説明

トロイダル型無段変速機

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、入力軸と出力軸が、エンジンのクランク軸と略同一直線上にある変速機であって、変速機の出力軸また入力軸を挾んで複数のパワーローラが相対向して設置されてなるトロイダル型無段変速機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば特開昭63−225755号公報に示されるように、自動車のエンジンから駆動トルクが入力される入力ディスクと、駆動輪側に駆動トルクを出力する出力ディスクとの間に一対のパワーローラを配設するとともに、このパワーローラを回転自在に支持する支持部材をその軸線方向に変位させてパワーローラの傾転角度を変化させることにより、変速比を調節するように構成されたトロイダル型無段変速機が知られている。
【0003】上記パワーローラの支持部材には、油圧ピストン等を有する油圧機構が設けられ、この油圧機構に制御油圧を供給するため、バルブボディ内にスリーブとスプールとが配設された三層構造の変速比制御弁が設置されている。この変速比制御弁は、図6に示すように、その一端部にステッピングモータ91が設けられ、このステッピングモータ91の駆動力によって変速比制御弁92内のスプールをその軸線方向に移動させることにより、制御油圧の給排を制御するように構成されている。
【0004】上記ステッピングモータ91は、変速機本体の下方に設置されたオイルパン内に収容されたオイルの影響を受けるのを防止するため、通常、変速機本体の側方に位置するように配設されている。また、上記変速比制御弁92は、変速機の出力軸および入力軸の軸線Aと直交する方向に設置されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記トロイダル型無段変速機を構成する一対のパワーローラは、変速機の出力軸または入力軸を挾んで相対向して設置されるとともに、互いに逆向きのトルク反力を受けるため、上記出力軸等を支点にして変速機の機体を波打たせるように振動させる加振源となり、その影響が上記出力軸また入力軸と直交する方向に設置された変速比制御弁等に及ぶことになる。
【0006】したがって、上記パワーローラから付与される振動によって上記変速比制御弁等のスムーズな作動が妨げられ易く、これを防止するためには、バルブボディの板厚を厚くしてその変形を防止する等の手段を講じる必要があるという問題がある。
【0007】本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、パワーローラから付与される振動によって上記変速比制御弁等のスムーズな作動が妨げられるのを効果的に防止することができるトロイダル型無段変速機を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、変速機の出力軸または入力軸を挾んで相対向して設置された複数のパワーローラと、このパワーローラを回転自在に支持する支持部材と、この支持部材をその軸線方向に変位させる油圧機構を備え、変速機ケーシングに固定された仕切壁と、この仕切壁に連設されたバルブボディ内に、上記仕切壁と平行に設けられ、上記変速機の油圧制御装置を構成する制御弁とを備え、入力軸と出力軸が、エンジンのクランク軸と略同一直線上にあるトロイダル型無段変速機において、上記制御弁を、上記変速機の出力軸または入力軸と平行に設置したものである。
【0009】請求項2に係る発明は、請求項1記載のトロイダル型無段変速機において、上記油圧機構に制御油圧を供給する変速比制御弁を、変速機の出力軸または入力軸と平行に設置したものである。
【0010】
【作用】上記請求項1記載の発明によれば、複数のパワーローラによって付与されるトルク反力に応じて変速機の機体がその出力軸または入力軸を支点に左右に振動した場合においても、その影響が制御弁に及ぶことが効果的に防止されることになる。
【0011】上記請求項2記載の発明によれば、複数のパワーローラによって付与されるトルク反力に応じて変速機の機体がその出力軸または入力軸を支点に左右に振動した場合においても、比較的に全長が長い変速比制御弁に上記振動の影響が及ぶことが効果的に防止されることになる。
【0012】
【実施例】図1は、本発明に係るプリロード圧調整方法が適用されるトロイダル型無段変速機を有する自動車の変速装置の概略構成を示している。この変速装置は、エンジン1の出力側に接続される経路切換クラッチ2によって切り換えられる第1および第2動力伝達経路3,4を有している。第1動力伝達経路3は、エンジン出力を減速装置7を介して車輪側に伝達するもので、この実施例ではトルクコンバータ5から、前後進切換装置6および減速装置7を経て車輪側に動力を伝達するように構成されている。また第2動力伝達経路4は、エンジン出力をトロイダル型無段変速機8を介して車輪側に伝達するものである。
