説明

トンネル壁面へのプレート部材の取付構造

【課題】トンネルの壁面に、タイルを安価にかつ確実に、更に重量バランスの不均衡や振動等に起因して、その設置面内で傾いたり、水平方向に傾いたりしない支持を確保する。
【解決手段】トンネル壁面Wに縦横に配する四辺形の複数のタイル1、1…と、その各々を支持する支持金具2a、2a…と、これに配するタイル1下部支持用の二つの下部受け金具3、3及びタイル1上部支持用の二つの上部受け金具4、4とで構成する。支持金具2aはアンカーボルト5aで壁面Wに取り付けるための取付板部61及び連結板部よりなる取付金具と、連結板部に不陸調整自在に結合する水平延長板及び結合板72よりなる主受け部材と、結合板72に配する受け金具用係止片8とで構成する。受け金具用係止片8は、左右対称の下部受け金具3、3及び上部受け金具4、4を係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの壁面にタイル等のプレート部材を支持手段を介して取り付けるトンネル壁面へのプレート部材の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイル等のプレート部材のトンネル壁面への取付構造には、単体のタイル等のプレート部材をモルタル等の接着剤を介して該壁面に直接に取り付ける取付構造と、複数のタイル等のプレート部材をモルタル等の基板の表面に接着接合して構成したパネルを取付金具等の支持手段を介して壁面に取り付ける取付構造とがある。
【0003】
前者は、単体のタイル等のプレート部材を壁面にモルタル等の接着剤を介して直接に取り付けるのものであり、能率も良くないが、接着剤の劣化により、いずれそれらが剥落する恐れがある。トンネル内でのタイル等の剥落は大事故を起こす恐れもあり、できる限り避けなければならない。その意味で、現時点では採用しがたい取付構造である。
【0004】
後者に関しては特許文献1のパネル取付工法が提案されている。
この工法では、複数のタイルを鉄板や繊維セメント板等によって作成された基板に接着剤で接着したパネルを取付金具を介してトンネル内壁面に取り付けるものである。取付金具は、パネルの四隅に配される。パネルはその基板とタイルの間に四隅で切欠溝が形成してある。取付金具には、螺子とスリーブからなるアンカーが配してあり、これでトンネル壁面に固定するようになっている。また該取付金具には、該アンカーに固定される金属片が取り付けてあり、この金属片は、上向きの二つの条片と称する爪片と、その両側に位置する各々下向きの二つの条片と称する爪片が構成してある。上向きの二つの条片の内の一つは、前記パネルの下部に位置する基板とタイルの間の切欠溝に装入され、このとき他の上向きの条片は該基板を抱えるべく背後に接する状態になる。また下向きの二対の条片の内の各一方の条片は、前記パネルの上部に位置する基板とタイルの間の切欠溝に装入され、このとき他の各他方の下向きの条片は該基板を抱えるべく背後に接する状態になる。
【0005】
特許文献1のパネル取付工法で取り付けられたパネルの取付構造は、以上の通りであり、多数のタイルを一度に取り付けることができるので、非常に作業効率はよいが、タイルは、鉄板や繊維セメント板等の基板に接着剤で接着接合したものであるため、接着剤の劣化による剥落の恐れがある。トンネル内の環境は劣悪であるため、比較的短期間で接着剤が劣化する恐れがあり、また接着剤の劣化は、タイルの剥離落下を招き、更に前記したように、タイルの落下は大事故を招く恐れがある。それ故、このような基板に接着剤によってタイルを接合して構成したパネルを使用する技術は採用すべきでないと考える。
【0006】
特許文献2は、背面に断熱性耐火物を配した大型のタイルのトンネル壁面への取付構造に関するものである。このタイルは、タイル本体と断熱性耐火物とを、後者の内部に配した金属製の固定手段と金属の固定片とを介して結合するものである。更にこのタイルのトンネル内壁に固設したベース金具への結合も、前記金属の固定手段及び固定片並びに他の介在用金属片を介して行うものである。
【0007】
それ故、この特許文献2の大型タイルのトンネル壁面への取付構造は、以上のように、タイル本体の背面に断熱性耐火物を配したものでありながら、相互の接合固定は接着剤を用いて行うものではないので、該接着剤の劣化によるタイルの剥落の恐れのない優れたものであると云うことができる。またタイルを確実に内壁面に保持できるものでもある。しかし、この特許文献2の大型タイルのトンネル壁面への取付構造は、タイル本体の背後に耐火物を備えた高価なものの取付構造であり、必ずしもそのような耐火物を必要としない場合には適当ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−299144号公報
【特許文献2】特開2009−161970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、トンネルの壁面に、安価に、かつ剥落の容易に生じないタイル等のプレート部材の取り付けを実現できるトンネル壁面へのプレート部材の取付構造を提供することを解決の課題とする。加えてプレート部材が、その重量バランスの不均衡や振動等に起因して、その設置面内で傾くような回転動作の生じないような支持、及び該設置面に交差する水平面内で傾く回転動作の生じないような支持を確保できるトンネル壁面へのプレート部材の取付構造を提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1は、トンネルの内壁面に縦横に配する正面から見て四辺形の複数のプレート部材と、
前記複数のプレート部材の各々の周囲に生じる目地部中の各交点状部に配する支持手段と、
前記支持手段に配する、その両側上方のプレート部材の下部角部を受ける下部受け部材及びその両側下方のプレート部材の上部角部を受ける上部受け部材と、
で構成したトンネル壁面へのプレート部材の取付構造である。
【0011】
本発明の2は、本発明の1のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造において、
前記支持手段を、
壁面にボルト類又はビス類を用いて取り付けるための取付板部及び該取付板部から水平前方に延長する連結板部よりなる取付手段と、
前記取付手段の連結板部に不陸調整自在に結合する水平延長板及びその前端に立ち下がる結合板よりなる主受け部材と、
前記主受け部材の結合板に配した前記下部受け部材及び前記上部受け部材を係止する受け部材用係止片と、
で構成したものである。
【0012】
本発明の3は、本発明の1のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造において、
前記支持手段を、
壁面に複数のボルト類又はビス類を用いて取り付けるための取付板部及びその両側から各々前方に折曲して構成した回転止め片からなる取付手段と、
前記取付手段の取付板部の前面に接合し、該取付板部を取り付けるための複数のボルト類又はビス類の内の一以上のボルト類又はビス類を利用して、該取付板部を介して、該取付板部と共に該壁面に固定する連結板及び該連結板に構成した前記下部受け部材及び前記上部受け部材を係止する受け部材係止部と、
で構成したものである。
【0013】
本発明の4は、本発明の3のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造において、
前記受け部材係止部を、
前記連結板の上端から前方に張り出して立ち上げた前記下部受け部材を係止するための板状の上段側係止部、及び該連結板の下端から前方に張り出して立ち上げた前記上部受け部材を係止するための板状の下段側係止部で構成し、
前記受け部材係止部に、前記下段側係止部に係止した前記上部受け部材の浮上を防止すべく、該上部受け部材の上部と該受け部材係止部の上段側係止部との間に装入する弾性介在物を付設したものである。
【0014】
本発明の5は、請求項2のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造において、
前記取付板部の両側に後方に向けて折曲した回転止め縁を構成したものである。
【0015】
本発明の6は、請求項2又は5のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造において、
前記受け部材用係止片を、
前記結合板に接合固定する固定板と、
前記固定板の上端から前方に張り出して立ち上げた前記下部受け部材を係止するための板状の上段側係止部、及び下端から前方に張り出して立ち上げた前記上部受け部材を係止するための板状の下段側係止部と、
前記上段側係止部の両側及び前記下段側係止部の両側にそれぞれ設けた下部受け部材又は上部受け部材の外れ防止片と、
で構成し、
前記受け部材用係止片に、前記下段側係止部に係止した前記上部受け部材の浮上を防止すべく、該上部受け部材の上部と該受け部材用係止片の上段側係止部との間に装入する弾性介在物を付設したものである。
【0016】
本発明の7は、本発明の4又は6のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造において 前記下部受け部材を、板状の受け部材基部と、その一側から背後方向に屈曲した係合板であって、前記上段側係止部に外装係止する下部に開く係合溝を備えた係合板と、該受け部材基部の下端から前方に延長しその先端で抱え片を立ち上げてなる受け部とで構成し、 前記上部受け部材を、板状の受け部材基部と、その一側の上部側から背後方向に屈曲した係合板であって、前記下段側係止部に外装係止する下部に開く係合溝を備えた係合板と、該受け部材基部の上端から前方に延長しその先端で抱え片を立ち下げてなる受け部とで構成したものである。
【0017】
本発明の8は、本発明の2、5又は6のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造において、
前記連結板部を、板部本体と、その両側から垂下する側板部と、該板部本体の中央付近に形成した下方に突出する雌ねじ部とで構成し、前記主受け部材の水平延長板を、延長板本体と、その両側から垂下する側板部と、該延長板本体の中央付近に長さ方向に沿って開口した長孔であって、該延長板本体を前記板部本体に接合した際に、ボルト部材を、これを通じて貫通させかつ前記雌ねじ部に螺合して、該延長板本体を該板部本体に結合固定可能にするための長孔とで構成したものである。
【0018】
本発明の9は、本発明の3のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造において、
前記受け部材係止部を、
前記連結板の上端から前方に張り出して立ち上げた前記下部受け部材を係止するための板状の上段側係止部、及び該連結板の下端から前方に張り出して立ち上げた前記上部受け部材を係止するための板状の下段側係止部で構成し、
前記受け部材係止部に、前記下段側係止部に係止した前記上部受け部材の浮上を防止すべく、該上部受け部材の上部を抑える抑え片と、該抑え片を備えた固定片であって、トンネル壁面に固設した部材に取付可能な固定片とからなる浮上防止部材を付設したものである。
【0019】
本発明の10は、本発明の3のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造において、
前記受け部材係止部を、
前記連結板の上端から前方に張り出して立ち上げた前記下部受け部材を係止するための板状の上段側係止部、及び該連結板の下端から前方に張り出して立ち上げた前記上部受け部材を係止するための板状の下段側係止部で構成し、
前記受け部材係止部に、前記下段側係止部に係止した二つの前記上部受け部材の浮上を防止すべく、該二つの上部受け部材の上部のいずれかの部位を抑える抑え片と、該二つの上部受け部材の間に介在し、該二つの上部受け部材の間隔の縮小を防止する間隔保持部と、該抑え片及び該間隔保持部を配した固定片であって、トンネル壁面に固設した部材に取付可能な固定片とからなる浮上防止部材を付設したものである。
【0020】
