説明

トレー容器

【課題】本発明は、食品、特に薄物食品が輸送時に移動して片寄るおそれが少なく、且つ見栄え良く食品を収納できるトレー容器を提供することを課題としている。
【解決手段】対向する二対の側壁および底面を備えた食品を収納するためのトレー容器であって、前記底面の中央部から前記二対の側壁のうちの一対の側壁に向かって下がるように形成された対をなす第一傾斜部と前記一対の側壁の内面上部から底面に向かって下がる前記第一傾斜部に対向する斜面を備え、且つ該斜面が上方に膨出した曲面として形成されている対をなす第二傾斜部が形成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、特にハムや食肉類などの薄物食品を収納するトレー容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薄切りのハムや食肉類などの薄物食品を収納する容器としては、発泡合成樹脂製のトレー容器が使用されている。
このようなトレー容器の底面に、複数の薄物食品を少しずつずらして重ねた状態で収納し、上面の開口部を透明な合成樹脂製のラップフィルムで覆うことで、ラップフィルムごしに、収納された食品を見せながら収納することができる。
【0003】
しかしながら、このようなトレー容器の底面は通常平面状に形成されているため、移送時などに収納された食品が位置ずれして一方に片寄ってしまうことがあり、店頭に陳列した際に見苦しい状態になってしまう。
【0004】
このような薄物食品の片寄り防止するために、底面部の中央を上方に膨出させたトレー容器が知られている(特許文献1〜特許文献3)。
このトレー容器に薄物食品を収納した場合に、底面の中央部分が膨出しているため、薄物食品は中央部側へ移動することは、底面が平らな場合よりは抑制できるものの、側壁部側への片寄りは抑制できないため、結局は食品が片寄ってしまうことがある。
【0005】
さらに側壁側への移動を抑制するために側壁を傾斜面として設けたトレー容器も知られている(特許文献4)。
しかしながら、特許文献4に記載のトレー容器の場合、側壁部の傾斜面が平面であるため、該斜面上に載置された食品がすべり落ちやすく、その結果、中央の膨出部と側壁部の斜面の間に食品が落ちてしまう可能性がある。
また、トレー容器の側壁の斜面上に食品が載置されるため、該側壁の上端縁部から食品が飛び出すおそれがあり、この場合に開口部にかぶせたラップフィルムとトレー容器の周縁部の間に食品が挟まれて、見苦しい状態になるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭61−3210号公報
【特許文献2】実開昭62−143681号公報
【特許文献3】実開昭63−70915号公報
【特許文献4】実開昭62−72911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、食品、特に薄物食品が輸送時に移動して片寄るおそれが少なく、且つ見栄え良く食品を収納できるトレー容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、対向する二対の側壁および底面を備えた食品を収納するためのトレー容器であって、前記底面の中央部から前記二対の側壁のうちの一対の側壁に向かって下がるように形成された対をなす第一傾斜部と前記一対の側壁の内面上部から底面に向かって下がる前記第一傾斜部に対向する斜面を備え、且つ該斜面が上方に膨出した曲面として形成されている対をなす第二傾斜部が形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、前記第二傾斜部の曲面が曲率半径R=20m〜40mであることが好ましい。
【0010】
さらに、前記第二傾斜部の最上端部と前記側壁の内面とが接する位置が、前記側壁の上端縁から、前記トレーの最も深い箇所の深さの10%〜20%に相当する高さ分下がった位置であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明は、前記第一傾斜部および第二傾斜部の表面の算術平均粗さ(Ra)が 8μm〜17μmであることが好ましい。
【0012】
さらに、前記対をなす第一傾斜部の間に凹部が形成されていることが好ましい。
【0013】
前記第一傾斜部の傾面が上方に膨出した曲面であることがさらに好ましい。
【0014】
さらに、前記第一傾斜部および/または前記第二傾斜部と少なくとも一面の側壁との間の底面に凹部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトレー容器は、底面の中央部に形成された第一傾斜部と、該第一傾斜部に対向するように第二傾斜部が形成されているため、該第一傾斜部と第二傾斜部に亘って薄物食品を載置することで、移送時などの食品の片寄りを効果的に抑制でき、且つ見栄えよく食品を収納できる。
