説明

トルクコンバータ

【課題】単純化されかつ廉価な構造のトルクコンバータを提供する。
【解決手段】タービン116と、出力軸188と、ダンパ122とが設けられており、該ダンパによって少なくとも1つのカバープレート150が半径方向でタービン116に結合されており、フランジ186が設けられており、該フランジ186が、前記ダンパ122によって駆動されるようになっていて、前記出力軸188に相対回動不能に結合されており、しかも該フランジ186が、前記カバープレート150をセンタリングする、軸方向に延びる面196を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にハイドロリック式のトルクコンバータ、特にロックアップクラッチとダンパとを備えたハイドロリック式のトルクコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示したように、公知先行技術によるトルクコンバータ10はカバー12と、回転車もしくはインペラ14と、タービン16と、ステータ18と、ロックアップクラッチ20と、ダンパ22とを有している。トルクコンバータ10は、ピン24,26を介して結合されたエンジンによって駆動される。インペラ14はカバー12に固く結合されている。タービン16は、たとえばリベット30を用いて、タービンハブ28に固く結合されている。このタービンハブ28は、たとえば歯輪もしくはリングギヤ34を用いて出力軸32に相対回動不能に結合されている。タービンハブ28は出力軸32に関してタービン16をセンタリングする。
【0003】
ロックアップクラッチ20はピストン36とピストンハブ38とを有しており、このピストン36とピストンハブ38とは、ピストン36の軸方向両側の範囲42,44の間の制御された圧力差に関連して、タービンハブ28に設けられた外側のハブ40に沿って軸方向に運動することができる。ピストン36がカバー12に設けられた面46に接触していないと、エンジンからのトルクはトルクコンバータ10内のハイドロリック液を介して出力軸32へ伝達される。ピストン36がカバー12の面46に接触していると、エンジンからのトルクはダンパ22に設けられたばね48を介して出力軸32へ伝達される。このようなトルクコンバータの構成は、米国特許第5385222号明細書に基づき公知である。
【特許文献1】米国特許第5385222号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、タービンのセンタリングのために使用されるピストンハブと、タービンハブに設けられた外側のハブとを備えた公知先行技術におけるトルクコンバータを改良して、単純化されかつ廉価な構造のトルクコンバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために本発明の構成では、
タービンが設けられており、
出力軸が設けられており、
ダンパが設けられており、該ダンパによって少なくとも1つのカバープレートが半径方向でタービンに結合されており、
フランジが設けられており、該フランジが、前記ダンパによって駆動されるようになっていて、前記出力軸に相対回動不能に結合されており、しかも該フランジが、前記カバープレートをセンタリングする、軸方向に延びる面を有している、
ようにした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フランジの使用下にタービンのセンタリングが可能となるので有利である。
【0007】
本発明の有利な構成では、フランジがU字形の区分を有しており、該U字形の区分の一方の脚部が、軸方向に延びる面を有しており、他方の脚部が、出力軸との結合のためのリングギヤを有している。
【0008】
本発明の別の有利な構成では、当該トルクコンバータが、さらにカバーとインペラとを有しており、該インペラがタービンを駆動するようになっていて、前記カバーに結合されている。
【0009】
本発明のさらに別の有利な構成では、当該トルクコンバータが、さらに前記カバーに半径方向で取り付けられたカバーフランジを有しており、該カバーフランジが、前記カバーによってセンタリングされており、前記タービンと前記出力軸とが前記フランジによってセンタリングされている。
【0010】
本発明のさらに別の有利な構成では、当該トルクコンバータが、さらに前記フランジと前記カバーフランジとの間に配置された軸受けを有している。
【0011】
本発明のさらに別の有利な構成では、前記カバーフランジがU字形に形成されている。
【0012】
本発明のさらに別の有利な構成では、当該トルクコンバータが、さらにロックアップクラッチを有しており、該ロックアップクラッチが、前記カバーフランジに結合されたピストンを有している。
【0013】
本発明のさらに別の有利な構成では、少なくとも1つのクラッチディスクが、第1のカバープレートである前記カバープレートと第2のカバープレートとを有している。