本発明の11は、本発明の2又は5のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造において、
前記受け部材用係止片を、
前記結合板に接合固定する固定板と、
前記固定板の上端から前方に張り出して立ち上げた前記下部受け部材を係止するための板状の上段側係止部、及び下端から前方に張り出して立ち上げた前記上部受け部材を係止するための板状の下段側係止部と、
前記上段側係止部の両側及び前記下段側係止部の両側にそれぞれ設けた下部受け部材又は上部受け部材の外れ防止片と、
で構成し、
前記受け部材用係止片に、前記下段側係止部に係止した前記上部受け部材の浮上を防止すべく、該上部受け部材の上部を抑える抑え片と、該抑え片を備えた固定片であって、トンネル壁面に固設した部材に取付可能な固定片とからなる浮上防止部材を付設したものである。
【0021】
本発明の12は、本発明の2又は5のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造において、
前記受け部材用係止片を、
前記結合板に接合固定する固定板と、
前記固定板の上端から前方に張り出して立ち上げた前記下部受け部材を係止するための板状の上段側係止部、及び下端から前方に張り出して立ち上げた前記上部受け部材を係止するための板状の下段側係止部と、
前記上段側係止部の両側及び前記下段側係止部の両側にそれぞれ設けた下部受け部材又は上部受け部材の外れ防止片と、
で構成し、
前記受け部材用係止片に、前記下段側係止部に係止した二つの前記上部受け部材の浮上を防止すべく、該上部受け部材の上部のいずれかの部位を抑える抑え片と、該二つの上部受け部材の間に介在し、該二つの上部受け部材の間隔の縮小を防止する間隔保持部と、該抑え片及び該間隔保持部を配した固定片であって、トンネル壁面に固設した部材に取付可能な固定片とからなる浮上防止部材を付設したものである。
【発明の効果】
【0022】
したがって、本発明の1のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造によれば、トンネルの壁面に縦横に配する比較的大型のタイル等のプレート部材は、壁面に固定した支持手段によって確実に支持される。該プレート部材は、複数のそれを接着剤で接合した基板部材を介して取り付けるものではなく、直接に支持手段で壁面に取り付けるものであるため、接着剤の系時劣化による剥落の問題も生じない。それ故、長期間に渡り確実な取付を維持することができる。
【0023】
また前記支持手段は、前記のように、壁面に配されるプレート部材の周囲の目地部の内、交点状部に配して、その周囲のプレート部材の両側上方の下部角部及び両側下方の上部角部の全部又は一部を、下部受け部材及び上部受け部材の一方又は双方を介して支持するので、各プレート部材毎に、下部両角部及び上部両角部を支持する場合に比較して能率的(経済的)でありながら、確実な支持固定が可能である。少数の支持手段を用いつつ、プレート部材の重量バランスや振動等に起因する回転状態(一側部が下降し、他側部が上昇する回転状態)が生じる恐れを回避することができる。
【0024】
なお、支持手段を配する目地部の交点状部は、複数種あるが、最も多いのは、プレート部材を設置する領域の上下左右の縁部を除く領域に位置する十字状部である。この他には、該プレート部材を配する領域の両側の上下端に位置するL字状部、その上下反転状部、これら二つの左右反転状部、並びに、該プレート部材を配するそれ以外の上下左右の縁部に位置するT字状部部、その上下反転状部、T字状部の右90度回転状部、T字状部の左90度回転状部である。支持手段を配するのは、いずれもその文字状部中の交点に当たる部位である。
【0025】
以上の該当する目地部の内、プレート部材を配する領域の上下左右の縁部に位置する目地部は、該領域内部と異なり、プレート部材相互の間ではなく、縁部に位置するプレート部材と外部のこれと直交する他の壁面その他との間に位置する隙間である。
【0026】
以上の各交点状部中の十字状部に固定する支持手段は、当然、その位置の上方両側及び下方両側にプレート部材が位置しているので、対応する上方両側に下部受け部材を配し、対応する下方両側に上部受け部材を配して、上方二つのプレート部材の下部角部及び下方二つのプレート部材の上部角部を支持する。その他の各交状点部中のL字状部、T字状部及びそれらの反転字状部等の前記縁部に位置する交点状部については、それぞれ左上方及び両下方のプレート部材が位置していないとか、上方両側のプレート部材が位置していないとか等、該交点状部に位置する支持手段の上方両側及び下方両側に位置するはずのプレート部材のいずれかが位置しない場合があるので、その場合は、下部受け部材及び上部受け部材の内の該当する位置のそれを省略することができるのはいうまでもない。それらを支持手段に係止するための手段も同様である。
【0027】
本発明の2のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造によれば、前記支持手段を、壁面に取り付けるための取付手段と、該取付手段に取り付ける主受け部材と、該主受け部材の結合板に配した前記下部受け部材及び前記上部受け部材を係止する受け部材用係止片とで構成し、該主受け部材の水平延長板を該取付手段の連結板部に不陸調整自在に結合したため、該主受け部材は、取付手段に不陸調整自在となり、その結合板に配した受け部材用係止片の不陸を調整し、これに前記下部受け部材及び前記上部受け部材を介して支持されるタイル等のプレート部材の不陸を容易に調整することができる。
【0028】
本発明の3のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造によれば、取付対象のプレート部材を壁面との間に広い間隔を取らず取り付けることが可能であり、そのような必要のある場合に有効である。取付手段の取付板部は複数のボルト類又はビス類で壁面に固定されるため、回転する可能性はないが、その前面に取付られる連結板は、その複数のボルト類又はビス類の内の一つ以上を利用して、かつ該取付板部を介して壁面に取り付けられるものであり、更に該取付板部の両側部の回転止め片で回転が阻止される。それ故、連結板がボルト類又はビス類一個で固定されている場合でもその回転の可能性はなくなり、これ及び上部受け部材並びに下部受け部材を介して取り付けられるプレート部材の取り付けを安定したものとすることができる。なお、プレート部材の不陸の調整は、前記取付板部と前記連結板との間に一枚以上の不陸調整板を必要に応じて挿入することによって行うことができる。
【0029】
本発明の4のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造によれば、前記受け部材係止部の上段側係止部及び下段側係止部のそれぞれはいずれも単純な板材で構成されており、上部受け部材及び下部受け部材のいずれも簡単な構成でそれらに対する確実な取付を確保することができる。上段側係止部及び下段側係止部の両側には、前記取付手段の回転止め片が位置しているので、連結板の回転が阻止されると同時に、該上段側係止部及び該下段側係止部のそれぞれに係止する両側の下部受け部材及び両側の上部受け部材の側方への外れを防止することが可能となる。また下段側係止部に係止した上部受け部材の上部と該受け部材係止部の上段側係止部との間に弾性介在物を装入することとしたため、該上部受け部材の浮上を弾力的に防止することが可能となったものである。
【0030】
本発明の5のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造によれば、取付板部の両側に後方に向けて折曲した回転止め縁を構成したため、この取付板部を、その背面を壁面に接合した状態で、アンカーボルト等のボルト類又はコンクリートビス等のビス類を用いて該壁面に固定した場合に、該回転止め縁の作用により、支持手段が、プレート部材の重量バランスの不均衡等に起因して加わる不均衡な荷重で、該ボルト類又はビス類を中心として回転してしまうような問題を回避することができる。
【0031】
本発明の6のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造によれば、前記受け部材用係止片に構成した上段側係止部及び下段側係止部のそれぞれはいずれも単純な板材で構成されており、上部受け部材及び下部受け部材のいずれも簡単な構成でそれらに対する確実な取付を確保することができる。また上段側係止部及び下段側係止部の両側部には外れ防止片を配したため、それぞれに係止する両側の下部受け部材及び両側の上部受け部材の外れを確実に防止することが可能となる。また下段側係止部に係止した上部受け部材の上部と該受け部材用係止片の上段側係止部との間に弾性介在物を装入することとしたため、該上部受け部材の浮上を弾力的に防止することが可能となったものである。
【0032】
本発明の7のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造によれば、下部受け部材及び上部受け部材のいずれも下部に開く係合溝で、前記受け部材用係止片又は前記受け部材係止部の上段側係止部又は下段側係止部に係止するものであり、下部受け部材はこれが受けるプレート部材により浮上による外れが防止され、上部受け部材は、前記弾性介在物によりその浮上による外れが防止されるようになっており、プレート部材の落下の恐れが回避されるようになっている。側方への外れは、前記外れ防止片又は回転止め片によって回避されるようになっている。
【0033】
本発明の8のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造によれば、前記連結板部の板部本体の両側及び水平延長板の延長板本体の両側に側板部を垂下してそれぞれを強化すると同時に、前者上に配された後者の回転を防止しうるようにしたものである。また該延長板本体に長孔を開口したので、これを前記板部本体に載せ、不陸を調整した上で、前記雌ねじ部に該長孔を介して螺合したボルト部材を締め付ければ、容易に不陸を調整した上で、その状態を保持できる。
【0034】
本発明の9のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造によれば、前記受け部材係止部の上段側係止部及び下段側係止部のそれぞれはいずれも単純な板材で構成されており、上部受け部材及び下部受け部材のいずれも簡単な構成でそれらに対する確実な取り付けを確保することができる。上段側係止部及び下段側係止部の両側には、前記取付手段の回転止め片が位置しているので、連結板の回転が阻止されると同時に、該上段側係止部及び該下段側係止部のそれぞれに係止する両側の下部受け部材及び両側の上部受け部材の側方への外れを防止することが可能となる。また下段側係止部に係止した上部受け部材の上部をトンネル壁面に固設した部材に取り付けた浮上防止部材の抑え片で抑えることとしたため、該上部受け部材の浮上を防止することが可能になったものである。
【0035】
本発明の10のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造によれば、本発明の9のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造と同一の効果に加えて、隣接する二つの上部受け部材の間隔が縮小するのを防止することができる。更に、その結果、全ての隣接する上部受け部材の間隔の縮小が防止されることになるので、全体として、上部受け部材の横方向の移動を防止することができることになる。
【0036】
本発明の11のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造によれば、前記受け部材用係止片に構成した上段側係止部及び下段側係止部のそれぞれはいずれも単純な板材で構成されており、上部受け部材及び下部受け部材のいずれも簡単な構成でそれらに対する確実な取り付けを確保することができる。また上段側係止部及び下段側係止部の両側部には外れ防止片を配したため、それぞれに係止する両側の下部受け部材及び両側の上部受け部材の外れを確実に防止することが可能となる。更に下段側係止部に係止した上部受け部材の上部をトンネル壁面に固設した部材に取り付けた浮上防止部材の抑え片で抑えることとしたため、該上部受け部材の浮上を防止することが可能になったものである。
