および/または ホモログ〕は、例えば、GenBank アクセッション番号 AY840091 (S. lycopersicum MTS1 cDNA およびタンパク質; van Schie et al. 2007, Plant Mol Biol. 64: 251-263), AF279455 (S. habrochaites SSTLH1; van der Hoeven et al. 2000, Plant Cell 12: 2283-2294 cDNA およびタンパク質), AF279453 (S. lycopersicum SSTLE1; van der Hoeven et al. 2000, Plant Cell 12: 2283-2294)のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列と少なくとも 50, 55, 60, 65, 70, 75, 80, 85, 90, 95, 96, 97, 98, 99%以上の核酸またはアミノ酸の配列同一性を含んでいる核酸配列(DNAまたはRNA)またはアミノ酸配列を含む。好ましくは、配列同一性は、Needleman および WunschまたはSmith Waterman ペアワイズアラインメント 〔例えば、Embosswin(例えば、バージョン2.10.0)のプログラム「needle」又は「water」で、デフォルトのgapクリエーションおよびgapエクステンションペナルティー〕を用いたペアワイズアラインメントで決定される。また、これらのバリアントのプロモーターは、好ましくはトリコーム特異的に活性である。cDNA-AFLP, 他のPCRに基づく方法またはノーザンブロット法などの方法を使用して係る遺伝子を単離または同定しえる。それらのプロモーターを、既知の方法を用いてクローン化できる。好適な態様において、プロモーターは、ナス科のファミリーに属する植物、例えば、Solanum(再分類されたLycopersicon の種を含む), Nicotiana, Capsicum, Petunia, Coffeaなどの属の種からのモノテルペン シンターゼ 1 (リナロール シンターゼ) および セスキテルペン シンターゼ 1 遺伝子から得られる。特に、野生種からのオルソログが望まれる。
【0061】
核酸配列(またはバリアントの断片)が構成的なプロモーター活性を有する(即ち、トリコームにおいて特異的な転写を与える能力がある)かどうか, 活性が「強い」かどうか, およびトランスジェニックの細胞, 組織, 器官または生物体(特に、植物または植物細胞)が暴露される核酸配列の活性が少なくとも一つの(しかし、好ましくはより多くの, 最も好ましくは任意の)生物的および/または非生物的なストレスに非感受性であるかどうかは、様々な方法を用いて決定できる。一般に、定性的な方法および定量的な方法を区別できる。定性的な方法(例えば、組織学的な GUS 染色)を使用してプロモーターの空間時間的な活性(spatio-temporal activity)を決定しえる(プロモーターが、特定の組織または器官、または特定の環境の/発生の条件下において活性であるかないか)、定量的な方法(例えば、蛍光定量的な GUS アッセイ)はコントロールと比較して活性のレベルを定量する。適切なコントロールは、例えば、空のベクター(ネガティブコントロール)で形質転換した又はN. tabacum,または非-トランスジェニックのアラビドプシス(Arabidopsis)植物の表皮 および トリコームにおいて活性であるアラビドプシス CER6 プロモーター (Hooker et al. 2002, Plant Phys 129, 1568)などの他のプロモーターを含んでいる構築物で形質転換した植物である。
【0062】
相対的または絶対的な活性を検査(および任意で定量)するため、クローン化された又は合成の核酸分子(例えば、配列番号 1, 2 または3,またはそのバリアント ,またはこれらの任意の断片)を既知の核酸配列 (例えば、レポーター遺伝子, 例えば、gusA,または任意の特異的なタンパク質をコード化している遺伝子)に作動可能に連関してもよい及びこれを使用して植物細胞を既知の方法で形質転換し、それから植物を再生しえる。
【0063】
プロモーターの活性は、例えば、下流の核酸配列のRNA 転写物のレベルを特にトリコーム細胞において検出することでアッセイ(任意で、定量)できる。例えば、定量的な RT-PCRまたは他の PCR に基づく方法などの定量的な方法を用いて行ってもよい。代わりに、レポータータンパク質またはレポータータンパク質の活性をアッセイし、定量してもよい。例えば、レポーター遺伝がgus 遺伝子である場合、例に記載のとおり蛍光定量的な GUS アッセイを使用しえる。この様式において、正常な生理的な(非-ストレス)条件下で維持された形質転換した植物または植物細胞の定量的なプロモーター活性レベルを、一または二以上の 生物的または非生物的なストレスに暴露された植物または植物細胞のレベルと比較できる。また、トリコーム細胞における相対的なまたは絶対的(absolute)な活性レベルは、構成的なコントロールプロモーター、例えば、35S プロモーター, ダブル-35S プロモーターと又はトリコームにおいて活性を有する他のプロモーター、例えば、CYP71D16 プロモーターまたはOASA1 プロモーターと比較できる。好ましくは、平均のプロモーター 活性 レベルが決定され、統計学的な方法を用いて比較されることが理解される。
【0064】
従って、活性が特定の時間(空間時間的な活性)にトリコーム細胞に見つけられるかどうかは、例えば、植物または植物細胞をプロモーターレポーター遺伝子構築物で形質転換すること、トリコームを様々な発生段階でRNA 転写物またはレポータータンパク質(または、その活性)について分析することにより試験できる。一つの単純な検査は例えば組織化学的な GUS 染色を用いることであり、青色での視覚的な評価によりトリコーム中での活性およびトリコームの様々な発生段階での活性が示される。
【0065】
前に述べたとおり、プロモーター活性が構成的であり、好ましくは特に配列が導入された宿主の種または品種におけるトリコーム細胞において強いことが好適である。構成的な活性は、プロモーターに作動可能に連関された任意の核酸配列の転写物が好ましくは大抵(正常な, 非-ストレス)の生理的な発生の条件下でトリコーム細胞において産生されることを意味する。一態様において、本発明によるプロモーターは、好ましくは上皮性の細胞において活性ではない。好ましくは、プロモーターは、茎, 花および/または(若い)葉に見つけられる全ての腺性トリコームにおいて活性である。
【0066】
