説明

トロール漁法およびこれに用いるオッターボード

【課題】 トロール網をトロール船の航跡から離して曳網し、表層域においてトロール船の通過やそれに伴う判流の影響により採集対象生物が逃避してしまうことを防止して、定量的な採集を行うことのできるトロール漁法およびこれに用いるオッターボードを提供すること。
【解決手段】 各オッターボード1a,1bの拡網力の絶対値をそれぞれ異ならせて、トロール網18をトロール船11の航跡から離して曳網させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトロール漁法およびこれに用いるオッターボードに係り、特に、トロール網をトロール船の航跡から離して曳網できるトロール漁法およびこれに用いるオッターボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、海中における水産資源の調査の一手法として、トロール網による調査が行なわれてきた。そして、このようなトロール網には、網口を展開させるためのオッターボードが装備されていた。
【0003】
このような従来のオッターボードを使用したトロール漁法は、例えば特許文献1に示すように、トロール船から繰り出された2本のワープの先端にオッターボードが連結され、オッターボードとトロール網とはオッターペンネントと手綱を介して連結されている。
【0004】
前記オッターボードは、上流側に配置されている剛体部材と、この剛体部材に連結されて下流側に配置されている可撓性拡網部材とによって形成されている。
【0005】
前記剛体部材は、強化樹脂製のフレーム状に形成されており、2本の縦辺と3本の横辺とを連結して形成されている。
【0006】
前記可撓性拡網部材は、水中翼部とこれを前記剛体部材の各横辺に連結する連結部材とによって形成されている。前記水中翼部は、キャンバス地等の可撓性部材からなる平面状の内側布地と、同じくキャンバス地等の可撓性部材からなる断面半円形状の外側布地とにより、上流端のみに開口を開設した前後に長い袋状としたものを上下方向に4列並べて形成されており、かつ、前記開口より流入した水により翼状の略剛体形状になるようにされている。
【0007】
また、前記内側布地の上下の各端縁と中央部とをそれぞれ各連結部材によって、剛体部材に対する可撓性拡網部材の内側布地の対水迎角を決定するように、剛体部材側の長方形状の網地と前記内側布地側の三角形状の布地とによって連結している。
【0008】
このような構成からなる従来のオッターボードによれば、トロール船上から、トロール網、オッターペンネント、オッターボードおよびワープの順に水中に投入すると、トロール船が進行することにより水流を受け、その外力の外側方向成分によって上流側に配置されている剛体部材に連結されている下流側の可撓性拡網部材の水中翼部の内側布地の内面側に水が流入し、可撓性拡網部材が翼状に拡開され、拡網力を発揮してトロール網の網口が拡開される(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2002−315472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述したような従来のオッターボードを使用してのトロール漁法においては、トロール網がトロール船の航跡に沿って曳網されていたため、海中の表層域において、採集対象生物がトロール船の通過やそれに伴う判流によって逃避してしまい、定量的な採集を行なうことができなかった。
【0011】
そこで、本発明は、トロール網をトロール船の航跡から離して曳網し、表層域においてトロール船の通過やそれに伴う判流によって採集対象生物が逃避してしまうことを防止して、定量的な採集を行うことのできるトロール漁法およびこれに用いるオッターボードを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため本発明のトロール漁法の特徴は、左右一対のオッターボードを用いてトロール網の網口を広げて曳網するトロール漁法において、前記一対のオッターボードの拡網力の絶対値をそれぞれ異ならせて、前記トロール網をトロール船の航跡から離して曳網させる点にある。
【0013】
このような構成を採用したことにより、表層域においてトロール船の通過やそれに伴う判流の影響により採集対象生物が逃避してしまうことを防止することができ、定量的な採集を行うことができる。
