説明

トレッドミル

【課題】エンドレスベルトのテンションに関してメンテナンスフリーを実現したトレッドミルを提供する。
【解決手段】左右一対の支持フレーム(4)(4)の前後方向のX軸方向に間隔をあけて配置された駆動ローラ手段(8)及び従動ローラ手段(9)にエンドレスベルト(10)が巻掛けられ、前記駆動ローラ手段(8)は、駆動機構(12)により駆動回転される。前記従動ローラ手段(9)は、両端の軸端部(14a)を備えた軸部材(17)にローラ部材(18)を回転自在に外挿しており、前記軸端部(14a)を張力付加機構(19)により支持フレーム(4)に搭載されている。前記張力付加機構(19)は、前記軸端部(17a)のX軸方向の前方に配置されるバネ受け部材(28)と、前記軸端部とバネ受け部材の間に介装される圧縮スプリング(29)と、前記圧縮スプリングを圧縮させた所定位置に前記バネ受け部材(28)を固定する固定位置設定手段(30)を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドレスベルトのテンションに関してメンテナンスフリーを実現したトレッドミルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレッドミルは、屋内でランニングやウォーキングを行うための健康器具として知られており、床上に設置される左右一対の支持フレームの前後方向に駆動ローラ手段及び従動ローラ手段を配置すると共に、両ローラ手段の間にエンドレスベルトを巻掛け、駆動機構により前記駆動ローラ手段を駆動回転することにより、エンドレスベルトの上側の往動部を駆動ローラ手段から従動ローラ手段に向けて後方移動するように周回移動させ、該往動部に搭乗したユーザが歩行運動又は走行運動を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−38679号公報
【特許文献2】特開2007−159879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、トレッドミルは、駆動ローラ手段と従動ローラ手段の間にエンドレスベルトを巻掛けており、従って、エンドレスベルトの周回移動を良好とするためには、エンドレスベルトに所望の張力を与えることが必要である。
【0005】
このため、従来技術では、所定位置に取付け固定される駆動ローラ手段に対して、従動ローラ手段の取付け位置を前後方向に調整可能に構成しており、生産現場において、従動ローラ手段を組付ける際に、その取付け位置を調整しながらエンドレスベルトに所望のテンションを形成させ、検品の後、製品を出荷している。
【0006】
ところが、トレッドミルの性質上、エンドレスベルトは、歩行又は走行運動中のユーザの荷重を受けた状態で、長時間の過酷な駆動回転を強いられ、伸縮を繰り返すので、次第に伸長し又は疲労劣化により収縮力を減じ、所期のテンションを低下することにより、前記ローラ手段に対してスリップを生じるという問題がある。
【0007】
この場合、構造的には、従動ローラ手段は、取付け位置を調整可能としているので、外装部品等を取外し、再度調整することにより改めてエンドレスベルトにテンションを形成することは可能であるが、種々の工具を必要とするばかりか、一般ユーザが行う作業としては余りにも困難であり、結局、専門の修理業者による修復を余儀なくされる。
【0008】
そこで、本発明は、この点に関するメンテナンスフリーを実現したトレッドミルの提供を課題とする。即ち、本発明の目的は、上述のようにエンドレスベルトがテンションを低下したとき、テンションの低下に追従しながら自動的に従動ローラ手段の取付け位置を調整させ、何ら手を加えなくても、常時、エンドレスベルトの適切なテンションを保持できるようにしたトレッドミルを提供する点にある。
【0009】
また、別の課題として、本発明は、後述する実施形態のように、エンドレスベルトが周回移動する際に生じる摩擦抵抗を良好に減少させ、円滑な周回移動の確保と、ベルトの損耗防止を可能にしたトレッドミルの提供を課題とする。
【0010】
公知のように、駆動ローラ手段と従動ローラ手段の間に巻掛けられたエンドレスベルトは、上側の往動部にユーザが搭乗した状態で歩行又は走行運動を行うものであるため、該往動部の下側に支持床材を設置することによりユーザの荷重を支持するように構成されている。従って、往動部は、荷重により下向きに撓まされた部分を支持床材の表面に摺擦しながら移動する。
