説明

トレランスストリップ

トレランスストリップ(50)は、弾性材料のストリップから形成され、波形要素(54)を有し、波形要素は、ストリップの全幅にわたって横方向に延在し、波形要素が隣接した波形要素の間の谷(58)と共に頂き(56)を画定し、波形要素の中央部分が、ストリップにわたって実質的に均一な高さからなり、ストリップの長手方向の各エッジに隣接した波形要素の部分(60)が、ストリップのエッジに向かって高さが減少している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレランスストリップ(tolerance strip)に関し、特に間隔の変動が熱膨張差を吸収することを可能にしながら、構成要素間の間隔を維持するために構成要素間に取り付けられ得るトレランスストリップに関する。係るトレランスストリップは一般に、同心構成要素の取り付けに使用され、例えば、構成要素の直径における公差のばらつき、並びに熱膨張に起因するこれら構成要素の寸法のばらつきを吸収しながら、1つの構成要素を別の構成要素に対して中心を合わせるための機械的シールで使用される。
【0002】
従来、トレランスストリップは、弾性の金属ストリップから形成され、この場合、一連の横方向に方向付けられた突出部分がストリップの片側にプレス加工され、当該突出部分が傾斜した横方向の端壁を有し、当該端壁がストリップのエッジから内側に間隔をおいて配置され、ストリップのエッジが突出部分間のストリップの部分と同一平面上にあり、連続したベアリング表面が形成される。突出部分の頂きは、丸みをつけられるか、又は尖っている。突出部分は、材料が塑性変形を受けるように、ローラ間でストリップをプレス加工することにより形成される。その結果、材料は、加工硬化および剛性になる。結果として、トレランスストリップは弾性を有さない。従って、トレランスストリップが取り付けられる構成要素の熱膨張差に起因してトレランスストリップが圧縮される場合、構成要素間の間隙(ギャップ)が温度の低下に従って増加する際、トレランスストリップは、圧縮された状態を維持し、元の状態に戻らず、構成要素間の間隙を埋めない。
【0003】
更に、トレランスストリップの高い剛性およびコンプライアンスの欠如に起因して、構成要素は、構成要素が互いの方へ膨張するにつれて高度に荷重を掛けられ、特に構成要素が脆性材料、例えばセラミック材料から作成される場合、構成要素への潜在的な損傷を伴う。この問題は、突出部分の頂きの形状により悪化し、当該突出部分の頂きは、トレランスストリップのその側で構成要素と線接触する。
【0004】
これまで使用されていたトレランスストリップは、結果として高い温度の用途(特に構成要素の一方または双方が脆性材料から作成されている場合)に適していない。
【0005】
既知のトレランスストリップの更なる欠点は、ストリップがプレス加工される際に、材料が降伏して、突出部分の周りの領域が収縮し、それによりストリップの幅が狭くなることである。従って、ローラにより印加される圧力は、完成したストリップの製造公差が許容できることを保証するために、正確に制御されなければならない。プレス加工のプロセスの正確な制御を用いたとしも、廃棄率は高い。
【0006】
本発明の一態様によれば、トレランスストリップは、波形要素が形成された弾性材料のストリップからなり、波形要素が、ストリップの全幅にわたって横方向に延在し、波形要素が隣接した波形要素の間の谷と共に頂きを画定し、波形要素の中央部分が、ストリップにわたって実質的に均一な高さからなり、ストリップの長手方向の各エッジに隣接した波形要素の部分が、ストリップのエッジに向かって高さが減少している。
【0007】
本発明の波形要素は、従来技術の突出部分に類似した方法で形成され得るが、波形要素はあまり降伏せず、従って、加工硬化がはるかに少なく、波形のストリップは材料のさらに多くの弾性を保持する。更に、波形要素は、波形要素の谷と頂きに沿って作用する構成要素に係合するだけである。また、従来技術とは異なり、ストリップのテーパ付き部分を用いて、ストリップのコンプライアンスの量も制御する。従って、本発明のトレランスストリップは、結果として従来技術のトレランスストリップよりもはるかに多くの弾性を有し、それらが使用される構成要素に加えられる荷重は、より少ない。更に、波形要素があまり降伏しないので、波形要素の周りの材料の収縮がより少なく、製造公差に対するストリップの寸法の制御がより容易であり、廃棄の可能性もより小さい。
【0008】
トレランスストリップは概して、プレス加工のプロセスにより製造されるので、材料は降伏する。しかしながら、本発明のトレランスストリップは、従来技術のトレランスストリップに比べて、それほど降伏しない。その理由は、テーパ付き部分が谷と同じ軸に下方に完全に延びないからである。上述したように、テーパ付き部分を用いて、ストリップのコンプライアンスの量を制御する。
【0009】
波形要素の端部における高さの減少は、導入部分を提供し、隣接した構成要素の間のトレランスストリップの組み立てを容易にする。
【0010】