【0014】
また、本発明のオッターボードの特徴は、トロール船上から繰り出される2本のワープの先端に、前記各ワープを前記トロール船の進行方向に対してそれぞれ外方に偏向するようにオッターボードに取付けられるとともに、それぞれのオッターボードに連結されたオッターペンネントを介してトロール網が展開するように配設された一対のオッターボードにおいて、ワープの取付け位置を変えることによって、前記各オッターボードの拡網力の絶対値をそれぞれ異ならせた点にある、
このような構成を採用したことにより、表層域においてトロール網を曳網する各オッターボードのうち拡網力の絶対値の小さいオッターボードがもう一方のオッターボード側に引き寄せられ、全体として拡網力の絶対値の大きいオッターボード側へトロール網が移動し、トロール網をトロール船の航跡から離すことができ、表層域においてトロール船の通過やそれに伴う判流の影響により採集対象生物が逃避してしまうことを防止することができ、定量的な採集を行うことができる。
【0015】
また、本発明のオッターボードの他の特徴は、前記一対のオッターボードにおいて、それぞれ少なくとも1つの開口部が形成され、凹入した内面を有するフレームと、前記開口部に配設される彎曲した板とからなる単板型のオッターボードであって、少なくとも一方のオッターボードの彎曲した板を開閉自在に配設した点にある。
【0016】
また、本発明のオッターボードの他の特徴は、前記一対のオッターボードにおいて、それぞれ少なくとも1つの開口部が形成され、凹入した内面を有する一対のフレームを対向させて連結し、前記各開口部に彎曲した板を配設してなる複葉型のオッターボードであって、少なくとも一方のオッターボードの彎曲した板を開閉自在に配設した点にある。
【0017】
このような構成を採用したことにより、一方のオッターボードのフレームから彎曲した板を取り外して開口部を開放することにより、容易にオッターボードの拡網力の絶対値を小さくすることができ、トロール網をトロール船の航跡から離すことができる。
【0018】
また、本発明のオッターボードの他の特徴は、前記一対のオッターボードのうち一方のオッターボードとワープとの間に索具を連結させた点にある。
【0019】
このような構成を採用したことにより、オッターボードとワープとの間の索具によりオッターボードの曳点がずらされ、このオッターボードの拡網力の絶対値がもう一方のオッターボードの拡網力の絶対値よりも小さくなり、航跡から離してトロール網を曳網することができ、表層域においてトロール船の通過やそれに伴う判流の影響により採集対象生物が逃避してしまうことを防止することができ、定量的な採集を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のトロール漁法およびこれに用いるオッターボードによれば、トロール網をトロール船の航跡から離すことにより、表層域においてトロール船の通過やそれに伴う判流の影響により採集対象生物が逃避してしまうことを防止することができ、定量的な採集を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明のトロール漁法およびこれに用いるオッターボードの実施形態について説明する。
【0022】
図1は本発明のオッターボードの第1実施形態を示す概略図、図2は本第1実施形態のフレームの他の形態を示す概略図、図3は図1のオッターボードを用いたトロール漁の実施形態を示した概略図、図4は図1のオッターボードを用いたトロール漁の作用を示した概略図である。
【0023】
本第1実施形態のオッターボード1a,1bは単板型であり、図1に示すように、それぞれ金属製もしくは強化プラスチック製の凹入した内面を有し、開口部3a,3bが形成された略「日」字形状のフレーム2a,2bを有している。
【0024】
前記各フレーム2a,2bの開口部3a,3bには、金属製もしくは強化プラスチック製の彎曲した板4がそれぞれボルト等の留め具(図示せず)により着脱可能に取付けられている。なお、前記各彎曲した板4は、図2に示すように、回動機構10を配設して回動自在に取付け、各開口部3a,3bを開閉できるようにしてもよい。
【0025】
また、前記各フレーム2a,2bの内面の鉛直方向における中央には、それぞれ内側に水平に張出したフランジ5が一体に形成されており、各フランジ5には、後述するワープ12が連結される曳点となる1つの貫通孔6がそれぞれ穿設されている。