【0011】
そこで、従来、生産現場における組立ての際に、前記エンドレスベルトの内側及び/又は支持床材の上面にオイル等の潤滑剤を添加している。潤滑剤により、前述の摺擦移動部分の摩擦抵抗を減じさせ、駆動機構の過負荷を防止すると共に、ベルトの損耗を防止するためである
【0012】
ところが、潤滑剤は、経年変化により劣化するばかりか、長期間の運転により消失することが不可避であり、その結果、過負荷により駆動機構の電動モータを破損したり、ベルトの損耗等を招来したりする問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、この点に関するメンテナンスフリーを実現したトレッドミルの提供を別の課題とする。即ち、本発明の別の目的は、上述のような所謂潤滑切れによる作動不良が起きたとき、これを直ちに検知し、作動状態が改善されるまで、自動的に潤滑剤を添加するように構成したトレッドミルを提供する点にある。
【0014】
尚、上述した二つの課題は、一方が他方の前提事項又は先決問題とされるものではなく、従って、本願の明細書及び図面は、相互に独立した課題をそれぞれ解決した二つの発明を包含していると理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の特許請求の範囲に記載の本発明は、エンドレスベルトのテンションに関するメンテナンスフリーを実現したトレッドミルを提供するものであり、その手段として構成したところは、相互に直交する前後方向のX軸と横方向のY軸に関して、床上に設置される左右一対の支持フレームのX軸方向に間隔をあけて配置されると共にY軸方向に延びる駆動ローラ手段及び従動ローラ手段と、前記駆動ローラ手段と従動ローラ手段に巻掛けられたエンドレスベルトと、前記駆動ローラ手段を駆動回転する駆動機構を備えたトレッドミルにおいて、前記従動ローラ手段は、両端の軸端部を前記支持フレームに対して張力付加機構を介して搭載される軸部材と、該軸部材に回転自在に外挿されたローラ部材により構成され、前記張力付加機構は、前記軸端部のX軸方向の前方に配置されるバネ受け部材と、前記軸端部とバネ受け部材の間に介装される圧縮スプリングと、前記圧縮スプリングを圧縮させた所定位置に前記バネ受け部材を固定する固定位置設定手段を設けて成る点にある。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、前記固定位置設定手段は、支持フレームの後端部に固設された固定ブラケットと前記バネ受け部材の間に架設されたボルト手段により構成され、該ボルト手段を回転することによりバネ受け部材をX軸方向に移動させるネジ手段を設けている。
【0017】
本発明の更に好ましい実施形態において、前記圧縮スプリングは、X軸方向に完全圧縮したとき軸方向の長さM1を有するコイルスプリングにより構成され、前記エンドレスベルトは、新設状態において、前記従動ローラ手段の直径Dを有する軸端部をX軸方向の所定位置P1に位置させたとき所定張力が与えられ、該所定位置P1の軸端部と前記固定ブラケットの間隔を所定間隔Sとするように構成されており、前記固定位置設定手段は、固定ブラケットの側部からボルト手段を回転することにより、バネ受け部材を準備位置Q1(Q1>S+D+M1)から設定位置Q2(Q2=S+D+M1)に移動させ、該設定位置Q2に固定するように構成されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、張力付加機構19が設けられているので、エンドレスベルト10の張力低下に追従して自動的に従動ローラ手段9の取付け位置を調整することにより、常時、エンドレスベルト10に適切な張力を与えることができ、メンテナンスフリーの状態で、常にエンドレスベルト10の良好な周回移動を可能にするトレッドミルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の1実施形態に係るトレッドミルを背面側から示す斜視図である。
【図2】前記トレッドミルの折畳み方法を背面側から説明する斜視図である。
【図3】前記トレッドミルにおける駆動機構と潤滑剤添加機構の構成例を示す斜視図である。
【図4】前記トレッドミルにおける従動ローラ手段に設けられた張力付加機構の構成例を示す斜視図である。