【0013】上記トルクコンバータ5は、その入力軸5aに連なるポンプカバー11と、このポンプカバー11に一体に形成されたポンプインペラ12と、これに対向するように設置されたタービンライナ13と、その間でワンウェイクラッチ16を介して中空固定シャフト15に取付けられたステータ14とを備えている。そして、上記入力軸5aがエンジン1の出力軸に結合されるとともに、トルクコンバータ5の出力軸となるタービンシャフト17が上記タービンライナ13に結合されている。また、上記ポンプカバー11内の空間には、作動流体としてのオイルが充満されている。なお、ポンプインペラ12には中空回転シャフト18が連結され、このシャフト18の後端にオイルポンプ19が取付けられている。
【0014】上記減速装置7は、タービンシャフト17と同軸上に配置された後進用および前進用の2つの遊星歯車機構20,21とを有し、両遊星歯車機構20,21に共用されるサンギヤ22が上記タービンシャフト17に結合されている。上記後進用遊星歯車機構20は、シングルピニオン式であリ、上記サンギヤ22の回転が、キャリヤ23に支持されたピニオン24を介してリングギヤ25に伝えられるようになっている。また、上記キャリヤ23は、中空固定シャフト15に結合されて変速機ケーシング10に固定され、上記リングギヤ25は、リバースクラッチ6aを介して変速機の出力軸30に連結されている。
【0015】一方、前進用遊星歯車機構21はダブルピニオン式であリ、上記サンギヤ22の回転が、上記キャリヤ23に支持されたインナピニオン26およびアウタピニオン27を介してリングギヤ28に伝えられるようになっている。このリングギヤ28は、フォワードクラッチ6bおよびワンウェイクラッチ29を介して上記出力軸30に連結されている。
【0016】上記リバースクラッチ6aとフォワードクラッチ6bとによって前後進切換装置6が構成されている。そして、上記リバースクラッチ6aが締結されたときには、タービンシャフト17からの入力が後進用遊星歯車機構20を介して変速機の出力軸30に伝達され、フォワードクラッチ6bが締結されたときには、タービンシャフト17からの入力が前進用遊星歯車機構21を介して上記出力軸30に伝達されるようになっている。
【0017】一方、第2動力伝達経路4のトロイダル型無段変速機8は、一対の無段変速機ユニット31,32によって構成され、この両無段変速機ユニット31,32が、上記減速装置7に隣接する位置で上記出力軸30上に配置されている。上記無段変速機ユニット31,32は、それぞれ軸方向に離間して配置された一対のディスク33,34と、これらのディスク33,34の間に配設されて両ディスク33,34に摺接する一対のパワーローラ35とを有している。この両パワーローラ35は、上記出力軸30を挾んで相対向して設置されている。
【0018】上記一対のディスクのうちの一方のディスク(出力ディスク)33は上記出力軸30に固定され、他方のディスク(入力ディスク)34は上記出力軸30に対して相対回転可能で、かつ軸方向に移動可能に支持されている。上記パワーローラ35は、後述する油圧機構により傾転角θが変更され、これに応じてトロイダル型の変速機ユニット31,32の変速比が変更されるように構成されている。
【0019】すなわち、入力ディスク34の回転が上記パワーローラ35を介して出力ディスク33に伝達される際の変速比は、パワーローラ35が入力ディスク34に摺接する個所の半径Riと出力ディスク33に摺接する個所の半径Roとの比に対応して設定されるため、パワーローラ35が傾転して上記摺接個所が変位すると、これに応じて上記トロイダル型の無段変速機ユニット31,32の変速比が変更されるようになっている。
【0020】上記トロイダル型無段変速機8の変速機ユニット31,32の構成について、図2〜図5に基づいて説明する。一方の変速機ユニット31の出力ディスク33は、変速機の出力軸30にスプライン嵌合されるとともに、この出力軸30に設けられたリング状の位置決め部材36によって位置決めされた状態で、ベアリング37を介して変速機ケーシング10に回転自在に支持されている。なお、他方の変速機ユニット32の出力ディスク33は、変速機の出力軸30に形成された段部に係止されたベアリング37によって位置決めされている。
【0021】上記変速機ユニット31,32を構成する両入力ディスク34の間には、これらに対して相対回転可能に支持されたインプットカム38が配設されている。このインプットカム38と、上記入力ディスク34との間には、リテーナ39に保持されたカムローラ40が介設されている。このカムローラ40は、上記入力ディスク34およびインプットカム38に形成されたカム面にそれぞれ当接し、上記インプットカム38に入力された駆動トルクを入力ディスク34およびパワーローラ35を介して出力ディスク33に伝達するように構成されている。
