説明

トンネル掘削土の利用方法

【課題】トンネル施工に際して発生する掘削土をトンネル内において有効利用する。
【解決手段】トンネル掘削に際して発生するトンネル掘削土をトンネル内で改質処理してトンネル内において有効利用するためのトンネル掘削土の利用方法であって、掘削土をトンネル掘削機1の後方に搬送する途中でその一部をトンネル内で分配し、該掘削土に生石灰を添加して攪拌混合しつつ後方へ搬送して1次改質土を調整し、該1次改質土に固化材をさらに添加して攪拌混合することにより2次改質土を調整し、該2次改質土をトンネル内において利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削に際して発生する掘削土をトンネル内で改質処理してトンネル内において有効利用するためのトンネル掘削土の利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法等のトンネル掘削工法においては、切羽で発生する多量の掘削土をトンネル内において有効利用するべく、掘削土をトンネル内において改質処理して裏込材や路床部への埋め戻し土として利用することが提案されている。
たとえば、特許文献1には泥水シールド機からの排泥を細粒分と粗粒分とに分別処理して注入材料や締め固め材料としてリサイクルするための方法と装置についての開示があり、特許文献2には掘削土として排出される泥土と固化材との混合攪拌物を路床部に埋め戻す工法についての開示があり、特許文献3には同じく掘削泥土に固化剤を添加して路床部に埋め戻して路床を形成する工法についての開示がある。
【特許文献1】特許第2527289号公報
【特許文献2】特開2005−139840号公報
【特許文献3】特開2007−162403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、現時点では掘削土をトンネル内において効率的に改質処理して有効利用するための有効適切な手法は確立されていない。上記の各先行文献にも掘削土を有効利用するための方法と装置についての概念的な記載があるのみで、それを実施するための具体的な処理工程やそのための装置構成については必ずしも充分に記載されておらず、いずれも普及するに至っていない。
【0004】
上記事情に鑑み、本発明はトンネル掘削土を有効利用することを可能とする有効適切な利用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はトンネル掘削に際して発生するトンネル掘削土をトンネル内で改質処理してトンネル内において有効利用するためのトンネル掘削土の利用方法であって、掘削土をトンネル掘削機の後方に搬送する途中でその一部をトンネル内で分配し、該掘削土に生石灰を添加して攪拌混合しつつ搬送して1次改質土を調整し、該1次改質土に固化材をさらに添加して攪拌混合することにより2次改質土を調整し、該2次改質土をトンネル内において利用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、トンネル掘削機から坑口に向かって搬送される掘削土の一部をトンネル内において分配し、その掘削土をトンネル内において改質処理したうえでトンネル内において利用するものであるが、掘削土を改質処理するに当たっては、掘削土に対して生石灰を添加して攪拌混合することによる1次改質と、さらに高炉セメント等を固化材として添加して攪拌混合することによる2次改質とを前後2段階に分けて行うことにより、1次改質では掘削土の含水率を有効に低下させ、かつ掘削土を充分に団粒化させることができ、したがって2次改質では攪拌効果が高められたものとなり、その2次改質土をトンネル内において埋め戻し土等として有効利用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜図5を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は道路トンネルの施工に際してトンネル掘削機1の後方に処理装置10を設置し、トンネル掘削機1から坑口に向かって搬送される掘削土の一部をこの処理装置10に分配供給してそこで改質処理し、その改質土を路床部への埋め戻し土として有効利用して盛土による路床2を施工している状況を示す概要図である。
【0008】
図示例のトンネル掘削機1は泥土圧シールド工法によるシールド掘削機であって、それによる掘削土は泥土の状態で1次スクリュウコンベア3a、2次スクリュウコンベア3b、3次スクリュウコンベア3c、ベルトコンベア3dにより構成される一連の排土手段3により坑口側へ搬送されて排土されるようになっている。
なお、処理装置10によって改質処理するべき掘削土量(すなわち、トンネル内において有効利用するべき掘削土量)は、路床2の造成に必要な土量相当分とすれば良いが、たとえば掘削土の全量の15%程度として85%は通常のように排土すれば良い。
【0009】
上記の処理装置10は、トンネル掘削機1の掘進に追従して前進可能な移動架台11上に処理装置本体12を搭載した構成とされ、その全体がトンネル掘削機1および排土手段3と同期して前進しながら、上記の3次スクリュウコンベア3cに組み込まれている掘削土分配供給機構13から分配供給される掘削土を処理装置本体12により改質処理して、それを埋め戻し土として路床部に直接投入するように構成されている。
【0010】
移動架台11は、図2〜図4に示すようにトンネルの両側壁部に設けられたブラケット4間に架設されているとともに、ブラケット4上に敷設された軌条5により支持案内されてトンネル底部を跨ぐ状態で前進可能に設置され、施工進捗に応じてトンネル掘削機1の掘進に追従してジャッキ等の駆動手段によって前進するように構成されている。ブラケット4や軌条5としてはH形鋼を使用し、それを施工済みのセグメントに対して固定すれば良い。
