説明

トルクレンチ用支持装置

【課題】大型車両のタイヤにおけるホイールナットの締め付け等の作業が、一人で、かつ、正確に行えるようにしたトルクレンチ用支持装置を提供する。
【解決手段】トルクレンチ用支持装置として、所望長さのパイプからなる支持主杆を斜め状に設け、この支持主杆のほぼ中央部に設ける支承部に、この支持主杆のほぼ半分の長さのパイプからなる支持副杆の上端部を回動自在に「人」形状を構成して取り付け、この支持副杆の下端には固定杆を水平方向にT字状に取り付け、前記支持主杆の下端よりやや上方に支承部を設けると共に、前記支持副杆の下端よりやや上方に支承部を設け、これらの支承部の間に、伸縮可能な調節杆を架設支承してなり、前記支持主杆の上面の1乃至複数個所にトルクレンチを回転可能に支承する受具を設けるという手段を採用した。上記調節杆は、二重構造のパイプで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に大型車両のタイヤのホイールナットの締め付けに使用するトルクレンチ(ホイールナットレンチ)の支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラック等の大型車両において、特に後輪では、走行安定性の観点から二重構造のタイヤが多く用いられている。この場合、2個のホイールを重ね合わせ、六角等のホイールナットを介して車軸に固定しているが、その着脱には、直線状乃至はL字状のレンチが用いられる。このようなホイールでは、ホイールナットの位置が奥まったところにあるので、直線状のレンチを使用する場合、レンチ先端のソケット部と回転操作をするハンドル部が離れていることから、ハンドルに大きなトルクを加えるとレンチのソケット部がホイールナットから外れやすいという不具合があった。
【0003】
そのため、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、高さ調節自在な支持装置によって、レンチを水平方向に支持し、作業性の向上を図るものが提案されている。しかしながら、特許文献1に開示されたものは、高さ調節の手段としてジャッキ装置を用いるものであり、通常タイヤの交換作業時には車体を持ち上げるためのジャッキ装置が必要であるから、2台のジャッキ装置を用意しなければならない。また、特許文献2に開示された補助具は、円盤状のプレート上にアジャスタを介してレンチホルダを高さ調節自在に設けたものであるが、レンチに大きなトルクを加えた場合、補助具自体の安定性に欠けるという不都合がある。
【0004】
一方、大きなトルクを得るため、長尺のトルクレンチを用いる場合、例えば特許文献3の図7にあるように、ホイールナットがホイールの奥まった位置にある場合には、トルクレンチの先端に、別途、L字状にエクステンションバー(ロッド)を取り付けてホイールナットの締め付け等を行うが、この場合、回転軸を合わせるため、エクステンションバー(ロッド)を水平方向に維持して回転させる必要があるので、特に大型のトルクレンチの場合、トルクレンチの先端部分を持つ人と、ハンドルを回して締める人の二人がかりで作業する必要があった。
【0005】
このため、特許文献3に開示されているように、接地板に2枚の側板で構成される支柱を立設し、この側板にはレンチのシャフト(エクステンションバー)を回転可能に支持するシャフト支持部が、上下方向に間隔をあけて複数個設けられたものが提案されている。
【0006】
このような支持具によれば、任意のシャフト支持部でレンチのシャフトを支持することにより、シャフトを略水平にかつ回転可能に支持することができるので、一人でも、ホイールナットの締め付け等の作業を行うことが可能となるものである。
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第2535225号公報
【特許文献2】実開平6−61459号公報
【特許文献3】実用新案登録第3064796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この支持具は、シャフト支持部が支柱側板に段階的に設けられているので、高さの選択が段階的に制限され、ホイールナットの位置に正確に適応できない。そのため、シャフトを正確に水平方向に維持できず、ナットの回転軸とレンチの回転軸との間に角度差が生じ、締め付けトルクに無駄が生じるものであった。また、小さな接地板に支柱を立設している構造のため、重心位置が高くなり、締め付け作業時の安定性に欠けるという問題も残されている。
【0009】