【0026】
また、前記各フレーム2a,2bの外面の鉛直方向における上縁部近傍および下縁部近傍には、それぞれ外側に水平に張出したフランジ7がそれぞれ一体に形成されており、各フランジ7には、後述するオッターペンネント13が連結される貫通孔8がそれぞれ穿設されている。
【0027】
さらに、前記各フレーム2a,2bの下縁には、それぞれ踏部材9が設けられており、その前端は上方に彎曲されている。
【0028】
つぎに、前述した構成からなる本第1実施形態のオッターボード1a,1bを用いたトロール漁法について説明する。
【0029】
本第1実施形態のトロール漁法においてオッターボード1a,1bは、図3に示すように、トロール船11上から繰り出された左右2本のワープ12の先端で、それぞれ貫通孔6において連結されている。
【0030】
そして、各オッターボード1a,1bには、各オッターボード1a,1bの各フランジ7に形成された貫通孔8からそれぞれオッターペンネント13が連結されており、各オッターペンネント13には、合流用シャックル14、スイベル15、シャックル16およびラインロープ17が順次連結され、各ラインロープ17によってトロール網18が連結されている。
【0031】
そして、本実施形態では、トロール船11上において一方のオッターボード1bの各彎曲した板4を取外して各開口部3a,3bを開放した後、水中にトロール網18、ラインロープ(ハンドロープ)17、オッターペンネント13、オッターボード1a,1bおよびワープ12を順に投網する。なお、前記各彎曲した板4を回動機構10により回動自在に取付けた場合には、トロール船11上において各彎曲した板4を回動させて各開口部3a,3bを開放させる。
【0032】
そして、トロール船11を進行させると、各オッターボード1a,1bが水流を受けてそれぞれ拡網力が生じる。このとき、本第1実施形態のオッターボード1a,1bは、オッターボード1bの各彎曲した板4が取り外され、オッターボード1bの拡網力がオッターボード1aの拡網力よりも小さくなるため、図4に示すように、各オッターボード1a,1bがオッターボード1a側へ偏向して拡網され、これに応じてトロール網18がトロール船11の航跡より離れる。
【0033】
このため、表層域において、トロール船11の通過やそれに伴う判流の影響により採集対象生物が逃避してしまうことを防止することができ、定量的なサンプリングを行うことができる。
【0034】
つぎに、本発明のオッターボードの第2実施形態について説明する。図5は本発明のオッターボードの第2実施形態を示す概略図、図6は図5のオッターボードを用いたトロール漁の実施形態を示した概略図、図7は図5のオッターボードを用いたトロール漁の作用を示した概略図である。なお、本第1実施形態と同様の構成である箇所については同一の符号をもって説明する。
【0035】
本第2実施形態のオッターボード21a,21bは複葉型であり、図5に示すように、それぞれ金属製もしくは強化プラスチック製の凹入した内面を有し、開口部3a,3bが形成された略「日」字形状のフレーム2a,2bがそれぞれ平行に配置されている。
【0036】
前記各フレーム2a,2bの開口部3a,3bには、金属製もしくは強化プラスチック製の彎曲した板4がそれぞれボルト等の留め具(図示せず)により着脱可能に取付けられている。なお、前記各彎曲した板4は、図2に示すように、回動機構10を配設して回動自在に取付け、各開口部3a,3bを開閉できるようにしてもよい。
【0037】
対向する前記各フレーム2a,2aあるいは前記各フレーム2b,2bは、それぞれ上縁部近傍において略四角形状の枠状の連結部材22、鉛直方向における中央において水平ボード23、下縁部において踏部材24によって連結されている。なお、前記各踏部材24の前端は上方に彎曲されている。
【0038】
前記各オッターボード21a,21bの水平ボード23には、前縁部近傍にワープ11が連結される曳点となる貫通孔25aが穿設されているとともに、後縁部近傍にそれぞれオッターペンネント12が連結される貫通孔25b,25cが一定の間隔を隔てて穿設されている。
【0039】
つぎに、前述した構成からなる本第2実施形態のオッターボード21a,21bを用いたトロール漁法について説明する。
【0040】
