トンネル掘削機
【課題】 トンネル掘削機において、掘削機前方の全ての領域を遠方まで精度良く探査することで容易に障害物を探査可能とする。
【解決手段】 カッタヘッド12の前面部に受信アンテナ25とこの受信アンテナ25の外周辺に近接して4つの送信アンテナ21,22,23,24を配設し、長距離探査では、同期制御装置28が各送信アンテナ21〜24による電磁波の同時送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御し、広範囲探査では、同期制御装置28が各送信アンテナ21〜23による電磁波の断続的な送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御し、解析装置30が受信アンテナ25が受信した受信信号とロータリエンコーダ29が検出したカッタヘッド12の回転角度から、障害物P(P1 ,P2 ,P3 )の位置と距離を高精度に演算処理する。
【解決手段】 カッタヘッド12の前面部に受信アンテナ25とこの受信アンテナ25の外周辺に近接して4つの送信アンテナ21,22,23,24を配設し、長距離探査では、同期制御装置28が各送信アンテナ21〜24による電磁波の同時送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御し、広範囲探査では、同期制御装置28が各送信アンテナ21〜23による電磁波の断続的な送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御し、解析装置30が受信アンテナ25が受信した受信信号とロータリエンコーダ29が検出したカッタヘッド12の回転角度から、障害物P(P1 ,P2 ,P3 )の位置と距離を高精度に演算処理する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、前方の地盤にカッタヘッドでは掘削が困難な障害物があった場合に、この障害物を事前に探査する探査機能を有するトンネル掘削機に関する。
【0002】
【従来の技術】図14に障害物探査機能を有する従来のシールド掘削機の概略を示す。
【0003】従来のシールド掘削機において、図14に示すように、筒状の掘削機本体101の前部にはカッタヘッド102が回転自在に装着されており、このカッタヘッド102の前面には図示しない多数のカッタビットが固定されており、カッタヘッド102は図示しない旋回モータによって回転可能となっている。また、掘削機本体101の後部には周方向に図示しない複数のシールドジャッキが並設されており、このシールドジャッキが伸長することで、既設のセグメントからの反力によって掘削機本体101が前進することができる。
【0004】従って、トンネルを掘削形成するには、まず、旋回モータによりカッタヘッド102を回転させながら、複数のシールドジャッキを伸長してその押し付け反力によって掘削機本体101を前進させことで、カッタヘッド102の多数のカッタビットが前方の地盤を掘削し、トンネルを掘削形成することができる。
【0005】ところで、シールド掘削機によるトンネルの掘削中に、前方の地盤に予期せぬ障害物、例えば、シートパイルやH型鋼杭、鉄筋コンクリート杭などが発見された場合、カッタヘッド102ではこれを破砕することができない。そのため、シールド掘削機には地中レーダなどからなる探査機構が設けられており、この探査機構によって前方の地盤に存在する障害物を事前に探査し、トンネルの上方の地面を開削してこの障害物を除去したり、振動杭打ち機などを利用して障害物を抜き取っていた。
【0006】即ち、従来のシールド掘削機において、カッタヘッド102の前面部には電磁波を送信する送信アンテナ111と反射した電磁波を受信する受信アンテナ112が並んで装着されている。従って、回転するカッタヘッド102によって前方の地盤を掘削しているとき、送信アンテナ111から前方に向かって電磁波が放射すると、電磁波は障害物によって反射し、受信アンテナ112がこの反射した電磁波を受信することで、その受信レベルから障害物までの距離を算出することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、探査機構によって前方の障害物を探査する場合、探査精度を向上させるためにはアンテナの指向性を良くする必要がある。また、探査機構によって遠方の障害物を探査するためには、アンテナの形状を大きくする必要がある。ところが、上述した従来のシールド掘削機では、カッタヘッド102の前面部の一部に送信アンテナ111と受信アンテナ112からなる一組の探査機構が設けられているだけであり、カッタヘッド102の回転時に、この探査機構による探査領域は図14に二点鎖線で表した近距離の領域Aであり、シールド掘削機の遠方の全ての領域を探査することができないという問題がある。
【0008】そして、シールド掘削機の遠方の全ての領域を探査するためには、送信アンテナ111と受信アンテナ112とからなる探査機構を複数設けたり、形状を大きくしなければならず、コスト高となってしまう。また、カッタヘッド102の前面部には前方の地盤を掘削するための多数のカッタビットが装着されており、送信アンテナ111及び受信アンテナ112の装着スペースに制約があり、数を増やしたり、大きくしたりすることはできなかった。
【0009】本発明はこのような問題を解決するものであって、掘削機前方の全ての領域を遠方まで精度良く探査することで容易に障害物を探査可能としたトンネル掘削機を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するための請求項1の発明のトンネル掘削機は、掘削機本体の前部に回転自在なカッタヘッドが装着され、前記掘削機本体の前進に伴って前記カッタヘッドを駆動回転させることで、前方の地盤を掘削してトンネルを形成するトンネル掘削機において、前記カッタヘッドの前面部に受信アンテナを装着すると共に、前記カッタヘッドの前面部に該受信アンテナの外周辺に近接して複数の送信アンテナを装着し、同期制御装置によって該複数の送信アンテナからの送信波の同時送信あるいは同時放射と前記受信アンテナでの送信波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能としたことを特徴とするものである。
【0011】また、請求項2の発明のトンネル掘削機は、掘削機本体の前部に回転自在なカッタヘッドが装着され、前記掘削機本体の前進に伴って前記カッタヘッドを駆動回転させることで、前方の地盤を掘削してトンネルを形成するトンネル掘削機において、前記カッタヘッドの前面部に周方向に沿って並設された送信アンテナと受信アンテナとからなるアンテナ装置を前記カッタヘッドの径方向に沿って複数組並設すると共に、前記各送信アンテナと受信アンテナとが互いに隣接するように配設し、同期制御装置によって前記複数の送信アンテナからの送信波の同時送信あるいは同時放射と前記受信アンテナでの送信波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能としたことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】図1に本発明の第1実施形態に係るトンネル掘削機としてのシールド掘削機の概略、図2にカッタヘッドに装着されたアンテナの概略、図3に障害物探査機構の概略構成、図4に障害物探査機構による長距離探査時の説明、図5に長距離探査時における送受信波のタイムチャート、図6に障害物探査機構による広範囲探査時の説明、図7に広範囲探査時における送受信波のタイムチャートを示す。