好ましくは、本発明によるプロモーターは、例えば、以下に記載される全ての植物種, 双子葉類の種および単子葉類の種の両方(例えば、トマト, タバコ, Brassica, メロン および レタスなど)のトリコームにおいて強い, 構成的な活性を提供する。
【0067】
下流(3')に連関された核酸配列の発現を駆動する能力に関して本発明によるプロモーター(断片またはバリアントを含んでいる)の強さ(定量的な活性)は、様々な既知の方法を用いて定量的に決定できる。例えば、転写された転写物 (mRNA)の量は、定量的な RT-PCRまたはノーザンブロット法を用いて定量できる。好ましくは、プロモーターの強さは、少なくとも本質的に正常な(非-ストレス)条件下でCaMV 35S (Franck等, 上記)のトリコームにおける活性と等しい。従って、「強い」は正常な非ストレス条件下でプロモーターの強さが好ましくは少なくともおよそ同じであるが、より好ましくはトリコームにおいて35Sのものよりも強いことを意味する。最も好ましくは、トリコームにおける平均の定量的なプロモーター活性は、少なくともCaMV 35S プロモーターの活性と均等(equivalent)である,または少なくともトリコーム中のCaMV 35S プロモーターの平均活性よりも5%, 10%, 20%, 30%, 35%, 40%, 45%, 50%, 55%, 60%, 70%, 75%,又はそれ以上に高い。形質転換体の同じコピー数および接合状態レベル(zygosity level)を比較すべきことが理解される(例えば、導入遺伝子に関するヘミ接合性またはホモ接合性)。好ましくは、単一コピー(single copy)の形質転換体が同定(identified)され、比較される。宿主植物のトリコームにおける35S プロモーターの強さを、例えば、P35S-GUS 植物におけるGUS 遺伝子発現を分析すること及び好ましくは定量すること及び本発明によるプロモーターの発現と比較することにより試験できる。
【0068】
代わりに、「強い」は正常な非-ストレス条件下でトリコームにおいてプロモーターの強さが好ましくは少なくともおよそ同じであるが、より好ましくは少なくとも一つの配列番号 1, 2 または3からなるプロモーターのものよりも強いことを意味してもよい。最も好ましくは、トリコームにおける平均の定量的なプロモーター活性は、トリコームにおける少なくとも一つの配列番号 1, 2 または3からなるプロモーターの活性と均等である,または少なくとも一つの配列番号 1, 2 または3からなるプロモーターの平均活性よりも5%, 10%, 20%, 30%, 35%, 40%, 45%, 50%, 55%, 60%, 70%, 75%,又はそれ以上に高い。形質転換体の同じコピー数および接合状態レベルを比較すべきことが理解される(例えば、導入遺伝子に関するヘミ接合性またはホモ接合性)。好ましくは、単一コピーの形質転換体が同定され、比較される。
【0069】
従って、プロモーターを含んでいる植物の組織または器官または植物が乾燥ストレス, 熱ストレス, 水ストレス(水が多すぎる又は少なすぎる場合の両方), 病原体ストレス(例えば、ウイルス感染、例えば、CMV, 真菌感染, 細菌感染, など), 有害生物のストレス(例えば、昆虫の摂食), 創傷(wounding), 塩ストレス(salt stress), 放射線ストレス(radiation stress), などの少なくとも一つ又は好ましくは幾つかから選択されるストレス条件に暴露された場合、本発明によるプロモーターの強さは、好ましくは本質的に不変のまま残る,または少なくとも減少しない(または有意に減少しない)。また、定量的な試験を使用してこの事項を決定できる。例えば、プロモーターを含んでいる組換え型の植物は、常温の環境から温かい環境(例えば、約 27゜Cから約 50゜Cまで)に移されてもよい。そして、様々な組織におけるプロモーター活性は、通常の条件下および温かい温度の条件下で同じ組織における活性と比較されてもよい。
【0070】
一態様において、組換え型の細胞または生物(特に、植物細胞または植物)における相同性または異種性の核酸配列の発現のため任意の上記プロモーターの使用が提供される。この使用は、プロモーターを相同性または異種性の核酸配列と作動可能に連関させること、植物または植物細胞を形質転換することを含む(以下にさらに記載される)。
【0071】
上記の記載の中心は植物および植物細胞における本発明によるプロモーターの使用であるが、細菌, 真菌(酵母を含む、例えば、Pichia, hansenula, など), 哺乳類, ヒト細胞または細胞株などの任意の原核生物または真核生物の細胞または生物体などの他の細胞および生物体における相同性または異種性の核酸配列の発現のためのプロモーターの使用も本発明の態様である。
【0072】
本発明によるキメラ遺伝子およびベクター
本発明の一態様において、プロモーター活性を有している上記の核酸配列は、キメラ遺伝子を, 及びこれらを前記キメラ遺伝子の宿主細胞への転移および宿主細胞(例えば、形質転換した細胞から由来する細胞, 組織, 器官または全体の生物体)における作動可能に連関された相同性または異種性の核酸配列の発現のため含んでいるベクターを作るため使用される。
【0073】
宿主細胞は、好ましくは植物細胞である。任意の植物が適切な宿主であり、例えば、単子葉植物または双子葉植物、例えば、トウモロコシ/コーン(Zeaの種, 例えば、Z. mays, Z. diploperennis (chapule), Zea luxurians (Guatemalan teosinte), Zea mays subsp. huehuetenangensis (San Antonio Huista teosinte), Z. mays subsp. mexicana (メキシコのブタモロコシ), Z. mays subsp. parviglumis (Balsas teosinte), Z. perennis (多年生のブタモロコシ) および Z. ramosa, コムギ (Triticumの種), オオムギ (例えば、Hordeum vulgare), カラスムギ (例えば、Avena sativa), ソルガム(Sorghum bicolor), ライ麦 (Secale cereale), ダイズ (Glycine spp, 例えば、G. max), 綿 (Gossypiumの種, 例えば、G. hirsutum, G. barbadense), Brassica spp(例えば、B. napus, B. juncea, B. oleracea, B. rapa, など), ヒマワリ (Helianthus annus), タバコ (Nicotiana species), アルファルファ (Medicago sativa), イネ (Oryza species, 例えば、O. sativa indica 栽培品種群またはjaponica栽培品種群), 飼料用草(forage grasses), pearl millet (Pennisetumの種. 例えば、P. glaucum), 樹木の種(tree species), 野菜の種(vegetable species), 例えば、 Lycopersicon ssp (最近、Solanum属に属するとして再分類された), 例えば、トマト (L. esculentum, syn. Solanum lycopersicum)、例えば、サクランボトマト, var. cerasiformeまたは現代のトマト,