本第2実施形態のオッターボード21a,21bは、図6に示すように、トロール船11上から繰り出された左右2本のワープ12の先端で、それぞれ貫通孔25aにおいて連結されている。
【0041】
そして、各オッターボード21a,21bには、各水平ボード23に穿設された貫通孔25b,25cからそれぞれオッターペンネント13が連結されており、各オッターボードペンネント13には、合流用シャックル14、スベル15、シャックル16およびラインロープ17が順次連結され、各ラインロープ17によってトロール網18が連結されている。
【0042】
そして、本実施形態では、トロール船11上において、一方のオッターボード21bの各フレーム2b,2bの各彎曲した板4を取外して各開口部3a,3bを開放した後、水中にトロール網18、ラインロープ17、オッターペンネント13、オッターボード21a,21b、およびワープ12を順に投網する。なお、前記各彎曲した板4を回動機構10により回動自在に取付けた場合には、トロール船11上において各彎曲した板4を回動させて各開口部3a,3bを開放させる。
【0043】
そして、トロール船11を進行させると、各オッターボード21a,21bが水流を受けてそれぞれ拡網力が生じる。このとき、本実施形態のオッターボード21a,21bは、オッターボード21bの各彎曲した板4が取り外され、オッターボード21bの拡網力がオッターボード21aの拡網力よりも小さくなるため、図7に示すように、各オッターボード21a,21bがオッターボード21a側へ偏向して拡網され、これに応じてトロール網18がトロール船11の航跡より離れる。
【0044】
このため、表層域において、トロール船11の通過やそれに伴う判流の影響により採集対象生物が逃避してしまうことを防止することができ、定量的なサンプリングを行うことができる。
【0045】
つぎに、本発明のオッターボードの第3実施形態について説明する。図8は本発明のオッターボードの第3実施形態を示す概略図、図9は図8のオッターボードを用いたトロール漁の実施形態を示した概略図、図10は図8のオッターボードを用いたトロール漁の作用を示した概略図である。なお、本第1実施形態および本第2実施形態と同様の構成である箇所については同一の符号をもって説明する。
【0046】
本第1実施形態のオッターボード31a,31bは単板型であり、図8に示すように、それぞれ金属製もしくは強化プラスチック製の凹入した内面を有する翼板32a,32bに形成されている。
【0047】
前記各翼板32a,332bの内面の鉛直方向における中央には、それぞれ内側に水平に張出したフランジ33が一体に形成されている。
【0048】
そして、本第3実施形態において、前記オッターボード31aのフランジ33には、ワープ12が連結される曳点となる1つの貫通孔34が穿設されている。
【0049】
また、前記オッターボード31bのフランジ33には、長手方向に間隔を隔てて2つの貫通孔35a,35bが穿設されており、これらの貫通孔35a,35bにはそれぞれチェーンなどの索具36が連結されるとともに、これら索具36の他端部が連結され、ワープ12が連結される曳点となっている。
【0050】
また、前記各翼板32a,32bの外面の鉛直方向における上縁部近傍および下縁部近傍には、それぞれ外側に水平に張出したフランジ37がそれぞれ一体に形成されている。
【0051】
そして、前記各オッターボード31a,31bの各フランジ37には、オッターペンネント13が連結される貫通孔38がそれぞれ穿設されている。
【0052】
さらに、前記各翼板32a,32bの下縁には、それぞれ踏部材39が設けられており、その前端は上方に彎曲されている。
【0053】
つぎに、前述した構成からなる本第3実施形態のオッターボード31a,31bを用いたトロール漁法について説明する。
【0054】
本第3実施形態のオッターボード31a,31bは、図9に示すように、トロール船11上から繰り出された左右2本のワープ12の先端で、それぞれ貫通孔34もしくは索具36において連結されている。
【0055】
そして、各オッターボード31a,31bには、各オッターボード31a,31bの各フランジ37に穿設された貫通孔38からそれぞれオッターペンネント13が連結されており、各オッターペンネント13には、合流用シャックル14、スイベル15、シャックル16およびラインロープ17が順次連結され、各ラインロープ17によってトロール網18が連結されている。
