説明

トルクウィルキ

【課題】 ウィルキの柄の部分で弁の締付力を調整することで、誰が使用しても、一定の締付力で操作することができる。
【解決手段】 弁のハンドル55を回転操作するトルクウィルキ1であって、操作杆2と、操作杆2に、操作杆2の軸線と直交し合うように設けた一対の固定脚3,4と、操作杆2の長手方向に揺動自在に連結し得る把持杆5と、操作杆2と、把持杆5との間に連結した、把持杆5の回転操作時に、所定以上のトルクが操作杆2に加わると可動し得るように構成したトルク機構部6とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管弁等のハンドルを回転操作する際に使用する弁の開閉操作用工具に係り、特に弁の締付力を調整することができるトルクウィルキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、配管弁、マニホールド弁、計器元弁等のハンドルを回転させる際に、その弁を容易に開閉できるようにウィルキが使用されている。このウィルキ51としては、図8に示すように、操作杆52の先端側に操作杆52の軸線と直交し合う一対の固定脚53,54が設けられた形状のものが提案されている。このウィルキ51を使用する際には、一対の固定脚53から固定脚53までの寸法は、弁のハンドル55の孔56内に入る長さに設定され、ハンドル55の孔56内に先端の固定脚53を挿入した状態で、操作杆52を時計方向又は反時計方向に回転させることで弁を開閉操作することができるようになっている(図4参照)。
【0003】
このようなウィルキに関する開閉操作用工具については、例えば、特許文献1の実開平6−17874公報「ハンドル用ウィルキー」に示すように、操作杆に、操作杆から延長された2本の固定脚と、操作杆に沿ってスライド自在に装着され固定脚に対して前進、後退可能な可動脚とを設け、固定脚と可動脚とを、操作杆から外側へ拡がる末広がり形状とした技術が提案されている。このハンドル用ウィルキーは、通常のハンドルにあっては、固定脚と可動脚とをハンドルの孔内に挿入することでハンドル操作が可能になるという特徴を有するものである。
【特許文献1】実開平6−17874
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、作業者がウィルキ51を用いて弁のハンドル55を回転させる際に、その弁閉操作時の力の入れ方が相違することがある。即ち、増し閉め操作時の力の入れ方が作業者によって相違する場合が多い。このように、弁を締め付け過ぎると、次にその弁の開操作時に容易に開けることができないという問題を有していた。
【0005】
また、弁の増し閉め時にウィルキを使用するときの力加減が作業者によって異なるため、弁シート面を傷つけることがあり、弁のシート漏洩の原因になっていた。
このようにハンドルを回転させる際に力を入れすぎると、弁のハンドル55からウィルキ51が外れて作業者が転倒することもあった。
逆に、弁の増し閉めが不十分な場合は、シート漏洩の原因になるという問題を有していた。
【0006】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、ウィルキの柄の部分で弁の締付力を調整することで、誰が使用しても、一定の締付力で操作することができるトルクウィルキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、弁のハンドル(55)を回転操作するトルクウィルキ(1)であって、操作杆(2)と、前記操作杆(2)に、該操作杆(2)の軸線と直交し合うように設けた一対の固定脚(3,4)と、前記操作杆(2)の長手方向に揺動自在に連結し得る把持杆(5)と、前記操作杆(2)と把持杆(5)との間に連結した、前記把持杆(5)の回転操作時に、所定以上のトルクが操作杆(2)に加わると可動し得るように構成したトルク機構部(6)と、から成る、ことを特徴とするトルクウィルキが提供される。
例えば、前記トルク機構部(6)は、前記ハンドル(55)の閉操作時のみ可動することが好ましい。
【0008】
前記トルク機構部(6)は、前記操作杆(2)と把持杆(5)との連結部分に、平断面が略く字形状に形成した板ばねを介在させたものである。