【0037】
本発明の12トンネル壁面へのプレート部材の取付構造によれば、本発明の11のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造と同様の効果に加えて、隣接する二つの上部受け部材の間隔が縮小するのを防止することができる。その結果、全ての隣接する上部受け部材の間隔の縮小が防止されることになり、全体として、上部受け部材の横方向の移動を防止することができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】タイル設置領域の周縁部以外のタイルをトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付構造を示す実施例1の側面断面説明図。
【図2】実施例1の平面断面説明図。
【図3】実施例1の正面概略説明図。
【図4】(a)取付金具の正面図、(b)平面図、(c)右側面図。
【図5】(a)主受け部材の正面図、(b)平面図、(c)右側面図。
【図6】(a)受け金具用係止片の正面図、(b)平面図、(c)右側面図。
【図7】(a)下部受け金具の正面図、(b)平面図、(c)右側面図。
【図8】(a)上部受け金具の正面図、(b)平面図、(c)右側面図。
【図9】タイル設置領域の最上部のタイルの上部側を支持してトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付構造を示す側面断面説明図。
【図10】タイル設置領域の最上部のタイルの上部側を支持してトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付構造を示す平面断面説明図。
【図11】タイル設置領域の最上部のタイルの上部側を支持してトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付構造を示す正面概略説明図。
【図12】タイル設置領域の最下部のタイルの下部側を支持してトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付構造を示す側面断面説明図。
【図13】タイル設置領域の最下部のタイルの下部側を支持してトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付構造を示す平面断面説明図。
【図14】タイル設置領域の最下部のタイルの下部側を支持してトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付構造を示す正面概略説明図。
【図15】(a)最下部用の受け金具用係止片の正面図、(b)平面図、(c)右側面図。
【図16】実施例1のタイルの取付構造でトンネル壁面に取り付けられたタイル壁面を示す概略正面図。
【図17】トンネル壁面に取り付けられた一個のタイルの正面図。
【図18】タイル設置領域の周縁部以外のタイルをトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付構造を示す実施例2の正面説明図。
【図19】タイル設置領域の周縁部以外のタイルをトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付構造を示す実施例2の平面断面説明図。
【図20】タイル設置領域の周縁部以外のタイルをトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付態様及び取付構造を示す実施例2の側面断面説明図。
【図21】(a)取付金具の正面図、(b)平面図。
【図22】(a)不陸調整板の平面図、(b)正面図、(c)右側面図。
【図23】(a)受け金具用係止片の平面図、(b)正面図、(c)右側面図。
【図24】(a)弾性介在物の側面図、(b)正面図。
【図25】タイル設置領域の周縁部以外のタイルをトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付構造を示す実施例3の側面断面説明図。
【図26】実施例3の平面断面説明図。
【図27】実施例3の正面概略説明図。
【図28】図27の部分拡大図。
【図29】(a)は浮上防止片の正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図。
【図30】タイル設置領域の周縁部以外のタイルをトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付構造を示す実施例4の正面説明図。
【図31】タイル設置領域の周縁部以外のタイルをトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付構造を示す実施例4の平面断面説明図。
【図32】タイル設置領域の周縁部以外のタイルをトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付態様示す実施例4の側面断面説明図。
【図33】タイル設置領域の周縁部以外のタイルをトンネルの壁面に取り付けるタイルの取付構造を示す実施例4の側面断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明を実施する形態を、実施例に基づいて図面を参照しながら説明する。
【0040】
<実施例1>
この実施例1は大型のタイル1をトンネルの壁面Wに取り付ける例に関するものであり、トンネル壁面へのタイルの取付構造である。プレート部材としては、このような大型のタイル1の他、石材等も適用可能である。
【0041】
この実施例1のトンネル壁面へのタイルの取付構造は、図1〜図3及び図16に示すように、基本的に、トンネルの壁面Wに縦横に配する四辺形の複数のタイル1、1…と、該複数のタイル1、1…の各々の周囲の目地部中の各交点状部に配する支持金具(支持手段)2a、2a…と、該各支持金具2aに配する二つの下部受け金具(下部受け部材)3、3及び二つの上部受け金具(上部受け部材)4、4とで構成したものである。
【0042】
前記支持金具2aは、トンネルの壁面Wのタイル1、1…の取付領域の周縁部を除いては、以上のように、二つの下部受け金具3、3及び二つの上部受け金具4、4を配する構成とするが、取付領域の周縁部ではこれとは異なる構成とする。該領域の両側上部の角部を除く上縁部では、二つの上部受け金具4、4のみを配するように構成する。該領域の両側上部の角部では、それぞれ該当する側の上部受け金具4のみを配するように構成する。両側部では、それぞれ該当する側の一つの上部受け金具4及び一つの下部受け金具3のみを配するように構成する。該領域の両側下部の角部では、それぞれ該当する側の下部受け金具3のみを配するように構成する。該領域の両側下部の角部を除く下縁部では、二つの下部受け金具3、3のみを配するように構成する。
【0043】
なお、前記上部受け金具4は、タイル1の上部角部付近を受ける部材であり、前記下部受け金具3は、タイル1の下部角部付近を受ける部材である。該上部受け金具4は、以上のように、タイル1の両側の上部角部付近を受ける部材であるから、後述するように、左右対称形となる2種類がある。該下部受け金具3も同様である。
【0044】
なおまた、以上の支持金具2aの具体的な構成は、以上のように、必要数の下部受け金具3と同様に必要数の上部受け金具4を所定の状態で支持した状態で、トンネルの壁面Wに固設可能な構成であれば、特定のそれに限定されない。
【0045】
この実施例1では、図1〜図3、図9〜図14に示すように、支持金具2aは、アンカーボルト(ボルト類又はビス類)5aを用いて壁面Wに取り付けるための取付板部61及び該取付板部61から水平前方に延長する連結板部62よりなる取付金具(取付手段)6と、該取付金具6の連結板部62に不陸調整自在に結合する水平延長板71及びその前端に立ち下がる結合板72よりなる主受け部材7と、該主受け部材7の結合板72に配する受け金具用係止片(受け部材用係止片)8と、で構成したものである。該受け金具用係止片8は、前記した各々左右対称の下部受け金具3、3及び上部受け金具4、4を係止する手段である。
【0046】
前記取付金具6の取付板部61は、この実施例1では、特に図4(a)〜(c)に示すように、縦長のほぼ長方形板状の部材で、その中央部には縦長の結合長孔611が開口してあるものである。該結合長孔611の両側縁には、同図に示すように、背面側に向けて折曲した回転止め縁612、612が形成してあり、かつ前記取付板部61の両側部にも背面側に向けて折曲した回転止め縁613、613が形成してある。該取付板部61は、その背面側を壁面Wに当接させ、予め壁面Wに固定してあるアンカーボルト5aをその結合長孔611に貫通させた上で、該アンカーボルト5aにナットを螺合して締め付けることにより、該壁面Wに固定するものであるが、このとき、前記両回転止め縁612、612、613、613の各端部が該壁面Wに圧接状態となることにより、該アンカーボルト5aを中心として該取付板部61が回転するのを防止する機能を果たすこととなる。
【0047】
また前記取付金具6の連結板部62は、特に図4(a)〜(c)に示すように、前記取付板部61の下端からこれとほぼ90度の角度で前方に突き出す長方形を基本とする板部本体621と、その両側から垂下する側板部622、622と、該板部本体621の前端近傍の中央付近に形成した下方に突出する雌ねじ部623とで構成したものである。該両側板部622、622は、該板部本体621を補強する趣旨で構成したものである。該雌ねじ部623は、同図に示すように、下方に突出させ、螺子部の長さを長くして確実な結合を図っている。
【0048】
更に前記主受け部材7の水平延長板71は、特に図5(a)〜(c)に示すように、やはり長方形状を基本とする延長板本体711と、その両側から垂下する側板部712、712と、該延長板本体711の中央付近に長さ方向に沿って開口した長孔713とで構成したものである。該長孔713は、該延長板本体711を、例えば、図2に示すように、前記取付金具6の板部本体621の上面上に接合した際に、ボルト(ボルト部材)9aを、これを通じて貫通させ、かつ該板部本体621の雌ねじ部623に螺合して、該延長板本体711を該板部本体621に結合固定可能にするためのものである。以上の通りであるから、該延長板本体711は、該板部本体621に載置可能とする必要上、これより僅かに幅広に構成したものとする。また該延長板本体711の両側の側板部712、712は、該延長板本体711の補強として作用し、かつ該延長板本体711を、上記のように、板部本体621に載置固定した場合に、外力を受けてもその水平面内で回転しないように機能するものでもある。
【0049】
前記主受け部材7の結合板72は、特に図5(a)〜(c)に示すように、前記水平延長板71の先端からほぼ直角に垂下した部材であり、前記したように、その前面に受け金具用係止片8を固設するための手段である。その具体的な取付態様は確実な取り付けが確保できれば自由である。この実施例1では、この結合板72に図示していない結合孔を開口し、これと、受け金具用係止片8の後記固定板81の対応する位置に開口した図示しない結合孔を利用してリベット11で固定することとした。
【0050】
前記受け金具用係止片8は、特に図6(a)〜(c)に示すように、前記主受け部材7の結合板72に接合固定する長方形を基本とする固定板81と、該固定板81の上端から前方に張り出して直立状態に立ち上げた前記下部受け金具3、3を係止するための板状の上段側係止部82、及び該固定板81の下端から前方に張り出して直立状態に立ち上げた前記上部受け金具4、4を係止するための板状の下段側係止部83と、前記上段側係止部82の両側に設けた下部受け金具3の外れ防止片84、84及び前記下段側係止部83の両側に設けた上部受け金具4の外れ防止片85、85と、で構成したものである。