【0056】
そして、トロール船11上から水中にトロール網18、ラインロープ17、オッターペンネント13、オッターボード31a,31bおよびワープ12を順に投網し、トロール船11を進行させると、各オッターボード31a,31bが水流を受けてそれぞれ拡網力が生じる。
【0057】
そして、本第3実施形態のオッターボード31a,31bは、オッターボード31bが索具36を介してワープ12に連結されているため、オッターボード31bの拡網力がオッターボード31aの拡網力よりも小さくなり、図10に示すように、各オッターボード31a,31bがオッターボード31a側へ偏向して拡網され、これに応じてトロール網18がトロール船11の航跡より離れる。
【0058】
このため、表層域において、トロール船11の通過やそれに伴う判流の影響により採集対象生物が逃避してしまうことを防止することができ、定量的なサンプリングを行うことができる。
【0059】
つぎに、本発明のオッターボードの第4実施形態について説明する。図11は本発明のオッターボードの第4実施形態を示す概略図、図12は図11のオッターボードを用いたトロール漁の実施形態を示した概略図、図13は図11のオッターボードを用いたトロール漁の作用を示した概略図である。なお、本第1実施形態乃至本第3実施形態と同様の構成である箇所については同一の符号をもって説明する。
【0060】
本第4実施形態のオッターボード41a,41bは複葉型であり、図11に示すように、それぞれ金属製もしくは強化プラスチック製の凹入した内面を有した翼板32a,32bがそれぞれ平行に配置されている。
【0061】
対向する前記各翼板32a,32aあるいは前記各翼板32b,32bは、それぞれ上縁部近傍において略四角形状の枠状の連結部材22、鉛直方向における中央において水平ボード23、そして、下縁部において踏部材24によって連結されている。なお、前記各踏部材24の前端は上方に彎曲されている。
【0062】
前記オッターボード41aの水平ボード23には、前縁部近傍にワープ11が連結される曳点となる1つの貫通孔25aが穿設されているとともに、後縁部近傍にそれぞれオッターペンネント13が連結される貫通孔25b,25cが一定の間隔を隔てて穿設されている。
【0063】
また、前記オッターボード41bの水平ボード23には、前縁部近傍に一定の間隔を隔てて2つの貫通孔45a,45bが穿設されている。これら貫通孔45a,45bにはそれぞれチェーンなどの索具36が連結され、これら索具36の他端部が連結され、ワープ12が連結される曳点となっている。
【0064】
さらに、前記オッターボード41bの水平ボード23には、後縁部近傍にそれぞれオッターペンネント13が連結される貫通孔45c,45dが一定の間隔を隔てて穿設されている。
【0065】
つぎに、前述した構成からなる本第4実施形態のオッターボード41a,41bを用いたトロール漁法について説明する。
【0066】
本第4実施形態のオッターボード41a,41bは、図12に示すように、トロール船11上から繰り出された左右2本のワープ12の先端で、それぞれ貫通孔25aもしくは索具36において連結されている。
【0067】
そして、各オッターボード41a,41bには、各水平ボード23に穿設された貫通孔25b,25cもしくは貫通孔45c,45dからそれぞれオッターペンネント13が連結されており、各オッターペンネント13の下流には、合流用シャックル14、スイベル15、シャックル16およびラインロープ17が順次連結され、各ラインロープ17の下流にはトロール網18が連結されている。
【0068】
そして、トロール船11上から水中にトロール網18、ラインロープ17、オッターペンネント13、オッターボード41a,41bおよびワープ12を順に投網し、トロール船11を進行させると、各オッターボード41a,41bが水流を受けてそれぞれ拡網力が生じる。
【0069】
そして、本第4実施形態のオッターボード41a,41bは、オッターボード41bが索具36を介してワープ12に連結されているため、オッターボード41bの拡網力がオッターボード41aの拡網力よりも小さくなり、図13に示すように、各オッターボード41a,41bがオッターボード41a側へ偏向して拡網され、これに応じてトロール網18がトロール船11の航跡より離れる。
【0070】
