説明

トンネル掘削方法

【課題】爆薬の装填を好適に行うことが可能なトンネル掘削方法を提供する。
【解決手段】トンネルの切羽面T1からトンネルの掘進方向に向けて地盤Gに複数の発破孔4を穿孔するとともに発破孔4に爆薬2と発破孔4を填塞する込め物3を装填し、爆薬2を爆発させて地盤Gを掘削してゆくトンネル掘削方法において、爆薬2が供給される一方の空間7及び込め物3が供給される他方の空間8の2つの空間を有して構成された供給管部5と、発破孔4に挿入され順次発破孔4から引き抜かれる供給管部5の開口する先端5cから爆薬2と込め物3をそれぞれ吐出させる圧送手段6とを備える爆薬装填装置1を用い、圧送手段6を制御して供給管部5の先端5cから吐出する爆薬2と込め物3のそれぞれの吐出量を制御しながら発破孔4に爆薬2と込め物3を装填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの切羽面からトンネルの掘進方向に向けて地盤に穿孔した複数の発破孔に爆薬と発破孔を填塞する込め物を装填し、爆薬の爆発エネルギーによって地盤を掘削するトンネル掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削では、例えばドリルジャンボなどの削孔機を用いてトンネル切羽面から掘削計画に平行する複数の発破孔を穿孔し、この発破孔に爆薬や雷管、込め物を装填して、爆薬の爆発エネルギーにより地盤を掘削することが行なわれている。また、発破孔を例えば4〜5m程度の長孔で形成しこの長孔内に爆薬を分散装薬し、一度に大量の岩盤(地盤)を掘削する、いわゆる長孔発破により効率よく掘削することが行なわれている。
【0003】
一方、発破孔への爆薬の装填は、カートリッジ式の爆薬を用いる場合には、作業者の手作業で発破孔に爆薬を装填することになり作業者が発破孔に接近することになるため、危険性が高くかつ装填に長時間を要するという問題があった。このため、発破孔内に挿入される供給管と、この供給管に爆薬を供給するポンプ(圧送手段)を備える爆薬装填装置を用い、粒状体の硝安油剤爆薬(ANFO)や糊状で流動性があるバルク含水爆薬(エマルション爆薬やスラリー爆薬などの含水爆薬)などの爆薬を圧送しつつ供給管の開口する先端から吐出させて、機械的に爆薬を発破孔に装填することが行われている。そして、この爆薬装填装置を用いて装薬することで、装填時間の短縮や省力化が図られ、また安全に装薬することが可能になる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−83700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発破孔に爆薬を機械装填する場合には、ポンプで圧送された爆薬が、発破孔に密充填されてしまい、デカップリング指数(爆薬径に対する発破孔径の割合)を大きくする装薬、すなわち発破孔の間隔を狭くして低密度で爆薬を装填するスムースブラスティングなどに対応できないという問題があった。
【0005】
また、必要以上に密装填となることで爆薬使用量が増加するという問題があった。すなわち、例えば発破孔の孔底側に爆薬を密充填し発破孔の中央部の爆薬径をやや細くすると、爆発エネルギーに対して掘削が効率的に行えるが、発破孔の孔長全体に爆薬が密充填された場合には、爆薬使用量が多いにもかかわらず掘削効率が低下してしまう。
【0006】
さらに、爆薬を機械装填する場合には、ポンプなどで圧送装填する関係上、粒状、糊状、液体状の爆薬を使用することになり、発破孔が上向き孔である場合に流動性のある爆薬が発破孔から流れ出してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、爆薬の装填を好適に行うことが可能なトンネル掘削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明のトンネル掘削方法は、トンネルの切羽面から前記トンネルの掘進方向に向けて地盤に複数の発破孔を穿孔するとともに該発破孔に爆薬と前記発破孔を填塞する込め物を装填し、前記爆薬を爆発させて前記地盤を掘削してゆくトンネル掘削方法において、前記爆薬が供給される一方の空間及び前記込め物が供給される他方の空間の2つの空間を有して構成された供給管部と、前記発破孔に挿入され順次前記発破孔から引き抜かれる前記供給管部の開口する先端から前記爆薬と前記込め物をそれぞれ吐出させる圧送手段とを備える爆薬装填装置を用い、前記圧送手段を制御して前記供給管部の先端から吐