更に、波形要素の端部における高さの減少、即ちテーパ付き部分は、圧縮の間にトレランスストリップの長手方向の膨張を制御するように、トレランスストリップに長手方向の剛性を提供する。
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、波形要素の頂きと谷は、長手方向に延びる実質的に平坦な表面を有し、その結果、トレランスストリップが配置される構成要素との接触圧力は、波形要素が圧縮される際に細長い領域にわたって分散される。
【0012】
本発明のトレランスストリップの強化された弾性は、トレランスストリップが高いレベルの膨張差を受ける用途に適するようにする。更に、トレランスストリップの圧縮に印加されるより低い荷重、及びこれら荷重の分散に鑑みて、本発明のトレランスストリップは、トレランスストリップが脆性材料から形成された構成要素との使用に適するようにする。
【0013】
ここで、本発明は、添付図面に関連して、単なる例示のために説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による、トレランスストリップを組み込む機械的端面シールの側断面図である。
【図2】本発明による、或る長さのトレランスストリップの斜視図である。
【図3】図2に示されたトレランスストリップの側面図である。
【図4】図3の線IV−IVに沿った断面図である。
【0015】
図1は、2つのシール接触部分、内側シール接触部分10及び外側シール接触部分12を有する一般的なガスシールを示す。各シール接触部分10、12は、接合リング14及び主リング16を含む。主リング16は、既知の方法でハウジングアセンブリ18に対して摺動可能に取り付けられシールされる。主リング16は、ハウジングアセンブリ18に対して回転固定され、接合リング14の方へ弾性的に付勢される。
【0016】
接合リング14は、スリーブアセンブリ22を用いて、シャフト20に一定の軸方向と回転関係で配置される。スリーブアセンブリ22は、シャフト20の上に滑りばめされ、且つ肩部26に当接してシャフト20の軸方向に配置された内側スリーブ24を有する。内側スリーブ部材24は、その内側端部において外方に延在するフランジ構造28を有し、フランジ構造28の外側面は、環状のリセス(凹部)30を画定する。内側シール接触部分10の接合リング14は、内側スリーブ部材24に滑りばめされ、環状のリセス30内にある。二次的なシール要素32は、接合リング14とフランジ構造28との間に流体密封シールを提供する。
【0017】
第1の外側スリーブ部材34は、内側スリーブ部材24に摺動するように配置され、外側スリーブ部材34の内側端部は、内側シール接触部分10の接合リング14の外面に当接し、接合リング14をフランジ構造28に対して圧着し、シャフト20の軸方向に接合リング14を配置する。
【0018】
外側スリーブ部材34の外側端部は、外方に延在するフランジ構造36を有し、フランジ構造36の外側面は、環状のリセス(凹部)38を画定する。外側シール接触部分12の接合リング14は、内側スリーブ24に滑りばめされ、リセス38内にあり、二次的なシール40によりフランジ構造36に対してシールされる。第2の外側スリーブ部材42は、内側スリーブ24の上に滑りばめされ、スリーブ部材42の内側端部が外側接合リング14に当接してそれをフランジ構造36に対して圧着する。締め付け手段(図示せず)が第2の外側スリーブ部材42の外側端部に当接し、スリーブアセンブリ22をシャフト20の軸方向に肩部26に対して圧着する。二次的なシール要素44、46が、内側スリーブ部材24とシャフト20との間、及び内側スリーブ部材24と第1の外側スリーブ部材34との間に設けられる。
【0019】
シャフト20の外径、内側スリーブ部材24の内径と外径、及び外側スリーブ部材34と42の内径、及び接合リング14における任意の公差のばらつきを吸収するために、構成要素の任意の膨張差を吸収するために、及び構成要素のセンタリングを保証するために、トレランスストリップ50が、シャフト20と内側スリーブ24との間、内側スリーブ24と接合リング14との間、内側スリーブ24と外側スリーブ34、42との間に配置される。トレランスストリップ50は、トレランスストリップ50が配置される構成要素の各対の一方に形成された周方向の溝52に配置される。
【0020】
図2〜図4により詳細に図示されるように、トレランスストリップ50は、金属材料または合金材料、例えばステンレス鋼からなる或る長さの弾性ストリップからなる。ストリップ50は、ストリップ50の全幅にわたって延在する横方向の波形要素54が形成され、波形要素54は、隣接した波形要素の間に横方向(長手方向に直角)に延在する谷(トラフ)58と共に横方向に延在する頂き56を画定する。波形要素54は、中央部分、即ちストリップ50の幅にわたって実質的に均一である場合の高さを有する。波形要素の端部部分は、ストリップ50の長手方向のエッジに向かって高さが減少し、テーパ付き部分60を形成する。各波形要素54の端部におけるテーパ付き部分60の高さは、頂き56と谷58の中央部分の高さの中間である。頂き56と谷58は、ストリップ50の長手方向に実質的に平坦である。