【0051】
該上段側係止部82の両側に設けた外れ防止片84、84は、図6(a)〜(c)に示すように、該上段側係止部82の両端から後方にほぼ90度に折曲して構成したものであり、該下段側係止部83の両側に設けた外れ防止片85、85は、該下段側係止部83の両端から後方にほぼ90度に折曲して構成したものである。
【0052】
なお、前記受け金具用係止片8には、更に、図1及び図2に示すように、前記下段側係止部83に係止した前記上部受け金具4、4の浮上を防止すべく、該上部受け金具4、4の上部と該受け部金具係止片8の上段側係止部82との間に装入する弾性介在物10を付設してある。
【0053】
該弾性介在物10は、弾性を有する棒状部材であり、例えば、硬質の弾性プラスチック円柱部材等を採用することができる。プラスチックの場合は、長期間に渡って当初の品質を維持することはできないが、前記の位置関係で配され、その位置に存在していれば概ねその機能を維持できるので問題はない。また弾性介在物10としては、ステンレススチール製のバネ材を利用することも可能であり、或いは、弾性接着剤とモルタルを混合して棒状に構成した部材を採用することもできる。この場合も若干劣化する可能性があるが、その機能上問題が生じるほどにはならない。
【0054】
なお、該受け金具用係止片8の上段側係止部82は、これより上方左右に位置するタイル1、1の下部左右を受ける二つの下部受け金具3、3を係止し、下段側係止部83は、これより下方左右に位置するタイル1、1の上部左右を受ける二つの上部受け金具4、4を係止するものである。
【0055】
前記下部受け金具3は、特に図7(a)〜(c)に示すように、板状の受け金具基部(受け部材基部)31と、その一側(左側)から背後方向に屈曲した係合板32と、該受け金具基部31の下端から前方に延長しその先端で抱え片33を立ち上げてなる受け部34とで構成したものである。なお、該係合板32は、同図に示すように、前記上段側係止部82に外装係止する下部に開く係合溝35を備えている。これは、左右対称の一対の内の一方であり、前記受け金具用係止片8の上段側係止部82の右側に係止すべきものであって、タイル1の左側下部を受けるべきものである。
【0056】
該下部受け金具3の他の一方は、前記係合板32を、前記受け金具基部31の他側(右側)から背後方向に屈曲するものである。その他の構成は、前記受け金具用係止片8の上段側係止部82の右側に係止すべきものと同様である。これは、当然、該上段側係止部82の左側に係止するものであって、タイル1の右側下部を受けるべきものである。
【0057】
前記上部受け金具4は、特に図8(a)〜(c)に示すように、板状の受け金具基部(受け部材基部)41と、その一側の上部側から背後方向に屈曲した係合板42と、該受け金具基部41の上端から前方に延長しその先端で抱え片43を立ち下げてなる受け部44とで構成したものである。なお、該係合板42は、同図に示すように、前記下段側係止部83に外装係止する下部に開く係合溝45を備えている。これは、左右対称の一対の内の一方であり、前記受け金具用係止片8の下段側係止部83の右側に係止すべきものであって、これはタイル1の左側上部を受けるべきものである。
【0058】
該上部受け金具4の他の一方は、前記係合板42を、前記受け金具基部41の他側(右側)から背後方向に屈曲するものである。その他の構成は、前記受け金具用係止片8の下段側係止部83の右側に係止すべきものと同様である。これは、当然、該下段側係止部83の左側に係止するものであって、タイル1の右側上部を受けるべきものである。
【0059】
従って、この実施例1のトンネル壁面へのタイルの取付構造によれば、基本的に、トンネルの壁面Wに縦横に配する多数の大型のタイル1、1…を、該壁面Wに固定した多数の支持金具2a、2a…によって確実に支持することができる。該タイル1、1…は、複数のそれを接着剤で接合した基板部材を介して取り付けるものではなく、直接に支持金具2a、2a…で壁面Wに取り付けるものであるため、接着剤の系時劣化による剥落の問題も生じない。それ故、長期間に渡り確実な取付を維持することができる。
【0060】
この実施例1のトンネル壁面へのタイルの取付構造は、先に述べた通りであるが、詳細には、以下のような構成である。
【0061】
タイル1、1…は、図16に示すように、トンネルの壁面Wに縦横に配する。また同図及び図17に示すように、各々のタイル1は、その上部の両側の角部付近をそれぞれ対応する上部受け金具4、4によって支持され、下部の両側の角部付近をそれぞれ対応する下部受け金具3、3によって支持されるように構成してある。また以上の上部受け金具4、4及び下部受け金具3、3は、前記したように、支持金具2aによって支持する。更に支持金具2aは、上記のように壁面Wに配された多数のタイル1、1…相互の間又はタイル1、1…の設置領域の外縁に位置するタイル1、1…と外部の部材との間に生じる目地部中の十字状、T字状、L字状等の、先に説明した交点に当たる部位に配するものである。
【0062】
まず初めに上記目地部中の十字状の部分の交点に配する支持金具2a、下部受け金具3、3及び上部受け金具4、4の設置状態並びにタイル1のそれらによる支持状態を説明する。
【0063】
図1〜図3に示すように、支持金具2aを構成する取付金具6を壁面Wの上記所定の位置に取り付ける。予めタイル1、1…の配列を定めておき、その目地部予定部中の十字状の部分の背後の壁面Wに取り付ける。その位置には、予め下孔を開口しておき該下孔にアンカーボルト5aを装入して固定し、該アンカーボルト5aに取付金具6の取付板部61を固定する。該取付板部61は、図1〜図3に示すように、予め壁面Wに固定してある上記アンカーボルト5aを、その結合長孔611に貫通させ、かつその背面側を壁面Wに当接させた上で、外端側から該アンカーボルト5aにナットを螺合して締め付けることにより、該壁面Wに固定する。
【0064】
こうして、同図に示すように、取付板部61を直立状態で壁面Wに固定すると、その両側部の回転止め縁613、613及びその結合長孔611の両側縁の回転止め縁612、612が壁面Wに圧接状態となり、該アンカーボルト5aを中心として該取付板部61が回転するのを防止する機能を果たし、その固定が確実なものとなる。
【0065】
また該取付金具6の連結板部62には不陸を調節しながら前記主受け部材7の水平延長板71を結合する。これは、詳細には、図1及び図2に示すように、該連結板部62の板部本体621上に該水平延長板71の延長板本体711を載置し、前後方向に動かして不陸を調節した上で、固定する。この実施例1では、該板部本体621の中央前端付近に形成してある雌ねじ部623に、該延長板本体711の載置に先だってボルト9aを螺合しておき、該延長板本体711の載置の際には、その載置と同時に、その長孔713に該ボルト9aを貫通させることとする。不陸の調節はこの状態で行う。該延長板本体711の前後方向への移動は、それに形成してある長孔713の長さの範囲で行うことができる。不陸を調節した後には、該ボルト9aに、その上端からナット9bを螺合し、図1及び図2に示すように、該延長板本体711を板部本体621に固定する。
【0066】
こうして前記主受け部材7を取付金具6に固定すると、図1及び図2に示すように、該延長板本体711の両側の側板部712、712が、該板部本体621の両側の側板部622、622に外装状態となり、それらの作用により、延長板本体711及びこれをその要素として含む主受け部材7の前記ボルト9aを中心とする回転が防止される。
【0067】
なお、以上の主受け部材7の結合板72には、以上のように、取付金具6に固定する前に受け金具用係止片8を結合固定しておく。この実施例1では、該受け金具用係止片8の固定板81及び該主受け部材7の結合板72に相互に対応状態に各々二つの図示しない結合孔を開口し、図1及び図3に示すように、該結合板72に該固定板81を当接させた上で、相互の対応する結合孔にリベット11を挿入し、かつかしめて固定して置くものである。
【0068】
このようにして目地部中の十字状部分の交点に構成した支持金具2aには、前記したように、その直上左右及び直下左右のタイル1、1…を、前記の相互に対称形状の二つの下部受け金具3、3及び同様の二つの上部受け金具4、4を介して取り付ける。
【0069】
タイル1、1…には、図17に示すような位置関係で、予め、その上部両側の角部付近に上部受け金具4、4を取り付け、下部両側の角部付近に下部受け金具3、3を取り付けておく。タイル1、1…の左上部の角部付近には、前記受け金具用係止片8の下段側係止部83の右側に係止する上部受け金具4を取り付け、タイル1、1…の右上部の角部付近には、前記受け金具用係止片8の下段側係止部83の左側に係止する上部受け金具4を取り付ける。タイル1、1…の左下部の角部付近には、前記受け金具用係止片8の上段側係止部82の右側に係止する下部受け金具3を取り付け、タイル1、1…の右下部の角部付近には、前記受け金具用係止片8の上段側係止部82の左側に係止する下部受け金具3を取り付ける。こうして、タイル1の上記該当部位を、相互に対称形状の上部受け金具4、4及び同様の下部受け金具3、3の受け部44、34で受ける、即ち、それぞれ背後の受け金具基部31、41と前部の抱え片43、33で抱えるように配しておく。なお、該上部受け金具4、4又は下部受け金具3、3は、これらを、設置領域に設置する前に、タイル1のそれぞれ該当部位から脱落しないように、受け部44、34とタイル1の該当部位との間には接着剤を配して固定しておく。
【0070】
この後、以上のタイル1を、図16に示すように、先に前記位置関係で配してある支持金具2a、2a…を利用して設置する。タイル1に配してある両側の下部受け金具3、3は、同図に示すように、その直下の両側の支持金具2a、2aの各受け金具用係止片8に係止し、該タイル1に配してある両側の上部受け金具4、4は、その直上の両側の支持金具2a、2aの各受け金具用係止片8に係止する。
【0071】
詳細には以下のとおりである。
下部受け金具3、3のうち、タイル1の右側のそれは、右下の支持金具2aにおける受け金具用係止片8の上段側係止部82に係止する。図1〜図3に示すように、該下部受け金具3の係合板32を、その下部の係合溝35を対応させつつ、該上段側係止部82の上方に、これと直交する向きに配し、かつ下降させることにより、該係合溝35で該上段側係止部82に係止する。該上段側係止部82には、二つの下部受け金具3を係止するが、これは左側に係止する。
【0072】
下部受け金具3、3のうち、タイル1の左側のそれは、左下の支持金具2aにおける受け金具用係止片8の上段側係止部82に、タイル1の右側のそれと左右対称の関係に係止する。
【0073】
上部受け金具4、4のうち、タイル1の右側のそれは、右上の支持金具2aにおける受け金具用係止片8の下段側係止部83に係止する。図1〜図3に示すように、該上部受け金具4の係合板42を、その下部の係合溝45を対応させつつ、該下段側係止部83の上方に、これと直交する向きに配し、かつ下降させることにより、該係合溝45で該下段側係止部83に係止する。該下段側係止部83には、二つの上部受け金具4を係止するが、これは左側に係止する。
【0074】
上部受け金具4、4のうち、タイル1の左側のそれは、左上の支持金具2aにおける受け金具用係止片8の下段側係止部83に、タイル1の右側のそれと左右対称の関係に係止する。
【0075】
なお、各支持金具2aにおいて、図1〜図3に示すように、上部受け金具4、4の係合板42、42の上部と受け金具用係止片8の上段側係止部82の下部との間に弾性介在物10を装入する。こうして、該上部受け金具4、4の浮上及びこれを介したタイル1、1の浮上を防止する。
【0076】
なお、以上において、地震その他の振動によって、タイル1、1が横方向に動こうとした場合に、前記受け金具用係止片8の下段側係止部83の両側には外れ防止片85、85が、上段側係止部82の両側には外れ防止片84、84が、それぞれ配してあるため、下段側係止部83に係止する上部受け金具4、4及び上段側係止部82に係止する下部受け金具3、3のいずれも該外れ防止片85、85、84、84より側方に移動することは不可能であり、許容範囲内にその横方向の移動が規制され、それぞれ該下段側係止部83又は該上段側係止部82から脱落することが防止される。