前記トルク機構部(6)は、前記操作杆(2)と把持杆(5)との連結部分に、揺動連結部(8)を設けると共に、前記操作杆(2)に設けたブラケット(9)と前記把持杆(5)に設けたブラケット(10)間に弾性部材(11)を介装させ、前記操作杆(2)と把持杆(5)とを直線状に強固に支持し得ると共に、所定の曲げ応力が加わったときに前記操作杆(2)に対して把持杆(5)が可動し得るように構成したものである。
前記トルク機構部(6)は、前記操作杆(2)と把持杆(5)との連結部分を1本の板ばね(12)で連結したものである。
【0009】
前記操作杆(2)の先端側に、間隔の相違する固定脚(3,4)を複数対設けることも可能である。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の発明では、固定脚(3,4)を設けた操作杆(2)と把持杆(5)との間に、この把持杆(5)の回転操作時に所定以上のトルクが操作杆(2)に加わると可動するように構成したトルク機構部(6)を連結したので、弁の締付力を容易に調整することができる。このトルク機構部(6)は、弁閉操作時に規定以上の力が加わったときにこのトルク機構部(6)が曲がり、弁を規定以上の力で締め付けられたこと、または規定以上の力で締め付けられる可能性が高いことを知らせることができる。そこで、このトルクウィルキ(1)は誰が使用しても、一定の力で操作することができる。
なお、トルク機構部(6)は、ハンドル(55)の閉操作時のみ可動し、開操作時は可動しないようにすることで、強固に締め付けられたハンドル(55)であっても容易に開けることができる。
【0011】
操作杆(2)と把持杆(5)との連結部分に平断面が略く字形状に形成した板ばねから成るトルク機構部(6)では、規定以上の力を把持杆(5)にかけたときに、略く字形状の板ばね(7)が開くように変化又は閉じるように変化することで、把持杆(5)が操作杆(2)に対して曲折した状態になり、その変化状態を知らしめることができる。
【0012】
操作杆(2)と把持杆(5)との連結部分に、揺動連結部(8)を設けると共に、操作杆(2)に設けたブラケット(9)と把持杆(5)に設けたブラケット(10)間に弾性部材(11)を介装させて操作杆(2)と把持杆(5)とを直線状に強固に支持し得ると共に、所定の曲げ応力が加わったときに操作杆(2)に対して把持杆(5)が可動し得るように構成したトルク機構部(6)では、規定以上の力を把持杆(5)にかけたときに、把持杆(5)が操作杆(2)に対して曲折した状態になり、その変化状態を知らしめることができる。特に、弾性部材(11)を架け替えることで、締付力の微調整を容易に行うことができる。
【0013】
操作杆(2)と把持杆(5)との連結部分を1本の板ばね(12)で連結したトルク機構部(6)では、構造が簡単で軽量になるので、容易に携帯することができる。
【0014】
操作杆(2)の先端側に、間隔の相違する固定脚(3,4)を複数対設けトルクウィルキ(1)では、直径の異なる複数のハンドルに対して1本のトルクウィルキ(1)で的確に装着し、開閉操作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のトルクウィルキは、固定脚を設けた操作杆と、作業者が手にする把持杆との間に回転操作時に、所定以上のトルクが操作杆に加わると可動するように構成したトルク機構部を連結して、ウィルキによる弁の締付力を調整できるようにしたものである。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施例1のトルクウィルキを示す正面図である。図2は実施例1のトルクウィルキを示す平面図である。図3は実施例1のトルク機構部の拡大平面図である。
本発明のトルクウィルキ1は、弁のハンドル55を回転操作する棒状の操作杆2と、この操作杆2に操作杆2の軸線と直交し合うように設けた一対の固定脚3,4と、操作杆2の長手方向に揺動自在に連結し得る把持杆5とから成り、この把持杆5を持ちながら弁のハンドル55を回転操作する開閉操作用工具である。この操作杆2と把持杆5との間に、把持杆5の回転操作時に、所定以上のトルクが操作杆2に加わると可動し得るように構成したトルク機構部6を連結した。