移動架台11の下方には、本実施形態の処理装置10から路床部に投入される埋め戻し土をブルドーザや振動ローラ等の適宜の路床施工機械6を用いて敷き均し、転圧することによって路床2を施工するために必要とされる充分な作業空間が確保されている。
【0011】
処理装置本体12は、図3に示すように移動架台11上の一方の側部(図3では右側部)に搭載されていて、その上部には上記の3次スクリュウコンベア3cが配置され、その3次スクリュウコンベア3cには処理装置本体12に対して掘削土の一部を分配供給するための掘削土分配供給機構13が組み込まれている。掘削土分配供給機構13としては、たとえば図5に示すように油圧シリンダ13aにより開閉可能なゲート13bによるものが好適に採用可能である。
なお、図示例では図1に示すように2台の移動架台11a、11bを連結した構成とされていて、処理装置本体12の構成要素のうちの固化材サイロ17(後述)を後側の移動架台11bに搭載して他は前側の移動架台11aに搭載しているが、処理装置本体12の全体を1台の移動架台11に搭載可能であればそのようにしても良い。
いずれにしても、図3に示すように移動架台11上の中央部および他方の側部にはトンネル掘削機1に付設される各種の機器類の設置スペースや作業スペースあるいは作業通路として任意に利用可能とされ、また図1に示すように処理装置本体12を搭載している移動架台11の前後にはトンネル掘削に関わる各種装置類を搭載するための他の移動架台7が適宜連結可能とされ、処理装置10を設置するがためにトンネル施工に関わる他の作業に支障をきたすことはない。
【0012】
処理装置本体12は、図5にその処理フローとともに概略構成を示すように、ホッパー14と、生石灰供給機構としての生石灰サイロ15と、1次攪拌混合機構としての2軸連続混合機16と、固化材供給機構としての固化材サイロ17と、2次攪拌混合機構としての2軸強制ミキサー18とを備えた構成とされ、上述したようにそれらのうち固化材サイロ17が後側の移動架台11bに搭載されている以外は前部側の移動架台11aに搭載されているものである。
【0013】
この処理装置本体12では、3次スクリュウコンベア3cから掘削土分配供給機構13によりホッパー14に供給された掘削土と、生石灰サイロ15に貯留されていた生石灰とがそれぞれ2軸連続混合機16(1次攪拌混合機構)に連続的に供給されることで分散して均一に添加供給されて、そこで後方に搬送されながら攪拌混合されてまず1次改質土が調製されるようになっている。
次いで、1次改質土はベルトコンベア19により2軸強制ミキサー18(2次攪拌混合機構)に送られるとともにそこには固化材サイロ17から固化材としての高炉セメントが供給され、2軸強制ミキサー18において1次改質土と固化材とがさらに攪拌混合されて2次改質土が調製され、その2次改質土は図3〜図4に示すように2軸強制ミキサー18から移動架台11の下方に直接投入されて路床部への埋め戻し土とされ、そこで路床施工機械6により敷き均され転圧されることによって盛土による路床2が施工されるようになっている。
【0014】
なお、上記の処理装置10による場合、掘削土に対する生石灰および固化材(高炉セメント)の添加量は、改質対象の掘削土の土質や要求される改質程度に応じて適宜設定すれば良いが、一例を挙げれば、掘削土の粒度構成が礫質12%、砂分49%、シルト分24%、粘土分15%、含水比27%の場合において、それを路床用の埋め戻し土として利用するべく設計強度0.33N/mm2の改質土に調製するためには、生石灰量と高炉セメント量の配合比を3:7としたうえでそれらの総量を掘削土1m3につき50kg(つまり生石灰15kg、高炉セメント35kg)とすることが好適である。
勿論、掘削土に対する生石灰量と固化材量の配合量や配合比は掘削土の土質や設計強度に応じて適宜増減すれば良く、一般的には掘削土が砂質土系の場合にはセメント量を多くし、粘土質系では生石灰量を多くすることが有効とされているので、事前に掘削土の土質を調査するとともに必要に応じて予備試験等を実施することにより最適な配合量と配合比を決定すれば良い。また、2次改質土を調製するための固化材としては上記のように高炉セメントが好適に採用可能であるが、それに限るものでもなく最適なものを選択して採用すれば良い。
【0015】
上記の処理装置10によれば、掘削土に対して生石灰を添加して攪拌混合することによる1次改質と、さらに高炉セメント等の固化材を添加して攪拌混合することによる2次改質とを前後2段階に分けて行うことにより、次のように掘削土に対して有効かつ効率的な改質処理が可能である。
【0016】
前段の1次改質においては2軸連続混合機16により掘削土と生石灰とを後方へ移送しながら連続的に攪拌混合するので、その移送の間に掘削土と生石灰とが効果的にかつ均質に攪拌混合されてそれらの水和反応(吸水反応や発熱反応、吸着反応)によって掘削土全体の含水率を有効に低下させることができるとともに充分に団粒化させることができ、それにより1次改質土の締め固め度を向上させ得るとともに、粘性土の粘着力を低下させることができ、したがって1次攪拌混合時および後段の2次攪拌混合時の双方において機器への掘削土の付着を防止できて優れた攪拌効率を確保することができる。
【0017】
また、上記のような2軸連続混合機16による1次改質のみでは早期の強度発現や長期間にわたる強度維持が必ずしも充分ではないので、1次改質に引き続いて高炉セメント等を固化材として2軸強制ミキサー18による2次攪拌混合による2次改質を行うことにより、最終的な2次改質土の強度が早期に発現し、かつその強度を長期間にわたって安定に確保することが可能となり、以上により掘削土からの改質土を路床2を施工するための埋め戻し土として有効利用することが可能となる。