【0077】
設置領域上部周縁の内、両角部以外の前記目地部中のT字状の部分の交点に配する支持金具2a、上部受け金具4の設置状態及びタイル1のそれらによる支持状態を説明する。
【0078】
この位置に設置する支持金具2aは、図9〜図11に示すように、以上に説明した十字状部の交点に配するそれと全く同様である。この場合は、単にタイル1の上部両角部に配した上部受け金具4、4を係止するだけである点が異なるのみである。他の構成は全て同様であるので、これ以上の説明は省略する。
【0079】
設置領域上部周縁の前記目地部中の上部両角部の逆L字状とこれと左右対称形状の部分の交点に配する支持金具2a、上部受け金具4の設置状態及びタイル1のそれらによる支持状態を説明する。
【0080】
この位置に設置する支持金具2aは前記十字状部の交点に配するそれと全く同様である。この場合は、単にタイル1の上部両角部に配した上部受け金具4、4の内の、該当する一方、即ち、設置領域の右角部では、タイル1の右上角部の上部受け金具4を下段側係止部83の左側に係止し、設置領域の左角部では、タイル1の左上角部の上部受け金具4を下段側係止部83の右側に係止するだけである点が異なるのみである。他の構成は全て同様であるので、これに関してもこれ以上の説明は省略する。
【0081】
設置領域両側周縁の前記目地部中の上下両角部以外の右向きと左向きの横向きT字状部の交点に配する支持金具2a、下部受け金具3、上部受け金具4の設置状態及びタイル1のそれらによる支持状態を説明する。
【0082】
この位置に設置する支持金具2aはやはり前記十字状部の交点に配するそれと全く同様である。この場合は、右上方及び右下方の二つのタイル1、1、又は左上方及び左下方の二つのタイル1、1を支持するだけである点が異なるのみである。設置領域の左側周縁の支持金具2aでは、右上方のタイル1の左下の下部受け金具3を受け金具用係止片8の上段係止部82の右側に係止し、右下方のタイル1の左上方の上部受け金具4を該受け金具用係止片8の下段係止部83の右側に係止するのみである。設置領域の右側周縁の支持金具2aでは、上記左側のそれと対称状態に配される。
【0083】
これ以外の構成は全て前記十字状部の交点に配したものと同様であるので、これに関してもこれ以上の説明は省略する。
【0084】
設置領域下部周縁の内、両角部以外の前記目地部中の逆T字状の部分の交点に配する支持金具2a、下部受け金具3、3の設置状態及びタイル1のそれらによる支持状態を説明する。
【0085】
この位置に設置する支持金具2aは、図12〜図14に示すように、先に説明した十字状部の交点に配するそれと受け金具用係止片8が受け金具用係止片12に代えられている点のみが異なり、それ故、その受け金具用係止片12が係止できる下部受け金具3、3のみが係止する点が異なる。
【0086】
前記受け金具用係止片12は、図15に示すように、前記主受け部材7の結合板72に接合固定する長方形を基本とする固定板121と、該固定板121の上端から前方に張り出して直立状態に立ち上げた前記二つの下部受け金具3、3を係止するための板状の上段側係止部122と、該上段側係止部122の両側に設けた下部受け金具3の外れ防止片124、124と、で構成したものである。この受け金具用係止片12は、前記受け金具用係止片8から下段側係止部83及びその両側の外れ防止片85、85に相当する構成要素を省略したものということができる。
【0087】
該上段側係止部122の両側に設けた外れ防止片124、124は、図15(a)〜(c)に示すように、該上段側係止部122の両端から後方にほぼ90度に折曲して構成したものである。
なお、前記上段側係止部122は、相互に対称形の下部受け金具3、3を係止するものである。
【0088】
従って設置領域下部周縁の内、両角部以外の前記目地部中の逆T字状の部分の交点に配する支持金具2aは、その主受け部材7の結合板72の前面に上記受け金具用係止片12を固設する。この固設は、該結合板72と受け金具用係止片12の固定板121とに、相互を、図12に示すように接合した状態で対応するように、各々結合孔を開口させ、相互を、以上のように、接合した状態で、各々の結合孔にリベット11を挿入して固定したものである。そして該結合板72に固定した受け金具用係止片12には、図12〜図14に示すように、二つの相互に対称形状の下部受け金具3、3を係止する。この係止の仕方は、前記受け金具用係止片8の上段側係止部82への下部受け金具3、3の係止の仕方と全く同様であり、前記受け金具用係止片12の上段側係止部122に下部受け金具3、3を係止するものである。
【0089】
タイル1の取り付け方として説明すると、上記支持金具2aは、その両側上方のタイル1、1の下端の下部受け金具3、3を、受け金具用係止片12の上段側係止部122に係止する。右上方のタイル1の左下の角部の下部受け金具3を該上段側係止部122の右側に係止し、左上方のタイル1の右下の角部の下部受け金具3を該上段側係止部122の左側に係止する。
【0090】
設置領域下部周縁の内、両角部のL字状又は左右反転L字状の目地部の交点に配する支持金具2a、下部受け金具3の設置状態及びタイル1のそれらによる支持状態を説明する。
【0091】
これらの位置では、前記両角部以外の前記目地部中の逆T字状の部分の交点に配した支持金具2aと同様のそれを用いる。異なるのは、設置領域の周縁の左下の角部では、右上方のタイル1の左下角部の下部受け金具3を、受け金具用係止片12の上段側係止部122の右側で係止するのみである点であり、設置領域の周縁の右下の角部では、左上方のタイル1の右下角部の下部受け金具3を、受け金具用係止片12の上段側係止部122の左側で係止するのみである点である。
【0092】
なお、以上において、この実施例1では、取付対象であるタイル1及び弾性介在物10を除いてはステンレススチールを用いて構成した。十分な防錆処理を施した金属を採用することも可能であるが、劣悪な環境下で長期にわたって十分な強度を保持できる信頼性の高い部材を採用するべきである。
【0093】
したがって、この実施例1のトンネル壁面へのタイルの取付構造によれば、トンネルの壁面Wに縦横に配する比較的大型のタイル1、1…は、壁面Wに固定した支持金具2a、2a…によって確実に支持される。タイル1の重心が左右にずれていても、或いは強い外力が加わったりしても、該支持金具2a、2a…が、前記アンカーボルト5aを中心に回転するようなことがないように構成されているので、右上がりや左上がりして左右に傾いてしまうような問題はない。即ち、タイル1それ自体の重量バランスや地震その他に基づく振動等に起因する回転状態(一側部が下降し、他側部が上昇する回転状態)が生じるような恐れを回避することができる。また、以上のように、該タイル1、1…は、複数のそれを接着剤で接合した基板部材を介して取り付けられるようなものではなく、直接に支持金具2a、2a…で壁面Wに取り付けられるものであるため、接着剤の系時劣化による剥落の問題も生じない。それ故、長期間に渡り確実な取付状態を維持することができる。
【0094】
また前記支持金具2a、2a…は、前記のように、壁面Wに配されるタイル1、1…の周囲の目地部の内、交点状部等に配して、その直上左右及び直下左右にタイル1、1…が位置する場合は、上下に位置する左右のタイル1、1を同時に下部受け金具3、3及び上部受け金具4、4を介して支持するので、各タイル1、1…毎に、下部両角部及び上部両角部を個別に支持する場合に比較して能率的(経済的)でありながら、確実な支持固定が可能になる。
【0095】
なお、支持金具2a、2a…を配する目地部の交点状部の内、以上の部位以外は、タイル1、1…の設置領域の周縁部で数は少ない。それらの部位では、先に説明したように、一つ一つの支持金具2a、2a…が支持するタイル数は少なくなる。上部の二つのみ、上部左右の一方のみ、下部左右の一方のみ、下部の二つのみなどである。
【0096】
またこの実施例1によれば、前記主受け部材7の水平延長板71を前記取付金具6の連結板部62に不陸調整自在に結合したため、該主受け部材7は、該取付金具6に不陸調整自在となり、その結合板72に配した受け金具用係止片8の不陸を調整し、これに前記下部受け金具3、3及び前記上部受け金具4、4を介して支持されるタイル1、1…の不陸を容易に調整することができる。
【0097】
この実施例1のトンネル壁面へのタイルの取付構造によれば、前記受け金具用係止片8に構成した、上段側係止部82及び下段側係止部83の両側部に外れ防止片84、84、85、85を配したため、それぞれに係止する両側の下部受け金具3、3及び両側の上部受け金具4、4の外れを確実に防止することが可能となる。また下段側係止部83に係止した上部受け金具4、4の上部と該受け金具用係止片8の上段側係止部82の下部との間に弾性介在物10を装入することとしたため、該上部受け金具4、4の浮上を弾力的に防止することが可能となったものである。これによって、これらを介して保持されるタイル1、1…の支持が確実なものとなる。
【0098】
この実施例1のトンネル壁面へのタイルの取付構造によれば、下部受け金具3、3及び上部受け金具4、4のいずれも下部に開く係合溝35、45で、前記受け金具用係止片8の上段側係止部82又は下段側係止部83に係止するものであり、下部受け金具3、3はこれが受けるタイル1によりその浮上による外れが防止され、上部受け金具4、4は、上記のように、前記弾性介在物10によりその浮上による外れが防止されるようになっており、タイル1、1…の落下の恐れが回避されるようになっている。側方への外れは、前記外れ防止片84、84、85、85によって回避されるようになっている。
【0099】
またこの実施例1のトンネル壁面へのタイルの取付構造によれば、取付金具6の取付板部61の両側及び結合長孔611の両側にそれぞれ回転止め縁612、612、613、613を構成したため、この取付板部61を、その背面を壁面Wに接合した状態で、アンカーボルト5aを用いて該壁面Wに固定した場合に、該回転止め縁612、612、613、613の作用により、支持金具2a、2a…が支持するタイル1、1…の重量バランスの不均衡等に起因して加わる不均衡な荷重により、該アンカーボルト5aを中心として回転するような問題を回避することができる。
【0100】
<実施例2>
この実施例2は、実施例1と同様に、大型のタイル1をトンネルの壁面Wに取り付ける例に関するものであるが、特にタイル1と壁面Wとの間に広い間隔を取ることができない場合に適する例に関する。実施例1と同様に、トンネル壁面へのタイルの取付構造である。これも実施例1と同様に、プレート部材としては、このような大型のタイル1の他、石材等も適用可能である。
【0101】
この実施例2のトンネル壁面へのタイルの取付構造は、図18〜図20に示すように、基本的に、トンネルの壁面Wに縦横に配する四辺形の複数のタイル1、1…と、該複数のタイル1、1…の各々の周囲の目地部中の各交点状部に配する支持金具(支持手段)2b、2b…と、該各支持金具2bに配する二つの下部受け金具(下部受け部材)3、3及び二つの上部受け金具(上部受け部材)4、4とで構成したものである。
【0102】
前記支持金具2bは、図18〜図23に示すように、壁面Wに二本のコンクリートビス(ボルト類又はビス類)5b、5bを用いて取り付けるための取付板部161及びその両側から各々前方に折曲して構成した回転止め片162、162からなる取付金具(取付手段)16と、該取付金具16の取付板部161の前面に接合し、該取付板部161を取り付けるための二本のコンクリートビス5b、5bの内の一本のコンクリートビス5bを利用して、該取付板部161を介して、該取付板部161と共に該壁面Wに固定する連結板181及び該連結板181に構成した前記下部受け金具3及び前記上部受け金具4を係止する受け金具用係止片18と、前記取付金具16の取付板部161と該受け金具用係止片18の連結板181との間に不陸の調整のために必要枚数を挿入する不陸調整板17、17…とで構成したものである。