また、前記第二傾斜部の斜面が上方に膨出している曲面に形成されているため、該第二傾斜部の斜面に食品を載置した場合に食品と斜面が接触する面積が大きくなり、食品が滑り落ちるおそれが少なく、その結果、食品の片寄りを抑制できる。
【0016】
さらに、前記曲面が曲率半径R=20m〜40mに形成されている場合には、特に前記のような滑り抑制の効果が高い。
ここでいう斜面の曲面とは、前記第二傾斜部の斜面の最表面をいう。
【0017】
さらに、前記第二傾斜部の上端部が、前記側壁の上端縁から、トレーの最も深い箇所の深さの10%〜20%に相当する高さ分下がった位置である場合には、食品が水平方向に移動することを効果的に抑制できると同時に、側壁の上端縁より下方に上端部が位置していることで、収容される食品が上端から飛び出すことなく確実に収納できる。
【0018】
尚、トレーの最も深い箇所の深さとは、トレー容器を水平に載置した場合に側壁上端縁の最も高い位置から、底面の最も深い位置までの垂直方向の高さをいう。
前記のように第二傾斜部の上端が上記範囲に位置する場合には、斜面が低すぎて食品の移動が不充分であるということがなく、効果的に片寄りを抑制できる。
【0019】
さらに、前記第一傾斜部および第二傾斜部の表面の算術平均粗さ(Ra)が、8μm〜17μmである場合には、第一および第二傾斜部表面に食品を載置した際に、滑りにくくなり、さらに食品の移動抑制ができる。
尚、本発明でいう算術平均表面粗さは、JIS B0601に準拠して測定される表面粗さをいう。
【0020】
さらに、前記対をなす第一傾斜部の間、あるいは、第一傾斜部および/または前記第二傾斜部と少なくとも一面の側壁との間の底面に、凹部が形成されている場合には、該凹部が補強リブとして機能するため、トレー容器の周縁部からの押力にも変形するおそれが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は一実施形態のトレー容器を示す斜視図。
【図2】図2は一実施形態のトレー容器を示す平面図。
【図3】図3は一実施形態のトレー容器を示す正面図。
【図4】図4は図2のA-A線端面面図
【図5】図5は図2のA-A線断面図
【図6】一実施形態のトレー容器に薄物食品を収納した状態を示す正面図。
【図7】一実施形態のトレー容器に薄物食品を収納した状態を示す断面図。
【図8】他の実施形態のトレー容器を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい形態について図面を参照しつつ説明する。
図1から図5は、本実施形態のトレー容器1を示す図である。トレー容器1は、発泡合成樹脂製のシートから一体成形によって形成された、平面視略長方形状の底面2と、該底面部の周囲に側壁3a,3b,4a,4bを備え、該底面2と側壁3a,3b,4a,4bによって囲まれた収納部を有している。
【0023】
前記底面2の長手方向の中央部には、該中央部から短辺の側壁3a,3bに向かって下がるような斜面を備えた一対の第一傾斜部11a、11bが形成されている。
該一対の第一傾斜部11a、11bの間には、トレー容器1の短辺と平行な方向に延びている凹部5が形成されている。
前記第一傾斜部11a,11bの斜面は、上方に凸となるように膨出した曲面に形成されている。
【0024】
前記第一傾斜部11a,11bと対向する位置、すなわち前記短辺の側壁3a,3b内面には、該側壁3a,3bの内面から中央部に向かって下がるような斜面を備えた一対の第二傾斜部20a,20bが形成されている。
該第二傾斜部20a,20bの斜面も、上方に凸となるように膨出した曲面に形成されている。
この第二傾斜部20a,20bの曲面は、その曲面の断面を側面から見た場合の最表面が描く円弧が曲率半径R=20m〜40m、好ましくは25m〜35m、さらに好ましくは28m〜30mになるような曲面に形成されていることが好ましい。
【0025】
さらに、前記第一傾斜部11a,11bおよび第二傾斜部20a,20bの斜面の表面の算術平均粗さ(Ra)は、8.0μm〜17μm、好ましくは8.4μm〜16.0μm、さらに好ましくは10μm〜14μmであることが好ましい。
【0026】
この前記第一傾斜部11a,11bおよび第二傾斜部20a,20bの斜面表面の算術平均粗さ(Ra)が上記範囲である場合には、該斜面の上に薄物食品を載置した状態でトレー容器を動かしても薄物食品が位置ずれすることを抑制できる。
【0027】