出する前記爆薬と前記込め物のそれぞれの吐出量を制御しながら前記発破孔に前記爆薬と前記込め物を装填することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のトンネル掘削方法においては、前記発破孔に、前記爆薬のみが装填される爆薬層と、前記爆薬及び前記込め物が積層して装填される共存層と、前記込め物のみが装填される込め物層とが形成されるように、前記爆薬と前記込め物のそれぞれの吐出量を制御することが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトンネル掘削方法によれば、供給管部からの爆薬と込め物のそれぞれの吐出量を制御することによって、発破孔に爆薬もしくは込め物を密装填した部分や爆薬と込め物をともに装填して爆薬を細径装填した部分を形成することができる。また、爆薬及び込め物の吐出量(圧送圧力)や発破孔からの供給管部の引き抜き速度を調整することで、爆薬及び込め物の装填密度を調整することができ、込め物のタンピングをも行なうことができる。そして、このように爆薬及び込め物を発破孔に好適な状態で自在に装填できることによって、安全性を向上させることができる。また、スムースブラスティングへの対応が可能になるとともに、爆薬使用量の増加を防止できる。そして、発破孔が上向き孔である場合においても、込め物を吐出することで爆薬が発破孔から流れ出すことを防止できる。よって、トンネル掘削の施工性を確実に向上させることができる。
【0012】
また、上記のように、爆薬のみが装填される爆薬層と、爆薬及び込め物が積層して装填される共存層と、込め物のみが装填される込め物層とを自在に形成できることによって、1つの発破孔内に爆薬層と共存層と込め物層からなる組を複数並べて形成することができ、各組の爆薬を多段階で爆発させることによって効率的に地盤を掘削してゆくことが可能になり、長孔発破を好適に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係るトンネル掘削方法について説明する。本実施形態は、例えばドリルジャンボなどの削孔機を用いてトンネル切羽面から掘削方向に向けて形成した複数の発破孔に爆薬及び込め物を機械的に装填する方法に関するものである。
【0014】
本実施形態の爆薬装填装置1は、図1に示すように、爆薬2及び込め物3を発破孔4に装填するための供給管部5と、図示せぬ爆薬収容容器及び込め物収容容器に接続され、供給管部5に爆薬2及び込め物3をそれぞれ供給する二つのポンプ(図示せぬ)を有する圧送手段6とを備えて構成され、例えばトリルジャンボに一体に取り付けられている。ここで、本実施形態における爆薬2は、粒状体の硝安油剤爆薬(ANFO)や糊状のバルク含水爆薬(エマルション爆薬やスラリー爆薬などの含水爆薬)などの流動性のある爆薬とされる。また、込め物3は、圧送手段6によって圧送可能な粘性(流動性)を有する粘土等である。
【0015】
一方、本実施形態の供給管部5は、1本の供給管5aからなり、この供給管5aの内孔が軸線O1を通り径方向に延びる仕切部材5bによって軸線O1に沿う2つの空間7、8に区画されている。そして、2つの空間7、8のうち、一方の空間7は、圧送手段6の駆動とともに爆薬2が、他方の空間8は、込め物3がそれぞれ圧送される。そして、供給管5aを圧送された爆薬2と込め物3は、供給管5aの開口する先端(供給管部5の先端)5cから吐出される。また、このとき、爆薬2及び込め物3は、圧送手段6の二つのポンプをそれぞれ選択的に駆動し、また爆薬2と込め物3の圧送流量比を変えるように二つのポンプの駆動をそれぞれ制御することによって、供給管5aの先端5cからのそれぞれの吐出量が可変とされる。なお、この爆薬装填装置1は、削孔機と分離して設けられてもよい。
【0016】
ついで、上記構成からなる爆薬装填装置1を用いて発破孔4に爆薬2及び込め物3を装填する方法について説明し、本実施形態のトンネル掘削方法の作用及び効果について説明する。
【0017】
例えば削孔機を用いてトンネル切羽面T1から掘削方向に向けて複数の発破孔4を形成し、発破孔4の孔底4aに雷管9又は雷管9を付けた親ダイを設置した段階で、図2に示すように、爆薬装填装置1の供給管5a(供給管部5)を発破孔4に挿入する。このとき、供給管5aの先端5cが発破孔4の孔底4a付近に配されるように供給管5aを挿入する。そして、圧送手段6の込め物3を圧送する方のポンプを停止させた状態で、爆薬2を圧送する方のポンプを駆動するように制御し、供給管5aの先端5cから爆薬2のみを吐出させて発破孔4の孔底4a側を爆薬2によって密充填させる。