【図5】前記張力付加機構の1実施例を示す分解斜視図である。
【図6】前記張力付加機構の作用に関して、新設されたエンドレスベルトに対する初期の設定状態を示す断面図である。
【図7】前記張力付加機構の作用に関して、エンドレスベルトの伸長に追従して張力が付加された状態を示す断面図である。
【図8】張力付加機構の変形実施例を示す断面図である。
【図9】潤滑剤添加機構の作用を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0021】
図1は、本発明の1実施形態に係るトレッドミルの外観を示している。ユーザの運動姿勢を基準として、相互に直交する前後方向のX軸と横方向のY軸に関し、前部に位置してY軸方向に所定間隔をあけて平行に立設された支柱1、1の下端部の間に、ハウジング2を備えた駆動部3が配置され、前記ハウジング2の両側からX軸の後方に向けて延設された左右一対の支持フレーム4、4を備えた走行部5が構成されている。尚、図例の場合、支持フレーム4は、ほぼ全長を化粧カバー6により被われ、尾端部に化粧キャップ7を被冠している。
【0022】
前記支持フレーム4、4のX軸方向に間隔をあけて、Y軸方向に延びる駆動ローラ手段8と従動ローラ手段9が配置されており、両ローラ手段8、9にはエンドレスベルト10が巻掛けられている。前記駆動ローラ手段8は、前記ハウジング2の内部で支持フレーム4、4の前端近傍部に架設され、従動ローラ手段9は、支持フレーム4、4の尾端近傍部に架設されている。前記ハウジング2は、電動モータ11を含む駆動機構12を内装しており、伝動機構13を介して駆動ローラ手段8を駆動回転する。
【0023】
駆動ローラ手段8は、図3に示すように、両端の軸端部14a、14aを支持フレーム4、4に搭載される軸部材14と、該軸部材14に回転自在に外挿されたローラ部材15により構成され、軸部材14の軸端部14aは、支持手段16により支持フレーム4に固定支持される。
【0024】
前記支持手段16、16は、支持フレーム4、4に溶接等で固設され、前記軸端部14a、14aを所定位置に固着する。尚、支持手段16には、軸端部14aの取付け位置をX軸方向に調整可能とする調整手段が設けられており、調整後の所定位置に軸端部14aが固定される。従って、支持フレーム4、4に架設固定された軸部材14の外周にローラ部材15が回転自在に軸支されている。
【0025】
従動ローラ手段9は、図4に示すように、両端の軸端部17a、17aを支持フレーム4、4に搭載される軸部材17と、該軸部材17に回転自在に外挿されたローラ部材18により構成され、軸部材17の軸端部17aを支持フレーム4に対して張力付加機構19を介して支持される。従って、支持フレーム4、4に架設された軸部材17の外周にローラ部材18が回転自在に軸支されている。
【0026】
図示実施形態の場合、図3に示すように、駆動ローラ手段8のローラ部材15の一端に設けたプーリと電動モータ11の出力軸の間にベルトを掛け渡すことにより前記伝動機構13が構成され、該ローラ部材15を図示矢印Rのように駆動回転し、エンドレスベルト10を駆動ローラ手段8と従動ローラ手段9の間で周回移動させる。エンドレスベルト10は、両ローラ手段8、9に対する巻掛け部の間で、上側の往動部10aと下側の復動部10bを構成し、往動部10bを駆動ローラ手段8から従動ローラ手段9に向けて後方移動し、復動部10bを従動ローラ手段9から駆動ローラ手段8に向けて前方移動するように周回移動させられ、往動部10aに搭乗したユーザが歩行又は走行運動を行うように構成されている
【0027】
前記往動部10aに搭乗するユーザの荷重を支持するため、該往動部10aの下側に支持床材20が設けられている。支持床材20は、両側縁部を支持フレーム4、4及び/又は化粧カバー6、6に固着され、往動部10aの下面に近接した状態で配置される。従って、ユーザが歩行又は走行運動を行うとき、往動部10aは、荷重により下向きに撓まされた部分を支持床材20の表面に摺擦しながら移動する。
【0028】