【0014】本実施形態のシールド掘削機において、図1R>1乃至図3に示すように、筒状の掘削機本体11の前部にはカッタヘッド12が回転自在に装着されており、このカッタヘッド12の前面には地盤を掘削する図示しない多数のカッタビットが固定されており、カッタヘッド12は図示しない旋回モータによって回転可能となっている。また、掘削機本体11の後部には周方向に図示しない複数のシールドジャッキが並設されており、このシールドジャッキが伸長することで、既設のセグメントからの反力によって掘削機本体11が前進することができる。
【0015】このカッタヘッド12の前面部には、電磁波を送信する複数(本実施形態では4つ)の送信アンテナ21,22,23,24と、反射した電磁波を受信する受信アンテナ25がそれぞれ装着されている。本実施形態では、各アンテナ21〜25がカッタヘッド12の回転中心Oと一方の外周部との間に配設され、受信アンテナ25の外周辺に近接して各送信アンテナ21,22,23,24が位置している。この各アンテナ21〜25は、内部にダイポールアンテナ21a〜25aを有しており、前面部には土圧や水圧の影響を防ぐために十分な強度と水密性を有すると共に、電磁波を透過可能な、例えば、FRP樹脂からなる保護カバー26が取付けられている。また、各アンテナ21〜25はこのダイポールアンテナ21a〜25aに接続された受信部21b〜25bを有し、この受信部21b〜25bは内部に高周波増幅器や周波数変換用サンプリング回路を有しており、例えば、受信アンテナ25が受信した微弱な高周波信号を増幅して低周波に変換することができる。
【0016】この送信アンテナ21,22,23,24及び受信アンテナ25はスリップリング27を介して掘削機本体11に搭載された同期制御装置28に接続されている。この同期制御装置28は各送信アンテナ21〜24に送信指令を与えて前方に電磁波(送信波)を発信させたり、受信アンテナ25に受信指令を与えて反射して戻ってきた電磁波(送信波)を受信させるものであり、各送信アンテナ21〜24による電磁波の送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能となっている。
【0017】また、掘削機本体11にはロータリエンコーダ29が装着されており、カッタヘッド12の回転角度を検出することができる。このロータリエンコーダ29は掘削機本体11に搭載された解析装置30に接続されており、この解析装置30には同期制御装置28も接続されている。この解析装置30は、受信アンテナ25が受信して同期制御装置28から入力された受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換器30aと、ロータリエンコーダ29から入力されたパルス信号をカッタヘッド12の回転角度に変換するカウンタ30bとを有している。そして、この解析装置30は、AD変換器30aがデジタル信号に変換した受信データと、カウンタ30bが変換したカッタヘッド12の回転角度とから障害物の位置と距離を演算し、その演算結果を表示する。
【0018】従って、上述した本実施形態のシールド掘削機によってトンネルを掘削形成するには、まず、旋回モータによりカッタヘッド12を回転させながら、複数のシールドジャッキを伸長してその押し付け反力によって掘削機本体11を前進させことで、カッタヘッド12の多数のカッタビットが前方の地盤を掘削し、トンネルを掘削形成することができる。
【0019】このトンネル掘削作業と同時に、アンテナ21〜25等からなる探査機構によって前方の地盤に存在する障害物を事前に探査している。即ち、長距離探査を行う場合、図4に示すように、同期制御装置28が、まず、各送信アンテナ21〜24に同時に送信指令を与えると、送信部21b〜24bは高周波電圧パルスを印加し、図5に示すように、ダイポールアンテナ21a〜24aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。このダイポールアンテナ21a〜24aから放射された電磁波は同じ位置で重なり合うため、送信波の振幅は大きくなってより遠方の障害物Pまで到達することができる。
【0020】そして、このダイポールアンテナ21a〜24aからの送信波が障害物Pに到達すると反射し、次に、受信アンテナ25に受信指令を与えると、この受信アンテナ25のダイポールアンテナ25aが受信する。そして、受信部25bは受信アンテナ25が受信した微弱な高周波信号を増幅して低周波に変換し、同期制御装置28を介して解析装置30に出力する。このように同期制御装置28は各送信アンテナ21〜24による電磁波の送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御する。
【0021】一方、ロータリエンコーダ29はカッタヘッド12の回転角度をパルス信号として検出し、その検出結果を解析装置30に出力する。そして、解析装置30にて、受信アンテナ25が受信して同期制御装置28から入力された受信信号をAD変換器30aがアナログ信号からデジタル信号に変換すると共に、ロータリエンコーダ29から入力されたパルス信号をカウンタ30bがカッタヘッド12の回転角度に変換する。そして、この解析装置30は、AD変換器30aがデジタル信号に変換した受信データと、カウンタ30bが変換したカッタヘッド12の回転角度とから障害物Pの位置と距離を演算し、その演算結果を表示する。
【0022】また、広範囲探査を行う場合、図6に示すように、同期制御装置28が、まず、送信アンテナ21に送信指令を与えると、送信部21bは高周波電圧パルスを印加し、図7に示すように、ダイポールアンテナ21aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。次に、同期制御装置28が送信アンテナ22に送信指令を与えると、送信部22bは高周波電圧パルスを印加し、ダイポールアンテナ22aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。更に、同期制御装置28が送信アンテナ23に送信指令を与えると、送信部23bは高周波電圧パルスを印加し、ダイポールアンテナ23aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。そして、各ダイポールアンテナ21a〜24aから放射された電磁波は近傍の障害物P1 ,P2 ,P3 に到達すると反射し、送信アンテナ25に受信指令を与えると、ダイポールアンテナ25aが受信する。