【0022】また、上記変速機ユニット32の入力ディスク34と、インプットカム38を支持する支持部材41との間には、両変速機ユニット31,32の入力ディスク34をそれぞれ出力ディスク33側に付勢する皿ばねからなる付勢部材42が設置され、この付勢部材42の付勢力に応じて上記入力ディスク34と出力ディスク33との間に、プリロード圧が付与されるようになっている。
【0023】また、上記変速機ユニット31,32には、上記パワーローラ35を回転自在に支持する偏心軸43を有するトラニオン44が設けられ、このトラニオン44には、下方に突出する軸部材45が取り付けられている。そして上記トラニオン44は、その上端部が球面ブッシュ46と、これを支持する連結部材47とを介して変速機ケーシング10の上面部に支持されるとともに、下端部が球面ブッシュ48と、これを支持する連結部材49および支持軸50を介して変速機ケーシング10の下端部に設けられた仕切壁51に支持されている。
【0024】上記仕切壁51内には、トラニオン44を作動させるための油圧シリンダ52が設けられている。この油圧シリンダ52は、上記トラニオン44の軸部材45に支持された上下一対のピストン53,54と、この両ピストン53,54間に位置する画壁板55とによって画成された上下一対の油圧室56,57を有している。そして上方の油圧室56に油圧が導入されると、上側のピストン53によってトラニオン44が押し上げられ、下方の油圧室57に油圧が導入されると、下側のピストン54によってトラニオン44が押下げられ、これにともなってパワーローラ35が傾転するようになっている。
【0025】上記上方の連結部材47の中央部には、変速機ケーシング10に突設された支持軸58およびこれに外嵌された支持部材59が設置される位置決め孔47aが形成されている。また、下方の連結部材49の中央部には、支持軸50に外嵌された球面軸受60が設置される位置決め孔61が形成されている。
【0026】また、上記両ピストン53,54間の画壁板55には、上記軸部材45に設けられた潤滑油通路45aに連通する潤滑油供給口56aが形成されている。そして、上記潤滑油通路45aからトラニオン44に形成された油路44aに潤滑油が導出されることにより、パワーローラ35の支持部の潤滑が行われるようになっている。
【0027】上記油圧シリンダ52の油圧室56,57に対する油圧の給排を制御することによって変速比を制御する変速比制御弁62は、図4に示すように、仕切壁51の下方に位置するハウジング63に取り付けられたバルブボディ64と、このバルブボディ64内に嵌入されたスリーブ65と、このスリーブ65内にスライド自在に支持されたスプール66とを有する三層構造に形成されている。上記スプール66の一端部には、制御用アクチュエータを構成するスプリング67と、回転部材68と、ピン部材69と、ステッピングモータ70とが配設され、スプール66の他端部には、機械的フィードバック手段71が設置されている。
【0028】上記スリーブ65には、バルブボディ64に形成された元圧受入ポートP1と、シフトアップ用制御ポートP2と、シフトダウン用制御ポートP3に対応する位置に、これらに常時連通するメインポート72と、第1ポート73と、第2ポート74とが形成されている。
【0029】また、上記スプール66には、上記メインポート72に常時連通する環状のグルーブ75と、その左右に位置する第1,第2ランド部76,77とが形成されている。この第1,第2ランド部76,77は、シフトアップおよびシフトダウンのいずれもが行われていない非変速時に、それぞれ上記第1,第2ポート73,74を閉じるように構成されている。
【0030】上記ステッピングモータ70の駆動軸には、回転部材68が取り付けられ、この回転部材68の先端部には、カラー78が螺着されている。このカラー78には、ピン部材69が係止されるとともに、このピン部材69の両端部が上記バルブボディ64に形成された溝部79に係止されることにより、上記カラー78の回転が阻止されるようになっている。そして、上記回転部材68がステッピングモータ70によって回転駆動されると、上記カラー78がその軸方向に移動するとともに、これに伴い上記ピン部材69を介してスリーブ65がその軸線方向にスライド変位するように構成されている。
【0031】このスリーブ65のスライド変位に応じてスリーブ65のメインポート72が、スプール66のグルーブ75を介してバルブボディ64の第1ポート73もしくは第2ポート74に連通し、元圧受入ポートP1内の油圧がシフトアップ用制御ポートP2またはシフトダウン用制御ポートP3に導出されることにより、変速制御が実行されるようになっている。