var. pimpinellifolium)またはトマトノキ (S. betaceum, syn. Cyphomandra betaceae), ジャガイモ (Solanum tuberosum) および他のSolanum種, 例えば、 ナス (Solanum melongena), ペピーノ(S. muricatum), ココナ (S. sessiliflorum) および ナランヒージャ(S. quitoense); ペッパー類(Capsicum annuum, Capsicum frutescens), エンドウ(例えば、Pisum sativum), マメ (例えば、Phaseolusの種), ニンジン (Daucus carota), Lactucaの種 (例えば、Lactuca sativa, Lactuca indica, Lactuca perennis), キュウリ (Cucumis sativus), メロン (Cucumis melo), ズッキーニ (Cucurbita pepo), カボチャ (Cucurbita maxima, Cucurbita pepo, Cucurbita mixta), カボチャ (Cucurbita pepo), スイカ (Citrullus lanatus syn. Citrullus vulgaris), 多肉果の種(ブドウ, モモ, プラム, イチゴ, マンゴ, メロン), 観賞植物の種(例えば、Rose, Petunia, Chrysanthemum, Lily, Tulip, Gerberaの種), 樹木(woody trees) (例えば、Populus, Salix, Quercus, Eucalyptusの種), 線維の種、例えば、アマ (Linum usitatissimum) および アサ (Cannabis sativa)である。一態様において、野菜の種, 特にSolanumの種(Lycopersiconの種を含む)が、好適である。
【0074】
従って、例えば、次の属の種を形質転換しえる: Cucurbita, Rosa, Vitis, Juglans, Fragaria, Lotus, Medicago, Onobrychis, Trifolium, Trigonella, Vigna, Citrus, Linum, Geranium, Manihot, Daucus, Arabidopsis, Brassica, Raphanus, Sinapis, Atropa, Capsicum, Datura, Cucumis, Hyoscyamus, Lycopersicon, Solanum, Nicotiana, Malus, Petunia, Digitalis, Majorana, Ciahorium, Helianthus, Lactuca, Bromus, Citrullus, Asparagus, Antirrhinum, Heterocallis, Nemesis, Pelargonium, Panieum, Pennisetum, Ranunculus, Senecio, Salpiglossis, Browaalia, Glycine, Pisum, Phaseolus, Gossypium, Glycine, Lolium, Festuca, Agrostis。さらに好ましいものは、Cucurbita, Brassica, Lycopersicon, Solanum, Oryza およびZeaの各々に関するものである。好ましいものは、Avena, Medicago, Capsicum, Nicotiana, Lactuca, Pisum, Cucumis, Cucurbita, Brassica, Solanum (Lycopersiconを含む), Oryza およびZeaの各々に関するものである。
【0075】
キメラ遺伝子の構築 およびキメラ遺伝子を宿主細胞のゲノムへ導入するためのベクターは、当該技術において知られている。キメラ遺伝子を産生するため、トリコーム特異的プロモーター配列が、標準の分子生物学の技術を用いて転写される別の核酸配列に作動可能に連関される。プロモーター配列は既にベクターに存在していてもよいので、転写される核酸配列は単純にプロモーター配列の下流に挿入される。次に、ベクターを使用して宿主細胞を形質転換される。キメラ遺伝子は、好ましくは核のゲノムまたはプラスチド, ミトコンドリアまたは葉緑体のゲノムに挿入され、下流の核酸配列がプロモーターの活性により発現される(例えば、Mc Bride et al., 1995 Bio/Technology 13, 362; US 5,693, 507)。
【0076】
以上のように、キメラ遺伝子は、好ましくは上記のとおり相同性または異種性の核酸配列〔任意で、3'の非翻訳核酸配列 (3'UTR)が続く〕に作動可能に連関されたトリコーム特異的プロモーターを含む。相同性または異種性の核酸配列はタンパク質またはペプチドをコード化している配列であってもよく,または宿主細胞または生物体における遺伝子または遺伝子ファミリーをサイレンシングするため適切なセンス および/または アンチセンス RNA (センス および アンチセンス RNAは、例えば、dsRNAまたはステム-ループ RNA 構造を含む)などの活性なRNA分子に転写される配列であってもよい。
【0077】
トリコーム特異的プロモーター含有キメラ遺伝子は、単一の植物細胞の核のゲノムに従来の様式で安定に挿入でき、そのように形質転換した植物細胞を従来の様式で使用して、キメラ遺伝子の発現により表現型が変更された形質転換型の植物を産生できる。
【0078】