【0023】受信アンテナ25の受信部25bは受信した微弱な高周波信号を増幅して低周波に変換し、同期制御装置28を介して解析装置30に出力する。このように同期制御装置28は各送信アンテナ21〜23による電磁波の断続的な送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御する。そして、解析装置30は、受信アンテナ25が受信した受信信号をデジタル信号に変換すると共に、ロータリエンコーダ29から入力されたパルス信号をカッタヘッド12の回転角度に変換し、障害物P1 ,P2 ,P3 の各位置と距離を演算し、その演算結果を表示する。
【0024】このように本実施形態のシールド掘削機にあっては、カッタヘッド12の前面部に受信アンテナ25とこの受信アンテナ25の外周辺に近接して4つの送信アンテナ21,22,23,24を配設し、長距離探査を行う場合には、同期制御装置28が各送信アンテナ21〜24による電磁波の同時送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御し、広範囲探査を行う場合には、同期制御装置28が各送信アンテナ21〜23による電磁波の断続的な送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御しており、解析装置30は、受信アンテナ25が受信した受信信号とロータリエンコーダ29が検出したカッタヘッド12の回転角度から、障害物P(P1 ,P2,P3 )の各位置と距離を適切に高精度に演算処理することができる。
【0025】図8に本発明の第2実施形態に係るトンネル掘削機としてのシールド掘削機の概略、図9に障害物探査機構の概略構成、図10に障害物探査機構による長距離探査時の説明、図11に長距離探査時における送受信波のタイムチャート、図12に障害物探査機構による広範囲探査時の説明、図13に広範囲探査時における送受信波のタイムチャートを示す。
【0026】本実施形態のシールド掘削機において、図8R>8及び図9に示すように、掘削機本体31の前部には多数のカッタビットを有するカッタヘッド32が旋回モータによって回転可能に装着されている。そして、このカッタヘッド32の前面部には、電磁波を送信する複数(本実施形態では3つ)の送信アンテナ41,42,43と、反射した電磁波を受信する複数(本実施形態では3つ)の受信アンテナ43,44,45がそれぞれ装着されている。本実施形態では、送信アンテナ41〜43と受信アンテナ43〜45とがカッタヘッド32の周方向に沿ってそれぞれ対をなして並設され、各アンテナ41,44と42,45と43,46がそれぞれアンテナ装置としてカッタヘッド32の径方向に沿って並設されている。なお、送信アンテナ41〜43と受信アンテナ43〜45は互いに隣接するように配設されている。そして、各アンテナ41〜46は、内部にダイポールアンテナ41a〜46aと、このダイポールアンテナ41a〜46aに接続された受信部41b〜46bを有している。
【0027】この送信アンテナ41〜43及び受信アンテナ44〜46はスリップリング47を介して同期制御装置48に接続され、この同期制御装置48は各送信アンテナ41〜43に送信指令を与えて前方に電磁波(送信波)を発信させたり、受信アンテナ44〜46に受信指令を与えて反射して戻ってきた電磁波(送信波)を受信させるものであり、電磁波の送信と受信とを繰り返し行うように切換制御可能となっている。また、掘削機本体11にはロータリエンコーダ49と解析装置50が搭載されており、解析装置50は、受信アンテナ44〜46が受信して同期制御装置48から入力された受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換器50aと、ロータリエンコーダ49から入力されたパルス信号をカッタヘッド32の回転角度に変換するカウンタ50bとを有している。そして、この解析装置50は、AD変換器50aがデジタル信号に変換した受信データと、カウンタ50bが変換したカッタヘッド32の回転角度とから障害物の位置と距離を演算し、その演算結果を表示する。
【0028】従って、上述した本実施形態のシールド掘削機によってトンネルを掘削形成するには、まず、旋回モータによりカッタヘッド32を回転させながら、複数のシールドジャッキを伸長してその押し付け反力によって掘削機本体31を前進させことで、カッタヘッド32の多数のカッタビットが前方の地盤を掘削し、トンネルを掘削形成することができる。
【0029】このトンネル掘削作業と同時に、アンテナ41〜46等からなる探査機構によって前方の地盤に存在する障害物を事前に探査している。即ち、長距離探査を行う場合、図10に示すように、同期制御装置48が、まず、各送信アンテナ41〜43に同時に送信指令を与えると、送信部41b〜43bは高周波電圧パルスを印加し、図11に示すように、ダイポールアンテナ41a〜43aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。このダイポールアンテナ41a〜43aから放射された電磁波は同じ位置で重なり合うため、送信波の振幅は大きくなってより遠方の障害物Pまで到達することができる。
【0030】そして、このダイポールアンテナ41a〜43aからの送信波が障害物Pに到達すると反射し、次に、送信アンテナ45に受信指令を与えると、この受信アンテナ45のダイポールアンテナ45aが受信する。そして、受信部45bは受信アンテナ45が受信した微弱な高周波信号を増幅して低周波に変換し、同期制御装置48を介して解析装置50に出力する。このように同期制御装置58は各送信アンテナ41〜43による電磁波の送信と受信アンテナ45による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御する。
【0031】一方、ロータリエンコーダ49はカッタヘッド32の回転角度をパルス信号として検出し、その検出結果を解析装置50に出力する。そして、解析装置50にて、受信アンテナ45が受信して同期制御装置48から入力された受信信号をAD変換器50aがアナログ信号からデジタル信号に変換すると共に、ロータリエンコーダ49から入力されたパルス信号をカウンタ50bがカッタヘッド32の回転角度に変換する。そして、この解析装置50は、AD変換器50aがデジタル信号に変換した受信データと、カウンタ50bが変換したカッタヘッド32の回転角度とから障害物Pの位置と距離を演算し、その演算結果を表示する。