【0032】上記フィードバック手段71は、一方のトラニオン44に突設された軸部材45の下端部に取り付けられたプリセスカム80と、ハウジング63に揺動自在に支持されたレバー部材81とを有している。このレバー部材81は、上記プリセスカム80の下面に形成された傾斜面82に当接する第1アーム83と、上記スプール66の先端部に当接する第2アーム84とを有している。そして、上記スプリング67の付勢力によって上記スプール66の先端部がレバー部材81の第2アーム84に常時当接するようになっている。
【0033】上記のように変速比制御弁62の前後両端部は、ステッピングモータ70を有する制御用アクチュエータと、レバー部材81等からなる機械的フィードバック手段71とによってそれぞれ支持されている。また、上記変速比制御弁62は、オイルパン85内に配設されて図5に示すように、変速機の出力軸30の軸線Aと平行に設置されている。
【0034】上記構成において、変速時にステッピングモータ70が図外のコントロールユニットから出力される制御信号に応じ、目標傾転角(目標変速比)に対応する角度に回転駆動されると、この回転角度に対応する分だけ、上記スリーブ65がその軸方向に移動する。この結果、スリーブ65のメインポート72が、スプール66のグルーブ75を介してバルブボディ64の第1ポート73もしくは第2ポート74に連通し、これによって所定の油圧室56,57に油圧が供給されてパワーローラ35が目標傾転角度に変位する。
【0035】例えばシフトアップ時には、ステッピングモータ70が上記制御信号に応じて所定角度だけ順回転すると、スリーブ65が先端部側、つまりフィードバック手段71の設置部側に移動する。この結果、メインポート72がグルーブ75を介して第1ポート73と連通し、元圧受入ポートP1の油圧がシフトアップ用ポートP2に出力されるとともに、シフトダウン用ポートP3がドレンポート86に連通してこのシフトダウン用ポートP3の油圧がリリーフされる。
【0036】そして、上記油圧に応じて油圧シリンダ52が作動するこにとより、上記パワーローラ35を支持するトラニオン44が昇降駆動されるとともに、これに伴ってパワーローラ35が傾転してトロイダル型無段変速機8が増速側に移行するようになっている。
【0037】これに対してシフトダウン時には、ステッピングモータ70が上記制御信号に応じて所定角度だけ逆回転し、スリーブ65が基端部側、つまりステッピングモータ70の設置部側に移動する。この結果、メインポート72がグルーブ75を介して第2ポート74と連通し、元圧受入ポートP1の油圧がシフトダウン用ポートP3に出力されるとともに、シフトアップ用ポートP2がドレンポート86に連通してこのシフトアップ用ポートP2の油圧がリリーフされる。
【0038】そして、上記油圧に応じて油圧シリンダ52が作動するこにとより、上記シフトアップ時と逆方向に上記トラニオン44が昇降駆動されるとともに、これに伴ってパワーローラ35が傾転してトロイダル型無段変速機8が減速側に移行する。このシフトダウン時においては、スリーブ65がスプリング67によって先端部側に付勢されているため、この付勢力によって上記スリーブ65が迅速に移動し、変速応答性が確保されるようになっている。
【0039】また、上記パワーローラ35の傾転に応じてトラニオン44と、軸部材45とが回動すると、これに伴ってプリセスカム80が回転する。そして、このプリセスカム80の回転に応じてレバー部材81の第1アーム83が押動されることにより、第2アーム84を介して上記スプール66がスリーブ65の移動方向と同方向にスライド駆動される。
【0040】そして、パワーローラ35の傾転角が目標傾転角度に到達した時点で、スプール66の移動量がスリーブ65の移動量と等しくなってメインポート72と、第1ポート73もしくは第3ポート74との連通が遮断される。これによって油圧室56,57への油圧の供給が停止されて傾転角の変化が阻止され、パワーローラ35が目標傾転角度に保持されることになる。
【0041】上記のようにパワーローラ35を傾動させる油圧機構を構成する油圧シリンダ52の油圧室56,57に対する油圧の給排を制御する変速比制御弁62を変速機の出力軸30の軸線A方向と平行に設置したため、上記出力軸30の軸線Aと直交する方向に変速比制御弁を配設してなる従来装置のように、上記振動の影響を受けて変速比制御弁の作動が阻害されるという事態が生じることを効果的に防止することができる。
【0042】すなわち、変速機の出力軸30を挾んで相対向して設置された一対のパワーローラ35によって変速機ケーシング10および仕切壁51等に付与される振動の影響が上記変速比制御弁62に及ぶのを効果的に防止することができる。このため、変速比制御弁62のバルブボディ64が上記振動に起因して変形することを効果的に防止し、スリーブ65およびスプール66を常にスムーズにスライド移動させることができる。