本発明は、これら従来の各種支持具が有する問題点に鑑みて発明をしたものであって、大型車両のタイヤにおけるホイールナットの締め付け等の作業が、一人で、かつ、正確に行えるようにしたトルクレンチ用支持装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記各課題を解決するため、本発明は、トルクレンチ用支持装置として、所望長さのパイプからなる支持主杆を斜め状に設け、この支持主杆のほぼ中央部に設ける支承部に、この支持主杆のほぼ半分の長さのパイプからなる支持副杆の上端部を回動自在に「人」形状を構成して取り付け、この支持副杆の下端には固定杆を水平方向にT字状に取り付け、前記支持主杆の下端よりやや上方に支承部を設けると共に、前記支持副杆の下端よりやや上方に支承部を設け、これらの支承部の間に、伸縮可能な調節杆を架設支承してなり、前記支持主杆の上面の1乃至複数個所にトルクレンチを回転可能に支承する受具を設けるという手段を採用した。
【0011】
そして、上記調節杆は、二重構造のパイプで構成する手段、さらには、太管とこの太管の内径部分に摺動可能な細管とからなり、前記太管の入口端部に設ける係止部で前記細管を所望の位置で係止固定できるようにするという手段を採用した。
【0012】
さらに、上記受具は、上方に向かって開放するL字アングルであるという手段を採用した。
【発明の効果】
【0013】
上記構成にかかる本発明の支持装置は、支持主杆と支持副杆と調節杆を、それぞれ支承部を介して回動可能に連結して、一辺の長さを調節可能な三角形を形成している。このため、調節杆の係止部で、調節杆の長さを適宜設定することにより、支持主杆と支持副杆が形成する角度を任意に変更することが可能であり、その結果、支持主杆に取り付ける受具の高さを自由に設定できるものである。これによって、この受具とホイールナットの高さを一致するように設定すれば、トルクレンチを正確に水平方向に支承することが可能であり、ホイールナットの回転軸とトルクレンチの回転軸の角度が一致し、少ない力で最大限のトルクを得て、締め付け等の作業を行うことができる。
【0014】
また、その際、トルクレンチを確実に支承するので、従来二人がかりで行っていた作業を一人ですることが可能となり、作業効率の向上を図ることができた。
【0015】
また、調節杆は、二重構造のパイプからなり、さらに詳しくは、太管と細管の二重構造とし、係止部で任意位置に係止固定できるので、従前のように、段階的な位置調節でなく、無段階に高さ調節でき、各種のホイールに柔軟に対応できる。
【0016】
さらに、受具を上方開放のL字アングルとしたので、トルクレンチを確実に回転可能に支承することができ、作業性が高まった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るトルクレンチ用支持装置の好ましい実施形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明装置の使用状態の全体斜視図、図2は、高さを低くした場合の使用状態の全体斜視図、図3は、本発明装置の正面説明図である。また、図4は、実際にトルクレンチを支承している状態の斜視図である。
【0018】
各図において、1は斜め状に設ける支持主杆であり、およそ1mの長さの金属製角パイプからなり、上端を適宜閉止するとともに、下端にはゴム製の石突き1aを嵌着している。2、2は、この支持主杆1の上斜面の上端近傍と、それより所定の距離だけ下段に設けた金属製の受具であり、例えば上方に向かって開放した断面L字形を呈するL型アングルとし、この受具2でトルクレンチ又はそのエクステンションバーを回転可能に支承する。但し、この受具2の形状は、これに限定するものではなく、トルクレンチ等を回転可能に支承し得るものであれば、断面形状がV字形や半円形等のアングルであってもよい。また、板状に限定するものでもなく、例えば線材を二股状に形成してトルクレンチを支承し得るような態様であってもよい。さらに、その素材は特に限定するものではなく、その設置数も2個所に限定されず、必要に応じて3個所以上に設けることもある。
【0019】
3は上記支持主杆と逆の斜め状に設ける支持副杆で、上記支持主杆1のほぼ半分の長さの金属製角パイプからなり、その上端部を上記支持主杆1のほぼ中央部に設けた支承部4に回動自在に取り付けて、両者で「人」形状を呈するようにして、上記支持主杆を支承するようにしたものである。また、この支持副杆3の下端には、その軸と直交して水平方向に所定長さの固定杆5をT字状に取り付け、その両端部にはゴム製の石突き5a、5aを嵌着している。
【0020】
次に、6は調節杆で、伸縮可能な二重構造の金属製丸パイプからなり、上記支持主杆1の下端よりやや上方に設けた支承部7と、上記支持副杆3の下端よりやや上方に設けた支承部8の間に、各支承部7、8で回動するように架設支承している。この調節杆6は、例えば、太管6aと、それよりやや細く、この太管6aの内径部分に摺動可能な細管6bとからなる二重構造で、太管6aの入口端部に設ける係止部6cで細管6bを所望の位置で係止固定し、任意の長さに設定することができるようになっている。なお、この係止部6cの係止構造は、例えばレバーを回動させることにより、太管6aの内径部分を絞縮して細管6bを係止固定するようにしたものであるが、図示したもの限らず、従来公知の係止構造を採用することができる。