【0032】また、広範囲探査を行う場合、図12に示すように、同期制御装置28が、まず、送信アンテナ41に送信指令を与えると、送信部41bは高周波電圧パルスを印加し、図13に示すように、ダイポールアンテナ41aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。そして、ダイポールアンテナ41aから放射された電磁波は近傍の障害物P1 に到達すると反射し、送信アンテナ44に受信指令を与えると、ダイポールアンテナ44aが受信する。次に、同期制御装置28が送信アンテナ42に送信指令を与えると、送信部42bは高周波電圧パルスを印加し、ダイポールアンテナ42aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。そして、ダイポールアンテナ42aから放射された電磁波は近傍の障害物P2 に到達すると反射し、送信アンテナ45に受信指令を与えると、ダイポールアンテナ45aが受信する。更に、同期制御装置28が送信アンテナ43に送信指令を与えると、送信部43bは高周波電圧パルスを印加し、ダイポールアンテナ43aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。そして、ダイポールアンテナ43aから放射された電磁波は近傍の障害物P3 に到達すると反射し、送信アンテナ46に受信指令を与えると、ダイポールアンテナ46aが受信する。
【0033】各受信アンテナ44〜46の受信部44b〜46bは受信した微弱な高周波信号を増幅して低周波に変換し、同期制御装置48を介して解析装置50に出力する。このように同期制御装置48は各送信アンテナ41〜43による電磁波の断続的な送信と各受信アンテナ44〜46による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御する。そして、解析装置50は、受信アンテナ44〜46が受信した受信信号をデジタル信号に変換すると共に、ロータリエンコーダ49から入力されたパルス信号をカッタヘッド32の回転角度に変換し、障害物P1 ,P2 ,P3 の各位置(大きさ)と距離を演算し、その演算結果を表示する。
【0034】このように本実施形態のシールド掘削機にあっては、カッタヘッド32の前面部に送信アンテナ41〜43と受信アンテナ44〜46を周方向に沿って並設すると共に径方向に沿って複数組並設して互いに隣接するように配設し、長距離探査を行う場合には、同期制御装置48が各送信アンテナ41〜43による電磁波の同時送信と受信アンテナ44〜46うちの一つによる電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御し、広範囲探査を行う場合には、同期制御装置48が各送信アンテナ41〜43による電磁波の断続的な送信と受信アンテナ44〜46による電磁波の断続的な受信とを繰り返し行うように切換制御しており、解析装置50は、受信アンテナ44〜46が受信した受信信号とロータリエンコーダ49が検出したカッタヘッド32の回転角度から、障害物P(P1 ,P2 ,P3 )の各位置(大きさ)と距離を適切に高精度に演算処理することができる。
【0035】
【発明の効果】以上、実施形態において詳細に説明したように請求項1の発明のトンネル掘削機によれば、カッタヘッドの前面部に受信アンテナを装着すると共に、カッタヘッドの前面部にこの受信アンテナの外周辺に近接して複数の送信アンテナを装着し、同期制御装置によって複数の送信アンテナからの送信波の同時送信あるいは同時放射と受信アンテナでの送信波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能としたので、長距離探査では、各送信アンテナによる電磁波の同時送信と受信アンテナによる電磁波の受信とを繰り返し行い、広範囲探査では、各送信アンテナによる電磁波の断続的な送信と受信アンテナによる電磁波の受信とを繰り返し行うことで、掘削機前方の全ての領域を遠方まで精度良く探査して容易に障害物の位置や距離を得ることができる。
【0036】また、請求項2の発明のトンネル掘削機によれば、カッタヘッドの前面部に周方向に沿って並設された送信アンテナと受信アンテナとからなるアンテナ装置をカッタヘッドの径方向に沿って複数組並設すると共に、各送信アンテナと受信アンテナとが互いに隣接するように配設し、同期制御装置によって複数の送信アンテナからの送信波の同時送信あるいは同時放射と受信アンテナでの送信波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能としたので、長距離探査では、各送信アンテナによる電磁波の同時送信と受信アンテナによる電磁波の受信とを繰り返し行い、広範囲探査では、各送信アンテナによる電磁波の断続的な送信と各受信アンテナによる電磁波の断続的な受信とを繰り返し行うことで、掘削機前方の全ての領域を遠方まで精度良く探査して容易に障害物の位置や距離を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るトンネル掘削機としてのシールド掘削機の概略図である。
【図2】カッタヘッドに装着されたアンテナの概略図である。
【図3】障害物探査機構の概略構成図である。
【図4】障害物探査機構による長距離探査時の説明図である。
【図5】長距離探査時における送受信波のタイムチャートである。
【図6】障害物探査機構による広範囲探査時の説明図である。
【図7】広範囲探査時における送受信波のタイムチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係るトンネル掘削機としてのシールド掘削機の概略図である。
【図9】障害物探査機構の概略構成図である。
【図10】障害物探査機構による長距離探査時の説明図である。
【図11】長距離探査時における送受信波のタイムチャートである。
【図12】障害物探査機構による広範囲探査時の説明図である。
【図13】広範囲探査時における送受信波のタイムチャートである。
【図14】障害物探査機能を有する従来のシールド掘削機の概略図である。
【符号の説明】
11 掘削機本体
12 カッタヘッド
21,22,23,24 送信アンテナ
25 受信アンテナ
28 同期制御装置
29 ロータリエンコーダ
30 解析装置
31 掘削機本体
32 カッタヘッド
41,42,43 送信アンテナ
44,45,46 受信アンテナ
48 同期制御装置
49 ロータリエンコーダ
50 解析装置
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、前方の地盤にカッタヘッドでは掘削が困難な障害物があった場合に、この障害物を事前に探査する探査機能を有するトンネル掘削機に関する。
【0002】
【従来の技術】図14に障害物探査機能を有する従来のシールド掘削機の概略を示す。
【0003】従来のシールド掘削機において、図14に示すように、筒状の掘削機本体101の前部にはカッタヘッド102が回転自在に装着されており、このカッタヘッド102の前面には図示しない多数のカッタビットが固定されており、カッタヘッド102は図示しない旋回モータによって回転可能となっている。また、掘削機本体101の後部には周方向に図示しない複数のシールドジャッキが並設されており、このシールドジャッキが伸長することで、既設のセグメントからの反力によって掘削機本体101が前進することができる。
【0004】従って、トンネルを掘削形成するには、まず、旋回モータによりカッタヘッド102を回転させながら、複数のシールドジャッキを伸長してその押し付け反力によって掘削機本体101を前進させことで、カッタヘッド102の多数のカッタビットが前方の地盤を掘削し、トンネルを掘削形成することができる。
