説明

トルエン検知剤、検知素子、および測定方法

【課題】トルエンの測定を長時間にわたって行えるようにする。
【解決手段】トルエン検知剤は、硫酸およびトリオキサンを含む溶液から構成したものである。例えば、濃度65wt%に希釈した硫酸10mlにトリオキサン2.5mgを溶解したものであればよい。このトルエン検知剤は、トルエンと反応することにより、波長450〜650nmの間の光吸収特性吸光度が変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルエンのガスの測定を行うためのトルエン検知剤、検知素子、および測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トルエンは、新築の住宅やペンキに含まれており、室内環境汚染の原因物質になっている。また、化学物質過敏症の人にとっては、シックハウス症候群を引き起こす原因のひとつと考えられている。
【0003】
このため、簡単にトルエンの濃度を測定する簡単な方法が提案されている。例えば、濃硫酸にパラホルムアルデヒドを加えた改良マルキス試薬を、シリカに混合した後、プラスチック容器に充填したタブを用いる測定法が提案されている(非特許文献1参照)。この測定法によれば、サブppmの濃度のトルエンが測定できる。また、五酸化ヨウ素を濃硫酸中でトルエンと反応させて遊離するヨウ素を検出することで、トルエンを検出することが可能である(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3639123号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】阿部 佐都美他、「検知タブを用いたポータブルトルエン測定器の開発」、環境の管理、52号、262−263頁、2004年。
【非特許文献2】K.Kawamura, at al. ,"Development of a novel hand-held toluene gas sensor: Possible use in the prevebtion and control of sick building syndrome", Measurement, vol.39, pp.490-496, 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した測定技術では、パラホルムアルデヒドは変異原性が有り取り扱いが容易ではなく、また、容易に分解してホルムアルデヒドになり揮発性が高いため、作製した検出試薬(検知剤)を長時間にわたって使用することができないなどの問題がある。また、五酸化ヨウ素においても、よく知られているように取り扱いが容易ではなく、また、光に対して不安定で作製した検出試薬(検知剤)を長時間にわたって使用することができないなどの問題がある。トルエンのガスの測定においては、前述したように室内環境汚染物質としての測定となり、蓄積的な測定のために、長時間の測定が行われる場合も多く、揮発性の高い検知剤では、適用が容易ではないという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、トルエンの測定を長時間にわたって行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るトルエン検知剤は、硫酸およびトリオキサンを含む溶液から構成したものである。
【0009】
また、本発明に係るトルエン検知素子は、ガラスからなる透明な多孔体と、多孔体の孔内に配置された硫酸およびトリオキサンを含む検知剤とを少なくとも備える。このトルエン検知素子において、検知剤は、検知剤が溶解した溶液を多孔体に含浸させることで孔内に配置されたものであればよい。このとき、硫酸の濃度は、5%以上38%以下であればよい。
【0010】
また、本発明に係るトルエン測定方法は、硫酸およびトリオキサンを含む溶液から構成されたトルエン検知剤がトルエンのガスの晒されていない状態の初期吸光度を、トルエンのガスと反応したトルエン検知剤が吸収する測定波長で測定する第1ステップと、トルエンのガスに晒されたトルエン検知剤の検出後吸光度を測定波長で測定する第2ステップと、初期吸光度と検出後吸光度との差によりトルエンのガスの濃度を求める第3ステップとを少なくとも備える。
【0011】