【0103】
前記取付金具16の取付板部161は、特に図21に示すように、中央に縦長の結合用長孔163が開口してあり、壁面Wへの該取付金具16の取り付けは、前記二本のコンクリートビス5b、5bを、該取付板部161の結合用長孔163を通じて該壁面Wに開口してある下穴にねじ込んで該取付板部161を固定することにより行う。なお、下穴は、該壁面Wの該取付金具16を取り付ける位置に、その結合用長孔163の上下方向の長さに対応させて、上下に適切な間隔をあけて開口しておくものとする。
【0104】
前記不陸調整板17は、特に図19、図20及び図22に示すように、前記受け金具用係止片18の連結板181より若干幅狭で、長さは殆ど同程度の板状部材であり、その幅方向中央に下部に開口し、上部途中まで延びるビス避け用のスリット171が形成してある。耐食性の良好な金属で構成するのが適当であるが、プラスチック類で構成することも可能である。環境から悪影響を受けて若干変質してもスペーサとしての役割は概ね果たせるはずであるので、プラスチック類も使用可能である。この実施例2では、プラスチック製の板材を採用している。
【0105】
前記受け金具用係止片18は、図19、図20及び図23(a)〜(c)に示すように、実施例1の受け金具用係止片8と殆ど同様の構成の部材であり、前記取付金具16の取付板部161に接合し、これと共にその下方側のコンクリートビス5bを用いて壁面Wに固定する長方形を基本とする連結板181と、該連結板181の上端から前方に張り出して直立状態に立ち上げた前記下部受け金具3、3を係止するための板状の上段側係止部182、及び該連結板181の下端から前方に張り出して直立状態に立ち上げた前記上部受け金具4、4を係止するための板状の下段側係止部183と、前記上段側係止部182の両側に設けた下部受け金具3の外れ防止片184、184及び前記下段側係止部183の両側に設けた上部受け金具4の外れ防止片185、185と、で構成したものである。
【0106】
該連結板部181には、特に図23(b)に示すように、その幅方向中央に高さ方向に沿った結合用の長孔186が開口してある。前記取付金具16の取付板部161に接合して壁面Wに該取付板部161を介して取り付ける際に、該取付板部161を壁面Wに固定するための2本の上下のコンクリートビス5b、5bの内の下方のそれを該連結板部181の壁面Wへの固定に共用することとし、該連結板部181の長孔186及び取付板部161の結合用長孔163の双方を通じて該コンクリートビス5bを挿入し、壁面Wに開口してある下穴にねじ込み固定する。該連結板部181の長孔186はこのように使用する。
【0107】
前記上段側係止部182の両側に設けた外れ防止片184、184は、実施例1の外れ防止辺84、84と同様の構成である。また前記下段側係止部183の両側に設けた外れ防止片185、185も、実施例1の外れ防止片85、85と全く同様の構成である。
【0108】
なお、前記受け金具用係止片18には、更に、図18〜図20に示すように、前記下段側係止部183に係止した前記上部受け金具4、4の浮上を防止すべく、該上部受け金具4、4の上部と該受け部金具係止片18の上段側係止部182との間に装入する弾性介在物100を付設してある。これも実施例1と全く同様である。
【0109】
該弾性介在物100は、弾性を有する棒状部材であり、この実施例2では、図24(a)、(b)に示すように、硬質で周囲に長さ方向に沿った複数条の突条を配した弾性プラスチック円柱部材を採用した。この部材は、プラスチックであるから、長期間に渡って当初の品質を維持することはできないが、前記の位置関係で配され、その位置に存在していれば概ねその機能を維持できるので問題はない。そのほか、実施例1に関して述べたとおりである。
【0110】
なお、前記受け金具用係止片18の上段側係止部182は、これより上方左右に位置するタイル1、1の下部左右の部分を受ける二つの下部受け金具3、3を係止し、下段側係止部183は、これより下方左右に位置するタイル1、1の上部左右の部分を受ける二つの上部受け金具4、4を係止するものである。
【0111】
前記下部受け金具3は、左右対称の一つの部材であるが、これは実施例1で使用したそれをそのまま使用する。用法も当然同様である。また前記上部受け金具4も、左右対称の一つの部材であるが、これも実施例1で使用したそれをそのまま使用する。用法も当然同様である。
【0112】
従って、この実施例2のトンネル壁面へのタイルの取付構造によれば、基本的に、トンネルの壁面Wに縦横に配する多数の大型のタイル1、1…は、該壁面Wに固定した多数の支持金具2b、2b…によって確実に支持される。該タイル1、1…は、複数のそれを接着剤で接合した基板部材を介して取り付けるものではなく、直接に支持金具2b、2b…で壁面Wに取り付けるものであるため、接着剤の系時劣化による剥落の問題も生じない。それ故、長期間に渡り確実な取り付けを維持することができる。またこの実施例2は、壁面Wとタイル1、1…との間に広い間隔を取れない場合により有効である。
【0113】
この実施例2のトンネル壁面へのタイルの取付構造は、先に述べた通りであるが、詳細には、以下のような構成である。
【0114】
タイル1、1…は、実施例1で説明し、図16に示すように、トンネルの壁面Wに縦横に配する。また同図及び図17に示すように、各々のタイル1は、その上部の両側の角部付近をそれぞれ対応する上部受け金具4、4によって支持し、下部の両側の角部付近をそれぞれ対応する下部受け金具3、3によって支持するように構成してある。また以上の上部受け金具4、4及び下部受け金具3、3は、前記したように、支持金具2bによって支持する。更に支持金具2bは、以上のように、壁面Wに配された多数のタイル1、1…相互の間又はタイル1、1…の設置領域の外縁に位置するタイル1、1…と外部の部材との間に生じる目地部中の十字状、T字状、L字状等の、先に説明した交点に当たる部位に配するものである。
【0115】
まず、初めに、上記目地部中の十字状の部分の交点に配する支持金具2b、下部受け金具3、3及び上部受け金具4、4の設置状態及びタイル1のそれらによる支持状態を説明する。
【0116】
図18〜図20に示すように、支持金具2bを構成する取付金具16を壁面Wの上記所定の位置に取り付ける。予めタイル1、1…の配列を定めておき、その目地部予定部中の十字状の部分の背後の壁面Wに取り付ける。その位置には、前面側から予め上下に二つの下孔を開口しておき、そこに取付金具16の取付板部161を接合し、その前面側からその結合用長孔163を通じて一本のコンクリートビス5bを挿入し、該下穴の内、上側に位置する方のそれにねじ込み固定する。
【0117】
この後、前記受け金具用係止片18の連結板部181を、前記取付金具16の取付板部161の前面に接合し、該取付板部161を固定するもう一つのコンクリートビス5bを該連結板部181の長孔186及びその背後の取付板部161の結合用長孔163に前面側から挿入し、背後の壁面Wに開口してあるもう一つの下穴にねじ込み固定する。このとき、該受け金具用係止片18及びこれに係止する上部受け金具4、4及び下部受け金具3、3を介して取り付けるタイル1、1…の不陸調整の観点から、必要がある場合は、必要枚数の不陸調整板17、17…を該取付板部161と該連結板部181の間に挿入する。該不陸調整板17は、該取付板部161と該連結板部181の間に適度な隙間があけてあれば、上方から容易に挿入することができる。ビス避け用のスリット171が形成してあるので、挿入の際及び挿入後にもコンクリートビス5bが障害となることはない。必要枚数の不陸調整板17、17…を挿入した後には、当然、コンクリートビス5bを必要なところまでねじ込んで確実な固定を確保する。
【0118】
なお、以上の状態で、取付金具16は、上下二本のコンクリートビス5b、5bで固定されるので、その回転は確実に防止される。また該取付金具16の取付板部161の前面に固定される受け金具用係止片18は、その連結板部181が一本のコンクリートビス5bで固定されるものではあるが、該取付金具161の両側に配した回転止め片162、162によってその動きが阻止される。それ故、結局、該受け金具用係止片18もまた確実に回転が防止されることになる。
【0119】
このようにして目地部中の十字状部分の交点に構成した支持金具2bには、前記したように、その直上左右及び直下左右のタイル1、1…を、前記の相互に対称形状の二つの下部受け金具3、3及び同様の二つの上部受け金具4、4を介して取り付ける。
【0120】
タイル1、1…には、実施例1に関して説明したように、図17に示すような位置関係で、予め、その上部両側の角部付近に上部受け金具4、4を取り付け、下部両側の角部付近に下部受け金具3、3を取り付けておく。詳細は、実施例1で説明したとおりである。
【0121】
この後、以上のタイル1を、図16に示すように、先に前記位置関係で配してある支持金具2b、2b…を利用して設置する。タイル1に配してある両側の下部受け金具3、3は、図18〜図20に示すように、その直下の両側の支持金具2b、2bの各受け金具用係止片18に係止し、該タイル1に配してある両側の上部受け金具4、4は、その直上の両側の支持金具2b、2bの各受け金具用係止片18に係止する。
【0122】
詳細は、実施例1で説明したとおりで、それと全く異ならない。
なお、各支持金具2bにおいて、図18〜図20に示すように、上部受け金具4、4の係合板42、42の上部と受け金具用係止片18の上段側係止部182の下部との間に弾性介在物100を装入する。こうして、該上部受け金具4、4の浮上及びこれを介したタイル1、1の浮上を防止する。これも実施例1と同様である。
【0123】
なお、以上において、地震その他の振動によって、タイル1、1が横方向に動こうとしても、前記受け金具用係止片18の下段側係止部183の両側に配してある外れ防止片185、185及び上段側係止部182の両側に配してある外れ防止片184、184の作用により、その動きが規制され、それぞれ該下段側係止部183又は該上段側係止部182から脱落することが防止される。この実施例2では、外れ防止片184、184、185、185が形成してあるので、以上のように作用するが、これが形成してない場合であっても、受け金具用係止片18の連結板181の両側と取付金具16の取付板部161の幅に差が少なく、該連結板181の両側と該取付金具16の回転止め片162、162との間の間隔が小さければ、該回転止め片162、162が外れ防止作用を果たすことが可能となる。それ故、そのように構成することもできる。
【0124】
以下では、タイル1、1…の設置領域内のタイル間の目地の内、十字状の部分の交点以外の部位に支持金具2bを配してタイル1、1…を支持する場合について説明する。これは、実施例1について説明したのと基本的に同様であるから、略述するにとどめる。
【0125】
支持金具2bをタイル設置領域の最上部縁の上両角部以外の前記目地部中のT字状の部分の交点に配する場合。この場合は、該支持金具2bの下方両側にタイル1、1があるだけであるから、受け金具用係止片18の下段側係止部183の両側にのみ上部受け金具4、4を配する。
支持金具2bをタイル設置領域の最上部の両角部の逆L字状又はその左右対称の字状の角部に配する場合。この場合は、タイル1は支持金具2bの右下方又は左下方に有るだけであるから、受け金具用係止片18の下段側係止部183の該当する片側にのみ上部受け金具4を配する。
支持金具2bをタイル設置領域の側部縁の上下両角部以外の横向きT字状部の交点部分に配する場合。この場合は、タイル1は支持金具2bの右上下又は左上下に有るだけであるから、受け金具用係止片18の下段側係止部183の該当する片側にのみ上部受け金具4を、上段側係止部182の該当する片側にのみ下部受け金具3を配する。
支持金具2bをタイル設置領域の周縁の下両角部のL字状又はその左右対称の字状の角部に配する場合。この場合は、タイル1は、支持金具2bの右上方又は左上方に有るだけであるから、受け金具用係止片18の上段側係止部182の該当する片側にのみ下部受け金具3を配する。