【0005】ところで、シールド掘削機によるトンネルの掘削中に、前方の地盤に予期せぬ障害物、例えば、シートパイルやH型鋼杭、鉄筋コンクリート杭などが発見された場合、カッタヘッド102ではこれを破砕することができない。そのため、シールド掘削機には地中レーダなどからなる探査機構が設けられており、この探査機構によって前方の地盤に存在する障害物を事前に探査し、トンネルの上方の地面を開削してこの障害物を除去したり、振動杭打ち機などを利用して障害物を抜き取っていた。
【0006】即ち、従来のシールド掘削機において、カッタヘッド102の前面部には電磁波を送信する送信アンテナ111と反射した電磁波を受信する受信アンテナ112が並んで装着されている。従って、回転するカッタヘッド102によって前方の地盤を掘削しているとき、送信アンテナ111から前方に向かって電磁波が放射すると、電磁波は障害物によって反射し、受信アンテナ112がこの反射した電磁波を受信することで、その受信レベルから障害物までの距離を算出することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、探査機構によって前方の障害物を探査する場合、探査精度を向上させるためにはアンテナの指向性を良くする必要がある。また、探査機構によって遠方の障害物を探査するためには、アンテナの形状を大きくする必要がある。ところが、上述した従来のシールド掘削機では、カッタヘッド102の前面部の一部に送信アンテナ111と受信アンテナ112からなる一組の探査機構が設けられているだけであり、カッタヘッド102の回転時に、この探査機構による探査領域は図14に二点鎖線で表した近距離の領域Aであり、シールド掘削機の遠方の全ての領域を探査することができないという問題がある。
【0008】そして、シールド掘削機の遠方の全ての領域を探査するためには、送信アンテナ111と受信アンテナ112とからなる探査機構を複数設けたり、形状を大きくしなければならず、コスト高となってしまう。また、カッタヘッド102の前面部には前方の地盤を掘削するための多数のカッタビットが装着されており、送信アンテナ111及び受信アンテナ112の装着スペースに制約があり、数を増やしたり、大きくしたりすることはできなかった。
【0009】本発明はこのような問題を解決するものであって、掘削機前方の全ての領域を遠方まで精度良く探査することで容易に障害物を探査可能としたトンネル掘削機を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するための請求項1の発明のトンネル掘削機は、掘削機本体の前部に回転自在なカッタヘッドが装着され、前記掘削機本体の前進に伴って前記カッタヘッドを駆動回転させることで、前方の地盤を掘削してトンネルを形成するトンネル掘削機において、前記カッタヘッドの前面部に受信アンテナを装着すると共に、前記カッタヘッドの前面部に該受信アンテナの外周辺に近接して複数の送信アンテナを装着し、同期制御装置によって該複数の送信アンテナからの送信波の同時送信あるいは同時放射と前記受信アンテナでの送信波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能としたことを特徴とするものである。
【0011】また、請求項2の発明のトンネル掘削機は、掘削機本体の前部に回転自在なカッタヘッドが装着され、前記掘削機本体の前進に伴って前記カッタヘッドを駆動回転させることで、前方の地盤を掘削してトンネルを形成するトンネル掘削機において、前記カッタヘッドの前面部に周方向に沿って並設された送信アンテナと受信アンテナとからなるアンテナ装置を前記カッタヘッドの径方向に沿って複数組並設すると共に、前記各送信アンテナと受信アンテナとが互いに隣接するように配設し、同期制御装置によって前記複数の送信アンテナからの送信波の同時送信あるいは同時放射と前記受信アンテナでの送信波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能としたことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】図1に本発明の第1実施形態に係るトンネル掘削機としてのシールド掘削機の概略、図2にカッタヘッドに装着されたアンテナの概略、図3に障害物探査機構の概略構成、図4に障害物探査機構による長距離探査時の説明、図5に長距離探査時における送受信波のタイムチャート、図6に障害物探査機構による広範囲探査時の説明、図7に広範囲探査時における送受信波のタイムチャートを示す。
【0014】本実施形態のシールド掘削機において、図1R>1乃至図3に示すように、筒状の掘削機本体11の前部にはカッタヘッド12が回転自在に装着されており、このカッタヘッド12の前面には地盤を掘削する図示しない多数のカッタビットが固定されており、カッタヘッド12は図示しない旋回モータによって回転可能となっている。また、掘削機本体11の後部には周方向に図示しない複数のシールドジャッキが並設されており、このシールドジャッキが伸長することで、既設のセグメントからの反力によって掘削機本体11が前進することができる。
【0015】このカッタヘッド12の前面部には、電磁波を送信する複数(本実施形態では4つ)の送信アンテナ21,22,23,24と、反射した電磁波を受信する受信アンテナ25がそれぞれ装着されている。本実施形態では、各アンテナ21〜25がカッタヘッド12の回転中心Oと一方の外周部との間に配設され、受信アンテナ25の外周辺に近接して各送信アンテナ21,22,23,24が位置している。この各アンテナ21〜25は、内部にダイポールアンテナ21a〜25aを有しており、前面部には土圧や水圧の影響を防ぐために十分な強度と水密性を有すると共に、電磁波を透過可能な、例えば、FRP樹脂からなる保護カバー26が取付けられている。また、各アンテナ21〜25はこのダイポールアンテナ21a〜25aに接続された受信部21b〜25bを有し、この受信部21b〜25bは内部に高周波増幅器や周波数変換用サンプリング回路を有しており、例えば、受信アンテナ25が受信した微弱な高周波信号を増幅して低周波に変換することができる。
【0016】この送信アンテナ21,22,23,24及び受信アンテナ25はスリップリング27を介して掘削機本体11に搭載された同期制御装置28に接続されている。この同期制御装置28は各送信アンテナ21〜24に送信指令を与えて前方に電磁波(送信波)を発信させたり、受信アンテナ25に受信指令を与えて反射して戻ってきた電磁波(送信波)を受信させるものであり、各送信アンテナ21〜24による電磁波の送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能となっている。