【0021】
なお、上記実施形態では、支持主杆1及び支持副杆3は、金属製角パイプを用いているが、これに限定されるものではなく、丸パイプであってもよいし、金属製に限定するものでもない。但し、トルクレンチを支承する際、相当の負荷がかかるので、それ相応の耐久性を有する素材が好ましく、また、軽量化の観点からは、中空状であることが好ましい。また、調節杆6についても、同様に、その断面形状や素材を特に限定するものではない。
【0022】
上記構造に係る本発明の支持装置は、図3に示すように、係止部6cの操作によって調節杆6全体の長さを所望の長さに設定すると(矢印方向)、その設定長さに応じて、支持主杆1と支持副杆3が形成する角度が変化する。その結果、支持主杆1の上斜面に設けた受具2、2の設置面からの高さh1、h2が変化して、受具2を希望する任意の高さに設定することが可能となるものである。例えば、図2に示すように、低く折り畳むこともでき、さらに折り畳めば、略棒状となり、保管や運搬に便利である。
【0023】
従って、図4に示すように、この受具2の高さをホイール(H)のホイールナット(N)の高さと一致させれば、この支持装置の受具2に回転可能に支承するトルクレンチ(T)等を正確に水平方向に支承することができるから、適正なトルクで正確にホイールナットを締め付けることが可能となる。また、トルクレンチを安定して支承できるので、従来のように二人がかりではなく、一人で締め付け等の作業を行うことができ、作業効率の向上を図ることができるものである。
【0024】
この場合、図3から明らかなように、上記支持主杆1、支持副杆3、および、調節杆6で三角形を形成するので、極めて安定した支承構造となっている。さらに、設置面においても、支持主杆1の石突き1aと、所定長さの固定杆5の両端の石突き5a、5aで接地固定するので、安定した接地構造となっている。従って、締付作業時に、不用意に倒れたりすることがなく、高い安全性のもとで作業をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るトルクレンチ用支持装置の実施形態の一例の斜視図である。
【図2】高さを低く調節した状態の斜視図である。
【図3】本発明装置の実施形態の正面説明図である。
【図4】実際にトルクレンチを支承している状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 支持主杆
2 受具
3 支持副杆
4 支承部
5 固定杆
6 調節杆
6a 太管
6b 細管
6c 係止部
7 支承部
8 支承部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望長さのパイプからなる支持主杆を斜め状に設け、この支持主杆のほぼ中央部に設ける支承部に、この支持主杆のほぼ半分の長さのパイプからなる支持副杆の上端部を回動自在に「人」形状を構成して取り付け、この支持副杆の下端には固定杆を水平方向にT字状に取り付け、前記支持主杆の下端よりやや上方に支承部を設けると共に、前記支持副杆の下端よりやや上方に支承部を設け、これらの支承部の間に、伸縮可能な調節杆を架設支承してなり、前記支持主杆の上面の1乃至複数個所にトルクレンチを回転可能に支承する受具を設けたことを特徴とするトルクレンチ用支持装置。
【請求項2】
上記調節杆は、二重構造のパイプで構成して伸縮可能とした請求項1記載のトルクレンチ用支持装置。
【請求項3】
上記伸縮可能な調節杆は、太管とこの太管の内径部分に摺動可能な細管とからなり、前記太管の入口端部に設ける係止部で前記細管を所望の位置で係止固定できるようにしたものである請求項1又は請求項2記載のトルクレンチ用支持装置。
【請求項4】
上記受具は、上方に向かって開放するL字アングルである請求項1から請求項3のいずれか1項記載のトルクレンチ用支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−131733(P2010−131733A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312291(P2008−312291)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 株式会社パーマンコーポレーション、通信販売カタログ「PA−MAN」、88号 2008年9〜12月末まで 秋・冬、平成20年 8月25日(頒布日)
【出願人】(593176966)株式会社パーマンコーポレーション (3)
【Fターム(参考)】