図1に示すように、支柱1、1の上端部には、走行部5に向けて延びる手摺フレーム21、21と、両手摺フレーム21、21に架設された制御盤手段22を有する上部ユニット23が設けられている。手摺フレーム21は、ユーザが運動中に握持できるグリップを構成し、該グリップに脈拍検知センサーを設けている。前記制御盤手段22は、手摺フレーム21、21に架設状態でほぼ水平姿勢に固定される操作パネル22aと、該操作パネル22aの前縁から起伏回動自在に起立される表示パネル22bを備え、操作パネル22aにより駆動機構12の駆動開始及び停止や、駆動パターンのプログラムの選択等を可能とし、表示パネル22bにより各種情報の表示を可能とする。
【0029】
図示のトレッドミルは、図2に示すように折畳み自在に構成されている。制御盤手段22は、表示パネル22bを矢印F1のように回動することにより操作パネル22aの上に重ね合わせられ、この状態で上部ユニット23は、矢印F2のように支柱1、1の上端部の枢軸を介して前方に倒立させることにより支柱1、1の前面に重ね合わせられる。更に、一体的に構成された駆動部3と走行部5は、矢印F3のように支柱1、1の下端部の枢軸を介して起立することにより支柱1、1の間に重ね合わせられる。尚、トレッドミルは、床上に設置した使用状態において、支柱1、1の下端に形成された座24と、該支柱1、1からX軸方向の後方に延設された設置脚25と、走行部5の尾端近傍に設けられた調整座26を接地する。そして、上述のように折畳んだときは、座24及び設置脚25を接地させた状態で、駆動部3及び走行部5が起立回動させられる。この際、設置脚25の尾端部と支持フレーム4、4又は化粧カバー6を連結するリンクバー27が設けられており、該リンクバー27を起立させることにより、起立姿勢とされた駆動部3及び走行部5の転倒を防止する。
【0030】
(張力付加機構)
上述の従動ローラ手段9における軸部材17の軸端部17a、17aを固定支持する張力付加機構19は、図4及び図5に示すように、前記軸端部17aのX軸方向の前方に配置されるバネ受け部材28と、前記軸端部17aとバネ受け部材28の間に介装されるコイルスプリングから成る圧縮スプリング29と、前記圧縮スプリング29を圧縮させた所定位置に前記バネ受け部材28を固定する固定位置設定手段30により構成されている。
【0031】
図示実施形態の場合、支持フレーム4の尾端部から該支持フレーム4の内側に沿ってX軸方向に延びる支持レール31が溶接等により固設され、該支持レール31の上で張力付加機構19を組付けることができるように構成されており、支持レール31の尾端部に固定ブラケット32を設けている。固定ブラケット32は、支持フレーム4と支持レール31に対して溶接等により固設され、軸支孔33を貫設している。
【0032】
前記固定位置設定手段30は、頭付きのボルト手段34により構成されており、従動ローラ手段9における軸部材17の軸端部17aの直径方向に、該ボルト手段34を摺動自在に挿通させる挿通孔35を形成している。
【0033】
図5ないし図7に示す実施例の場合、前記ボルト手段34は、頭部34aを固定ブラケット31の背部に位置させた状態で、ネジ軸部34bを順次、軸支孔33、挿通孔35、コイルスプリング29に挿通させた後、ネジ軸部34bの挿出端に、バネ受け部材28を進退自在に螺合するように構成している。このため、バネ受け部材28は、雌ネジから成るネジ手段36を形成している。この際、バネ受け部材28は、前記支持レール31の上面と支持フレーム4の側面に係合する矩形の板材により形成することが好ましく、これにより、頭部34aに回転工具を係合することによりボルト手段34を回転したとき、バネ受け部材28は、回動不能に拘束された状態で支持レール31に沿ってX軸方向に進退移動する。
【0034】
トレッドミルを生産現場で組立てるとき、駆動ローラ手段8と従動ローラ手段9の間にエンドレスベルト10を巻掛けた状態で、上述のように駆動ローラ手段8を支持手段16、16により所定位置に取付け固定した後、張力付加機構19により従動ローラ手段9が支持フレーム4、4に架設される。図6に示すように、ボルト手段34のネジ軸部34bを固定ブラケット32の軸支孔33に挿通し、従動ローラ手段9における軸端部17aの挿通孔35に挿通した後、コイルスプリング29に挿通させ、ネジ軸部34bの先端部にバネ受け部材28のネジ手段36を螺合する。このようなボルト手段34を挿通し螺合する作業は、従動ローラ手段9の軸端部17aを支持レール31の上に仮置きした状態で行うことができるので、従動ローラ手段9が比較的重量物を構成する場合でも作業を容易とする。
【0035】