この点において、アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)において、更なる核酸配列に作動可能に連関されたトリコーム特異的プロモーター(または上記のバリアントまたは断片)を含んでいるT-DNA ベクターを使用して、植物細胞を形質転換でき、その後に形質転換した植物を、例えば、EP 0 116 718, EP 0 270 822, PCT公開WO 84/02913 および 公開された欧州特許出願EP 0 242 246 およびGould等に記載された処理を用いて形質転換した植物細胞から再生できる。アグロバクテリウム媒介性の植物の形質転換のためのT-DNAベクターの構築は、当該技術において周知である。T-DNA ベクターは、EP 0 120 561 および EP 0 120 515に記載のバイナリーベクターまたはEP 0 116 718に記載のアグロバクテリウムTi-プラスミドに相同的組換えで統合できる同時統合ベクター(co-integrate vector)のいずれであってもよい。
【0079】
好適な T-DNA ベクターは、転写される核酸配列に作動可能に連関されたトリコーム特異的プロモーターをT-DNA ボーダー配列の間に含むか,または少なくともライトボーダー配列の左に配置する。ボーダー配列は、Gielen等〔Gielen et al. (1984, EMBO J 3,835-845)〕に記載される。もちろん、他のタイプのベクターを使用し、例えば、直接的な遺伝子の転移(例えば、EP 0 223 247に記載されたもの,またはUS 2005/055740 およびWO 2004/092345に記載された粒子または微粒子銃), 花粉媒介性の形質転換 (例えば、EP 0 270 356 およびWO 85/01856に記載されたもの), プロトプラスト形質転換(例えば、US 4,684, 611に記載されたもの), 植物ウイルス媒介性の形質転換, リポソーム媒介性の形質転換(例えば、US 4,536, 475に記載されたもの), およびトウモロコシ (例えば、US 6,140, 553; Fromm et al., 1990, Bio/Technology 8, 833-839; Gordon-Kamm et al., 1990, The Plant Cell 2, 603-618) およびイネ(Shimamoto et al., 1989, Nature 338, 274-276; Datta et al. 1990, Bio/Technology 8, 736-740) の特定の株を形質転換するため記載された方法などの他の方法および一般に単子葉植物を形質転換するための方法(WO 92/09696)などを用いて植物細胞を形質転換できる。綿の形質転換に関してWO 00/71733も参照されたい、イネの形質転換に関してWO 92/09696, WO 94/00977 および WO 95/06722に記載された方法も参照されたい。ソルガムの形質転換に関して、例えば、文献(Jeoung JM et al. 2002, Hereditas 137: 20-8またはZhao ZY et al. 2000, Plant Mol Biol. 44:789-98)を参照されたい。トマトまたはタバコの形質転換に関して文献(An G. et al., 1986, Plant Physiol. 81: 301-305; Horsch R.B. et al., 1988, In: Plant Molecular Biology Manual A5, Dordrecht, Netherlands, Kluwer Academic Publishers. pp 1-9; Koornneef M. et al., 1986, In: Nevins D.J. and R.A. Jones, eds. Tomato Biotechnology, New York, NY, USA, Alan R. Liss, Inc. pp 169-178)も参照されたい。同様に、形質転換された細胞からの選択および形質転換された植物の再生は、当該技術分野において周知である。明らかに、プロトコールは、単一種の異なる種に関して及び異なる品種または栽培品種(cultivars)に関して、形質転換体を高頻度で再生するため特に適合される。
【0080】
核のゲノムの形質転換の他に、プラスチドのゲノム(好ましくは、葉緑体ゲノム)の形質転換が本発明に含まれる。プラスチドのゲノムの形質転換の一つの利点は、導入遺伝子の伝播(spread)のリスクを減少できることである。プラスチドのゲノムの形質転換は、当該技術分野において知られているとおり実施できる(例えば、Sidorov VA et al. 1999, Plant J.19: 209-216またはLutz KA et al. 2004, Plant J. 37(6):906-13を参照されたい)。
【0081】
生じた形質転換型の植物を従来の植物育種の計画に使用して、さらに導入遺伝子を含んでいる形質転換型の植物を産生できる。単一コピーの形質転換体を、例えば、サザンブロット分析またはPCRに基づく方法またはInvader(登録商標)テクノロジーアッセイ(Third Wave Technologies, Inc.)を用いて選択できる。形質転換された細胞および植物は、キメラ遺伝子が存在することで容易に非形質転換型のものから区別できる。導入遺伝子(transgene)の挿入部位と接している植物DNAの配列をシークエンシングでき、ルーチンの使用に関する「イベント特異的(Event specific)」な検出法が開発できる。例えば、統合された配列および接している(ゲノムの)配列に基づいた選り抜きのイベント検出キット(例えば、PCR検出キット)を記載しているWO 01/41558を参照されたい。
【0082】
一態様において、転写され任意で翻訳(コード配列である場合)される核酸配列は植物ゲノムに挿入され、転写される配列は適切な3’末端の転写調節シグナル("3’末端")(即ち、転写物の形成およびポリアデニル化シグナル)の上流(即ち、5')にある。ポリアデニル化および転写物形成のシグナルは、形質転換された植物細胞などにおいて3'-非翻訳DNA配列として作用するノパリン シンターゼ遺伝子(「3' nos」) (Depicker et al., 1982 J. Molec. Appl. Genetics 1, 561-573.), オクトピンシンターゼ遺伝子(「3'ocs」) (Gielen et al., 1984, EMBO J 3, 835-845) およびT-DNA遺伝子7(「3' 遺伝子7」) (Velten and Schell, 1985, Nucleic Acids Research 13, 6981-6998)のものを含む。
【0083】
一態様において、使用される3’末端配列は、モノテルペン シンターゼ1 (リナロール シンターゼ), セスキテルペン シンターゼ1またはメチル-ケトン シンターゼのものである、例えば、配列番号 1, 2 または3又はそのバリアントの遺伝子の3’末端である。
【0084】