支持金具2bをタイル設置領域の下縁の下両角部以外の前記目地部中の逆T字状の部分の交点に配する場合。この場合は、上方両側にタイル1、1があるだけであるから、受け金具用係止片18の上段側係止部182の両側にのみ下部受け金具3、3を配する。
【0126】
以上に関しては、以上に述べた点以外の構成は全て前記十字状部の交点に配したものと同様であるので、これ以上の説明は省略する。
【0127】
なお、以上において、この実施例2では、取付対象であるタイル1、弾性介在物100及び不陸調整板17を除いてはステンレススチールを用いて構成した。十分な防錆処理を施した金属を採用することも可能であるが、劣悪な環境下で長期にわたって十分な強度を保持できる信頼性の高い部材を採用すべきである。
【0128】
したがって、この実施例2のトンネル壁面へのタイルの取付構造によれば、トンネルの壁面Wに縦横に配する比較的大型のタイル1、1…は、壁面Wに固定した支持金具2b、2b…によって確実に支持される。タイル1の重心が左右にずれていても、或いは強い外力が加わったりしても、該支持金具2b、2b…が、前記二つのコンクリートビス5b、5bで壁面Wに固定されているので、右上がりや左上がりして左右に傾いてしまうような問題はない。即ち、タイル1それ自体の重量バランスや地震その他に基づく振動等に起因する回転状態(一側部が下降し、他側部が上昇する回転状態)が生じるような恐れを回避することができる。また、以上のように、該タイル1、1…は、複数のそれを接着剤で接合した基板部材を介して取り付けられるようなものではなく、直接に支持金具2b、2b…で壁面Wに取り付けられるものであるため、接着剤の系時劣化による剥落の問題も生じない。それ故、長期間に渡り確実な取付状態を維持することができる。
【0129】
また前記支持金具2b、2b…は、前記のように、壁面Wに配されるタイル1、1…の周囲の目地部の内、交点状部等に配して、その直上左右及び直下左右にタイル1、1…が位置する場合は、上下に位置する左右のタイル1、1を同時に下部受け金具3、3及び上部受け金具4、4を介して支持するので、各タイル1、1…毎に、下部両角部及び上部両角部を個別に支持する場合に比較して能率的(経済的)でありながら、確実な支持固定が可能になる。
【0130】
なお、支持金具2b、2b…を配する目地部の交点状部の内、以上の部位以外は、タイル1、1…の設置領域の周縁部であって数は少ない。それらの部位では、先に説明したように、一つ一つの支持金具2b、2b…が支持するタイル数は少なくなる。前記したように、上部の二つのみ、上部左右の一方のみ、下部左右の一方のみ、下部の二つのみなどである。
【0131】
またこの実施例2によれば、前記取付金具16の取付板部161に、必要枚数の不陸調整板17、17…を間に介在させた上で、前記受け金具用係止片18の連結板部181を接合し、前記のように、コンクリートビス5bで両者を同時に壁面Wに固定するものであり、該受け金具用係止片18の不陸が調整されているので、これに前記下部受け金具3、3及び前記上部受け金具4、4を介して支持されるタイル1、1…の不陸が容易に調整される。
【0132】
この実施例2のトンネル壁面へのタイルの取付構造によれば、前記受け金具用係止片18に構成した、上段側係止部182及び下段側係止部183の両側部に外れ防止片184、184、185、185を配したため、実施例1と同様に、地震等の振動を受けても、下部受け金具3、3及び両側の上部受け金具4、4の外れが確実に防止され、ひいてはタイル1の支持が確実になる。
【0133】
この実施例2のトンネル壁面へのタイルの取付構造によれば、下部受け金具3、3及び上部受け金具4、4のいずれも下部に開く係合溝35、45で、前記受け金具用係止片18の上段側係止部182又は下段側係止部183に係止するものであり、実施例1について述べたと同様の理由でその浮上及び浮上に起因する外れが防止される。
【0134】
<実施例3>
この実施例3のトンネル壁面へのタイルの取付構造は、実施例1の弾性介在物10に代えて浮上防止片(浮上防止部材)19を用いた例であり、その他の構成は実施例1と全て同一である。従って、以下では、該浮上防止片19に重点を置いて説明し、それ以外の事項の説明に関しては必要最小限度にとどめる。なお、実施例1と同一の構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0135】
前記浮上防止片19は、図29(a)〜(c)に示すように、縦長長方形板状の固定片191と、該固定片191の両側辺から直角に折り曲げて前方に突出させた一対の側板1921、1921からなる間隔保持部192と、該間隔保持部192を構成する二つの側板1921、1921の上端からそれぞれ外側方に直角に折り曲げて構成した抑え片193、193とで構成したものである。
【0136】
前記固定片191は、図25〜図28に示すように、前記受け金具用係止片8の固定板81の前面に接合状態に取り付けるものであり、中央部に、その取り付けに利用する、縦方向に長い取付長孔194を開口してある。また該固定片191は、通常、両側のタイル1、1をセットした後にその縦目地部を通じて該受け金具用係止片8の固定板81の前面まで装入し、これによって前記間隔保持部192を、該タイル1、1を支持する両側の上部受け金具4、4の各係合板42の間に装入配置し、その間の寸法を所定の目地寸法を下回らないように保持するものであり、その都合上、該固定片191の横幅は該縦目地の幅を僅かに下回る寸法、即ち、該間隔保持部192の両側板1921、1921の間の寸法とする。
【0137】
以上の固定片191の固定は、前記受け金具用係止片8の固定板81の前面に接合した上で、前記取付長孔194にビス類を装入して行うものであるが、この実施例3では、固定片191は、該固定板81のみにではなく、その背後の前記主受け部材7の結合板72にも同時に固定する。固定にビスを採用する場合は、タッピングビス20を用い、該固定板81及び該結合板72の双方にこれを螺合することで結合固定する。
【0138】
前記側板1921、1921は、前記のように、前記固定片191の両側辺から直角に曲げて前方に突出させるものであるが、前方への突出寸法は抑え片193、193の必要な幅を考慮して決定する。該二つの側板1921、1921は、この二つで、前記のように、間隔保持部192を構成するばかりでなく、それらの上端から抑え片193、193を外側方に屈曲形成するものだからである。そして、該抑え片193、193は、前記受け金具用係止片8の下段側係止部83に係止した上部受け金具4、4の各係合板42の上辺上に配して、該各係合板42の上方への動きを規制することにより、該上部受け金具4、4の浮上を防止し、これによって支持するタイル1、1の浮上を防止しようとするものである。該抑え片193、193は、該上部受け金具4、4の各係合板42をある程度の広い幅で抑え得るようにすることが好ましい。タイル1、1に浮上方向の運動が生じた場合にその荷重を狭い部位に集中させないようにする趣旨である。そこで、たとえば、該抑え片193の幅は、該係合板42の、上部受け金具4の受け金具基部41から背後方向への延長寸法の半分以上程度の幅を有するものとすることが好ましい。この実施例3では該半分を僅かに越える寸法の幅とした。またこれに合わせて該側板1921、1921の前方への突出寸法はこれに対応するものとした。
【0139】
前記抑え片193、193は、従って、以上のような幅で確実に両側の上部受け金具4、4の係合板42の上部を抑えることが可能なだけ側方に突出させたものである。
なお、この浮上防止片19は、その全体をステンレススチールで作成したものである。
【0140】
従ってこの実施例3のトンネル壁面へのタイルの取付構造は、弾性介在物10を除いては実施例1と全く同様の構成であり、図25〜図28に示すように、該弾性介在物10を除く構成は全て同様に作成する。
【0141】
その後、前記受け金具用係止片8の設置してある各位置で、前記浮上防止片19を、隣接する両側のタイル1、1の間の目地を通じて該受け金具用係止片8の固定板81の前面まで装入する。図25〜図28に示すように、このとき、該浮上防止片19は、その固定片191の背面を該固定板81の前面に接合できるように向きを定めて装入する。またこのとき、その高さ方向の装入位置は、云うまでもなく、その二つの抑え片193、193が、両側のタイル1、1を支持する上部受け金具4、4の各係合板42の上辺の直上に位置するように定める。
【0142】
浮上防止片19を、このようにして、受け金具用係止片8の固定板81の前面の所定の位置に位置決めした上で、その固定片191の前面側から取付長孔194にタッピングビス20を挿入し、背後の固定板81及びその更に背後の主受け部材7の結合板72にこれをねじ込み、これらに該固定片191を接合固定し、該浮上防止片19をこの位置に固定する。
【0143】
以上は、タイル1、1…の設置領域の周縁部以外の部位における説明であるが、周縁部では、そのうち最下部の左右両側以外の部位のように、浮上を抑えるべきタイル1、1…が存在しない場合があるとか、その他の周縁部では、左右の内のいずれか一方だけしかないような場合があるが、その場合は、それだけの浮上防止を行うことになるが、前記浮上防止片19によるその浮上の防止の仕方は、先に述べたところと、全て同様である。
【0144】
こうしてこの実施例3においては、地震等の揺動、清掃作業、若しくは何らかの物体がタイル1、1…に衝突するとかにより該タイル1、1に浮上方向及び横方向の運動のいずれか一方又は双方が生じても、該タイル1、1を支持する上部受け金具4、4の各係合板42の浮上が前記受け金具用係止片8の固定板81の前面に固定されている浮上防止片19の抑え片193、193で抑えられているため、結局、その浮上は防止され、浮上防止片19の間隔保持部192の側板1921、1921により、タイル1、1を支持する上部受け金具4、4の各係合板42の間隔の縮小が防止されるので、全体としてその間隔の拡縮が防止され、タイル1、1…は、常時所定の位置に位置決めされていることになる。
【0145】
<実施例4>
この実施例4のトンネル壁面へのタイルの取付構造は、実施例2の弾性介在物100に代えて実施例3で用いた浮上防止片(浮上防止部材)19を用いた例であり、その他の構成は実施例2と全て同一である。従って、以下では、該浮上防止片19の用法に重点を置いて説明し、それ以外の事項の説明に関しては必要最小限度にとどめる。なお、実施例2と同一の構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0146】
従ってこの実施例4のトンネル壁面へのタイルの取付構造は、弾性介在物100を除いては実施例2と全く同様の構成であり、図30〜図33に示すように、該弾性介在物100を除く構成は全て同様に作成する。
【0147】
その後、前記受け金具用係止片18の設置してある各位置で、前記浮上防止片19を、隣接する両側のタイル1、1の間の目地を通じて該受け金具用係止片18の連結板181の前面まで装入する。図30〜図33に示すように、このとき、該浮上防止片19は、その固定片191の背面を該連結板181の前面に接合できるように向きを定めて装入する。またこのとき、その高さ方向の装入位置は、云うまでもなく、その二つの抑え片193、193が、両側のタイル1、1を支持する上部受け金具4、4の各係合板42の上辺の直上に位置するように定める。
【0148】
該浮上防止片19を、このようにして、受け金具用係止片18の連結板181の前面の所定の位置に位置決めした上で、その固定片191の前面側から取付長孔194にコンクリート用ビス21を挿入し、背後の連結板181の長孔186、前記不陸調製板17のスリット171、前記取付金具16の取付板部161の結合用長孔163をそれぞれ貫通して、その背後の壁面Wにねじ込み、これらに該固定片191を接合固定し、該浮上防止片19をこの位置に固定する。なお、該浮上防止片19の設置に先立って、コンクリート用ビス21のための下穴を電動ドリル等を用いて壁面Wの該当する位置に開口しておくものとする。
【0149】