そこで、ボルト手段34の頭部34aに回転工具を係合して回転すると、バネ受け部材28が軸端部17aに向けて引き寄せられ、該バネ受け部材28と軸端部17aの間でコイルスプリング29を圧縮し、弾発復元力を蓄積する。
【0036】
生産現場で新設されるエンドレスベルト10は、駆動ローラ手段8と従動ローラ手段9に巻掛けられ状態のX軸方向の長さに関して、図6に示すように、従動ローラ手段9の軸端部17aをX軸方向の所定位置P1に位置させたとき、弛みを生じることなく所定張力が与えられる長さL1となるように構成されており、この状態としたとき、前記軸端部17aと固定ブラケット31の間に所定間隔Sが形成される。
【0037】
そこで、前記コイルスプリング29がX軸方向に完全に圧縮されたときの軸方向の長さをM1、前記軸端部17aの直径をDとしたとき、図6に鎖線で示すように、バネ受け部材28は、最初、準備位置Q1(Q1>S+D+M1)でボルト手段34のネジ軸部34bに螺合される。従って、このとき、コイルスプリング29は完全圧縮されていない。
【0038】
この状態から、ボルト手段34の頭部34aに回転工具を係合して回転すると、バネ受け部材28が軸端部17aに向けて引き寄せられ、設定位置Q2(Q2=S+R+M1)に移動したとき、コイルスプリング29を前記長さM1となるまで完全に圧縮する。従動ローラ手段9は、ローラ部材18を弛みのない所定長さL1とされたエンドレスベルト10により保持されるので、バネ受け部材28の引き寄せ移動の動作中、前記軸端部17aは前記所定位置P1に停止状態で保持されており、この状態でコイルスプリング29が圧縮される。
【0039】
バネ受け部材28が前記設定位置Q2に移動したとき、コイルスプリング29を更に圧縮することはできないので、回転工具の回転のために必要な操作力が急激に重くなる。そこで、作業者が操作力の感知によりボルト手段34の回転を中止すれば、バネ受け部材28は、所期の設定位置Q2に固定状態となるように設定される。
【0040】
換言すれば、コイルスプリング29が完全圧縮された後もボルト手段34を回転し続けると、バネ受け部材28の移動により従動ローラ手段9の軸部材17が更に押動され、エンドレスベルト10に過度の張力を発生させてしまう問題があるのに対して、上述のようにバネ受け部材28を前記設定位置Q2で停止させ固定することにより、従動ローラ手段9の軸部材17にはコイルスプリング29の弾発付勢力だけが作用し、エンドレスベルト10の張力を適切なものとする。
【0041】
そして、この設定状態において、コイルスプリング29が完全圧縮されているので、軸端部17aは、X軸方向の前方に向けて移動不能な状態とされている。従って、トレッドミルの搬送中等に、外力により、エンドレスベルト10を弛める方向に従動ローラ手段9が移動し、該エンドレスベルト10を幅方向に位置ずれ移動させるようなことはない。
【0042】
トレッドミルは、張力付加機構19を上記のように設定した状態で出荷された後、ユーザが使用することにより歩行又は走行運動を繰り返して行われる。この際、エンドレスベルト10が次第に伸長し又は疲労劣化その他により収縮力を減じ、弛みの原因を生成したときでも、軸端部17aがコイルスプリング29により弾発付勢され、常に、エンドレスベルト10に張力を与えるように従動ローラ手段9を付勢しているので、エンドレスベルト10の張力が低下する前に、図7に示すように、コイルスプリング29が図示の長さM2(M2>M1)で示すように伸長し、軸端部17aを前記所定位置P1から調整位置P2に向けて押動する。これにより、エンドレスベルト10は、駆動ローラ手段8と従動ローラ手段9に巻掛けされた長さを弛みのない調整長さL2となるように弾発付勢され、適切な張力を保持し続ける。
【0043】
(変形実施利)
図8は、張力付加機構19におけるネジ手段36の変形実施例を示しており、固定ブラケット31とバネ受け部材28の間に架設されたボルト手段34は、頭部34aをバネ受け部材28の前面に配置した状態で、ネジ軸部34bを該バネ受け部材28の貫通孔に挿通され、固定ブラケット31の軸支孔33から挿出されたネジ軸部34bの先端部にネジ手段36を構成するナット37を螺着している。その他の構成は、図5ないし図7に基づいて上述した実施例と同様である。
【0044】