【0017】また、掘削機本体11にはロータリエンコーダ29が装着されており、カッタヘッド12の回転角度を検出することができる。このロータリエンコーダ29は掘削機本体11に搭載された解析装置30に接続されており、この解析装置30には同期制御装置28も接続されている。この解析装置30は、受信アンテナ25が受信して同期制御装置28から入力された受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換器30aと、ロータリエンコーダ29から入力されたパルス信号をカッタヘッド12の回転角度に変換するカウンタ30bとを有している。そして、この解析装置30は、AD変換器30aがデジタル信号に変換した受信データと、カウンタ30bが変換したカッタヘッド12の回転角度とから障害物の位置と距離を演算し、その演算結果を表示する。
【0018】従って、上述した本実施形態のシールド掘削機によってトンネルを掘削形成するには、まず、旋回モータによりカッタヘッド12を回転させながら、複数のシールドジャッキを伸長してその押し付け反力によって掘削機本体11を前進させことで、カッタヘッド12の多数のカッタビットが前方の地盤を掘削し、トンネルを掘削形成することができる。
【0019】このトンネル掘削作業と同時に、アンテナ21〜25等からなる探査機構によって前方の地盤に存在する障害物を事前に探査している。即ち、長距離探査を行う場合、図4に示すように、同期制御装置28が、まず、各送信アンテナ21〜24に同時に送信指令を与えると、送信部21b〜24bは高周波電圧パルスを印加し、図5に示すように、ダイポールアンテナ21a〜24aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。このダイポールアンテナ21a〜24aから放射された電磁波は同じ位置で重なり合うため、送信波の振幅は大きくなってより遠方の障害物Pまで到達することができる。
【0020】そして、このダイポールアンテナ21a〜24aからの送信波が障害物Pに到達すると反射し、次に、受信アンテナ25に受信指令を与えると、この受信アンテナ25のダイポールアンテナ25aが受信する。そして、受信部25bは受信アンテナ25が受信した微弱な高周波信号を増幅して低周波に変換し、同期制御装置28を介して解析装置30に出力する。このように同期制御装置28は各送信アンテナ21〜24による電磁波の送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御する。
【0021】一方、ロータリエンコーダ29はカッタヘッド12の回転角度をパルス信号として検出し、その検出結果を解析装置30に出力する。そして、解析装置30にて、受信アンテナ25が受信して同期制御装置28から入力された受信信号をAD変換器30aがアナログ信号からデジタル信号に変換すると共に、ロータリエンコーダ29から入力されたパルス信号をカウンタ30bがカッタヘッド12の回転角度に変換する。そして、この解析装置30は、AD変換器30aがデジタル信号に変換した受信データと、カウンタ30bが変換したカッタヘッド12の回転角度とから障害物Pの位置と距離を演算し、その演算結果を表示する。
【0022】また、広範囲探査を行う場合、図6に示すように、同期制御装置28が、まず、送信アンテナ21に送信指令を与えると、送信部21bは高周波電圧パルスを印加し、図7に示すように、ダイポールアンテナ21aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。次に、同期制御装置28が送信アンテナ22に送信指令を与えると、送信部22bは高周波電圧パルスを印加し、ダイポールアンテナ22aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。更に、同期制御装置28が送信アンテナ23に送信指令を与えると、送信部23bは高周波電圧パルスを印加し、ダイポールアンテナ23aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。そして、各ダイポールアンテナ21a〜24aから放射された電磁波は近傍の障害物P1 ,P2 ,P3 に到達すると反射し、送信アンテナ25に受信指令を与えると、ダイポールアンテナ25aが受信する。
【0023】受信アンテナ25の受信部25bは受信した微弱な高周波信号を増幅して低周波に変換し、同期制御装置28を介して解析装置30に出力する。このように同期制御装置28は各送信アンテナ21〜23による電磁波の断続的な送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御する。そして、解析装置30は、受信アンテナ25が受信した受信信号をデジタル信号に変換すると共に、ロータリエンコーダ29から入力されたパルス信号をカッタヘッド12の回転角度に変換し、障害物P1 ,P2 ,P3 の各位置と距離を演算し、その演算結果を表示する。
【0024】このように本実施形態のシールド掘削機にあっては、カッタヘッド12の前面部に受信アンテナ25とこの受信アンテナ25の外周辺に近接して4つの送信アンテナ21,22,23,24を配設し、長距離探査を行う場合には、同期制御装置28が各送信アンテナ21〜24による電磁波の同時送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御し、広範囲探査を行う場合には、同期制御装置28が各送信アンテナ21〜23による電磁波の断続的な送信と受信アンテナ25による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御しており、解析装置30は、受信アンテナ25が受信した受信信号とロータリエンコーダ29が検出したカッタヘッド12の回転角度から、障害物P(P1 ,P2,P3 )の各位置と距離を適切に高精度に演算処理することができる。
【0025】図8に本発明の第2実施形態に係るトンネル掘削機としてのシールド掘削機の概略、図9に障害物探査機構の概略構成、図10に障害物探査機構による長距離探査時の説明、図11に長距離探査時における送受信波のタイムチャート、図12に障害物探査機構による広範囲探査時の説明、図13に広範囲探査時における送受信波のタイムチャートを示す。
【0026】本実施形態のシールド掘削機において、図8R>8及び図9に示すように、掘削機本体31の前部には多数のカッタビットを有するカッタヘッド32が旋回モータによって回転可能に装着されている。そして、このカッタヘッド32の前面部には、電磁波を送信する複数(本実施形態では3つ)の送信アンテナ41,42,43と、反射した電磁波を受信する複数(本実施形態では3つ)の受信アンテナ43,44,45がそれぞれ装着されている。本実施形態では、送信アンテナ41〜43と受信アンテナ43〜45とがカッタヘッド32の周方向に沿ってそれぞれ対をなして並設され、各アンテナ41,44と42,45と43,46がそれぞれアンテナ装置としてカッタヘッド32の径方向に沿って並設されている。なお、送信アンテナ41〜43と受信アンテナ43〜45は互いに隣接するように配設されている。そして、各アンテナ41〜46は、内部にダイポールアンテナ41a〜46aと、このダイポールアンテナ41a〜46aに接続された受信部41b〜46bを有している。