【0021】
谷58の外面から頂き56の外面までの、ストリップ50の全厚は、特定の用途に関して、一対の対向する表面の一方における周方向の溝52に配置された場合に、最大公差と最大膨張差の状態にある表面間で部分的に圧縮されるように設計される。
【0022】
溝52の幅は、ストリップ50の幅と精密嵌合し、ストリップ50の長さは、構成要素の表面の円周よりも十分に短く、波形要素が対向する表面間で押圧される場合に、ストリップ50の長手方向(縦方向)の膨張を可能にする。
【0023】
更に、テーパ付き部分60は、圧縮の間にトレランスストリップ50の長手方向の膨張が制御され、トレランスストリップ50の端部が周方向の溝52において互いに重なることを防止するように、トレランスストリップ50に長手方向の剛性を与える。
【0024】
ストリップ50は、一方の構成要素の周方向の溝52に配置され、次いで隣接した構成要素が互いに組み立てられ、構成要素が組み立てられる際に波形要素54が構成要素の対向する表面間で弾性的に圧縮されるように、波形要素のテーパ付き部分60が導入部分を提供する。また、ストリップ50に係合する構成要素の先端は好適には、組み立てを容易にするためにアールを付けられる。
【0025】
波形要素54の弾性圧縮は、構成要素の対向する表面における任意の公差のばらつきを吸収し、構成要素の熱膨張差でも圧縮され及び膨張し、構成要素がアセンブリの動作条件にわたって中心を合わせた状態を維持することを保証する。
【0026】
構成要素の対向する表面に当たる頂き56と谷58の平坦な表面は、比較的大きな領域にわたって荷重を分散する。従って、トレランスストリップ50は、脆性材料(例えば、セラミック)から作成された構成要素(例えば、接合リング14)と共に使用され得る。
【0027】
トレランスストリップ50は、プレス加工のプロセスにより、例えば一対のローラ間で形成され得る。ストリップ50の材料は、従来に形成されたトレランスストリップに比べて、それほど降伏しないので、加工硬化は最小限に抑えられて、材料の弾性が維持される。結果として、回旋部を圧縮するのに必要な荷重も低減される。
【0028】
ストリップ50は、テーパ付き部分60が谷58と同じ軸に下方に完全に延びないので、あまり降伏しない。
【0029】
上記の実施形態において、頂き56と谷58が、圧縮荷重を分散するために長手方向に延びる平らな平面を有するが、脆弱な構成要素に当たる表面のみが平らにされる必要がある。代案として、トレランスストリップが強い材料から作成された構成要素と共に使用されるべきである場合、頂きと谷は、連続的な曲線として形成されてもよい。
【0030】
上述のような本発明のトレランスストリップはプレス加工により形成されるが、代案としてストリップは鋳造により形成されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレランスストリップであって、
波形要素が形成された弾性材料のストリップからなり、前記波形要素が、前記ストリップの全幅にわたって横方向に延在し、前記波形要素が隣接した波形要素の間の谷と共に頂きを画定し、前記波形要素の中央部分が、前記ストリップにわたって実質的に均一な高さからなり、前記ストリップの長手方向の各エッジに隣接した波形要素の部分が、前記ストリップのエッジに向かって高さが減少している、トレランスストリップ。
【請求項2】
前記ストリップのエッジにおける前記波形要素の高さが、前記ストリップの頂きと谷の中央の高さの中間である、請求項1に記載のトレランスストリップ。
【請求項3】
前記波形要素の谷および/または頂きが前記ストリップの長手方向に平坦である、請求項1又は2に記載のトレランスストリップ。
【請求項4】
前記ストリップが、金属材料または合金材料から形成される、請求項1〜3の何れかに記載のトレランスストリップ。
【請求項5】
前記ストリップがプレス加工により形成される、請求項1〜4の何れかに記載のトレランスストリップ。
【請求項6】
前記ストリップが、成形したローラの間でプレス加工される、請求項5に記載のトレランスストリップ。
【請求項7】
前記ストリップが、鋳造により形成される、請求項1〜4の何れかに記載のトレランスストリップ。
【請求項8】
実質的に図2〜図4に関連して本明細書で説明され且つ図2〜図4に示されたようなトレランスストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−518768(P2012−518768A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551516(P2011−551516)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000315
【国際公開番号】WO2010/097574
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(501077664)ジョン・クレーン・ユーケイ・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】