【0018】
ついで、爆薬2の吐出を継続した状態で供給管5aの引き抜きを開始し、発破孔4の孔底4aから開口4b側に向けた所定の長さ範囲の部分に爆薬2が密充填された爆薬層10を形成した段階で、圧送手段6の込め物3を圧送する方のポンプを駆動させるとともに爆薬2を圧送する方のポンプ駆動を小とするように制御し、爆薬2の吐出量を少なくするとともに込め物3の吐出を開始する。このとき、図3に示すように、爆薬2は流動性を有するため発破孔4の下方にのみ装填され、その上部に込め物3が積層するように装填されてゆく。すなわち、この部分の発破孔4に共存層11が形成され細径の爆薬2が装填される。また、供給管5aの引き抜き速度や込め物3の吐出量(圧送圧力)あるいは爆薬2の吐出量(圧送圧力)またはこれら双方を調整することによって、爆薬2の上方に積層された込め物3がタンピングされた状態で装填され、発破孔4が爆薬2と込め物3によって填塞される。
【0019】
ついで、発破孔4の中央部の所定の長さ範囲に爆薬2及び込め物3を装填した段階で、圧送手段6の込め物3を圧送する方のポンプ駆動を大にするとともに爆薬2を圧送する方のポンプの駆動を停止するように制御し、供給管5aからの爆薬2の供給を停止し込め物3の吐出量を多くする。これにより、図1に示すように、発破孔4の開口4b側の部分に込め物3のみが密装填された込め物層12が形成されて発破孔4が填塞され、爆薬2及び込め物3の発破孔4への装填が完了する。そして、上記のように爆薬層10と共存層11と込め物層12を形成して発破孔4に爆薬2を装填して爆発させた場合には、爆薬2の爆発エネルギーが効果的に地盤Gに伝達され、効率よく地盤Gが掘削される。
【0020】
なお、ここで爆薬2と込め物3の吐出量の制御について具体的に説明する。発破孔4の断面積は決まっているものであるから、供給管5aの引き抜き長さから密充填する爆薬2と込め物3の合算吐出量は定まる。引き抜き長さに応じた合算吐出量を満たしつつ爆薬2と込め物3の吐出量をそれぞれ制御して、爆薬層10や込め物層12や共存層11を形成すればよい。そして、これらの制御は、引き抜き長さを計測するセンサや爆薬2や込め物3の積算流量計等の各種計測器からの情報を基に、それぞれのポンプ駆動やバルブ開閉の制御を行なうもので、手動で行なうものであっても自動で行なうものであってもよい。
【0021】
したがって、本実施形態のトンネル掘削方法によれば、1本の供給管5aで構成された供給管部5からの爆薬2と込め物3のそれぞれの吐出量を制御することによって、発破孔4に爆薬2もしくは込め物3を密装填した爆薬層10や込め物層12、爆薬2と込め物3をともに装填して爆薬2を細径装填した共存層11を形成することができる。
【0022】
また、爆薬2及び込め物3の吐出量(圧送圧力)や発破孔4からの供給管5aの引き抜き速度を調整するという簡易な操作で、爆薬2及び込め物3の装填密度を調整することができ、込め物3のタンピングをも機械的に行なうことができる。これにより、従来、手作業で行なわれていた込め物3の装填を爆薬装填装置1で機械的に行なうことができるため、作業員が発破孔4に近づくことを不要にできるとともに、爆薬装填に掛かる時間の短縮を図ることができる。よって、施工性及び安全性を向上させることが可能になる。
【0023】
また、従来の爆薬装填装置では、例えば本実施形態における共存層11にも爆薬2が密装填されてしまうのに対し、本実施形態のトンネル掘削方法では、自在に共存層11を形成できるため、不要な爆薬2が発破孔4に装填されることがなく、爆薬使用量の増加を防止できる。
【0024】
さらに、発破孔4の間隔を狭くして低密度で爆薬2を装填するスムースブラスティングを行う場合においても、爆薬2の吐出量を制御することによって容易に対応することができ、また、発破孔4が上向き孔である場合においても、すなわち開口4bから孔底4aに向かうに従い漸次上方に向かうように形成された発破孔4に爆薬2を装填する場合においても、孔底4a側に供給された爆薬2が開口4b側に流下する前に込め物3を供給することで、確実に発破孔4内に爆薬2を装填することができる。これにより、爆薬2が発破孔4から流れ出すことを防止することができ、発破孔4の長さ範囲に所定量の爆薬2を確実に装填することができる。
【0025】