【0043】したがって、上記変速比制御弁62のバルブボディ64と、スリーブ65とのクリアランスを小さくし、これによって変速比制御弁62の応答性を向上させることができるとともに、油圧のリークを効果的に防止することができる。さらに、バルブボディ64の板厚を小さくして軽量化を図ることができる。
【0044】また、上記実施例では、図2に示すように、油圧シリンダ52を構成する画壁板55に設けられた潤滑油供給口56aを介してパワーローラ35の支持部に潤滑油を供給するようにしている。このため、軸部材45の下端部から潤滑油を供給するように構成された従来例に比べ、潤滑油の流路長および軸部材の全長を短くすることができるとともに、その構成を簡略化することができるという利点がある。
【0045】なお、上記実施例では、全長が比較的に長いため、上記振動等の影響を受け易い変速比制御弁62を変速機の出力軸30の軸線Aと平行に設置した例について説明したが、この変速比制御弁62に代え、あるいはこの変速比制御弁62とともに、ライン圧制御弁またはその他の切り替え弁等の油圧機構を構成する種々の制御弁を変速機の出力軸また入力軸の軸線と平行に設置した構造としてもよい。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、変速機の出力軸または入力軸を挾んで相対向して設置された複数のパワーローラと、このパワーローラを回転自在に支持する支持部材と、この支持部材をその軸線方向に変位させる油圧機構を備え、変速機ケーシングに固定された仕切壁と、この仕切壁に連設されたバルブボディ内に、上記仕切壁と平行に設けられ、上記変速機の油圧制御装置を構成する制御弁とを備え、入力軸と出力軸が、エンジンのクランク軸と略同一直線上にあるトロイダル型無段変速機において、上記制御弁を、上記変速機の出力軸または入力軸と平行に設置したため、この変速機の出力軸等を挾んで相対向して設置された複数のパワーローラによって変速機の機体ケース等に付与される振動の影響が上記制御弁に及ぶのを効果的に防止することができる。したがって、上記制御弁のバルブボディと、スリーブとのクリアランスを小さくし、これによって制御弁の応答性を向上させることができるとともに、油圧のリークを効果的に防止することができる。さらに、バルブボディの板厚を小さくして軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るトロイダル型無段変速機を備えた変速装置の全体構成を示す概略説明図である。
【図2】上記トロイダル型変速機の具体例を示す正面断面図である。
【図3】上記トロイダル型変速機の側面断面図である。
【図4】変速機制御弁の構成を示す側面断面図である。
【図5】図2のB−B線断面図である。
【図6】従来例を示す図5相当図である。
【符号の説明】
8 トロイダル型無段変速機
10 変速機ケーシング
30 出力軸
35 パワーローラ
44 トラニオン(支持部材)
51 仕切壁
62 変速比制御弁
64 バルブボディ
70 ステッピングモータ(制御用アクチュエータ)
71 機械的フィードバック手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 変速機の出力軸または入力軸を挾んで相対向して設置された複数のパワーローラと、このパワーローラを回転自在に支持する支持部材と、この支持部材をその軸線方向に変位させる油圧機構を備え、変速機ケーシングに固定された仕切壁と、この仕切壁に連設されたバルブボディ内に、上記仕切壁と平行に設けられ、上記変速機の油圧制御装置を構成する制御弁とを備え、入力軸と出力軸が、エンジンのクランク軸と略同一直線上にあるトロイダル型無段変速機において、上記制御弁を、上記変速機の出力軸または入力軸と平行に設置したことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】 上記油圧機構に制御油圧を供給する変速比制御弁を、変速機の出力軸または入力軸と平行に設置したことを特徴とする請求項1記載のトロイダル型無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【特許番号】特許第3403455号(P3403455)
【登録日】平成15年2月28日(2003.2.28)
【発行日】平成15年5月6日(2003.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−170589
【出願日】平成5年7月9日(1993.7.9)
【公開番号】特開平7−27193
【公開日】平成7年1月27日(1995.1.27)
【審査請求日】平成12年5月10日(2000.5.10)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【参考文献】
【文献】特開 昭63−225755(JP,A)