【0017】
実施例1のトルクウィルキ1は、操作杆2と把持杆5との連結部分に平断面が略く字形状に形成した板ばね7から成るトルク機構部6を連結している。この略く字形状の板ばね7は、荷重が作用する方向に略く字形状の板ばねの曲折部が位置するように操作杆2と把持杆5との連結部分に接続する。図示例では、弁のハンドル55の閉操作時に規定以上の締付力で、弁を閉めていたときに、この略く字形状の板ばね7のトルク機構部6があっても、開操作する際に、トルク機構部6は可動しないようになっている。トルク機構部6をこのような構成にすることで、強固に締め付けられた弁のハンドル55であっても容易に開けることができる。
【0018】
図4は本発明のトルクウィルキを用いて弁のハンドルを回転させる状態を示すものであり、(a)は弁開操作時、(b)は弁閉操作時である。
本発明のトルクウィルキ1を用いて弁開操作するときは、図4(a)に示すように、トルクウィルキ1の一方の固定脚3をハンドル55の孔56内に入れ、他方の固定脚4はハンドル55の外周に当て、そのまま把持杆5を左回り(反時計方向)に回すことで弁を開けることができる。
【0019】
逆に、本発明のトルクウィルキを用いて弁閉操作するときは、図4(b)に示すように、トルクウィルキ1の一方の固定脚3をハンドル55の孔56内に入れ、他方の固定脚4はハンドル55の外周に当てそのまま把持杆5を右回り(時計方向)に回すことで弁を閉めることができる。把持杆5との間にこの把持杆5の回転操作時に、所定以上のトルクが操作杆2に加わると可動するトルク機構部6を連結したので、弁の締付力を調整することができる。弁閉操作時に規定以上の力が加わったときにこのトルク機構部6が曲がり、弁を規定以上の力で締め付けられたことを知らせる。そこで、このトルクウィルキ1は誰が使用しても、一定の力で操作することができる。これにより、弁シート面を傷つけるおそれがなくなるため、保守費用を削減することができ、全体のコストを低減することができる。
【0020】
操作杆2と、把持杆5との連結部分に平断面が略く字形状に形成した板ばね7から成るトルク機構部6では、規定以上の力を把持杆5にかけたときに、略く字形状の板ばねが開くように変化又は閉じるように変化することで、把持杆5が操作杆2に対して曲折した状態になり、その変化状態を知らしめることができる。
【0021】
図5は本発明の実施例2のトルクウィルキを示す平面図である。
実施例2のトルク機構部6は、操作杆2と把持杆5との連結部分に、揺動連結部8を設けると共に、操作杆2に設けたブラケット9と把持杆5に設けたブラケット10間にコイルばね等の弾性部材11を介装させて、操作杆2と把持杆5とを直線状に強固に支持し得ると共に、所定の曲げ応力が加わったときに操作杆2に対して把持杆5が可動し得るように構成したものである。
【0022】
このように構成することにより、トルク機構部6では、規定以上の力を把持杆5にかけたときに、把持杆5が操作杆2に対して曲折した状態になり、その変化状態を知らしめることができる。特に、各ブラケット9,10間に介装する弾性部材11は、強度の異なるものに架け替えることで、回転力の微調整を容易に行うことができる。
【0023】
実施例2のトルク機構部6において、片側のみへ可動するように構成するときは、図示例の片側の弾性部材11に代えてチェーン等の伸縮しない部材に替えることにより、弾性部材11を介装していない側へ把持杆5を可動させるように構成することができる。
【0024】
図6は本発明の実施例3のトルクウィルキを示す平面図である。
実施例3のトルク機構部6は、操作杆2と把持杆5との連結部分を1本の板ばね12で連結したものである。このように構成することにより、トルクウィルキの構造が簡単になり、軽量化を図ることができるので、作業者は容易に携帯することができる。
【0025】
この実施例3のトルク機構部6においても、片側のみへ可動するように構成するときは、図示例の1本の板ばね12の片側に操作杆2と把持杆5の端面同士が衝突する部材(図示していない)を突出させることで、把持杆5を一方向のみへ可動させるように構成することができる。
【0026】