前記第一傾斜部11a,11bおよび第二傾斜部20a,20bの斜面表面を上記算術平均粗さ(Ra)するためには、トレー容器1の材質を適宜選択することで形成してもよく、あるいは、上記算術平均粗さ(Ra)のフィルムなどを積層した合成樹脂シートから上記トレー容器を成形してもよく、成形後に斜面表面に加工を施すことで、形成してもよい。
【0028】
前記第一傾斜部11a,11bの両側部、すなわち、長辺の側壁4a,4bの内側に沿って第一傾斜部11a,11bより窪んでいる凹部12a,12bが形成されている。
該凹部12a,12bは長辺の側壁4a,4bの内側に沿って前記第一傾斜部11a,11bよりも底面が低くなるように形成されている。
【0029】
前記第一傾斜部11a,11bと第二傾斜部20a,20bの間の底面2a、2bは、本実施形態のトレー容器1の最も深い面になるように形成されており、該底面2a、2bとトレー容器1の側壁の上端部の高さが、トレーの最も深い箇所の深さL1となる。
【0030】
前記第二傾斜部20a,20bの最上端部Xの位置は、図5に示すように、側壁の3a,3bの上端縁部から垂直に所定高さL2分下がった位置である。
この所定高さL2が、トレー容器1の最も深い箇所の深さL1の10%〜20%、好ましくは11%〜16%、さらに好ましくは12%〜14%になるように前記第二傾斜部20a,20bを形成することが好ましい。
本実施形態のトレー容器1は、トレー容器1の最も深い深さL1がおよそ20mm〜25mmで、前記所定高さL2は、およそ2.5mm〜4.0mmに形成されており、L2はL1のおよそ15%に相当する。
【0031】
第二傾斜部20a,20bの最上端部Xが側壁の3a,3bの上端縁部から所定高さL2下がった位置に形成されていることで、第二傾斜部20a,20bの上面に薄物食品が載置された時に、第二傾斜部20a,20bの最上端部Xより上方に存在する側壁3a,3bによって薄物食品の水平方向の移動を抑制することができると同時に、上端部から薄物食品に端が飛び出すことも防止できる。
【0032】
上記のような本実施形態のトレー容器1は、熱可塑性樹脂の発泡シートや、熱可塑性樹脂の非発泡シートなどの合成樹脂製のシートから公知の成形手段によって形成されることが好ましい。
好ましい合成樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂などを使用でき、特にポリスチレン系樹脂が好ましい。
【0033】
発泡性合成樹脂を用いる場合、発泡の発泡倍率は5〜50倍程度が好ましい。この発泡樹脂を使用する場合には、樹脂中に通常使用されている配合剤、例えば気泡調整剤、顔料等を添加しても良い。
さらに合成樹脂製のシートの原反厚みについては特に規定はないが、通常トレー容器を作製するのに適した厚みを有していればよい。
【0034】
次に上記のようなトレー容器1に薄物食品を収納した場合について説明する。
まず、図6に示すように、薄物食品として本実施形態では複数枚の薄切りハム30を少しずつずらした状態重ねてトレー容器1に収容する。
通常このようなトレー容器1にハム30を収納する場合、前記第一傾斜部11a,11bと第二傾斜部20a,20bにまたがるように、すなわちトレー容器1の長手方向に延在するように収容される。
両端部のハム30は前記第二傾斜部20a,20bの傾斜面にその端部が位置するように載置されることが好ましい。
【0035】
前記のように前記第一傾斜部11a,11bと第二傾斜部20a,20bにまたがるようにハム30を収納すると、前記第一傾斜部11a,11bはトレー容器1の中央部が高くなり、側壁3a,3bに向かって下がっているため、ハム30をトレー容器1の中央部が高くなった見栄えの良い状態で収納できる。
【0036】
さらに、トレー容器1の中央部が高くなった状態で収納されたハム30は、第一傾斜部11a,11bの斜面に載置されているため、低い側、すなわち側壁方向へ移動しやすくなるが、前記第二傾斜部20a,20bによって、側壁方向へハムが滑り落ちることを抑制できる。
また、第一傾斜部11a,11b及び第二傾斜部20a,20bの斜面表面が上記算術平均粗さ(Ra)に形成されているため、ハムがすべって移動しにくくなる。
【0037】
前記第二傾斜部20a,20bの斜面が前記のような曲率半径Rを有する曲面であるため、該第二傾斜部20a,20bの傾斜面に載置されたハム30は斜面上に広い面積で接触することができ、水平方向にハム30が移動することが抑制される。
【0038】
さらに、トレー容器1の上面の開口部に透明樹脂からなるラップフィルムを被せて密封状態にしてもよい。
この時、ハム30の腐敗抑制のため、内部の酸素を窒素ガスなどのガスと置換させて密封してもよい。