このため、表層域において、トロール船11の通過やそれに伴う判流の影響により採集対象生物が逃避してしまうことを防止することができ、定量的なサンプリングを行うことができる。
【0071】
つぎに、本発明のオッターボードの第5実施形態について説明する。図14は本発明のオッターボードの第5実施形態を示す概略図、図15は図14のオッターボードを用いたトロール漁の実施形態を示した概略図、図16は図14のオッターボードを用いたトロール漁の作用を示した概略図である。なお、本第1実施形態乃至本第4実施形態と同様の構成である箇所については同一の符号をもって説明する。
【0072】
本第5実施形態のオッターボード51a,51bは単板型であり、図14に示すように、それぞれ金属製もしくは強化プラスチック製の凹入した内面を有し、開口部3a,3bが形成された略「日」字形状のフレーム2a,2bを有している。
【0073】
前記各フレーム2a,2bの開口部3a,3bには、金属製もしくは強化プラスチック製の彎曲した板4がそれぞれボルト等の留め具(図示せず)により着脱可能に取付けられている。
【0074】
また、前記各フレーム2a,2bの内面の鉛直方向における中央には、それぞれ内側に平行に張出したフランジ5が一体に形成されている。
【0075】
そして、本第5実施形態において、前記オッターボード51aのフランジ5には、ワープ12が連結される曳点となる1つの貫通孔6が穿設されている。
【0076】
また、前記オッターボード51bのフランジ5には、長手方向に間隔を隔てて2つの貫通孔52a,52bが穿設されており、これらの貫通孔52a,52bにはそれぞれチェーンなどの索具36が連結されるとともに、これら索具36の他端部が連結され、ワープ12が連結される曳点となっている。
【0077】
また、前記各フレーム2a,2bの外面の鉛直方向における上縁部近傍および下縁部近傍には、それぞれ外側に張出したフランジ7がそれぞれ一体に形成されており、各フランジ7には、オッターペンネント13が連結される貫通孔8がそれぞれ穿設されている。
【0078】
さらに、前記各フレーム2a,2bの下縁には、それぞれ踏部材9が設けられており、その前端は上方に彎曲されている。
【0079】
つぎに、前述した構成からなる本第5実施形態のオッターボード51a,51bを用いたトロール漁法について説明する。
【0080】
本第5実施形態のオッターボード51a,51bは、図15に示すように、トロール船11上から繰り出された左右2本のワープ12の先端で、それぞれ貫通孔6もしくは索具36において連結されている。
【0081】
そして、各オッターボード51a,51bの下流には、各オッターボード51a,51bの各フランジ7に穿設された貫通孔8からそれぞれオッターペンネント13が連結されており、各オッターペンネント13には、合流用シャックル14、スイベル15、シャックル16およびラインロープ17が順次連結され、各ラインロープ17によってトロール網18が連結されている。
【0082】
そして、本実施形態では、トロール船11上において一方のオッターボード51bの各彎曲した板4を取外して各開口部3a,3bを開放した後、水中にトロール網18、ラインロープ17、オッターペンネント13、オッターボード51a,51bおよびワープ12を順に投網する。
【0083】
そして、トロール船11を進行させると、各オッターボード51a,51bが水流を受けてそれぞれ拡網力が生じる。このとき、本第5実施形態のオッターボード51a,51bは、オッターボード51bの各彎曲した板4が取り外されるとともに、オッターボード51bが索具36を介してワープ12に連結されているため、オッターボード51bの拡網力がオッターボード51aの拡網力よりも小さくなるため、図16に示すように、各オッターボード51a,51bがオッターボード51a側へ偏向して拡網され、これに応じてトロール網18がトロール船11の航跡より離れる。
【0084】
このため、表層域において、トロール船11の通過やそれに伴う判流の影響により採集対象生物が逃避してしまうことを防止することができ、定量的なサンプリングを行うことができる。
【0085】
つぎに、本発明のオッターボードの第6実施形態について説明する。図17は本発明のオッターボードの第6実施形態を示す概略図、図18は図17のオッターボードを用いたトロール漁の実施形態を示した概略図、図19は図17のオッターボードを用いたトロール漁の作用を示した概略図である。なお、本第1実施形態乃至本第5実施形態と同様の構成である箇所については同一の符号をもって説明する。