この変形実施例によれば、回転工具によりナット37を回転することにより、ボルト手段34と共にバネ受け部材28を引き寄せ、コイルスプリング29を圧縮することが可能であり、図5ないし図7に基づいて上述した実施例と同様に作用する。従って、この変形実施例の場合、バネ受け部材28をボルト手段34の頭部34aと一体に形成することも可能である。
【0045】
(潤滑剤添加機構)
更に、本発明の実施形態に係るトレッドミルは、図3及び図9に示すような潤滑剤添加機構40を設けている。トレッドミルは、生産現場における組立ての際に、エンドレスベルト10の内側及び/又は支持床材20の上面に、オイル等の潤滑剤を添加し、これにより、ユーザが搭乗するエンドレスベルト10の往動部10aと支持床材20の間における摺擦移動部分の摩擦抵抗を減じさせているが、生産現場で添加された潤滑剤は、経年変化により劣化し、長期間の運転により消失することにより、所謂潤滑切れを生じる。そこで、潤滑剤添加機構39は、このような潤滑切れが生じたとき、直ちにそれを検知し、自動的に潤滑剤の添加を可能とするように構成されている。
【0046】
潤滑剤添加機構40は、シリコンオイル等の潤滑剤を貯蔵するタンク41と、電動モータ11の負荷を検知する検知手段42と、該検知手段42の検知信号を受けて作動する制御手段43と、制御手段43により駆動制御されることにより前記タンク41の潤滑剤を供給する供給手段44と、前記供給手段44から供給路45を介して供給される潤滑剤を吐出する吐出手段46により構成されている。図示実施形態の場合、前記タンク41、検知手段42、制御手段43、供給手段44は、ハウジング2に内装され、前記吐出手段46は、潤滑剤の添加を必要とする所定個所、図例の場合、エンドレスベルト10の復動部10bの上方位置で該復動部10bの幅方向に延設されている。
【0047】
電動モータ11は、該モータが発生する発生トルクと所定の負荷トルクが均衡した状態の負荷電流で定速運転し、エンドレスベルト10を定速で周回移動させる。この際、ユーザが搭乗する往動部10aは、荷重により下向きに撓んだ部分を支持床材20の表面に摺擦しながら移動するが、潤滑剤が適切に働いており、過度の摩擦抵抗を生じない限り、モータ電流は定速運転時の負荷電流を大きく上回ることはない。
【0048】
しかしながら、潤滑切れにより、前記摺擦部分に大きな摩擦抵抗が生じると、電動モータ11に過負荷がかかり、モータ電流は、負荷電流を大きく上回る過負荷電流を発生する。
【0049】
そこで、前記検知手段42は、電動モータ11のモータ電流を検知するセンサーにより構成されており、モータ電流の上昇を検知したとき、検知信号を出力し、前記制御手段43に入力する。
【0050】
上昇したモータ電流が上述のような過負荷電流であるかどうかの検出は、前記検知手段42を構成するセンサーの感度設定により行っても良く、あるいは、検知手段42から入力された検知信号を制御手段43が閾値と対比して判定することにより検出するように構成しても良い。
【0051】
そこで、過負荷電流が検出されたとき、制御手段43は、供給手段44に対して供給指令信号を出力する。供給手段44は、例えば、タンク41の潤滑剤を吸引すると共に吐出するポンプと、該ポンプの吐出口と供給路45の間に設けられたソレノイドバルブ等の開閉弁を備えており、常時は開閉弁を閉じているが、制御手段43の供給指令信号を受けたとき、開閉弁を開けることにより、潤滑剤を供給路45に供給する。この際、制御手段43の供給指令信号は、供給手段44による潤滑剤の供給量及び/又は供給時間の指令を含むことが好ましい。
【0052】
供給手段44から供給された潤滑剤は、供給路45を通じて吐出手段46に給送され、吐出手段46の下側に設けられたノズル又はオリフィス等の開口から、エンドレスベルト10の復動部10bの内側面(図示上面)に向けて滴下される。この際、復動部10bの幅方向に所定間隔をあけた複数個所に潤滑剤を滴下することが好ましい。
【0053】
潤滑剤を滴下されたエンドレスベルト10は、駆動ローラ手段8と従動ローラ手段9の間で周回移動するので、それぞれのローラ手段8、9の接触を受けることにより、該エンドレスベルト10の内側の全面に行き渡るように引き伸ばされる。
【0054】
その結果、潤滑切れが解消すると、電動モータ11の過負荷も解消するので、これにより正常運転に戻る。
【0055】