また、本発明に係るトルエン測定方法は、ガラスからなる透明な多孔体と、この多孔体の孔内に配置された硫酸およびトリオキサンを含む検知剤とを備えるトルエン検知素子におけるトルエンのガスに晒されていない状態の初期吸光度を、トルエンのガスと反応した検知剤が吸収する測定波長で測定する第1ステップと、トルエンのガスに晒されたトルエン検知素子の検出後吸光度を測定波長で測定する第2ステップと、初期吸光度と検出後吸光度との差によりトルエンのガスの濃度を求める第3ステップとを少なくとも備える。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、硫酸およびトリオキサンを含む溶液からトルエン検知剤を構成したので、トルエンの測定を長時間にわたって行えるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態におけるトルエン検知素子の作製方法および測定方法を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるトルエン検知素子の一部構成を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるトルエン検知素子の吸光度測定結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0015】
[実施の形態1]
始めに、本発明の実施の形態1について説明する。この実施の形態1では、トルエン検知剤について説明する。本実施の形態におけるトルエン検知剤は、硫酸およびトリオキサンを含む溶液から構成したものである。例えば、濃度65wt%に希釈した硫酸10mlにトリオキサン2.5mgを溶解したものであればよい。このトルエン検知剤によれば、トルエンのガスに触れる(トルエンと反応する)ことにより、波長450〜650nmの間の光吸収特性(吸光度)が変化する。
【0016】
従って、本実施の形態のトルエン検知剤の、測定対象の雰囲気に晒す前後の光の透過率の変化(初期吸光度と検出後吸光度との差)により、トルエンのガスの濃度を求めるなど、雰囲気に存在するトルエンの測定を行うことができる。光の透過率の変化は、トルエンのガスと反応したトルエン検知剤が吸収する測定波長で測定すればよい。例えば、まず、トルエン検知剤の吸光度を測定する。例えば、所定の透明な容器に収容したトルエン検知剤の光強度I0の入射光を透過させた透過光の強度Iを測定し、これより吸光度(=log10(I0/I))を求める(第1ステップ)。
【0017】
次に、トルエンガスが存在する測定対象の空気中に、容器に収容されているトルエン検知剤を暴露する。この後、測定後のトルエン検知剤を測定対象の空気中より取り出し、測定後のトルエン検知剤の吸光度を再び測定する(第2ステップ)。この後、暴露前の吸光度(初期吸光度)と暴露後の吸光度(検出後吸光度)との差により、トルエンガスの濃度を求めることができる(第3ステップ)。
【0018】
また、本実施の形態におけるトルエン検知剤においては、硫酸およびトリオキサンの揮発性が低いため、長時間の測定を行うことが可能である。また、本実施の形態におけるトルエン検知剤は、希釈した硫酸とトリオキサンとで構成できるため、取り扱いが容易であり、また、爆発などの危険性がない。
【0019】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。以下の実施の形態2では、トルエン検知素子について、トルエン検知素子の作製方法とともに説明する。まず、トルエン検知素子の作製方法について説明すると、図1Aに示すように、95%硫酸1mlおよびトリオキサン2.5mgを水に溶解して全量を10mlとした検知剤溶液101を、容器102の中に作製する。この時の硫酸の濃度は5%に相当する。
【0020】
次に、図1(b)に示すように、検知剤溶液101に、平均孔径4nmの多孔質ガラスである多孔体103を浸漬する。多孔体103は、例えば、コーニング社製のバイコール#7930である。バイコール#7930は平均孔径4nmの複数の細孔を有する多孔体である。また、多孔体103は、例えば、8(mm)×8(mm)で厚さ1(mm)のチップサイズである。なお、多孔体103は、平均孔径が20nm以下であるとよい。また、ここではトルエン検知素子103aを板状としたが、これに限るものではなく、ファイバ状に形成するようにしても良い。
【0021】
多孔体103をガラス(硼珪酸ガラス)から構成した場合、この平均孔径を20nm以下とすることで、可視UV波長領域(波長200〜2000nm)での透過スペクトルの測定において、可視光領域(350〜800nm)では光が透過する。しかし、平均孔径が20nmを越えて大きくなると、可視領域で急激な透過率の減少が観測されることが判明している(特許文献1参照)。このことにより、多孔体は、平均孔径が20nm以下とした方がよい。本実施の形態における多孔体103の比表面積は1g当たり100m2以上である。