【0086】
本第6実施形態のオッターボード61a,61bは複葉型であり、図17に示すように、それぞれ金属製もしくは強化プラスチック製の凹入した内面を有し、開口部3a,3bが形成された略「日」字形状のフレーム2が平行に配置されている。
【0087】
前記各フレーム2の開口部3a,3bには、金属製もしくは強化プラスチック製の彎曲した板4がそれぞれボルト等の留め具により着脱可能に取付けられている。
【0088】
対向する前記各フレーム2は、それぞれ上縁部近傍において略四角形状の枠状の連結部材22、鉛直方向における中央において水平ボード23、下縁部において踏部材24によって連結されている。なお、前記各踏部材24の前端は上方に彎曲されている。
【0089】
前記オッターボード61aの水平ボード23には、前縁部近傍にワープ11が連結される曳点となる貫通孔25aが穿設されているとともに、後縁部近傍にそれぞれオッターペンネント13が連結される貫通孔25b,25cが一定の間隔を隔てて穿設されている。
【0090】
また、前記オッターボード61bの水平ボード23には、前縁部近傍に一定の間隔を隔てて2つの貫通孔62a,61bが穿設されている。これらの貫通孔62a,62bにはそれぞれチェーンなどの索具36が連結され、これら索具36の他端部が連結され、ワープ12が連結される曳点となっている。
【0091】
さらに、前記オッターボード61bの水平ボード23には、後縁部近傍にそれぞれオッターペンネント13が連結される貫通孔62c,62dが一定の間隔を隔てて穿設されている。
【0092】
つぎに、前述した構成からなる本第6実施形態のオッターボード61a,61bを用いたトロール漁法について説明する。
【0093】
本第6実施形態のオッターボード61a,61bは、図18に示すように、トロール船11上から繰り出された左右2本のワープ12の先端で、それぞれ貫通孔25aもしくは索具36において連結されている。
【0094】
そして、各オッターボード61a,61bには、各水平ボード23に穿設された貫通孔25b,25cもしくは貫通孔62c,62dからそれぞれオッターペンネント13が連結されており、各オッターペンネント13には、合流用シャックル14、スイベル15、シャックル16およびラインロープ17が順次連結され、各ラインロープ17によってトロール網18が連結されている。
【0095】
そして、本実施形態では、トロール船11上において一方のオッターボード61bの各彎曲した板4を取外して各開口部3a,3bを開放した後、水中にトロール網18、ラインロープ17、オッターペンネント13、オッターボード61a,61bおよびワープ12を順に投網する。
【0096】
そして、トロール船11を進行させると、各オッターボード61a,61bが水流を受けてそれぞれ拡網力が生じる。このとき、本第6実施形態のオッターボード61a,61bは、オッターボード61bの各彎曲した板4が取外されるとともに、オッターボード61bが索具36を介してワープ12に連結されているため、オッターボード61bの拡網力がオッターボード61aの拡網力よりも小さくなるため、図19に示すように、各オッターボード61a,61bがオッターボード61a側へ偏向して拡網され、これに応じてトロール網18がトロール船11の航跡より離れる。
【0097】
このため、表層域において、トロール船11の通過やそれに伴う判流の影響により採集対象生物が逃避してしまうことを防止することができ、定量的なサンプリングを行うことができる。
【0098】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、各実施形態において、一方のワープ12の長さを調節することにより、トロール網18をトロール船11の航跡から偏向させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明のオッターボードの第1実施形態を示す概略図
【図2】本第1実施形態のフレームの他の形態を示す概略図
【図3】図1のオッターボードを用いたトロール漁の実施形態を示した概略図
【図4】図1のオッターボードを用いたトロール漁の作用を示した概略図
【図5】本発明のオッターボードの第2実施形態を示す概略図
