説明

トンネル内ガス処理設備

【課題】従来よりも二酸化窒素吸収剤の長寿命化を図ることができるトンネル内ガス処理設備を提供する。
【解決手段】トンネルの内部と外部とを連絡して当該トンネル内のガス1を外部へ流通させるダクト11と、ダクト11内に配設された電気集塵器12と、ダクト11内の電気集塵器12よりもガス1の流通方向下流側に配設された二酸化窒素吸収剤13と、ダクト11内の電気集塵器12と二酸化窒素吸収剤13との間に配設されて粒径20μm未満の粒子のみを捕集可能な通気性を有する細目フィルタ15と、ダクト11内の細目フィルタ15と電気集塵器12との間に配設されて粒径20μm以上の粒子を捕集可能な通気性を有する粗目フィルタ14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等が通過するトンネル内のガスを処理するトンネル内ガス処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等が通過するトンネル内には、自動車等からの排ガスが滞留しやすいため、トンネル内のガスをトンネル外へ処理しながら換気するトンネル内ガス処理設備が設けられている。このようなトンネル内ガス処理設備としては、例えば、下記特許文献1等に記載されているように、トンネル内のガスに対して、電気集塵器で浮遊粒子状物質(SPM)を除去してから、二酸化窒素吸収剤で二酸化窒素を吸収除去した後、各種後処理をしてトンネル外へ排気するものが知られている。
【0003】
このような従来のトンネル内ガス処理設備においては、二酸化窒素吸収剤が二酸化窒素を吸収して除去することから、トンネル内のガスを処理していくにしたがって、二酸化窒素吸収剤の二酸化窒素吸収能力が徐々に低下するため、所定時間運転ごとに二酸化窒素吸収剤を交換するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−240973号公報
【特許文献2】特開平5−123533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前述したような従来のトンネル内ガス処理設備においては、上記二酸化窒素吸収剤の実際の二酸化窒素吸収能力が、理論上の二酸化窒素吸収能力よりもかなり低くなって、上記二酸化窒素吸収剤の寿命が短くなってしまっていた。
【0006】
このため、本発明者らが鋭意研究したところ、ガス中のオイルミスト(粒径:約20μm程度)等の粒子が電気集塵器ですべて除去されず(除去率:約80%)、当該電気集塵器を通過した当該粒子が二酸化窒素吸収剤の表面を次第に被覆して、二酸化窒素吸収剤の二酸化窒素吸収能力を徐々に阻害していることが判明した。
【0007】
そこで、前記電気集塵器の集塵能力を高めるように当該電気集塵器の印加電圧を大きくして、上記粒子の除去率を高めることが考えられるが、電気集塵器の印加電圧を大きくしてしまうと、オゾンが多く発生して、ガス中の一酸化窒素を酸化させて二酸化窒素にしてしまい、上記二酸化窒素吸収剤で吸収除去する二酸化窒素量が増加して、結局、二酸化窒素吸収剤の寿命が従来と大きく変わらなくなってしまう。
【0008】
このようなことから、本発明は、従来よりも二酸化窒素吸収剤の長寿命化を図ることができるトンネル内ガス処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための、本発明に係るトンネル内ガス処理設備は、トンネルの内部と外部とを連絡して当該トンネル内のガスを外部へ流通させるダクトと、前記ダクト内に配設された電気集塵器と、前記ダクト内の前記電気集塵器よりも前記ガスの流通方向下流側に配設された二酸化窒素吸収剤と、前記ダクト内の前記電気集塵器と前記二酸化窒素吸収剤との間に配設されて粒径20μm未満の粒子のみを捕集可能な通気性を有する細目フィルタと、前記ダクト内の前記細目フィルタと前記電気集塵器との間に配設されて粒径20μm以上の粒子を捕集可能な通気性を有する粗目フィルタと備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るトンネル内ガス処理設備は、上述したトンネル内ガス処理設備において、前記細目フィルタが、粒径10μm以上の粒子のみを捕集可能なものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るトンネル内ガス処理設備によれば、電気集塵器で除去されずに通過したオイルミスト等の粒子を前記フィルタで除去することができるので、電気集塵器の印加電圧を大きくすることなく、二酸化窒素吸収剤の表面が上記粒子で被覆されてしまうことを著しく抑制することができ、従来よりも二酸化窒素吸収剤の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るトンネル内ガス処理設備の主な実施形態の要部の概略構成図である。
【図2】本発明に係るトンネル内ガス処理設備の効果を確認するために行った試験における実施例及び比較例の運転時間に対する二酸化窒素除去率を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るトンネル内ガス処理設備の実施形態を図面に基づいて以下に説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0014】
[主な実施形態]
本発明に係るトンネル内ガス処理設備の主な実施形態を図1に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、自動車等が通過するトンネルの内部と外部とを連絡するダクト11内には、ガス1中の浮遊粒子状物質(SPM)を除去する電気集塵器12が配設されている。このダクト11内の前記電気集塵器12よりもガス1の流通方向下流側には、ガス1中の二酸化窒素を吸収除去する二酸化窒素吸収剤13が配設されている。この二酸化窒素吸収剤13は、活性炭等を主原料としたハニカム形の担体に、水酸化カリウム等のアルカリを水溶液にして含浸させて乾燥することにより担持させたものであり、二酸化窒素を水酸化カリウム等のアルカリに反応させて硝酸カリウム等にすることにより、吸収除去するようにしたものである。
【0016】