以上は、タイル1、1…の設置領域の周縁部以外の部位における説明であるが、周縁部では、そのうち最下部の左右両側以外の部位のように、浮上を抑えるべきタイル1、1…が存在しない場合があるとか、その他の周縁部では、左右の内のいずれか一方だけしかないような場合があるが、その場合は、それらだけの浮上防止を行うことになるが、前記浮上防止片19によるその浮上の防止の仕方は、先に述べたところと、全て同様である。
【0150】
こうしてこの実施例4においては、地震等の揺動、清掃作業、若しくは何らかの物体がタイル1、1…に衝突するとかにより、該タイル1、1に浮上方向及び横方向の運動のいずれか一方又は双方が生じても、該タイル1、1を支持する上部受け金具4、4の各係合板42の浮上が前記受け金具用係止片18の連結板181の前面に固定されている浮上防止片19の抑え片193、193で抑えられているため、結局、その浮上は防止され、浮上防止片19の間隔保持部192の側板1921、1921により、タイル1、1を支持する上部受け金具4、4の各係合板42の間隔の縮小が防止されるので、全体としてその間隔の拡縮が防止され、タイル1、1…は、常時所定の位置に位置決めされていることになる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造は、土木工事用部材の製造業の分野及び土木工事の分野で有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0152】
1 タイル
2a、2b 支持金具(支持手段)
3 下部受け金具(下部受け部材)
31 下部受け金具の受け金具基部(受け部材基部)
32 下部受け金具の係合板
33 下部受け金具の受け部の抱え片
34 下部受け金具の受け部
35 下部受け金具の係合板に形成した係合溝
4 上部受け金具(上部受け部材)
41 上部受け金具の受け金具基部(受け部材基部)
42 上部受け金具の係合板
43 上部受け金具の受け部の抱え片
44 上部受け金具の受け部
45 上部受け金具の係合板に形成した係合溝
5a アンカーボルト(ボルト類又はビス類)
5b コンクリートビス(ボルト類又はビス類)
6 取付金具(取付手段)
61 取付板部
611 結合長孔
612 結合長孔の回転止め縁
613 取付板部の回転止め縁
62 連結板部
621 板部本体
622 板部本体の側板部
623 板部本体の雌ねじ部
7 主受け部材
71 水平延長板
711 延長板本体
712 延長板本体の側板部
713 延長板本体の長孔
72 結合板
8 受け金具用係止片(受け部材用係止片)
81 受け金具用係止片の固定板
82 上段側係止部
83 下段側係止部
84 上段側係止部の外れ防止片
85 下段側係止部の外れ防止片
9a ボルト(ボルト部材)
9b ナット
10 弾性介在物
100 弾性介在物
11 リベット
12 受け金具用係止片
121 固定板
122 上段側係止部
124 上段側係止部の外れ防止片
16 取付金具(取付手段)
161 取付板部
162 回転止め片
163 結合用長孔
17 不陸調整板
171 ビス避け用のスリット
18 受け金具用係止片(受け部材係止部)
181 連結板
182 上段側係止部
183 下段側係止部
184 上段側係止部の外れ防止片
185 下段側係止部の外れ防止片
186 連結板の結合用の長孔
19 浮上防止片
191 固定片
192 間隔保持部
1921 間隔保持部の側板
193 抑え片
194 取付長孔
20 タッピングビス
21 コンクリート用ビス
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内壁面に縦横に配する正面から見て四辺形の複数のプレート部材と、
前記複数のプレート部材の各々の周囲に生じる目地部中の各交点状部に配する支持手段と、
前記支持手段に配する、その両側上方のプレート部材の下部角部を受ける下部受け部材及びその両側下方のプレート部材の上部角部を受ける上部受け部材と、
で構成したトンネル壁面へのプレート部材の取付構造。
【請求項2】
前記支持手段を、
壁面にボルト類又はビス類を用いて取り付けるための取付板部及び該取付板部から水平前方に延長する連結板部よりなる取付手段と、
前記取付手段の連結板部に不陸調整自在に結合する水平延長板及びその前端に立ち下がる結合板よりなる主受け部材と、
前記主受け部材の結合板に配した前記下部受け部材及び前記上部受け部材を係止する受け部材用係止片と、
で構成した請求項1のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造。
【請求項3】
前記支持手段を、
壁面に複数のボルト類又はビス類を用いて取り付けるための取付板部及びその両側から各々前方に折曲して構成した回転止め片からなる取付手段と、
前記取付手段の取付板部の前面に接合し、該取付板部を取り付けるための複数のボルト類又はビス類の内の一以上のボルト類又はビス類を利用して、該取付板部を介して、該取付板部と共に該壁面に固定する連結板及び該連結板に構成した前記下部受け部材及び前記上部受け部材を係止する受け部材係止部と、
で構成した請求項1のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造。
【請求項4】
前記受け部材係止部を、
前記連結板の上端から前方に張り出して立ち上げた前記下部受け部材を係止するための板状の上段側係止部、及び該連結板の下端から前方に張り出して立ち上げた前記上部受け部材を係止するための板状の下段側係止部で構成し、
前記受け部材係止部に、前記下段側係止部に係止した前記上部受け部材の浮上を防止すべく、該上部受け部材の上部と該受け部材係止部の上段側係止部との間に装入する弾性介在物を付設した請求項3のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造。
【請求項5】
前記取付板部の両側に後方に向けて折曲した回転止め縁を構成した請求項2のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造。
【請求項6】
前記受け部材用係止片を、
前記結合板に接合固定する固定板と、
前記固定板の上端から前方に張り出して立ち上げた前記下部受け部材を係止するための板状の上段側係止部、及び下端から前方に張り出して立ち上げた前記上部受け部材を係止するための板状の下段側係止部と、
前記上段側係止部の両側及び前記下段側係止部の両側にそれぞれ設けた下部受け部材又は上部受け部材の外れ防止片と、
で構成し、
前記受け部材用係止片に、前記下段側係止部に係止した前記上部受け部材の浮上を防止すべく、該上部受け部材の上部と該受け部材用係止片の上段側係止部との間に装入する弾性介在物を付設した請求項2又は5のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造。
【請求項7】
前記下部受け部材を、板状の受け部材基部と、その一側から背後方向に屈曲した係合板であって、前記上段側係止部に外装係止する下部に開く係合溝を備えた係合板と、該受け部材基部の下端から前方に延長しその先端で抱え片を立ち上げてなる受け部とで構成し、 前記上部受け部材を、板状の受け部材基部と、その一側の上部側から背後方向に屈曲した係合板であって、前記下段側係止部に外装係止する下部に開く係合溝を備えた係合板と、該受け部材基部の上端から前方に延長しその先端で抱え片を立ち下げてなる受け部とで構成した請求項4又は6のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造。
【請求項8】
前記連結板部を、板部本体と、その両側から垂下する側板部と、該板部本体の中央付近に形成した下方に突出する雌ねじ部とで構成し、前記主受け部材の水平延長板を、延長板本体と、その両側から垂下する側板部と、該延長板本体の中央付近に長さ方向に沿って開口した長孔であって、該延長板本体を前記板部本体に接合した際に、ボルト部材を、これを通じて貫通させかつ前記雌ねじ部に螺合して、該延長板本体を該板部本体に結合固定可能にするための長孔とで構成した請求項2、5又は6のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造。
【請求項9】
前記受け部材係止部を、
前記連結板の上端から前方に張り出して立ち上げた前記下部受け部材を係止するための板状の上段側係止部、及び該連結板の下端から前方に張り出して立ち上げた前記上部受け部材を係止するための板状の下段側係止部で構成し、
前記受け部材係止部に、前記下段側係止部に係止した前記上部受け部材の浮上を防止すべく、該上部受け部材の上部を抑える抑え片と、該抑え片を備えた固定片であって、トンネル壁面に固設した部材に取付可能な固定片とからなる浮上防止部材を付設した請求項3のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造。
【請求項10】
前記受け部材係止部を、
前記連結板の上端から前方に張り出して立ち上げた前記下部受け部材を係止するための板状の上段側係止部、及び該連結板の下端から前方に張り出して立ち上げた前記上部受け部材を係止するための板状の下段側係止部で構成し、
前記受け部材係止部に、前記下段側係止部に係止した二つの前記上部受け部材の浮上を防止すべく、該二つの上部受け部材の上部のいずれかの部位を抑える抑え片と、該二つの上部受け部材の間に介在し、該二つの上部受け部材の間隔の縮小を防止する間隔保持部と、該抑え片及び該間隔保持部を配した固定片であって、トンネル壁面に固設した部材に取付可能な固定片とからなる浮上防止部材を付設した請求項3のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造。
【請求項11】
前記受け部材用係止片を、
前記結合板に接合固定する固定板と、
前記固定板の上端から前方に張り出して立ち上げた前記下部受け部材を係止するための板状の上段側係止部、及び下端から前方に張り出して立ち上げた前記上部受け部材を係止するための板状の下段側係止部と、
前記上段側係止部の両側及び前記下段側係止部の両側にそれぞれ設けた下部受け部材又は上部受け部材の外れ防止片と、
で構成し、
前記受け部材用係止片に、前記下段側係止部に係止した前記上部受け部材の浮上を防止すべく、該上部受け部材の上部を抑える抑え片と、該抑え片を備えた固定片であって、トンネル壁面に固設した部材に取付可能な固定片とからなる浮上防止部材を付設した請求項2又は5のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造。
【請求項12】
前記受け部材用係止片を、
前記結合板に接合固定する固定板と、
前記固定板の上端から前方に張り出して立ち上げた前記下部受け部材を係止するための板状の上段側係止部、及び下端から前方に張り出して立ち上げた前記上部受け部材を係止するための板状の下段側係止部と、
前記上段側係止部の両側及び前記下段側係止部の両側にそれぞれ設けた下部受け部材又は上部受け部材の外れ防止片と、
で構成し、
前記受け部材用係止片に、前記下段側係止部に係止した二つの前記上部受け部材の浮上を防止すべく、該上部受け部材の上部のいずれかの部位を抑える抑え片と、該二つの上部受け部材の間に介在し、該二つの上部受け部材の間隔の縮小を防止する間隔保持部と、該抑え片及び該間隔保持部を配した固定片であって、トンネル壁面に固設した部材に取付可能な固定片とからなる浮上防止部材を付設した請求項2又は5のトンネル壁面へのプレート部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2011−214390(P2011−214390A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43739(P2011−43739)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(500332984)株式会社ヒロコーポレーション (15)
【Fターム(参考)】