説明

トレー

【課題】検査作業の効率を向上させると共に、コスト面及び環境面への負担を軽減することができるトレーを提供する。
【解決手段】複数の容器を保持できるトレーであって、検査サンプルを入れる複数の容器の各々を保持するための複数の開口部を有する保持部材と、前記開口部の縁部に配置され、少なくとも前記容器に検査サンプルが入った状態で上下反転させた場合に、前記開口部から前記容器が落下することを防止する滑り止め部とを有することを特徴とするトレーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能検査の検査サンプルを入れた容器を保持するトレーに関する。
【背景技術】
【0002】
ビールを製造する工程は、製麦工程と、仕込工程と、発酵・貯酒工程と、ろ過工程と、パッケージング工程とを含む。各工程においては、訓練を受けた官能パネリスト(検査官)による官能検査が実施されている。官能検査とは、官能パネリストが各工程でのサンプル(検査対象となる半製品〜製品)を実際に試飲して半製品〜製品の品質を管理(保証)するための検査である。ここで、半製品とは、例えば、麦汁、貯酒ビール、ろ過後ビールなどを指し、製品とは、パッケージング後の瓶・缶・樽などの容器に詰められたビールを指す。例えば、製品の官能検査では、複数(例えば、5点乃至10点)の品種のビールを一度に検査するために、かかるビールが注がれた複数のコップ(プラスチック製)を並べて検査している。この際、官能検査が終了するまでは、ビールが注がれた複数のコップを倒したりせずに保持することが必要となる。なお、特許文献1には、液体を入れたコップを安定して保持するトレーが開示されている。
【特許文献1】実開平6−55857公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の官能検査においては、検査が終了した際にはコップに残ったビールを廃棄すると共に、かかるコップも簡単な水洗いをして廃棄しているため、コスト面及び環境面で大きな負担となっている。なお、検査に使用したコップを洗浄して再利用することも考えられる。但し、官能検査は複数の官能パネリストによって実施されるために多くのコップが使用されており、このような多くのコップを1つずつ洗浄することは著しく手間がかかってしまうため、現実的ではない。
【0004】
また、官能検査では、サンプルとなるビールの準備及び廃棄が必要となるが、上述したように、サンプル数が極めて多いため、かかるサンプルが注がれたコップを検査が終了するまで保持する作業や残ったビールを1つずつ廃棄する作業が非常に面倒となっている。なお、特許文献1に開示されたトレーは自動車内用のスライド式トレーであり、多数のサンプルを安定して保持することを想定したものではない(即ち、官能検査用と自動車内用とでは用途が異なる)ため、官能検査におけるサンプルの保持に適用することは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、検査作業の効率を向上させると共に、コスト面及び環境面への負担を軽減することができるトレーを提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのトレーは、複数の容器を保持できるトレーであって、検査サンプルを入れる複数の容器の各々を保持するための複数の開口部を有する保持部材と、前記開口部の縁部に配置され、少なくとも前記容器に検査サンプルが入った状態で上下反転させた場合に、前記開口部から前記容器が落下することを防止する滑り止め部とを有することを特徴とする。かかるトレーによれば、複数の開口部を有する保持部材によって、検査サンプルを入れた複数の容器を検査が終了するまで安定して保持することができる。また、トレーを上下反転させた場合でも、滑り止め部によって、開口部から容器が落下することが防止されているため、検査が終了した際には、容器に残った検査サンプルを一括して廃棄することができる。更には、検査に使用した複数の容器を保持したまま、例えば、かかる容器を洗浄する洗浄装置に設置することができる。前記保持部材に形成され、前記複数の開口部に保持される前記複数の容器の各々を識別するための識別子を更に有することを特徴とする。これにより、保持部材に保持された複数の容器に入れた検査サンプルの各々を識別することができる。前記保持部材は、前記複数の開口部を構成する第1の開口部が形成された第1の保持板と、前記支持部材を介して前記第1の保持板に対向して配置され、前記第1の開口部に対応した位置に前記複数の開口部を構成する第2の開口部が形成された第2の保持板とを有することが好ましい。
【0007】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検査作業の効率を向上させると共に、コスト面及び環境面への負担を軽減することができるトレーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の一側面としてのトレー1の構成を示す概略斜視図である。図2(a)は、トレー1の概略上面図である。図2(b)は、トレー1の概略断面図である。トレー1は、液体を入れたコップなどの複数の容器100を保持するトレーである。トレー1は、ビールを製造する工程において、ビールの品質を管理(保証)するために、実際にビールを試飲して検査する官能検査の際に使用されることが好ましい。但し、トレー1は、菓子などの固形物を収納する容器を保持することも可能である。なお、トレー1は、本実施形態では、1種類(即ち、1つの形状)の容器100を保持するが、複数の種類(即ち、互いに異なる形状)の容器を保持することも可能である。トレー1は、図1及び図2に示すように、保持部材10と、支持部材20とを有する。