一態様において、発現される核酸配列は、タンパク質またはペプチド(ハイブリッドのタンパク質またはペプチドまたは融合タンパク質を含む)をコード化している配列である。コード配列は、任意の起源〔即ち、植物, 真菌(酵母を含む), 動物, 細菌性, 合成, ウイルス性, ヒト, など〕のものであってもよい。また、ターゲティングペプチド、例えば、分泌シグナルペプチドまたはプラスチドのターゲティングシグナルをコード化している配列を含んでもよい。また、コード配列はカナマイシン抵抗性を与えるネオ(またはnptII) 遺伝子 (EP 0 242 236)などの選択可能な又はスコラブル(scorable)なマーカーをコード化している遺伝子とインフレームで連結されてもよく、そして細胞は容易に検出可能な融合タンパク質を発現する。任意の遺伝子のコード領域(cDNAまたはゲノムの DNA)が使用されえるが、次の遺伝子のコード領域の例が好ましくは本発明によるプロモーターに作動可能に連関される:
1. 有害生物または病原体の疾患シグナル伝達経路遺伝子または経路,または耐病性の遺伝子または経路; 例えば、抗真菌性または抗ウイルス性のタンパク質, 殺虫性のタンパク質など。
【0085】
2. 草食動物の忌避物質(repellent)の遺伝子または経路
3. 有害生物, 病原体または草食動物の誘引遺伝子または経路〔捕獲または捕捉作物(catch or trap crops)を産生するため〕
4. 二次代謝産物の生合成遺伝子または経路〔治療的および/または薬理学的および化粧用に重要な製品または産業上価値ある化合物の生産のための遺伝子, 栄養性またはニュートラシューティカルの化合物を提供する遺伝子, 香味または香り, アロマ(ハーブ), 花粉媒介者誘引物質(pollinator attractor)の遺伝子を含む〕
5. ファイトレメディエーション(phytoremediation)の適用、例えば、イオンおよび汚染金属分泌遺伝子(Psaras et al., 2000, Ann Bot 86, 73)
本発明によるキメラ遺伝子またはベクターを使用して細菌(例えば、大腸菌, シュードモナス属, アグロバクテリウム属, 桿菌, など)または真菌または藻類または昆虫などの微生物を形質転換できる又は前記遺伝子またはベクターを使用してウイルスを操作しえる。適切なクローニングビヒクル(cloning vehicle)に導入された本発明の核酸配列での細菌の形質転換は、従来の様式〔好ましくは、Maillon 等(Maillon et al. 1989, FEMS Microbiol. Letters 60, 205) および WO 90/06999に記載の従来のエレクトロポレーション 技術を用いて〕において行うことができる。原核生物の宿主細胞におけるコード配列の発現のために、核酸配列のコドン使用頻度(codon usage)をそれに応じて至適化してもよい(同様に、植物細胞におけるコード配列の発現のために、核酸配列のコドン使用頻度を知られているように至適化してもよい)。イントロン配列は除去されるであろう、また至適な発現のための他の適応を知られているとおりなしえる。
【0086】
単子葉植物〔例えば、草の種、例えば、トウモロコシまたはイネ〕における核酸配列の発現の増強を得ることに関して、好ましくは単子葉植物のイントロンをキメラ遺伝子に添加できる。例えば、トウモロコシ Adh1 遺伝子のイントロンを5' 調節領域に挿入することによって、トウモロコシにおける発現が増強することが示された(Callis et. al., 1987, Genes Develop. 1: 1183)。同様に、HSP70 イントロン(US 5,859, 347に記載)を使用して、発現を増強しえる。以上のように、一または二以上のイントロンを、至適に任意の本発明によるプロモーター配列,または5' UTRまたはコード配列に挿入しえる。
【0087】
また、本発明に包含されるものは、核酸配列をコード化しているタンパク質またはポリペプチドに作動可能に連関されたトリコーム特異的プロモーターを含んでいるトランスジェニック植物(及びその部分)である(以下に記載される)。
【0088】
異なる態様において、本発明によるプロモーターを使用して、遺伝子サイレンシングのためのキメラ遺伝子およびベクターが作られ、プロモーターが標的遺伝子(トリコーム細胞において特異的にサイレンスされる内因性の遺伝子または遺伝子ファミリー)のセンスおよび/またはアンチセンス核酸配列に作動可能に連関される。
【0089】
「遺伝子サイレンシング(Gene silencing)」は、一または二以上の標的遺伝子の遺伝子発現のダウンレギュレーションまたは完全な阻害を参照する。遺伝子発現を減少または無効(abolish)にするための阻害性RNAの使用は、当該技術において確立されており、幾つかの総説の対象である(例えば、Baulcombe, 1996, Plant Cell 8: 1833-1844; Stam et al., 1997, Plant Journal 12: 63-82; Depicker and Van Montagu, 1997, Curr. Opinion Cell Biol. 9: 373-382)。植物において遺伝子サイレンシングを達成するため利用可能な幾つかの技術が存在し、例えば、標的遺伝子の全てのまたは部分のアンチセンスRNAを産生する(例えば、EP 0 140 308 B1, EP 0 240 208 B1 および EP 0 223 399 B1を参照されたい),またはセンス RNAを産生する〔共抑制(co-suppression)とも参照される〕キメラ遺伝子である(EP 0 465 572 B1を参照されたい)。
【0090】
しかしながら、今までに最も成功したアプローチは、二本鎖のRNA (dsRNA)を細胞中で形成し、標的遺伝子をサイレンスする標的遺伝子のセンスおよびアンチセンスRNA(「逆方向反復(inverted repeats)」)の両方の産生である。dsRNA 産生 および 遺伝子サイレンシングのための方法およびベクターは、EP 1 068 311, EP 983 370 A1, EP 1 042 462 A1, EP 1 071 762 A1 および EP 1 080 208 A1に記載されている。
【0091】