ラップフィルムを使用して密封する際には、トレー容器1を把持しながらラップフィルムを引っ張って巻きつけるなど、トレー容器1に押力がかかるが、上記のように、本実施形態のトレー容器1には前記第一傾斜部11a,11bや第二傾斜部20a,20b、あるいは凹部5、12a,12bが形成されているため、これらの凹部によって底面に形成される凹凸が補強リブの役割を果たし、変形や破損を抑制できる。
【0039】
また、ラップフィルムでトレー容器1の上面を覆う際に、ハム30の端部が側壁の上端部からはみ出していると、ラップフィルムと側壁部の間にハムを挟んだ状態で包装するおそれがあり、見栄えが悪いと同時に、密閉性が悪くなり衛生上問題が生じるが、本実施形態のトレー容器1は、前記第二傾斜部20a,20bの上端部の線Xは前記側壁3a,3bに上端縁部から所定の高さL2下がった位置にあるため、ハム30の端部が側壁3a,3bから飛び出しにくく、ラップフィルムとの間に食品を挟みこむことを防止できる。
【0040】
このようにハム30が収納されたトレー容器1は、通常工場で包装された後、小売店などに輸送されるが、本実施形態のトレー容器1に収納した場合には、ハム30がトレー容器1内部で動いて位置ずれすることが抑制でき、見栄えよい状態のまま店頭に陳列することができる。
【0041】
特に、前記のようにトレー容器1内にガス充填する場合には、ラップフィルムが膨張した状態になるため、ハムなどの薄物食品をラップフィルムで固定されることがなく、位置ずれしやすくなるため、特に本実施形態のトレー容器1を使用した場合には効果的である。
【0042】
尚、本実施形態では、第一傾斜部を長手方向中央部から両側の短辺の側壁へ向かって下がる斜面を有する方向に形成したが、例えば、図8に示すように、短手方向の中央部から長辺の側壁に向かって下がる斜面を有するように第一傾斜部を形成してもよい。
この場合には、第二傾斜部は第一傾斜部と対向するように、長辺の側壁から中央部へ下がるような斜面を有するように形成される。
【0043】
また、上記実施形態のトレー容器は四方に側壁がある平面視略長方形の計上であるが、対向する位置に第二傾斜部が形成できる側壁が存在すればよく、トレー容器の形状は長方形に限定されるものではない。
【0044】
また、上記実施形態では、一対の第一傾斜部の間や、第一傾斜部と第二傾斜部の間に凹部を設けたが、このような凹部の位置、形状、大きさは任意に設計可能であり、あるいは凹部を設けること自体も必須条件ではない。
【符号の説明】
【0045】
1 トレー容器
2 底面
3a、3b 短辺の側壁
4a、4b 長辺の側壁
5 凹部
11a、11b 第一傾斜部
12a、12b 凹部
13a、13b 幅広部
20a、20b 第二傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する二対の側壁および底面を備えた食品を収納するためのトレー容器であって、
前記底面の中央部から前記二対の側壁のうちの一対の側壁に向かって下がるように形成された対をなす第一傾斜部と前記一対の側壁の内面上部から底面に向かって下がる前記第一傾斜部に対向する斜面を備え、且つ該斜面が上方に膨出した曲面として形成されている対をなす第二傾斜部が形成されていることを特徴とするトレー容器。
【請求項2】
前記第二傾斜部の曲面が曲率半径R=20m〜40mである請求項1に記載のトレー容器。
【請求項3】
前記第二傾斜部の最上端部と前記側壁の内面とが接する位置が、前記側壁の上端縁から、前記トレーの最も深い箇所の深さの10%〜20%に相当する高さ分下がった位置である請求項1または請求項2に記載のトレー容器。
【請求項4】
前記第一傾斜部および第二傾斜部の表面の算術平均粗さ(Ra)が、8μm〜17μmである請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のトレー容器。
【請求項5】
前記対をなす第一傾斜部の間に凹部が形成されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のトレー容器。
【請求項6】
前記第一傾斜部の傾面が上方に膨出した曲面である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のトレー容器。
【請求項7】
前記第一傾斜部および/または前記第二傾斜部と少なくとも一面の側壁との間の底面に凹部が形成されている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のトレー容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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