前記ダクト11内の前記電気集塵器12と前記二酸化窒素吸収剤13との間には、粒径20μm未満(好ましくはさらに粒径10μm以上)の粒子のみを捕集可能な通気性を有する不織布からなる細目フィルタ15が配設されている。上記ダクト11内の上記細目フィルタ15と上記電気集塵器12との間には、粒径20μm以上の粒子を捕集可能な通気性を有する不織布からなる粗目フィルタ14が配設されている。
【0017】
このような本実施形態に係るトンネル内ガス処理設備において、トンネル内のガス1が前記ダクト11内を流通すると、前記電気集塵器12が当該ガス1中のSPMを除去する。このとき、上記ガス1中のオイルミスト(粒径:約20μm程度)等の粒子の一部(約20%)が除去されずに当該電気集塵器12を通過してしまうものの、前記粗目フィルタ14及び前記細目フィルタ15で捕集される。そして、上記ガス1は、前記二酸化窒素吸収剤13で二酸化窒素が吸収除去された後、各種後処理をされてからトンネル外へ排気される。
【0018】
つまり、本実施形態に係るトンネル内ガス処理設備においては、電気集塵器12で除去されずに通過した上記粒子を前記フィルタ14,15で捕集するようにしたのである。
【0019】
このため、本実施形態に係るトンネル内ガス処理設備では、電気集塵器12の印加電圧を大きくすることなく、二酸化窒素吸収剤13の表面が上記粒子で被覆されてしまうことを著しく抑制することができる。
【0020】
したがって、本実施形態に係るトンネル内ガス処理設備によれば、従来よりも二酸化窒素吸収剤13の長寿命化を図ることができる。
【0021】
また、前記電気集塵器12で除去されずに通過したオイルミスト(粒径:約20μm程度)等の上記粒子を前記粗目フィルタ14で捕集してから前記細目フィルタ15で捕集するようにしたので、当該細目フィルタ15が早期に目詰まりしてしまうことを大きく抑制することができ、上記二酸化窒素吸収剤13の交換寿命の延長化と併せて当該フィルタ14,15の定期点検間隔や交換寿命を延長することができる。
【0022】
なお、前記フィルタ14,15の厚さは、前記ガス1に対する圧力損失等を考慮して適宜決定される値であるが、50mm以下であると好ましく、特に、粗目フィルタ14は厚さが40mm以下であるとさらに好ましく、細目フィルタ15は厚さが20mm以下であるとさらに好ましい。
【0023】
また、本実施形態においては、前記フィルタ14,15をそれぞれ一枚ずつ設けた場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、前記フィルタ14,15を前記ガス1の流通方向に沿ってそれぞれ複数枚ずつ設けることも可能である。この場合、例えば、保守点検管理のときに、前記ガス1の流通方向最上流側にそれぞれ位置する各上記フィルタ14,15を流通方向最下流側にそれぞれ移設し、最上流側に位置していた各上記フィルタ14,15に隣り合うようにそれぞれ配設されていた前記フィルタ14,15を最上流側に位置させるようにそれぞれ移設し、以下、前記フィルタ14,15を前記ガス1の流通方向上流側に順次移設するようにローテーション配設すれば、上記フィルタ14,15を無駄なく利用することができる。なお、上記フィルタ14,15の枚数は、前記ガス1に対する圧力損失等を考慮してその厚さと併せて適宜選定する。
【0024】
ここで、本発明に係るトンネル内ガス処理設備の効果を確認するために行った試験結果(実施例)を図2に示す。また、比較のため、従来のトンネル内ガス処理設備、すなわち、粗目フィルタ及び細目フィルタがない場合の試験結果(比較例)も併せて図2に示す。なお、試験条件は、下記の通りである。
【0025】
〈ガス〉
・組成−CO2 :ベース
NO :1.5〜2.0ppm
NO2 :1.5〜2.0ppm
粒子 :0.5〜4.0mg/m3(電気集塵器入口)
・全ガス量:860Nm3/h
・GHSV:15000h-1
・温度:30±5℃
・湿度:70±20%
【0026】
〈粗目フィルタ〉
・捕集可能粒径:20μm以上
・厚さ:40mm
【0027】
〈細目フィルタ〉
・捕集可能粒径:10μm以上
・厚さ:20mm
【0028】
図2からわかるように、比較例では、二酸化窒素除去剤による二酸化窒素除去率が、1000時間を越えたあたりから徐々に低下し始め、2000時間を越えたあたりから急激に低下し、3000時間では90%以下となってしまった。これに対し、実施例においては、二酸化窒素除去剤による二酸化窒素除去率が、2000時間を越えたあたりから徐々に低下し始めるものの、5000時間を越えても90%以上の性能を維持することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係るトンネル内ガス処理設備は、従来よりも二酸化窒素吸収剤の長寿命化を図ることができるので、産業上、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ガス
11 ダクト
12 電気集塵器
13 二酸化窒素吸収剤
14 粗目フィルタ
15 細目フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内部と外部とを連絡して当該トンネル内のガスを外部へ流通させるダクトと、
前記ダクト内に配設された電気集塵器と、
前記ダクト内の前記電気集塵器よりも前記ガスの流通方向下流側に配設された二酸化窒素吸収剤と、
前記ダクト内の前記電気集塵器と前記二酸化窒素吸収剤との間に配設されて粒径20μm未満の粒子のみを捕集可能な通気性を有する細目フィルタと、
前記ダクト内の前記細目フィルタと前記電気集塵器との間に配設されて粒径20μm以上の粒子を捕集可能な通気性を有する粗目フィルタと
を備えていることを特徴とするトンネル内ガス処理設備。
【請求項2】
請求項1に記載のトンネル内ガス処理設備において、
前記細目フィルタが、粒径10μm以上の粒子のみを捕集可能なものである
ことを特徴とするトンネル内ガス処理設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−24688(P2012−24688A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165478(P2010−165478)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(309036221)三菱重工メカトロシステムズ株式会社 (57)
【Fターム(参考)】