以上のように、本発明によるベクターは、標的遺伝子のセンスおよび/またはアンチセンスのDNA断片に作動可能に連関されたトリコーム特異的プロモーターを含んでもよい。標的遺伝子配列の短い(センス および アンチセンス)ストレッチ(例えば、コードまたは非コードの配列の少なくとも約 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24または25 ヌクレオチド)は十分であろう。長い配列も頻繁に使用される(例えば、少なくとも約 100, 200, 250, 300, 400, 500, 1000, 1500 ヌクレオチド,又はそれ以上)。好ましくは、センスおよびアンチセンス断片は、dsRNA形成の際にループ(またはヘアピン)を形成するスペーサー配列(例えば、イントロン)により分けられる。標的遺伝子の任意のストレッチを使用して、遺伝子サイレンシングベクターおよび標的遺伝子または遺伝子ファミリーがサイレンスされたトランスジェニック植物を作出することができる。ヘアピン構築物を作る便利な方法は、pHANNIBAL および pHELLSGATE, Gateway(登録商標)テクノロジーに基づくベクター(Wesley et al. 2004, Methods Mol Biol. 265:117-30; Wesley et al. 2003, Methods Mol Biol. 236:273-86 および Helliwell & Waterhouse 2003, Methods 30(4):289-95.を参照されたい)などの一般的なベクターを使用することである(全て本明細書中に参照によって援用される)。
【0092】
標的遺伝子の保存された核酸配列を選択することにより、宿主植物におけるファミリーメンバーをトリコーム細胞においてサイレンシングできる。
【0093】
同様に本発明に包含されるものは、標的遺伝子の核酸配列のセンスおよび/またはアンチセンスDNA断片に作動可能に連関されたトリコーム特異的プロモーターを含み、標的遺伝子のサイレンシング表現型を呈しているトランスジェニック植物である。表現型は、遺伝子の機能に依存し、肉眼(macroscopically)で可視または不可視の化学的な又は分子の変化である可能性がある。以上のように、係るキメラ遺伝子およびベクターを使用して、トリコームにおける遺伝子の機能を決定または検証しえる。
【0094】
本発明によるキメラ遺伝子は、宿主ゲノムに安定に導入しえる又はエピソーム単位として存在しえる。
【0095】
本発明によるトランスジェニック細胞および生物体
トランスジェニック細胞および生物体(特に、植物, 植物細胞, 組織または器官)が提供される(上記方法により取得可能である)。これらの細胞および生物体は、それらの細胞またはゲノムにおけるキメラ遺伝子の存在により(本発明によるプロモーターの存在により)特徴付けられる。加えて、mRNA転写物または翻訳されたタンパク質は、例えば、植物トリコーム(特に、腺性トリコーム)の細胞または生物体の表現型を変化させえる。
【0096】
一態様において、植物に導入されるキメラ遺伝子は、全て宿主の属または種において天然に生じる部分から構成される。例えば、Solanum属の宿主植物が形質転換される場合、好ましくはSolanum属からの本発明によるプロモーターが使用され、Solanum属からの核酸配列(および、任意でSolanum属からの3'UTR)に作動可能に連関される。同じ事項は、宿主の種に適用できる。植物は導入遺伝子を輸送するが、その全てのヌクレオチド因子は天然で宿主の属または種に見つけられ(しかし、この組み合わせではない)、調節の問題が減り、公共に受け入れられやすくなる。
【0097】
ゲノムにおけるキメラ遺伝子のポジションは、プロモーターの活性およびキメラ遺伝子の発現レベルに影響しえる。従って、高い構成的なレベルのタンパク質またはセンス および/またはアンチセンス転写物(サイレンシング構築物が使用された場合)を発現している形質転換体〔「イベント」または「形質転換イベント」〕は、例えば、コピー数(サザンブロット分析), mRNA 転写物 レベル(例えば、ノーザンブロット分析またはRT-PCR)を分析すること又は核酸配列によりコードされたタンパク質の存在およびレベルを分析すること(例えば、SDS-PAGEと続くウエスタンブロット分析; ELISAアッセイ, 免疫細胞学的なアッセイ, など)により選択できる。また、形質転換体を一または二以上の生物的および/または非生物的なストレス条件下での発現の安定性のために試験でき、一または二以上の所望の条件下で高い構成的な発現を保持するこれらのイベントを同定し、更なる使用のため選択できる。
【0098】
トランスジェニック植物は、伝統的な育種法(例えば、交配, 自殖, 戻し交配, など)に使用できる。形質転換体を自殖することにより、導入遺伝子に関してホモ接合性である植物を作ることができる。育種の処理は、当該技術分野において知られており、植物育種の標準的な教科書に記載される(例えば、Allard, R.W., Principles of Plant Breeding (1960) New York, NY, Wiley, pp 485; Simmonds, N.W., Principles of Crop Improvement (1979), London, UK, Longman, pp 408; Sneep, J. et al., (1979) Tomato Breeding (p. 135-171) in: Breeding of Vegetable Crops, Mark J. Basset, (1986, editor), The Tomato crop: a scientific basis for improvement, by Atherton, J.G. & J. Rudich (editors), Plant Breeding Perspectives (1986); Fehr, Principles of Cultivar Development-Theory and Technique (1987) New York, NY, MacMillan)。
【0099】
トランスジェニック細胞または生物体は、細胞培養(植物細胞培養, 細菌性または真菌性の細胞培養、例えば、酵母培養, ヒトまたは哺乳類の細胞培養, 昆虫細胞の培養)、例えば、組換えタンパク質の大規模生産にも使用できる。一態様において、本発明によるプロモーターを含んでいる細胞を含んでいる細胞培養が提供される。
【0100】
本発明による方法および使用
また、トランスジェニックの植物または植物細胞を作出するための方法が提供され、該方法は以下の工程を含む:
(a) 発現される核酸配列に作動可能に連関された本発明によるプロモーターを含んでいるキメラ遺伝子またはベクターを作ること;
(b) 植物または植物細胞を前記キメラ遺伝子またはベクターで形質転換すること;および、任意で、
(c) トランスジェニック植物を再生すること。
【0101】
再生した植物(その導入遺伝子を保持する後代)又はその部分は、農業または分子農業のなどの様々な目的のために使用しえる。更なる使用は、導入遺伝子により与えられた表現型に依存する。例えば、トランスジェニック植物がトリコームにおいて高レベルの二次代謝産物を産生する場合、植物が栽培され、代謝産物が収穫される。従って、植物の全てまたは部分を、導入遺伝子に応じて、ヒトまたは動物の消費のため又は産業上の目的のため収穫してもよい。また、植物の異なる部分を、異なる目的のために収穫してもよい。例えば、果実または種子を、消費のため収穫してもよい、他方で葉, 茎 および/または花を産業上の目的のため収穫してもよい。