【0014】
本発明のさらに別の有利な構成では、前記ダンパがばねを有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面につき詳しく説明する。
【0016】
図2には、本発明によるトルクコンバータ110が示されている。このトルクコンバータ110はカバー112と、回転車もしくはインペラ114と、タービン116と、ステータ118と、ロックアップクラッチ120と、ダンパ122とを有している。インペラ114はカバー112に固く結合されている。タービン116は、たとえばリベット154を用いて、カバープレート150に固く結合されている。ステータ118は、外側のレース158と内側のレース160とを備えたワンウェイクラッチもしくはフリーホイールクラッチ156に取り付けられている。内側のレース160は、たとえば歯輪もしくはリングギヤ164を介して、ステータ軸162に相対回動不能に結合されている。
【0017】
ロックアップクラッチ120はピストン136と、クラッチディスク166と、カバープレート150,152とを有している。両カバープレート150,152は、たとえばキー溝結合部168を用いて、クラッチディスク166に相対回動不能に結合されている。ピストン136は、該ピストン136の軸方向の両側に位置する範囲172,174の間の制御された圧力差に応じてカバーフランジ170に沿って軸方向に運動することができる。ピストン136が軸方向でタービン116へ向かって移動させられていると、ロックアップクラッチ120は解放されている。ピストン136が軸方向でエンジンへ向かって移動させられていて、クラッチディスク166とカバー112とピストン136とに設けられた摩擦面176,178,180,182を係合させると、ロックアップクラッチ120は締結されている。
【0018】
ダンパ122はカバープレート150,152を有しており、これらのカバープレート150,152は、環状に配置された複数のばね184から成るアッセンブリを保持する。ばね184はフランジ186に接触しており、このフランジ186は、たとえば歯環もしくはリングギヤ190を用いて出力軸188に相対回動不能に結合されている。出力軸188としては、たとえば変速機の駆動軸を挙げることができる。
【0019】
カバーフランジ170はカバー112に固く結合されている。直接にカバーフランジ170には、出力軸188とピストン136との間のシールのためのシール部材192,194が設けられている。カバー112は、該カバー112を起点にして延びるカバーガイド195によってエンジンのクランク軸にセンタリングされている。カバーフランジ170はカバー112によってセンタリングされている。フランジ186は軸受け206を用いてカバーフランジ170内にセンタリングされている。カバープレート150とタービン116とは、フランジ186に設けられた、軸方向に延びる面196にセンタリングされている。出力軸188はフランジ186内でセンタリングされている。タービン116に設けられた管状の面200には、スラスト軸受け198がセンタリングされている。
【0020】
トルクはエンジンからピン202を介してトルクコンバータ110へ伝達される。このトルクはピン202からカバー112へ伝達される。このカバー112からトルクは、ロックアップクラッチ120が解放されているのか、または締結されているのかに応じて、インペラ114へ伝達され得るか、またはクラッチディスク166へ伝達され得る。
【0021】
ロックアップクラッチ120が解放されていると、トルクはカバー112からインペラ114へ伝達される。インペラ114はトルクコンバータ110内に存在するオイルを介してタービン116へトルクを伝達する。タービン116はこのトルクをカバープレート150へ伝達する。このカバープレート150は、ばね184を介してフランジ186へトルクを伝達する。トルクがばね184のばね力を上回ると、フランジ186は範囲204で直接にカバープレート150に接触する。フランジ186はトルクを直接に出力軸188へ伝達する。フランジ186は軸方向の推力を、タービン116から、カバーフランジ170に取り付けられている軸受け206へ伝達する。フランジ186はU字形の区分を有しており、このU字形の区分を形成するU字体の一方の脚部は軸方向に延びる面196を有しており、他方の脚部はリングギヤ190に係合するためのリングギヤを有している。
【0022】
ロックアップクラッチ120が締結されていると、トルクはカバー112からクラッチディスク166へ伝達される。クラッチディスク166はこのトルクをカバープレート150へ伝達する。カバープレート150はタービン116の付加的な慣性モーメントを吸収する。カバープレート150は、ばね184を介してフランジ186へトルクを伝達する。トルクがばね184のばね力を上回ると、フランジ186は範囲204で直接にカバープレート150に接触する。フランジ186はトルクを直接に出力軸188へ伝達する。