【0022】
上述した多孔体103を検知剤溶液101に24時間浸漬し、多孔体103の孔内に検知剤溶液を含浸させた後、検知剤が含浸した多孔体103を風乾し、図1(c)に示すように、窒素ガス気流中に24時間放置して乾燥し、トルエン検知素子103aを作製する。
【0023】
従って、トルエン検知素子103aには、図2に示すように、トリオキサン113(黒丸)および硫酸114(白丸)よりなるトルエン検知剤111が導入され、トルエン検知素子103aの多孔質の細孔122内にトルエン検知剤111が担持されているものとなる。検知素子103を構成している多孔体103には、複数の細孔122を備える。これら細孔122は、多孔体103の表面の開口部121から内部にまで連結した貫通細孔である。また、トルエン検知剤111は、トルエン検知素子103aが配置される雰囲気(大気)の湿度の存在により細孔122内に吸着する水分112を含み、細孔122の内壁に薄い水の膜を形成しているものと考えられる。
【0024】
なお、担持とは、トリオキサンおよび硫酸などの各物質が、化学的,物理的,または電気的に担体(基材)と結合している状態を示し、例えば、多孔体の孔内に上述した構成の検知剤が滲入し、孔内の壁面が検知剤で被覆され、および/または、孔内の側壁に検知剤が被着したような状態を示す。
【0025】
このように構成されたトルエン検知素子103aによれば、孔内にエチレンガスが浸入することで、後述するようにトルエン検知剤111の光吸収の状態が変化する。孔内にエチレンガスが浸入すると、孔内に配置された硫酸およびトリオキサンが浸入したエチレンガスと反応する。この反応の結果、トルエン検知剤111の光学特性が変化する。
【0026】
次に、トルエン検知素子103aを用いたトルエンガスの検出方法について説明すると、まず、トルエン検知素子103aの厚さ方向の吸光度を測定する。例えば、図1(d)に示すように、光強度I0の入射光を透過させた透過光の強度Iを測定し、これらより吸光度(=log10(I0/I))を求める(第1ステップ)。
【0027】
次に、図1(e)に示すように、例えば、10ppmの濃度のトルエンガスが存在する測定対象の空気104中に、トルエン検知素子103aを例えば1時間暴露する。この暴露は、室温(約20℃)の状態で行う。この後、測定後のトルエン検知素子103bを測定対象の空気104中より取り出し、図1(f)に示すように、測定後のトルエン検知素子103bの厚さ方向の吸光度を再び測定する(第2ステップ)。この後、暴露前の吸光度(初期吸光度)と暴露後の吸光度(検出後吸光度)との差により、トルエンガスの濃度を求めることができる(第3ステップ)。
【0028】
上述した2回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図3に示す。なお透過光測定波長350nm以下の吸収は、検知素子を構成する多孔質ガラス(バイコール#7930)自体の吸収である。図3では、(a)測定対象の空気(トルエンガス10ppm)に暴露する(晒す)前の吸光度の測定結果と、(b)暴露した後の吸光度の測定結果とを示している。
【0029】
図3に示すように、波長450〜650nmの範囲に吸収の差が見られる。トルエンが存在する雰囲気に暴露することで、吸光度(吸収)が増加している。従って、本実施の形態におけるトルエン検知素子における光吸収の変化の測定により、トルエンガスの定量などの測定が可能となる。例えば、中心波長572nmの発光ダイオードからの光の透過率を測定することで上記光吸収の変化が検出可能である。
【0030】
ところで、従来より用いられているトルエンの検知方法としての硫酸ホルマリン法では、濃硫酸が必要となるため、取り扱いに注意が必要となる。また、揮発性のホルムアルデヒドを用いるため、硫酸ホルマリン溶液を作製後すぐにトルエンと反応させる必要がある。硫酸ホルマリン溶液を作製後12時間ほどが経過すると溶液中のホルムアルデヒドが揮発し、トルエンとの反応は起こらない。またトルエンとの反応も、トルエンガスと直接に反応させるのではなく、アルコール中にトルエンを捕集しておき、この溶液と硫酸ホルマリン液を反応させているため、測定が容易ではない。
【0031】
また、非特許文献1に示されている硫酸パラホルムアルデヒド溶液を用いる方法でも、濃硫酸を用いることが必要であり、加えて、パラホルムアルデヒドを用いているため、特に取り扱いに注意が必要となる。また、この技術では、ポンプが必要となる。