図7は本発明の実施例4のトルクウィルキを示す平面図である。
実施例4のトルク機構部6は、操作杆2の先端側に、間隔の相違する固定脚3,4を複数対設けることも可能である。このように構成することにより、直径の異なるハンドルに1本のトルクウィルキ1で対応することができる。
【0027】
なお、本発明は、トルクウィルキ1の柄(操作杆2と把持杆5)の部分に弁の締付力を調整するトルク機構部6を設けることで、誰が使用しても、一定の力で操作することができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のトルクウィルキ1は、配管弁、マニホールド弁、計器元弁等のハンドル55回転させる際に利用できるだけでなく、締付作業を一定の締付力で実施する必要がある作業であれば利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1のトルクウィルキを示す正面図である。
【図2】実施例1のトルクウィルキを示す平面図である。
【図3】実施例1のトルク機構部の拡大平面図である。
【図4】本発明のトルクウィルキを用いて弁のハンドルを回転させる状態を示すものであり、(a)は弁開操作時、(b)は弁閉操作時である。
【図5】本発明の実施例2のトルクウィルキを示す一部切り欠いた平面図である。
【図6】本発明の実施例3のトルクウィルキを示す平面図である。
【図7】本発明の実施例4のトルクウィルキを示す正面図である。
【図8】従来のトルクウィルキを示す正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 トルクウィルキ
2 操作杆
3 固定脚
4 固定脚
5 把持杆
6 トルク機構部
7 略く字形状の板ばね
8 揺動連結部
9 ブラケット
10 ブラケット
11 弾性部材
12 1本の板ばね
55 弁のハンドル
56 孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁のハンドル(55)を回転操作するトルクウィルキ(1)であって、
操作杆(2)と、
前記操作杆(2)に、該操作杆(2)の軸線と直交し合うように設けた一対の固定脚(3,4)と、
前記操作杆(2)の長手方向に揺動自在に連結し得る把持杆(5)と、
前記操作杆(2)と把持杆(5)との間に連結した、前記把持杆(5)の回転操作時に、所定以上のトルクが操作杆(2)に加わると可動し得るように構成したトルク機構部(6)と、から成る、ことを特徴とするトルクウィルキ。
【請求項2】
前記トルク機構部(6)は、前記ハンドル(55)の閉操作時のみ可動する、ことを特徴とする請求項1のトルクウィルキ。
【請求項3】
前記トルク機構部(6)は、前記操作杆(2)と把持杆(5)との連結部分に、平断面が略く字形状に形成した板ばね(7)を介在させたものである、ことを特徴とする請求項1又は2のトルクウィルキ。
【請求項4】
前記トルク機構部(6)は、前記操作杆(2)と把持杆(5)との連結部分に、揺動連結部(8)を設けると共に、前記操作杆(2)に設けたブラケット(9)と前記把持杆(5)に設けたブラケット(10)間に弾性部材(11)を介装させ、前記操作杆(2)と把持杆(5)とを直線状に強固に支持し得ると共に、所定の曲げ応力が加わったときに前記操作杆(2)に対して把持杆(5)が可動し得るように構成したものである、ことを特徴とする請求項1又は2のトルクウィルキ。
【請求項5】
前記トルク機構部(6)は、前記操作杆(2)と把持杆(5)との連結部分を1本の板ばね(12)で連結したものである、ことを特徴とする請求項1又は2のトルクウィルキ。
【請求項6】
前記操作杆(2)の先端側に、間隔の相違する固定脚(3,4)を複数対設けた、ことを特徴とする請求項1のトルクウィルキ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−44809(P2007−44809A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231546(P2005−231546)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)