【0011】
保持部材10は、官能検査の検査対象となる液体(例えば、ビールなど)を入れる複数の容器100の各々を保持するための複数の開口部10Aを有する。従って、保持部材10の開口部10Aに容器100を挿入することによって、トレー1は容器100を保持することが可能となる。これにより、官能検査の検査対象となる液体を入れた複数の容器100を官能検査が終了するまで安定して保持することが可能となり、検査作業の効率の向上を図ることができる。なお、保持部材10は、本実施形態では、6つの開口部10Aを有するが、開口部10Aの数は限定されるものではない。
【0012】
複数の開口部10Aは、容器100の外形形状と同一形状を有し、本実施形態では、円筒形状の容器100を保持するために円形形状を有する。また、複数の開口部10Aは、容器100の外形形状の大きさと略同一の大きさを有し、容器100を挿入することができる程度、且つ、容器100が抜け落ちない程度の大きさを有する。なお、複数の開口部10Aは、上述したように、互いに異なる形状を有してもよいし、互いに異なる大きさを有していてもよく、保持する容器100に応じて形状及び大きさを決定すればよい。
【0013】
保持部材10は、本実施形態では、図2(b)によく示されるように、第1の保持板12と、第2の保持板14とで構成される。第1の保持板12は、複数の開口部10Aを構成する第1の開口部12Aを有する。また、第2の保持板14は、後述する支持部材20を介して第1の保持板12に対向して配置され、第1の開口部12Aに対応した位置に第2の開口部14Aを有する。換言すれば、第1の開口部12Aと第2の開口部14Aとが組となり、開口部10Aを形成する。第1の開口部12Aと第2の開口部14Aは、本実施形態では、同一形状及び同一な大きさを有するが、例えば、容器100が逆円錐形状(上部が拡がっている形状)であるような場合には、第1の開口部12Aの大きさを第2の開口部14Aの大きさよりも大きくするとよい。このように、容器100を保持する位置(即ち、容器100と接触する位置)での容器100の外形形状及び大きさに応じて第1の開口部12A及び第2の開口部14Aの形状及び大きさを決定すればよい。
【0014】
第1の開口部12A及び第2の開口部14A(開口部10A)の縁部には、容器100の滑りを防止する滑り止め部16が配置されている。具体的には、滑り止め部16は、少なくとも容器100に液体が入った状態でトレー1を上下反転させた場合に、開口部10Aから容器100が落下することを防止する機能を有する。滑り止め部16は、容器100に対して高い摩擦係数を有する材料で構成される。滑り止め部16を構成する材料としては、ゴム、ウレタン、ポリ塩化ビニルなどがあげられる。例えば、容器100がプラスチック製である場合には、滑り止め部16はゴム(ゴムパッキン)で構成される。なお、本実施形態では、第1の開口部12A及び第2の開口部14A(開口部10A)の縁全体に滑り止め部16が配置されているが、第1の開口部12A及び第2の開口部14A(開口部10A)の縁の一部のみに滑り止め部16を配置してもよい。トレー1は、滑り止め部16によって、複数の容器100を更に安定して保持することができる。また、トレー1を上下反転した場合にも、滑り止め部16によって、複数の容器100が落下することを確実に防止することができる。従って、官能検査が終了した際には、トレー1を上下反転することによって、複数の容器100に残った液体を一括して廃棄することが可能となり、検査作業の効率の向上を図ることができる。
【0015】
また、第1の保持板12及び第2の保持板14(保持部材10)は、耐熱性を有する材料で構成される。これにより、官能検査に使用した複数の容器100を保持したままのトレー1を、容器100を洗浄(加熱)する洗浄装置に設置することができ、官能検査に使用した複数の容器100を一括して洗浄し、再利用することが可能となる。従って、官能検査に使用した容器100を再利用せずに廃棄していた場合と比較して、コスト面及び環境面への負担を軽減することができる。なお、容器100を洗浄する洗浄装置が洗浄液などを使用する場合には、第1の保持板12、第2の保持板14(保持部材10)、支持部材20及び滑り止め部16を洗浄液などに耐性を有する材料で構成することは言うまでもない。
【0016】
また、第1の保持板12及び第2の保持板14(保持部材10)には、図3に示すように、複数の開口部10Aの各々の近傍に、複数の開口部10Aに保持される複数の容器100の各々を識別するための識別子12B及び14Bが形成されている。これにより、保持部材10に保持された複数の容器100に入れた検査対象の各々を識別することができる。例えば、「7」の識別子12Bが形成(付与)された開口部10Aに保持された容器100には、検査対象としてタンクαで製造されたビールが入れられ、「8」の識別子12Bが形成(付与)された開口部10Aに保持された容器100には、検査対象としてタンクβで製造されたビールが入れられていると識別することが可能となる。なお、第1の保持板12及び第2の保持板14の両方に識別子12B及び14Bを形成することで、トレー1の表裏を考慮することなく、トレー1を使用することができる。また、第1の保持板12(又は第2の保持板14)の対向面に片面に続く番号を識別子として形成して、複数のトレーを組み合わせて使用することで、サンプル数が多い場合にも対応することができる。例えば、図2(a)に示すトレー1を前後逆にして2つ使用すれば、サンプル数が12の場合にも対応することができる。ここで、図3は、トレー1の保持部材10(第1の保持板12及び第2の保持板14)に形成された識別子12B及び14Bを示す拡大斜視図である。