上述のように、検知手段42により電動モータ11の負荷が常に監視されているので、例えば、1回目の潤滑剤の供給により過負荷が解消されず、その後も過負荷電流が検出され続けるときは、制御手段43により再び供給指令信号が出力され、電動モータ11の過負荷が解消されるまで、同様の動作を繰り返すように構成されている。尚、数回の動作を繰り返しても、過負荷が解消されないときは、制御手段43から警告信号を出力し、表示パネル22bに警告メッセージを表示したり、電動モータ11を停止させたりするように構成することができる。
【0056】
上記の潤滑剤添加機構40によれば、エンドレスベルト10と支持床材20の間の潤滑切れによる作動不良が発生したときは、直ちに検知され、作動状態が改善されるまで、自動的に潤滑剤を添加するので、過負荷による電動モータ11の破損や、エンドレスベルト10の損耗等を招来することがなく、この点に関するメンテナンスフリーを実現できる効果がある。
【符号の説明】
【0057】
1 支柱
2 ハウジング
3 駆動部
4 支持フレーム
5 走行部
8 駆動ローラ手段
9 従動ローラ手段
10 エンドレスベルト
10a 往動部
10b 復動部
11 電動モータ
12 駆動機構
14 軸部材
14a 軸端部
15 ローラ部材
16 支持手段
17 軸部材
17a 軸端部
18 ローラ部材
19 張力付加機構

20 支持床材
28 バネ受け部材
29 圧縮スプリング
30 固定位置設定手段
31 支持レール
32 固定ブラケット
33 軸支孔
34 ボルト手段
34a 頭部
34b ネジ軸部
35 挿通孔
36 ネジ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に直交する前後方向のX軸と横方向のY軸に関して、床上に設置される左右一対の支持フレーム(4)(4)のX軸方向に間隔をあけて配置されると共にY軸方向に延びる駆動ローラ手段(8)及び従動ローラ手段(9)と、前記駆動ローラ手段と従動ローラ手段に巻掛けられたエンドレスベルト(10)と、前記駆動ローラ手段を駆動回転する駆動機構(12)を備えたトレッドミルにおいて、
前記従動ローラ手段(9)は、両端の軸端部(14a)を前記支持フレーム(4)に対して張力付加機構(19)を介して搭載される軸部材(17)と、該軸部材に回転自在に外挿されたローラ部材(18)により構成され、
前記張力付加機構(19)は、前記軸端部(17a)のX軸方向の前方に配置されるバネ受け部材(28)と、前記軸端部とバネ受け部材の間に介装される圧縮スプリング(29)と、前記圧縮スプリングを圧縮させた所定位置に前記バネ受け部材(28)を固定する固定位置設定手段(30)を設けて成ることを特徴とするトレッドミル。
【請求項2】
前記固定位置設定手段(30)は、支持フレーム(4)の後端部に固設された固定ブラケット(32)と前記バネ受け部材(28)の間に架設されたボルト手段(34)により構成され、該ボルト手段を回転することによりバネ受け部材(28)をX軸方向に移動させるネジ手段(36)を設けて成ることを特徴とする請求項1に記載のトレッドミル。
【請求項3】
前記圧縮スプリング(29)は、X軸方向に完全圧縮したとき軸方向の長さM1を有するコイルスプリングにより構成され、
前記エンドレスベルト(10)は、新設状態において、前記従動ローラ手段(9)の直径Dを有する軸端部(17a)をX軸方向の所定位置P1に位置させたとき所定張力が与えられ、該所定位置P1の軸端部(17a)と前記固定ブラケット(33)の間隔を所定間隔Sとするように構成されており、
前記固定位置設定手段(30)は、固定ブラケット(32)の側部からボルト手段(34)を回転することにより、バネ受け部材(28)を準備位置Q1(Q1>S+D+M1)から設定位置Q2(Q2=S+D+M1)に移動させ、該設定位置Q2に固定するように構成されて成ることを特徴とする請求項2に記載のトレッドミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−52076(P2013−52076A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191474(P2011−191474)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000101662)アルインコ株式会社 (218)