【図6】図5のオッターボードを用いたトロール漁の実施形態を示した概略図
【図7】図5のオッターボードを用いたトロール漁の作用を示した概略図
【図8】本発明のオッターボードの第3実施形態を示す概略図
【図9】図8のオッターボードを用いたトロール漁の実施形態を示した概略図
【図10】図8のオッターボードを用いたトロール漁の作用を示した概略図
【図11】本発明のオッターボードの第4実施形態を示す概略図
【図12】図11のオッターボードを用いたトロール漁の実施形態を示した概略図
【図13】図11のオッターボードを用いたトロール漁の作用を示した概略図
【図14】本発明のオッターボードの第5実施形態を示す概略図
【図15】図14のオッターボードを用いたトロール漁の実施形態を示した概略図
【図16】図14のオッターボードを用いたトロール漁の作用を示した概略図
【図17】本発明のオッターボードの第6実施形態を示す概略図
【図18】図17のオッターボードを用いたトロール漁の実施形態を示した概略図
【図19】図17のオッターボードを用いたトロール漁の作用を示した概略図
【符号の説明】
【0100】
1a,1b オッターボード
2a,2b フレーム
3a,3b 開口部
4 彎曲した板
5 フランジ
6 貫通孔
7 フランジ
8 貫通孔
9 踏部材
10 回動機構
11 トロール船
12 ワープ
13 オッターペンネント
18 トロール網
21a,21b オッターボード
22 連結部材
23 水平ボード
24 踏部材
25a.25b.25c 貫通孔
31a,31b オッターボード
32a,32b 翼板
33 フランジ
34 貫通孔
35a,35b 貫通孔
36 索具
37 フランジ
38 貫通孔
39 踏部材
41a,41b オッターボード
45a,45b,45c,45d 貫通孔
51a,51b オッターボード
61a,61b オッターボード
62a,62b,62c,62d 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のオッターボードを用いてトロール網の網口を広げて曳網するトロール漁法において、
前記各オッターボードの拡網力の絶対値をそれぞれ異ならせて、前記トロール網をトロール船の航跡から離して曳網させることを特徴とするトロール漁法。
【請求項2】
トロール船上から繰り出される2本のワープの先端を、前記各ワープを前記トロール船の進行方向に対してそれぞれ外方に偏向するようにオッターボードに取付けられるとともに、それぞれのオッターボードに連結されたオッターペンネントを介してトロール網が展開するように配設された一対のオッターボードにおいて、
ワープの取付け位置を変えることによって、前記各オッターボードの拡網力の絶対値をそれぞれ異ならせたことを特徴とするオッターボード。
【請求項3】
前記一対のオッターボードにおいて、それぞれ少なくとも1つの開口部が形成され、凹入した内面を有するフレームと、前記開口部に配設される彎曲した板とからなる単板型のオッターボードであって、少なくとも一方のオッターボードの彎曲した板を開閉自在に配設したことを特徴とする請求項2に記載のオッターボード。
【請求項4】
前記一対のオッターボードにおいて、それぞれ少なくとも1つの開口部が形成され、凹入した内面を有する一対のフレームを対向させて連結し、前記各開口部に彎曲した板を配設してなる複葉型のオッターボードであって、少なくとも一方のオッターボードの彎曲した板を開閉自在に配設したことを特徴とする請求項2に記載のオッターボード。
【請求項5】
前記一対のオッターボードのうち一方のオッターボードとワープとの間に索具を連結させたことを特徴とする請求項2乃至請求項4に記載のオッターボード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2007−244215(P2007−244215A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68129(P2006−68129)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(501168814)独立行政法人水産総合研究センター (103)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】