【0102】
導入遺伝子により与えられた表現型を野外試験(field trials)などで試験できることは明らかである(例えば、疾患または有害生物の抵抗性試験は、従来の方法を用いて実施できる)。
【0103】
非ストレス条件下でトリコームにおいて強い(例えば、構成的な)プロモーター活性を提供し、植物が一または二以上の生物的な及び/又は非生物的なストレスに暴露される場合に、前記プロモーター活性が本質的に不変のまま残る(プロモーター活性が少なくとも減少しない,または有意に減少しない)トランスジェニック植物が同定されてもよい。
【0104】
植物は、従来の農業および育種の方法に使用しえる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】トマト(S. habrochaites LA1777) におけるShSTS1 発現 トリコーム伴う葉 (LT: leaf with trichomes), トリコームを伴う茎 (ST: stem with trichomes) 無毛の茎 (BS: bald stem) および トリコーム (T: trichomes )。
【図2】S. lycopersicum (Moneymaker)の異なる器官におけるSlSTS1 発現。
【図3】pKG1662のベクターマップ。
【図4a】図 4A および 4B: (A) pKG1917; および(B) pKG1918のベクターマップ。
【図4b】図 4A および 4B: (A) pKG1917; および(B) pKG1918のベクターマップ。
【図5】腺性トリコームの青色 Xgluc-染色(囲まれた部分)を示しているSlMTS1p:GUS 形質転換したトマト植物の写真。
【0106】
以下の限定されない例は、本発明によるプロモーターの使用を記載する。例で他に記載しないかぎり、全ての組換えDNA技術は、文献〔Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, およびSambrook and Russell (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY; および Ausubel et al. (1994) Current Protocols in Molecular Biology, Current Protocols, USAの1および2巻〕に記載の標準プロトコールにしたがって実施される。植物の分子的な研究のための標準的な材料および方法は、文献(Plant Molecular Biology Labfax (1993) by R.D.D. Croy, jointly published by BIOS Scientific Publications Ltd (UK) and Blackwell Scientific Publications, UK)に記載される。
【0107】
[例]
プロモーター単離のための遺伝子の選択
S. lycopersicum cv Moneymaker および 野生のトマト S. habrochaites var LA1777のcDNAが単離された。S. lycopersicum モノテルペン シンターゼ 1 (SlMTS1; AY840091), S. lycopersicum セスキテルペン シンターゼ 1 (SlSTS1; AF279453), S. habrochaites セスキテルペン シンターゼ 1 (ShSTS1; AF279455)の組織特異的な発現レベルが、トリコームおよび無毛の茎(そこからトリコームが除去される)を含む幾つかの異なる植物器官において試験された。ShSTS1 遺伝子の発現は、トリコームの非存在下で存在しなかった(図 1)。セスキテルペン シンターゼ 1 発現 (STS1)は、様々な 植物器官において確認された(図 2)。SlSTS1 転写物は、花のメリステムおよび若葉などのトリコームを含んでいる組織において検出された。発現は、果実 および 根の組織に認められない。
【0108】
プロモーター配列の単離
プロモーター 配列をえるため、ゲノムの DNAで染色体ウォーキングを行った。トータルのゲノムDNAを、S. lycopersicum (Moneymaker) および S. habrochaites (LA1777)から単離した。2μgのgDNAを、標準の処理にしたがい、別々に幾つかの 6-ベースを認識するブラント切断制限酵素(SmaI, HinCII, EcoRV, PmiI, DraI, PvuII, SspI, ScaI)で消化し、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコールで抽出し、エタノールで沈殿させた。10μlの長鎖アダプタ (100μM)を、10 μlの短鎖アダプタ (100 μM)と混合し、その後にアダプタ鎖を95゜Cで2 分間熱してアニールし、室温に徐々に冷やした。過剰のアダプタを、一晩ゲノムのDNA断片と4゜Cでライゲートした。
【0109】
核酸配列 AY840091, AF279453 および AF279455の5' 配列の情報に基づいて、特異的なリバースプライマーを設計した。
【0110】
【表1】

【0111】
異なるゲノムのDNA断片におけるアダプタおよび特異的なプライマーでのネスティングPCRによって、新規のプロモーター配列の断片が生じた。PCR産物のクローニングを、Invitrogen BVからのOriginal TA クローニング(登録商標) キットでプラスミド pCR(登録商標)2.1を用いて行った。シークエンシング後、新しいリバースプライマーを新規のプロモーター断片配列上に設計できた。クローニングのため適切な制限部位を含んでいるプライマーでのゲノムDNAにおけるPCRによって、最終的な DNA 調節性の核酸断片が生じた。
【0112】
これらは配列番号 1, 2, 3に示される。
【0113】
プロモーター配列
配列番号1: '1.5 kb (1426 bp) ShSTS1 プロモーター
配列番号2: '1.9 kb (1907 bp) SlSTS1 プロモーター
配列番号3: '1.2 kb (1253 bp) SlMTS1プロモーター
【0114】
【表2】

【0115】
形質転換の構築物