【0018】
なお、上記のように1次改質と2次改質とに分けることなく、掘削土に対して生石灰と固化材とを同時に添加して1度で攪拌混合することも考えられようが、その場合には必ずしも均質な攪拌混合効果は期待できず、また特に高含水の粘性土では改質土が混合機構や搬送機構に多量に付着してしまうことも不可避であって効率的な攪拌混合を行い得ず、したがって掘削土に対して生石灰と固化材とを同時に混合して1度で攪拌混合するようなことは現実的ではない。換言すると、1次改質と2次改質とに2段階に分けて行うことによって初めて改質品質の確保と改質工程の効率化を併せて実現できるのであり、その結果、掘削土の高度有効利用が可能となったといえる。
【0019】
さらに、上記の処理装置10では、2次攪拌混合により調製した2次改質土をそのままその直下の路床部に投入するので、処理装置10の後段には改質土をさらに搬送するための格別の搬送手段は不要であり、したがって本実施形態の処理装置10は改質工程を2段に分けて行うにもかかわらず全体の構成は充分に合理的であって簡略かつコンパクトであり、設備費および運転費の軽減を図ることができる。なお、上記では2軸連続混合機16からの1次改質土をベルトコンベア19により2軸強制ミキサー18に移送するようにしたが、そのベルトコンベア19も省略して1次改質土を2軸連続混合機16から2軸強制ミキサー18に直接供給することも可能であり、そのようにすれば処理装置10全体の構成をさらに簡略化することができる。
【0020】
また、移動架台11の下方空間には路床2としての盛土を造成するための作業空間が確保されているので、2次攪拌混合機構としての2軸強制ミキサー18から路床部に直接投入された改質土の敷き均し工程や転圧工程は、直ちにブルドーザや振動ローラ等の汎用の路床施工機械6を用いて効率的に実施することができる。なお、それらのブルドーザや振動ローラによる路床部での作業は無線操縦等による遠隔操作により無人にて行うことも可能である。
そして、トンネル掘削機1の掘進に伴って処理装置10を前進させていきつつ掘削土を連続的に改質して路床部に投入し、移動架台11の下方において路床2を連続的に造成していくことにより、盛土による路床2を極めて効率的に施工できてその供用を早期に開始することができ、掘削土の有効利用による資材削減と排土量削減とも相まって路床2の施工に関わる工費削減と工期短縮に大きく寄与することができる。
なお、本実施形態では2軸連続混合機16による1次改質土は後方に搬送しているが、搬送方向はこれに限られるものではなく、現場状況に合わせて適宜決めれば良い。
【0021】
以上で本発明の一実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで好適な一例であって本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、掘削土を有効利用するために生石灰を攪拌混合する1次改質とさらに固化材とを攪拌混合する2次改質との2段階の改質処理を行ったうえで、その改質土をトンネル内において様々な用途に利用すれば良いのであって、その限りにおいて改質土の利用形態や、そのための処理工程と処理装置の具体的な構成その他については、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜の設計的変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態を示すもので、掘削土を路床部への埋め戻し土として有効利用するべく掘削土を処理装置により改質処理して路床部へ投入している状況を示す概要図である。
【図2】同、処理装置における移動架台の概略構成を示す斜視図である。
【図3】同、移動架台の概略構成を示す正面図である。
【図4】同、処理装置本体の概略構成を示す側面図である。
【図5】同、処理装置本体の概略構成とその処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 トンネル掘削機
2 路床
3 排土手段
3a 1次スクリュウコンベア
3b 2次スクリュウコンベア
3c 3次スクリュウコンベア
3d ベルトコンベア
4 ブラケット
5 軌条
6 路床施工機械
7 移動架台
10 処理装置
11(11a、11b) 移動架台
12 処理装置本体
13 掘削土分配供給機構
13a 油圧シリンダ
13b ゲート
14 ホッパー
15 生石灰サイロ(生石灰供給機構)
16 2軸連続混合機(1次攪拌混合機構)
17 固化材サイロ(固化材供給機構)
18 2軸強制ミキサー(2次攪拌混合機構)
19 ベルトコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削に際して発生するトンネル掘削土をトンネル内で改質処理してトンネル内において有効利用するためのトンネル掘削土の利用方法であって、
掘削土をトンネル掘削機の後方に搬送する途中でその一部をトンネル内で分配し、該掘削土に生石灰を添加して攪拌混合しつつ搬送して1次改質土を調整し、該1次改質土に固化材をさらに添加して攪拌混合することにより2次改質土を調整し、該2次改質土をトンネル内において利用することを特徴とするトンネル掘削土の利用方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−108583(P2009−108583A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281710(P2007−281710)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】