【0032】
上述した技術に比較し、前述した本実施の形態によるトルエンの測定では、濃硫酸などの取り扱いに注意を必要とする試薬を、直接に検知剤に用いることがなく、また、測定時にポンプなどの電力を必要とする装置の使用も必要ない。また、本実施の形態によれば、検知剤の多孔質ガラス内での定着性も安定している。
【0033】
[実施例1]
次に、上述した実施の形態2におけるトルエン検知素子の他の例について説明する。まず、トルエン検知素子の作製方法について説明すると、95%硫酸2mlおよびトリオキサン2.5mgを水に溶解して全量を10mlとした検知剤溶液を作製する。この時の硫酸の濃度は19%に相当する。次に、実施例1の検知剤溶液に、前述同様の多孔体を浸漬する。この浸漬を24時間行うことで、多孔体の孔内に検知剤溶液を含浸させた後、検知剤が含浸した多孔体を風乾し、窒素ガス気流中に24時間放置して乾燥し、トルエン検知素子を作製する。このトルエン検知素子は、前述したトルエン検知素子に比較して、硫酸の使用量が増加している。
【0034】
このトルエン検知素子をトルエンが10ppm含まれた雰囲気に晒すと、450nmから650nmに吸収を持つ吸光特性を有する。従って、例えば黄緑発光ダイオード(中心波長572nm)からの光の透過率を測定することによりこの吸収を検出することが可能となる。
【0035】
[実施例2]
次に、上述した実施の形態2におけるトルエン検知素子の他の例(実施例2)について説明する。まず、トルエン検知素子の作製方法について説明すると、95%硫酸3mlおよびトリオキサン2.5mgを水に溶解して全量を10mlとした検知剤溶液を作製する。この時の硫酸の濃度は29%に相当する。次に、実施例2の検知剤溶液に、前述同様の多孔体を浸漬する。この浸漬を24時間行うことで、多孔体の孔内に検知剤溶液を含浸させた後、検知剤が含浸した多孔体を風乾し、窒素ガス気流中に24時間放置して乾燥し、トルエン検知素子を作製する。このトルエン検知素子は、前述したトルエン検知素子に比較して、硫酸の使用量が増加している。
【0036】
このトルエン検知素子をトルエンが10ppm含まれた雰囲気に晒すと、450nmから650nmに吸収を持つ吸光特性を有する。従って、例えば黄緑発光ダイオード(中心波長572nm)からの光の透過率を測定することによりこの吸収を検出することが可能となる。
【0037】
[実施例3]
次に、上述した実施の形態2におけるトルエン検知素子の他の例(実施例3)について説明する。まず、トルエン検知素子の作製方法について説明すると、95%硫酸4mlおよびトリオキサン2.5mgを水に溶解して全量を10mlとした検知剤溶液を作製する。この時の硫酸の濃度は38%に相当する。次に、実施例3の検知剤溶液に、前述同様の多孔体を浸漬する。この浸漬を24時間行うことで、多孔体の孔内に検知剤溶液を含浸させた後、検知剤が含浸した多孔体を風乾し、窒素ガス気流中に24時間放置して乾燥し、トルエン検知素子を作製する。このトルエン検知素子は、前述したトルエン検知素子に比較して、硫酸の使用量が増加している。
【0038】
このトルエン検知素子をトルエンが10ppm含まれた雰囲気に晒すと、450nmから650nmに吸収を持つ吸光特性を有する。従って、例えば黄緑発光ダイオード(中心波長572nm)からの光の透過率を測定することによりこの吸収を検出することが可能となる。
【0039】
[比較例1]
次に、上述した実施の形態2におけるトルエン検知素子に対する比較例(比較例1)について説明する。まず、比較例におけるトルエン検知素子の作製方法について説明すると、95%硫酸1mlおよびトリオキサン2.5mgを水に溶解して全量を10mlとした検知剤溶液を作製する。次に、比較例1の検知剤溶液に、セルロースから構成されているろ紙を浸漬する。ろ紙に検知剤溶液を含浸させる。検知剤が含浸したろ紙を風乾し、窒素ガス気流中に24時間放置して乾燥し、検知シートを作製する。このようにして作製した検知シートは、褐色になり、トルエンの測定は不可能となる。
【0040】
[比較例2]
次に、上述した実施の形態2におけるトルエン検知素子に対する比較例(比較例2)について説明する。まず、トルエン検知素子の作製方法について説明すると、95%硫酸10mlにトリオキサン2.5mgを溶解した検知剤溶液を作製する。次に、比較例2の検知剤溶液に、実施の形態2と同様のガラス多孔体を浸漬する。この浸漬を24時間行うことで、ガラス多孔体の孔内に検知剤溶液を含浸させた後、検知剤が含浸したガラス多孔体を風乾処理し、また、窒素ガス気流中に24時間放置する乾燥処理を行う。しかしながら、これらの乾燥処理を行うと、ガラス多孔体の表面に硫酸が付着して乾燥ができず、実施の形態2で示したトルエン検知素子として機能させることができない。