【0017】
識別子12B及び14Bは、例えば、第1の保持板12及び第2の保持板14を削って切り欠きを形成し、かかる切り欠きにインクを流し込むことによって形成される。なお、識別子12B及び14Bは、本実施形態では、算用数字を使用しているが、例えば、アルファベットやギリシャ文字、或いは、それらを組み合わせたものを使用してもよい。また、識別子12B及び14Bは、本実施形態では、開口部10Aに対して、上側及び下側の両方(図3参照)に形成されているが、片側(上側又は下側)だけに形成されていてもよい。
【0018】
支持部材20は、保持部材10を支持する機能を有する。支持部材20は、本実施形態では、第1の支持板12と第2の支持板14とを接続する機能も有する。また、支持部材20は、3カ所で保持部材10を保持(第1の支持板12と第2の支持板14とを接続)しているが、4カ所以上、或いは、2カ所以下で保持部材10を保持してもよい。また、支持部材20は、トレー1を洗浄装置に設置することを可能にするために、第1の保持板12及び第2の保持板14(保持部材10)と同じ材料で構成されることが好ましい。
【0019】
以下、ビールの官能検査におけるトレー1の使用について説明する。まず、官能パネリストは、検査対象となるビールを複数の容器100に注ぎ、かかる複数の容器100を保持部10の複数の開口部10Aに挿入して、トレー1に保持させる。次いで、官能パネリストは、トレー1に保持させた容器100を開口部10Aから1つずつ取り出して、かかる容器100に注いだビールを試飲(検査)し、容器100を開口部10Aに戻す。この際、複数の容器100は、トレー1(保持部材10)によって安定して保持されているため、例えば、容器100をトレー1から取り出す際やトレー1に戻す際に、誤って隣の容器100などに接触させてしまっても容器100が倒れることがなく、ビールが注がれた複数の容器100を検査が終了するまで容易に保持することができる。
【0020】
複数の容器100に注いだビールの試飲が全て終了すると、官能パネリストは、複数の容器100に残ったビールを廃棄する。この際、トレー1を上下反転することによって、複数の容器100に残ったビールを一括して廃棄することができる。なお、滑り止め部16が容器100の滑りを防止しているため、トレー1を上下反転させても、トレー1に保持された容器100が落下することはない。
【0021】
ビールの廃棄が終了すると、官能パネリストは、官能検査に使用した複数の容器100を洗浄する。この際、複数の容器100を保持したままのトレー1を洗浄装置に設置して、複数の容器100を一括して洗浄することができる。これにより、官能検査に使用した複数の容器100を再使用することが可能となり、コスト面及び環境面への負担を軽減することができる。
【0022】
このように、トレー1によれば、検査作業の効率を向上させると共に、コスト面及び環境面への負担を軽減することができる。
【0023】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一側面としてのトレーの構成を示す概略斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1に示すトレーの概略上面図であり、図2(b)は、図1に示すトレーの概略断面図である。
【図3】図1に示すトレーの保持部材(第1の保持板及び第2の保持板)に形成された識別子を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 トレー
10 保持部材
10A 開口部
12 第1の保持板
12A 第1の開口部
12B 識別子
14 第2の保持板
14A 第2の開口部
14B 識別子
16 滑り止め部
20 支持部材
100 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の容器を保持できるトレーであって、
検査サンプルを入れる複数の容器の各々を保持するための複数の開口部を有する保持部材と、
前記開口部の縁部に配置され、少なくとも前記容器に検査サンプルが入った状態で上下反転させた場合に、前記開口部から前記容器が落下することを防止する滑り止め部とを有することを特徴とするトレー。
【請求項2】
前記保持部材に形成され、前記複数の開口部に保持される前記複数の容器の各々を識別するための識別子を更に有することを特徴とする請求項1記載のトレー。
【請求項3】
前記保持部材は、
前記複数の開口部を構成する第1の開口部が形成された第1の保持板と、
前記支持部材を介して前記第1の保持板に対向して配置され、前記第1の開口部に対応した位置に前記複数の開口部を構成する第2の開口部が形成された第2の保持板とを有することを特徴とする請求項1記載のトレー。
【請求項4】
前記滑り止め部は、ゴムパッキンで構成されることを特徴とする請求項1記載のトレー。
【請求項5】
官能検査において使用されることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載のトレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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