最終的な プロモーター 配列 [配列番号 1, 2 および 3]を、pKG1662 ベクターのGUS-A マーカー遺伝子の前に配置した(図 3)。プロモーターおよびマーカー遺伝子を次にバイナリー pBIN-プラス ベクター (Van Engelen et al., 1995, Transgenic Res, 288)のマルチプルクローニングサイトに入れた(shuttled)した。次に、この構築物を、Koornneef等(Koornneef et al. 1986. Transformation of tomato. In: Nevins D.J. and R.A. Jones, eds. Tomato Biotechnology. New York, NY, USA, Alan R. Liss, Inc. pp 169-178.)により記載された方法により、アグロバクテリウム ツメファシエンスvar. GV3101に導入し、トマト S. lycopersicum var. GV3101を形質転換するため使用し、トマト S. lycopersicum var.Moneymakerを形質転換するため使用した。構築物で形質転換し、カナマイシン選択下で再生し、一次の再生体(T0)を種子に成長させた。
【0116】
コントロールとして、シロイヌナズナのCER6 プロモーターを含んでいる構築物を、付加的にトマトに形質転換した。CER6 プロモーターは、A. thaliana および Nicotiana tabacumの両方において表皮特異的な発現を生じさせることに高度に効果的であることが示された(Hooker et al., 2002 Plant Physiol 129, 1568)。この上皮性のプロモーターは、N. tabacumのトリコーム組織においても活性である。
【0117】
形質転換体の発現分析
定量的および定性的なβ-グルクロニダーゼ (GUS)活性の分析を、T1 植物で行った。
【0118】
プロモーター活性の定性分析を、組織学的な GUS アッセイを用いて行った。様々な植物の部分を、一晩37゜Cで大気中で酸素の存在下でXgluc (5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル β-D-グルクロニドシクロヘキシルアミン塩)基質をリン酸緩衝剤 (1 mg/ml, K2HPO4, 40 mM, KH2PO4, 10 mM, pH 7.2, 0,2% Triton X-100)に含むものでインキュベーションした。サンプルを、エタノールで繰り返して洗浄することで脱染色した。非トランスジェニック植物を、ネガティブコントロールとして使用した。ShSST1p:GUS および SlMTS1:GUSでのトランスジェニック植物のトリコームは明るい青色のトリコームを示し、これらのトランスジェニック植物の非トリコーム組織および非トランスジェニックコントロール植物のトリコームは発色しなかった。
【0119】
プロモーター活性の定量分析を、蛍光定量的な GUS アッセイを用いて行った。トータルタンパク質サンプル(Total protein samples)を若葉の材料から調製した; サンプルを試験した各植物の異なる部分からの凡そ同じサイズおよび発達段階のプールした葉から調製した。新鮮な葉の材料を、リン酸緩衝剤 (Na2HPO4, 77.4 mM, NaH2PO4, 22.6 mM)中で金属ビーズを用いてすり潰し、遠心分離し、上清を採取した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノムに統合されたキメラ遺伝子を含んでいるトランスジェニック植物または植物細胞または植物の組織または器官であって、前記キメラ遺伝子は相同性または異種性の核酸配列に作動可能に連関された構成的なプロモーターを含み、前記プロモーターが以下の群から選択されることを特徴とするトランスジェニック植物または植物細胞または植物の組織または器官:
(a) 配列番号 1, 配列番号 2または配列番号 3の核酸配列;
(b) 配列番号 1, 配列番号 2または配列番号 3の機能的な断片;
(c) 配列番号 1, 配列番号 2または配列番号 3と少なくとも70%の配列同一性を含んでいる核酸配列;
(d) (c)の核酸配列の機能的な断片。
【請求項2】
前記プロモーター活性がトリコームにおいて、好ましくは腺性トリコームのみにおいて、特異的に活性である請求項1に記載の植物, 植物細胞, 組織または器官。
【請求項3】
前記植物, 細胞, 組織または器官が一または二以上の生物的および/または非生物的なストレスに暴露された場合に前記プロモーター活性が有意に減少しない請求項1または2に記載の植物, 植物細胞, 組織または器官。
【請求項4】
前記植物がナス科ファミリーに属する、請求項1〜3の何れか一項に記載のトランスジェニック植物, 植物細胞, 組織または器官。
【請求項5】
植物細胞に導入された場合にトリコーム特異的なプロモーター活性を有している単離された核酸配列であって、以下のものから選択される配列を含んでいる核酸配列:
(a) 配列番号 1, 配列番号 2または配列番号 3の核酸配列;
(b) 配列番号 1, 配列番号 2または配列番号 3の断片;
(c) 配列番号 1, 配列番号 2または配列番号 3と少なくとも70%の配列同一性を含んでいる核酸配列;
(d) (c)の核酸配列の機能的な断片。
【請求項6】
配列番号 1, 配列番号 2または配列番号 3の少なくとも 200の近接するヌクレオチドを含む、請求項1(d)または5(d)に記載の断片。
【請求項7】
相同性または異種性の核酸配列および任意で3' UTR 配列に作動可能に連関された請求項5または6に記載の核酸配列を含んでいるキメラ遺伝子。
【請求項8】
請求項5または6に記載の核酸配列または請求項7に記載のキメラ遺伝子を含んでいるベクター。
【請求項9】
請求項7または8に記載のキメラ遺伝子を含んでいるトランスジェニック植物または植物細胞。
【請求項10】
トランスジェニック植物または植物細胞を作出するための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a) 請求項7に記載のキメラ遺伝子または請求項8に記載のベクターを作ること;
(b) 植物または植物細胞を前記キメラ遺伝子またはベクターで形質転換すること;および、任意で、
(c) トランスジェニック植物を再生すること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−507506(P2011−507506A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539326(P2010−539326)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050803
【国際公開番号】WO2009/082208
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(505477187)ケイヘーネ・エヌ・ブイ (10)
【Fターム(参考)】