説明

トルク測定器

【課題】高速回転する回転軸のトルク計測に好適な形状のトルク測定器を提供する。
【解決手段】2つの回転軸の互いに向き合う各一端が固定される一対のフランジ部120とそれら一対のフランジ部を連結する連結部130とを有し、その連結部が、回転中心線の回りに周回する周回方向に、半径方向の厚みが相対的に薄い薄肉部133と、半径方向の厚みが相対的に厚い厚肉部134が、半径方向に貫通した貫通部を互いの間に置いて交互に複数配置された形状を有し、それら薄肉部のうちの少なくとも1つの薄肉部の半径方向と交わる内側面133aに、歪ゲージ140が貼付されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸のトルクを検出するトルク測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸のトルクを測定するトルク測定器として、同芯に配置された内輪と外輪と、さらに、それら内輪と外輪との繋ぎの部分を有し、全体として1枚の円盤形状に形成されたトルク測定器が知られている(例えば特許文献1参照)。このトルク測定器を同軸の2つの回転軸の中間に配置し、一方の回転軸を内輪に固定するとともにもう一方の回転軸を外輪に固定し、内輪と外輪とを繋いだ部分の歪みを測定することによりトルクが測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−27229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のタイプのトルク測定器の場合、回転軸の回転中心線に対し垂直な面に歪ゲージが貼付される。このトルク測定器は、回転軸の回転とともに回転し、内輪と外輪とを繋いだ部分は遠心力により半径方向に引き伸ばされる。この歪ゲージは、この内輪と外輪とを繋いだ部分の回転中心線に対し垂直な面に貼付されているため、回転軸およびトルク測定器の回転によりその貼付された部分が半径方向に引き伸ばされることによって半径方向に引き伸ばされ、また、歪ゲージ自体も半径方向に遠心力を受ける。
【0005】
歪ゲージは、内輪と外輪との間の、回転中心線の周りの‘ねじれ’を計測するものであるのに対し、歪ゲージが半径方向に引き伸ばされると測定誤差が増加する。また、このような引き伸ばしを受ける結果、貼付されている歪ゲージが剥がれてしまうおそれもある。
【0006】
近年、従来よりもさらに高速に回転する回転軸のトルクを計測することのできるトルク測定器が求められており、上記のタイプのトルク測定器では限界がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、高速回転する回転軸のトルク計測に好適な形状のトルク測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明のトルク測定器は、
互いの間に間隔を空けて互いに平行に広がり、同軸の2つの回転軸の中間に配置されてそれら2つの回転軸の互いに向き合う各一方の端部がそれぞれ固定される、それら2つの回転軸に共通の回転中心線の回りにその回転中心線の延びる方向に貫通した中心穴がそれぞれに形成された一対のフランジ部と、
上記一対のフランジ部に挟まれた位置に置かれ、それら一対のフランジ部を互いに連結する、それら一対のフランジ部それぞれに形成された中心穴と連通する連通穴が形成された連結部とを有し、
上記連結部が、上記回転中心線の回りに周回する周回方向に、半径方向の厚みが相対的に薄い薄肉部と、半径方向の厚みが相対的に厚い厚肉部が、外周面と前記連通穴との間で貫通した貫通部を互いの間に置いて、交互に複数配置された形状を有し、
上記薄肉部のうちの少なくとも1つの薄肉部の半径方向と交わる内側面に、歪ゲージが貼付されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のトルク測定器は、上記の通り一対のフランジ部と連結部とを有し、その連結部に薄肉部を形成して、その薄肉部の半径方向と交わる内側面に歪ゲージが貼付されている。このため、遠心力によって歪ゲージが引き伸ばされる力を受けずに済み、高速回転による誤差が抑えられ、高速回転する回転軸のトルクの測定に好適である。また、歪ゲージが受ける遠心力は貼付面と交わる方向であり、回転中心線と交わる面に貼付された場合と比べ剥がれ落ちにくい。
【0010】
また、本発明のトルク測定器は、上記の貫通部を有するため連結穴内に熱が籠りにくく、このため熱による測定誤差の発生を避け、高精度な計測が維持される。
【発明の効果】
【0011】
以上の本発明によれば、高速回転する回転軸のトルク計測に好適な形状のトルク測定器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のトルク測定器を使って回転軸のトルク測定を行っている様子を示した模式図である。
【図2】本実施形態のトルク測定器の斜視図である。
【図3】図2に示す円Rの部分の拡大図である。
【図4】図2に示す矢印X−Xに沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施形態を説明する。
【0014】
図1は、本実施形態のトルク測定器を使って回転軸のトルク計測を行っている様子を示した模式図である。この図1では、トルク測定器は、回転中心線を含む面での断面が示されている。
【0015】
このトルク測定器100は、回転中心線Oの回りに回転する同軸の2つの回転軸21,22の中間に配置されている。このトルク測定器100は、一対のフランジ部110,120と連結部130とを有する。一対のフランジ部は、互いの間に連結部130の分だけ間隔を空けて互いに平行に広がり、2つの回転軸21,22の互いに向き合う各一方の端部21a,22aがそれぞれ固定されている。これら一対のフランジ部110,120は、回転中心線Oの回りに、その回転中心線Oの延びる方向(図1の左右方向)に貫通した中心穴111,121がそれぞれ形成されている。また、連結部130は、一対のフランジ部110,120に挟まれた位置に置かれて、それら一対のフランジ部110,120を互いに連結している。この連結部130にも、一対のフランジ部110,120それぞれに形成された中心穴111,121と連通する連通穴131が形成されている。本実施形態の連結部130は、さらに特徴的な構造を有するが、この連結部130の特徴的な構造については後述する。