【0023】
フランジ186を出力軸188に取り付けかつフランジ186をダンパ122に設けられたばね184と接触させることにより、図1に示した、公知先行技術によるハブ38,40の使用が、付加的な部分を挿入することなく回避されるので有利である。フランジ186に設けられた、軸方向に延びる面196を提供することにより、カバープレート150およびタービン116がフランジ186にセンタリングされ、かつ該フランジ186と出力軸188とが互いにセンタリングされるので有利である。したがって、トルクコンバータの構造は単純化され、かつコストが減じられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】公知先行技術によるトルクコンバータを示す概略図である。
【図2】本発明によるトルクコンバータの1実施例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0025】
10 トルクコンバータ
12 カバー
14 インペラ
16 タービン
18 ステータ
20 ロックアップクラッチ
22 ダンパ
24,26 ピン
28 タービンハブ
30 リベット
32 出力軸
34 リングギヤ
36 ピストン
38 ピストンハブ
40 外側のハブ
42,44 範囲
46 面
48 ばね
110 トルクコンバータ
112 カバー
114 インペラ
116 タービン
118 ステータ
120 ロックアップクラッチ
122 ダンパ
136 ピストン
150,152 カバープレート
154 リベット
156 フリーホイールクラッチ
158 外側のレース
160 内側のレース
162 ステータ軸
164 リングギヤ
166 クラッチディスク
168 キー溝結合部
170 カバーフランジ
172,174 範囲
176,178,180,182 摩擦面
184 ばね
186 フランジ
188 出力軸
190 リングギヤ
192,194 シール部材
195 カバーガイド
196 面
198 スラスト軸受け
200 面
202 ピン
204 範囲
206 軸受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクコンバータにおいて、
タービンが設けられており、
出力軸が設けられており、
ダンパが設けられており、該ダンパによって少なくとも1つのカバープレートが半径方向でタービンに結合されており、
フランジが設けられており、該フランジが、前記ダンパによって駆動されるようになっていて、前記出力軸に相対回動不能に結合されており、しかも該フランジが、前記カバープレートをセンタリングする、軸方向に延びる面を有している、
ことを特徴とするトルクコンバータ。
【請求項2】
フランジがU字形の区分を有しており、該U字形の区分の一方の脚部が、軸方向に延びる面を有しており、他方の脚部が、出力軸との結合のためのリングギヤを有している、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項3】
当該トルクコンバータが、さらにカバーとインペラとを有しており、該インペラがタービンを駆動するようになっていて、前記カバーに結合されている、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項4】
当該トルクコンバータが、さらに前記カバーに半径方向で取り付けられたカバーフランジを有しており、該カバーフランジが、前記カバーによってセンタリングされており、前記タービンと前記出力軸とが前記フランジによってセンタリングされている、請求項3記載のトルクコンバータ。
【請求項5】
当該トルクコンバータが、さらに前記フランジと前記カバーフランジとの間に配置された軸受けを有している、請求項4記載のトルクコンバータ。
【請求項6】
前記カバーフランジがU字形に形成されている、請求項4記載のトルクコンバータ。
【請求項7】
当該トルクコンバータが、さらにロックアップクラッチを有しており、該ロックアップクラッチが、前記カバーフランジに結合されたピストンを有している、請求項4記載のトルクコンバータ。
【請求項8】
少なくとも1つのクラッチディスクが、第1のカバープレートである前記カバープレートと第2のカバープレートとを有している、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項9】
前記ダンパがばねを有している、請求項1記載のトルクコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−138879(P2008−138879A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306133(P2007−306133)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Baden, Germany