また、例えば図4に示すように、1つの発破孔4に爆薬層10と共存層11と込め物層12とからなる組13を複数並べて形成することも容易に行なうことができ、このように爆薬2を装填した場合には、各組13の爆薬2を切羽側から多段階で爆発させることによって効率的に地盤Gを掘削することが可能になる。これにより、例えば従来では発破孔4の穿孔、爆薬2の装填、込め物3の装填、発破、掘削ガラの撤去を繰り返しながら地盤Gを所定の掘削長で掘削してゆくのに対し、一度の爆薬装填作業によって所定の掘削長を掘削することができ、掘削サイクルの向上及び掘削単価の低減を図ることができ、施工性及び経済性を大幅に向上させることが可能になる。
【0026】
以上、本発明に係るトンネル掘削方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、供給管部5が1本の供給管5aからなり、この供給管5aの内孔が軸線O1を通り径方向に延びる仕切部材5bによって軸線O1に沿う2つの空間7、8に区画されて、爆薬2が圧送(供給)される一方の空間7と、込め物3が圧送される他方の空間8とが供給管部5に具備されているものとしたが、供給管部5は、例えば、内管と外管からなる二重管とされ、一方の空間7を内管の内孔とし、他方の空間8を内管と外管の間の空間として構成されてもよく、また、2本の供給管を束ねて構成し、各供給管の内孔がそれぞれ一方の空間7と他方の空間8とされてもよい。なお、二重管の場合は、内管の内孔空間7には爆薬2を、内管と外管との空間8には込め物3を圧送するようにするのが好ましい。またこの場合の共存層11の積層形状は、供給管5aの管軸方向に同心あるいは偏心状の積層形状となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るトンネル掘削方法において、発破孔に爆薬を装填した状態を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るトンネル掘削方法において、発破孔の孔底側に爆薬を装填して爆薬層を形成した状態を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るトンネル掘削方法において、発破孔に爆薬と込め物を同時に装填して共存層を形成した状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るトンネル掘削方法において、爆薬層と共存層と込め物層からなる組を複数発破孔に形成した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 爆薬装填装置
2 爆薬
3 込め物
4 発破孔
4a 孔底
4b 開口
5 供給管部
5a 供給管
5b 仕切部材
5c 先端
6 圧送手段
7 一方の空間
8 他方の空間
9 雷管
10 爆薬層
11 共存層
12 込め物層
13 組
G 地盤
T1 切羽面
O1 供給管の軸線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの切羽面から前記トンネルの掘進方向に向けて地盤に複数の発破孔を穿孔するとともに該発破孔に爆薬と前記発破孔を填塞する込め物を装填し、前記爆薬を爆発させて前記地盤を掘削してゆくトンネル掘削方法において、
前記爆薬が供給される一方の空間及び前記込め物が供給される他方の空間の2つの空間を有して構成された供給管部と、前記発破孔に挿入され順次前記発破孔から引き抜かれる前記供給管部の開口する先端から前記爆薬と前記込め物をそれぞれ吐出させる圧送手段とを備える爆薬装填装置を用い、前記圧送手段を制御して前記供給管部の先端から吐出する前記爆薬と前記込め物のそれぞれの吐出量を制御しながら前記発破孔に前記爆薬と前記込め物を装填することを特徴とするトンネル掘削方法。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル掘削方法において、
前記発破孔に、前記爆薬のみが装填される爆薬層と、前記爆薬及び前記込め物が積層して装填される共存層と、前記込め物のみが装填される込め物層とが形成されるように、前記爆薬と前記込め物のそれぞれの吐出量を制御することを特徴とするトンネル掘削方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−297884(P2007−297884A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128968(P2006−128968)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)