【0027】この送信アンテナ41〜43及び受信アンテナ44〜46はスリップリング47を介して同期制御装置48に接続され、この同期制御装置48は各送信アンテナ41〜43に送信指令を与えて前方に電磁波(送信波)を発信させたり、受信アンテナ44〜46に受信指令を与えて反射して戻ってきた電磁波(送信波)を受信させるものであり、電磁波の送信と受信とを繰り返し行うように切換制御可能となっている。また、掘削機本体11にはロータリエンコーダ49と解析装置50が搭載されており、解析装置50は、受信アンテナ44〜46が受信して同期制御装置48から入力された受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換器50aと、ロータリエンコーダ49から入力されたパルス信号をカッタヘッド32の回転角度に変換するカウンタ50bとを有している。そして、この解析装置50は、AD変換器50aがデジタル信号に変換した受信データと、カウンタ50bが変換したカッタヘッド32の回転角度とから障害物の位置と距離を演算し、その演算結果を表示する。
【0028】従って、上述した本実施形態のシールド掘削機によってトンネルを掘削形成するには、まず、旋回モータによりカッタヘッド32を回転させながら、複数のシールドジャッキを伸長してその押し付け反力によって掘削機本体31を前進させことで、カッタヘッド32の多数のカッタビットが前方の地盤を掘削し、トンネルを掘削形成することができる。
【0029】このトンネル掘削作業と同時に、アンテナ41〜46等からなる探査機構によって前方の地盤に存在する障害物を事前に探査している。即ち、長距離探査を行う場合、図10に示すように、同期制御装置48が、まず、各送信アンテナ41〜43に同時に送信指令を与えると、送信部41b〜43bは高周波電圧パルスを印加し、図11に示すように、ダイポールアンテナ41a〜43aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。このダイポールアンテナ41a〜43aから放射された電磁波は同じ位置で重なり合うため、送信波の振幅は大きくなってより遠方の障害物Pまで到達することができる。
【0030】そして、このダイポールアンテナ41a〜43aからの送信波が障害物Pに到達すると反射し、次に、送信アンテナ45に受信指令を与えると、この受信アンテナ45のダイポールアンテナ45aが受信する。そして、受信部45bは受信アンテナ45が受信した微弱な高周波信号を増幅して低周波に変換し、同期制御装置48を介して解析装置50に出力する。このように同期制御装置58は各送信アンテナ41〜43による電磁波の送信と受信アンテナ45による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御する。
【0031】一方、ロータリエンコーダ49はカッタヘッド32の回転角度をパルス信号として検出し、その検出結果を解析装置50に出力する。そして、解析装置50にて、受信アンテナ45が受信して同期制御装置48から入力された受信信号をAD変換器50aがアナログ信号からデジタル信号に変換すると共に、ロータリエンコーダ49から入力されたパルス信号をカウンタ50bがカッタヘッド32の回転角度に変換する。そして、この解析装置50は、AD変換器50aがデジタル信号に変換した受信データと、カウンタ50bが変換したカッタヘッド32の回転角度とから障害物Pの位置と距離を演算し、その演算結果を表示する。
【0032】また、広範囲探査を行う場合、図12に示すように、同期制御装置28が、まず、送信アンテナ41に送信指令を与えると、送信部41bは高周波電圧パルスを印加し、図13に示すように、ダイポールアンテナ41aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。そして、ダイポールアンテナ41aから放射された電磁波は近傍の障害物P1 に到達すると反射し、送信アンテナ44に受信指令を与えると、ダイポールアンテナ44aが受信する。次に、同期制御装置28が送信アンテナ42に送信指令を与えると、送信部42bは高周波電圧パルスを印加し、ダイポールアンテナ42aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。そして、ダイポールアンテナ42aから放射された電磁波は近傍の障害物P2 に到達すると反射し、送信アンテナ45に受信指令を与えると、ダイポールアンテナ45aが受信する。更に、同期制御装置28が送信アンテナ43に送信指令を与えると、送信部43bは高周波電圧パルスを印加し、ダイポールアンテナ43aから前方に向かって高周波電磁波パルスが放射される。そして、ダイポールアンテナ43aから放射された電磁波は近傍の障害物P3 に到達すると反射し、送信アンテナ46に受信指令を与えると、ダイポールアンテナ46aが受信する。
【0033】各受信アンテナ44〜46の受信部44b〜46bは受信した微弱な高周波信号を増幅して低周波に変換し、同期制御装置48を介して解析装置50に出力する。このように同期制御装置48は各送信アンテナ41〜43による電磁波の断続的な送信と各受信アンテナ44〜46による電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御する。そして、解析装置50は、受信アンテナ44〜46が受信した受信信号をデジタル信号に変換すると共に、ロータリエンコーダ49から入力されたパルス信号をカッタヘッド32の回転角度に変換し、障害物P1 ,P2 ,P3 の各位置(大きさ)と距離を演算し、その演算結果を表示する。
【0034】このように本実施形態のシールド掘削機にあっては、カッタヘッド32の前面部に送信アンテナ41〜43と受信アンテナ44〜46を周方向に沿って並設すると共に径方向に沿って複数組並設して互いに隣接するように配設し、長距離探査を行う場合には、同期制御装置48が各送信アンテナ41〜43による電磁波の同時送信と受信アンテナ44〜46うちの一つによる電磁波の受信とを繰り返し行うように切換制御し、広範囲探査を行う場合には、同期制御装置48が各送信アンテナ41〜43による電磁波の断続的な送信と受信アンテナ44〜46による電磁波の断続的な受信とを繰り返し行うように切換制御しており、解析装置50は、受信アンテナ44〜46が受信した受信信号とロータリエンコーダ49が検出したカッタヘッド32の回転角度から、障害物P(P1 ,P2 ,P3 )の各位置(大きさ)と距離を適切に高精度に演算処理することができる。
【0035】