【0041】
[比較例3]
次に、上述した実施の形態2におけるトルエン検知素子に対する比較例(比較例3)について説明する。まず、トルエン検知素子の作製方法について説明すると、95%硫酸5mlおよびトリオキサン2.5mgを水に溶解して全量を10mlとした検知剤溶液を作製する。この時の硫酸の濃度は48%に相当する。次に、比較例3の検知剤溶液に、実施の形態2と同様のガラス多孔体を浸漬する。この浸漬を24時間行うことで、ガラス多孔体の孔内に検知剤溶液を含浸させた後、検知剤が含浸したガラス多孔体を風乾処理し、また、窒素ガス気流中に24時間放置する乾燥処理を行う。しかしながら、得られた検知素子は、白濁しており、透過光学特性を測定することができない状態であり、実施の形態2で示したトルエン検知素子として機能させることができない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
上述した本発明によれば、硫酸およびトリオキサンから検知剤を構成したので、空気中に含まれるトルエンを、簡単に、電力を必要とせず、危険な薬品を用いることなく測定することが可能となる。また、本発明によれば、検知剤の成分が揮発して変化することが抑制されているので、雰囲気のトルエンの蓄積的な測定をより簡便に行うことができ、また、測定時間を延ばすことでサブppmレベルの濃度のトルエンを測定することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
101…検知剤溶液、102…容器、103…多孔体、103a,103b…トルエン検知素子、111…トルエン検知剤、112…水分、113…トリオキサン、114…硫酸、121…開口部、122…細孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸およびトリオキサンを含む溶液から構成されている
ことを特徴とするトルエン検知剤。
【請求項2】
ガラスからなる透明な多孔体と、
前記多孔体の孔内に配置された硫酸およびトリオキサンを含む検知剤と
を少なくとも備えることを特徴とするトルエン検知素子。
【請求項3】
請求項2記載のトルエン検知素子において、
前記検知剤は、前記検知剤が溶解した溶液を前記多孔体に含浸させることで前記孔内に配置されたものであることを特徴とするトルエン検知素子。
【請求項4】
請求項3記載のトルエン検知素子において、
前記検知剤は、前記硫酸の濃度が5%以上38%以下であることを特徴とするトルエン検知素子。
【請求項5】
硫酸およびトリオキサンを含む溶液から構成さたトルエン検知剤がトルエンのガスの晒されていない状態の初期吸光度を、トルエンのガスと反応した前記トルエン検知剤が吸収する測定波長で測定する第1ステップと、
トルエンのガスに晒された前記トルエン検知剤の検出後吸光度を前記測定波長で測定する第2ステップと、
前記初期吸光度と前記検出後吸光度との差によりトルエンのガスの濃度を求める第3ステップと
を少なくとも備えることを特徴とするトルエン測定方法。
【請求項6】
ガラスからなる透明な多孔体と、この多孔体の孔内に配置された硫酸およびトリオキサンを含む検知剤とを備えるトルエン検知素子におけるトルエンのガスに晒されていない状態の初期吸光度を、トルエンのガスと反応した前記検知剤が吸収する測定波長で測定する第1ステップと、
トルエンのガスに晒された前記トルエン検知素子の検出後吸光度を前記測定波長で測定する第2ステップと、
前記初期吸光度と前記検出後吸光度との差によりトルエンのガスの濃度を求める第3ステップと
を少なくとも備えることを特徴とするトルエン測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−266213(P2010−266213A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115278(P2009−115278)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度、独立行政法人国立環境研究所、「連続測定用小型VOCセンサの研究委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】