【0016】
また、この連結部130には、半径方向と交わる内側133a面、すなわち回転中心線O側を向いた面に、歪ゲージ140が貼り付けられている。
【0017】
ここでは、図1の左側の回転軸21が駆動側、右側の回転軸22が負荷側とすると、駆動側の回転軸21が矢印Aの向きに回転すると、その回転駆動力はトルク測定器100を介して負荷側の回転軸22に伝達され、負荷側の回転軸22を、矢印Aと同じ方向である矢印Bの方向に回転させる。
【0018】
この場合に、駆動側の回転軸21の駆動力の大きさと負荷側の回転軸22の負荷の大きさとに応じて、トルク測定器100の連結部130に捩れが生じる。そこでその捩れの程度を歪ゲージ140で測定することにより、この回転軸21,22のトルクが測定される。
【0019】
この図1に示した、未だ説明していない構成要素については、図2以降の図を参照しながら説明する。
【0020】
図2は、本実施形態のトルク測定器の斜視図、図3は、図2に示す円Rの部分の拡大図、図4は、図2に示す矢印X−Xに沿う断面図である。
【0021】
図1を参照して説明した通り、このトルク測定器100は、互いの間に間隔を空けて互いに平行に広がる一対のフランジ部110,120と、それら一対のフランジ部を互いに連結する連結部130とを有する。
【0022】
一対のフランジ部110,120のそれぞれには、回転中心線Oの延びる方向に貫通した中心穴111,121(図1参照)が形成されており、さらに、その中心穴111,121を取り巻く位置に回転軸21,22との固定のための複数の穴112,122が形成されている。また、連結部130にも、連通穴131が形成されている。この連結部130の連通穴131は、一対のフランジ110,120それぞれの中心穴111,121と連通している。この連結部130の連通穴131は、本実施形態では、円筒形を有する。
【0023】
また、この連結部130の連通穴131の周りには、半径方向(図4に示す矢印rの方向;回転中心線Oから離れる方向)の厚みが相対的に薄い薄肉部133と半径方向の厚みが相対的に厚い厚肉部134が、それら薄肉部133と厚肉部134との関係では交互に複数(この実施形態では薄肉部133,厚肉部134のそれぞれが8個)配置されている。
【0024】
また、これらの薄肉部133と厚肉部134との間には、外周面と連通穴131との間で貫通した貫通部135が設けられている。また、図1にも示す歪ゲージ140は、薄肉部133の、半径方向と交わる内側面133a、すなわち、この実施形態では回転中心線O側を向いた円筒面に貼付されている。
【0025】
厚肉部134は、主に一対のフランジ110,120間の連結を担っており、薄肉部133は、一対のフランジ110,120間の捩れに敏感な部分であって、その捩れを歪ゲージ140に伝える役割りを担っている。
【0026】
本実施形態のトルク測定器100の場合、薄肉部133と厚肉部134との間に貫通部135が形成されている。このため一対のフランジ110,120どうしの連結の強度設計、すなわち厚肉部134の設計と、一対のフランジ110,120の間の捩れに対する感度の設計、すなわち薄肉部133の設計を、完全にではないものの、ある程度分離して行なうことができ、設計工数の低減およびコスト低減に繋がっている。
【0027】
また、このトルク測定器100は、その両側に回転軸21,22(図1参照)が固定されて高速回転する。このため、例えばガソリンエンジン等から駆動力を受けて回転軸21,22を回転させるような系の場合、そのガソリンエンジン等からの熱も回転軸を経由して伝達され、トルク測定器100の中心穴111,121および連通穴131に熱が籠りがちであり、熱による測定誤差の発生が考えられる。本実施形態のトルク測定器100の場合、その連結部130に貫通部135が形成されているため内部の熱が放熱されて熱が内部に籠るのを避け、高精度な計測が維持される。さらに本実施形態の場合、連結部130に貫通部135が形成されていることから、その分、軽量化にも寄与している。
【0028】
尚、本実施形態では、歪ゲージ140は、薄肉部133の、回転中心線O側の、円筒面133a上に貼付されているが、薄肉部133の、回転中心線O側の面を平面に形成し、その平面上に貼付してもよい。
【符号の説明】
【0029】
21,22 回転軸
21a,22a 各一方の端部
100 トルク測定器
110,120 フランジ部
111,121 中心穴
130 連結部
133a 内側面
131 連通穴
133 薄肉部
134 厚肉部
135 貫通部
140 歪ゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの間に間隔を空けて互いに平行に広がり、同軸の2つの回転軸の中間に配置されて該2つの回転軸の互いに向き合う各一方の端部がそれぞれ固定される、該2つの回転軸に共通の回転中心線の回りに該回転中心線の延びる方向に貫通した中心穴がそれぞれに形成された一対のフランジ部と、
前記一対のフランジ部に挟まれた位置に置かれ、該一対のフランジ部を互いに連結する、該一対のフランジ部それぞれに形成された中心穴と連通する連通穴が形成された連結部とを有し、
前記連結部が、前記回転中心線の回りに周回する周回方向に、半径方向の厚みが相対的に薄い薄肉部と、半径方向の厚みが相対的に厚い厚肉部が、外周面と前記連通穴との間で貫通した貫通部を互いの間に置いて、交互に複数配置された形状を有し、
前記薄肉部のうちの少なくとも1つの薄肉部の半径方向と交わる内側面に、歪ゲージが貼付されていることを特徴とするトルク測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−24692(P2013−24692A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158985(P2011−158985)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)