【発明の効果】以上、実施形態において詳細に説明したように請求項1の発明のトンネル掘削機によれば、カッタヘッドの前面部に受信アンテナを装着すると共に、カッタヘッドの前面部にこの受信アンテナの外周辺に近接して複数の送信アンテナを装着し、同期制御装置によって複数の送信アンテナからの送信波の同時送信あるいは同時放射と受信アンテナでの送信波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能としたので、長距離探査では、各送信アンテナによる電磁波の同時送信と受信アンテナによる電磁波の受信とを繰り返し行い、広範囲探査では、各送信アンテナによる電磁波の断続的な送信と受信アンテナによる電磁波の受信とを繰り返し行うことで、掘削機前方の全ての領域を遠方まで精度良く探査して容易に障害物の位置や距離を得ることができる。
【0036】また、請求項2の発明のトンネル掘削機によれば、カッタヘッドの前面部に周方向に沿って並設された送信アンテナと受信アンテナとからなるアンテナ装置をカッタヘッドの径方向に沿って複数組並設すると共に、各送信アンテナと受信アンテナとが互いに隣接するように配設し、同期制御装置によって複数の送信アンテナからの送信波の同時送信あるいは同時放射と受信アンテナでの送信波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能としたので、長距離探査では、各送信アンテナによる電磁波の同時送信と受信アンテナによる電磁波の受信とを繰り返し行い、広範囲探査では、各送信アンテナによる電磁波の断続的な送信と各受信アンテナによる電磁波の断続的な受信とを繰り返し行うことで、掘削機前方の全ての領域を遠方まで精度良く探査して容易に障害物の位置や距離を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るトンネル掘削機としてのシールド掘削機の概略図である。
【図2】カッタヘッドに装着されたアンテナの概略図である。
【図3】障害物探査機構の概略構成図である。
【図4】障害物探査機構による長距離探査時の説明図である。
【図5】長距離探査時における送受信波のタイムチャートである。
【図6】障害物探査機構による広範囲探査時の説明図である。
【図7】広範囲探査時における送受信波のタイムチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係るトンネル掘削機としてのシールド掘削機の概略図である。
【図9】障害物探査機構の概略構成図である。
【図10】障害物探査機構による長距離探査時の説明図である。
【図11】長距離探査時における送受信波のタイムチャートである。
【図12】障害物探査機構による広範囲探査時の説明図である。
【図13】広範囲探査時における送受信波のタイムチャートである。
【図14】障害物探査機能を有する従来のシールド掘削機の概略図である。
【符号の説明】
11 掘削機本体
12 カッタヘッド
21,22,23,24 送信アンテナ
25 受信アンテナ
28 同期制御装置
29 ロータリエンコーダ
30 解析装置
31 掘削機本体
32 カッタヘッド
41,42,43 送信アンテナ
44,45,46 受信アンテナ
48 同期制御装置
49 ロータリエンコーダ
50 解析装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】 掘削機本体の前部に回転自在なカッタヘッドが装着され、前記掘削機本体の前進に伴って前記カッタヘッドを駆動回転させることで、前方の地盤を掘削してトンネルを形成するトンネル掘削機において、前記カッタヘッドの前面部に受信アンテナを装着すると共に、前記カッタヘッドの前面部に該受信アンテナの外周辺に近接して複数の送信アンテナを装着し、同期制御装置によって該複数の送信アンテナからの送信波の同時送信あるいは同時放射と前記受信アンテナでの送信波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能としたことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項2】 掘削機本体の前部に回転自在なカッタヘッドが装着され、前記掘削機本体の前進に伴って前記カッタヘッドを駆動回転させることで、前方の地盤を掘削してトンネルを形成するトンネル掘削機において、前記カッタヘッドの前面部に周方向に沿って並設された送信アンテナと受信アンテナとからなるアンテナ装置を前記カッタヘッドの径方向に沿って複数組並設すると共に、前記各送信アンテナと受信アンテナとが互いに隣接するように配設し、同期制御装置によって前記複数の送信アンテナからの送信波の同時送信あるいは同時放射と前記受信アンテナでの送信波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能としたことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項1】 掘削機本体の前部に回転自在なカッタヘッドが装着され、前記掘削機本体の前進に伴って前記カッタヘッドを駆動回転させることで、前方の地盤を掘削してトンネルを形成するトンネル掘削機において、前記カッタヘッドの前面部に受信アンテナを装着すると共に、前記カッタヘッドの前面部に該受信アンテナの外周辺に近接して複数の送信アンテナを装着し、同期制御装置によって該複数の送信アンテナからの送信波の同時送信あるいは同時放射と前記受信アンテナでの送信波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能としたことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項2】 掘削機本体の前部に回転自在なカッタヘッドが装着され、前記掘削機本体の前進に伴って前記カッタヘッドを駆動回転させることで、前方の地盤を掘削してトンネルを形成するトンネル掘削機において、前記カッタヘッドの前面部に周方向に沿って並設された送信アンテナと受信アンテナとからなるアンテナ装置を前記カッタヘッドの径方向に沿って複数組並設すると共に、前記各送信アンテナと受信アンテナとが互いに隣接するように配設し、同期制御装置によって前記複数の送信アンテナからの送信波の同時送信あるいは同時放射と前記受信アンテナでの送信波の受信とを繰り返し行うように切換制御可能としたことを特徴とするトンネル掘削機。
【図5】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図12】
【図14】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図12】
【図14】
【公開番号】特開平11−81862
【公開日】平成11年(1999)3月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−242474
【出願日】平成9年(1997)9月8日
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【公開日】平成11年(1999)3月26日
【国際特許分類】
【出願日】平成9年(1997)9月8日
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
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